列型空間(sequential space、点列空間)とは、点列の極限に関して閉じた部分集合が必ず閉集合になる位相空間である。第1可算空間はFréchet–Urysohn空間であり、したがって列型であるが、逆は一般に成り立たない。列型空間は商空間と任意の余極限で保たれ、ちょうど距離化可能空間の商として得られる。一方、任意の部分空間や積では保存されない。
位相空間 $X$ の部分集合 $A$ に対し、$A$ に値を取る点列の極限全体を
$$
\operatorname{scl}_X(A)
:=\{x\in X\mid A\text{ 内の点列 }(a_n)\text{ で }a_n\to x\text{ となるものがある}\}
$$
と書き、$A$ の 点列閉包 という。定値点列を考えれば $A\subset\operatorname{scl}_X(A)$ であり、収束の定義から $\operatorname{scl}_X(A)\subset\overline A$ である。
位相空間 $X$ が 列型空間(点列空間、sequential space)であるとは、任意の部分集合 $A\subset X$ について
$$
\operatorname{scl}_X(A)=A
$$
ならば $A$ が閉集合になることをいう。言い換えれば、閉集合を点列の極限に関して閉じた集合として判定できる空間である。
位相空間 $X$ が Fréchet–Urysohn空間 であるとは、任意の $A\subset X$ について
$$
\operatorname{scl}_X(A)=\overline A
$$
となることをいう。すなわち、閉包の各点が $A$ 内の一つの点列の極限として得られる。
列型性は「閉でない集合には、その集合の外へ収束する集合内の点列が少なくとも一つある」と言い換えられる。Fréchet–Urysohn性はより強く、閉包に新しく加わる各点へ個別に点列が収束することを要求する。
任意の $A,B\subset X$ に対して
$$
A\subset\operatorname{scl}_X(A)\subset\overline A,
\qquad
\operatorname{scl}_X(A\cup B)
=\operatorname{scl}_X(A)\cup\operatorname{scl}_X(B)
$$
が成り立つ。また $\operatorname{scl}_X(\emptyset)=\emptyset$ である。
最初の包含のうち左側は定値点列から従う。$A$ 内の点列 $(a_n)$ が $x$ に収束するとき、もし $x\notin\overline A$ なら、開近傍 $X\setminus\overline A$ に $(a_n)$ が最終的に入ることになり、$a_n\in A$ に矛盾する。よって右側も成り立つ。空集合に値を取る点列はないので $\operatorname{scl}_X(\emptyset)=\emptyset$ である。
$x\in\operatorname{scl}_X(A\cup B)$ とし、$A\cup B$ 内の点列 $(x_n)$ が $x$ に収束するとする。集合 $\{n\mid x_n\in A\}$ と $\{n\mid x_n\in B\}$ の少なくとも一方は無限である。前者が無限なら、$A$ に値を取る部分列を選べる。収束列の部分列は同じ $x$ に収束するので $x\in\operatorname{scl}_X(A)$ である。後者の場合も同様である。これで左辺が右辺に含まれる。逆の包含は $A,B\subset A\cup B$ から直ちに従う。
一般の列型空間でも
$$
\operatorname{scl}_X(\operatorname{scl}_X(A))
=\operatorname{scl}_X(A)
$$
とは限らない。列型空間の定義は、点列閉包を一回取れば通常の閉包になるという定義ではない。後者をすべての $A$ に要求するのがFréchet–Urysohn性である。
次の含意が成り立つ。
$$
\text{第1可算空間}
\Longrightarrow
\text{Fréchet–Urysohn空間}
\Longrightarrow
\text{列型空間}.
$$
したがって、すべての距離空間は列型空間である。
$X$ を第1可算空間、$A\subset X$、$x\in\overline A$ とする。$x$ の可算近傍基を $(U_n)$ とし、
$$
V_n=U_0\cap\cdots\cap U_n
$$
とおけば、$(V_n)$ は減少する近傍基である。各 $V_n\cap A$ は空でないから $a_n\in V_n\cap A$ を選ぶ。$x$ の任意の近傍 $W$ に対し、ある $N$ で $V_N\subset W$ となる。$n\ge N$ なら $a_n\in V_n\subset V_N\subset W$ なので $a_n\to x$ である。ゆえに $\overline A\subset\operatorname{scl}_X(A)$ であり、逆の包含は前命題から従う。
次に $X$ をFréchet–Urysohn空間とする。$\operatorname{scl}_X(A)=A$ なら
$$
\overline A=\operatorname{scl}_X(A)=A
$$
なので $A$ は閉じている。よって $X$ は列型空間である。距離空間は第1可算なので最後の主張も従う。
通常の位相を入れた $\mathbb R$ は距離空間だからFréchet–Urysohn空間であり、列型空間である。$x\in\overline A$ なら、各 $n\ge1$ について
$$
a_n\in A\cap(x-1/n,x+1/n)
$$
を選ぶことで $a_n\to x$ を直接構成できる。
Arensの空間は、列型空間であるがFréchet–Urysohn空間ではない標準例である。これは可算個の収束列を別の収束列に沿って貼り合わせた商空間として構成できる。列型性は下の「商での保存」から従う一方、貼り合わせ後の特別な点はある部分集合の閉包に属するが、その部分集合内の一本の点列の極限にはならない。Fra65 pp. 109–111
順序位相を入れた $\omega_1+1$ は列型空間ではない。実際
$$
A=[0,\omega_1)
$$
は閉集合でない。ところが、$A$ 内の点列 $(\alpha_n)$ に現れる順序数の上限 $\beta=\sup_n\alpha_n$ は可算順序数であり $\beta<\omega_1$ である。したがって $(\beta,\omega_1]$ は $\omega_1$ の近傍であるが点列の全項を含まず、$(\alpha_n)$ は $\omega_1$ に収束しない。$A$ の他の極限は $A$ に属するので $A$ は点列閉である。よって「点列閉なら閉」という含意が破れる。
列型性は任意の部分空間には遺伝しない。この点が、任意の部分空間に遺伝するFréchet–Urysohn性との違いを与える。
位相空間 $X$ について、次は同値である。
1を仮定し、$Y\subset X$、$A\subset Y$ とする。$y\in\overline A^{\,Y}$ なら $y\in\overline A^{\,X}$ なので、$A$ 内の点列で $X$ において $y$ へ収束するものがある。同じ点列は部分空間 $Y$ でも $y$ に収束する。したがって $Y$ はFréchet–Urysohn、特に列型である。
逆に2を仮定する。$A\subset X$、$x\in\overline A$ とし、$Y=A\cup\{x\}$ を部分空間とする。もし $x\notin\operatorname{scl}_X(A)$ なら、$A$ は $Y$ で点列閉である。しかし $x\in\overline A^{\,Y}$ なので $A$ は $Y$ で閉じておらず、$Y$ の列型性に反する。よって $x\in\operatorname{scl}_X(A)$ であり、$X$ はFréchet–Urysohnである。
$X$ を列型空間とし、$q\colon X\to Y$ を商写像とする。このとき $Y$ は列型空間である。
$B\subset Y$ を点列閉集合とする。$q^{-1}(B)$ 内の点列 $(x_n)$ が $x\in X$ に収束すれば、連続性により $q(x_n)\to q(x)$ である。$q(x_n)\in B$ と $B$ の点列閉性から $q(x)\in B$、したがって $x\in q^{-1}(B)$ である。ゆえに $q^{-1}(B)$ は点列閉であり、$X$ の列型性から閉集合である。商位相の定義により $B$ は $Y$ で閉じている。よって $Y$ は列型である。
列型空間の任意の直和は列型空間である。したがって、列型空間からなる任意の図式の位相空間の圏における余極限も列型空間である。
$X=\coprod_iX_i$ とし、$A\subset X$ を点列閉とする。各成分 $X_i$ は開かつ閉である。$A\cap X_i$ 内の点列が $X_i$ で収束すれば $X$ でも収束するので、$A\cap X_i$ は $X_i$ で点列閉、したがって閉である。直和位相の定義から $A$ は $X$ で閉じており、$X$ は列型である。
位相空間における余極限は、対象の直和のある商空間として構成される。直和での保存と prop-sequential-space-quotient を順に適用すれば、後半が従う。
位相空間 $X$ について、次は同値である。
3から2は明らかであり、2から1は prop-sequential-space-hierarchy と prop-sequential-space-quotient から従う。
1から3を示す。$X$ で収束する点列 $(x_n)$ とその極限 $x$ の組すべてを添字集合 $\mathcal S$ とする。各 $s=((x_n),x)\in\mathcal S$ に対して収束列の模型
$$
C_s=\mathbb N\cup\{\infty\}
$$
を取り、自然数を孤立点、$\infty$ の近傍を $\{\infty\}\cup\{n\ge N\}$ の形として位相を入れる。各 $C_s$ は距離化可能であり、その任意直和
$$
M=\coprod_{s\in\mathcal S}C_s
$$
も距離化可能である。
各成分上で $q(n)=x_n$、$q(\infty)=x$ と定めると、収束の定義により全射な連続写像 $q\colon M\to X$ を得る。定値点列も $\mathcal S$ に含めたので全射である。
$q^{-1}(B)$ が $M$ で閉じているとする。$B$ 内の点列 $(b_n)$ が $b$ に収束すれば、この組に対応する成分 $C_s$ ではすべての自然数が $q^{-1}(B)$ に属する。$\mathbb N$ は $C_s$ で稠密であり、$q^{-1}(B)\cap C_s$ は閉じているから $\infty$ も属する。従って $b\in B$ であり、$B$ は点列閉である。$X$ は列型なので $B$ は閉じている。よって $q$ は商写像であり、3を得る。Fra65 Proposition 1.2
列型空間の積は一般に列型とは限らない。実際、各因子が列型である積 $[0,1]^{\omega_1}$ を考え、可算個を除く座標が $0$ である点全体を $A$ とする。$A$ は有限個の座標だけを指定する任意の基本開集合と交わるので稠密だが、全座標が $1$ の点を含まず、閉集合ではない。
一方、$A$ 内の点列 $(x_n)$ に対し、その各項の非零座標の合併は可算集合 $J$ である。$(x_n)$ が $x$ に収束すれば、$i\notin J$ では全ての $n$ で $x_n(i)=0$ だから $x(i)=0$ である。従って $x$ の非零座標も可算であり $x\in A$ となる。よって $A$ は点列閉であり、$[0,1]^{\omega_1}$ は列型でない。
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