平均・中央値・分散

同義語:平均と中央値mean, median and variance

概要

平均・中央値・分散(mean, median and variance)とは、データの中心と散らばりを表す基本の量である。平均値 $\bar x$ はずれの 2 乗の和 $\sum(x_i-a)^2$ を最小にするただ 1 つの $a$、中央値はずれの絶対値の和 $\sum|x_i-a|$ を最小にする $a$ であり(データが偶数個のとき最小にする $a$ は区間になり、高校の中央値はその中点)、分散は 2 乗の和の最小値を $n$ で割ったものである。データをベクトルとみると、分散は偏差ベクトルの長さの 2 乗、共分散は内積、相関係数は角の余弦になる。どの 2 つも無相関で分散 $\sigma^2$ の $n$ 個の確率変数の平均の分散は $\sigma^2/n$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 総和記号, 絶対値, 期待値

平均・中央値・分散とは

データの「中心」と「散らばり」を 1 つの数で表す量を、高校では代表値・散布度として習う。この記事は、その基本の 3 つ(平均値・中央値・分散)を短く定義し、それぞれを大学の数学の目で見直す 5 本の記事への案内をする。証明は各記事に書いてある。

平均値・中央値・分散

$n$ 個の数値からなるデータ $x_1,\dots,x_n$ を考え、小さい順に並べ替えたものを $x_{(1)}\le x_{(2)}\le\cdots\le x_{(n)}$ と書く。

  • 平均値:$\bar x:=\frac1n\sum_{i=1}^nx_i$。
  • 中央値:$n=2m+1$(奇数)なら $x_{(m+1)}$、$n=2m$(偶数)なら $\frac12\bigl(x_{(m)}+x_{(m+1)}\bigr)$。
  • 分散:偏差 $x_i-\bar x$ の 2 乗の平均 $s^2:=\frac1n\sum_{i=1}^n(x_i-\bar x)^2$。その正の平方根 $s$ を標準偏差という。
奇数個のデータ

データ $1,2,3,4,10$ では

  • 平均値:$\bar x=\frac{20}5=4$。
  • 中央値:真ん中の $x_{(3)}=3$。
  • 分散:偏差は $-3,-2,-1,0,6$ なので $s^2=\frac{9+4+1+0+36}5=10$。
    最後の値を $100$ に変えると、平均値は $\frac{110}5=22$ に跳ね上がるが、中央値は $3$ のままである。
偶数個のデータ

データ $1,2,4,7$ では

  • 平均値:$\bar x=\frac{14}4=3.5$。
  • 中央値:真ん中の 2 つ $2$ と $4$ の平均で $3$。
  • 分散:偏差は $-2.5,-1.5,0.5,3.5$ なので $s^2=\frac{6.25+2.25+0.25+12.25}4=\frac{21}4=5.25$。

図1:データ 1, 2, 3, 4, 10 と、最後の値を 100 に変えたデータ。平均値は 4 から 22 に動くが、中央値は 3 のまま。 図1:データ 1, 2, 3, 4, 10 と、最後の値を 100 に変えたデータ。平均値は 4 から 22 に動くが、中央値は 3 のまま。
平均値と中央値は、どちらも「中心」と呼ばれるのに値が違う。それぞれは何の意味で中心なのか。分散の公式 $s^2=\overline{x^2}-\bar x^2$ や、相関係数の $-1\le r\le1$ はなぜ成り立つのか。平均をとるとばらつきが減るのはなぜか。これらに 5 本の記事で答える。

高校の計算と大学の概念

高校の計算大学の言葉詳しい記事
平均値 $\bar x$ずれの 2 乗の和 $\sum(x_i-a)^2$ を最小にするただ 1 つの $a$平均値と二乗誤差
分散の公式 $s^2=\overline{x^2}-\bar x^2$直交分解とピタゴラスの定理平均値と二乗誤差、相関係数(高校数学)
中央値ずれの絶対値の和 $\sum\vert x_i-a\vert$ を最小にする $a$(偶数個なら区間)中央値と絶対誤差
確率分布の中央値$E\vert X\vert<\infty$ なら $E\vert X-a\vert$ を最小にする $a$、確率を半分ずつに分ける点確率分布の中央値
共分散・相関係数偏差ベクトルの内積・なす角の余弦相関係数(高校数学)
$-1\le r\le1$Cauchy–Schwarz の不等式相関係数(高校数学)
標本平均の標準偏差 $\frac{\sigma}{\sqrt n}$直交するベクトルの和の長さ標本平均の分散
同じデータで 3 つの見方を比べる

データ $1,2,3,4,10$ について、ずれの測り方ごとに「ずれの合計」を計算する。

  • 2 乗の和 $Q(a)=\sum(x_i-a)^2$:$Q(3)=4+1+0+1+49=55$、$Q(4)=9+4+1+0+36=50$。平均値 $4$ のほうが小さい。
  • 絶対値の和 $L(a)=\sum|x_i-a|$:$L(3)=2+1+0+1+7=11$、$L(4)=3+2+1+0+6=12$。中央値 $3$ のほうが小さい。
    どちらの測り方でも、最小になるのはそれぞれ平均値と中央値である(証明は 平均値と二乗誤差 と 中央値と絶対誤差)。$Q$ の最小値 $50$ は分散 $10$ の $5$ 倍である。
分散の公式

データ $1,2,3,4,10$ では、$x_i^2$ の平均は $\overline{x^2}=\frac{1+4+9+16+100}5=26$ なので
$$ \overline{x^2}-\bar x^2=26-16=10 $$
となり、偏差から計算した分散 $10$(ex-mmv-odd-data)と一致する。この一致がいつも起こる理由は、平均値と二乗誤差 では 2 次関数の平方完成として、相関係数(高校数学) では直角三角形の三辺の関係として説明する。

相関係数を角として見る

2 つの変量 $\boldsymbol x=(1,2,3,4,5)$、$\boldsymbol y=(1,3,2,5,4)$ では、偏差は $(-2,-1,0,1,2)$ と $(-2,0,-1,2,1)$ である。$s_x^2=s_y^2=2$、共分散は $s_{xy}=\frac{4+0+0+2+2}5=\frac85$ なので、相関係数は $r=\frac{8/5}{2}=0.8$ である。$r=\cos\theta$ となる角は $\theta=36.86\ldots^\circ$ で、これは 2 つの偏差ベクトルのなす角である(相関係数(高校数学))。

平均するとばらつきが減る

表なら $1$、裏なら $0$ とする公正な硬貨 1 枚の分散は $\frac14$ である。2 枚を独立に投げた平均は $0,\frac12,1$ を確率 $\frac14,\frac12,\frac14$ でとり、分散は $\frac14\cdot\frac14+\frac12\cdot0+\frac14\cdot\frac14=\frac18$ である。1 枚の分散の半分になる。$n$ 枚なら $\frac1{4n}$ になることが 標本平均の分散 で示される。

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疑問答える記事
平均値はどういう意味で「中心」なのか平均値と二乗誤差
偶数個のとき、中央値を真ん中の 2 つの平均にするのはなぜか中央値と絶対誤差
外れ値があると平均値が動くのに、中央値が動かないのはなぜか中央値と絶対誤差
確率分布(さいころ、密度関数)の中央値はどう決めるか確率分布の中央値
期待値をもたない分布はあるか確率分布の中央値
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相関係数が $0$ なら無関係か相関係数(高校数学)
同じ測定をくり返して平均すると、なぜ精度が上がるのか標本平均の分散
何回くり返せば精度が 2 倍になるか標本平均の分散

読む順番

  1. 平均値と二乗誤差:平均値は、ずれの 2 乗の和を最小にするただ 1 つの値である。偏差の和が $0$ になることから等式 $\sum(x_i-a)^2=\sum(x_i-\bar x)^2+n(a-\bar x)^2$ を導き、分散の公式を系として得る。確率変数の期待値でも同じことが成り立つ。
  2. 中央値と絶対誤差:中央値は、ずれの絶対値の和を最小にする値である。偶数個のときは最小にする値が区間になり、高校の中央値はその中点であることがわかる。平均値との使い分けも扱う。
  3. 確率分布の中央値:確率変数の中央値を確率の釣り合いで定義し、$E|X-a|$ を最小にするのが中央値であることを示す。期待値をもたない Cauchy 分布でも中央値は使える。
  4. 相関係数(高校数学):データをベクトルとみると、分散は長さの 2 乗、共分散は内積、相関係数は角の余弦になる。$-1\le r\le1$ を 2 次関数の判別式で証明し、$r=\pm1$ となる条件を求める。1 のあとに読むとよい。
  5. 標本平均の分散:分散がどれも $\sigma^2$ で、どの 2 つも無相関な $n$ 個の確率変数の平均は、分散が $\frac{\sigma^2}n$ になる。共分散の性質から証明し、相関があると成り立たない例を見る。1 のあとに読むとよい。
    1 → 2 → 3 の順に読むと、平均と中央値の違いがはっきりする。4 と 5 は 1 を読んでいれば、どちらからでも読める。

関連項目

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