直交多項式

同義語:orthogonal polynomialsorthogonal polynomial

概要

直交多項式(orthogonal polynomials)とは、区間 $(a,b)$ 上の正でモーメントが有限な重み $w$ による内積 $\langle f,g\rangle=\int_a^bfgw\,dx$ に関して互いに直交し、$n$ 番目の次数がちょうど $n$ である多項式の列である。最高次の係数が $1$ のものは重みごとにただ 1 つ定まり、隣り合う 3 つは漸化式 $p_{n+1}=(x-\beta_n)p_n-\gamma_np_{n-1}$($\gamma_n>0$)で結ばれる。$p_n$ の根は $(a,b)$ の中の相異なる実数で $p_{n+1}$ の根と交互に並び、根を節点にとる Gauss 求積は $2n-1$ 次以下の多項式の積分を正確に与える。Legendre・Chebyshev・Hermite・Laguerre の多項式が代表例である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 積分で定める内積, Gram–Schmidtの直交化, Lagrange補間

直交多項式(orthogonal polynomials)は、重みを付けた積分で定めた内積に関して互いに直交する多項式の列である。区間 $(-1,1)$ で重み $1$ をとると Legendre多項式、重み $(1-x^2)^{-1/2}$ をとると Chebyshev多項式 が現れ、実数全体で重み $e^{-x^2}$ をとると Hermite 多項式が現れる。重みが違っても、直交多項式の列には共通の性質がある。隣り合う 3 つの多項式が 1 つの漸化式で結ばれること、零点がすべて実数で区間の内側にあり、隣どうしの零点が交互に並ぶこと、そして零点を節点にとった数値積分(Gauss 求積)が、節点の個数のほぼ 2 倍の次数の多項式まで正確になることである。
この記事では、重み関数を固定して直交多項式を定義し、これらの性質をすべて証明する。

定義

以下、$-\infty\le a< b\le\infty$ とし、$(a,b)$ は開区間を表す。多項式の係数はすべて実数とし、次数 $n$ 以下の多項式全体を $\mathcal{P}_n$ と書く($\mathcal{P}_{-1}:=\{0\}$)。

重み関数と内積

$(a,b)$ 上の連続関数 $w$ が次を満たすとき、$w$ を $(a,b)$ 上の 重み関数 という。

  1. $(a,b)$ のすべての点で $w(x)>0$ である。
  2. すべての $k=0,1,2,\dots$ について、広義積分 $\displaystyle\mu_k:=\int_a^bx^kw(x)\,dx$ が絶対収束する。$\mu_k$ を $k$ 次のモーメント という。
    多項式 $f,g$ に対して
    $$ \langle f,g\rangle:=\int_a^bf(x)g(x)w(x)\,dx,\qquad\|f\|:=\sqrt{\langle f,f\rangle} $$
    とおく。$fg$ は $x^k$ の 1 次結合なので、条件 2 によりこの積分は有限である。

$\langle\ ,\ \rangle$ は対称で双線形である。さらに、$f\ne0$ なら $f^2w$ は $(a,b)$ で $0$ 以上の連続関数で、$0$ になるのは $f$ の根(有限個)だけなので、$\langle f,f\rangle>0$ である。したがって $\langle\ ,\ \rangle$ は多項式全体の上の内積である(区間が有界で $w=1$ の場合は 積分で定める内積 の定理「関数の内積は内積である」)。もう 1 つ、何度も使う性質として
$$ \langle xf,g\rangle=\int_a^bxf(x)g(x)w(x)\,dx=\langle f,xg\rangle $$
がある。$x$ を掛ける操作が内積の左右どちらに付けてもよいことが、下の漸化式の源である。

直交多項式

$w$ を $(a,b)$ 上の重み関数とする。多項式の列 $(q_n)_{n\ge0}$ で、各 $q_n$ の次数がちょうど $n$ であり、$m\ne n$ なら $\langle q_m,q_n\rangle=0$ となるものを、重み $w$ に関する 直交多項式(の列)という。最高次の係数が $1$ のもの(モニック)を モニック直交多項式 という。

モニック直交多項式の存在と一意性

$w$ を $(a,b)$ 上の重み関数とする。

  1. モニック直交多項式の列 $(p_n)_{n\ge0}$ がただ 1 つ存在する。
  2. $n\ge1$ について、$p_n$ は $\mathcal{P}_{n-1}$ のすべての多項式と直交する。
  3. 重み $w$ に関する直交多項式の列 $(q_n)$ は、$0$ でない実数 $c_n$ によって $q_n=c_np_n$ と書けるものに限る。

要点:単項式 $1,x,x^2,\dots$ に Gram–Schmidt の直交化を施す。

詳しい証明を開く

存在:$p_0:=1$ とし、$p_0,\dots,p_{n-1}$ が次数どおりのモニックで互いに直交するとき $p_n:=x^n-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{\langle x^n,p_k\rangle}{\langle p_k,p_k\rangle}p_k$ とおく。$\langle p_k,p_k\rangle>0$ なので割り算ができ、$p_n$ は次数 $n$ のモニックで、$j< n$ について $\langle p_n,p_j\rangle=\langle x^n,p_j\rangle-\langle x^n,p_j\rangle=0$ である(Gram–Schmidtの直交化 の定理「Gram–Schmidtの直交化の基本定理」と同じ計算)。

2:$p_0,\dots,p_{n-1}$ は次数が $0,\dots,n-1$ なので $\mathcal{P}_{n-1}$ の基底であり、$p_n$ はそのすべてと直交する。

一意性と 3:$(q_n)$ を直交多項式の列とする。$q_0,\dots,q_{n-1}$ も $\mathcal{P}_{n-1}$ の基底なので、$q_n$ は $\mathcal{P}_{n-1}$ と直交する。$q_n$ の最高次の係数を $c_n\ne0$ とすると、$r:=q_n-c_np_n$ は $\mathcal{P}_{n-1}$ に属し、$\mathcal{P}_{n-1}$ と直交するので $\langle r,r\rangle=0$、よって $r=0$ である。$(q_n)$ がモニックなら $c_n=1$ なので一意性も従う。$\square$

以下、$(p_n)$ はモニック直交多項式、$h_n:=\langle p_n,p_n\rangle>0$ とする。規格化は分野ごとに違い、$p_n/\sqrt{h_n}$(正規直交)や、$x=1$ での値を $1$ にするもの(Legendre多項式)がよく使われる。どの規格化も $p_n$ の定数倍なので、以下の性質は定数倍を調整すればそのまま移る。

最小の性質

次数 $n$ のモニック多項式 $q$ のうち、$\|q\|$ を最小にするものは $q=p_n$ だけであり、最小値は $\sqrt{h_n}$ である。

証明を開く

$r:=q-p_n\in\mathcal{P}_{n-1}$ であり、prop-op-exist の 2 により $\langle p_n,r\rangle=0$ なので、$\|q\|^2=h_n+\|r\|^2\ge h_n$ である。等号は $\|r\|=0$、すなわち $r=0$ のときに限る。$\square$

例

区間 $(-1,1)$ で重み $1$

$w=1$、$(a,b)=(-1,1)$ とする。奇関数の積分は $0$ なので、$\langle x^i,x^j\rangle$ は $i+j$ が奇数なら $0$、偶数なら $\frac2{i+j+1}$ である。直交化すると
$$ p_0=1,\quad p_1=x,\quad p_2=x^2-\frac13,\quad p_3=x^3-\frac35x, $$
$h_0=2$、$h_1=\frac23$、$h_2=\frac8{45}$ である。たとえば $p_2$ の係数は $\langle x^2,1\rangle/\langle1,1\rangle=\frac{2/3}2=\frac13$ から、$h_2=\int_{-1}^1(x^2-\frac13)^2dx=\frac25-\frac49+\frac29=\frac8{45}$ である。これらは Legendre多項式 $P_n$ を最高次の係数で割ったものである($P_2=\frac32x^2-\frac12$、$P_3=\frac52x^3-\frac32x$)。

古典直交多項式

Jacobi 多項式・Laguerre 多項式・Hermite 多項式と、Jacobi 多項式の特別な場合(Legendre 多項式・Chebyshev 多項式など)を 古典直交多項式 という。これらは 2 階の微分作用素の固有関数になることや、Rodrigues の公式で表せることで、一般の直交多項式の中から特徴づけられる(DLMF §18.3。この記事では証明しない)。そのうち 4 つの族を表にする(重みと区間は DLMF Table 18.3.1)。表の「モニックの漸化式」は thm-op-recurrence の係数 $\beta_n$、$\gamma_n$ を示したもので、DLMF Table 18.9.1 の漸化式を最高次の係数で割って得られる(Legendre の場合は Legendre多項式 で証明する)。

名前区間重み $w(x)$モニックの漸化式 $p_{n+1}=(x-\beta_n)p_n-\gamma_np_{n-1}$
Legendre$(-1,1)$$1$$\beta_n=0$、$\gamma_n=\dfrac{n^2}{4n^2-1}$
Chebyshev(第 1 種)$(-1,1)$$(1-x^2)^{-1/2}$$\beta_n=0$、$\gamma_1=\dfrac12$、$\gamma_n=\dfrac14$($n\ge2$)
Hermite$(-\infty,\infty)$$e^{-x^2}$$\beta_n=0$、$\gamma_n=\dfrac n2$
Laguerre$(0,\infty)$$e^{-x}$$\beta_n=2n+1$、$\gamma_n=n^2$

Chebyshev 多項式 $T_n$ は $T_n(\cos\theta)=\cos n\theta$ で定まり、最高次の係数は $n\ge1$ で $2^{n-1}$ なので、モニックにしたものは $2^{1-n}T_n$ である。漸化式 $T_{n+1}=2xT_n-T_{n-1}$ を $2^n$ で割ると $\gamma_n=\frac14$($n\ge2$)が、$T_2=2xT_1-T_0$ から $\gamma_1=\frac12$ が出る。直交性は Chebyshev多項式 の定理「Chebyshev 多項式の直交性」にある。

対称な重みでは $\beta_n=0$

$(a,b)=(-c,c)$($c=\infty$ も許す)で $w$ が偶関数なら、$p_n$ は $n$ が偶数なら偶関数、奇数なら奇関数である。実際、$\tilde p_n(x):=(-1)^np_n(-x)$ もモニックで、変数変換 $x\mapsto-x$ により $\langle\tilde p_m,\tilde p_n\rangle=(-1)^{m+n}\langle p_m,p_n\rangle$ なので互いに直交する。prop-op-exist の一意性から $\tilde p_n=p_n$ である。このとき $xp_n^2w$ は奇関数なので、thm-op-recurrence の $\beta_n=\langle xp_n,p_n\rangle/h_n$ は $0$ になる。上の表の Legendre・Chebyshev・Hermite がこの場合である。

主定理 1:3 項漸化式

3 項漸化式

$w$ を $(a,b)$ 上の重み関数、$(p_n)$ をモニック直交多項式、$h_n=\|p_n\|^2$ とし、$p_{-1}:=0$ とおく。$n\ge0$ について
$$ p_{n+1}(x)=(x-\beta_n)p_n(x)-\gamma_np_{n-1}(x),\qquad\beta_n:=\frac{\langle xp_n,p_n\rangle}{h_n},\quad\gamma_n:=\frac{h_n}{h_{n-1}}\ (n\ge1) $$
が成り立つ($n=0$ では $\gamma_0$ の項はない)。特に $\gamma_n>0$ である。

$x$ を内積の反対側へ移す

$xp_n$ と $p_{n+1}$ はどちらも次数 $n+1$ のモニックなので、$r:=xp_n-p_{n+1}$ は $\mathcal{P}_n$ に属する。$p_0,\dots,p_n$ は $\mathcal{P}_n$ の直交基底なので
$$ r=\sum_{k=0}^n\frac{\langle r,p_k\rangle}{h_k}p_k $$
と展開できる。$k\le n$ では $\langle p_{n+1},p_k\rangle=0$ なので、係数の分子は
$$ \langle r,p_k\rangle=\langle xp_n,p_k\rangle=\langle p_n,xp_k\rangle $$
である。

  • $k\le n-2$ のとき、$xp_k$ の次数は $k+1\le n-1$ なので、prop-op-exist の 2 により $\langle p_n,xp_k\rangle=0$ である。
  • $k=n$ のとき、係数は $\langle xp_n,p_n\rangle/h_n=\beta_n$ である。
  • $k=n-1$($n\ge1$)のとき、$xp_{n-1}$ は次数 $n$ のモニックなので $xp_{n-1}=p_n+s$($s\in\mathcal{P}_{n-1}$)と書け、$\langle p_n,xp_{n-1}\rangle=h_n+\langle p_n,s\rangle=h_n$ である。係数は $h_n/h_{n-1}=\gamma_n$ である。
    よって $xp_n-p_{n+1}=\beta_np_n+\gamma_np_{n-1}$ であり、移項すると主張の式になる。$h_n>0$、$h_{n-1}>0$ なので $\gamma_n>0$ である。$\square$

漸化式の係数は重みのモーメントだけで決まり、$p_n$ を計算するのに直交化の長い和はいらない。逆に、漸化式 $p_{n+1}=(x-\beta_n)p_n-\gamma_np_{n-1}$($\beta_n$ は実数、$\gamma_n>0$)で定めた多項式の列は、必ずある正の測度に関して直交する(Favard の定理。測度は重み関数の形 $w(x)\,dx$ とは限らない。DLMF §18.2(viii)。この記事では証明しない)。
漸化式は行列でも書ける。$\boldsymbol{v}(x):=(p_0(x),\dots,p_{n-1}(x))^{\mathsf T}$ とおくと、漸化式の $0$ 番目から $n-1$ 番目までを並べたものは
$$ x\,\boldsymbol{v}(x)=J_n\boldsymbol{v}(x)+p_n(x)\boldsymbol{e}_n,\qquad J_n=\begin{pmatrix}\beta_0&1&&\\\gamma_1&\beta_1&\ddots&\\&\ddots&\ddots&1\\&&\gamma_{n-1}&\beta_{n-1}\end{pmatrix} $$
である($\boldsymbol{e}_n$ は第 $n$ 成分だけが $1$ の単位ベクトル)。$p_n(x_0)=0$ なら $\boldsymbol{v}(x_0)\ne\boldsymbol{0}$(第 1 成分が $p_0=1$)は $J_n$ の固有値 $x_0$ の固有ベクトルなので、$p_n$ の零点は 3 重対角行列 $J_n$ の固有値である。この見方は、零点を数値的に求めるのに使われる(DLMF §18.2(vi)、§3.5(vi))。

主定理 2:零点

零点の位置

$n\ge1$ とする。$p_n$ の根はすべて実数で、重複がなく、開区間 $(a,b)$ に含まれる。

符号を変える点で作った多項式と内積をとる

$(a,b)$ の点のうち、$p_n$ がその前後で符号を変える点を $x_1<\dots< x_m$ とする。$p_n$ は $0$ でない多項式なので、このような点は $p_n$ の根であり、$m\le n$ である。
$m< n$ と仮定して矛盾を導く。$q(x):=\prod_{i=1}^m(x-x_i)$($m=0$ なら $q=1$)とおく。$q$ は各 $x_i$ でちょうど 1 回符号を変え、それ以外では符号を変えない。$p_n$ も $(a,b)$ の中では $x_1,\dots,x_m$ だけで符号を変える。よって積 $p_nq$ は $(a,b)$ のどの点でも符号を変えず、$(a,b)$ 全体で $0$ 以上か、全体で $0$ 以下である。$p_nq$ は $0$ でない多項式なので、$p_nqw$ は $(a,b)$ の有限個の点を除いて $0$ でない連続関数であり、$\langle p_n,q\rangle\ne0$ である。一方 $q$ の次数は $m< n$ なので、prop-op-exist の 2 により $\langle p_n,q\rangle=0$ である。これは矛盾である。
したがって $m=n$ である。$x_1,\dots,x_n$ は $p_n$ の相異なる $n$ 個の根で、$p_n$ の次数は $n$ なので、これが根のすべてであり、どれも重複しない。$\square$

隣り合う次数の零点の並び方を調べるために、漸化式を足し合わせた恒等式を用意する。

Christoffel–Darboux の公式

$n\ge0$ と実数 $x\ne y$ について
$$ \sum_{k=0}^n\frac{p_k(x)p_k(y)}{h_k}=\frac{p_{n+1}(x)p_n(y)-p_n(x)p_{n+1}(y)}{h_n\,(x-y)} $$
であり、$y\to x$ とした形
$$ \sum_{k=0}^n\frac{p_k(x)^2}{h_k}=\frac{p_{n+1}'(x)p_n(x)-p_n'(x)p_{n+1}(x)}{h_n} $$
もすべての実数 $x$ で成り立つ。特に $p_{n+1}'(x)p_n(x)-p_n'(x)p_{n+1}(x)>0$ である。

要点:$A_k:=p_{k+1}(x)p_k(y)-p_k(x)p_{k+1}(y)$ が $A_k/h_k=(x-y)p_k(x)p_k(y)/h_k+A_{k-1}/h_{k-1}$ を満たすことを漸化式から示し、足し合わせる。

詳しい証明を開く

$k\ge0$ について、thm-op-recurrence を $p_{k+1}(x)$ と $p_{k+1}(y)$ に代入すると、$\beta_k$ を含む項は打ち消し合い $A_k=(x-y)p_k(x)p_k(y)+\gamma_k\bigl(p_k(x)p_{k-1}(y)-p_{k-1}(x)p_k(y)\bigr)=(x-y)p_k(x)p_k(y)+\gamma_kA_{k-1}$ となる($k=0$ では $p_{-1}=0$ なので最後の項はなく、$A_{-1}:=0$ と読む)。$\gamma_k/h_k=1/h_{k-1}$ なので、両辺を $h_k$ で割ると $A_k/h_k=(x-y)p_k(x)p_k(y)/h_k+A_{k-1}/h_{k-1}$ である。$k=0,\dots,n$ について足すと $A_n/h_n=(x-y)\sum_{k=0}^np_k(x)p_k(y)/h_k$ となり、第 1 式を得る。

第 2 式:$x$ を固定し、$y$ の多項式 $\alpha(y):=p_{n+1}(x)p_n(y)-p_n(x)p_{n+1}(y)$ を考える。$\alpha(x)=0$ なので、$\alpha(y)/(x-y)=-\bigl(\alpha(y)-\alpha(x)\bigr)/(y-x)$ は $y\to x$ で $-\alpha'(x)=p_{n+1}'(x)p_n(x)-p_n'(x)p_{n+1}(x)$ に近づく。左辺は $y$ の多項式なので連続であり、第 2 式を得る。左辺の和は $k=0$ の項 $p_0^2/h_0=1/h_0>0$ を含み、ほかの項は $0$ 以上なので正である。$\square$

零点の交互性

$n\ge1$ とし、$p_{n+1}$ の根を $y_1<\dots< y_{n+1}$ とする。各開区間 $(y_j,y_{j+1})$($j=1,\dots,n$)には $p_n$ の根がちょうど 1 つずつある。特に $p_n$ と $p_{n+1}$ は共通の根をもたない。

prop-op-cd の第 2 式に $x=y_j$ を代入すると $p_{n+1}(y_j)=0$ なので $p_{n+1}'(y_j)p_n(y_j)>0$ である。特に $p_n(y_j)\ne0$ であり、共通の根はない。thm-op-zeros により $y_j$ は $p_{n+1}$ の単根なので $p_{n+1}'(y_j)\ne0$ である。$p_{n+1}$ は $(y_j,y_{j+1})$ に根をもたないので、そこで一定の符号をとる。$p_{n+1}'(y_j)$ は $x\to y_j+0$ での $p_{n+1}(x)/(x-y_j)$ の極限で $0$ でないから、その符号は区間での $p_{n+1}$ の符号と同じであり、$p_{n+1}'(y_{j+1})$ は $x\to y_{j+1}-0$ での $p_{n+1}(x)/(x-y_{j+1})$ の極限なので符号が逆になる。よって正なら $p_{n+1}'(y_j)>0>p_{n+1}'(y_{j+1})$、負なら $p_{n+1}'(y_j)<0< p_{n+1}'(y_{j+1})$ であり、どちらの場合も $p_{n+1}'(y_j)$ と $p_{n+1}'(y_{j+1})$ は符号が逆である。よって $p_n(y_j)$ と $p_n(y_{j+1})$ も符号が逆であり、中間値の定理 により $(y_j,y_{j+1})$ に $p_n$ の根がある。この $n$ 個の区間は互いに交わらず、$p_n$ の根は全部で $n$ 個なので、各区間にちょうど 1 つずつある。$\square$

交互性を見る

ex-op-legendre で、$p_2=x^2-\frac13$ の根は $\pm\frac1{\sqrt3}=\pm0.577\ldots$、$p_3=x^3-\frac35x$ の根は $0,\pm\sqrt{\frac35}=\pm0.774\ldots$ であり、$-0.774<-0.577<0<0.577<0.774$ と交互に並ぶ。

主定理 3:Gauss 求積

積分 $\int_a^bf(x)w(x)\,dx$ を、$n$ 個の相異なる 節点 $x_1,\dots,x_n\in(a,b)$ と 重み $\lambda_1,\dots,\lambda_n$ を使った和 $\sum_{k=1}^n\lambda_kf(x_k)$ で近似することを考える。節点を任意に選んでも、重みを $\lambda_k:=\int_a^b\ell_k(x)w(x)\,dx$($\ell_k$ は節点に対する Lagrange の基本多項式、$\ell_k(x_j)=\delta_{kj}$)にとれば、次数 $n-1$ 以下の多項式について和は積分に一致する(Lagrange補間 の定理「Lagrange 補間」により $f=\sum_kf(x_k)\ell_k$ だからである)。節点の選び方を工夫すると、正確になる次数をほぼ倍にできる。

Gauss 求積

$n\ge1$ とし、$x_1,\dots,x_n$ を $p_n$ の根、$\ell_k$ をこれらの節点に対する Lagrange の基本多項式、$\lambda_k:=\int_a^b\ell_k(x)w(x)\,dx$ とする。

  1. 次数 $2n-1$ 以下のすべての多項式 $f$ について $\displaystyle\int_a^bf(x)w(x)\,dx=\sum_{k=1}^n\lambda_kf(x_k)$ である。
  2. $\lambda_k=\int_a^b\ell_k(x)^2w(x)\,dx>0$ である。
  3. どのように $n$ 個の点 $t_1,\dots,t_n$ と実数 $c_1,\dots,c_n$ を選んでも、次数 $2n$ のすべての多項式について $\int_a^bfw\,dx=\sum_kc_kf(t_k)$ となることはない。
$p_n$ で割った余りに帰着する

1。 thm-op-zeros により $x_1,\dots,x_n$ は $(a,b)$ の相異なる点なので、$\ell_k$ が定まる。$f$ を $p_n$ で割り、$f=sp_n+r$($s,r\in\mathcal{P}_{n-1}$)と書く。$f$ の次数が $2n-1$ 以下なので商 $s$ の次数は $n-1$ 以下である。prop-op-exist の 2 により $\langle s,p_n\rangle=0$ なので
$$ \int_a^bfw\,dx=\langle s,p_n\rangle+\int_a^brw\,dx=\int_a^brw\,dx $$
である。$r$ の次数は $n-1$ 以下なので、Lagrange補間 の定理「Lagrange 補間」の一意性により $r=\sum_kr(x_k)\ell_k$ であり、$\int_a^brw\,dx=\sum_kr(x_k)\lambda_k$ である。最後に $p_n(x_k)=0$ なので $f(x_k)=r(x_k)$ である。合わせて $\int_a^bfw\,dx=\sum_k\lambda_kf(x_k)$ を得る。
2。 $\ell_k^2$ の次数は $2n-2\le2n-1$ なので 1 が使え、$\ell_k(x_j)=\delta_{kj}$ から
$$ \int_a^b\ell_k^2w\,dx=\sum_{j=1}^n\lambda_j\ell_k(x_j)^2=\lambda_k $$
である。左辺は $0$ でない多項式の 2 乗の積分なので正である。
3。 $f(x):=\prod_{k=1}^n(x-t_k)^2$ は次数 $2n$ で、$\int_a^bfw\,dx=\|\prod_k(x-t_k)\|^2>0$ だが、$\sum_kc_kf(t_k)=0$ である。$\square$

特に、$p_n$ の根を節点にとった公式は、次数 $2n$ の $p_n^2$ では正確でない($\int p_n^2w\,dx=h_n>0$ だが和は $0$)。3 は、$n$ 個の節点で正確にできる次数の上限が $2n-1$ であり、Gauss 求積がそれを達成することを示している。重みが正であることは、丸め誤差に強いことにもつながる。$\sum_k\lambda_k=\int_a^bw\,dx$($f=1$ で 1 を使う)なので、各 $f(x_k)$ の誤差が $\varepsilon$ 以下なら和の誤差は $\varepsilon\int_a^bw\,dx$ 以下である。

Gauss–Legendre 公式

$w=1$、$(a,b)=(-1,1)$ とする(ex-op-legendre)。

  • $n=2$:節点 $\pm\frac1{\sqrt3}$、重み $1,1$。$\int_{-1}^1f\,dx\approx f(-\frac1{\sqrt3})+f(\frac1{\sqrt3})$ は 3 次式まで正確で、$x^4$ では $\frac29\ne\frac25$ となる。
  • $n=3$:節点 $0,\pm\sqrt{\frac35}$。$\ell$ を積分すると、$0$ の重みは $\int_{-1}^1\frac{x^2-3/5}{-3/5}dx=\frac89$、$\pm\sqrt{3/5}$ の重みは $\frac12(2-\frac89)=\frac59$ である(重みの和は $\int_{-1}^1dx=2$)。5 次式まで正確で、たとえば $x^4$ では $2\cdot\frac59\cdot\frac9{25}=\frac25$ となる。
    $\int_{-1}^1e^x\,dx=e-e^{-1}=2.35040\ldots$ に当てると、$n=2$ では $2.34269\ldots$(誤差 $7.7\times10^{-3}$)、$n=3$ では $2.35033\ldots$(誤差 $6.5\times10^{-5}$)である。3 点 $-1,0,1$ を使う Simpson の公式 $\frac13(e^{-1}+4+e)=2.36205\ldots$(誤差 $1.2\times10^{-2}$)よりも、2 点の Gauss 公式のほうが誤差が小さい(台形公式とSimpsonの公式(高校数学))。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
def-op-weight の 1(重みが正)$(-1,1)$ で $w(x)=x$モニックな $p_1$ で $p_0=1$ と直交するものがない(prop-op-exist の 1)
def-op-weight の 2(モーメントの絶対収束)$(-\infty,\infty)$ で $w(x)=\dfrac1{1+x^2}$$\langle x,1\rangle$ が定まらず、$p_1$ の直交性が意味をもたない
重みが区間の上の関数であること(有限個の点だけに重みを置く)$\langle f,g\rangle=\sum_{i=1}^Nf(t_i)g(t_i)$($t_i$ は相異なる実数)次数 $N+1$ のモニック直交多項式が一意でない(prop-op-exist の 1)
thm-op-gauss の、節点を $p_n$ の根にとること$w=1$ の $(-1,1)$ で、節点 $\pm1$・重み $1,1$(台形公式)次数 $2n-1=3$ 以下の多項式で正確でなく、たとえば $x^2$ で誤る
thm-op-gauss の 1 の、次数 $2n-1$ 以下次数 $2n$ の $p_n^2$和は $0$ だが積分は $h_n>0$
反例の確かめ
  1. $w(x)=x$ は $(-1,1)$ で連続で、モーメントは有限だが、$x\le0$ で正でない。どの実数 $c$ についても $\int_{-1}^1(x+c)\,x\,dx=\frac23\ne0$ なので、$x+c$ は $1$ と直交しない。なお $\langle1,1\rangle=\int_{-1}^1x\,dx=0$ であり、この「内積」は正定値でない。
  2. $w=\frac1{1+x^2}$ は $\mathbb{R}$ で連続かつ正だが、$\int_{-\infty}^\infty\frac{|x|}{1+x^2}dx=\infty$ である。
  3. この形式は対称・双線形で $\langle f,f\rangle\ge0$ だが、$q(x):=\prod_{i=1}^N(x-t_i)$ について $\langle q,q\rangle=0$ である。次数 $N+1$ のモニック多項式 $f$ が次数 $N$ 以下のすべての多項式と直交するのは、$t_i$ で値 $1$、ほかの $t_j$ で値 $0$ をとる次数 $N-1$ の多項式(Lagrange補間)との内積を考えると、すべての $i$ で $f(t_i)=0$ となるときに限る。よって $f=q\cdot(x-c)$($c$ は任意の実数)がすべて条件を満たし、一意でない。
  4. 節点 $\pm1$ の Lagrange の基本多項式は $\frac{1\pm x}2$ で、その積分はどちらも $1$ である。$\int_{-1}^1x^2dx=\frac23$ だが、和は $1+1=2$ である。
  5. $p_n(x_k)=0$ なので $\sum_k\lambda_kp_n(x_k)^2=0$ である。

補足

直交多項式による展開

$(a,b)$ が有界な区間なら、重み $w$ の直交多項式の列は、$\int_a^b|f|^2w\,dx<\infty$ を満たす関数の空間 $L^2_w((a,b))$ で完全である。すなわち、そのような $f$ は $\sum_n\frac{\langle f,p_n\rangle}{h_n}p_n$ の部分和で平均 2 乗の意味で近似できる(DLMF §18.2(viii)。この記事では証明しない)。$(-1,1)$ で $w=1$ の場合に、連続関数についてこれを Weierstrassの近似定理 から導く議論は Legendre多項式 にある。部分和が平均 2 乗の意味で最良の近似になることは Besselの不等式 の定理「有限個の場合の等式」にあたる。

離散の直交多項式と距離正則グラフ

有限集合の上の重みでも、ex-op-counterexamples の 3 で見たとおり、次数が点の個数より小さい範囲では直交多項式が定まる。その典型が 距離正則グラフ である。

距離正則グラフから出る直交多項式

直径 $d$、頂点数 $M$ の距離正則グラフの隣接行列を $A$、距離 $i$ の行列を $A_i$ とすると、距離正則グラフ の補題「三項漸化式」から $A_i=v_i(A)$ となる $i$ 次の多項式 $v_i$($0\le i\le d$)がある。$A$ の相異なる固有値を $\theta_0,\dots,\theta_d$、その重複度を $m_j$ とすると
$$ \sum_{j=0}^dm_j\,v_i(\theta_j)\,v_l(\theta_j)=\operatorname{tr}\bigl(A_iA_l\bigr)=\begin{cases}Mk_i&(i=l),\\0&(i\ne l)\end{cases} $$
である($k_i$ は 1 つの頂点から距離 $i$ にある頂点の個数)。左の等号は、対称行列 $A$ を対角化すると $v_i(A)v_l(A)$ の固有値が $v_i(\theta_j)v_l(\theta_j)$(重複度 $m_j$)になることから、右の等号は、$A_iA_l$ の $(x,x)$ 成分が $d(x,y)=i$ かつ $d(y,x)=l$ を満たす頂点 $y$ の個数であることから従う。したがって $v_0,\dots,v_d$ は、$d+1$ 個の点 $\theta_j$ に重み $m_j$ を置いた内積に関して直交する。漸化式 $xv_i=b_{i-1}v_{i-1}+a_iv_i+c_{i+1}v_{i+1}$($a_i,b_i,c_i$ はグラフの交差数で、区間の端点 $a,b$ とは関係がない)は、$v_i$ の最高次の係数で割ると thm-op-recurrence の形の 3 項漸化式になる。この見方は BH11 §11.6(pp. 170–171)や vDKT16 §2.5(p. 13)にある。

一般の測度

重み $w(x)\,dx$ の代わりに、すべてのモーメントが有限で、台が無限集合である正の測度 $\mu$ を使っても、$\langle f,g\rangle=\int fg\,d\mu$ は多項式全体の上の内積になる。このときもモニック直交多項式が一意に存在し、3 項漸化式、零点が相異なる実数であること、交互性、Gauss 求積の 1–3 が同じ証明で成り立つ(定義は DLMF §18.2(i))。上の証明で重みの連続性と正値性を使ったのは、$0$ 以上で $0$ でない多項式の積分が正であることを示すところだけである。$\mu$ の台が無限集合なら、$0$ でない多項式が $0$ になる有限個の点の外にも $\mu$ の重みが残るので、この性質は保たれる。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する