Legendre記号(Legendre symbol)とは、奇素数 $p$ と整数 $a$ に対し、$a$ が法 $p$ の平方剰余なら $1$、平方非剰余なら $-1$、$p$ の倍数なら $0$ と定める記号 $(a/p)$ である。Euler の規準と相互法則で計算でき、$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times$ から $\{\pm1\}$ への自明でない準同型はこれただ 1 つである。値の和は $0$ で、2 次式 $f$ の値にわたる和は判別式が $p$ で割れなければ $-(a/p)$($a$ は最高次の係数)になり、ここから連続する平方剰余の組の個数が正確に求まる。2 次の Gauss 和 $g$ は $g^2=(-1/p)\,p$ を満たす。
Legendre 記号(Legendre symbol)$\left(\frac ap\right)$ は、奇素数 $p$ と整数 $a$ に対し、$a$ が法 $p$ の平方剰余なら $1$、平方非剰余なら $-1$、$p$ の倍数なら $0$ を返す記号である。「$x^2\equiv a\pmod p$ が解けるか」という問いの答を数にしたものであり、数にしたことで掛け算・足し算・和の計算に乗せられる。平方剰余の判定そのもの(Euler の規準や相互法則)は 平方剰余 と 平方剰余の相互法則 の記事で扱うので、この記事では記号を 関数として 見たときの性質を主題にする。すなわち、Legendre 記号が既約剰余類群から $\{\pm1\}$ への自明でないただ 1 つの準同型であること、その値の和が $0$ になること、2 次式の値にわたる和が(判別式が $p$ で割り切れなければ)$\pm1$ だけになること、そこから連続する平方剰余の組の個数が正確に数えられること、そして Legendre 記号を係数にした $1$ の冪根の和(2 次の Gauss 和)の 2 乗が $\pm p$ になることを証明する。
$p$ を奇素数、$a$ を整数とする。
$$
\left(\frac ap\right):=\begin{cases}
1 & (p\nmid a\text{ で、}x^2\equiv a\pmod p\text{ が整数解をもつ}),\\
-1 & (p\nmid a\text{ で、}x^2\equiv a\pmod p\text{ が整数解をもたない}),\\
0 & (p\mid a)
\end{cases}
$$
と定め、Legendre 記号 という。
第 1 の場合の $a$ が法 $p$ の 平方剰余、第 2 の場合の $a$ が 平方非剰余 である(平方剰余 の記事の定義「平方剰余と平方非剰余」)。定義は Ste17 Definition 4.1.2(p. 70)、Cri24 Definition 16.6.1(p. 287)と同じである。
法 $p$ の $0$ でない剰余類のうち、ちょうど半分が平方剰余である。Legendre 記号は、この「半分ずつ」の分け方に $+1$ と $-1$ のラベルを貼ったものである。ラベルの貼り方が掛け算と両立する(平方剰余どうし・平方非剰余どうしの積は平方剰余)ので、$\chi$ は乗法群から符号の群 $\{\pm1\}$ への準同型になる。準同型の値を足し合わせると打ち消し合って $0$ になり、2 次式の値のようにもう少し複雑なものを入れても、和は「ほとんど打ち消し合って $\pm1$ だけ残る」。平方剰余は $1,4,9,\dots$ と規則正しく並ぶ平方数の余りなのに、剰余類の上では $+$ と $-$ がでたらめに見える並び方をする。この記事の定理は、その並び方の偏りのなさを正確な等式で述べたものである。
$a=1,2,\dots,p-1$ に対する $\left(\frac ap\right)$ の符号を並べると次のとおりである。
| $p$ | $a=1,2,\dots,p-1$ の値 | 平方剰余 |
|---|---|---|
| $3$ | $+\ -$ | $1$ |
| $5$ | $+\ -\ -\ +$ | $1,4$ |
| $7$ | $+\ +\ -\ +\ -\ -$ | $1,2,4$ |
| $11$ | $+\ -\ +\ +\ +\ -\ -\ -\ +\ -$ | $1,3,4,5,9$ |
| $13$ | $+\ -\ +\ +\ -\ -\ -\ -\ +\ +\ -\ +$ | $1,3,4,9,10,12$ |
どの行も $+$ と $-$ が同じ個数ある。$p=5,13$($4$ で割って $1$ 余る)では並びが左右対称で、$p=3,7,11$($4$ で割って $3$ 余る)では左右で符号が反転している。$\left(\frac{p-a}p\right)=\left(\frac{-1}p\right)\left(\frac ap\right)$ だからである。
$\left(\frac{91}{167}\right)$ を求める($167$ は素数)。$91=7\cdot13$ なので、乗法性により $\left(\frac7{167}\right)\left(\frac{13}{167}\right)$ である。$7\equiv167\equiv3\pmod4$ なので相互法則により
$$
\left(\frac7{167}\right)=-\left(\frac{167}7\right)=-\left(\frac67\right)=-\left(\frac{-1}7\right)=1,
$$
$13\equiv1\pmod4$ なので
$$
\left(\frac{13}{167}\right)=\left(\frac{167}{13}\right)=\left(\frac{11}{13}\right)=\left(\frac{13}{11}\right)=\left(\frac2{11}\right)=-1
$$
である($11\equiv3\pmod8$ なので第 2 補充法則により $\left(\frac2{11}\right)=-1$)。よって $\left(\frac{91}{167}\right)=-1$ で、$91$ は法 $167$ の平方非剰余である。Euler の規準で確かめると、$91^{83}\equiv166\equiv-1\pmod{167}$ となり一致する。
Legendre 記号の性質は「法が奇素数」であることに強く依っている。条件を外すと次のように崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 法が素数 | 法 $15$ で $2\cdot7\equiv14$ | 平方非剰余どうしの積は平方剰余($2,7,14$ はどれも法 $15$ の平方非剰余) |
| 法が素数(Jacobi 記号に広げる) | $\left(\frac2{15}\right)=\left(\frac23\right)\left(\frac25\right)=1$ | 記号の値が $1$ なら平方剰余($x^2\equiv2\pmod{15}$ は解けない) |
| 法が素数 | 法 $9$、$a=2$ | Euler の規準の形 $a^{(n-1)/2}\equiv\pm1$($2^4=16\equiv7\pmod9$) |
| 法が奇数 | 法 $2$ | 平方非剰余が存在し、自明でない準同型 $\mathbb F_p^\times\to\{\pm1\}$ があること |
| 判別式が $p$ で割り切れない | $f(x)=x^2$ | $\sum_x\left(\frac{f(x)}p\right)=-1$(実際は $p-1$) |
1 行目と 2 行目は、法 $15$ と互いに素な剰余類の平方が $1,4$ だけであることから確かめられる($1,2,4,7,8,11,13,14$ を 2 乗すると $1,4,1,4,4,1,4,1$)。1 行目は thm-lgs-character が合成数の法では成り立たない理由でもある。法 $15$ の既約剰余類 $8$ 個のうち平方は $2$ 個しかなく、平方全体の部分群の指数は $4$ なので、「平方なら $1$、そうでなければ $-1$」という関数は準同型にならない。5 行目は thm-lgs-quadratic-sum の条件である。
Legendre 記号を実際に計算するときに使う規則をまとめておく。証明はそれぞれの記事にあり、ここでは繰り返さない。
$p$ を奇素数、$a,b$ を整数とする。
(i) (周期性)$a\equiv b\pmod p$ なら $\left(\frac ap\right)=\left(\frac bp\right)$。
(ii) (乗法性)$\left(\frac{ab}p\right)=\left(\frac ap\right)\left(\frac bp\right)$。
(iii) (Euler の規準)$\left(\frac ap\right)\equiv a^{(p-1)/2}\pmod p$。
(iv) (補充法則)$\left(\frac{-1}p\right)=(-1)^{(p-1)/2}$、$\left(\frac2p\right)=(-1)^{(p^2-1)/8}$。
(v) (相互法則)$q\neq p$ も奇素数なら $\left(\frac pq\right)\left(\frac qp\right)=(-1)^{\frac{p-1}2\cdot\frac{q-1}2}$。
(i) は定義から、(ii) は 平方剰余 の記事の命題「平方剰余と平方非剰余の積」、(iii) は同じ記事の定理「Eulerの規準」、(iv) と (v) は 平方剰余の相互法則 の記事の定理「補充法則」と定理「平方剰余の相互法則」による。(iii) の右辺は $\pm1$ か $0$ と合同で、$p\ge3$ では $-1,0,1$ は法 $p$ で相異なるので、(iii) は値を 1 つに決める。(ii) により $\left(\frac ap\right)$ は $a$ の素因数ごとの値の積であり、(iv) と (v) により素因数ごとの値はより小さい法の記号に移せる。これが ex-lgs-computation で行った計算である。(iii) を使えば素因数分解なしに $a^{(p-1)/2}$ の冪乗剰余を 1 回計算するだけで値が決まる。
(ii) により、$\chi=\left(\frac{\cdot}p\right)$ は乗法群 $\mathbb F_p^\times$ から $\{\pm1\}$ への群準同型である。実はこの性質だけで Legendre 記号は特徴づけられる。
$p$ を奇素数とする。
1 は Ste17 Lemma 4.1.4(p. 71)でもあり、そこでは原始根を使って示している。原始根 $g$(原始根)を 1 つとると、$\mathbb F_p^\times=\{g^0,g^1,\dots,g^{p-2}\}$ であり、定理の 1(全射であること)から $\chi(g)=-1$($\chi(g)=1$ なら $\chi$ は定数 $1$ になってしまう)なので
$$
\left(\frac{g^k}p\right)=(-1)^k
$$
である。つまり、原始根の冪で書いたときの指数が偶数である類がちょうど平方剰余である。$\mathbb Z$ 上の関数と見た $\chi$ は、周期 $p$ をもち、$p$ の倍数で $0$、$p$ の倍数以外では $0$ でなく、完全乗法的(すべての $a,b$ で $\chi(ab)=\chi(a)\chi(b)$)である。このような関数を法 $p$ の Dirichlet指標 といい、法 $p$ の Dirichlet 指標は $\mathbb F_p^\times$ から $0$ でない複素数の乗法群への準同型を $\mathbb Z$ 上に延ばしたものであり、値が実数なら値は $\pm1$ である(有限群の元は $x^{p-1}=1$ を満たすので、像も $1$ の $(p-1)$ 乗根で、実数の $1$ の冪根は $\pm1$)。したがって定理の 2 により、Legendre 記号は、法 $p$ の Dirichlet 指標のうち値が実数で、$p$ の倍数以外で恒等的に $1$ ではないものとしてただ 1 つに決まる。
$$
\sum_{a=0}^{p-1}\left(\frac ap\right)=0
$$
である。周期性により、連続する $p$ 個の整数にわたる和も $0$ である。
$a=0$ の項は $0$ なので、$S=\sum_{a\in\mathbb F_p^\times}\chi(a)$ を考えればよい。thm-lgs-character により $\chi(c)=-1$ となる $c\in\mathbb F_p^\times$ がある。$a\mapsto ca$ は $\mathbb F_p^\times$ の並べ替えなので
$$
S=\sum_a\chi(ca)=\chi(c)\sum_a\chi(a)=-S
$$
であり、$S=0$ である。$\square$
これは、平方剰余と平方非剰余が同じ個数あることの言い換えでもある。和を $a=1$ から $(p-1)/2$ までの前半だけにすると $0$ にはならない。$p\equiv1\pmod4$ では ex-lgs-table の左右対称により前半の和は全体の和の半分 $0$ だが、$p\equiv3\pmod4$ では前半の和はいつも正である($p=7,11,19,23$ で $1,3,3,3$)。$p\equiv3\pmod4$ のとき $1,\dots,\frac{p-1}2$ の中では平方剰余の方が多いというこの事実は Dirichlet が 2 次形式の類数の研究の副産物として得たもので、証明には Fourier 級数などの解析的な道具が使われる(Mos11 Chapter 5、p. 49)。この記事では証明しない。
$p$ を奇素数とし、$f(x)=ax^2+bx+c$($a,b,c$ は整数、$p\nmid a$)、$D=b^2-4ac$ とする。このとき
$$
\sum_{x=0}^{p-1}\left(\frac{f(x)}p\right)=\begin{cases}-\left(\dfrac ap\right)&(p\nmid D),\\[2mm](p-1)\left(\dfrac ap\right)&(p\mid D)\end{cases}
$$
である。
段 1(平方完成). $4af(x)=(2ax+b)^2-D$ である。$\chi(4a)=\chi(4)\chi(a)=\chi(a)$ で $\chi(a)^2=1$ なので、$\chi(f(x))=\chi(a)\chi(4a)\chi(f(x))=\chi(a)\chi\bigl((2ax+b)^2-D\bigr)$ である。$p$ は奇数で $p\nmid a$ なので $2a$ は法 $p$ で逆元をもち、$x$ が $\mathbb F_p$ を動くと $y=2ax+b$ も $\mathbb F_p$ をちょうど 1 回ずつ動く。よって
$$
\sum_x\chi(f(x))=\chi(a)\,T,\qquad T:=\sum_{y\in\mathbb F_p}\chi(y^2-D)
$$
である。
段 2($p\mid D$ の場合). $T=\sum_y\chi(y^2)$ で、$y=0$ の項は $0$、$y\neq0$ の項は $1$ なので $T=p-1$ である。
段 3($p\nmid D$ の場合). $z\in\mathbb F_p$ について、$y^2=z$ となる $y\in\mathbb F_p$ の個数は $1+\chi(z)$ である($z=0$ なら $y=0$ の $1$ 個、平方剰余なら $\pm y$ の $2$ 個、平方非剰余なら $0$ 個)。$y$ についての和を $z=y^2$ についての和に書き直すと
$$
T=\sum_{z\in\mathbb F_p}\bigl(1+\chi(z)\bigr)\chi(z-D)=\sum_z\chi(z-D)+\sum_z\chi\bigl(z(z-D)\bigr)
$$
となる。第 1 の和は cor-lgs-sum-zero により $0$ である。第 2 の和で $z=0$ の項は $0$ であり、$z\neq0$ では $\chi(z(z-D))=\chi(z^2)\chi(1-Dz^{-1})=\chi(1-Dz^{-1})$ である。$D\neq0$ なので、$z$ が $\mathbb F_p^\times$ を動くと $w=1-Dz^{-1}$ は $\mathbb F_p$ のうち $1$ 以外をちょうど 1 回ずつ動く。よって第 2 の和は $\sum_{w}\chi(w)-\chi(1)=0-1=-1$ で、$T=-1$ である。
段 1 に戻すと主張が得られる。$\square$
$p\nmid D$ のとき、$p$ 個の値 $f(0),\dots,f(p-1)$ の Legendre 記号の和は、$f$ によらずほとんど打ち消し合って $\pm1$ しか残らない。$p\mid D$ のときは $f$ が $a$ 倍の平方 $a(x+\frac b{2a})^2$ に等しく、根の 1 か所を除く $p-1$ 個の値の Legendre 記号がすべて $\left(\frac ap\right)$ に等しくなるので打ち消し合わない。これが反例の表の 5 行目である。
定理と同じ記号で、$y^2\equiv f(x)\pmod p$ を満たす組 $(x,y)\in\mathbb F_p^2$ の個数は、$p\nmid D$ なら $p-\left(\frac ap\right)$、$p\mid D$ なら $p+(p-1)\left(\frac ap\right)$ である。
各 $x$ について、$y^2=f(x)$ となる $y$ の個数は段 3 と同じく $1+\chi(f(x))$ である。$x$ について足すと $p+\sum_x\chi(f(x))$ であり、thm-lgs-quadratic-sum を代入すればよい。$\square$
たとえば $p=5$、$y^2=x^2+1$($a=1$、$D=-4$)では、$x=0,1,2,3,4$ に対して $x^2+1\equiv1,2,0,0,2$ で、$y$ の個数は $2,0,1,1,0$、合計 $4=p-1$ である。
$1,2,\dots,p-1$ の Legendre 記号の並びで、隣り合う 2 つの符号の組 $(+,+)$、$(+,-)$、$(-,+)$、$(-,-)$ がそれぞれ何回現れるかは、thm-lgs-quadratic-sum を $f(x)=x(x+1)$ に使うと正確に決まる。
$p$ を奇素数、$\varepsilon=\left(\frac{-1}p\right)$ とする。$1\le a\le p-2$ の $a$ について、$a$ と $a+1$ がともに平方剰余である $a$ の個数を $RR$、$a$ が平方剰余で $a+1$ が平方非剰余である個数を $RN$、同様に $NR$、$NN$ とすると
$$
RR=\frac{p-4-\varepsilon}4,\qquad RN=\frac{p-\varepsilon}4,\qquad NR=NN=\frac{p-2+\varepsilon}4
$$
である。
$1\le a\le p-2$ では $a$ も $a+1$ も $p$ で割り切れないので、$\chi(a),\chi(a+1)\in\{\pm1\}$ である。$\frac{1+\chi(a)}2$ は $a$ が平方剰余なら $1$、平方非剰余なら $0$ であり、$\frac{1-\chi(a)}2$ はその逆である。したがって、符号 $s,t\in\{\pm1\}$ について
$$
\#\{a\mid\chi(a)=s,\ \chi(a+1)=t\}=\sum_{a=1}^{p-2}\frac{\bigl(1+s\chi(a)\bigr)\bigl(1+t\chi(a+1)\bigr)}4=\frac14\Bigl((p-2)+sA+tB+stC\Bigr)
$$
である。ここで
$$
A=\sum_{a=1}^{p-2}\chi(a),\qquad B=\sum_{a=1}^{p-2}\chi(a+1),\qquad C=\sum_{a=1}^{p-2}\chi\bigl(a(a+1)\bigr).
$$
cor-lgs-sum-zero により $\sum_{a=1}^{p-1}\chi(a)=0$ なので、$A=-\chi(p-1)=-\chi(-1)=-\varepsilon$、$B=\sum_{b=2}^{p-1}\chi(b)=-\chi(1)=-1$ である。$C$ は $a=0$ と $a=p-1$($a+1\equiv0$)の項を足しても変わらない(どちらも $0$)ので、$C=\sum_{x=0}^{p-1}\chi(x^2+x)$ であり、$x^2+x$ の判別式は $1$ で $p$ で割り切れないから、thm-lgs-quadratic-sum により $C=-\chi(1)=-1$ である。代入すると
$$
RR=\tfrac14(p-2-\varepsilon-1-1),\quad RN=\tfrac14(p-2-\varepsilon+1+1),\quad NR=\tfrac14(p-2+\varepsilon-1+1),\quad NN=\tfrac14(p-2+\varepsilon+1-1)
$$
となり、主張が得られる。$\square$
4 つの個数の和は $p-2$ であり、$p$ が大きいとき、どの組もおよそ $p/4$ 回、すなわち $\frac14$ ずつの割合で現れる。平方剰余の並びは、隣どうしの関係についても「公平な硬貨を投げた」ように偏りがない。この問いは 19 世紀末から Aladow、von Sterneck、Jacobsthal らによって調べられた(Mos11 Chapter 5、p. 49)。
$p=13$ では $\varepsilon=1$ で、ex-lgs-table の並び $+\ -\ +\ +\ -\ -\ -\ -\ +\ +\ -\ +$ の隣り合う $11$ 組は
$$
(+-),(-+),(++),(+-),(--),(--),(--),(-+),(++),(+-),(-+)
$$
である。$(++)$ は $a=3,9$ の $2$ 回、$(+-)$ は $3$ 回、$(-+)$ は $3$ 回、$(--)$ は $3$ 回で、公式の $RR=\frac{13-5}4=2$、$RN=\frac{12}4=3$、$NR=NN=\frac{12}4=3$ と一致する。
$RR\ge1$ となるのは、$\varepsilon=1$ なら $p\ge9$、すなわち $p\ge13$、$\varepsilon=-1$ なら $p\ge7$ のときである。$p=3,5$ では連続する平方剰余の組はなく($p=5$ の平方剰余は $1,4$)、$p\ge7$ ではいつも存在する。この「$p>5$ なら連続する平方剰余がある」ことは、$2,5,10$ のどれかが平方剰余であることから直接示すこともできる(Cri24 Fact 17.1.7、p. 294)。
$\zeta=\cos\frac{2\pi}p+i\sin\frac{2\pi}p$ を $1$ の原始 $p$ 乗根とする(1の冪根)。
$$
g:=\sum_{a=0}^{p-1}\left(\frac ap\right)\zeta^a=\sum_{a=1}^{p-1}\left(\frac ap\right)\zeta^a
$$
を、奇素数 $p$ に対する 2 次の Gauss 和 という。
複素数 $g$ は、単位円周上の $p-1$ 個の点 $\zeta^a$ を Legendre 記号の符号をつけて足したものである。和の計算には次の事実を使う。整数 $m$ について
$$
\sum_{t=0}^{p-1}\zeta^{tm}=\begin{cases}p&(p\mid m),\\0&(p\nmid m)\end{cases}
$$
である。$p\mid m$ なら各項が $1$ であり、$p\nmid m$ なら $\zeta^m\neq1$ で、等比数列の和 $\frac{\zeta^{pm}-1}{\zeta^m-1}=0$ になる(巡回群の指標と直交関係 の記事の定理「指標の直交関係」の (2) の形)。
$$
g^2=\left(\frac{-1}p\right)p
$$
である。すなわち $p\equiv1\pmod4$ なら $g^2=p$、$p\equiv3\pmod4$ なら $g^2=-p$ である。
$\chi(0)=0$ なので
$$
g^2=\sum_{a\neq0}\sum_{b\neq0}\chi(a)\chi(b)\zeta^{a+b}=\sum_{a\neq0}\sum_{b\neq0}\chi(ab)\zeta^{a+b}
$$
である(和は $\mathbb F_p^\times$ の代表 $1,\dots,p-1$ にわたる)。$a$ を固定すると、$t\mapsto b=at$ は $\mathbb F_p^\times$ の並べ替えなので、$b$ を $at$ で置き換えられる。$\chi(a\cdot at)=\chi(a^2)\chi(t)=\chi(t)$ だから
$$
g^2=\sum_{t\neq0}\chi(t)\sum_{a\neq0}\zeta^{a(1+t)}
$$
となる。内側の和は、$a=0$ も含めた和から $a=0$ の項 $1$ を引いたものなので、$t\equiv-1$ なら $p-1$、そうでなければ $0-1=-1$ である。よって
$$
g^2=\chi(-1)(p-1)-\sum_{t\neq0,\,-1}\chi(t)=\chi(-1)(p-1)-\bigl(0-\chi(-1)\bigr)=\chi(-1)\,p
$$
である。ここで cor-lgs-sum-zero により $\sum_{t\neq0}\chi(t)=0$ を使った。最後の言い換えは第 1 補充法則 $\chi(-1)=(-1)^{(p-1)/2}$ による。$\square$
$p=3$ では $\zeta=\frac{-1+\sqrt{-3}}2$ で、$g=\zeta-\zeta^2=\sqrt{-3}=i\sqrt3$、$g^2=-3$ である($\zeta^2=\bar\zeta$)。$p=5$ では、$\left(\frac15\right)=\left(\frac45\right)=1$、$\left(\frac25\right)=\left(\frac35\right)=-1$ なので
$$
g=\zeta-\zeta^2-\zeta^3+\zeta^4=2\cos\frac{2\pi}5-2\cos\frac{4\pi}5=\frac{\sqrt5-1}2+\frac{\sqrt5+1}2=\sqrt5
$$
で、$g^2=5$ である。数値で見ると $p=7,11,19$ では $g=i\sqrt7,\ i\sqrt{11},\ i\sqrt{19}$、$p=13,17$ では $g=\sqrt{13},\ \sqrt{17}$ となっている。
定理により、$p^*:=\left(\frac{-1}p\right)p$ の平方根 $g$ は $\zeta$ の整数係数の多項式として書ける。すなわち $\sqrt{p^*}$ は、$\mathbb Q$ に $\zeta$ を添加した体に入る。2 次の Gauss 和は平方剰余の相互法則の証明の 1 つにも使われ、そこでは $g^{q-1}=(p^*)^{(q-1)/2}$ を法 $q$ で 2 通りに計算する(Ste17 §4.4、pp. 81–86)。$g^2$ が $\pm p$ であることから $g$ は $\pm\sqrt p$ か $\pm i\sqrt p$ に決まるが、符号の $\pm$ がどちらになるかは定理からはわからない。上の数値例では符号はいつも $+$ だが、この記事では符号の決定には立ち入らない。
Legendre 記号を $(a\,|\,p)$ や $\left(\frac ap\right)_2$ と書く本もある。法を正の奇数 $n$ に広げ、$n$ の素因数分解に沿って Legendre 記号を掛け合わせたものが Jacobi 記号であり(平方剰余の相互法則 の記事の定義「Jacobi記号の定義」)、計算の途中で素因数分解を避けるために使う。ただし反例の表の 2 行目のとおり、Jacobi 記号の値 $1$ は平方剰余であることを意味しない。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する