de Longchamps点

同義語:ド・ロンシャン点de Longchamps point

概要

de Longchamps点(de Longchamps point)とは、三角形の垂心 $H$ を外心 $O$ に関して点対称に移した点 $L$ である。各頂点を通り向かいの辺に平行な 3 本の直線でできる三角形(倍の三角形)は、重心を中心とする比 $-2$ の相似拡大でもとの三角形から得られ、$L$ はその垂心、$H$ はその外心になる。正三角形でなければ $L$ は Euler 線の上にあり、重心 $G$ について $LG=\frac43OH$ である。また、各頂点を中心とし向かいの辺の長さを半径とする 3 つの円に関する $L$ の方べきはどれも $16R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ に等しく($R$ は外接円の半径、$a,b,c$ は辺の長さ)、$L$ はこの 3 つの円の根心である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Euler線, 三角形の垂心, 根軸と根心, 位置ベクトルと内分点

高校での出発点:垂心を外心で折り返す

三角形の外心 $O$、重心 $G$、垂心 $H$ は一直線上に並び、$G$ は線分 $OH$ を $1:2$ に内分する(Euler線)。この直線の上で、垂心 $H$ を外心 $O$ に関して反対側へ折り返した点 $L$ をとってみる。つまり $O$ が線分 $HL$ の中点になる点である。この点は何かの意味をもつだろうか。
まず 2 つの三角形で座標を計算する。点とその位置ベクトルを同じ文字で表し、$L=2O-H$ と書く。

鋭角三角形で $L$ を求める

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ をとる。
(1) 外心。辺 $AB$ の垂直二等分線は $x=2$ である。外心を $O(2,y)$ とおくと、$OA^2=OC^2$ は
$$ 4+y^2=1+(y-3)^2=y^2-6y+10 $$
で、$6y=6$ より $y=1$ である。$O(2,1)$、外接円の半径の 2 乗は $R^2=OA^2=5$ である。
(2) 垂心。$C$ からの垂線は $x=1$ である。$A$ からの垂線は、$A$ を通り $\overrightarrow{BC}=(-3,3)$ に垂直な直線 $-3x+3y=0$、つまり $y=x$ である。2 本の交点は $H(1,1)$ である。
(3) 重心と $L$。$G=\left(\dfrac{0+4+1}3,\dfrac{0+0+3}3\right)=\left(\dfrac53,1\right)$、$L=2O-H=(4-1,\ 2-1)=(3,1)$ である。4 点 $O,G,H,L$ はどれも直線 $y=1$ の上にある。
(4) 3 つの円。辺の長さの 2 乗は $a^2=BC^2=18$、$b^2=CA^2=10$、$c^2=AB^2=16$ である。$A$ を中心とし半径 $a=BC$ の円を $\Gamma_A$、$B$ を中心とし半径 $b=CA$ の円を $\Gamma_B$、$C$ を中心とし半径 $c=AB$ の円を $\Gamma_C$ とする。点 $L$ の各円に関する方べき(中心までの距離の 2 乗から半径の 2 乗を引いた値)は
$$ LA^2-a^2=10-18=-8,\qquad LB^2-b^2=2-10=-8,\qquad LC^2-c^2=8-16=-8 $$
で、3 つとも同じ値 $-8$ になる。

鈍角三角形で $L$ を求める

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(-1,2)$ をとる。$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=(6,0)\cdot(-1,2)=-6<0$ なので、$A$ の角は鈍角である。ex-dlc-start と同じ計算で
$$ O\left(3,\frac{11}4\right),\quad R^2=\frac{265}{16},\quad H\left(-1,-\frac72\right),\quad G\left(\frac53,\frac23\right),\quad L=2O-H=(7,9) $$
となる。$H$ も $L$ も三角形の外にある。

(1)〜(3) の計算を開く

(1) 外心。辺 $AB$ の垂直二等分線は $x=3$ である。$O(3,y)$ とおくと、$OA^2=OC^2$ は $9+y^2=16+(y-2)^2=y^2-4y+20$ で、$4y=11$ より $y=\dfrac{11}4$ である。$R^2=9+\dfrac{121}{16}=\dfrac{265}{16}$ である。

(2) 垂心。$C$ からの垂線は $x=-1$ である。$A$ からの垂線は $\overrightarrow{BC}=(-7,2)$ に垂直な直線 $-7x+2y=0$ で、$x=-1$ を代入すると $y=-\dfrac72$ である。

(3) 重心と $L$。$G=\left(\dfrac{0+6-1}3,\dfrac{0+0+2}3\right)$、$L=2O-H=\left(6+1,\ \dfrac{11}2+\dfrac72\right)$ である。


(4) 3 つの円。$a^2=BC^2=49+4=53$、$b^2=CA^2=1+4=5$、$c^2=AB^2=36$ である。
$$ LA^2-a^2=130-53=77,\qquad LB^2-b^2=82-5=77,\qquad LC^2-c^2=113-36=77 $$
で、ここでも 3 つの方べきがそろう。

鋭角三角形 ABC(黒)と、各頂点を通り対辺に平行な直線でできる大きな三角形 A'B'C'(緑の破線)。外心 O、重心 G、垂心 H と、H を O で折り返した点 L が灰色の直線に並び、赤の点線は A'B'C' の頂点から L を通る垂線である 鋭角三角形 ABC(黒)と、各頂点を通り対辺に平行な直線でできる大きな三角形 A'B'C'(緑の破線)。外心 O、重心 G、垂心 H と、H を O で折り返した点 L が灰色の直線に並び、赤の点線は A'B'C' の頂点から L を通る垂線である
鈍角三角形で同じものを描いた図。H と L は三角形 ABC の外にあるが、L は大きな三角形 A'B'C' の 3 本の垂線(赤の点線)の交点になっている 鈍角三角形で同じものを描いた図。H と L は三角形 ABC の外にあるが、L は大きな三角形 A'B'C' の 3 本の垂線(赤の点線)の交点になっている

図 1・図 2 の緑の破線は、各頂点を通り向かいの辺に平行な 3 本の直線でできる大きな三角形である。どちらの図でも、この大きな三角形の頂点から向かいの辺に下ろした垂線(赤の点線)が $L$ を通っている。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. $L$ は、大きな三角形のどんな点か。→ thm-dlc-big
  2. 3 つの円に関する方べきが等しいのは偶然か。その値は何か。→ thm-dlc-radical、cor-dlc-circumcircle
  3. 円の半径や中心を変えると、何が崩れるか。→ prop-dlc-scale と「例と反例」の節
    高校の計算この記事の言葉使う道具
    $L=2O-H$ の座標de Longchamps 点Euler 線
    頂点を通り対辺に平行な 3 本の直線倍の三角形重心を中心とする比 $-2$ の相似拡大
    大きな三角形の垂線の交点倍の三角形の垂心相似拡大は垂直を保つ
    3 つの円に関する方べきがそろう3 円の根心外心を原点とする内積の展開

言葉の準備:倍の三角形と de Longchamps 点

以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、外心を $O$、外接円の半径を $R$、重心を $G$、垂心を $H$ とする。点 $P$ を中心とする比 $k$ の相似拡大(点 $X$ を $\overrightarrow{PX'}=k\overrightarrow{PX}$ となる点 $X'$ に移す変換)を $\varphi_{P,k}$ と書く(Euler線)。

倍の三角形と de Longchamps 点
  1. 頂点 $A$ を通り辺 $BC$ に平行な直線、$B$ を通り $CA$ に平行な直線、$C$ を通り $AB$ に平行な直線の 3 本は、三角形をつくる。この三角形の頂点のうち、$B$ を通る直線と $C$ を通る直線の交点を $A'$、$C$ を通る直線と $A$ を通る直線の交点を $B'$、$A$ を通る直線と $B$ を通る直線の交点を $C'$ とする。三角形 $A'B'C'$ を、この記事では三角形 $ABC$ の 倍の三角形 と呼ぶ。
  2. 垂心 $H$ を外心 $O$ に関して点対称に移した点、つまり
    $$ \overrightarrow{OL}=-\overrightarrow{OH} $$
    となる点 $L$ を、三角形 $ABC$ の de Longchamps 点 という。

倍の三角形は、英語では anticomplementary triangle と呼ばれる。三角形の垂心 の定理「3 本の垂線は 1 点で交わる」の 2 つ目の証明に出てくる「大きな三角形」と同じものである。(1) の 3 本が本当に三角形をつくることは、次の補題で頂点を式で書いて確かめる。
外心 $O$ を原点にとり、頂点の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c$ とすると、垂心は $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ である(三角形の垂心 の定理「外心を原点にしたときの垂心」)。したがって (2) の点は
$$ \vec l=-\vec h=-(\vec a+\vec b+\vec c) $$
である。正三角形では $H=O$ なので $L=O$ である。

倍の三角形の頂点

倍の三角形の頂点は(原点をどこにとっても)
$$ \vec a\,'=\vec b+\vec c-\vec a,\qquad \vec b\,'=\vec c+\vec a-\vec b,\qquad \vec c\,'=\vec a+\vec b-\vec c $$
である。さらに次が成り立つ。

  1. $A$ は辺 $B'C'$ の中点で、$B'C'\parallel BC$、$B'C'=2BC$ である。$B$、$C$ についても同じである。つまり三角形 $ABC$ は、倍の三角形 $A'B'C'$ の中点三角形である。
  2. 重心 $G$ を中心とする比 $-2$ の相似拡大 $\varphi_{G,-2}$ は、$A,B,C$ をそれぞれ $A',B',C'$ に移す。とくに倍の三角形の重心は $G$ である。
頂点の式を代入して確かめる

要点:$\vec a\,'-\vec b=\vec c-\vec a$、$\vec a\,'-\vec c=\vec b-\vec a$ から $A'$ が 2 本の直線の交点であることがわかり、$\dfrac{\vec b\,'+\vec c\,'}2=\vec a$、$\vec c\,'-\vec b\,'=2(\vec b-\vec c)$ から 1 が、$\vec g-2(\vec a-\vec g)=3\vec g-2\vec a=\vec a\,'$ から 2 が出る。

詳しい証明を開く

段 1(交点であること)。$\vec a\,'-\vec b=\vec c-\vec a$ なので、$A'$ は $B$ を通り $CA$ に平行な直線の上にある。$\vec a\,'-\vec c=\vec b-\vec a$ なので、$A'$ は $C$ を通り $AB$ に平行な直線の上にもある。$B$ を通る直線と $C$ を通る直線は、向き $\vec c-\vec a$ と $\vec b-\vec a$ が平行でない($A,B,C$ は一直線上にない)ので 1 点で交わり、その交点が $A'$ である。$B'$、$C'$ も同じである。

段 2(中点と平行)。$\dfrac{\vec b\,'+\vec c\,'}2=\dfrac{(\vec c+\vec a-\vec b)+(\vec a+\vec b-\vec c)}2=\vec a$ なので、$A$ は $B'C'$ の中点である。$\vec c\,'-\vec b\,'=2(\vec b-\vec c)$ なので、$B'C'\parallel BC$、$B'C'=2BC$ である。$\vec b\,'-\vec a\,'=2(\vec a-\vec b)$ と $\vec c\,'-\vec a\,'=2(\vec a-\vec c)$ は平行でないので、$A',B',C'$ は三角形をつくる。

段 3(相似拡大)。$3\vec g=\vec a+\vec b+\vec c$ を使うと $\vec g-2(\vec a-\vec g)=3\vec g-2\vec a=\vec b+\vec c-\vec a=\vec a\,'$ である。$B$、$C$ も同じである。重心は $\dfrac{\vec a\,'+\vec b\,'+\vec c\,'}3=\dfrac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\vec g$ である。$\square$

補題の 2 は、Euler線 の補題「重心を中心とする比 $-\frac{1}{2}$ の相似拡大」(三角形を中点三角形に移す)を逆向きに使ったものでもある。$\varphi_{G,-2}$ と $\varphi_{G,-1/2}$ は互いに逆の変換である。

倍の三角形を計算する
  1. ex-dlc-start の $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ では
    $$ A'=(4+1-0,\ 0+3-0)=(5,3),\qquad B'=(1+0-4,\ 3+0-0)=(-3,3),\qquad C'=(0+4-1,\ 0+0-3)=(3,-3) $$
    である(三角形の垂心 の例「大きな三角形を数で確かめる」と同じ三角形)。$B'C'$ の中点は $(0,0)=A$ である。$G\left(\dfrac53,1\right)$ を中心とする比 $-2$ の相似拡大で $A$ は $3G-2A=(5,3)=A'$ に移る。
  2. ex-dlc-obtuse の $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(-1,2)$ では $A'(5,2)$、$B'(-7,2)$、$C'(7,-2)$ である。
    中点を確かめる計算を開く

    $B'C'$ の中点は $\left(\dfrac{-7+7}2,\dfrac{2-2}2\right)=(0,0)=A$、$C'A'$ の中点は $\left(\dfrac{7+5}2,\dfrac{-2+2}2\right)=(6,0)=B$、$A'B'$ の中点は $\left(\dfrac{5-7}2,\dfrac{2+2}2\right)=(-1,2)=C$ である。

主定理 1:de Longchamps 点は倍の三角形の垂心

倍の三角形の垂心と外心

三角形 $ABC$ の倍の三角形を $A'B'C'$、de Longchamps 点を $L$ とする。

  1. $L$ は三角形 $A'B'C'$ の垂心である。
  2. $H$ は三角形 $A'B'C'$ の外心で、その外接円の半径は $2R$ である。
  3. 外心 $O$ を原点にとり $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ とすると、重心 $G$、九点円の中心 $N$(線分 $OH$ の中点)、$H$、$L$ の位置ベクトルは
    $$ \vec g=\frac13\vec h,\qquad \vec n=\frac12\vec h,\qquad \vec h,\qquad \vec l=-\vec h $$
    である。したがって、三角形が正三角形でなければ $L$ は Euler 線の上にあり
    $$ LG=\frac43\,OH,\qquad LN=\frac32\,OH,\qquad LH=2\,OH,\qquad LO=OH $$
    である。
比 $-2$ の相似拡大で垂線を垂線に移す

方針:lem-dlc-vertices の 2 から、$\varphi=\varphi_{G,-2}$ は三角形 $ABC$ を倍の三角形 $A'B'C'$ に移す。相似拡大は向きと垂直を保つので、$ABC$ の垂線は $A'B'C'$ の垂線に移り、垂心は垂心に移る。移った先を計算すると $L$ になる。相似拡大の性質は Euler線 の補題「相似拡大の性質」(1〜6)を使う。
段 1(垂線の像)。$A$ からの垂線 $\ell_A$ は、$A$ を通り直線 $BC$ に垂直な直線である。相似拡大の性質 2・3 により、$\varphi(\ell_A)$ は $\ell_A$ と同じ向きの直線で、$\varphi(A)=A'$ を通る。$\ell_A$ の向きは $BC$ に垂直で、$B'C'\parallel BC$(lem-dlc-vertices の 1)なので、$\varphi(\ell_A)$ は $A'$ を通り $B'C'$ に垂直な直線、つまり三角形 $A'B'C'$ の $A'$ からの垂線である。$B$、$C$ からの垂線も同じく、$B'$、$C'$ からの垂線に移る。
段 2(垂心の像)。$H$ は $\ell_A$ と $B$ からの垂線の交点である。相似拡大の性質 6 により、$\varphi(H)$ は段 1 の 2 本の像の交点、つまり三角形 $A'B'C'$ の $A'$ からの垂線と $B'$ からの垂線の交点である。これは三角形 $A'B'C'$ の垂心である。
段 3(計算)。相似拡大の定義から $\varphi(H)=\vec g-2(\vec h-\vec g)=3\vec g-2\vec h$ である。外心を原点にとると $3\vec g=\vec a+\vec b+\vec c=\vec h$ なので、$\varphi(H)=\vec h-2\vec h=-\vec h=\vec l$ である。これで 1 が示せた。
段 4(外心)。辺 $BC$ の垂直二等分線は、中点 $M_a$ を通り $BC$ に垂直な直線である。段 1 と同じ理由で、その像は $\varphi(M_a)$ を通り $BC$ に垂直な直線である。相似拡大は中点を中点に移し(性質 4)、$A'B'C'$ の辺 $B'C'$ の中点は $A$ なので、$\varphi(M_a)=A$ である。よって像は $A$ を通り $B'C'$ に垂直な直線、つまり $B'C'$ の垂直二等分線である。3 本の垂直二等分線の交点 $O$ は、三角形 $A'B'C'$ の外心 $\varphi(O)$ に移る。$\varphi(O)=3\vec g-2\vec o=\vec h-\vec 0=\vec h$ なので、外心は $H$ である。性質 5 により、半径 $R$ の外接円は半径 $2R$ の円に移る。これで 2 が示せた。
段 5(Euler 線の上の位置)。$\vec g=\dfrac13\vec h$ は重心の式、$\vec n=\dfrac12\vec h$ は中点の式である。正三角形でなければ $H\ne O$ で $\vec h\ne\vec 0$ なので、4 点 $G,N,H,L$ はどれも原点 $O$ を通り向き $\vec h$ の直線、つまり Euler 線の上にある。距離は
$$ LG=\left\lvert\frac13\vec h+\vec h\right\rvert=\frac43\lvert\vec h\rvert,\quad LN=\left\lvert\frac12\vec h+\vec h\right\rvert=\frac32\lvert\vec h\rvert,\quad LH=\lvert\vec h+\vec h\rvert=2\lvert\vec h\rvert,\quad LO=\lvert\vec h\rvert $$
で、$\lvert\vec h\rvert=OH$ である。$\square$

段 4 の「$H$ は倍の三角形の外心」は、三角形の垂心 で 3 本の垂線が 1 点で交わることを示すのに使われた事実である。この記事では、同じ相似拡大をもう一度使うと垂心の側も分かる、というのが主定理 1 の中身である。

倍の三角形の垂心を直接求める
  1. ex-dlc-vertices の (1) の $A'(5,3)$、$B'(-3,3)$、$C'(3,-3)$ で、$C'$ からの垂線は、$C'$ を通り辺 $A'B'$(直線 $y=3$)に垂直な直線 $x=3$ である。$A'$ からの垂線は、$A'$ を通り $\overrightarrow{B'C'}=(6,-6)$ に垂直な直線 $6(x-5)-6(y-3)=0$、つまり $y=x-2$ である。2 本の交点は $(3,1)$ で、ex-dlc-start の $L(3,1)$ と一致する。また $H(1,1)$ から $A'$、$B'$、$C'$ までの距離の 2 乗は $4^2+2^2=20$、$4^2+2^2=20$、$2^2+4^2=20$ で等しく、$20=4\cdot5=(2R)^2$ である。
  2. 距離の比。$O(2,1)$、$H(1,1)$ から $OH=1$、$G\left(\dfrac53,1\right)$ から $LG=3-\dfrac53=\dfrac43$ である。
    鈍角三角形で同じことを確かめる計算を開く

    ex-dlc-obtuse の倍の三角形 $A'(5,2)$、$B'(-7,2)$、$C'(7,-2)$ で、$C'$ からの垂線は $x=7$、$A'$ からの垂線は $\overrightarrow{B'C'}=(14,-4)$ に垂直な直線 $14(x-5)-4(y-2)=0$ である。$x=7$ を代入すると $28=4(y-2)$、$y=9$ で、交点は $L(7,9)$ である。距離は $\overrightarrow{OH}=\left(-4,-\dfrac{25}4\right)$、$\overrightarrow{GL}=\left(\dfrac{16}3,\dfrac{25}3\right)=-\dfrac43\overrightarrow{OH}$ なので、$LG=\dfrac43OH$ である。

外心を原点にとると、Euler 線の上の 5 つの点はすべて $\vec h$ の実数倍で書ける。

点位置ベクトル$O$ からの距離どの三角形の何か
de Longchamps 点 $L$$-\vec h$$OH$倍の三角形の垂心
外心 $O$$\vec 0$$0$$ABC$ の外心・中点三角形の垂心
重心 $G$$\frac13\vec h$$\frac13OH$$ABC$・倍の三角形・中点三角形の重心
九点円の中心 $N$$\frac12\vec h$$\frac12OH$中点三角形の外心
垂心 $H$$\vec h$$OH$$ABC$ の垂心・倍の三角形の外心

外心 O を原点にとり、垂心の位置ベクトルを h としたとき、Euler 線の上に L、O、G、N、H がそれぞれ −h、0、h/3、h/2、h の位置に並ぶことを見る図 外心 O を原点にとり、垂心の位置ベクトルを h としたとき、Euler 線の上に L、O、G、N、H がそれぞれ −h、0、h/3、h/2、h の位置に並ぶことを見る図
表の最後の列は、3 つの三角形「倍の三角形 → $ABC$ → 中点三角形」を重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で順に移すと、垂心が $L\to H\to O$ と移ることを表している。これを図式で見ておく。

相似拡大の列と垂心の列

$\psi=\varphi_{G,-1/2}$ とおく。$\psi$ は倍の三角形を $ABC$ に(lem-dlc-vertices の 2 の逆)、$ABC$ を中点三角形 $M_aM_bM_c$ に移す(Euler線 の補題「重心を中心とする比 $-\frac{1}{2}$ の相似拡大」)。三角形にその垂心を対応させることを縦の矢印で表すと、次の図式が得られる。
$$ \xymatrix{ A'B'C' \ar[r]^{\psi} \ar[d]_{\text{垂心}} & ABC \ar[r]^{\psi} \ar[d]_{\text{垂心}} & M_aM_bM_c \ar[d]^{\text{垂心}} \\ L \ar[r]_{\psi} & H \ar[r]_{\psi} & O } $$
図式が可換であるとは、三角形を $\psi$ で移してから垂心をとっても、垂心をとってから $\psi$ で移しても同じ点になることである。等式で書くと
$$ \psi(L)=H,\qquad \psi(H)=O $$
である。

等式を外心を原点にとって確かめる

実際、外心を原点にとると $\psi(X)=\vec g-\frac12(\vec x-\vec g)=\frac12(\vec h-\vec x)$ なので、$\psi(L)=\frac12(\vec h+\vec h)=\vec h$、$\psi(H)=\vec 0$ である。中点三角形の垂心が $O$ であることは Euler線 の系「中点三角形の心」にある。同じ式で $\psi(O)=\frac12\vec h=\vec n$ となり、次の段の中点三角形(中点三角形の中点三角形)の垂心は $N$ である。

主定理 2:3 つの円の根心

ex-dlc-start と ex-dlc-obtuse の (4) で、3 つの円に関する $L$ の方べきがそろった。方べきの定義と根心の存在は 根軸と根心 にある:中心 $P$、半径 $r$ の円に関する点 $X$ の 方べき は $PX^2-r^2$ で、中心が一直線上にない 3 つの円について、3 つの方べきがすべて等しい点(根心)はただ 1 つある。

3 つの円の根心

三角形 $ABC$ について、中心 $A$・半径 $a=BC$ の円を $\Gamma_A$、中心 $B$・半径 $b=CA$ の円を $\Gamma_B$、中心 $C$・半径 $c=AB$ の円を $\Gamma_C$ とする。de Longchamps 点 $L$ の 3 つの円に関する方べきは等しく、その値は
$$ LA^2-a^2=LB^2-b^2=LC^2-c^2=16R^2-2(a^2+b^2+c^2) $$
である。したがって $L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ の根心である。

外心を原点にとって方べきを展開する

方針:外心 $O$ を原点にとり、$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec b\rvert=\lvert\vec c\rvert=R$ を使って $\Gamma_A$ に関する方べきを内積で展開する。結果が $\vec a,\vec b,\vec c$ について対称な式になるので、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ でも同じ値になる。
段 1($\Gamma_A$ に関する方べき)。$\vec l=-(\vec a+\vec b+\vec c)$ なので $\vec l-\vec a=-(2\vec a+\vec b+\vec c)$、また $a^2=BC^2=\lvert\vec b-\vec c\rvert^2$ である。よって
$$ LA^2-a^2=\lvert2\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2-\lvert\vec b-\vec c\rvert^2 $$
である。
段 2(展開)。内積の性質で展開すると
$$ \lvert2\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2=4\lvert\vec a\rvert^2+\lvert\vec b\rvert^2+\lvert\vec c\rvert^2+4\,\vec a\cdot\vec b+4\,\vec c\cdot\vec a+2\,\vec b\cdot\vec c=6R^2+4\,\vec a\cdot\vec b+4\,\vec c\cdot\vec a+2\,\vec b\cdot\vec c $$
$$ \lvert\vec b-\vec c\rvert^2=\lvert\vec b\rvert^2-2\,\vec b\cdot\vec c+\lvert\vec c\rvert^2=2R^2-2\,\vec b\cdot\vec c $$
である。引くと、$\vec b\cdot\vec c$ の係数は $2-(-2)=4$ になり
$$ LA^2-a^2=4R^2+4\,\underbrace{(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)}_{\sigma\ \text{とおく}}=4R^2+4\sigma $$
である。
段 3(対称性)。$4R^2+4\sigma$ は $\vec a,\vec b,\vec c$ を入れかえても変わらない。$\Gamma_B$ について段 1・段 2 と同じ計算をすると、$\vec a$ と $\vec b$ の役を入れかえた式 $LB^2-b^2=\lvert2\vec b+\vec c+\vec a\rvert^2-\lvert\vec c-\vec a\rvert^2$ になり、結果は同じ $4R^2+4\sigma$ である。$\Gamma_C$ も同じである。
段 4(辺の長さで書く)。段 2 の 2 つ目の式から $a^2=2R^2-2\,\vec b\cdot\vec c$、同じく $b^2=2R^2-2\,\vec c\cdot\vec a$、$c^2=2R^2-2\,\vec a\cdot\vec b$ である。3 式を足すと $a^2+b^2+c^2=6R^2-2\sigma$、つまり $4\sigma=12R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ である。これを段 2 の結果に入れると $4R^2+4\sigma=16R^2-2(a^2+b^2+c^2)$ である。
段 5(根心)。3 つの円の中心 $A$、$B$、$C$ は一直線上にないので、根軸と根心 の定理「根心の存在」により、3 つの方べきがすべて等しい点はただ 1 つである。段 3 から $L$ はその条件を満たすので、$L$ が根心である。$\square$

方べきの値を公式で確かめる
  1. ex-dlc-start の三角形では $R^2=5$、$a^2+b^2+c^2=18+10+16=44$ なので、$16R^2-2(a^2+b^2+c^2)=80-88=-8$ で、座標で求めた値と一致する。
  2. ex-dlc-obtuse の三角形では $R^2=\dfrac{265}{16}$、$a^2+b^2+c^2=53+5+36=94$ なので、$16R^2-2\cdot94=265-188=77$ で、これも一致する。
  3. 根軸で確かめる。(1) の三角形で、$\Gamma_A$ と $\Gamma_B$ の根軸は $x=3$、$\Gamma_B$ と $\Gamma_C$ の根軸は $y=x-2$、$\Gamma_C$ と $\Gamma_A$ の根軸は $x+3y=6$ で、3 本はどれも $(3,1)=L$ を通る(図 4 の灰色の破線)。
    根軸の式を求める計算を開く

    円の式の左辺を $f_A=x^2+y^2-18$、$f_B=(x-4)^2+y^2-10$、$f_C=(x-1)^2+(y-3)^2-16$ とすると、$f_A-f_B=8x-24$、$f_B-f_C=-6x+6y+12$、$f_C-f_A=-2x-6y+12$ である。それぞれを $0$ とおくと $x=3$、$y=x-2$、$x+3y=6$ になる。

鋭角三角形で、A を中心とし半径 BC の円(青)、B を中心とし半径 CA の円(橙)、C を中心とし半径 AB の円(緑)と、2 つずつの根軸(灰色の破線)。3 本の根軸は L で交わり、L は 3 つの円の内部にある 鋭角三角形で、A を中心とし半径 BC の円(青)、B を中心とし半径 CA の円(橙)、C を中心とし半径 AB の円(緑)と、2 つずつの根軸(灰色の破線)。3 本の根軸は L で交わり、L は 3 つの円の内部にある
鈍角三角形で同じ 3 つの円と根軸を描いた図。3 本の根軸は三角形の外の点 L で交わり、L は 3 つの円の外部にある 鈍角三角形で同じ 3 つの円と根軸を描いた図。3 本の根軸は三角形の外の点 L で交わり、L は 3 つの円の外部にある

図 4 では $L$ が 3 つの円の内部にあり(方べき $-8<0$)、図 5 では 3 つの円の外部にある(方べき $77>0$)。この符号は、外接円との位置関係で決まる。

外接円に関する方べきの 2 倍

thm-dlc-radical の共通の方べきは、$L$ の外接円に関する方べきの 2 倍に等しい:
$$ LA^2-a^2=2\bigl(OL^2-R^2\bigr) $$
したがって、$L$ が外接円の内部・周上・外部にあるに応じて、$L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ のすべての内部・すべての周上・すべての外部にある。

$OH^2$ の式と比べる

prf-thm-dlc-radical の段 2 と同じ記号で、$OL^2=\lvert-\vec h\rvert^2=\lvert\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2=3R^2+2\sigma$ である(Euler線 の命題「外心と垂心の距離」の証明の段 1 と同じ展開)。よって $2(OL^2-R^2)=2(2R^2+2\sigma)=4R^2+4\sigma$ で、これは thm-dlc-radical の共通の方べきである。後半は、方べきの符号が「内部なら負、周上なら $0$、外部なら正」であることから従う。$\square$

外接円に関する $L$ の方べき $OL^2-R^2=OH^2-R^2$ は、鋭角三角形では負、直角三角形では $0$、鈍角三角形では正になる(一般の場合はこの記事では証明しない。ex-dlc-start・ex-dlc-obtuse と次の例で確かめる)。直角三角形の場合は、図形の性質から直接わかる。

直角三角形では 3 つの円が $L$ を通る

$A(0,3)$、$B(4,0)$、$C(0,0)$($C$ が直角、$a=4$、$b=3$、$c=5$)をとる。斜辺 $AB$ の中点 $O\left(2,\dfrac32\right)$ が外心で、$A$ からの垂線は辺 $CA$($x=0$)、$B$ からの垂線は辺 $CB$($y=0$)なので、垂心は $H=C(0,0)$ である。$L=2O-H=(4,3)$ である。
四角形 $ACBL$ は、対角線 $AB$ と $CL$ が互いの中点 $O$ で交わるので平行四辺形で、$C$ の角が直角なので長方形である。よって
$$ LA=CB=4=a,\qquad LB=CA=3=b,\qquad LC=AB=5=c $$
で、$L$ は 3 つの円 $\Gamma_A$、$\Gamma_B$、$\Gamma_C$ の周上にある(方べきはどれも $0$)。公式でも $16R^2-2(a^2+b^2+c^2)=16\cdot\dfrac{25}4-2\cdot50=0$ である。$OL=OH=OC=R$ なので、$L$ は外接円の周上にもある($L$ は $C$ を外心 $O$ について点対称に移した点である)。

例と反例

thm-dlc-radical では、円の中心が頂点であることと、半径が「向かいの辺」の長さであることの両方が効いている。どちらかを変えると、$L$ での方べきはそろわない。表の最初の 3 行の反例は、どれも ex-dlc-start の三角形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$、$L(3,1)$ で計算する。最後の行は thm-dlc-big の「正三角形でない」という条件についての例である。

外す条件反例成り立たなくなること
半径が向かいの辺の長さそのもの半径を $\frac12BC$、$\frac12CA$、$\frac12AB$ にする$L$ での方べきが $\frac{11}2,-\frac12,4$ でそろわない(ex-dlc-cx-half)
円の中心が頂点中心を辺の中点 $M_a,M_b,M_c$ にし、半径は $BC,CA,AB$ のまま方べきが $-\frac{35}2,-\frac72,-14$ でそろわない(ex-dlc-cx-mid)
半径が「向かいの」辺$A$ を中心とする円の半径を隣の辺 $AB$ にする($B$ は $BC$、$C$ は $CA$)方べきが $-6,-16,-2$ でそろわない(ex-dlc-cx-mid)
正三角形でない正三角形$L=O=H$ となり、Euler 線が決まらない(ex-dlc-equilateral)
反例:半径を半分にする

中心 $A$・半径 $\frac12a$ の円、中心 $B$・半径 $\frac12b$ の円、中心 $C$・半径 $\frac12c$ の円をとる。$L(3,1)$ での方べきは
$$ LA^2-\frac{a^2}4=10-\frac{18}4=\frac{11}2,\qquad LB^2-\frac{b^2}4=2-\frac{10}4=-\frac12,\qquad LC^2-\frac{c^2}4=8-4=4 $$
でそろわない。この 3 つの円にも根心はあり(中心は一直線上にない)、それは $P\left(\dfrac94,1\right)$ で、$L(3,1)$ とは違う点である。ただし $P$ も Euler 線 $y=1$ の上にある。これは偶然ではない(prop-dlc-scale)。

根心を求める計算を開く

方べきの差 $\left(x^2+y^2-\frac92\right)-\left((x-4)^2+y^2-\frac52\right)=8x-18$ から、$A$ と $B$ の円の根軸は $x=\dfrac94$ である。同じく $\left((x-4)^2+y^2-\frac52\right)-\left((x-1)^2+(y-3)^2-4\right)=-6x+6y+\dfrac{15}2$ から、$B$ と $C$ の円の根軸は $-6x+6y+\dfrac{15}2=0$ で、$x=\dfrac94$ を代入すると $y=1$ である。

半径を向かいの辺の半分にした 3 つの円と根軸(灰色の破線)。根心 P は L と違う点だが、同じ Euler 線 y=1 の上にある 半径を向かいの辺の半分にした 3 つの円と根軸(灰色の破線)。根心 P は L と違う点だが、同じ Euler 線 y=1 の上にある

反例:中心を中点にする、半径を隣の辺にする
  1. 中心を辺の中点 $M_a\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$、$M_b\left(\dfrac12,\dfrac32\right)$、$M_c(2,0)$ にし、半径をそれぞれ $a$、$b$、$c$ とする。$L(3,1)$ での方べきは
    $$ LM_a^2-a^2=\frac12-18=-\frac{35}2,\qquad LM_b^2-b^2=\frac{13}2-10=-\frac72,\qquad LM_c^2-c^2=2-16=-14 $$
    でそろわない。
    半径を隣の辺にした場合の計算を開く

    (2) $A$ を中心とし半径 $c=AB$、$B$ を中心とし半径 $a=BC$、$C$ を中心とし半径 $b=CA$ の 3 つの円では、$L$ での方べきは $LA^2-c^2=10-16=-6$、$LB^2-a^2=2-18=-16$、$LC^2-b^2=8-10=-2$ でそろわない。

正三角形

$A(0,0)$、$B(2,0)$、$C(1,\sqrt3)$ では、外心・重心・垂心はどれも $\left(1,\dfrac{\sqrt3}3\right)$ で、$L=2O-H$ もこの点である。4 点が 1 点に重なるので、Euler 線は決まらず、thm-dlc-big の 3 の「Euler 線の上にある」は意味をもたない。
一方、thm-dlc-radical はそのまま成り立ち、3 つの方べきはどれも $-\dfrac83$ である。

方べきの計算を開く

$a=b=c=2$、$R^2=\dfrac43$ で、$L$ から各頂点までの距離の 2 乗は $\dfrac43$ なので、3 つの方べきはどれも $\dfrac43-4=-\dfrac83$ である。公式でも $16\cdot\dfrac43-2\cdot12=-\dfrac83$ である。

大学数学で見る:半径を変えた円の族と Euler 線

ex-dlc-cx-half で、半径を半分にした 3 つの円の根心が Euler 線の上にあった。半径の倍率を $k$ として動かすと、根心は Euler 線の上を動く。

半径を $k$ 倍した円の根心

$k>0$ とし、中心 $A$・半径 $ka$、中心 $B$・半径 $kb$、中心 $C$・半径 $kc$ の 3 つの円の根心を $P_k$ とする。このとき
$$ \overrightarrow{OP_k}=k^2\,\overrightarrow{OL} $$
である。とくに $P_1=L$ で、正三角形でなければ $P_k$ はすべて Euler 線の上にある。

方べきの差が $k^2$ の 1 次式になることを使う

要点:外心を原点にとると、2 つの円に関する方べきの差は $\vec x$ の 1 次式 $-2\,\vec x\cdot(\vec a-\vec b)-k^2(a^2-b^2)$ になり、$\vec x=k^2\vec l$ で $0$ になる。

詳しい証明を開く

外心 $O$ を原点にとる。点 $X$ の、中心 $A$・半径 $ka$ の円と中心 $B$・半径 $kb$ の円に関する方べきの差は、$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec b\rvert$ を使うと $\bigl(\lvert\vec x-\vec a\rvert^2-k^2a^2\bigr)-\bigl(\lvert\vec x-\vec b\rvert^2-k^2b^2\bigr)=-2\,\vec x\cdot(\vec a-\vec b)-k^2(a^2-b^2)$ である。$\vec x=k^2\vec l$ を代入すると $k^2\bigl(-2\,\vec l\cdot(\vec a-\vec b)-(a^2-b^2)\bigr)$ になる。かっこの中は $k=1$、$\vec x=\vec l$ のときの差で、thm-dlc-radical により $0$ である。よって $X=k^2\vec l$ で 2 つの方べきは等しい。$B$ と $C$ の組でも同じである。中心 $A,B,C$ は一直線上にないので、方べきがすべて等しい点はただ 1 つで(根軸と根心)、それが $P_k=k^2\vec l$ である。$\vec l=-\vec h$ なので、$P_k$ は原点 $O$ を通り向き $\vec h$ の直線、つまり Euler 線の上にある。$\square$

ex-dlc-cx-half では $k=\dfrac12$ で、$\overrightarrow{OP}=\dfrac14\overrightarrow{OL}=\dfrac14(1,0)$ から $P\left(\dfrac94,1\right)$ となり、座標の計算と一致する。$k$ を $0$ に近づけると $P_k$ は $O$ に近づく。半径が $0$ の「円」に関する方べきは中心までの距離の 2 乗なので、3 つの方べきが等しい点は 3 頂点から等距離の点、つまり外心である。円の族を半径の倍率で動かしたとき、根心は外心 $O$ から出発して Euler 線の上をまっすぐ進み、$k=1$ でちょうど de Longchamps 点に着く。

三角形の中心としての番号と、Soddy 線との関係を開く

Kimberling は三角形の「中心」とよばれる点に通し番号を付けて一覧にしていて、de Longchamps 点はその $X_{20}$ である。MathWorld の頁 Wei26 には、$L$ が $H$ の $O$ に関する点対称の像であること、倍の三角形(anticomplementary triangle)の垂心であること、$LG=\frac43OH$、$LH=2OH$、$LN=\frac32OH$、$LO=OH$ などの距離の式、そして Euler 線と Soddy 線(Soddyの円 に関係する直線。この記事では定義しない)が $L$ で交わることが載っている。Soddy 線との関係は、この記事では証明しない。

さらに先へ

  • 3 つの傍心を頂点とする三角形(傍心三角形)の外心は Bevan 点とよばれ、de Longchamps 点と Nagel 点を結ぶ線分の中点になる(Bevan点)。倍の三角形が「$ABC$ を中点三角形にもつ三角形」であるのに対し、傍心三角形は「$ABC$ を垂線の足の三角形にもつ三角形」である。
  • 九点円の中心 $N$ は $\psi(O)$ で、九点円は中点三角形の外接円である(九点円)。rem-dlc-chain の相似拡大 $\psi$ を何回も続けると、三角形はどんどん小さくなって重心 $G$ に縮んでいく。
  • 相似拡大と相似の中心の一般論は 相似変換と相似の中心 で扱う。

関連項目

参考文献

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