二元二次形式(binary quadratic form)とは、整数 $a,b,c$ による 2 変数の 2 次の同次式 $ax^2+bxy+cy^2$ のことで、判別式 $D=b^2-4ac$ をもつ。行列式 $1$ の整数の置き換えで移り合う形式は固有同値といい、同じ整数を表す。$n$ を固有に表す判別式 $D$ の形式があることは $b^2\equiv D\pmod{4\lvert n\rvert}$ が解をもつことと同値であり、正定値な形式はどれもただ 1 つの簡約形式($\lvert b\rvert\le a\le c$)と固有同値なので、類数 $h(D)$ は有限である。類数 $1$ の判別式では、$x^2+y^2$ や $x^2+2y^2$ で表される素数が合同式だけで決まる。
前提知識: 2次形式と2次曲線の判別式, Bézoutの等式, Legendre記号
$x^2+y^2$、$x^2+xy+y^2$、$x^2+5y^2$ のように、整数係数で 2 変数の 2 次の同次式を 二元二次形式 という。「どんな素数が $x^2+y^2$ の形に書けるか」という Fermat の問いは、二元二次形式がどんな整数をとるかという問題である。変数を行列式 $1$ の整数の置き換えで取り替えても、形式がとる値の全体は変わらない。そこで、置き換えで移り合う形式を同じものとみなし、その同値類ごとに 1 つずつ標準的な代表を選ぶことが理論の中心になる。
この記事では、固有同値(行列式 $1$ の置き換えによる同値)を定め、整数を「固有に表す」ことを同値な形式の言葉で言い換える(thm-bqf-proper-rep)。そこから、判別式 $D$ のどれかの形式が $n$ を固有に表すための合同式の条件を導く(thm-bqf-rep-criterion)。次に、正定値な形式がどれもただ 1 つの簡約形式と固有同値であることを示し(thm-bqf-reduction-existence、thm-bqf-reduction-unique)、類数が有限であることを導く(cor-bqf-finite)。最後に、類数が $1$ の判別式について、素数が主形式で表せる条件を求める(cor-bqf-prime-rep)。判別式の定義と、置き換えによる判別式の変化、整数係数の形式の同値(行列式 $\pm1$)の基本は 2次形式と2次曲線の判別式 の記事にあり、ここでは見出しで引く。
整数 $a,b,c$ について、$f(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ を(整数係数の)二元二次形式(binary quadratic form)といい、$(a,b,c)$ と略記する。$D:=b^2-4ac$ を $f$ の 判別式 という。$\gcd(a,b,c)=1$ のとき $f$ は 原始的 であるという。実数 $(x,y)\ne(0,0)$ でつねに $f(x,y)>0$ となるとき、$f$ は 正定値 であるという。
$D$ を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ であり(2次形式と2次曲線の判別式 の記事の命題「判別式を 4 で割った余り」)、$f$ が正定値であることは $D < 0$ かつ $a>0$ と同値である(同記事の定理「2 次形式の符号と判別式」)。
整数を成分とする $2\times2$ 行列で行列式が $1$ のもの全体を $\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ と書く。$\gamma=\begin{pmatrix}p&q\\r&s\end{pmatrix}\in\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ に対し
$$
f^\gamma(x,y):=f(px+qy,\ rx+sy)
$$
とおく。$f^\gamma$ も整数係数の二元二次形式で、判別式は $f$ と同じである(同記事の定理「変数変換と判別式」により $(ps-qr)^2=1$ 倍になる)。
列ベクトル $v=(x,y)^{\top}$ を使うと $f^\gamma(v)=f(\gamma v)$ なので、$(f^\gamma)^\delta(v)=f^\gamma(\delta v)=f(\gamma\delta v)=f^{\gamma\delta}(v)$ である。単位行列では $f$ に戻り、$\gamma\in\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ の逆行列 $\begin{pmatrix}s&-q\\-r&p\end{pmatrix}$ も $\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ に入るので、$\sim$ は同値関係である。また $\gamma$ は $\mathbb{Z}^2$ の全単射を与え、$\gcd(x,y)=1$ の組を $\gcd=1$ の組に写す($\gamma$ も $\gamma^{-1}$ も整数の組を整数の組に写すので、$\gamma v$ の成分の公約数は $v$ の成分を割る)。よって固有同値な形式は、表す整数も固有に表す整数も同じである。係数の最大公約数も変わらない($f^\gamma$ の係数は $a,b,c$ の整数係数の 1 次式で、逆も同様だから)ので、原始的であることも固有同値で保たれる。
正定値な形式 $(a,b,c)$ が
$$
\lvert b\rvert\le a\le c,\qquad\text{かつ}\quad\lvert b\rvert=a\ \text{または}\ a=c\ \text{のときは}\ b\ge0
$$
を満たすとき 簡約形式(reduced form)であるという。条件は「$-a < b\le a\le c$ で、$a=c$ なら $b\ge0$」と言っても同じである。$D < 0$ について、判別式 $D$ の原始的で正定値な形式の固有同値類の個数を 類数 といい、$h(D)$ と書く。
判別式 $D$ の形式のうち、$a=1$ のもの($D\equiv0\pmod4$ なら $(1,0,-D/4)$、$D\equiv1\pmod4$ なら $(1,1,(1-D)/4)$)を 主形式 という。$D\le-3$ のとき主形式は簡約形式である。
正定値な形式 $(a,b,c)$ に、方程式 $f(z,1)=az^2+bz+c=0$ の上半平面の根 $z_f=\frac{-b+\sqrt{D}}{2a}$($\sqrt D=i\sqrt{\lvert D\rvert}$)を対応させると、$\gamma$ で置き換えることは $z_f$ を 1 次分数変換で動かすことに当たる。$z_f$ の実部は $-b/(2a)$、絶対値の 2 乗は $c/a$ なので、簡約の条件 $\lvert b\rvert\le a\le c$ は「$z_f$ の実部が $-\frac12$ 以上 $\frac12$ 以下で、絶対値が $1$ 以上」という条件、すなわち $z_f$ が上半平面のある決まった領域(モジュラー群の基本領域)に入ることである。境界の上の点を片側だけ残すのが「$b\ge0$」の条件である。簡約の手順は、平行移動 $z\mapsto z+t$ と反転 $z\mapsto-1/z$ で点を基本領域へ押し込むことに対応する(Voi21 §35.2、pp. 655–656 はこの見方で説明している)。
$f=10x^2+34xy+29y^2$ の判別式は $34^2-4\cdot10\cdot29=1156-1160=-4$ である。$x\mapsto x-2y$ と置き換えると $b$ は $34+2\cdot10\cdot(-2)=-6$ になり、$c$ は $f(-2,1)=40-68+29=1$ になって $(10,-6,1)$ を得る。$(x,y)\mapsto(-y,x)$ で $(1,6,10)$ に移り、$x\mapsto x-3y$ で $b=6-6=0$、$c=9-18+10=1$ となって $(1,0,1)=x^2+y^2$ に着く。したがって $10x^2+34xy+29y^2\sim x^2+y^2$ である。とくに $f$ がとる値は $x^2+y^2$ がとる値と同じで、たとえば $f(1,-1)=10-34+29=5=1^2+2^2$ である。
cor-bqf-finite の手順で原始的な簡約形式を数え上げると、次のようになる。
| $D$ | 原始的な簡約形式 | $h(D)$ |
|---|---|---|
| $-3$ | $(1,1,1)$ | $1$ |
| $-4$ | $(1,0,1)$ | $1$ |
| $-7$ | $(1,1,2)$ | $1$ |
| $-8$ | $(1,0,2)$ | $1$ |
| $-12$ | $(1,0,3)$ | $1$ |
| $-15$ | $(1,1,4)$, $(2,1,2)$ | $2$ |
| $-20$ | $(1,0,5)$, $(2,2,3)$ | $2$ |
| $-23$ | $(1,1,6)$, $(2,1,3)$, $(2,-1,3)$ | $3$ |
| $-56$ | $(1,0,14)$, $(2,0,7)$, $(3,2,5)$, $(3,-2,5)$ | $4$ |
$D=-12$ の $(2,2,2)$ は簡約形式だが原始的でないので数えない。$D=-23$ では、$(2,1,3)$ と $(2,-1,3)$ が別々に数えられる(「条件を外した反例」の節の表の 2 行目)。
二元二次形式 $f$ と整数 $n$ について、次は同値である。
2 ⇒ 1. $g:=(n,b',c')$ は $g(1,0)=n$ で、$\gcd(1,0)=1$ なので $n$ を固有に表す。定義の後の段落で見たとおり、固有同値な形式は同じ整数を固有に表すので、$f$ も $n$ を固有に表す。
1 ⇒ 2. $f(p,r)=n$、$\gcd(p,r)=1$ とする。Bézoutの等式 により $ps-rq=1$ となる整数 $q,s$ がある($\gcd(p,r)=1$ から $pu+rv=1$ となる $u,v$ をとり、$s=u$、$q=-v$ とおく)。$\gamma:=\begin{pmatrix}p&q\\r&s\end{pmatrix}$ は $\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ に入り、$f^\gamma$ の $x^2$ の係数は $f^\gamma(1,0)=f(p,r)=n$ である。よって $f^\gamma=(n,b',c')$ の形で、$f\sim f^\gamma$ である。$\square$
$D$ と $n\ne0$ を整数とする。判別式 $D$ のある二元二次形式が $n$ を固有に表すことと、$b^2\equiv D\pmod{4\lvert n\rvert}$ を満たす整数 $b$ があることは同値である。このとき $c:=(b^2-D)/(4n)$ とおくと、判別式 $D$ の形式 $(n,b,c)$ が $n$ を固有に表す。さらに、$D < 0$、$n>0$ なら $(n,b,c)$ は正定値である。$n$ が素数 $p$ で $p\nmid D$ なら、$p$ を固有に表す判別式 $D$ の形式はどれも原始的である。
⇒. 判別式 $D$ の形式 $f$ が $n$ を固有に表すとすると、thm-bqf-proper-rep により $f\sim(n,b',c')$ である。固有同値な形式の判別式は等しいので $D=b'^2-4nc'$ であり、$b'^2\equiv D\pmod{4\lvert n\rvert}$ である。
⇐. $b^2\equiv D\pmod{4\lvert n\rvert}$ なら $c:=(b^2-D)/(4n)$ は整数で、$(n,b,c)$ は判別式 $b^2-4nc=D$ の形式であり、$(1,0)$ で $n$ を固有に表す。
後半. $D < 0$、$n>0$ なら $(n,b,c)$ は $x^2$ の係数が正で判別式が負なので正定値である。$n=p$ が素数で $p\nmid D$ とし、判別式 $D$ の形式 $f$ が $p$ を固有に表すとする。thm-bqf-proper-rep により $f\sim(p,b',c')$ で、$b'^2-4pc'=D$ である。$\gcd(p,b',c')$ は $p$ を割るので $1$ か $p$ である。$p$ なら $p\mid b'$、$p\mid c'$ から $p^2\mid b'^2-4pc'=D$ となり、$p\nmid D$ に反する。よって $(p,b',c')$ は原始的で、原始的であることは固有同値で保たれるので $f$ も原始的である。$\square$
この定理は、形式を 1 つに決めずに「判別式 $D$ のどれかの形式」で表せるかを、法 $4\lvert n\rvert$ の平方根の有無に帰着させる。どの形式で表されるかを決めるには、次の節の簡約の理論で同値類を見分ける必要がある。
正定値な二元二次形式は、どれもある簡約形式と固有同値である。
2 種類の置き換えを使う。整数 $t$ について $T_t:=\begin{pmatrix}1&t\\0&1\end{pmatrix}$、また $S:=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix}$ とおくと、どちらも $\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ に入り、$f=(a,b,c)$ について
$$
f^{T_t}=f(x+ty,\ y)=(a,\ b+2at,\ at^2+bt+c),\qquad f^S=f(-y,\ x)=(c,\ -b,\ a)
$$
である。正定値性は固有同値で保たれるので、途中に現れる形式はどれも正定値で、$x^2$ の係数は正の整数である。
段 1($b$ を $-a < b\le a$ に入れる). 長さ $2a$ の区間 $(-a,a]$ には $b$ と法 $2a$ で合同な整数がちょうど 1 つあるので、整数 $t$ をとって $T_t$ で置き換えると、$a$ を変えずに $-a < b\le a$ にできる。
段 2($a$ を減らす). 段 1 のあと $a>c$ なら $S$ で置き換えて $(c,-b,a)$ にする。$x^2$ の係数は $a$ から $c$ へ真に減る。段 1 に戻る。
$x^2$ の係数は正の整数で、段 2 を行うたびに真に減るので、段 2 は有限回で終わる。終わったとき $-a < b\le a$ かつ $a\le c$ である。最後に $a=c$ かつ $b < 0$ なら $S$ で $(c,-b,a)=(a,-b,a)$ にすると $0 < -b < a$ となる。こうして得た形式は簡約形式である。$\square$
一意性を示すために、簡約形式がとる小さい値を調べる。
$f=(a,b,c)$ を正定値で $\lvert b\rvert\le a\le c$ を満たす形式とする。整数 $x,y$ がどちらも $0$ でなければ $f(x,y)\ge a-\lvert b\rvert+c\ge c$ である。とくに、$(0,0)$ 以外の整数の組での $f$ の最小値は $a$ である。さらに $a < c$ なら、$f(x,y)=a$ となる整数の組は $(x,y)=\pm(1,0)$ だけである。
要点:$\lvert x\rvert\ge\lvert y\rvert$ なら交差項を $\lvert b\rvert x^2$ で押さえ、$f\ge(a-\lvert b\rvert)x^2+cy^2$ を使う。
$xy\ne0$ とし、$\lvert x\rvert\ge\lvert y\rvert\ge1$ とする。$\lvert bxy\rvert\le\lvert b\rvert x^2$ なので $f(x,y)\ge ax^2-\lvert b\rvert x^2+cy^2=(a-\lvert b\rvert)x^2+cy^2\ge(a-\lvert b\rvert)+c$ である($a-\lvert b\rvert\ge0$、$x^2\ge1$、$y^2\ge1$)。$\lvert y\rvert\ge\lvert x\rvert$ のときも同様に $f(x,y)\ge ax^2+(c-\lvert b\rvert)y^2\ge a+c-\lvert b\rvert$ である。$a-\lvert b\rvert\ge0$ なので右辺は $c$ 以上である。
$y=0$、$x\ne0$ なら $f(x,0)=ax^2\ge a$ で、等号は $x=\pm1$ のときに限る。$x=0$、$y\ne0$ なら $f(0,y)=cy^2\ge c\ge a$ である。以上から最小値は $a$ である。
$a < c$ なら、$xy\ne0$ では $f\ge c>a$、$x=0$ では $f\ge c>a$ なので、値 $a$ をとるのは $\pm(1,0)$ だけである。$\square$
固有同値な 2 つの簡約形式は等しい。したがって、正定値な形式はどれも、ただ 1 つの簡約形式と固有同値である。
$f=(a,b,c)$、$f'=(a',b',c')$ を簡約形式とし、$f'=f^\gamma$、$\gamma=\begin{pmatrix}p&q\\r&s\end{pmatrix}\in\mathrm{SL}_2(\mathbb{Z})$ とする。2 つは同じ判別式 $D$ をもつ。
段 1($a=a'$). $\gamma$ は $(0,0)$ 以外の整数の組全体を自身に全単射で写すので、$f$ と $f'$ が $(0,0)$ 以外の整数の組でとる値の全体は等しく、最小値も等しい。lem-bqf-minimum により最小値は $a$ と $a'$ なので、$a=a'$ である。
段 2($a < c$ の場合). $f'(1,0)=f(p,r)$ であり、左辺は $a'=a$ である。lem-bqf-minimum により $(p,r)=\pm(1,0)$ である。$ps-qr=1$ から、$(p,r)=(1,0)$ なら $s=1$、$(p,r)=(-1,0)$ なら $s=-1$ である。前者では $f'=f(x+qy,y)$、後者では $f'=f(-x+qy,-y)=f(x-qy,y)$($f(-v)=f(v)$ を使った)なので、どちらの場合もある整数 $t$ について $f'=f^{T_t}$、すなわち $b'=b+2at$ である。$b$ と $b'$ はどちらも長さ $2a$ の区間 $(-a,a]$ に入り、法 $2a$ で合同なので、$b'=b$ である。$c'=(b'^2-D)/(4a')=(b^2-D)/(4a)=c$ なので $f'=f$ である。
段 3($a=c$ の場合). $a' < c'$ なら、$f=f'^{\gamma^{-1}}$ に段 2 を $f'$ の側から当てはめて $f=f'$ を得る。$a'=c'$ なら $c'=a'=a=c$ であり、$b^2=D+4ac=D+4a'c'=b'^2$ から $\lvert b\rvert=\lvert b'\rvert$ である。簡約形式の条件により、$a=c$ から $b\ge0$、$a'=c'$ から $b'\ge0$ なので $b=b'$ であり、$f=f'$ である。
後半は thm-bqf-reduction-existence と合わせて得られる。$\square$
$D < 0$ とする。判別式 $D$ の簡約形式 $(a,b,c)$ は $1\le a\le\sqrt{\lvert D\rvert/3}$ を満たし、有限個しかない。したがって類数 $h(D)$ は有限で、判別式 $D$ の原始的な簡約形式の個数に等しい。
$\lvert b\rvert\le a\le c$ から $\lvert D\rvert=4ac-b^2\ge4a^2-a^2=3a^2$ なので $a\le\sqrt{\lvert D\rvert/3}$ である。各 $a$ について $b$ は $(-a,a]$ の整数で、$c=(b^2-D)/(4a)$ は $a,b$ で決まるので、組は有限個である。原始的で正定値な形式の各固有同値類は、thm-bqf-reduction-existence と thm-bqf-reduction-unique によりただ 1 つの簡約形式を含み、その簡約形式も原始的である(原始的であることは固有同値で保たれる)。逆に原始的な簡約形式はそれぞれ 1 つの類を定める。よって $h(D)$ は原始的な簡約形式の個数に等しい。$\square$
この証明は類数を計算する手順にもなっている。$a\le\sqrt{\lvert D\rvert/3}$ と $-a < b\le a$ の範囲で $b^2\equiv D\pmod{4a}$ となる組を探し、$c=(b^2-D)/(4a)\ge a$ と境界の符号の条件、原始性を確かめればよい(ex-bqf-class-numbers はこの手順で求めた)。この手順は Gau01 第 174 条(pp. 202–204)にも述べられている。
thm-bqf-rep-criterion と簡約の理論を合わせると、類数が $1$ の判別式では、どの素数が主形式で表されるかが合同式で決まる。
$D\le-3$ で $h(D)=1$ とし、$f_0$ を判別式 $D$ の主形式とする。$p$ を $D$ を割らない奇素数とすると、$p$ が $f_0$ で表されることと、$D$ が法 $p$ の平方剰余であること($\left(\frac Dp\right)=1$)は同値である。
⇒. $f_0(x,y)=p$ とすると、$d=\gcd(x,y)$ について $d^2$ が $p$ を割るので $d=1$ であり、$f_0$ は $p$ を固有に表す。thm-bqf-rep-criterion により $b^2\equiv D\pmod{4p}$ となる $b$ があり、とくに $b^2\equiv D\pmod p$ である。$p\nmid D$ なので $\left(\frac Dp\right)=1$ である。
⇐. $t^2\equiv D\pmod p$ となる整数 $t$ をとる。$t$ を $t+p$ に替えても法 $p$ では変わらず、$p$ が奇数なので偶奇が入れ替わる。そこで $t\equiv D\pmod2$ にとれる。$D\equiv0,1\pmod4$ なので、$t$ が偶数なら $D$ も偶数で $D\equiv0\equiv t^2\pmod4$、$t$ が奇数なら $D\equiv1\equiv t^2\pmod4$ である。$4$ と $p$ は互いに素なので $t^2\equiv D\pmod{4p}$ である。thm-bqf-rep-criterion により、判別式 $D$ の原始的で正定値な形式 $(p,t,c)$ が $p$ を表す。$h(D)=1$ なので、この形式は簡約形式 $f_0$ と固有同値であり(cor-bqf-finite)、固有同値な形式は同じ整数を表すので、$f_0$ も $p$ を表す。$\square$
ex-bqf-class-numbers の表で $h(D)=1$ の判別式に当てはめる。$\left(\frac Dp\right)$ の値は、Legendre記号 の記事の命題「Legendre 記号の計算規則」の乗法性・補充法則・相互法則から求まる。
| $D$ | 主形式 $f_0$ | $D$ を割らない奇素数 $p$ が $f_0$ で表される条件 |
|---|---|---|
| $-3$ | $x^2+xy+y^2$ | $p\equiv1\pmod3$ |
| $-4$ | $x^2+y^2$ | $p\equiv1\pmod4$ |
| $-7$ | $x^2+xy+2y^2$ | $p\equiv1,2,4\pmod7$ |
| $-8$ | $x^2+2y^2$ | $p\equiv1,3\pmod8$ |
たとえば $D=-8$ では $\left(\frac{-8}p\right)=\left(\frac{-2}p\right)=\left(\frac{-1}p\right)\left(\frac2p\right)$ で、補充法則から $p\equiv1,3\pmod8$ のとき $1$、$p\equiv5,7\pmod8$ のとき $-1$ である。実際 $3=1+2\cdot1^2$、$11=3^2+2\cdot1^2$、$17=3^2+2\cdot2^2$ である。$D=-4$ の行は Fermatの二平方定理 にほかならず、ここでの証明は同記事の証明とは別の道筋になっている。$D=-3$ の行は相互法則から $\left(\frac{-3}p\right)=\left(\frac p3\right)$ となることを使う。
類数が $2$ 以上だと、合同式の条件は「判別式 $D$ のどれかの形式で表される」ことしか決めない。判別式 $-20$ では、2 つの形式を合同式で見分けられる。
$p\ne2,5$ を素数とする。$p$ が $x^2+5y^2$ で表されることは $p\equiv1,9\pmod{20}$ と同値であり、$2x^2+2xy+3y^2$ で表されることは $p\equiv3,7\pmod{20}$ と同値である。
確認:$\left(\frac{-20}p\right)=\left(\frac{-5}p\right)=\left(\frac{-1}p\right)\left(\frac p5\right)$(相互法則で $\left(\frac5p\right)=\left(\frac p5\right)$)は、$p\equiv1,3,7,9\pmod{20}$ のとき $1$、$p\equiv11,13,17,19\pmod{20}$ のとき $-1$ である。prf-cor-bqf-prime-rep の「⇐」と同じ議論で、前者の $p$ は判別式 $-20$ の原始的で正定値な形式で表され、ex-bqf-class-numbers によりそれは $x^2+5y^2$ か $2x^2+2xy+3y^2$ と固有同値なので、どちらかで表される。後者の $p$ はどちらでも表されない(「⇒」と同じ議論)。
どちらで表されるかは法 $4$ と法 $5$ で決まる。$p=x^2+5y^2$ なら、法 $4$ で $p\equiv x^2+y^2$ は奇数なので $p\equiv1\pmod4$、法 $5$ で $p\equiv x^2\equiv\pm1$ なので、$p\equiv1,9\pmod{20}$ である。$p=2x^2+2xy+3y^2$ なら、$2p=(2x+y)^2+5y^2$ なので法 $5$ で $2p\equiv\pm1$、すなわち $p\equiv2,3\pmod5$ である。また $p$ が奇数なので $y$ は奇数で、$x$ と $x+y$ の一方は偶数だから $2x(x+y)\equiv0\pmod4$、$3y^2\equiv3\pmod4$ となり $p\equiv3\pmod4$ である。合わせて $p\equiv3,7\pmod{20}$ である。2 つの条件は両立しないので、上の同値が得られる。実際 $29=3^2+5\cdot2^2$、$41=6^2+5\cdot1^2$、$7=2+2+3$($x=y=1$)、$23=2\cdot1^2+2\cdot1\cdot(-3)+3\cdot(-3)^2$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 正定値($D < 0$) | $D=8$ の $x^2-2y^2$ と $-x^2+2y^2$ | $\lvert b\rvert\le\lvert a\rvert\le\lvert c\rvert$ を満たす代表が類ごとにただ 1 つ |
| 固有同値(行列式 $1$ の置き換え) | $D=-23$ の $2x^2+xy+3y^2$ と $2x^2-xy+3y^2$ | 行列式 $\pm1$ の置き換えで同値な簡約形式は等しい |
| thm-bqf-proper-rep の「固有に」 | $x^2+y^2$ と $4=2^2+0^2$ | $n$ を表すなら $(n,b',c')$ と固有同値 |
| $h(D)=1$ | $D=-20$ の $x^2+5y^2$ と $2x^2+2xy+3y^2$ | 同じ判別式の原始的で正定値な形式は固有同値 |
| cor-bqf-prime-rep の $h(D)=1$ | $D=-20$、$p=3$ | $\left(\frac Dp\right)=1$ なら主形式で表される |
各行の反例が、右の列の主張を破ることを確かめる。
1 行目:$\gamma=\begin{pmatrix}-1&2\\-1&1\end{pmatrix}$ は行列式 $-1+2=1$ で、$(-x+2y)^2-2(-x+y)^2=-x^2+2y^2$ なので、$x^2-2y^2\sim-x^2+2y^2$ である。どちらも $\lvert b\rvert\le\lvert a\rvert\le\lvert c\rvert$($0\le1\le2$)を満たすが、異なる形式である。不定な形式では最小値がなく、lem-bqf-minimum の議論が使えない。
2 行目:$x\mapsto-x$(行列式 $-1$)で $2x^2+xy+3y^2$ は $2x^2-xy+3y^2$ に移る。どちらも判別式 $-23$ の簡約形式で異なるので、thm-bqf-reduction-unique により固有同値でない。行列式 $\pm1$ の置き換えで類を数えると判別式 $-23$ の類は $2$ 個になるが、固有同値では $3$ 個である。
3 行目:判別式 $-4$ で $x^2$ の係数が $4$ の形式 $(4,b,c)$ があるとすると $b^2-16c=-4$ で、$b=2b_1$ と書けて $b_1^2\equiv-1\pmod4$ となるが、平方数を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ なので矛盾する。$x^2+y^2$ は $4$ を表すが、$4=x^2+y^2$ の整数解は $(\pm2,0)$、$(0,\pm2)$ だけで、どれも固有でない。
4 行目:$h(D)=1$ なら、類数の定義により判別式 $D$ の原始的で正定値な形式はすべて固有同値である。$D=-20$ では ex-bqf-class-numbers のとおり $h(-20)=2$ でこの条件が外れる。2 つの形式はどちらも原始的で正定値、判別式は $-20$ だが、$x^2+5y^2$ は $1$ を表し、$2x^2+2xy+3y^2$ は $1$ を表さない(2次形式と2次曲線の判別式 の記事の例「反例:判別式が等しくても同値とは限らない」)。固有同値な形式は同じ整数を表すので、2 つは固有同値でない。
5 行目:$-20\equiv1\pmod3$ なので $\left(\frac{-20}3\right)=1$ だが、$x^2+5y^2=3$ には整数解がない($y\ne0$ なら値は $5$ 以上、$y=0$ なら平方数)。$3$ は $2x^2+2xy+3y^2$ の $(0,1)$ での値である。
判別式 $D < 0$ の原始的で正定値な形式の固有同値類の全体は、判別式 $D$ の虚 2 次整環 $S=\mathbb{Z}\bigl[\frac{D+\sqrt D}2\bigr]$ の可逆な分数イデアルの類群 $\operatorname{Pic}(S)$ と、形式 $ax^2+bxy+cy^2$ の類をイデアル $\bigl(a,\frac{-b+\sqrt D}2\bigr)$ の類に写す対応で 1 対 1 に対応する(Voi21 §35.2、p. 656。この記事では証明しない)。この対応で群の構造を移すと、形式の類の全体は可換群になり、主形式の類が単位元になる。形式の言葉で書いたこの群の演算は、形式の 合成 と呼ばれる。$D$ が虚 2 次体の判別式のとき、$h(D)$ はその体の類数(イデアル類群)に等しい。たとえば $h(-20)=2$ は $\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$ の類数 $2$ に当たる。
Gauss は形式を $ax^2+2bxy+cy^2$($xy$ の係数が偶数)の形で扱い、$b^2-ac$ を行列式と呼んだ。負の行列式の形式の簡約は Gau01 第 171 条(pp. 196–198)にあり、そこでの簡約の条件は $xy$ の係数を偶数に限った場合の形である。この記事のように $xy$ の係数を奇数にも許す流儀では、$x^2+xy+y^2$ のような形式も扱える。また、行列式 $\pm1$ の置き換えによる同値(2次形式と2次曲線の判別式 の記事の定義「整数の 2 次形式の同値」)で類を数える流儀もあり、そのときは 2 行目の反例のように類の個数が変わることがある。判別式が正の形式(不定形式)の理論は、Pell方程式 の単数と結びつき、簡約の形も変わる。
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