軌跡の求め方(finding loci)とは、条件 $C$ を満たす点全体の集合 $L$(軌跡)が図形 $F$ に等しいことを、2 つの包含「$C$ を満たす点は $F$ 上にある」と「$F$ 上の点は $C$ を満たす」に分けて示す考え方である。条件を同値変形だけで「$F$ 上にある」まで書きかえれば両方が一度に示されるが、両辺が $0$ 以上と限らない量の 2 乗や、媒介変数 $t$ の消去は同値変形とは限らない。点が $(f(t),g(t))$($t\in I$)と与えられるとき、軌跡は写像 $t\mapsto(f(t),g(t))$ の像であり、$t$ を消した方程式の表す図形のうち「その点に対応する $t\in I$ が存在する」部分だけになる。$t$ の範囲が制限されたり、媒介変数で表しきれない場合があったりすると、範囲の制限や除外点が生じる。
前提知識: 円と直線の位置関係, 集合と論理:必要条件・十分条件, 直線の方程式と点と直線の距離
数学 II では、「ある条件を満たす点が描く図形」を 軌跡 と呼び、座標を使って求める。手順は次の 3 つである。
2 点 $A(0,0)$、$B(4,2)$ から等しい距離にある点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
手順 1。条件は $PA=PB$ である。$PA$、$PB$ は $0$ 以上なので、これは $PA^2=PB^2$ と同値で、
$$
x^2+y^2=(x-4)^2+(y-2)^2
$$
と書ける。
手順 2。右辺を展開すると $x^2-8x+16+y^2-4y+4$ なので、両辺から $x^2+y^2$ を引いて $0=-8x-4y+20$、つまり $2x+y=5$ である。これは直線を表す。
手順 3。手順 1・2 の変形はどれも逆にたどれる(同値変形である)ので、直線 $2x+y=5$ 上のどの点も $PA=PB$ を満たす。たとえば $AB$ の中点 $(2,1)$ は $2\cdot2+1=5$ を満たし、$(0,5)$ も $2\cdot0+5=5$ を満たす。$(0,5)$ では $PA=5$、$PB=\sqrt{16+9}=5$ で、たしかに等しい。
答えは直線 $2x+y=5$ である。これは線分 $AB$ の垂直二等分線である(傾き $-2$ は $AB$ の傾き $\dfrac12$ と積が $-1$)。
2 点 $A(0,0)$、$B(3,0)$ について、$PA:PB=2:1$ を満たす点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
手順 1。条件は $PA=2PB$ で、両辺が $0$ 以上なので $PA^2=4PB^2$ と同値である。
$$
x^2+y^2=4\bigl((x-3)^2+y^2\bigr)
$$
手順 2。右辺は $4x^2-24x+36+4y^2$ なので、移項すると $0=3x^2+3y^2-24x+36$、両辺を $3$ で割って $x^2+y^2-8x+12=0$ である。平方完成すると $x^2-8x=(x-4)^2-16$ なので
$$
(x-4)^2+y^2=4
$$
で、中心 $(4,0)$、半径 $2$ の円である。
手順 3。変形はすべて同値変形なので、この円上のどの点も条件を満たす。たとえば円と $x$ 軸の交点 $(2,0)$ では $PA=2$、$PB=1$、$(6,0)$ では $PA=6$、$PB=3$ で、どちらも比は $2:1$ である。
答えは中心 $(4,0)$、半径 $2$ の円である(図 1)。このような円を Apollonius の円 という。
A(0, 0)、B(3, 0) からの距離の比が 2:1 の点(右の円)、1:2 の点(左の円)、1:1 の点(垂直二等分線)。赤い点は AB を 2:1 に内分・外分する点
2 つの例では、手順 3 は「変形がすべて同値変形だった」の一言で済んだ。同値でない変形(たとえば、文字を消すために片方の式だけを使う変形)を含むと、手順 3 で除く点や、足りない範囲が出てくる。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 条件を式にする・図形を読む | 条件を満たす点の集合が $F$ に含まれる(thm-loc-two-inclusions の (i)) | 集合の包含 |
| 逆の確認・除外点 | $F$ の点が条件を満たす(同じく (ii)) | 逆向きの包含 |
| 媒介変数を消去する | 「ある $t$ が存在する」を $x$、$y$ だけの条件に書きかえる(thm-loc-parameter) | 写像の像、射影 |
| 消去で範囲が消える | 存在の条件を落とす(ex-loc-half-line) | 像が方程式の零点集合の一部になる |
平面上の点についての条件 $C$ が与えられたとき、$C$ を満たす点全体の集合
$$
L=\{P: P\text{ は条件 }C\text{ を満たす}\}
$$
を、条件 $C$ を満たす点の 軌跡 という。平面上の図形(点の集合)$F$ について「軌跡は $F$ である」とは、集合として $L=F$ であることをいう。
「図形」は、ここでは点の集合のことである。直線は方程式 $ax+by+c=0$ を満たす点の集合、円は $(x-p)^2+(y-q)^2=r^2$ を満たす点の集合である(円と直線の位置関係)。
集合の等式を示すには、2 つの包含を示す。
条件 $C$ を満たす点の軌跡を $L$、図形を $F$ とする。$L=F$ であることは、次の (i)、(ii) がともに成り立つことと同値である。
方針:2 つの集合が等しいことの定義「同じ要素をもつ」を、2 つの向きに分ける。
段 1($L=F$ なら (i)、(ii))。$L=F$ とする。$P$ が条件 $C$ を満たせば $P\in L=F$ なので (i) が成り立つ。$P\in F$ なら $P\in L$、つまり $P$ は条件 $C$ を満たすので (ii) が成り立つ。
段 2((i)、(ii) なら $L=F$)。(i) と (ii) を仮定する。$P\in L$ なら (i) により $P\in F$ である。$P\in F$ なら (ii) により $P\in L$ である。したがって $L$ と $F$ は同じ要素をもち、$L=F$ である。$\square$
(i) は「条件 $C$ は、$F$ 上にあるための十分条件」、(ii) は「条件 $C$ は、$F$ 上にあるための必要条件」と言いかえられる。つまり「軌跡が $F$」は「条件 $C$ と『$F$ 上にある』が必要十分条件」ということである(条件と集合の包含の対応は 集合と論理:必要条件・十分条件 で扱う)。
高校の手順 1・2 は (i) を示し、手順 3 は (ii) を示す。(i) だけでは、$F$ が本当の軌跡より大きすぎる可能性が残る。
ex-loc-hs-apollonius の条件 $PA=2PB$ を満たす点は、どれも平面上の点である。だから $F'$ を平面全体とすると、「条件を満たす点は $F'$ 上にある」という (i) は正しい。しかし原点 $(0,0)$ では $PA=0$、$PB=3$ で条件を満たさないので、(ii) は成り立たず、軌跡は平面全体ではない。極端な例だが、手順 3 を飛ばすと、このように大きすぎる答えを出すおそれがある。
反対に、(ii) だけを確かめても足りない。円 $(x-4)^2+y^2=4$ の上半分の点はすべて条件を満たすが、軌跡は上半分だけではない(下半分の点 $(4,-2)$ でも $PA=\sqrt{20}=2\sqrt5$、$PB=\sqrt{1+4}=\sqrt5$ で条件を満たす)。
条件 $C$ を、同値な条件の列 $C\iff C_1\iff C_2\iff\dots\iff C_k$ で書きかえ、最後の $C_k$ が「$F$ 上にある」ことだとする。このとき軌跡は $F$ である。
方針:thm-loc-two-inclusions の (i)、(ii) を、同値の鎖を右向き・左向きにたどって示す。
段 1((i))。$P$ が条件 $C$ を満たすとする。$C\Rightarrow C_1$ から $P$ は $C_1$ を満たし、同じく $C_1\Rightarrow C_2$、…、$C_{k-1}\Rightarrow C_k$ を順に使うと $P$ は $C_k$ を満たす。つまり $P$ は $F$ 上にある。
段 2((ii))。$P$ が $F$ 上にある、つまり $C_k$ を満たすとする。$C_k\Rightarrow C_{k-1}$、…、$C_1\Rightarrow C$ を順に使うと、$P$ は $C$ を満たす。
段 3。thm-loc-two-inclusions により、軌跡は $F$ である。$\square$
ex-loc-hs-bisector と ex-loc-hs-apollonius は、どの段も同値変形だったので cor-loc-equivalent が使えた。ただし、2 乗する変形が同値なのは両辺が $0$ 以上のときだけである。$PA=2PB$ と $PA^2=4PB^2$ が同値なのは、$PA$、$2PB$ がどちらも $0$ 以上だからである。$0$ 以上と限らない量を 2 乗すると、同値でなくなる。
条件「$x=\sqrt{1-y^2}$」を満たす点 $(x,y)$ の軌跡を考える。両辺を 2 乗すると $x^2=1-y^2$、つまり $x^2+y^2=1$ で、単位円になる。しかし単位円上の点 $(-1,0)$ では左辺 $x=-1$、右辺 $\sqrt{1-0}=1$ で、条件を満たさない。
2 乗する前の条件では $x=\sqrt{1-y^2}\ge0$ なので、正しくは「$x^2+y^2=1$ かつ $x\ge0$」と同値である。軌跡は単位円の右半分(点 $(0,1)$、$(0,-1)$ を含む)である。
ex-loc-hs-apollonius の比 $2:1$ を一般の比 $k:1$ に替えても、同じ計算ができる。
$c>0$、$k>0$ とし、$A(0,0)$、$B(c,0)$ について $PA:PB=k:1$、つまり $PA=kPB$ を満たす点 $P(x,y)$ の軌跡を求める。
段 1。両辺が $0$ 以上なので、条件は $PA^2=k^2PB^2$、つまり
$$
x^2+y^2=k^2\bigl((x-c)^2+y^2\bigr)
$$
と同値である。右辺を展開して移項すると
$$
(1-k^2)(x^2+y^2)+2k^2cx-k^2c^2=0
$$
となる。
段 2($k=1$ のとき)。$x^2+y^2$ の係数が $0$ なので、$2cx-c^2=0$、つまり $x=\dfrac c2$ である。軌跡は線分 $AB$ の垂直二等分線である。
段 3($k\ne1$ のとき)。両辺を $1-k^2\ne0$ で割ると $x^2+y^2-\dfrac{2k^2c}{k^2-1}x+\dfrac{k^2c^2}{k^2-1}=0$ である。$x_0=\dfrac{k^2c}{k^2-1}$ とおいて平方完成すると
$$
(x-x_0)^2+y^2=x_0^2-\frac{k^2c^2}{k^2-1}
$$
である。右辺は
$$
\frac{k^4c^2}{(k^2-1)^2}-\frac{k^2c^2(k^2-1)}{(k^2-1)^2}=\frac{k^2c^2\bigl(k^2-(k^2-1)\bigr)}{(k^2-1)^2}=\frac{k^2c^2}{(k^2-1)^2}
$$
で、正である。よって軌跡は中心 $\left(\dfrac{k^2c}{k^2-1},0\right)$、半径 $\dfrac{kc}{|k^2-1|}$ の円である。すべて同値変形なので、cor-loc-equivalent により、この円全体が軌跡である。
段 4(数値で確かめる)。$k=2$、$c=3$ では、中心は $\left(\dfrac{4\cdot3}{3},0\right)=(4,0)$、半径は $\dfrac{2\cdot3}3=2$ で、ex-loc-hs-apollonius と一致する。$k=\dfrac12$、$c=3$ では、中心は $\left(\dfrac{\frac14\cdot3}{-\frac34},0\right)=(-1,0)$、半径は $\dfrac{\frac32}{\frac34}=2$ である(図 1 の左の円)。
段 5($x$ 軸との交点)。$k>1$ とする。円と $x$ 軸の交点の $x$ 座標は「中心 $\pm$ 半径」で、$k^2-1>0$ なので
$$
\frac{k^2c\pm kc}{k^2-1}=\frac{kc(k\pm1)}{(k-1)(k+1)}
$$
である。複号の $+$ をとると $\dfrac{kc}{k-1}$、$-$ をとると $\dfrac{kc}{k+1}$ になる。$\dfrac{kc}{k+1}$ は線分 $AB$ を $k:1$ に内分する点、$\dfrac{kc}{k-1}$ は $k:1$ に外分する点の $x$ 座標である。$k=2$、$c=3$ なら
$$
\frac{2\cdot3}{2+1}=2,\qquad \frac{2\cdot3}{2-1}=6
$$
で、図 1 の赤い点 $(2,0)$、$(6,0)$ である。
$0< k<1$ のときは、半径が $\dfrac{kc}{1-k^2}=-\dfrac{kc}{k^2-1}$ なので、「中心 $\pm$ 半径」は複号を入れ替えただけの同じ 2 数 $\dfrac{k^2c\mp kc}{k^2-1}$ になり、交点の $x$ 座標はやはり $\dfrac{kc}{k+1}$ と $\dfrac{kc}{k-1}$ である。このときも $\dfrac{kc}{k+1}$ は $k:1$ に内分する点、$\dfrac{kc}{k-1}$(負の数)は $k:1$ に外分する点の $x$ 座標である。$k=\dfrac12$、$c=3$ なら
$$
\frac{\frac32}{\frac32}=1,\qquad \frac{\frac32}{-\frac12}=-3
$$
で、中心 $(-1,0)$、半径 $2$ の円(段 4)の $x$ 軸との交点と一致する。
Apollonius の円は、$AB$ を $k:1$ に内分する点と外分する点を直径の両端とする円である(ex-loc-apollonius-general の段 5)。内分点・外分点の座標は 内分点・外分点の座標 で扱う。
動く点が、別の文字 $t$(媒介変数)を使って $P_t=(f(t),g(t))$ と与えられることがある。このとき軌跡は
$$
L=\{(f(t),g(t)): t\text{ は範囲 }I\text{ を動く}\}
$$
で、点 $(x,y)$ が $L$ に属するのは「$x=f(t)$、$y=g(t)$ を満たす $t\in I$ が存在する」ときである。$t$ を消して $x$、$y$ だけの式にするとき、「存在する」の部分を落とさないことが要点になる。
$I$ を実数の範囲とし、点 $P_t=(f(t),g(t))$($t\in I$)の軌跡を $L$ とする。$x=f(t)$ が $t$ について $t=h(x)$ とただ 1 通りに解けるとする。正確には、$J=\{f(t): t\in I\}$ とおき、$J$ の各 $x$ に対して $f(t)=x$ となる $t\in I$ がちょうど 1 つあり、それが $h(x)$ であるとする。このとき
$$
L=\{(x,y): x\in J\text{ かつ }y=g(h(x))\}
$$
である。
方針:thm-loc-two-inclusions と同じく、右辺の集合を $F$ として $L\subset F$ と $F\subset L$ を示す。
段 1($L\subset F$)。$(x,y)\in L$ とすると、ある $t\in I$ で $x=f(t)$、$y=g(t)$ である。$x=f(t)$ なので $x\in J$ である。$f(t)=x$ となる $t\in I$ はただ 1 つで、それが $h(x)$ なので、$t=h(x)$ である。よって $y=g(t)=g(h(x))$ で、$(x,y)\in F$ である。
段 2($F\subset L$)。$(x,y)\in F$ とすると、$x\in J$ かつ $y=g(h(x))$ である。$t=h(x)$ とおくと、$h$ の決め方から $t\in I$ かつ $f(t)=x$ である。さらに $g(t)=g(h(x))=y$ である。よって $(x,y)=(f(t),g(t))$ で、$(x,y)\in L$ である。
段 3。段 1、段 2 から $L=F$ である。$\square$
定理の中で「$x\in J$」という条件が残ることに注意する。$t$ の動く範囲 $I$ が狭いと $J$ も狭くなり、軌跡は曲線 $y=g(h(x))$ の一部になる。
$t$ を実数とし、放物線 $y=x^2-2tx+2t$ の頂点の軌跡を求める。
段 1(頂点)。平方完成すると $x^2-2tx+2t=(x-t)^2-t^2+2t$ なので、頂点は $(t,\ -t^2+2t)$ である(2次関数の最大・最小)。
段 2($t$ が実数全体を動くとき)。$f(t)=t$、$g(t)=-t^2+2t$ である。$x=f(t)$ は $t=x$ とただ 1 通りに解けて、$J$ は実数全体である。thm-loc-parameter により、軌跡は放物線 $y=-x^2+2x$ 全体である。
段 3($t>0$ に限るとき)。$I=\{t: t>0\}$ なら $J=\{x: x>0\}$ で、軌跡は放物線 $y=-x^2+2x$ のうち $x>0$ の部分である。たとえば点 $(-1,-3)$ は $y=-x^2+2x$ を満たすが、$t=-1$ にあたるので、この場合の軌跡には入らない。
$t$ が実数全体を動くとき、点 $P_t=(t^2,\ t^2+1)$ の軌跡を求める。
$x=t^2$、$y=t^2+1$ から $t^2$ を消すと $y=x+1$ である。しかし直線 $y=x+1$ 全体が軌跡ではない。たとえば点 $(-1,0)$ は $y=x+1$ を満たすが、$t^2=-1$ となる実数 $t$ はないので、軌跡の点ではない。
正しくは次のように考える。$(x,y)$ が軌跡に属するのは、$x=t^2$ かつ $y=t^2+1$ を満たす実数 $t$ が存在するときである。これは「$y=x+1$ かつ、$t^2=x$ を満たす実数 $t$ が存在する」と同値で、後半は $x\ge0$ と同値である($x\ge0$ なら $t=\sqrt x$ がとれ、$x<0$ なら $t^2\ge0>x$)。軌跡は半直線 $y=x+1$($x\ge0$)で、端の点 $(0,1)$($t=0$)を含む(図 2)。
この例では $x=t^2$ が $t$ についてただ 1 通りには解けない($t=\pm\sqrt x$)ので、thm-loc-parameter はそのままは使えない。それでも「$t$ が存在する条件」を書けば、同じように範囲が求まる。
点 (t², t² + 1) の軌跡。t を消した式 y = x + 1 は直線全体を表すが、軌跡は x ≧ 0 の半直線だけである
点が式で直接与えられず、2 つの図形の交点として与えられることもある。このときも「$t$ が存在する条件」を調べればよい。
$m$ を実数とし、2 直線
$$
\ell_1:\ mx-y=0,\qquad \ell_2:\ x+my-2=0
$$
の交点の軌跡を求める。$\ell_1$ は原点を通り、$\ell_2$ は点 $(2,0)$ を通る。法線ベクトル $(m,-1)$ と $(1,m)$ の内積は $m-m=0$ なので、2 直線は垂直である(直線の方程式と点と直線の距離)。
段 1(条件を書く)。点 $(x,y)$ が軌跡に属するのは、$mx-y=0$ かつ $x+my-2=0$ を満たす実数 $m$ が存在するときである。
段 2($x=0$ の場合)。$x=0$ なら、1 つ目の式から $y=0$ で、2 つ目の式は $0+0-2=0$ となり成り立たない。よって $x=0$ の点は軌跡に属さない。
段 3($x\ne0$ の場合)。1 つ目の式は $m=\dfrac yx$ と同値である。これを 2 つ目の式に代入すると $x+\dfrac{y^2}x-2=0$ で、両辺に $x\ne0$ を掛けると $x^2+y^2-2x=0$ となる。$x\ne0$ なのでこの変形は同値で、$m=\dfrac yx$ は実数として確かに存在する。よって、$x\ne0$ の点 $(x,y)$ が軌跡に属することは $x^2+y^2-2x=0$ と同値である。
段 4(答え)。$x^2+y^2-2x=0$ は $(x-1)^2+y^2=1$、つまり中心 $(1,0)$、半径 $1$ の円である。この円の上で $x=0$ となるのは $y^2=0$ のとき、つまり原点 $(0,0)$ だけである。したがって軌跡は、円 $(x-1)^2+y^2=1$ から原点を除いたものである(図 3)。
段 5(確かめ)。$m=0$ なら $\ell_1$ は $y=0$、$\ell_2$ は $x=2$ で、交点 $(2,0)$ は円の上にある。$m=\dfrac12$ なら交点は $\left(\dfrac85,\dfrac45\right)$ で、$\dfrac{64}{25}+\dfrac{16}{25}-\dfrac{16}5=\dfrac{80-80}{25}=0$ となり、円の上にある。
直線 y = mx と x + my = 2 の交点は、原点 O と点 (2, 0) を直径の両端とする円の上を動く。ただし原点には来ない
除外点 $(0,0)$ は、$\ell_1$ が $y$ 軸 $x=0$、$\ell_2$ が $x$ 軸 $y=0$ になったときの交点である。$y$ 軸は $mx-y=0$ の形に書けない(傾きをもたない)ので、この 2 直線の組は $m$ で表した族に入っていない。除外点は「媒介変数で表しきれなかった場合」から生じている。傾きで表すと $y$ 軸に平行な直線が抜け落ちる現象は、円と直線の位置関係 で接線を求めるときにも起こる。
また、点 $K(2,0)$ をとると、2 直線は垂直なので、交点 $P$ では $\angle OPK$ が直角である($P=K$ の場合を除く)。「直径を見込む角は直角」という円周角の定理の逆からも、$P$ が $O$ と $(2,0)$ を直径の両端とする円の上にあることが分かる(円周角の定理(高校数学))。座標による計算は、この図形的な事実を除外点まで含めて正確に述べたものである。
線分 $AB$ の内部に任意の点 $M$ をとる。$AM$、$MB$ をそれぞれ 1 辺とする正方形 $AMCD$、$MBEF$ を、$AB$ に関して同じ側に作る。これらの正方形の外接円は、中心をそれぞれ $P$、$Q$ とし、$M$ ともう 1 つの点 $N$ で交わる。直線 $AF$ と $BC$ の交点を $N'$ とする。
(a) 点 $N$ と $N'$ が一致することを示せ。
(b) 直線 $MN$ は、$M$ の選び方によらない定点 $S$ を通ることを示せ。
(c) $M$ が $A$ と $B$ の間を動くとき、線分 $PQ$ の中点の軌跡を求めよ。
出典:国際数学オリンピック(1959 年)第 5 問 Oly59。筆者による和訳。この記事では軌跡を問う (c) だけを扱う。
方針:$AB$ を $x$ 軸にとり、$AM$ の長さ $m$ を媒介変数として中点の座標を $m$ で表し、thm-loc-parameter を使う。
段 1(座標)。$AB=a$ とし、$A(0,0)$、$B(a,0)$、$M(m,0)$ とおく。$M$ は線分 $AB$ の内部の点なので $0< m< a$ である。正方形は $x$ 軸の上側に作るとする。
段 2(中心 $P$、$Q$)。正方形 $AMCD$ の頂点は $A(0,0)$、$M(m,0)$、$C(m,m)$、$D(0,m)$ である。正方形の外接円の中心は対角線の中点なので、$P$ は $AC$ の中点 $\left(\dfrac m2,\dfrac m2\right)$ である。正方形 $MBEF$ の頂点は $M(m,0)$、$B(a,0)$、$E(a,a-m)$、$F(m,a-m)$ で、$Q$ は $ME$ の中点 $\left(\dfrac{m+a}2,\dfrac{a-m}2\right)$ である。
段 3(中点 $R$)。$PQ$ の中点 $R$ は
$$
R=\left(\frac12\Bigl(\frac m2+\frac{m+a}2\Bigr),\ \frac12\Bigl(\frac m2+\frac{a-m}2\Bigr)\right)=\left(\frac a4+\frac m2,\ \frac a4\right)
$$
である。$y$ 座標は $m$ によらず $\dfrac a4$ である。
段 4(媒介変数の消去)。$f(m)=\dfrac a4+\dfrac m2$、$g(m)=\dfrac a4$、$I=\{m: 0< m< a\}$ とする。$x=\dfrac a4+\dfrac m2$ は $m=2x-\dfrac a2$ とただ 1 通りに解ける。$m$ が $0< m< a$ を動くと、$x$ は $\dfrac a4< x<\dfrac{3a}4$ を動く($m=2x-\dfrac a2$ に $0< m< a$ を代入して $x$ について解けばよい)。thm-loc-parameter により、軌跡は
$$
\left\{(x,y): \frac a4< x<\frac{3a}4,\ y=\frac a4\right\}
$$
である。
段 5(図形で言う)。$AB$ 上に同じ側に作った正方形の中心を $O\left(\dfrac a2,\dfrac a2\right)$ とすると、$AO$ の中点は $\left(\dfrac a4,\dfrac a4\right)$、$BO$ の中点は $\left(\dfrac{3a}4,\dfrac a4\right)$ である。軌跡は、この 2 点を結ぶ線分から両端を除いたものである(図 4)。両端は $m=0$、$m=a$ にあたり、$M$ が $A$ や $B$ に一致して正方形がつぶれる場合なので、含まれない。$\square$
AB = 4、AM = 1.2 のときの 2 つの正方形と中心 P、Q。M を動かすと PQ の中点は高さ 1 の線分(両端を除く)の上を動く
段 2 の $P$、$Q$ は、どちらも $m$ の 1 次式で動く。$P=\left(\dfrac m2,\dfrac m2\right)$ は直線 $y=x$ の上を、$Q=\left(\dfrac{a+m}2,\dfrac{a-m}2\right)$ は直線 $x+y=a$ の上を動く。一般に、2 点 $P$、$Q$ が同じ媒介変数の 1 次式 $P=P_0+m\,u$、$Q=Q_0+m\,v$ で動くとき、中点は
$$
\frac{P+Q}2=\frac{P_0+Q_0}2+m\,\frac{u+v}2
$$
で、これも $m$ の 1 次式である。1 次式で動く点は、$\dfrac{u+v}2\ne0$ なら直線の上を動き、$m$ の範囲が区間なら、軌跡はその区間の 像 である線分(区間が端を含まなければ、両端を除いた線分)になる。この問題では $u=\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$、$v=\left(\dfrac12,-\dfrac12\right)$ で、$\dfrac{u+v}2=\left(\dfrac12,0\right)$ が水平なので、中点は水平に動く。
「中点」を「$s:t$ の内分点」に替えても、内分点の座標は $P$、$Q$ の座標の 1 次式 $\dfrac{tP+sQ}{s+t}$ なので、同じ議論が使える(内分点・外分点の座標)。この見方では、prf-loc-oly59-hs の計算は「写像 $m\mapsto R(m)$ の像を求める」ことであり、写像が 1 次式なので像は線分になる、と一言で言える(像(写像))。
thm-loc-parameter の軌跡 $L=\{(f(t),g(t)): t\in I\}$ は、写像 $\varphi\colon I\to\mathbb{R}^2$、$\varphi(t)=(f(t),g(t))$ の 像 $\varphi(I)$ である(写像、像(写像))。
もう 1 つの見方として、$t$、$x$、$y$ の 3 つの座標をもつ空間の中の集合
$$
\widetilde L=\{(t,x,y): t\in I,\ x=f(t),\ y=g(t)\}
$$
を考える。$(t,x,y)$ から $(x,y)$ への写像($t$ 座標を忘れる写像。射影 という)で $\widetilde L$ を写すと、$L$ になる。「$t$ が存在する条件を求める」ことは、この射影の像を計算することである。
$t$ を消去して得た方程式を $E(x,y)=0$ とすると、軌跡 $L$ はいつも $E(x,y)=0$ の表す図形に含まれるが、一致するとは限らない。この記事の例では、ずれ方が 2 種類あった。
この記事の主張がどの仮定に支えられているかを、仮定を外した例で確かめる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| (ii)「図形の点が条件を満たす」を確かめる | 求めた図形が軌跡に一致する | ex-loc-only-one-way |
| 2 乗する両辺が $0$ 以上(同値変形) | 2 乗した式の図形全体が軌跡 | ex-loc-squaring |
| 媒介変数が実数全体を動く | 消去した式の曲線全体が軌跡 | ex-loc-vertex の段 3 |
| $t$ が存在する条件を残す | 消去した式の図形全体が軌跡 | ex-loc-half-line |
| 媒介変数で必要な場合をすべて表せる | 除外点が出ない | ex-loc-two-lines |
| 比が $k\ne1$ | Apollonius の軌跡は円である($k=1$ では直線) | ex-loc-apollonius-general の段 2 |
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