Hales–Jewettの定理

同義語:Hales-Jewettの定理Hales–Jewett theorem

概要

Hales–Jewettの定理(Hales–Jewett theorem)とは、文字の個数 $k$ と色の数 $r$ を固定すると、ある長さ $n$ があって、$k$ 文字からなる長さ $n$ の語全体 $[k]^n$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、単色の組合せ直線(一部の座標を同時に $1,\dots,k$ と動かし、残りの座標を固定した $k$ 個の語)が現れる、という組合せ論の定理である。文字の個数に関する単純な帰納法による Shelah の証明がある。語を文字の和で整数に写すと van der Waerden の定理が、格子点に写すと多次元版の Gallai の定理が従う。$n$ 次元の三目並べが、十分大きな $n$ では引き分けで終わりえないことも意味する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: van der Waerdenの定理, 鳩の巣原理, 数学的帰納法

三目並べは $3\times3$ の盤で、縦・横・斜めのどれか 1 列を自分の印でそろえたほうが勝つ遊びである。この盤では、どちらの印もそろわないまま盤が埋まる(引き分けになる)ことがある(ex-hj-three-two)。ところが盤を $3\times3\times\cdots\times3$($n$ 次元、$3^n$ マス)に広げると、$n$ が十分大きければ、盤をすべて埋めたとき必ずどちらかの印が 1 列にそろい、引き分けはありえなくなる。これは、マスに $\{1,2,3\}^n$ の座標を付けたとき、ある特別な形の「列」(組合せ直線)が、盤をどう 2 色に塗っても単色で現れることから従う。
Hales–Jewett の定理 は、文字が $k$ 個、色が $r$ 個のとき、長さ $n$ が十分大きければ、$k$ 文字からなる長さ $n$ の語をどう $r$ 色に塗っても単色の組合せ直線が現れる、という定理である。A. W. Hales と R. I. Jewett が 1963 年に証明した(Hal12 p. 246、文献は p. 265 の [13])。数の大小も和も使わない純粋に組合せ的な主張でありながら、van der Waerdenの定理(単色の等差数列)やその多次元版である Gallai の定理をただちに導く。van der Waerden の定理は整数についての定理というより有限の文字の列についての定理とみるべきで、Hales–Jewett の定理はその本質を取り出したものだ、という見方が知られている(Hal12 p. 261 の注が Graham–Rothschild–Spencer の言葉として紹介している)。
この記事では、組合せ直線を定義し、文字の個数 $k$ に関する単純な帰納法による Shelah の証明を述べ、系として van der Waerden の定理と Gallai の定理を導く。

定義

$k,n\ge1$ とし、$[k]:=\{1,2,\dots,k\}$ とおく。$[k]^n$ の元 $w=(w_1,\dots,w_n)$ を、文字 $1,\dots,k$ からなる長さ $n$ の 語 という。集合 $X$ の $r$ 色の塗り分け とは写像 $\chi\colon X\to\{1,\dots,r\}$ のことで、$Y\subset X$ の上で $\chi$ が一定のとき $Y$ は 単色 であるという(van der Waerdenの定理 の記事と同じ言葉づかい)。

組合せ直線

文字でない記号 $\ast$ を 1 つ用意する。$\tau=(\tau_1,\dots,\tau_n)\in([k]\cup\{\ast\})^n$ で、少なくとも 1 つの成分が $\ast$ であるものを 変数語 といい、$\tau_i=\ast$ となる番号 $i$ の集合を $V(\tau)\subset\{1,\dots,n\}$ と書いて $\tau$ の 動く座標 とよぶ。$x\in[k]$ について、$\tau$ の $\ast$ をすべて $x$ に置き換えた語を $\tau(x)\in[k]^n$ と書く。集合
$$ L_\tau:=\{\tau(1),\tau(2),\dots,\tau(k)\}\subset[k]^n $$
を $\tau$ の定める 組合せ直線(combinatorial line。組合せ論的な直線ともいう)という。

組合せ直線では、動く座標がすべて同時に同じ文字 $1,2,\dots,k$ をとり、残りの座標は固定されている。$V(\tau)$ は空でないので $\tau(1),\dots,\tau(k)$ は相異なる。$k\ge2$ なら $\tau$ は集合 $L_\tau$ から決まる($L_\tau$ の元どうしで値が異なりうる座標が $V(\tau)$ であり、残りの座標の値は $L_\tau$ のどの元からも読める)ので、$[k]^n$ の組合せ直線はちょうど $(k+1)^n-k^n$ 本ある。

3×3 の盤

$[3]^2$ の組合せ直線は、$\tau=(a,\ast)$($a=1,2,3$)による 3 本の「行」、$\tau=(\ast,b)$ による 3 本の「列」、$\tau=(\ast,\ast)$ による対角線 $\{(1,1),(2,2),(3,3)\}$ の $7=4^2-3^2$ 本である。もう一方の対角線 $\{(1,3),(2,2),(3,1)\}$ は組合せ直線ではない。第 1 座標が増えるとき第 2 座標が減るからである。三目並べの 8 本の列のうち、組合せ直線は 7 本である。

Hales–Jewett数

$k,r\ge1$ とする。$[k]^n$ のどの $r$ 色の塗り分けにも単色の組合せ直線があるような最小の正の整数 $n$ を Hales–Jewett 数 といい、$\mathrm{HJ}(k,r)$ と書く。

長さ $n$ でこの性質が成り立てば長さ $n+1$ でも成り立つ。$[k]^{n+1}$ の塗り分けを、最後の文字が $1$ の語 $(w,1)$($w\in[k]^n$)に制限して $[k]^n$ の塗り分けとみなし、そこで単色の組合せ直線 $L_\tau$ をとれば、変数語 $(\tau,1)$ の組合せ直線が単色になるからである。したがって $\mathrm{HJ}(k,r)$ が存在すれば、$n\ge\mathrm{HJ}(k,r)$ のすべての $n$ でこの性質が成り立つ。

定理

Hales–Jewettの定理

$k,r\ge1$ とする。ある正の整数 $n$ があって、$[k]^n$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、単色の組合せ直線がある。すなわち $\mathrm{HJ}(k,r)$ は存在する。

証明の方針と三目並べ

証明は prf-hj-main で、$k$ に関する帰納法によって与える(帰納法の一段が thm-hj-step)。冒頭の三目並べの主張は $k=3$、$r=2$ の場合である。$n\ge\mathrm{HJ}(3,2)$ なら、$3^n$ マスの盤をすべて埋めた局面は $[3]^n$ の 2 色の塗り分けなので単色の組合せ直線をもち、それは盤の 1 列である。

小さい場合

2文字以下の場合

$r\ge1$ について $\mathrm{HJ}(1,r)=1$、$\mathrm{HJ}(2,r)=r$ である。

$[1]^1$ はただ 1 つの語 $(1)$ からなり、変数語 $(\ast)$ の組合せ直線 $\{(1)\}$ はいつも単色である。よって $\mathrm{HJ}(1,r)=1$ である。
$k=2$ とする。$j=0,1,\dots,r$ について、最初の $j$ 文字が $2$、残りの $r-j$ 文字が $1$ の語 $u_j\in[2]^r$ を考える。$[2]^r$ を $r$ 色で塗ると、$r+1$ 個の語 $u_0,\dots,u_r$ のうち 2 つ $u_i,u_j$($i< j$)は同じ色である(鳩の巣原理)。最初の $i$ 文字が $2$、第 $i+1$ から第 $j$ 文字が $\ast$、残りが $1$ の変数語 $\tau$ をとると、$\tau(1)=u_i$、$\tau(2)=u_j$ なので $L_\tau$ は単色である。よって $\mathrm{HJ}(2,r)\le r$ である。
逆に $r\ge2$ のとき、$[2]^{r-1}$ の語を、含まれる文字 $2$ の個数($0$ から $r-1$ までの $r$ 通り)で塗る。どの組合せ直線 $L_\tau$ でも、$\tau(2)$ は $\tau(1)$ より文字 $2$ を $\lvert V(\tau)\rvert\ge1$ 個多く含むので、$L_\tau$ は単色でない。よって $\mathrm{HJ}(2,r)>r-1$ である。$r=1$ では $\mathrm{HJ}(2,1)\ge1$ は明らかである。$\square$

3文字・2色の場合の下界

$[3]^2$ の 2 色の塗り分け
$$ \begin{array}{ccc} \text{赤}&\text{赤}&\text{青}\\ \text{赤}&\text{青}&\text{赤}\\ \text{青}&\text{赤}&\text{赤} \end{array} $$
(第 $a$ 行第 $b$ 列が語 $(a,b)$ の色)を考える。3 本の行、3 本の列、対角線 $(1,1),(2,2),(3,3)$ のどれも両方の色を含むので、単色の組合せ直線はない。よって $\mathrm{HJ}(3,2)\ge3$ である。もう一方の対角線 $\{(1,3),(2,2),(3,1)\}$ は青で単色だが、組合せ直線ではない(ex-hj-board)。
三目並べの 8 本の列のどれも単色でない塗り分けもある。たとえば第 1 行から順に「赤青赤」「赤青青」「青赤赤」と塗ると、行・列・2 本の対角線のどれも両方の色を含む。赤を先手の印、青を後手の印とみれば(赤 5 マス、青 4 マス)、これは盤が埋まって引き分けになった局面である。

Shelah による証明

$k$ 文字の場合から $k+1$ 文字の場合に進む。考え方は、$[k+1]^N$ の塗り分けから、文字 $k$ と文字 $k+1$ を区別しない(片方を他方に替えても色が変わらない)塗り分けを $[k+1]^n$ の上に作ることである。そうすれば $[k]^n$ の単色の組合せ直線に、動く座標を $k+1$ にした語を加えても単色のままになる。この「区別しない」性質を作るのが次の補題で、S. Shelah による(Hal12 p. 261 の注。そこでは Shelah の鳩の巣補題とよばれている)。
正の整数 $m$ と $0\le c\le m$ について、最初の $c$ 文字が $k+1$、残りの $m-c$ 文字が $k$ の語を $t^{(m)}_c\in[k+1]^m$ と書く。語 $u\in[k+1]^p$ と $v\in[k+1]^q$ を並べた語を $uv\in[k+1]^{p+q}$ と書く。

Shelahの鳩の巣補題

$k,r,n\ge1$ とする。正の整数 $N_n,N_{n-1},\dots,N_1$ をこの順に
$$ N_n:=r^{(k+1)^{n-1}},\qquad N_i:=r^{(k+1)^{\,i-1+N_{i+1}+\cdots+N_n}}\quad(i=n-1,\dots,1) $$
で定め、$N:=N_1+\cdots+N_n$ とおく。$[k+1]^N$ の語を $w=w^{(1)}w^{(2)}\cdots w^{(n)}$($w^{(i)}\in[k+1]^{N_i}$ を 第 $i$ 区画 とよぶ)と区切って書く。
このとき $[k+1]^N$ の任意の $r$ 色の塗り分け $\chi$ について、整数 $0\le a_i< b_i\le N_i$($i=1,\dots,n$)で次の性質をもつものがある。$x\in[k+1]$ について、第 $1$ から第 $a_i$ 文字が $k+1$、第 $a_i+1$ から第 $b_i$ 文字が $x$、残りが $k$ の語を $\beta_i(x)\in[k+1]^{N_i}$ とおくとき、すべての $i$、すべての $x_1,\dots,x_{i-1}\in[k+1]$ とすべての語 $v_j\in[k+1]^{N_j}$($j=i+1,\dots,n$)について
$$ \chi\bigl(\beta_1(x_1)\cdots\beta_{i-1}(x_{i-1})\,t^{(N_i)}_{b_i}\,v_{i+1}\cdots v_n\bigr)=\chi\bigl(\beta_1(x_1)\cdots\beta_{i-1}(x_{i-1})\,t^{(N_i)}_{a_i}\,v_{i+1}\cdots v_n\bigr) $$
が成り立つ。

定義から $\beta_i(k+1)=t^{(N_i)}_{b_i}$、$\beta_i(k)=t^{(N_i)}_{a_i}$ である。つまり補題は、第 $i$ 区画を $\beta_i(k+1)$ から $\beta_i(k)$ に替えても、前の区画が $\beta_j$ の形でありさえすれば、後ろの区画が何であっても色が変わらないことを述べている。

$(a_i,b_i)$ を $i=1,2,\dots,n$ の順に選ぶ。$(a_j,b_j)$($j< i$)がすでに選ばれ、$\beta_1,\dots,\beta_{i-1}$ が定まっているとする。組 $(x_1,\dots,x_{i-1},v_{i+1},\dots,v_n)$($x_j\in[k+1]$、$v_j\in[k+1]^{N_j}$)を 文脈 とよぶと、文脈は
$$ M_i:=(k+1)^{i-1}\cdot(k+1)^{N_{i+1}+\cdots+N_n} $$
通りある。各 $c\in\{0,1,\dots,N_i\}$ に、文脈ごとの色
$$ \chi\bigl(\beta_1(x_1)\cdots\beta_{i-1}(x_{i-1})\,t^{(N_i)}_{c}\,v_{i+1}\cdots v_n\bigr) $$
を並べた $\{1,\dots,r\}$ の元の $M_i$ 個組を対応させる。この組は $r^{M_i}=N_i$ 通りしかないが、$c$ は $N_i+1$ 通りあるので、鳩の巣原理により $a< b$ で同じ組が対応するものがある。それを $(a_i,b_i)$ とすれば、$i$ についての等式がすべての文脈で成り立つ。$i$ についての等式は $(a_j,b_j)$($j\le i$)だけで決まり、後で選ぶ $(a_j,b_j)$($j>i$)には影響されない。$\square$

帰納法の一段

$k,r\ge1$ とし、$\mathrm{HJ}(k,r)$ が存在すると仮定する。$n:=\mathrm{HJ}(k,r)$ とし、$N$ を lem-hj-shelah のとおりに定める。このとき $[k+1]^N$ のどの $r$ 色の塗り分けにも単色の組合せ直線がある。とくに $\mathrm{HJ}(k+1,r)\le N$ である。

$\chi$ を $[k+1]^N$ の $r$ 色の塗り分けとし、lem-hj-shelah の $a_i< b_i$ と $\beta_i$ をとる。写像 $\Phi\colon[k+1]^n\to[k+1]^N$ を
$$ \Phi(y):=\beta_1(y_1)\beta_2(y_2)\cdots\beta_n(y_n) $$
で定め、$[k+1]^n$ の塗り分け $\chi':=\chi\circ\Phi$ を考える。
段 1(文字 $k$ と $k+1$ を区別しない)。 $y,y'\in[k+1]^n$ が第 $i$ 座標だけで異なり、$y_i=k+1$、$y'_i=k$ とする。$\Phi(y)$ と $\Phi(y')$ は第 $i$ 区画だけが異なり、それぞれ $t^{(N_i)}_{b_i}$、$t^{(N_i)}_{a_i}$ である。lem-hj-shelah を $x_j:=y_j$($j< i$)、$v_j:=\beta_j(y_j)$($j>i$)として使うと $\chi'(y)=\chi'(y')$ である。$y\in[k+1]^n$ の文字 $k+1$ をすべて $k$ に替えた語を $\bar y\in[k]^n$ とすると、1 座標ずつ替えていけば、この事実から $\chi'(y)=\chi'(\bar y)$ が従う。
段 2($k$ 文字の直線を延ばす)。 $\chi'$ を $[k]^n$ に制限すると $r$ 色の塗り分けであり、$n=\mathrm{HJ}(k,r)$ なので、変数語 $\sigma\in([k]\cup\{\ast\})^n$ で $\chi'(\sigma(1))=\cdots=\chi'(\sigma(k))$ となるものがある。$\sigma$ の $\ast$ に $k+1$ を代入した語 $\sigma(k+1)\in[k+1]^n$ については $\overline{\sigma(k+1)}=\sigma(k)$ なので、段 1 から $\chi'(\sigma(k+1))=\chi'(\sigma(k))$ である。よって $\chi'$ は $\sigma(1),\dots,\sigma(k+1)$ の上で一定である。
段 3($\Phi$ で写す)。 長さ $N$ の変数語 $\tau$ を区画ごとに次のように定める。$\sigma_i\in[k]$ なら第 $i$ 区画は $\beta_i(\sigma_i)$ とする。$\sigma_i=\ast$ なら、第 $i$ 区画は第 $1$ から第 $a_i$ 文字が $k+1$、第 $a_i+1$ から第 $b_i$ 文字が $\ast$、残りが $k$ とする。$V(\sigma)$ は空でなく $a_i< b_i$ なので、$\tau$ は少なくとも 1 つの $\ast$ を含む。定義から、すべての $x\in[k+1]$ について $\tau(x)=\Phi(\sigma(x))$ である。したがって
$$ \chi(\tau(x))=\chi'(\sigma(x))\qquad(x=1,\dots,k+1) $$
はすべて等しく、組合せ直線 $L_\tau\subset[k+1]^N$ は単色である。$\square$

文字の個数に関する帰納法

$r$ を固定し、$k$ に関する帰納法で示す。$k=1$ では prop-hj-small により $\mathrm{HJ}(1,r)=1$ が存在する。$\mathrm{HJ}(k,r)$ が存在すれば、thm-hj-step により $\mathrm{HJ}(k+1,r)$ も存在する。$\square$

得られる上界と証明の系譜

lem-hj-shelah の $N_1$ は $r$ の肩に $(k+1)$ の冪を積み上げた数で、非常に大きい。それでも各段で使うのは指数関数と鳩の巣原理だけであり、上界の増え方は帰納法を二重に組む証明よりずっと穏やかである。Hales と Jewett の元の証明は二重の帰納法で非常に急速に増える上界を与えたが、Shelah は単純な帰納法による新しい証明でよりよい上界を得た(Hal12 p. 261 の注)。Shelah が van der Waerden 数の原始再帰的な上界を与えたことは van der Waerdenの定理 の記事にある。Hal12 定理 11.3(p. 247、証明 pp. 247–249)は、Shelah の鳩の巣補題を有限 Ramsey の定理に置き換えた Matet による形の証明を与えている(同書 p. 261)。

系

組合せ直線を整数や格子点に写すと、動く座標の個数が等差数列の公差や図形の拡大率になる。

単色の等差数列

$r,k\ge1$ とし、$n:=\mathrm{HJ}(k,r)$ とする。$[kn]=\{1,\dots,kn\}$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、単色の $k$ 項の等差数列(公差 $1$ 以上)がある(van der Waerdenの定理)。とくに van der Waerden 数について $W(r,k)\le k\,\mathrm{HJ}(k,r)$ である。

$\psi\colon[k]^n\to[kn]$ を $\psi(w):=w_1+w_2+\cdots+w_n$ で定める(値は $n$ 以上 $kn$ 以下)。$[kn]$ の $r$ 色の塗り分け $\chi$ に対し、$\chi\circ\psi$ は $[k]^n$ の $r$ 色の塗り分けなので、単色の組合せ直線 $L_\tau$ がある。$C:=\sum_{i\notin V(\tau)}\tau_i$、$d:=\lvert V(\tau)\rvert\ge1$ とおくと
$$ \psi(\tau(x))=C+xd\qquad(x=1,\dots,k) $$
であり、$\{C+d,C+2d,\dots,C+kd\}\subset[kn]$ は公差 $d$ の $k$ 項の等差数列で、$\chi$ について単色である。$\square$

van der Waerdenの定理 の記事の証明(色の集中による $k$ についての帰納法)と比べると、ここでは等差数列の構造が組合せ直線の像として自動的に現れ、帰納法は文字の個数について 1 回だけ行えばよい。

Gallaiの定理

$d\ge1$ とし、$P\subset\mathbb{Z}^d$ を空でない有限集合、$r\ge1$ とする。ある有限集合 $T\subset\mathbb{Z}^d$ があって、$T$ をどのように $r$ 色で塗り分けても、$a\in\mathbb{Z}^d$ と正の整数 $\lambda$ で
$$ a+\lambda P:=\{a+\lambda p\mid p\in P\}\subset T $$
が単色になるものがある。とくに $\mathbb{Z}^d$ を有限個の色で塗り分けると、$P$ を正の整数倍に拡大して平行移動した単色の図形 $a+\lambda P$ が必ずある。

$P=\{p_1,\dots,p_k\}$(相異なる)とし、$n:=\mathrm{HJ}(k,r)$ とおく。$\psi\colon[k]^n\to\mathbb{Z}^d$ を $\psi(w):=p_{w_1}+p_{w_2}+\cdots+p_{w_n}$ で定め、$T:=\psi([k]^n)$ とおく。$T$ の $r$ 色の塗り分け $\chi$ に対し、$\chi\circ\psi$ の単色の組合せ直線 $L_\tau$ をとる。$a:=\sum_{i\notin V(\tau)}p_{\tau_i}$、$\lambda:=\lvert V(\tau)\rvert\ge1$ とおくと
$$ \psi(\tau(x))=a+\lambda p_x\qquad(x=1,\dots,k) $$
なので、$a+\lambda P=\psi(L_\tau)\subset T$ は単色である。後半は $\mathbb{Z}^d$ の塗り分けを $T$ に制限すればよい。$\square$

Gallaiの定理の例
  1. $d=1$、$P=\{1,2,\dots,k\}$ のとき、$a+\lambda P$ は公差 $\lambda$ の $k$ 項の等差数列であり、cor-hj-vdw と同じ主張になる。
  2. $d=2$、$P=\{(0,0),(1,0),(0,1),(1,1)\}$ のとき、平面の格子点を有限個の色で塗ると、辺が座標軸に平行な正方形の 4 頂点で単色のものが必ずある。
  3. $d=2$、$P=\{(0,0),(1,0),(0,1)\}$ のとき、直角をはさむ 2 辺が座標軸に平行で長さの等しい直角二等辺三角形の 3 頂点で単色のものが必ずある。

例と反例

次の表の各行は、定理の条件を 1 つだけ外すと結論が成り立たなくなる例である(確かめは ex-hj-counterexamples)。

外す条件反例成り立たなくなること
thm-hj-main の「色の数 $r$ を $n$ によらず固定」$[2]^n$ を文字 $2$ の個数で $n+1$ 色に塗る単色の組合せ直線がある
thm-hj-main の「文字が有限個」文字の集合を $\mathbb{Z}_{>0}$ にし、語を最大の文字の偶奇で 2 色に塗る単色の(無限個の語からなる)組合せ直線がある
thm-hj-main の結論の「動く座標を選べる」$k\ge2$、$[k]^n$ で $(1,\dots,1)$ だけを赤、ほかを青に塗る動く座標がすべての座標である単色の組合せ直線がある
thm-hj-gallai の「拡大率 $\lambda$ を選べる」$d=1$、$P=\{0,1\}$、$\mathbb{Z}$ を偶奇で塗る$\lambda=1$ の単色の $a+P$ がある
反例の確かめ

1 行目は prf-hj-small の後半と同じ議論による。$\tau(2)$ は $\tau(1)$ より文字 $2$ を多く含む。
2 行目:文字の集合を $\mathbb{Z}_{>0}$ にすると、変数語 $\tau$ の組合せ直線は無限集合 $\{\tau(x)\mid x\in\mathbb{Z}_{>0}\}$ になる。$x$ が $\tau$ の固定された文字のどれよりも大きければ、$\tau(x)$ の最大の文字は $x$ である。そのような $x$ には偶数も奇数もあるので、この直線は両方の色を含む。
3 行目:動く座標がすべての座標である変数語は $(\ast,\dots,\ast)$ だけで、その組合せ直線 $\{(x,\dots,x)\mid x\in[k]\}$ は赤の $(1,\dots,1)$ と青の $(2,\dots,2)$ を含む。
4 行目:$a+P=\{a,a+1\}$ は偶数と奇数を 1 つずつ含む。

補足

密度版

色の代わりに「大きい割合」を仮定する 密度版の Hales–Jewett の定理 も成り立つ。すなわち、$k\ge1$ と $\delta>0$ について、$n$ が十分大きければ、$\lvert A\rvert\ge\delta k^n$ をみたす任意の $A\subset[k]^n$ は組合せ直線を含む。これはエルゴード理論を使って Furstenberg と Katznelson が証明し、のちに組合せ論的な証明が Polymath 計画で見つかった(Zha23 p. 6。この記事では証明しない)。$[k]^n$ を $r$ 色で塗れば、ある色の語は $k^n/r$ 個以上あるので、密度版は thm-hj-main を含む。同じ箇所で Zha23 は、密度版から Szemerédiの定理 の別証明が得られることを述べている。

関連項目

参考文献

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