二項係数を余りで分けた和

同義語:sums of binomial coefficients by residue

概要

二項係数を余りで分けた和(sums of binomial coefficients by residue)とは、$\binom N0+\binom N3+\binom N6+\cdots$ のように、添字 $k$ を $n$ で割った余りが同じ二項係数だけを足した和である。二項定理に $x=\pm1$ を代入すると偶数番目・奇数番目の和がどちらも $2^{N-1}$($N\ge1$)と分かり、$1$ の 3 乗根 $1,\omega,\omega^2$($\omega=\frac{-1+\sqrt3\,i}2$)を代入すると、余りが $r$ の和は $\frac13\bigl(2^N+2\cos\frac{(N-2r)\pi}3\bigr)$ となる。$1,i,-1,-i$ を使えば 4 つおきの和も求まる($N\ge1$)。$1$ の冪根での値の平均が係数をふるい分ける。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 二項定理, 複素数, de Moivreの定理

この記事で考えること

二項定理 $(1+x)^N=\sum_{k=0}^N\binom Nkx^k$ に $x=1$ を代入すると、二項係数の和 $\sum_k\binom Nk=2^N$ が得られる。では、二項係数を添字 $k$ の余りで分けた和、たとえば $\binom N0+\binom N3+\binom N6+\cdots$ はいくつだろうか。

小さい N で分けてみる

$N=4$ の二項係数は $\binom40,\dots,\binom44=1,4,6,4,1$ である。

  • 添字が偶数の和:$\binom40+\binom42+\binom44=1+6+1=8$。添字が奇数の和:$\binom41+\binom43=4+4=8$。
  • 添字を 3 で割った余りで分ける:余り 0($k=0,3$)は $1+4=5$、余り 1($k=1,4$)は $4+1=5$、余り 2($k=2$)は $6$。
    偶数・奇数ではちょうど半分ずつ($2^4/2=8$)に分かれたが、3 つに分けると $5,5,6$ で、$2^4/3=5.33\ldots$ のまわりに少しずれている。

この記事では、次の問いに順に答える。道具は、複素数の $1$ の 3 乗根 $\omega$ と $1$ の 4 乗根 $i$ である。

問い答えるボックス
偶数番目の和と奇数番目の和はいつも等しいかprop-bsr-parity
3 つおきの和はどう求めるかthm-bsr-three
3 つおきの和と $2^N/3$ のずれはどう決まるかthm-bsr-three、図 2
4 つおきの和はどう求めるかprop-bsr-four
実数だけで 3 つおきに分けられないのはなぜかex-bsr-real-only

偶数番目と奇数番目

偶数番目の和と奇数番目の和

$N\ge1$ のとき
$$ \binom N0+\binom N2+\binom N4+\cdots=\binom N1+\binom N3+\binom N5+\cdots=2^{N-1} $$
である(それぞれ $0\le k\le N$ の範囲の偶数 $k$、奇数 $k$ についての和)。

x = 1 と x = −1 を代入する

偶数 $k$ の和を $E$、奇数 $k$ の和を $O$ とおく。
段 1:二項定理に $x=1$ を代入すると $2^N=\sum_k\binom Nk=E+O$ である。
段 2:$x=-1$ を代入すると $(1-1)^N=\sum_k\binom Nk(-1)^k$ である。$N\ge1$ なので左辺は $0^N=0$ である。右辺では、$k$ が偶数の項は $(-1)^k=1$、奇数の項は $(-1)^k=-1$ なので、右辺は $E-O$ である。よって $0=E-O$ である。
段 3:段 1 と段 2 を足して $2E=2^N$、引いて $2O=2^N$ となり、$E=O=2^{N-1}$ である。$\square$

偶数番目と奇数番目を確かめる
  1. $N=5$:二項係数は $1,5,10,10,5,1$。偶数番目 $1+10+5=16$、奇数番目 $5+10+1=16$ で、$2^4=16$ である。
  2. $N=6$:二項係数は $1,6,15,20,15,6,1$。偶数番目 $1+15+15+1=32$、奇数番目 $6+20+6=32$ で、$2^5=32$ である。
  3. $N=0$:$\binom00=1$ だけなので、偶数番目の和は $1$、奇数番目の和は $0$ で、等しくない。証明の段 2 で $0^0=1$ となり、$0^N=0$ が使えないからである。

証明の要点は、$x=1$ と $x=-1$ の代入の平均をとると奇数番目が消えることである。$k$ ごとに見ると
$$ \frac{1^k+(-1)^k}2=\begin{cases}1&(k\text{ が偶数})\\ 0&(k\text{ が奇数})\end{cases} $$
で、この「平均」が偶数番目だけを取り出すふるいになっている。$x=\pm1$ の代入は 二項定理と組合せの恒等式 でも使う。3 つおきに分けるには、$1,-1$ の代わりに、3 乗して $1$ になる 3 つの数を使う。

3 つおきの和と ω

1 の虚数の 3 乗根 ω

$$ \omega:=\frac{-1+\sqrt3\,i}2 $$
とおく。

ω の基本性質

$\omega^2=\dfrac{-1-\sqrt3\,i}2$、$\omega^2+\omega+1=0$、$\omega^3=1$ である。また $\omega=\cos\frac{2\pi}3+i\sin\frac{2\pi}3$ である。

展開して計算する

段 1:$i^2=-1$ を使って展開すると
$$ \omega^2=\frac{(-1)^2+2\cdot(-1)\cdot\sqrt3\,i+(\sqrt3\,i)^2}4=\frac{1-2\sqrt3\,i-3}4=\frac{-1-\sqrt3\,i}2 $$
である。
段 2:$\omega^2+\omega+1=\dfrac{-1-\sqrt3\,i}2+\dfrac{-1+\sqrt3\,i}2+1=-1+1=0$ である。
段 3:$\omega^3=\omega\cdot\omega^2=\dfrac{(-1+\sqrt3\,i)(-1-\sqrt3\,i)}4=\dfrac{(-1)^2-(\sqrt3\,i)^2}4=\dfrac{1+3}4=1$ である(和と差の積 $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$ を使った)。
段 4:$\cos\frac{2\pi}3=-\frac12$、$\sin\frac{2\pi}3=\frac{\sqrt3}2$ なので、$\omega=\cos\frac{2\pi}3+i\sin\frac{2\pi}3$ である。$\square$

$\omega\ne0$ なので負の冪 $\omega^{-1}=\frac1\omega$ も考えられ、$\omega^3=1$ から $\omega^{-1}=\omega^2$ である。次の例のように $\omega^k$ は $k$ を 3 で割った余りだけで決まる。余りで整数を分ける考え方は 合同式と余りの世界 で詳しく扱う。

ω の冪を計算する

$\omega^3=1$ を使うと、$\omega^k$ は $k$ を 3 で割った余りだけで決まる。
$$ \omega^4=\omega^3\cdot\omega=\omega,\qquad \omega^5=\omega^3\cdot\omega^2=\omega^2,\qquad \omega^6=(\omega^3)^2=1,\qquad \omega^{10}=(\omega^3)^3\cdot\omega=\omega,\qquad \omega^{20}=(\omega^3)^6\cdot\omega^2=\omega^2. $$
$\omega^{-1}=\omega^2$、$\omega^{-2}=\omega$ でもある。

図1:1 の 3 乗根 1, ω, ω² は単位円の正三角形の頂点で、1+ω と 1+ω² も単位円の上にある 図1:1 の 3 乗根 1, ω, ω² は単位円の正三角形の頂点で、1+ω と 1+ω² も単位円の上にある
図 1 の青い矢印が $1,\omega,\omega^2$ で、単位円を 3 等分する。赤い矢印は $1+\omega$ と $1+\omega^2$ で、lem-bsr-omega の $\omega^2+\omega+1=0$ から $1+\omega=-\omega^2$、$1+\omega^2=-\omega$ である。どちらも絶対値が $1$ で、偏角は $\pm\frac\pi3$ である。
$\omega$ を掛けることが原点のまわりの $120^\circ$ の回転であることは 複素数の掛け算は回転と拡大 で扱う。
偶数・奇数のときの「ふるい」にあたるのが、次の補題である。

1, ω, ω² の k 乗の平均

整数 $k$ について
$$ \frac{1+\omega^k+\omega^{2k}}3=\begin{cases}1&(k\text{ が }3\text{ の倍数})\\ 0&(k\text{ が }3\text{ の倍数でない})\end{cases} $$
である。

3 で割った余りで場合を分ける

$k=3m+j$($m$ は整数、$j=0,1,2$)と書く。$\omega^3=1$ なので $\omega^k=(\omega^3)^m\omega^j=\omega^j$、$\omega^{2k}=(\omega^3)^{2m}\omega^{2j}=\omega^{2j}$ である。

  • $j=0$ のとき:$1+1+1=3$ なので、平均は $1$ である。
  • $j=1$ のとき:$1+\omega+\omega^2=0$(lem-bsr-omega)なので、平均は $0$ である。
  • $j=2$ のとき:$1+\omega^2+\omega^4=1+\omega^2+\omega=0$($\omega^4=\omega$)なので、平均は $0$ である。$\square$
補題を表で確かめる
$k$$0$$1$$2$$3$$4$$5$
$\omega^k$$1$$\omega$$\omega^2$$1$$\omega$$\omega^2$
$\omega^{2k}$$1$$\omega^2$$\omega$$1$$\omega^2$$\omega$
$1+\omega^k+\omega^{2k}$$3$$0$$0$$3$$0$$0$

たとえば $k=5$ では $\omega^{10}=\omega$(ex-bsr-omega-powers)なので $1+\omega^2+\omega=0$ である。

主定理:3 つおきの和

3 つおきの二項係数の和

$N\ge0$ と $r=0,1,2$ について、$0\le k\le N$ のうち $k$ を 3 で割った余りが $r$ であるものについての和を $S_r$ とすると、
$$ S_r=\frac13\Bigl(2^N+\omega^{-r}(1+\omega)^N+\omega^{-2r}(1+\omega^2)^N\Bigr)=\frac13\Bigl(2^N+2\cos\frac{(N-2r)\pi}3\Bigr) $$
である。

ふるいを掛けて足す

方針:lem-bsr-average を $k-r$ に使ってふるいを作り、二項定理で和をまとめる。
段 1(ふるい):lem-bsr-average を整数 $k-r$ に使うと、$\frac13\bigl(1+\omega^{k-r}+\omega^{2(k-r)}\bigr)$ は、$k-r$ が 3 の倍数(すなわち $k$ を 3 で割った余りが $r$)のとき $1$、そうでないとき $0$ である。したがって
$$ S_r=\sum_{k=0}^N\binom Nk\cdot\frac13\Bigl(1+\omega^{k-r}+\omega^{2(k-r)}\Bigr) $$
である。
段 2(二項定理でまとめる):右辺を 3 つの和に分ける。$\omega^{k-r}=\omega^{-r}\omega^k$、$\omega^{2(k-r)}=\omega^{-2r}(\omega^2)^k$ なので、二項定理に $x=1,\omega,\omega^2$ を代入した式により
$$ \sum_k\binom Nk=2^N,\qquad \sum_k\binom Nk\omega^{-r}\omega^k=\omega^{-r}(1+\omega)^N,\qquad \sum_k\binom Nk\omega^{-2r}(\omega^2)^k=\omega^{-2r}(1+\omega^2)^N $$
である。これで 1 つ目の等号が示せた。
段 3(三角関数で書く):lem-bsr-omega から $1+\omega=\frac{1+\sqrt3\,i}2=\cos\frac\pi3+i\sin\frac\pi3$ であり、$\omega^{-r}=\bigl(\cos\frac{2\pi}3+i\sin\frac{2\pi}3\bigr)^{-r}=\cos\frac{-2r\pi}3+i\sin\frac{-2r\pi}3$ である(de Moivreの定理。負の冪でも成り立つ)。de Moivre の定理により
$$ \omega^{-r}(1+\omega)^N=\cos\frac{(N-2r)\pi}3+i\sin\frac{(N-2r)\pi}3 $$
である。同様に $1+\omega^2=\frac{1-\sqrt3\,i}2=\cos\frac\pi3-i\sin\frac\pi3$ である。また $\omega^3=1$ より $\omega^{-2r}=\omega^{-3r}\cdot\omega^{r}=(\omega^3)^{-r}\omega^r=\omega^r$ なので、de Moivre の定理により $\omega^{-2r}=\cos\frac{2r\pi}3+i\sin\frac{2r\pi}3$ である。したがって
$$ \omega^{-2r}(1+\omega^2)^N=\cos\frac{(N-2r)\pi}3-i\sin\frac{(N-2r)\pi}3 $$
である。2 つを足すと虚部が打ち消し合い、$2\cos\frac{(N-2r)\pi}3$ が残る。$\square$

3 つおきの和(N = 6)

$N=6$ の二項係数は $1,6,15,20,15,6,1$ で、直接足すと $S_0=1+20+1=22$、$S_1=6+15=21$、$S_2=15+6=21$ である。公式では
$$ S_0=\frac{64+2\cos2\pi}3=\frac{66}3=22,\qquad S_1=\frac{64+2\cos\frac{4\pi}3}3=\frac{64-1}3=21,\qquad S_2=\frac{64+2\cos\frac{2\pi}3}3=\frac{63}3=21 $$
で一致する。

ω のまま計算する(N = 10)

$N=10$、$r=0$ で、公式の 1 つ目の形を $\omega$ のまま計算する。$1+\omega=-\omega^2$、$1+\omega^2=-\omega$ なので
$$ (1+\omega)^{10}=(-\omega^2)^{10}=\omega^{20}=\omega^2,\qquad (1+\omega^2)^{10}=(-\omega)^{10}=\omega^{10}=\omega $$
である(ex-bsr-omega-powers)。よって $S_0=\frac13(1024+\omega^2+\omega)=\frac13(1024-1)=341$ である。直接足すと、二項係数 $1,10,45,120,210,252,210,120,45,10,1$ のうち $k=0,3,6,9$ の和は $1+120+210+10=341$ で一致する。同様に $S_1=341$、$S_2=45+252+45=342$ である($341+341+342=1024$)。

図2:3 つおきの和と 2 の N 乗の 3 分の 1 との差は、N について周期 6 でくり返す 図2:3 つおきの和と 2 の N 乗の 3 分の 1 との差は、N について周期 6 でくり返す
図 2 は、ずれ $S_r-\frac{2^N}3=\frac23\cos\frac{(N-2r)\pi}3$ を $N=0,\dots,12$ で描いたものである。ずれは $\pm\frac13,\pm\frac23$ のどれかで、$N$ について周期 6 でくり返す。$2^N$ は 3 で割り切れないので、3 つの和がちょうど等しくなることはない。

4 つおきの和と i

同じ方法を、$1$ の 4 乗根 $1,i,-1,-i$ で行う。$i^4=1$ である。prf-thm-bsr-three の段 3 のように、複素数の冪を極形式と de Moivre の定理で三角関数に直す計算は、回転と複素数で三角関数の公式を導く でも使う。

4 つおきの二項係数の和

$N\ge1$ と $r=0,1,2,3$ について、$0\le k\le N$ のうち $k$ を 4 で割った余りが $r$ であるものについての和を $T_r$ とすると、
$$ T_r=\frac14\Bigl(2^N+2^{\frac N2+1}\cos\frac{(N-2r)\pi}4\Bigr) $$
である。

i によるふるい

段 1(ふるい):整数 $m$ について $\frac14\bigl(1+i^m+(-1)^m+(-i)^m\bigr)$ は、$m$ が 4 の倍数なら $1$、そうでなければ $0$ である。実際、$m=4l+j$($j=0,1,2,3$)とすると $i^m=i^j$、$(-1)^m=(-1)^j$、$(-i)^m=(-i)^j$ で、
$j=0$:$1+1+1+1=4$、$j=1$:$1+i-1-i=0$、$j=2$:$1-1+1-1=0$、$j=3$:$1-i-1+i=0$ である。
段 2(二項定理):$m=k-r$ としてふるいを掛けて足し、prf-thm-bsr-three の段 2 と同じように二項定理でまとめると
$$ T_r=\frac14\Bigl(2^N+i^{-r}(1+i)^N+(-1)^{-r}(1-1)^N+(-i)^{-r}(1-i)^N\Bigr) $$
である。$N\ge1$ なので $(1-1)^N=0$ である。
段 3(三角関数で書く):$1+i=\sqrt2\bigl(\cos\frac\pi4+i\sin\frac\pi4\bigr)$、$i^{-r}=\cos\frac{-r\pi}2+i\sin\frac{-r\pi}2$ なので、de Moivre の定理により
$$ i^{-r}(1+i)^N=2^{\frac N2}\Bigl(\cos\frac{(N-2r)\pi}4+i\sin\frac{(N-2r)\pi}4\Bigr) $$
である。$1-i$ は $1+i$ の共役複素数、$(-i)^{-r}$ は $i^{-r}$ の共役複素数であり、積の共役は共役の積($\overline{zw}=\overline z\,\overline w$)なので、$(-i)^{-r}(1-i)^N=\overline{i^{-r}(1+i)^N}$ である。つまり $(-i)^{-r}(1-i)^N$ は $i^{-r}(1+i)^N$ と実部が同じで、虚部の符号だけが逆である。2 つを足すと虚部が打ち消し合い、 $2^{\frac N2+1}\cos\frac{(N-2r)\pi}4$ となる。$\square$

4 つおきの和(N = 8, 10)
  1. $N=8$ の二項係数は $1,8,28,56,70,56,28,8,1$。直接足すと $T_0=1+70+1=72$、$T_1=8+56=64$、$T_2=28+28=56$、$T_3=56+8=64$ である。公式では $2^{\frac82+1}=32$ で、$T_0=\frac{256+32\cos2\pi}4=72$、$T_1=\frac{256+32\cos\frac{3\pi}2}4=64$、$T_2=\frac{256+32\cos\pi}4=56$、$T_3=\frac{256+32\cos\frac\pi2}4=64$ と一致する。
  2. $N=10$、$r=0$:$\cos\frac{10\pi}4=\cos\frac{5\pi}2=0$ なので $T_0=\frac{1024}4=256$。直接足すと $\binom{10}0+\binom{10}4+\binom{10}8=1+210+45=256$ である。

例と反例

外した仮定崩れる結論ボックス
$N\ge1$4 つおきの和の公式ex-bsr-n-zero
代入する数に虚数 $\omega$ を使う(実数 $\pm1$ だけにする)係数によらず成り立つ、3 つおきの和を取り出す式ex-bsr-real-only
反例:N = 0 では 4 つおきの公式が成り立たない

$N=0$ では $T_0=\binom00=1$ である。ところが prop-bsr-four の式は $\frac14\bigl(1+2\cos0\bigr)=\frac34$ となり、一致しない。証明の段 2 で $(1-1)^0=0^0=1$ となって、この項が消えないからである。仮定 $N\ge1$ を外すと公式が崩れる。一方 thm-bsr-three は $N=0$ でも成り立つ($S_0=\frac13(1+2)=1$)。

反例:実数 ±1 だけでは 3 つおきに分けられない

偶数番目の和を取り出す $\frac{f(1)+f(-1)}2$ も、3 つおきの和を取り出す prf-thm-bsr-three の段 1 のふるいも、多項式の係数が何であっても成り立つ式である。ここで問うのも、そのような式が実数 $\pm1$ の代入だけで作れるかどうかである。数を 1 つ当てはめるだけなら、たとえば $N=2$ では $S_0=\binom20=1$ で $\frac14(1+1)^2=1$ なので、「$(1+1)^N$ を $\frac14$ 倍する」だけで $S_0$ に等しくなってしまう。これは $N=2$ の二項係数の値に合わせただけで、「3 つおきの和を取り出す」式ではない。
段 1(重みを調べる):係数が何でもよい多項式 $f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+\cdots$ に $x=1$ と $x=-1$ を代入して、それぞれ $\alpha$ 倍、$\beta$ 倍して足すと
$$ \alpha f(1)+\beta f(-1)=\sum_k\bigl(\alpha+\beta(-1)^k\bigr)a_k $$
である。係数 $a_k$ に掛かる重み $\alpha+\beta(-1)^k$ は、$k$ の偶奇だけで決まる。特に $k=0$ と $k=2$ の重みはどちらも $\alpha+\beta$ である。
段 2(取り出せないことを示す):この式が、どんな係数についても $a_0+a_3+a_6+\cdots$ に等しいとする。$f(x)=1$($a_0=1$、ほかは $0$)とすると $\alpha+\beta=1$ でなければならない。$f(x)=x^2$($a_2=1$、ほかは $0$)とすると、$a_0+a_3+\cdots=0$ なので $\alpha+\beta=0$ でなければならない。両方は同時には成り立たないので、そのような $\alpha,\beta$ はない。
段 3(二項係数に限っても同じ):二項係数に限る場合も、$N$ によらない数 $\alpha,\beta$ で、すべての $N\ge1$ について $\alpha(1+1)^N+\beta(1-1)^N=S_0$ とはできない。$N\ge1$ では左辺は $\alpha\cdot2^N$ なので $\alpha=\frac{S_0}{2^N}$ が必要だが、$\frac{S_0}{2^N}$ は $N=1,2,3$ で $\frac12,\frac14,\frac14$ と変わる($N=1$ では $S_0=1$、$N=2$ では $S_0=1$、$N=3$ では $S_0=\binom30+\binom33=2$)。
3 乗して $1$ になる実数は $1$ しかなく、虚数の $\omega,\omega^2$ が欠かせない。

さらに先へ

  • 4 つおき・3 つおきを一般の $n$ つおきに広げたのが、$1$ の原始 $n$ 乗根による 振り分けの公式 である(1の冪根による振り分けの公式)。二項係数以外の多項式にも使え、「部分集合の和が 3 の倍数になるものの個数」なども数えられる。
  • ふるい $\frac13(1+\omega^k+\omega^{2k})$ は、群 $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ の 指標の直交関係 の特別な場合である(巡回群の指標と直交関係)。
  • 「$1,\omega,\omega^2$ での値から係数の和を取り出す」操作は、離散 Fourier 変換の反転公式 である(離散Fourier変換と反転公式)。

関連項目

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