軌跡の求め方

同義語:finding loci

概要

軌跡の求め方(finding loci)とは、条件 $C$ を満たす点全体の集合 $L$(軌跡)が図形 $F$ に等しいことを、2 つの包含「$C$ を満たす点は $F$ 上にある」と「$F$ 上の点は $C$ を満たす」に分けて示す考え方である。条件を同値変形だけで「$F$ 上にある」まで書きかえれば両方が一度に示されるが、両辺が $0$ 以上と限らない量の 2 乗や、媒介変数 $t$ の消去は同値変形とは限らない。点が $(f(t),g(t))$($t\in I$)と与えられるとき、軌跡は写像 $t\mapsto(f(t),g(t))$ の像であり、$t$ を消した方程式の表す図形のうち「その点に対応する $t\in I$ が存在する」部分だけになる。$t$ の範囲が制限されたり、媒介変数で表しきれない場合があったりすると、範囲の制限や除外点が生じる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 円と直線の位置関係, 集合と論理:必要条件・十分条件, 直線の方程式と点と直線の距離

高校での出発点:条件を式にして、図形を読む

数学 II では、「ある条件を満たす点が描く図形」を 軌跡 と呼び、座標を使って求める。手順は次の 3 つである。

  1. 条件を満たす点を $P(x,y)$ とおき、条件を $x$、$y$ の式で表す。
  2. 式を変形して、それが表す図形 $F$ を読む。
  3. 逆に、$F$ 上のどの点も条件を満たすかを確かめる。満たさない点があれば除く。
    手順 3 はよく忘れられるが、これを飛ばすと答えが変わる例がある。まず手順 3 が自然に済む例を 2 つ見る。
2 点から等しい距離にある点

2 点 $A(0,0)$、$B(4,2)$ から等しい距離にある点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
手順 1。条件は $PA=PB$ である。$PA$、$PB$ は $0$ 以上なので、これは $PA^2=PB^2$ と同値で、
$$ x^2+y^2=(x-4)^2+(y-2)^2 $$
と書ける。
手順 2。右辺を展開すると $x^2-8x+16+y^2-4y+4$ なので、両辺から $x^2+y^2$ を引いて $0=-8x-4y+20$、つまり $2x+y=5$ である。これは直線を表す。
手順 3。手順 1・2 の変形はどれも逆にたどれる(同値変形である)ので、直線 $2x+y=5$ 上のどの点も $PA=PB$ を満たす。たとえば $AB$ の中点 $(2,1)$ は $2\cdot2+1=5$ を満たし、$(0,5)$ も $2\cdot0+5=5$ を満たす。$(0,5)$ では $PA=5$、$PB=\sqrt{16+9}=5$ で、たしかに等しい。
答えは直線 $2x+y=5$ である。これは線分 $AB$ の垂直二等分線である(傾き $-2$ は $AB$ の傾き $\dfrac12$ と積が $-1$)。

距離の比が 2:1 の点

2 点 $A(0,0)$、$B(3,0)$ について、$PA:PB=2:1$ を満たす点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
手順 1。条件は $PA=2PB$ で、両辺が $0$ 以上なので $PA^2=4PB^2$ と同値である。
$$ x^2+y^2=4\bigl((x-3)^2+y^2\bigr) $$
手順 2。右辺は $4x^2-24x+36+4y^2$ なので、移項すると $0=3x^2+3y^2-24x+36$、両辺を $3$ で割って $x^2+y^2-8x+12=0$ である。平方完成すると $x^2-8x=(x-4)^2-16$ なので
$$ (x-4)^2+y^2=4 $$
で、中心 $(4,0)$、半径 $2$ の円である。
手順 3。変形はすべて同値変形なので、この円上のどの点も条件を満たす。たとえば円と $x$ 軸の交点 $(2,0)$ では $PA=2$、$PB=1$、$(6,0)$ では $PA=6$、$PB=3$ で、どちらも比は $2:1$ である。
答えは中心 $(4,0)$、半径 $2$ の円である(図 1)。このような円を Apollonius の円 という。

A(0, 0)、B(3, 0) からの距離の比が 2:1 の点(右の円)、1:2 の点(左の円)、1:1 の点(垂直二等分線)。赤い点は AB を 2:1 に内分・外分する点 A(0, 0)、B(3, 0) からの距離の比が 2:1 の点(右の円)、1:2 の点(左の円)、1:1 の点(垂直二等分線)。赤い点は AB を 2:1 に内分・外分する点
2 つの例では、手順 3 は「変形がすべて同値変形だった」の一言で済んだ。同値でない変形(たとえば、文字を消すために片方の式だけを使う変形)を含むと、手順 3 で除く点や、足りない範囲が出てくる。この記事では次の問いに答える。

  1. 「軌跡が図形 $F$ である」とは、正確には何を示すことなのか。→ def-loc-locus、thm-loc-two-inclusions
  2. 同値変形だけで進めれば、手順 3 は要らないのはなぜか。→ cor-loc-equivalent
  3. 動く点が別の文字(媒介変数)で与えられたとき、その文字を消すと何が起こるか。→ thm-loc-parameter、ex-loc-half-line
  4. 除外点はどこから出てくるのか。→ ex-loc-two-lines
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    条件を式にする・図形を読む条件を満たす点の集合が $F$ に含まれる(thm-loc-two-inclusions の (i))集合の包含
    逆の確認・除外点$F$ の点が条件を満たす(同じく (ii))逆向きの包含
    媒介変数を消去する「ある $t$ が存在する」を $x$、$y$ だけの条件に書きかえる(thm-loc-parameter)写像の像、射影
    消去で範囲が消える存在の条件を落とす(ex-loc-half-line)像が方程式の零点集合の一部になる

取り出す構造:軌跡は集合である

軌跡

平面上の点についての条件 $C$ が与えられたとき、$C$ を満たす点全体の集合
$$ L=\{P: P\text{ は条件 }C\text{ を満たす}\} $$
を、条件 $C$ を満たす点の 軌跡 という。平面上の図形(点の集合)$F$ について「軌跡は $F$ である」とは、集合として $L=F$ であることをいう。

「図形」は、ここでは点の集合のことである。直線は方程式 $ax+by+c=0$ を満たす点の集合、円は $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ を満たす点の集合である(円と直線の位置関係)。

軌跡を集合で書く
  1. ex-loc-hs-bisector の軌跡は $L=\{P: PA=PB\}$ で、答えは $L=\{(x,y): 2x+y=5\}$ という集合の等式である。
  2. 原点からの距離が $1$ 以下の点の軌跡は $\{(x,y): x^2+y^2\le1\}$ で、これは円の周と内部をあわせた図形(円板)である。軌跡は曲線になるとは限らず、面積をもつ図形にもなる。この形の軌跡は 不等式の表す領域と線形計画法 で扱う。

集合の等式を示すには、2 つの包含を示す。

軌跡を示す 2 つの向き

条件 $C$ を満たす点の軌跡を $L$、図形を $F$ とする。$L=F$ であることは、次の (i)、(ii) がともに成り立つことと同値である。

  • (i) 条件 $C$ を満たす点は、すべて $F$ 上にある($L\subset F$)。
  • (ii) $F$ 上の点は、すべて条件 $C$ を満たす($F\subset L$)。
集合の等式は 2 つの包含

方針:2 つの集合が等しいことの定義「同じ要素をもつ」を、2 つの向きに分ける。
段 1($L=F$ なら (i)、(ii))。$L=F$ とする。$P$ が条件 $C$ を満たせば $P\in L=F$ なので (i) が成り立つ。$P\in F$ なら $P\in L$、つまり $P$ は条件 $C$ を満たすので (ii) が成り立つ。
段 2((i)、(ii) なら $L=F$)。(i) と (ii) を仮定する。$P\in L$ なら (i) により $P\in F$ である。$P\in F$ なら (ii) により $P\in L$ である。したがって $L$ と $F$ は同じ要素をもち、$L=F$ である。$\square$

(i) は「条件 $C$ は、$F$ 上にあるための十分条件」、(ii) は「条件 $C$ は、$F$ 上にあるための必要条件」と言いかえられる。つまり「軌跡が $F$」は「条件 $C$ と『$F$ 上にある』が必要十分条件」ということである(条件と集合の包含の対応は 集合と論理:必要条件・十分条件 で扱う)。
高校の手順 1・2 は (i) を示し、手順 3 は (ii) を示す。(i) だけでは、$F$ が本当の軌跡より大きすぎる可能性が残る。

(i) だけでは足りない

ex-loc-hs-apollonius の条件 $PA=2PB$ を満たす点は、どれも平面上の点である。だから $F'$ を平面全体とすると、「条件を満たす点は $F'$ 上にある」という (i) は正しい。しかし原点 $(0,0)$ では $PA=0$、$PB=3$ で条件を満たさないので、(ii) は成り立たず、軌跡は平面全体ではない。極端な例だが、手順 3 を飛ばすと、このように大きすぎる答えを出すおそれがある。
反対に、(ii) だけを確かめても足りない。円 $(x-4)^2+y^2=4$ の上半分の点はすべて条件を満たすが、軌跡は上半分だけではない(下半分の点 $(4,-2)$ でも $PA=\sqrt{20}=2\sqrt5$、$PB=\sqrt{1+4}=\sqrt5$ で条件を満たす)。

同値変形なら 1 度で済む

条件 $C$ を、同値な条件の列 $C\iff C_1\iff C_2\iff\dots\iff C_k$ で書きかえ、最後の $C_k$ が「$F$ 上にある」ことだとする。このとき軌跡は $F$ である。

同値の鎖を両方向にたどる

方針:thm-loc-two-inclusions の (i)、(ii) を、同値の鎖を右向き・左向きにたどって示す。
段 1((i))。$P$ が条件 $C$ を満たすとする。$C\Rightarrow C_1$ から $P$ は $C_1$ を満たし、同じく $C_1\Rightarrow C_2$、…、$C_{k-1}\Rightarrow C_k$ を順に使うと $P$ は $C_k$ を満たす。つまり $P$ は $F$ 上にある。
段 2((ii))。$P$ が $F$ 上にある、つまり $C_k$ を満たすとする。$C_k\Rightarrow C_{k-1}$、…、$C_1\Rightarrow C$ を順に使うと、$P$ は $C$ を満たす。
段 3。thm-loc-two-inclusions により、軌跡は $F$ である。$\square$

ex-loc-hs-bisector と ex-loc-hs-apollonius は、どの段も同値変形だったので cor-loc-equivalent が使えた。ただし、2 乗する変形が同値なのは両辺が $0$ 以上のときだけである。$PA=2PB$ と $PA^2=4PB^2$ が同値なのは、$PA$、$2PB$ がどちらも $0$ 以上だからである。$0$ 以上と限らない量を 2 乗すると、同値でなくなる。

2 乗で同値が崩れる

条件「$x=\sqrt{1-y^2}$」を満たす点 $(x,y)$ の軌跡を考える。両辺を 2 乗すると $x^2=1-y^2$、つまり $x^2+y^2=1$ で、単位円になる。しかし単位円上の点 $(-1,0)$ では左辺 $x=-1$、右辺 $\sqrt{1-0}=1$ で、条件を満たさない。
2 乗する前の条件では $x=\sqrt{1-y^2}\ge0$ なので、正しくは「$x^2+y^2=1$ かつ $x\ge0$」と同値である。軌跡は単位円の右半分(点 $(0,1)$、$(0,-1)$ を含む)である。

一般の比での Apollonius の円

ex-loc-hs-apollonius の比 $2:1$ を一般の比 $k:1$ に替えても、同じ計算ができる。

比 $k:1$ の軌跡

$c>0$、$k>0$ とし、$A(0,0)$、$B(c,0)$ について $PA:PB=k:1$、つまり $PA=kPB$ を満たす点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
段 1。両辺が $0$ 以上なので、条件は $PA^2=k^2PB^2$、つまり
$$ x^2+y^2=k^2\bigl((x-c)^2+y^2\bigr) $$
と同値である。右辺を展開して移項すると
$$ (1-k^2)(x^2+y^2)+2k^2cx-k^2c^2=0 $$
となる。
段 2($k=1$ のとき)。$x^2+y^2$ の係数が $0$ なので、$2cx-c^2=0$、つまり $x=\dfrac c2$ である。軌跡は線分 $AB$ の垂直二等分線である。
段 3($k\ne1$ のとき)。両辺を $1-k^2\ne0$ で割ると $x^2+y^2-\dfrac{2k^2c}{k^2-1}x+\dfrac{k^2c^2}{k^2-1}=0$ である。$x_0=\dfrac{k^2c}{k^2-1}$ とおいて平方完成すると
$$ (x-x_0)^2+y^2=x_0^2-\frac{k^2c^2}{k^2-1} $$
である。右辺は
$$ \frac{k^4c^2}{(k^2-1)^2}-\frac{k^2c^2(k^2-1)}{(k^2-1)^2}=\frac{k^2c^2\bigl(k^2-(k^2-1)\bigr)}{(k^2-1)^2}=\frac{k^2c^2}{(k^2-1)^2} $$
で、正である。よって軌跡は中心 $\left(\dfrac{k^2c}{k^2-1},0\right)$、半径 $\dfrac{kc}{|k^2-1|}$ の円である。すべて同値変形なので、cor-loc-equivalent により、この円全体が軌跡である。
段 4(数値で確かめる)。$k=2$、$c=3$ では、中心は $\left(\dfrac{4\cdot3}{3},0\right)=(4,0)$、半径は $\dfrac{2\cdot3}3=2$ で、ex-loc-hs-apollonius と一致する。$k=\dfrac12$、$c=3$ では、中心は $\left(\dfrac{\frac14\cdot3}{-\frac34},0\right)=(-1,0)$、半径は $\dfrac{\frac32}{\frac34}=2$ である(図 1 の左の円)。
段 5($x$ 軸との交点)。$k>1$ とする。円と $x$ 軸の交点の $x$ 座標は「中心 $\pm$ 半径」で、$k^2-1>0$ なので
$$ \frac{k^2c\pm kc}{k^2-1}=\frac{kc(k\pm1)}{(k-1)(k+1)} $$
である。複号の $+$ をとると $\dfrac{kc}{k-1}$、$-$ をとると $\dfrac{kc}{k+1}$ になる。$\dfrac{kc}{k+1}$ は線分 $AB$ を $k:1$ に内分する点、$\dfrac{kc}{k-1}$ は $k:1$ に外分する点の $x$ 座標である。$k=2$、$c=3$ なら
$$ \frac{2\cdot3}{2+1}=2,\qquad \frac{2\cdot3}{2-1}=6 $$
で、図 1 の赤い点 $(2,0)$、$(6,0)$ である。
$0< k<1$ のときは、半径が $\dfrac{kc}{1-k^2}=-\dfrac{kc}{k^2-1}$ なので、「中心 $\pm$ 半径」は複号を入れ替えただけの同じ 2 数 $\dfrac{k^2c\mp kc}{k^2-1}$ になり、交点の $x$ 座標はやはり $\dfrac{kc}{k+1}$ と $\dfrac{kc}{k-1}$ である。このときも $\dfrac{kc}{k+1}$ は $k:1$ に内分する点、$\dfrac{kc}{k-1}$(負の数)は $k:1$ に外分する点の $x$ 座標である。$k=\dfrac12$、$c=3$ なら
$$ \frac{\frac32}{\frac32}=1,\qquad \frac{\frac32}{-\frac12}=-3 $$
で、中心 $(-1,0)$、半径 $2$ の円(段 4)の $x$ 軸との交点と一致する。

Apollonius の円は、$AB$ を $k:1$ に内分する点と外分する点を直径の両端とする円である(ex-loc-apollonius-general の段 5)。内分点・外分点の座標は 内分点・外分点の座標 で扱う。

主定理:媒介変数を消去するとき

動く点が、別の文字 $t$(媒介変数)を使って $P_t=(f(t),g(t))$ と与えられることがある。このとき軌跡は
$$ L=\{(f(t),g(t)): t\text{ は範囲 }I\text{ を動く}\} $$
で、点 $(x,y)$ が $L$ に属するのは「$x=f(t)$、$y=g(t)$ を満たす $t\in I$ が存在する」ときである。$t$ を消して $x$、$y$ だけの式にするとき、「存在する」の部分を落とさないことが要点になる。

媒介変数の消去

$I$ を実数の範囲とし、点 $P_t=(f(t),g(t))$($t\in I$)の軌跡を $L$ とする。$x=f(t)$ が $t$ について $t=h(x)$ とただ 1 通りに解けるとする。正確には、$J=\{f(t): t\in I\}$ とおき、$J$ の各 $x$ に対して $f(t)=x$ となる $t\in I$ がちょうど 1 つあり、それが $h(x)$ であるとする。このとき
$$ L=\{(x,y): x\in J\text{ かつ }y=g(h(x))\} $$
である。

2 つの包含を示す

方針:thm-loc-two-inclusions と同じく、右辺の集合を $F$ として $L\subset F$ と $F\subset L$ を示す。
段 1($L\subset F$)。$(x,y)\in L$ とすると、ある $t\in I$ で $x=f(t)$、$y=g(t)$ である。$x=f(t)$ なので $x\in J$ である。$f(t)=x$ となる $t\in I$ はただ 1 つで、それが $h(x)$ なので、$t=h(x)$ である。よって $y=g(t)=g(h(x))$ で、$(x,y)\in F$ である。
段 2($F\subset L$)。$(x,y)\in F$ とすると、$x\in J$ かつ $y=g(h(x))$ である。$t=h(x)$ とおくと、$h$ の決め方から $t\in I$ かつ $f(t)=x$ である。さらに $g(t)=g(h(x))=y$ である。よって $(x,y)=(f(t),g(t))$ で、$(x,y)\in L$ である。
段 3。段 1、段 2 から $L=F$ である。$\square$

定理の中で「$x\in J$」という条件が残ることに注意する。$t$ の動く範囲 $I$ が狭いと $J$ も狭くなり、軌跡は曲線 $y=g(h(x))$ の一部になる。

放物線の頂点の軌跡

$t$ を実数とし、放物線 $y=x^2-2tx+2t$ の頂点の軌跡を求める。
段 1(頂点)。平方完成すると $x^2-2tx+2t=(x-t)^2-t^2+2t$ なので、頂点は $(t,\ -t^2+2t)$ である(2次関数の最大・最小)。
段 2($t$ が実数全体を動くとき)。$f(t)=t$、$g(t)=-t^2+2t$ である。$x=f(t)$ は $t=x$ とただ 1 通りに解けて、$J$ は実数全体である。thm-loc-parameter により、軌跡は放物線 $y=-x^2+2x$ 全体である。
段 3($t>0$ に限るとき)。$I=\{t: t>0\}$ なら $J=\{x: x>0\}$ で、軌跡は放物線 $y=-x^2+2x$ のうち $x>0$ の部分である。たとえば点 $(-1,-3)$ は $y=-x^2+2x$ を満たすが、$t=-1$ にあたるので、この場合の軌跡には入らない。

$t$ を消すと範囲が消える

$t$ が実数全体を動くとき、点 $P_t=(t^2,\ t^2+1)$ の軌跡を求める。
$x=t^2$、$y=t^2+1$ から $t^2$ を消すと $y=x+1$ である。しかし直線 $y=x+1$ 全体が軌跡ではない。たとえば点 $(-1,0)$ は $y=x+1$ を満たすが、$t^2=-1$ となる実数 $t$ はないので、軌跡の点ではない。
正しくは次のように考える。$(x,y)$ が軌跡に属するのは、$x=t^2$ かつ $y=t^2+1$ を満たす実数 $t$ が存在するときである。これは「$y=x+1$ かつ、$t^2=x$ を満たす実数 $t$ が存在する」と同値で、後半は $x\ge0$ と同値である($x\ge0$ なら $t=\sqrt x$ がとれ、$x<0$ なら $t^2\ge0>x$)。軌跡は半直線 $y=x+1$($x\ge0$)で、端の点 $(0,1)$($t=0$)を含む(図 2)。
この例では $x=t^2$ が $t$ についてただ 1 通りには解けない($t=\pm\sqrt x$)ので、thm-loc-parameter はそのままは使えない。それでも「$t$ が存在する条件」を書けば、同じように範囲が求まる。

点 (t², t² + 1) の軌跡。t を消した式 y = x + 1 は直線全体を表すが、軌跡は x ≧ 0 の半直線だけである 点 (t², t² + 1) の軌跡。t を消した式 y = x + 1 は直線全体を表すが、軌跡は x ≧ 0 の半直線だけである

2 直線の交点の軌跡と除外点

点が式で直接与えられず、2 つの図形の交点として与えられることもある。このときも「$t$ が存在する条件」を調べればよい。

除外点が出る例

$m$ を実数とし、2 直線
$$ \ell_1:\ mx-y=0,\qquad \ell_2:\ x+my-2=0 $$
の交点の軌跡を求める。$\ell_1$ は原点を通り、$\ell_2$ は点 $(2,0)$ を通る。法線ベクトル $(m,-1)$ と $(1,m)$ の内積は $m-m=0$ なので、2 直線は垂直である(直線の方程式と点と直線の距離)。
段 1(条件を書く)。点 $(x,y)$ が軌跡に属するのは、$mx-y=0$ かつ $x+my-2=0$ を満たす実数 $m$ が存在するときである。
段 2($x=0$ の場合)。$x=0$ なら、1 つ目の式から $y=0$ で、2 つ目の式は $0+0-2=0$ となり成り立たない。よって $x=0$ の点は軌跡に属さない。
段 3($x\ne0$ の場合)。1 つ目の式は $m=\dfrac yx$ と同値である。これを 2 つ目の式に代入すると $x+\dfrac{y^2}x-2=0$ で、両辺に $x\ne0$ を掛けると $x^2+y^2-2x=0$ となる。$x\ne0$ なのでこの変形は同値で、$m=\dfrac yx$ は実数として確かに存在する。よって、$x\ne0$ の点 $(x,y)$ が軌跡に属することは $x^2+y^2-2x=0$ と同値である。
段 4(答え)。$x^2+y^2-2x=0$ は $(x-1)^2+y^2=1$、つまり中心 $(1,0)$、半径 $1$ の円である。この円の上で $x=0$ となるのは $y^2=0$ のとき、つまり原点 $(0,0)$ だけである。したがって軌跡は、円 $(x-1)^2+y^2=1$ から原点を除いたものである(図 3)。
段 5(確かめ)。$m=0$ なら $\ell_1$ は $y=0$、$\ell_2$ は $x=2$ で、交点 $(2,0)$ は円の上にある。$m=\dfrac12$ なら交点は $\left(\dfrac85,\dfrac45\right)$ で、$\dfrac{64}{25}+\dfrac{16}{25}-\dfrac{16}5=\dfrac{80-80}{25}=0$ となり、円の上にある。

直線 y = mx と x + my = 2 の交点は、原点 O と点 (2, 0) を直径の両端とする円の上を動く。ただし原点には来ない 直線 y = mx と x + my = 2 の交点は、原点 O と点 (2, 0) を直径の両端とする円の上を動く。ただし原点には来ない
除外点 $(0,0)$ は、$\ell_1$ が $y$ 軸 $x=0$、$\ell_2$ が $x$ 軸 $y=0$ になったときの交点である。$y$ 軸は $mx-y=0$ の形に書けない(傾きをもたない)ので、この 2 直線の組は $m$ で表した族に入っていない。除外点は「媒介変数で表しきれなかった場合」から生じている。傾きで表すと $y$ 軸に平行な直線が抜け落ちる現象は、円と直線の位置関係 で接線を求めるときにも起こる。
また、点 $K(2,0)$ をとると、2 直線は垂直なので、交点 $P$ では $\angle OPK$ が直角である($P=K$ の場合を除く)。「直径を見込む角は直角」という円周角の定理の逆からも、$P$ が $O$ と $(2,0)$ を直径の両端とする円の上にあることが分かる(円周角の定理(高校数学))。座標による計算は、この図形的な事実を除外点まで含めて正確に述べたものである。

数学オリンピックの問題から

1959 年第 5 問:正方形の中心の中点

国際数学オリンピック(1959 年)第 5 問

線分 $AB$ の内部に任意の点 $M$ をとる。$AM$、$MB$ をそれぞれ 1 辺とする正方形 $AMCD$、$MBEF$ を、$AB$ に関して同じ側に作る。これらの正方形の外接円は、中心をそれぞれ $P$、$Q$ とし、$M$ ともう 1 つの点 $N$ で交わる。直線 $AF$ と $BC$ の交点を $N'$ とする。
(a) 点 $N$ と $N'$ が一致することを示せ。
(b) 直線 $MN$ は、$M$ の選び方によらない定点 $S$ を通ることを示せ。
(c) $M$ が $A$ と $B$ の間を動くとき、線分 $PQ$ の中点の軌跡を求めよ。
出典:国際数学オリンピック(1959 年)第 5 問 Oly59。筆者による和訳。この記事では軌跡を問う (c) だけを扱う。

高校数学で解く:座標をとって媒介変数を消す

方針:$AB$ を $x$ 軸にとり、$AM$ の長さ $m$ を媒介変数として中点の座標を $m$ で表し、thm-loc-parameter を使う。
段 1(座標)。$AB=a$ とし、$A(0,0)$、$B(a,0)$、$M(m,0)$ とおく。$M$ は線分 $AB$ の内部の点なので $0< m< a$ である。正方形は $x$ 軸の上側に作るとする。
段 2(中心 $P$、$Q$)。正方形 $AMCD$ の頂点は $A(0,0)$、$M(m,0)$、$C(m,m)$、$D(0,m)$ である。正方形の外接円の中心は対角線の中点なので、$P$ は $AC$ の中点 $\left(\dfrac m2,\dfrac m2\right)$ である。正方形 $MBEF$ の頂点は $M(m,0)$、$B(a,0)$、$E(a,a-m)$、$F(m,a-m)$ で、$Q$ は $ME$ の中点 $\left(\dfrac{m+a}2,\dfrac{a-m}2\right)$ である。
段 3(中点 $R$)。$PQ$ の中点 $R$ は
$$ R=\left(\frac12\Bigl(\frac m2+\frac{m+a}2\Bigr),\ \frac12\Bigl(\frac m2+\frac{a-m}2\Bigr)\right)=\left(\frac a4+\frac m2,\ \frac a4\right) $$
である。$y$ 座標は $m$ によらず $\dfrac a4$ である。
段 4(媒介変数の消去)。$f(m)=\dfrac a4+\dfrac m2$、$g(m)=\dfrac a4$、$I=\{m: 0< m< a\}$ とする。$x=\dfrac a4+\dfrac m2$ は $m=2x-\dfrac a2$ とただ 1 通りに解ける。$m$ が $0< m< a$ を動くと、$x$ は $\dfrac a4< x<\dfrac{3a}4$ を動く($m=2x-\dfrac a2$ に $0< m< a$ を代入して $x$ について解けばよい)。thm-loc-parameter により、軌跡は
$$ \left\{(x,y): \frac a4< x<\frac{3a}4,\ y=\frac a4\right\} $$
である。
段 5(図形で言う)。$AB$ 上に同じ側に作った正方形の中心を $O\left(\dfrac a2,\dfrac a2\right)$ とすると、$AO$ の中点は $\left(\dfrac a4,\dfrac a4\right)$、$BO$ の中点は $\left(\dfrac{3a}4,\dfrac a4\right)$ である。軌跡は、この 2 点を結ぶ線分から両端を除いたものである(図 4)。両端は $m=0$、$m=a$ にあたり、$M$ が $A$ や $B$ に一致して正方形がつぶれる場合なので、含まれない。$\square$

AB = 4、AM = 1.2 のときの 2 つの正方形と中心 P、Q。M を動かすと PQ の中点は高さ 1 の線分(両端を除く)の上を動く AB = 4、AM = 1.2 のときの 2 つの正方形と中心 P、Q。M を動かすと PQ の中点は高さ 1 の線分(両端を除く)の上を動く

大学数学で見る:1 次式で動く点の像

段 2 の $P$、$Q$ は、どちらも $m$ の 1 次式で動く。$P=\left(\dfrac m2,\dfrac m2\right)$ は直線 $y=x$ の上を、$Q=\left(\dfrac{a+m}2,\dfrac{a-m}2\right)$ は直線 $x+y=a$ の上を動く。一般に、2 点 $P$、$Q$ が同じ媒介変数の 1 次式 $P=P_0+m\,u$、$Q=Q_0+m\,v$ で動くとき、中点は
$$ \frac{P+Q}2=\frac{P_0+Q_0}2+m\,\frac{u+v}2 $$
で、これも $m$ の 1 次式である。1 次式で動く点は、$\dfrac{u+v}2\ne0$ なら直線の上を動き、$m$ の範囲が区間なら、軌跡はその区間の 像 である線分(区間が端を含まなければ、両端を除いた線分)になる。この問題では $u=\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$、$v=\left(\dfrac12,-\dfrac12\right)$ で、$\dfrac{u+v}2=\left(\dfrac12,0\right)$ が水平なので、中点は水平に動く。
「中点」を「$s:t$ の内分点」に替えても、内分点の座標は $P$、$Q$ の座標の 1 次式 $\dfrac{tP+sQ}{s+t}$ なので、同じ議論が使える(内分点・外分点の座標)。この見方では、prf-loc-oly59-hs の計算は「写像 $m\mapsto R(m)$ の像を求める」ことであり、写像が 1 次式なので像は線分になる、と一言で言える(像(写像))。

大学数学で見る:軌跡は写像の像

thm-loc-parameter の軌跡 $L=\{(f(t),g(t)): t\in I\}$ は、写像 $\varphi\colon I\to\mathbb{R}^2$、$\varphi(t)=(f(t),g(t))$ の 像 $\varphi(I)$ である(写像、像(写像))。
もう 1 つの見方として、$t$、$x$、$y$ の 3 つの座標をもつ空間の中の集合
$$ \widetilde L=\{(t,x,y): t\in I,\ x=f(t),\ y=g(t)\} $$
を考える。$(t,x,y)$ から $(x,y)$ への写像($t$ 座標を忘れる写像。射影 という)で $\widetilde L$ を写すと、$L$ になる。「$t$ が存在する条件を求める」ことは、この射影の像を計算することである。

消去した方程式と軌跡のずれ

$t$ を消去して得た方程式を $E(x,y)=0$ とすると、軌跡 $L$ はいつも $E(x,y)=0$ の表す図形に含まれるが、一致するとは限らない。この記事の例では、ずれ方が 2 種類あった。

  1. 範囲のずれ(ex-loc-half-line):$L$ は半直線、$E=0$ は直線 $y=x+1$。$t^2=x$ を満たす実数 $t$ がないことが原因で、実数だけで考えることから生じる。複素数の範囲で考えると、どの $x$ にも $t^2=x$ を満たす $t$ があるので、このずれは消える。
  2. 点のずれ(ex-loc-two-lines):$L$ は円から 1 点を除いたもの、$E=0$ は円全体。こちらは複素数で考えても消えない。$x=0$ とすると $y^2=0$ から $y=0$ で、段 2 と同じく $m$ は存在しない。原因は、傾き $m$ では $y$ 軸に平行な直線が表せないことである。傾きに「無限大」を付け加えて、原点を通る直線全体を 1 つの媒介変数で表すと、除外点も埋まる(射影空間 の最も簡単な場合である射影直線の考え方)。
    多項式で与えられた連立方程式から文字を消去する一般的な道具として、終結式 がある(終結式)。この記事では使わない。

例と反例

この記事の主張がどの仮定に支えられているかを、仮定を外した例で確かめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
(ii)「図形の点が条件を満たす」を確かめる求めた図形が軌跡に一致するex-loc-only-one-way
2 乗する両辺が $0$ 以上(同値変形)2 乗した式の図形全体が軌跡ex-loc-squaring
媒介変数が実数全体を動く消去した式の曲線全体が軌跡ex-loc-vertex の段 3
$t$ が存在する条件を残す消去した式の図形全体が軌跡ex-loc-half-line
媒介変数で必要な場合をすべて表せる除外点が出ないex-loc-two-lines
比が $k\ne1$Apollonius の軌跡は円である($k=1$ では直線)ex-loc-apollonius-general の段 2

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  • 軌跡は曲線とは限らない。直線や円が媒介変数とともに動くとき、それらが通る点全体(通過領域)は面積をもつ図形になる。この求め方は 通過領域と包絡線 で扱う。不等式で表される点の集合は 不等式の表す領域と線形計画法 で扱う。
  • 定点と定直線からの距離が等しい点の軌跡は放物線で、同じ手順で 2 次曲線が現れる(2次曲線の焦点と準線)。
  • Apollonius の円の族は、複素数平面の 1 次分数変換(Möbius 変換)と深く結びついている。$k$ を $0$ より大きい範囲で動かしたときの Apollonius の円($k=1$ の直線も含める)の全体は、$A$、$B$ を固定する 1 次分数変換で、同じ全体の中の円(または直線)に写される(Hit18 の Theorem 3.2.14 と §3.5。この記事では証明しない)。詳しくは Apolloniusの円 と w=1/z による図形の変換 で扱う。

関連項目

参考文献

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