特異コホモロジー(singular cohomology)とは、位相空間 $X$ の特異単体(標準単体からの連続写像)が生成する特異鎖複体 $C_\bullet(X)$ にアーベル群 $A$ への準同型をとって得られる余鎖複体 $\operatorname{Hom}(C_\bullet(X),A)$ のコホモロジー $H^n(X;A)$ である。任意の位相空間に対して定まり、連続写像で反変に引き戻され、ホモトピー不変で、対の長完全列と Mayer–Vietoris 完全列をもつ。カップ積により次数付き可換環になり、閉多様体では Poincaré 双対、可微分多様体では de Rham の定理、局所可縮なパラコンパクト空間では定数層の層コホモロジーとの一致が成り立つ。球面・トーラス・射影空間の計算がその典型例であり、Warsaw 円のような局所可縮でない空間では Čech コホモロジーと食い違う。
前提知識: 位相空間, 連続写像, アーベル群, 鎖複体, ホモトピー, 完全列
特異コホモロジーは、位相空間 $X$ の中に置いた「曲がった単体」(特異単体)の全体から作る鎖複体(特異鎖複体)に、アーベル群 $A$ への準同型をとる操作 $\operatorname{Hom}(-,A)$ を施して得られるコホモロジーである。記事を単独で読めるように、標準単体・特異単体・特異ホモロジーから順に完全に定義する。
$n\ge0$ に対し、Euclid空間 $\mathbb{R}^{n+1}$ の部分集合
$$
\Delta^n:=\Bigl\{(t_0,\dots,t_n)\in\mathbb{R}^{n+1}\ \Big|\ t_i\ge0,\ \sum_{i=0}^n t_i=1\Bigr\}
$$
を 標準 $n$ 単体(standard $n$-simplex)という。標準基底の点 $e_0,\dots,e_n$ を $\Delta^n$ の頂点といい、$\Delta^n$ の点はその凸結合 $\sum t_ie_i$ である。$0\le i\le n$ に対し、$i$ 番目の座標を $0$ にして残りを順に並べる連続写像
$$
d_i\colon\Delta^{n-1}\to\Delta^n,\qquad (t_0,\dots,t_{n-1})\mapsto(t_0,\dots,t_{i-1},0,t_i,\dots,t_{n-1})
$$
を $i$ 番目の面写像という。$X$ を位相空間とするとき、連続写像 $\sigma\colon\Delta^n\to X$ を $X$ の 特異 $n$ 単体(singular $n$-simplex)といい、$\sigma\circ d_i\colon\Delta^{n-1}\to X$ を $\sigma$ の $i$ 番目の面という。
「特異」という語は、$\sigma$ が単射である必要も、像が幾何的な単体である必要もない(つぶれていてもよい)ことを表す。
位相空間 $X$ と $n\ge0$ に対し、$X$ の特異 $n$ 単体全体を基底とする自由アーベル群を $C_n(X)$ と書き、その元を 特異 $n$ 鎖という($n<0$ では $C_n(X):=0$)。準同型 $\partial_n\colon C_n(X)\to C_{n-1}(X)$ を、特異 $n$ 単体 $\sigma$ に対して
$$
\partial_n\sigma:=\sum_{i=0}^n(-1)^i\,\sigma\circ d_i
$$
と定めて線型に拡張したものとし、境界作用素という。lem-singular-cohomology-boundary により $\partial_{n-1}\circ\partial_n=0$ なので $(C_\bullet(X),\partial)$ は鎖複体であり、これを $X$ の 特異鎖複体という。その $n$ 次ホモロジー
$$
H_n(X):=\ker\partial_n/\operatorname{im}\partial_{n+1}
$$
を $X$ の(整係数)特異ホモロジー群(singular homology group)という。アーベル群 $A$ に対し、テンソル積でできる鎖複体 $C_\bullet(X)\otimes_{\mathbb{Z}}A$ のホモロジーを $A$ 係数の特異ホモロジー群 $H_n(X;A)$ という。
任意の $n\ge1$ と特異 $n$ 単体 $\sigma$ に対し $\partial_{n-1}(\partial_n\sigma)=0$ である。
まず面写像の関係式 $d_j\circ d_i=d_i\circ d_{j-1}\colon\Delta^{n-2}\to\Delta^n$($i< j$)を確かめる。左辺は $(t_0,\dots,t_{n-2})$ をまず $i$ 番目に $0$ を挿入し、次に $j$ 番目に $0$ を挿入する。$i< j$ なので、最初に挿入した $0$ は $j$ 番目の挿入で動かず、結果は「もとの座標の $i$ 番目と $j$ 番目に $0$ が入った列」である。右辺は先に $j-1$ 番目に $0$ を挿入し(この $0$ は $i$ 番目の挿入で 1 つ右へずれて $j$ 番目に来る)、次に $i$ 番目に $0$ を挿入するので、同じ列になる。よって等式が成り立つ。
これを用いると
$$
\partial_{n-1}\partial_n\sigma=\sum_{j=0}^{n}\sum_{i=0}^{n-1}(-1)^{i+j}\,\sigma\circ d_j\circ d_i
$$
であり、和を $i< j$ の部分と $i\ge j$ の部分に分ける。$i< j$ の項 $(-1)^{i+j}\sigma\circ d_j\circ d_i$ は関係式により $(-1)^{i+j}\sigma\circ d_i\circ d_{j-1}$ に等しく、これは $i\ge j$ の部分に現れる添字 $(j',i')=(i,j-1)$($i'\ge j'$ を満たす)の項 $(-1)^{i'+j'}\sigma\circ d_{j'}\circ d_{i'}=(-1)^{i+j-1}\sigma\circ d_i\circ d_{j-1}$ と符号だけが逆である。対応 $(i,j)\mapsto(j-1,i)$ は $\{i< j\}$ から $\{i'\ge j'\}$ への全単射なので、全体の和は $0$ である。
位相空間 $X$ とアーベル群 $A$ に対し、$C^n(X;A):=\operatorname{Hom}_{\mathbb{Z}}(C_n(X),A)$ の元を $A$ 係数の 特異 $n$ 余鎖といい、$\varphi\in C^n(X;A)$ に対し
$$
\delta^n\varphi:=\varphi\circ\partial_{n+1}\in C^{n+1}(X;A)
$$
と定める。$\delta^{n+1}\delta^n\varphi=\varphi\circ\partial_{n+1}\circ\partial_{n+2}=0$ なので $(C^\bullet(X;A),\delta)$ は余鎖複体(鎖複体)であり、そのコホモロジー
$$
H^n(X;A):=H^n\bigl(\operatorname{Hom}(C_\bullet(X),A)\bigr)=\ker\delta^n/\operatorname{im}\delta^{n-1}
$$
を $X$ の $A$ 係数 特異コホモロジー群(singular cohomology group)という。$\ker\delta^n$ の元を余輪体、$\operatorname{im}\delta^{n-1}$ の元を余境界という。$A=\mathbb{Z}$ のとき $H^n(X):=H^n(X;\mathbb{Z})$ と書く。$A$ が可換環 $R$ 上の加群なら $H^n(X;A)$ は $R$ 加群である。
連続写像 $f\colon X\to Y$ は $\sigma\mapsto f\circ\sigma$ により鎖写像 $f_\sharp\colon C_\bullet(X)\to C_\bullet(Y)$ を定め、$\varphi\mapsto\varphi\circ f_\sharp$ が余鎖写像 $f^\sharp\colon C^\bullet(Y;A)\to C^\bullet(X;A)$ を定める。これが誘導する準同型を $f^*\colon H^n(Y;A)\to H^n(X;A)$ と書く。$(g\circ f)^*=f^*\circ g^*$、$(\mathrm{id}_X)^*=\mathrm{id}$ なので、$H^n(-;A)$ は位相空間の圏からアーベル群の圏への反変関手である。
余鎖 $\varphi\in C^n(X;A)$ は特異 $n$ 単体ごとに $A$ の値を割り当てる写像にほかならず、$\delta\varphi(\tau)=\varphi(\partial\tau)=\sum_i(-1)^i\varphi(\tau\circ d_i)$ である。すなわち $\varphi$ が余輪体であるとは、どの特異 $(n+1)$ 単体の境界の上でも $\varphi$ の値の交代和が消えることをいう。
$A_0\subset X$ を部分空間とする。包含 $C_\bullet(A_0)\subset C_\bullet(X)$ の商 $C_\bullet(X,A_0):=C_\bullet(X)/C_\bullet(A_0)$ は各次数で自由アーベル群($A_0$ に含まれない特異単体を基底とする)であり、$H^n(X,A_0;A):=H^n(\operatorname{Hom}(C_\bullet(X,A_0),A))$ を 相対特異コホモロジー群という。$C^n(X,A_0;A)$ は $A_0$ の特異単体の上で消える余鎖の全体と同一視できる。
また、$X$ が空でないとき、一点への写像 $X\to\{\mathrm{pt}\}$ が誘導する $H^n(\mathrm{pt};A)\to H^n(X;A)$ の余核を 被約特異コホモロジー群 $\tilde H^n(X;A)$ という。$n\ge1$ では $\tilde H^n(X;A)=H^n(X;A)$ であり、$H^0(X;A)\cong\tilde H^0(X;A)\oplus A$ である。
特異ホモロジーは「空間の中で $n$ 次元の閉じた図形(輪体)が、$(n+1)$ 次元の図形の境界になっているか」を測る。特異コホモロジーはその双対で、「$n$ 次元の図形に値 $A$ を割り当てる規則のうち、境界の上で整合的なもの(余輪体)が、$(n-1)$ 次元の規則から誘導されるもの(余境界)とどれだけ違うか」を測る。単体複体や CW複体の構造を選ばずに定義できるので、任意の位相空間に対して定まり、連続写像で自然に引き戻せ、ホモトピーで変わらない。しかも余鎖は「値を割り当てる写像」なので、値どうしを掛ける操作(カップ積)が自然に入り、ホモロジーにはない環の構造をもつ。この環構造と Poincaré 双対が、多様体や代数多様体の位相を扱うときに特異コホモロジーが基本的な道具になる理由である。
一点空間 $\mathrm{pt}$ には各次数 $n\ge0$ にちょうど 1 つの特異単体 $\sigma_n$(定値写像)があり、$\partial\sigma_n=\sum_{i=0}^n(-1)^i\sigma_{n-1}$ は $n$ が偶数($n\ge2$)なら $\sigma_{n-1}$、奇数なら $0$ である。したがって余鎖複体 $C^\bullet(\mathrm{pt};A)$ は $A\xrightarrow{0}A\xrightarrow{\mathrm{id}}A\xrightarrow{0}A\xrightarrow{\mathrm{id}}\cdots$ となり、$H^0(\mathrm{pt};A)=A$、$H^n(\mathrm{pt};A)=0$($n\ge1$)である。より一般に、prop-singular-cohomology-h0 により、離散空間 $X$ では $H^0(X;A)=\prod_{x\in X}A$、$H^n(X;A)=0$($n\ge1$)である($X$ の特異単体はすべて定値写像なので、鎖複体は各点の鎖複体の直和、余鎖複体はその直積になる)。可縮な空間(可縮空間。$\mathbb{R}^n$、凸集合、錐など)は thm-singular-cohomology-homotopy により一点と同じコホモロジーをもつ。
$n$ 次元球面 $S^n$($n\ge0$)について
$$
\tilde H^k(S^n;A)\cong\begin{cases}A&(k=n)\\0&(k\ne n)\end{cases},\qquad
H^k(S^n;A)\cong\begin{cases}A&(k=0,n)\\0&(\text{その他})\end{cases}\quad(n\ge1)
$$
である。実際、$n=0$ では $S^0$ は 2 点の離散空間なので ex-singular-cohomology-point による。$n\ge1$ では、北極・南極をそれぞれ除いた開集合 $U,V\subset S^n$ をとると、$U,V$ は $\mathbb{R}^n$ と同相で可縮、$U\cap V$ は $S^{n-1}\times(0,1)$ と同相で $S^{n-1}$ とホモトピー同値である。被約版の Mayer–Vietoris 完全列(thm-singular-cohomology-mayer-vietoris の後の注意)
$$
\tilde H^{k-1}(U;A)\oplus\tilde H^{k-1}(V;A)\to\tilde H^{k-1}(U\cap V;A)\to\tilde H^{k}(S^n;A)\to\tilde H^{k}(U;A)\oplus\tilde H^{k}(V;A)
$$
の両端は thm-singular-cohomology-homotopy により $0$ なので、$\tilde H^k(S^n;A)\cong\tilde H^{k-1}(S^{n-1};A)$ が得られ、$n$ に関する帰納法で主張が従う。とくに $S^n$ と $S^m$($n\ne m$)はホモトピー同値でなく、$\mathbb{R}^n$ と $\mathbb{R}^m$ は同相でない(同相なら一点を除いた空間 $\mathbb{R}^n\setminus\{0\}\simeq S^{n-1}$ どうしがホモトピー同値になる)。
2 次元トーラス $T^2=S^1\times S^1$ では $H^0(T^2)\cong\mathbb{Z}$、$H^1(T^2)\cong\mathbb{Z}^2$、$H^2(T^2)\cong\mathbb{Z}$、$H^k(T^2)=0$($k\ge3$)である。これは $T^2$ を 2 つの開いた円環(それぞれ $S^1$ にホモトピー同値、共通部分は 2 つの円環の非交和)に分けて Mayer–Vietoris 完全列を使うか、Künnethの公式(Hat02 3.B)を $S^1\times S^1$ に使えば得られる。環構造は $H^*(T^2;\mathbb{Z})\cong\Lambda_{\mathbb{Z}}[a,b]$($a,b\in H^1$ が生成する外積代数:$a\smile b=-b\smile a$ が $H^2$ を生成し、$a\smile a=b\smile b=0$)であり、一般に $n$ 次元トーラス $T^n=(S^1)^n$ では $H^*(T^n;\mathbb{Z})\cong\Lambda_{\mathbb{Z}}[a_1,\dots,a_n]$、$H^k(T^n)\cong\mathbb{Z}^{\binom nk}$ である(Hat02 §3.2・§3.B)。
$n$ 次元実射影空間 $\mathbb{RP}^n$ の整係数コホモロジーは
$$
H^k(\mathbb{RP}^n;\mathbb{Z})\cong\begin{cases}\mathbb{Z}&(k=0)\\ \mathbb{Z}/2&(0< k\le n,\ k\text{ 偶数})\\ \mathbb{Z}&(k=n\text{ 奇数})\\ 0&(\text{その他})\end{cases}
$$
であり、$\mathbb{Z}/2$ 係数では $H^*(\mathbb{RP}^n;\mathbb{Z}/2)\cong(\mathbb{Z}/2)[\alpha]/(\alpha^{n+1})$($\deg\alpha=1$)という多項式環の商環になる(Hat02 3.12)。整係数の計算は $\mathbb{RP}^n$ の各次元に 1 つずつ胞体をもつ CW 複体の構造と胞体コホモロジーから従い、環構造は Hat02 3.12 の証明のほか Poincaré 双対(thm-singular-cohomology-poincare)からも導ける。ホモロジー $H_k(\mathbb{RP}^n;\mathbb{Z})$ では $\mathbb{Z}/2$ が奇数次に現れる($0< k< n$、$k$ 奇数)ことに注意する。この「次数のずれ」は普遍係数定理(thm-singular-cohomology-uct)の $\operatorname{Ext}$ 項の現れであり、コホモロジーがホモロジーの単なる双対ではないことを示す。
$n$ 次元複素射影空間 $\mathbb{CP}^n$ では $H^k(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$($0\le k\le2n$、$k$ 偶数)、その他は $0$ であり、環として $H^*(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}[\alpha]/(\alpha^{n+1})$($\deg\alpha=2$)である(Hat02 3.12)。$\alpha$ は超平面 $\mathbb{CP}^{n-1}\subset\mathbb{CP}^n$ の Poincaré 双対類(サイクル類写像による超平面の類)であり、$\alpha^k$ は余次元 $k$ の線型部分空間の類である。$\mathbb{CP}^n$ のBetti数($H^k(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Q})$ の次元)は偶数次で $1$、奇数次で $0$ であり、これは複素代数多様体のコホモロジーの Hodge分解 や Hodge構造 を論じる出発点になる。
$X=S^1\vee S^1\vee S^2$(一点で貼り合わせた楔、ウェッジ和)と $Y=T^2$ を比べる。楔のコホモロジーは各因子の被約コホモロジーの直和なので(Mayer–Vietoris 完全列から従う)、$H^0(X)\cong\mathbb{Z}$、$H^1(X)\cong\mathbb{Z}^2$、$H^2(X)\cong\mathbb{Z}$、その他は $0$ であり、ex-singular-cohomology-torus により $Y$ と全次数・全係数で同型なコホモロジー群をもつ。しかし $X$ と $Y$ はホモトピー同値でない。実際、$Y$ では $H^1$ の 2 つの生成元のカップ積が $H^2$ の生成元だが、$X$ では $H^1(X)$ の元はすべて $S^1\vee S^1$ からの引き戻しであり、$S^1\vee S^1$ の $H^2$ が $0$ なのでカップ積は $0$ である。カップ積はホモトピー不変な環構造(thm-singular-cohomology-cup)なので、両者はホモトピー同値でない(基本群でも区別できる:$\pi_1(X)$ は自由群 $F_2$、$\pi_1(Y)\cong\mathbb{Z}^2$)。この反例が破るのは「コホモロジー群の同型 $\Rightarrow$ ホモトピー同値」という含意であり、満たしているのは「ホモトピー同値 $\Rightarrow$ コホモロジー群の同型」(thm-singular-cohomology-homotopy)である。コホモロジー群と環構造はホモトピー型の不変量だが、完全な不変量ではない。
Warsaw円(quasi-circle)$W\subset\mathbb{R}^2$ を、正弦曲線 $S:=\{(x,\sin(1/x))\mid0< x\le1\}$、その極限の線分 $L:=\{0\}\times[-1,1]$($S\cup L$ が位相幾何学者の正弦曲線)、および点 $(1,\sin1)$ と $(0,-1)$ を正弦曲線と交わらずに結ぶ弧の和集合とする。$W$ はコンパクト(コンパクト空間)で弧状連結(弧状連結空間)だが、局所連結(局所連結空間)でない。$W$ の特異ホモロジー・特異コホモロジーは一点と同型である。これを示す。弧の内部の点 $p$ をとり、$U:=W\setminus\{p\}$、$V$ を $p$ を含む弧の小さな開区間とする。$V$ は可縮、$U\cap V=V\setminus\{p\}$ は 2 つの開区間の非交和である。$U$ は集合として、正弦曲線 $S$ と $p$ までの弧の部分 $P_1$(開区間と同相)と、極限線分 $L$ と $p$ までの弧の部分 $P_2$(半開区間と同相)に分かれ、$P_1$ と $P_2$ を結ぶ道は $U$ の中にない。実際 $P_2$ は $U$ の閉集合で、$P_1$ のうち弧の部分は $L$ から正の距離にあるから、$P_1$ の点から $P_2$ の点への道 $\gamma$ があれば、$\gamma$ がはじめて $P_2$ に入る時刻 $t_0$ で $\gamma(t_0)\in L$ であり、$t_0$ の直前では $\gamma$ は $S$ の中にある。$\gamma$ を $t_0$ の近くに制限すると $S$ の点と $L$ の点を結ぶ $S\cup L$ 内の道が得られるが、位相幾何学者の正弦曲線 $S\cup L$ は弧状連結でないので矛盾する。したがって $P_1,P_2$ が $U$ の弧状連結成分である($U$ 自身は連結であることに注意)。特異単体の像は弧状連結なので、$U$ の特異鎖複体は $P_1$、$P_2$ の特異鎖複体の直和であり、$P_1,P_2$ は可縮だから $\tilde H_k(U)=0$($k\ge1$)、$H_0(U)\cong\mathbb{Z}^2$ である。ホモロジー版の Mayer–Vietoris 完全列(thm-singular-cohomology-mayer-vietoris の証明の鎖複体の短完全列から同様に得られる)
$$
\tilde H_k(U)\oplus\tilde H_k(V)\to\tilde H_k(W)\to\tilde H_{k-1}(U\cap V)\to\tilde H_{k-1}(U)\oplus\tilde H_{k-1}(V)
$$
を見ると、$k\ge2$ では両端が $0$ なので $\tilde H_k(W)=0$ である。$k=1$ では $\tilde H_0(U\cap V)\cong\mathbb{Z}$(2 成分)から $\tilde H_0(U)\oplus\tilde H_0(V)\cong\mathbb{Z}\oplus0$ への写像は、$U\cap V$ の 2 つの成分が $U$ の異なる成分 $P_1,P_2$ に入るので同型であり、したがって $\tilde H_1(W)=0$、$\tilde H_0(W)=0$ である。普遍係数定理(thm-singular-cohomology-uct)により特異コホモロジーも一点と同型である。一方、$W$ の Čechコホモロジー は $\check H^1(W;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ である。実際 $W$ は、閉円環と同相な(したがって円周とホモトピー同値な)閉近傍の減少列 $W_1\supset W_2\supset\cdots$ の共通部分として表され、コンパクト空間の Čech コホモロジーは減少列の共通部分について連続(帰納極限に等しい)なので $\check H^1(W;\mathbb{Z})\cong\varinjlim\check H^1(W_m;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ である(Čech コホモロジーの連続性は Bre97 第 II 章に譲る)。Čech コホモロジーはホモトピー不変なので、$W$ は一点とホモトピー同値ではない(Hat02 第 1 章の演習に quasi-circle として現れる)。この反例が満たす性質はコンパクト・弧状連結であることと特異コホモロジーが一点のそれと同型であること、満たさない性質は局所可縮性(局所連結性)であり、破るのは「特異コホモロジーと Čech コホモロジー(層コホモロジー)はつねに一致する」という主張である。両者が一致するには局所可縮性のような局所的な良さが必要である(thm-singular-cohomology-sheaf)。また「特異コホモロジーが一点と同じ $\Rightarrow$ 可縮」という含意も破る。
位相空間 $X$ の弧状連結成分の集合を $\pi_0(X)$ とすると、$H^0(X;A)\cong\prod_{\pi_0(X)}A$、すなわち $H^0(X;A)$ は各弧状連結成分に $A$ の元を割り当てる写像の全体と同型である。とくに $X$ が弧状連結なら $H^0(X;A)\cong A$ である。
$C_{-1}(X)=0$ なので $H^0(X;A)=\ker(\delta^0\colon C^0(X;A)\to C^1(X;A))$ である。$0$ 余鎖 $\varphi$ は各点 $x\in X$(特異 $0$ 単体)に値 $\varphi(x)\in A$ を割り当てる写像であり、特異 $1$ 単体(道)$\tau\colon[0,1]\cong\Delta^1\to X$ に対し $\delta\varphi(\tau)=\varphi(\tau(1))-\varphi(\tau(0))$ である($d_0$ は頂点 $e_1$ に、$d_1$ は頂点 $e_0$ に対応する)。よって $\delta\varphi=0$ であることは、道で結ばれる 2 点で $\varphi$ が同じ値をとること、すなわち $\varphi$ が各弧状連結成分の上で定数であることと同値である。各成分上の値を対応させる写像 $\ker\delta^0\to\prod_{\pi_0(X)}A$ は明らかに全単射である。
連続写像 $f,g\colon X\to Y$ がホモトピックならば、任意のアーベル群 $A$ と $n$ に対し $f^*=g^*\colon H^n(Y;A)\to H^n(X;A)$ である。したがって $X$ と $Y$ がホモトピー同値ならば $H^n(X;A)\cong H^n(Y;A)$ であり、可縮な空間のコホモロジーは一点のそれに等しい。
$F\colon X\times[0,1]\to Y$ を $F(x,0)=f(x)$、$F(x,1)=g(x)$ なるホモトピーとする。鎖複体の準同型 $f_\sharp,g_\sharp\colon C_\bullet(X)\to C_\bullet(Y)$ の間に鎖ホモトピー $P\colon C_n(X)\to C_{n+1}(Y)$、すなわち
$$
\partial P+P\partial=g_\sharp-f_\sharp
$$
を満たす準同型の族を構成する。これができれば、$\operatorname{Hom}(-,A)$ をとった $P^\sharp\colon C^{n+1}(Y;A)\to C^n(X;A)$、$\varphi\mapsto\varphi\circ P$ が $P^\sharp\delta+\delta P^\sharp=g^\sharp-f^\sharp$ を満たす(両辺を余鎖 $\varphi$ に施すと $\varphi\circ(\partial P+P\partial)=\varphi\circ(g_\sharp-f_\sharp)$)。余輪体 $\varphi$ に対して $g^\sharp\varphi-f^\sharp\varphi=\delta(P^\sharp\varphi)$ は余境界なので、コホモロジー類の上で $f^*=g^*$ となる。
$P$ の構成(角柱作用素)。$\Delta^n\times[0,1]$ の頂点を $v_i=(e_i,0)$、$w_i=(e_i,1)$($0\le i\le n$)と書く。$\Delta^n\times[0,1]$ は $n+1$ 個の $(n+1)$ 単体 $[v_0,\dots,v_i,w_i,\dots,w_n]$(頂点の凸包に、$\Delta^{n+1}$ の頂点 $e_0,\dots,e_{n+1}$ をこの順に送るアフィン写像でパラメータ表示したもの)の和集合である。特異 $n$ 単体 $\sigma\colon\Delta^n\to X$ に対し
$$
P(\sigma):=\sum_{i=0}^n(-1)^i\,F\circ(\sigma\times\mathrm{id})\circ[v_0,\dots,v_i,w_i,\dots,w_n]
$$
と定める。$\partial P(\sigma)$ を計算する。単体 $[v_0,\dots,v_i,w_i,\dots,w_n]$ の境界のうち、$v_j$($j\le i$)を落とした面は符号 $(-1)^{i+j}$、$w_j$($j\ge i$)を落とした面は符号 $(-1)^{i+j+1}$ で現れる。$j=i$ の項は
$$
\sum_i(-1)^{i+i}F(\sigma\times\mathrm{id})[v_0,\dots,v_{i-1},w_i,\dots,w_n]+\sum_i(-1)^{i+i+1}F(\sigma\times\mathrm{id})[v_0,\dots,v_i,w_{i+1},\dots,w_n]
$$
であり、隣り合う $i$ の項が打ち消し合って、残るのは $i=0$ の $F(\sigma\times\mathrm{id})[w_0,\dots,w_n]=g\circ\sigma=g_\sharp(\sigma)$ と $i=n$ の $-F(\sigma\times\mathrm{id})[v_0,\dots,v_n]=-f_\sharp(\sigma)$ だけである。$j\ne i$ の項は
$$
\sum_{j< i}(-1)^{i+j}F(\sigma\times\mathrm{id})[v_0,\dots,\hat v_j,\dots,v_i,w_i,\dots,w_n]+\sum_{j>i}(-1)^{i+j+1}F(\sigma\times\mathrm{id})[v_0,\dots,v_i,w_i,\dots,\hat w_j,\dots,w_n]
$$
であり、これは $-P(\partial\sigma)$ に等しい。実際、$\partial\sigma=\sum_j(-1)^j\sigma\circ d_j$ に $P$ を施すと、$\sigma\circ d_j$ の角柱の単体は $[v_0,\dots,\hat v_j,\dots,v_i,w_i,\dots,\hat w_j,\dots,w_n]$($j$ 番目の頂点を上下とも落としたもの)であり、$i< j$ のものは符号 $(-1)^{j}(-1)^{i}$、$i>j$ のものは($v_j$ を落として添字が 1 つずれるので)符号 $(-1)^j(-1)^{i-1}$ で現れる。上の式と見比べると各項が符号を逆にして対応する。よって $\partial P(\sigma)=g_\sharp(\sigma)-f_\sharp(\sigma)-P(\partial\sigma)$、すなわち $\partial P+P\partial=g_\sharp-f_\sharp$ である。
$X\simeq Y$ なら、ホモトピー逆写像 $h\colon Y\to X$ に対し $h\circ f\simeq\mathrm{id}_X$、$f\circ h\simeq\mathrm{id}_Y$ から $f^*h^*=\mathrm{id}$、$h^*f^*=\mathrm{id}$ となり、$f^*$ は同型である。可縮な空間は一点とホモトピー同値なので、ex-singular-cohomology-point に帰着する。
部分空間 $A_0\subset X$ に対し、包含 $i\colon A_0\to X$ と商写像から自然に定まる準同型を並べた列
$$
\cdots\to H^n(X,A_0;A)\to H^n(X;A)\xrightarrow{i^*}H^n(A_0;A)\xrightarrow{\delta}H^{n+1}(X,A_0;A)\to H^{n+1}(X;A)\to\cdots
$$
は完全である。
鎖複体の短完全列 $0\to C_\bullet(A_0)\to C_\bullet(X)\to C_\bullet(X,A_0)\to0$ は各次数で分裂する。実際 $C_n(X,A_0)$ は $A_0$ に含まれない特異単体を基底とする自由アーベル群なので、その基底を $C_n(X)$ の同じ単体へ送る準同型が商写像の切断を与える。分裂短完全列に加法的関手 $\operatorname{Hom}(-,A)$ を施した列
$$
0\to C^n(X,A_0;A)\to C^n(X;A)\to C^n(A_0;A)\to0
$$
はふたたび分裂短完全列である($\operatorname{Hom}(M\oplus N,A)\cong\operatorname{Hom}(M,A)\oplus\operatorname{Hom}(N,A)$)。よって余鎖複体の短完全列が得られ、蛇の補題(鎖複体の短完全列がホモロジーの長完全列を誘導すること)により主張の長完全列が得られる。連結準同型 $\delta\colon H^n(A_0;A)\to H^{n+1}(X,A_0;A)$ は、余輪体 $\psi\in C^n(A_0;A)$ を $C^n(X;A)$ の余鎖 $\tilde\psi$($A_0$ の外の単体では $0$)に持ち上げ、$\delta\tilde\psi$($A_0$ 上で $0$ なので相対余鎖)の類をとるものである。
$X=U\cup V$ を開集合 $U,V$ の和集合とする。包含写像から定まる準同型を並べた列
$$
\cdots\to H^n(X;A)\to H^n(U;A)\oplus H^n(V;A)\to H^n(U\cap V;A)\xrightarrow{\delta}H^{n+1}(X;A)\to\cdots
$$
は完全である。ここで $H^n(X;A)\to H^n(U;A)\oplus H^n(V;A)$ は $\alpha\mapsto(\alpha|_U,\alpha|_V)$、$H^n(U;A)\oplus H^n(V;A)\to H^n(U\cap V;A)$ は $(\beta,\gamma)\mapsto\beta|_{U\cap V}-\gamma|_{U\cap V}$ である。
$C_\bullet(U)+C_\bullet(V)\subset C_\bullet(X)$ を、$U$ の特異単体と $V$ の特異単体が生成する部分鎖複体とする。小さい鎖の定理(Hat02 2.21:重心細分を繰り返せば任意の特異単体は $U$ または $V$ に入る単体の和に鎖ホモトピックである)により、包含 $C_\bullet(U)+C_\bullet(V)\hookrightarrow C_\bullet(X)$ は鎖ホモトピー同値である。この定理は本記事では証明せず引用する。これを認めれば、あとは代数だけである。鎖複体の列
$$
0\to C_\bullet(U\cap V)\xrightarrow{\ x\mapsto(x,-x)\ }C_\bullet(U)\oplus C_\bullet(V)\xrightarrow{\ (y,z)\mapsto y+z\ }C_\bullet(U)+C_\bullet(V)\to0
$$
は完全である:第 1 の写像は明らかに単射、合成は $0$、$y+z=0$ なら $y=-z$ は $U$ の単体と $V$ の単体の両方で書けるので $U\cap V$ の単体の一次結合(自由アーベル群の基底の比較)、第 2 の写像は定義から全射である。第 3 項は各次数で自由アーベル群なので、この短完全列は各次数で分裂し、$\operatorname{Hom}(-,A)$ を施しても短完全列のままである。得られた余鎖複体の短完全列に蛇の補題を適用すると、$H^n(\operatorname{Hom}(C_\bullet(U)+C_\bullet(V),A))\to H^n(U;A)\oplus H^n(V;A)\to H^n(U\cap V;A)\to\cdots$ という長完全列が得られる。鎖ホモトピー同値 $C_\bullet(U)+C_\bullet(V)\simeq C_\bullet(X)$ に $\operatorname{Hom}(-,A)$ を施したものも余鎖ホモトピー同値(thm-singular-cohomology-homotopy の証明と同じ計算)なので、第 1 項は $H^n(X;A)$ に置き換えられ、写像が主張のものになることも定義から従う。
$U\cap V\ne\emptyset$ のとき、各項を被約コホモロジーに置き換えた列も完全である(一点への写像で誘導される $A$ の直和因子を各項から取り除けばよい)。ex-singular-cohomology-sphere で用いたのはこの形である。また $U,V$ が開でなくても、$X$ の内部の意味で $\operatorname{int}U\cup\operatorname{int}V=X$ であれば同じ列が完全である。
任意の位相空間 $X$、アーベル群 $A$、$n$ に対し、自然な短完全列
$$
0\to\operatorname{Ext}^1_{\mathbb{Z}}(H_{n-1}(X),A)\to H^n(X;A)\xrightarrow{h}\operatorname{Hom}(H_n(X),A)\to0
$$
があり、これは(自然にではないが)分裂する。ここで $h$ は余輪体 $\varphi$ の類を輪体の類 $[z]$ に $\varphi(z)$ を対応させる準同型である。とくに $A$ が体 $k$ のとき $H^n(X;k)\cong\operatorname{Hom}_k(H_n(X;k),k)$ であり、$H_{n-1}(X)$ と $H_n(X)$ が有限生成(有限生成加群)のとき $H^n(X)\cong(H_n(X)\text{ の自由部分})\oplus(H_{n-1}(X)\text{ の捩れ部分})$ である。
証明は Hat02 3.2 に譲る($C_\bullet(X)$ が自由鎖複体であることだけを使う一般の代数的事実で、Ext関手・Tor関手の記事の主題である)。ex-singular-cohomology-rpn の整係数コホモロジーの「次数のずれ」がこの $\operatorname{Ext}$ 項の効果である。
$R$ を可換環とする。余鎖 $\varphi\in C^p(X;R)$、$\psi\in C^q(X;R)$ に対し、特異 $(p+q)$ 単体 $\sigma$ の値を
$$
(\varphi\smile\psi)(\sigma):=\varphi\bigl(\sigma|[e_0,\dots,e_p]\bigr)\,\psi\bigl(\sigma|[e_p,\dots,e_{p+q}]\bigr)
$$
($\sigma|[e_0,\dots,e_p]$ は $\sigma$ を前の $p$ 次元の面に制限した特異 $p$ 単体、$\sigma|[e_p,\dots,e_{p+q}]$ は後ろの $q$ 次元の面への制限)で定めた余鎖 $\varphi\smile\psi\in C^{p+q}(X;R)$ を カップ積(cup product)という。Leibniz 則 $\delta(\varphi\smile\psi)=\delta\varphi\smile\psi+(-1)^p\varphi\smile\delta\psi$ が成り立つので、カップ積はコホモロジーの双線型写像 $H^p(X;R)\times H^q(X;R)\to H^{p+q}(X;R)$ を誘導する(Hat02 3.6)。
カップ積により $H^*(X;R):=\bigoplus_{n\ge0}H^n(X;R)$ は、$1\in H^0(X;R)$(各弧状連結成分に $1$ を割り当てる類)を単位元とする結合的な次数付き環になり、次数付き可換である:$\alpha\in H^p$、$\beta\in H^q$ に対し
$$
\alpha\smile\beta=(-1)^{pq}\,\beta\smile\alpha .
$$
連続写像 $f\colon X\to Y$ の引き戻し $f^*\colon H^*(Y;R)\to H^*(X;R)$ は環準同型であり、したがってコホモロジー環はホモトピー型の不変量である。
証明は Hat02 §3.2(次数付き可換性は 3.14)に譲る。次数付き可換性は余鎖のレベルでは成り立たず($\varphi\smile\psi$ と $\psi\smile\varphi$ は異なる余鎖)、コホモロジーに移ってはじめて成り立つ。$\mathbb{Z}$ 係数の環構造が空間を区別する例は ex-singular-cohomology-not-invariant にある。ホモロジー類との対 $H^p(X;R)\times H_n(X;R)\to H_{n-p}(X;R)$(キャップ積)も同じ式で定義され、Poincaré 双対はキャップ積で述べられる。
証明は Hat02 3.30・3.38 に譲る。複素多様体は複素構造から定まる向きをもつので、$n$ 次元の非特異射影多様体に付随するコンパクト複素多様体では $H^k\cong H_{2n-k}$ であり、これがGysin写像・サイクル類写像の定義の基礎になる(Hodge分解、Chow環)。コンパクトでない向き付けられた多様体では、コンパクト台コホモロジーと通常のホモロジー、あるいは通常のコホモロジーと Borel–Mooreホモロジーとの間で同じ形の双対が成り立つ。
対 $(X,A_0)$ に $H^n(X,A_0;A)$ を対応させる反変関手の族と連結準同型 $\delta$ は、次を満たす:(1) ホモトピー公理(thm-singular-cohomology-homotopy)、(2) 完全性公理(thm-singular-cohomology-les)、(3) 切除公理:$\overline{Z}\subset\operatorname{int}A_0$ なる $Z\subset A_0$ に対し包含 $(X\setminus Z,A_0\setminus Z)\to(X,A_0)$ が同型 $H^n(X,A_0;A)\cong H^n(X\setminus Z,A_0\setminus Z;A)$ を誘導する、(4) 次元公理:$H^n(\mathrm{pt};A)=0$($n\ne0$)、$H^0(\mathrm{pt};A)=A$、(5) 加法性:非交和のコホモロジーは各成分のコホモロジーの直積である。逆に、有限 CW複体の対の上でこれらの公理を満たし、一点で $A$ をとる反変関手の族は特異コホモロジーと自然同型である。
$M$ を可微分多様体とする。閉 $k$ 形式(微分形式)$\omega$ を、$C^\infty$ 級の特異 $k$ 単体 $\sigma$ 上の積分 $\sigma\mapsto\int_\sigma\omega$ に対応させる写像は、de Rhamコホモロジーから実係数特異コホモロジーへの同型
$$
H^k_{\mathrm{dR}}(M)\xrightarrow{\ \sim\ }H^k(M;\mathbb{R})
$$
を誘導し、外積とカップ積を対応させる環同型である。
証明は BT82 §15 に譲る($C^\infty$ 級特異鎖のコホモロジーが通常の特異コホモロジーと一致することも含む)。Stokesの定理 $\int_\sigma d\eta=\int_{\partial\sigma}\eta$ が「積分は余鎖写像である」ことを意味し、これが定理の出発点である。複素多様体では、これにHodge分解を重ねることで特異コホモロジーに Hodge構造 が入る。代数多様体の場合の代数的 de Rham コホモロジーとの比較は de Rhamコホモロジー を参照。
証明は Bre97 III.1 に譲る(特異余鎖の前層 $U\mapsto C^n(U;A)$ の層化 $\mathcal{S}^\bullet$ が、局所可縮性により $\underline{A}$ の非輪状分解になること、パラコンパクト性により $C^\bullet(X;A)\to\Gamma(X,\mathcal{S}^\bullet)$ がコホモロジーの同型を誘導することを使う)。パラコンパクト Hausdorff 空間では層コホモロジーは Čechコホモロジー とも一致するので、この仮定のもとで特異・Čech・層の 3 つのコホモロジーは一致する。局所可縮性を外すと ex-singular-cohomology-warsaw のように特異コホモロジーだけが食い違う。代数幾何学の比較定理(エタールコホモロジーと特異コホモロジーの一致、代数的 de Rham コホモロジーとの一致)で「複素コホモロジー $H^n(X^{\mathrm{an}},\mathbb{C})$」というときは、この同型を通じて定数層の層コホモロジーと特異コホモロジーを同一視している。
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