de Longchamps点(de Longchamps point)とは、三角形の垂心 $H$ を外心 $O$ に関して点対称に移した点 $L$ である。各頂点を通り向かいの辺に平行な 3 本の直線でできる三角形(倍の三角形)は、重心を中心とする比 $-2$ の相似拡大でもとの三角形から得られ、$L$ はその垂心、$H$ はその外心になる。正三角形でなければ $L$ は Euler 線の上にあり、重心 $G$ について $LG=\frac43OH$ である。また、各頂点を中心とし向かいの辺の長さを半径とする 3 つの円に関する $L$ の方べきはどれも $16R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ に等しく($R$ は外接円の半径、$a,b,c$ は辺の長さ)、$L$ はこの 3 つの円の根心である。
前提知識: Euler線, 三角形の垂心, 根軸と根心, 位置ベクトルと内分点
三角形の外心 $O$、重心 $G$、垂心 $H$ は一直線上に並び、$G$ は線分 $OH$ を $1:2$ に内分する(Euler線)。この直線の上で、垂心 $H$ を外心 $O$ に関して反対側へ折り返した点 $L$ をとってみる。つまり $O$ が線分 $HL$ の中点になる点である。この点は何かの意味をもつだろうか。
まず 2 つの三角形で座標を計算する。点とその位置ベクトルを同じ文字で表し、$L=2O-H$ と書く。
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ をとる。
(1) 外心。辺 $AB$ の垂直二等分線は $x=2$ である。外心を $O(2,y)$ とおくと、$OA^2=OC^2$ は
$$
4+y^2=1+(y-3)^2=y^2-6y+10
$$
で、$6y=6$ より $y=1$ である。$O(2,1)$、外接円の半径の 2 乗は $R^2=OA^2=5$ である。
(2) 垂心。$C$ からの垂線は $x=1$ である。$A$ からの垂線は、$A$ を通り $\overrightarrow{BC}=(-3,3)$ に垂直な直線 $-3x+3y=0$、つまり $y=x$ である。2 本の交点は $H(1,1)$ である。
(3) 重心と $L$。$G=\left(\dfrac{0+4+1}3,\dfrac{0+0+3}3\right)=\left(\dfrac53,1\right)$、$L=2O-H=(4-1,\ 2-1)=(3,1)$ である。4 点 $O,G,H,L$ はどれも直線 $y=1$ の上にある。
(4) 3 つの円。辺の長さの 2 乗は $a^2=BC^2=18$、$b^2=CA^2=10$、$c^2=AB^2=16$ である。$A$ を中心とし半径 $a=BC$ の円を $\Gamma_A$、$B$ を中心とし半径 $b=CA$ の円を $\Gamma_B$、$C$ を中心とし半径 $c=AB$ の円を $\Gamma_C$ とする。点 $L$ の各円に関する方べき(中心までの距離の 2 乗から半径の 2 乗を引いた値)は
$$
LA^2-a^2=10-18=-8,\qquad LB^2-b^2=2-10=-8,\qquad LC^2-c^2=8-16=-8
$$
で、3 つとも同じ値 $-8$ になる。
$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(-1,2)$ をとる。$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=(6,0)\cdot(-1,2)=-6<0$ なので、$A$ の角は鈍角である。ex-dlc-start と同じ計算で
$$
O\left(3,\frac{11}4\right),\quad R^2=\frac{265}{16},\quad H\left(-1,-\frac72\right),\quad G\left(\frac53,\frac23\right),\quad L=2O-H=(7,9)
$$
となる。$H$ も $L$ も三角形の外にある。
(1) 外心。辺 $AB$ の垂直二等分線は $x=3$ である。$O(3,y)$ とおくと、$OA^2=OC^2$ は $9+y^2=16+(y-2)^2=y^2-4y+20$ で、$4y=11$ より $y=\dfrac{11}4$ である。$R^2=9+\dfrac{121}{16}=\dfrac{265}{16}$ である。
(2) 垂心。$C$ からの垂線は $x=-1$ である。$A$ からの垂線は $\overrightarrow{BC}=(-7,2)$ に垂直な直線 $-7x+2y=0$ で、$x=-1$ を代入すると $y=-\dfrac72$ である。
(3) 重心と $L$。$G=\left(\dfrac{0+6-1}3,\dfrac{0+0+2}3\right)$、$L=2O-H=\left(6+1,\ \dfrac{11}2+\dfrac72\right)$ である。
鋭角三角形 ABC(黒)と、各頂点を通り対辺に平行な直線でできる大きな三角形 A'B'C'(緑の破線)。外心 O、重心 G、垂心 H と、H を O で折り返した点 L が灰色の直線に並び、赤の点線は A'B'C' の頂点から L を通る垂線である
鈍角三角形で同じものを描いた図。H と L は三角形 ABC の外にあるが、L は大きな三角形 A'B'C' の 3 本の垂線(赤の点線)の交点になっている
図 1・図 2 の緑の破線は、各頂点を通り向かいの辺に平行な 3 本の直線でできる大きな三角形である。どちらの図でも、この大きな三角形の頂点から向かいの辺に下ろした垂線(赤の点線)が $L$ を通っている。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 使う道具 |
|---|---|---|
| $L=2O-H$ の座標 | de Longchamps 点 | Euler 線 |
| 頂点を通り対辺に平行な 3 本の直線 | 倍の三角形 | 重心を中心とする比 $-2$ の相似拡大 |
| 大きな三角形の垂線の交点 | 倍の三角形の垂心 | 相似拡大は垂直を保つ |
| 3 つの円に関する方べきがそろう | 3 円の根心 | 外心を原点とする内積の展開 |
以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、外心を $O$、外接円の半径を $R$、重心を $G$、垂心を $H$ とする。点 $P$ を中心とする比 $k$ の相似拡大(点 $X$ を $\overrightarrow{PX'}=k\overrightarrow{PX}$ となる点 $X'$ に移す変換)を $\varphi_{P,k}$ と書く(Euler線)。
倍の三角形は、英語では anticomplementary triangle と呼ばれる。三角形の垂心 の定理「3 本の垂線は 1 点で交わる」の 2 つ目の証明に出てくる「大きな三角形」と同じものである。(1) の 3 本が本当に三角形をつくることは、次の補題で頂点を式で書いて確かめる。
外心 $O$ を原点にとり、頂点の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c$ とすると、垂心は $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ である(三角形の垂心 の定理「外心を原点にしたときの垂心」)。したがって (2) の点は
$$
\vec l=-\vec h=-(\vec a+\vec b+\vec c)
$$
である。正三角形では $H=O$ なので $L=O$ である。
倍の三角形の頂点は(原点をどこにとっても)
$$
\vec a\,'=\vec b+\vec c-\vec a,\qquad \vec b\,'=\vec c+\vec a-\vec b,\qquad \vec c\,'=\vec a+\vec b-\vec c
$$
である。さらに次が成り立つ。
要点:$\vec a\,'-\vec b=\vec c-\vec a$、$\vec a\,'-\vec c=\vec b-\vec a$ から $A'$ が 2 本の直線の交点であることがわかり、$\dfrac{\vec b\,'+\vec c\,'}2=\vec a$、$\vec c\,'-\vec b\,'=2(\vec b-\vec c)$ から 1 が、$\vec g-2(\vec a-\vec g)=3\vec g-2\vec a=\vec a\,'$ から 2 が出る。
段 1(交点であること)。$\vec a\,'-\vec b=\vec c-\vec a$ なので、$A'$ は $B$ を通り $CA$ に平行な直線の上にある。$\vec a\,'-\vec c=\vec b-\vec a$ なので、$A'$ は $C$ を通り $AB$ に平行な直線の上にもある。$B$ を通る直線と $C$ を通る直線は、向き $\vec c-\vec a$ と $\vec b-\vec a$ が平行でない($A,B,C$ は一直線上にない)ので 1 点で交わり、その交点が $A'$ である。$B'$、$C'$ も同じである。
段 2(中点と平行)。$\dfrac{\vec b\,'+\vec c\,'}2=\dfrac{(\vec c+\vec a-\vec b)+(\vec a+\vec b-\vec c)}2=\vec a$ なので、$A$ は $B'C'$ の中点である。$\vec c\,'-\vec b\,'=2(\vec b-\vec c)$ なので、$B'C'\parallel BC$、$B'C'=2BC$ である。$\vec b\,'-\vec a\,'=2(\vec a-\vec b)$ と $\vec c\,'-\vec a\,'=2(\vec a-\vec c)$ は平行でないので、$A',B',C'$ は三角形をつくる。
段 3(相似拡大)。$3\vec g=\vec a+\vec b+\vec c$ を使うと $\vec g-2(\vec a-\vec g)=3\vec g-2\vec a=\vec b+\vec c-\vec a=\vec a\,'$ である。$B$、$C$ も同じである。重心は $\dfrac{\vec a\,'+\vec b\,'+\vec c\,'}3=\dfrac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\vec g$ である。$\square$
補題の 2 は、Euler線 の補題「重心を中心とする比 $-\frac{1}{2}$ の相似拡大」(三角形を中点三角形に移す)を逆向きに使ったものでもある。$\varphi_{G,-2}$ と $\varphi_{G,-1/2}$ は互いに逆の変換である。
$B'C'$ の中点は $\left(\dfrac{-7+7}2,\dfrac{2-2}2\right)=(0,0)=A$、$C'A'$ の中点は $\left(\dfrac{7+5}2,\dfrac{-2+2}2\right)=(6,0)=B$、$A'B'$ の中点は $\left(\dfrac{5-7}2,\dfrac{2+2}2\right)=(-1,2)=C$ である。
三角形 $ABC$ の倍の三角形を $A'B'C'$、de Longchamps 点を $L$ とする。
方針:lem-dlc-vertices の 2 から、$\varphi=\varphi_{G,-2}$ は三角形 $ABC$ を倍の三角形 $A'B'C'$ に移す。相似拡大は向きと垂直を保つので、$ABC$ の垂線は $A'B'C'$ の垂線に移り、垂心は垂心に移る。移った先を計算すると $L$ になる。相似拡大の性質は Euler線 の補題「相似拡大の性質」(1〜6)を使う。
段 1(垂線の像)。$A$ からの垂線 $\ell_A$ は、$A$ を通り直線 $BC$ に垂直な直線である。相似拡大の性質 2・3 により、$\varphi(\ell_A)$ は $\ell_A$ と同じ向きの直線で、$\varphi(A)=A'$ を通る。$\ell_A$ の向きは $BC$ に垂直で、$B'C'\parallel BC$(lem-dlc-vertices の 1)なので、$\varphi(\ell_A)$ は $A'$ を通り $B'C'$ に垂直な直線、つまり三角形 $A'B'C'$ の $A'$ からの垂線である。$B$、$C$ からの垂線も同じく、$B'$、$C'$ からの垂線に移る。
段 2(垂心の像)。$H$ は $\ell_A$ と $B$ からの垂線の交点である。相似拡大の性質 6 により、$\varphi(H)$ は段 1 の 2 本の像の交点、つまり三角形 $A'B'C'$ の $A'$ からの垂線と $B'$ からの垂線の交点である。これは三角形 $A'B'C'$ の垂心である。
段 3(計算)。相似拡大の定義から $\varphi(H)=\vec g-2(\vec h-\vec g)=3\vec g-2\vec h$ である。外心を原点にとると $3\vec g=\vec a+\vec b+\vec c=\vec h$ なので、$\varphi(H)=\vec h-2\vec h=-\vec h=\vec l$ である。これで 1 が示せた。
段 4(外心)。辺 $BC$ の垂直二等分線は、中点 $M_a$ を通り $BC$ に垂直な直線である。段 1 と同じ理由で、その像は $\varphi(M_a)$ を通り $BC$ に垂直な直線である。相似拡大は中点を中点に移し(性質 4)、$A'B'C'$ の辺 $B'C'$ の中点は $A$ なので、$\varphi(M_a)=A$ である。よって像は $A$ を通り $B'C'$ に垂直な直線、つまり $B'C'$ の垂直二等分線である。3 本の垂直二等分線の交点 $O$ は、三角形 $A'B'C'$ の外心 $\varphi(O)$ に移る。$\varphi(O)=3\vec g-2\vec o=\vec h-\vec 0=\vec h$ なので、外心は $H$ である。性質 5 により、半径 $R$ の外接円は半径 $2R$ の円に移る。これで 2 が示せた。
段 5(Euler 線の上の位置)。$\vec g=\dfrac13\vec h$ は重心の式、$\vec n=\dfrac12\vec h$ は中点の式である。正三角形でなければ $H\ne O$ で $\vec h\ne\vec 0$ なので、4 点 $G,N,H,L$ はどれも原点 $O$ を通り向き $\vec h$ の直線、つまり Euler 線の上にある。距離は
$$
LG=\left\lvert\frac13\vec h+\vec h\right\rvert=\frac43\lvert\vec h\rvert,\quad LN=\left\lvert\frac12\vec h+\vec h\right\rvert=\frac32\lvert\vec h\rvert,\quad LH=\lvert\vec h+\vec h\rvert=2\lvert\vec h\rvert,\quad LO=\lvert\vec h\rvert
$$
で、$\lvert\vec h\rvert=OH$ である。$\square$
段 4 の「$H$ は倍の三角形の外心」は、三角形の垂心 で 3 本の垂線が 1 点で交わることを示すのに使われた事実である。この記事では、同じ相似拡大をもう一度使うと垂心の側も分かる、というのが主定理 1 の中身である。
ex-dlc-obtuse の倍の三角形 $A'(5,2)$、$B'(-7,2)$、$C'(7,-2)$ で、$C'$ からの垂線は $x=7$、$A'$ からの垂線は $\overrightarrow{B'C'}=(14,-4)$ に垂直な直線 $14(x-5)-4(y-2)=0$ である。$x=7$ を代入すると $28=4(y-2)$、$y=9$ で、交点は $L(7,9)$ である。距離は $\overrightarrow{OH}=\left(-4,-\dfrac{25}4\right)$、$\overrightarrow{GL}=\left(\dfrac{16}3,\dfrac{25}3\right)=-\dfrac43\overrightarrow{OH}$ なので、$LG=\dfrac43OH$ である。
外心を原点にとると、Euler 線の上の 5 つの点はすべて $\vec h$ の実数倍で書ける。
| 点 | 位置ベクトル | $O$ からの距離 | どの三角形の何か |
|---|---|---|---|
| de Longchamps 点 $L$ | $-\vec h$ | $OH$ | 倍の三角形の垂心 |
| 外心 $O$ | $\vec 0$ | $0$ | $ABC$ の外心・中点三角形の垂心 |
| 重心 $G$ | $\frac13\vec h$ | $\frac13OH$ | $ABC$・倍の三角形・中点三角形の重心 |
| 九点円の中心 $N$ | $\frac12\vec h$ | $\frac12OH$ | 中点三角形の外心 |
| 垂心 $H$ | $\vec h$ | $OH$ | $ABC$ の垂心・倍の三角形の外心 |
外心 O を原点にとり、垂心の位置ベクトルを h としたとき、Euler 線の上に L、O、G、N、H がそれぞれ −h、0、h/3、h/2、h の位置に並ぶことを見る図
表の最後の列は、3 つの三角形「倍の三角形 → $ABC$ → 中点三角形」を重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で順に移すと、垂心が $L\to H\to O$ と移ることを表している。これを図式で見ておく。
$\psi=\varphi_{G,-1/2}$ とおく。$\psi$ は倍の三角形を $ABC$ に(lem-dlc-vertices の 2 の逆)、$ABC$ を中点三角形 $M_aM_bM_c$ に移す(Euler線 の補題「重心を中心とする比 $-\frac{1}{2}$ の相似拡大」)。三角形にその垂心を対応させることを縦の矢印で表すと、次の図式が得られる。
$$
\xymatrix{
A'B'C' \ar[r]^{\psi} \ar[d]_{\text{垂心}} & ABC \ar[r]^{\psi} \ar[d]_{\text{垂心}} & M_aM_bM_c \ar[d]^{\text{垂心}} \\
L \ar[r]_{\psi} & H \ar[r]_{\psi} & O
}
$$
図式が可換であるとは、三角形を $\psi$ で移してから垂心をとっても、垂心をとってから $\psi$ で移しても同じ点になることである。等式で書くと
$$
\psi(L)=H,\qquad \psi(H)=O
$$
である。
実際、外心を原点にとると $\psi(X)=\vec g-\frac12(\vec x-\vec g)=\frac12(\vec h-\vec x)$ なので、$\psi(L)=\frac12(\vec h+\vec h)=\vec h$、$\psi(H)=\vec 0$ である。中点三角形の垂心が $O$ であることは Euler線 の系「中点三角形の心」にある。同じ式で $\psi(O)=\frac12\vec h=\vec n$ となり、次の段の中点三角形(中点三角形の中点三角形)の垂心は $N$ である。
ex-dlc-start と ex-dlc-obtuse の (4) で、3 つの円に関する $L$ の方べきがそろった。方べきの定義と根心の存在は 根軸と根心 にある:中心 $P$、半径 $r$ の円に関する点 $X$ の 方べき は $PX^2-r^2$ で、中心が一直線上にない 3 つの円について、3 つの方べきがすべて等しい点(根心)はただ 1 つある。
三角形 $ABC$ について、中心 $A$・半径 $a=BC$ の円を $\Gamma_A$、中心 $B$・半径 $b=CA$ の円を $\Gamma_B$、中心 $C$・半径 $c=AB$ の円を $\Gamma_C$ とする。de Longchamps 点 $L$ の 3 つの円に関する方べきは等しく、その値は
$$
LA^2-a^2=LB^2-b^2=LC^2-c^2=16R^2-2(a^2+b^2+c^2)
$$
である。したがって $L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ の根心である。
方針:外心 $O$ を原点にとり、$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec b\rvert=\lvert\vec c\rvert=R$ を使って $\Gamma_A$ に関する方べきを内積で展開する。結果が $\vec a,\vec b,\vec c$ について対称な式になるので、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ でも同じ値になる。
段 1($\Gamma_A$ に関する方べき)。$\vec l=-(\vec a+\vec b+\vec c)$ なので $\vec l-\vec a=-(2\vec a+\vec b+\vec c)$、また $a^2=BC^2=\lvert\vec b-\vec c\rvert^2$ である。よって
$$
LA^2-a^2=\lvert2\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2-\lvert\vec b-\vec c\rvert^2
$$
である。
段 2(展開)。内積の性質で展開すると
$$
\lvert2\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2=4\lvert\vec a\rvert^2+\lvert\vec b\rvert^2+\lvert\vec c\rvert^2+4\,\vec a\cdot\vec b+4\,\vec c\cdot\vec a+2\,\vec b\cdot\vec c=6R^2+4\,\vec a\cdot\vec b+4\,\vec c\cdot\vec a+2\,\vec b\cdot\vec c
$$
$$
\lvert\vec b-\vec c\rvert^2=\lvert\vec b\rvert^2-2\,\vec b\cdot\vec c+\lvert\vec c\rvert^2=2R^2-2\,\vec b\cdot\vec c
$$
である。引くと、$\vec b\cdot\vec c$ の係数は $2-(-2)=4$ になり
$$
LA^2-a^2=4R^2+4\,\underbrace{(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)}_{\sigma\ \text{とおく}}=4R^2+4\sigma
$$
である。
段 3(対称性)。$4R^2+4\sigma$ は $\vec a,\vec b,\vec c$ を入れかえても変わらない。$\Gamma_B$ について段 1・段 2 と同じ計算をすると、$\vec a$ と $\vec b$ の役を入れかえた式 $LB^2-b^2=\lvert2\vec b+\vec c+\vec a\rvert^2-\lvert\vec c-\vec a\rvert^2$ になり、結果は同じ $4R^2+4\sigma$ である。$\Gamma_C$ も同じである。
段 4(辺の長さで書く)。段 2 の 2 つ目の式から $a^2=2R^2-2\,\vec b\cdot\vec c$、同じく $b^2=2R^2-2\,\vec c\cdot\vec a$、$c^2=2R^2-2\,\vec a\cdot\vec b$ である。3 式を足すと $a^2+b^2+c^2=6R^2-2\sigma$、つまり $4\sigma=12R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ である。これを段 2 の結果に入れると $4R^2+4\sigma=16R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ である。
段 5(根心)。3 つの円の中心 $A$、$B$、$C$ は一直線上にないので、根軸と根心 の定理「根心の存在」により、3 つの方べきがすべて等しい点はただ 1 つである。段 3 から $L$ はその条件を満たすので、$L$ が根心である。$\square$
円の式の左辺を $f_A=x^2+y^2-18$、$f_B=(x-4)^2+y^2-10$、$f_C=(x-1)^2+(y-3)^2-16$ とすると、$f_A-f_B=8x-24$、$f_B-f_C=-6x+6y+12$、$f_C-f_A=-2x-6y+12$ である。それぞれを $0$ とおくと $x=3$、$y=x-2$、$x+3y=6$ になる。
鋭角三角形で、A を中心とし半径 BC の円(青)、B を中心とし半径 CA の円(橙)、C を中心とし半径 AB の円(緑)と、2 つずつの根軸(灰色の破線)。3 本の根軸は L で交わり、L は 3 つの円の内部にある
鈍角三角形で同じ 3 つの円と根軸を描いた図。3 本の根軸は三角形の外の点 L で交わり、L は 3 つの円の外部にある
図 4 では $L$ が 3 つの円の内部にあり(方べき $-8<0$)、図 5 では 3 つの円の外部にある(方べき $77>0$)。この符号は、外接円との位置関係で決まる。
thm-dlc-radical の共通の方べきは、$L$ の外接円に関する方べきの 2 倍に等しい:
$$
LA^2-a^2=2\bigl(OL^2-R^2\bigr)
$$
したがって、$L$ が外接円の内部・周上・外部にあるに応じて、$L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ のすべての内部・すべての周上・すべての外部にある。
prf-thm-dlc-radical の段 2 と同じ記号で、$OL^2=\lvert-\vec h\rvert^2=\lvert\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2=3R^2+2\sigma$ である(Euler線 の命題「外心と垂心の距離」の証明の段 1 と同じ展開)。よって $2(OL^2-R^2)=2(2R^2+2\sigma)=4R^2+4\sigma$ で、これは thm-dlc-radical の共通の方べきである。後半は、方べきの符号が「内部なら負、周上なら $0$、外部なら正」であることから従う。$\square$
外接円に関する $L$ の方べき $OL^2-R^2=OH^2-R^2$ は、鋭角三角形では負、直角三角形では $0$、鈍角三角形では正になる(一般の場合はこの記事では証明しない。ex-dlc-start・ex-dlc-obtuse と次の例で確かめる)。直角三角形の場合は、図形の性質から直接わかる。
$A(0,3)$、$B(4,0)$、$C(0,0)$($C$ が直角、$a=4$、$b=3$、$c=5$)をとる。斜辺 $AB$ の中点 $O\left(2,\dfrac32\right)$ が外心で、$A$ からの垂線は辺 $CA$($x=0$)、$B$ からの垂線は辺 $CB$($y=0$)なので、垂心は $H=C(0,0)$ である。$L=2O-H=(4,3)$ である。
四角形 $ACBL$ は、対角線 $AB$ と $CL$ が互いの中点 $O$ で交わるので平行四辺形で、$C$ の角が直角なので長方形である。よって
$$
LA=CB=4=a,\qquad LB=CA=3=b,\qquad LC=AB=5=c
$$
で、$L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ の周上にある(方べきはどれも $0$)。公式でも $16R^2-2(a^2+b^2+c^2)=16\cdot\dfrac{25}4-2\cdot50=0$ である。$OL=OH=OC=R$ なので、$L$ は外接円の周上にもある($L$ は $C$ を外心 $O$ について点対称に移した点である)。
thm-dlc-radical では、円の中心が頂点であることと、半径が「向かいの辺」の長さであることの両方が効いている。どちらかを変えると、$L$ での方べきはそろわない。表の最初の 3 行の反例は、どれも ex-dlc-start の三角形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$、$L(3,1)$ で計算する。最後の行は thm-dlc-big の「正三角形でない」という条件についての例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 半径が向かいの辺の長さそのもの | 半径を $\frac12BC$、$\frac12CA$、$\frac12AB$ にする | $L$ での方べきが $\frac{11}2,-\frac12,4$ でそろわない(ex-dlc-cx-half) |
| 円の中心が頂点 | 中心を辺の中点 $M_a,M_b,M_c$ にし、半径は $BC,CA,AB$ のまま | 方べきが $-\frac{35}2,-\frac72,-14$ でそろわない(ex-dlc-cx-mid) |
| 半径が「向かいの」辺 | $A$ を中心とする円の半径を隣の辺 $AB$ にする($B$ は $BC$、$C$ は $CA$) | 方べきが $-6,-16,-2$ でそろわない(ex-dlc-cx-mid) |
| 正三角形でない | 正三角形 | $L=O=H$ となり、Euler 線が決まらない(ex-dlc-equilateral) |
中心 $A$・半径 $\frac12a$ の円、中心 $B$・半径 $\frac12b$ の円、中心 $C$・半径 $\frac12c$ の円をとる。$L(3,1)$ での方べきは
$$
LA^2-\frac{a^2}4=10-\frac{18}4=\frac{11}2,\qquad LB^2-\frac{b^2}4=2-\frac{10}4=-\frac12,\qquad LC^2-\frac{c^2}4=8-4=4
$$
でそろわない。この 3 つの円にも根心はあり(中心は一直線上にない)、それは $P\left(\dfrac94,1\right)$ で、$L(3,1)$ とは違う点である。ただし $P$ も Euler 線 $y=1$ の上にある。これは偶然ではない(prop-dlc-scale)。
方べきの差 $\left(x^2+y^2-\frac92\right)-\left((x-4)^2+y^2-\frac52\right)=8x-18$ から、$A$ と $B$ の円の根軸は $x=\dfrac94$ である。同じく $\left((x-4)^2+y^2-\frac52\right)-\left((x-1)^2+(y-3)^2-4\right)=-6x+6y+\dfrac{15}2$ から、$B$ と $C$ の円の根軸は $-6x+6y+\dfrac{15}2=0$ で、$x=\dfrac94$ を代入すると $y=1$ である。
半径を向かいの辺の半分にした 3 つの円と根軸(灰色の破線)。根心 P は L と違う点だが、同じ Euler 線 y=1 の上にある
(2) $A$ を中心とし半径 $c=AB$、$B$ を中心とし半径 $a=BC$、$C$ を中心とし半径 $b=CA$ の 3 つの円では、$L$ での方べきは $LA^2-c^2=10-16=-6$、$LB^2-a^2=2-18=-16$、$LC^2-b^2=8-10=-2$ でそろわない。
$A(0,0)$、$B(2,0)$、$C(1,\sqrt3)$ では、外心・重心・垂心はどれも $\left(1,\dfrac{\sqrt3}3\right)$ で、$L=2O-H$ もこの点である。4 点が 1 点に重なるので、Euler 線は決まらず、thm-dlc-big の 3 の「Euler 線の上にある」は意味をもたない。
一方、thm-dlc-radical はそのまま成り立ち、3 つの方べきはどれも $-\dfrac83$ である。
$a=b=c=2$、$R^2=\dfrac43$ で、$L$ から各頂点までの距離の 2 乗は $\dfrac43$ なので、3 つの方べきはどれも $\dfrac43-4=-\dfrac83$ である。公式でも $16\cdot\dfrac43-2\cdot12=-\dfrac83$ である。
ex-dlc-cx-half で、半径を半分にした 3 つの円の根心が Euler 線の上にあった。半径の倍率を $k$ として動かすと、根心は Euler 線の上を動く。
$k>0$ とし、中心 $A$・半径 $ka$、中心 $B$・半径 $kb$、中心 $C$・半径 $kc$ の 3 つの円の根心を $P_k$ とする。このとき
$$
\overrightarrow{OP_k}=k^2\,\overrightarrow{OL}
$$
である。とくに $P_1=L$ で、正三角形でなければ $P_k$ はすべて Euler 線の上にある。
要点:外心を原点にとると、2 つの円に関する方べきの差は $\vec x$ の 1 次式 $-2\,\vec x\cdot(\vec a-\vec b)-k^2(a^2-b^2)$ になり、$\vec x=k^2\vec l$ で $0$ になる。
外心 $O$ を原点にとる。点 $X$ の、中心 $A$・半径 $ka$ の円と中心 $B$・半径 $kb$ の円に関する方べきの差は、$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec b\rvert$ を使うと $\bigl(\lvert\vec x-\vec a\rvert^2-k^2a^2\bigr)-\bigl(\lvert\vec x-\vec b\rvert^2-k^2b^2\bigr)=-2\,\vec x\cdot(\vec a-\vec b)-k^2(a^2-b^2)$ である。$\vec x=k^2\vec l$ を代入すると $k^2\bigl(-2\,\vec l\cdot(\vec a-\vec b)-(a^2-b^2)\bigr)$ になる。かっこの中は $k=1$、$\vec x=\vec l$ のときの差で、thm-dlc-radical により $0$ である。よって $X=k^2\vec l$ で 2 つの方べきは等しい。$B$ と $C$ の組でも同じである。中心 $A,B,C$ は一直線上にないので、方べきがすべて等しい点はただ 1 つで(根軸と根心)、それが $P_k=k^2\vec l$ である。$\vec l=-\vec h$ なので、$P_k$ は原点 $O$ を通り向き $\vec h$ の直線、つまり Euler 線の上にある。$\square$
ex-dlc-cx-half では $k=\dfrac12$ で、$\overrightarrow{OP}=\dfrac14\overrightarrow{OL}=\dfrac14(1,0)$ から $P\left(\dfrac94,1\right)$ となり、座標の計算と一致する。$k$ を $0$ に近づけると $P_k$ は $O$ に近づく。半径が $0$ の「円」に関する方べきは中心までの距離の 2 乗なので、3 つの方べきが等しい点は 3 頂点から等距離の点、つまり外心である。円の族を半径の倍率で動かしたとき、根心は外心 $O$ から出発して Euler 線の上をまっすぐ進み、$k=1$ でちょうど de Longchamps 点に着く。
Kimberling は三角形の「中心」とよばれる点に通し番号を付けて一覧にしていて、de Longchamps 点はその $X_{20}$ である。MathWorld の頁 Wei26 には、$L$ が $H$ の $O$ に関する点対称の像であること、倍の三角形(anticomplementary triangle)の垂心であること、$LG=\frac43OH$、$LH=2OH$、$LN=\frac32OH$、$LO=OH$ などの距離の式、そして Euler 線と Soddy 線(Soddyの円 に関係する直線。この記事では定義しない)が $L$ で交わることが載っている。Soddy 線との関係は、この記事では証明しない。
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