局所コンパクト空間

同義語:局所コンパクトHausdorff空間locally compact space

概要

局所コンパクト空間(locally compact space)とは、各点がコンパクトな近傍を持つ Hausdorff 空間のことである。Hausdorff 性のもとでは、各点と任意の開近傍の間にコンパクトな閉包を持つ開近傍を挟めることと同値であり、この「コンパクトな緩衝帯」により、コンパクト Hausdorff 空間の議論を局所化して使える。Euclid 空間 $\mathbb{R}^n$、離散空間、コンパクト Hausdorff 空間が基本例で、有理数全体 $\mathbb{Q}$ や数列空間 $\ell^2$ は局所コンパクトでない。開部分空間・閉部分空間・有限積で保たれ、一点を付け加えるとコンパクト Hausdorff 空間(一点コンパクト化)になり、Tychonoff 空間かつ Baire 空間である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 開集合, 閉集合, 近傍, 閉包, コンパクト空間, Hausdorff空間, 相対位相

定義

局所的なコンパクト性

位相空間 $X$ の点 $x$ のコンパクト近傍(compact neighborhood)とは、$x$ の近傍であってコンパクト(コンパクト空間)な部分集合 $K\subset X$、すなわち $x\in\operatorname{Int}K$(内部)を満たすコンパクト集合 $K$ のことをいう。
位相空間 $X$ が局所コンパクト空間(locally compact space)であるとは、$X$ がHausdorff空間であり、各点 $x\in X$ がコンパクト近傍を持つことをいう。

Hausdorff 性を含める流儀

文献によっては、各点がコンパクト近傍を持つという条件だけを「局所コンパクト」と呼び、Hausdorff 性は別に仮定する(Mun00 §29 はこの流儀で、両方を仮定した空間を locally compact Hausdorff space と呼ぶ)。また「各点がコンパクトな閉包を持つ開近傍を持つ」「各点がコンパクト集合からなる近傍基を持つ」を定義に採る文献もある(Kel75 Chapter 5)。Engelking89 §3.3 は compact に Hausdorff を含める流儀のため、局所コンパクト空間は結果的に Hausdorff になる。Hausdorff 性のもとではこれらの条件はすべて同値である(thm-locally-compact-space-equivalences)が、Hausdorff 性を仮定しないと同値でない。本記事では Hausdorff 性を定義に含める。したがって、たとえば二点集合 $\{0,1\}$ に開集合を $\emptyset,\{1\},\{0,1\}$ とする位相を入れた Sierpinski空間は、有限集合なので各点がコンパクト近傍を持つが、Hausdorff でないので本記事の意味の局所コンパクト空間ではない。

局所コンパクト空間は、空間全体がコンパクトだという意味ではない。コンパクト近傍はコンパクトな集合であって、その集合自体が開である必要もない。また「コンパクト近傍を一つ持つ」と「任意の近傍の内側にコンパクトな閉包を持つ開近傍を取れる」は文面の異なる条件だが、Hausdorff 性のもとでは次の定理により同値である。

直感

局所コンパクト空間とは、「空間全体はコンパクトでなくてよいが、どの点のまわりも十分小さく見ればコンパクト空間と同じ議論ができる」空間である。Euclid空間 $\mathbb{R}^n$ は有界でないのでコンパクトではないが、各点は閉球というコンパクト近傍を持つ。局所コンパクト Hausdorff 空間では、点と開近傍の間にコンパクトな閉包を持つ開近傍を挟むことができ(thm-locally-compact-space-equivalences)、この「コンパクトな緩衝帯」を使って、コンパクト Hausdorff 空間の性質(正規性、Urysohnの補題、有限交叉性による議論)を局所化して使える。一点を付け加えるだけでコンパクト Hausdorff 空間に埋め込めること(thm-locally-compact-space-one-point)、Tychonoff空間であること、Baire空間であることは、いずれもこの緩衝帯から導かれる。

同値な条件

コンパクト近傍の同値な形

Hausdorff 空間 $X$ に対して、次の条件は同値である。

  1. 各 $x\in X$ はコンパクト近傍を持つ。
  2. 各 $x\in X$ はコンパクトな閉包を持つ開近傍を持つ。
  3. 各 $x\in X$ と $x$ の開近傍 $O$ に対し、開集合 $V$ で
    $$x\in V\subset\overline{V}\subset O$$
    かつ $\overline{V}$ がコンパクトとなるものが存在する。
  4. 各 $x\in X$ はコンパクト集合からなる近傍基を持つ。すなわち、$x$ の任意の近傍はあるコンパクト近傍を含む。

3 から 4:$x$ の近傍 $N$ に対し $O:=\operatorname{Int}N$ に 3 を適用すると、$\overline{V}$ は $x\in V\subset\overline{V}\subset N$ を満たすコンパクト近傍である。4 から 1、および 2 から 1 は直ちに従う。1 から 2:$K$ を $x$ のコンパクト近傍とすると、コンパクト空間の記事の命題(保存と閉性)により Hausdorff 空間のコンパクト部分集合 $K$ は閉集合なので、開近傍 $\operatorname{Int}K$ の閉包は $K$ に含まれ、コンパクト集合の閉部分集合としてコンパクトである。
1 から 3 を示す。$x\in O$ をとり、$x$ のコンパクト近傍 $K$ をとって $N:=\operatorname{Int}K\cap O$ とおく。$N$ は $x$ を含む開集合であり、$C:=K\setminus N$ は $K$ の閉部分集合なのでコンパクトで、$x\notin C$ である。Hausdorff 空間では点とそれを含まないコンパクト集合を交わらない開集合で分離できる(コンパクト空間の記事の命題(保存と閉性)の証明の第 3 項で示されている)。そこで交わらない開集合 $P,Q$ で $x\in P$、$C\subset Q$ となるものをとる。
$V:=P\cap N$ とおく。$V\subset K$ で $K$ は閉集合だから $\overline{V}\subset K$ である。また $P\subset X\setminus Q$ で右辺は閉集合だから $\overline{V}\subset\overline{P}\subset X\setminus Q$ であり、$\overline{V}$ は $C$ と交わらない。したがって $\overline{V}\subset K\setminus C=N\subset O$ である。$\overline{V}$ はコンパクト集合 $K$ の閉部分集合なのでコンパクトであり、3 を得る。$\square$

コンパクト集合と開集合の間の緩衝帯

$X$ を局所コンパクト空間、$K\subset X$ をコンパクト集合、$O\supset K$ を開集合とする。このとき、開集合 $V$ で $K\subset V\subset\overline{V}\subset O$ かつ $\overline{V}$ がコンパクトとなるものが存在する。

各 $x\in K$ に対し、thm-locally-compact-space-equivalences の 3 により $x\in V_x\subset\overline{V_x}\subset O$ かつ $\overline{V_x}$ がコンパクトとなる開集合 $V_x$ がある(各 $x$ について一つずつ選ぶので、$K$ が無限集合のときは選択公理を使う)。$\{V_x\mid x\in K\}$ は $K$ の開被覆なので、有限個の $x_1,\dots,x_n$ で $K\subset V:=V_{x_1}\cup\cdots\cup V_{x_n}$ となる。$\overline{V}=\overline{V_{x_1}}\cup\cdots\cup\overline{V_{x_n}}$ は有限個のコンパクト集合の和なのでコンパクトであり、$O$ に含まれる。$K=\emptyset$ のときは $V=\emptyset$ とすればよい。$\square$

例と反例

コンパクト Hausdorff 空間

コンパクト Hausdorff 空間は局所コンパクトである。空間全体が各点のコンパクト近傍になる。たとえば閉区間 $[0,1]$、単位円周 $S^1$、球面 $S^n$、Cantor集合は局所コンパクトである。

Euclid 空間

$\mathbb{R}^n$ は局所コンパクトである。各点 $x$ の開球 $B(x,1)$ の閉包は閉球 $\overline{B}(x,1)=\{y\mid\|y-x\|\le1\}$ であり、これは有界な閉集合なので Heine-Borelの定理(コンパクト空間の記事の定理(有界閉集合とコンパクト性の一致))によりコンパクトである。一方、$n\ge1$ なら $\mathbb{R}^n$ 全体は有界でないのでコンパクトでない。より一般に、$\mathbb{R}^n$ の開集合と閉集合はすべて局所コンパクトである(prop-lc-open-subspace、prop-lc-closed-subspace)。

離散空間

任意の集合に離散位相を入れた空間は局所コンパクトである。各一点集合は開集合で、有限集合だからコンパクトである。無限集合の離散空間は一点集合からなる開被覆が有限部分被覆を持たないので、局所コンパクトだがコンパクトでない。

反例:有理数全体

実数直線の部分空間としての有理数全体 $\mathbb{Q}$ は Hausdorff だが局所コンパクトでない。この例は「Hausdorff かつ距離空間」から「局所コンパクト」が従わないこと、および局所コンパクト空間 $\mathbb{R}$ の部分空間が局所コンパクトとは限らないことを示す。
実際、$q\in\mathbb{Q}$ がコンパクト近傍 $K\subset\mathbb{Q}$ を持つと仮定する。ある $a< q< b$ について $(a,b)\cap\mathbb{Q}\subset K$ となる。包含写像 $\mathbb{Q}\hookrightarrow\mathbb{R}$ は連続写像だから $K$ は $\mathbb{R}$ のコンパクト部分集合でもあり、Hausdorff 空間 $\mathbb{R}$ の中で閉である。ところが $K$ は $(a,b)\cap\mathbb{Q}$ を含むので、$\mathbb{Q}$ が $\mathbb{R}$ で稠密であることから、その $\mathbb{R}$ における閉包 $[a,b]$ も含まなければならない。$[a,b]$ は無理数を含むので、これは $K\subset\mathbb{Q}$ に反する。よってどの $q$ もコンパクト近傍を持たない。同じ理由で $\mathbb{R}$ の無理数全体も局所コンパクトでない。

反例:数列空間

二乗和が有限な実数列の空間 $\ell^2$(ノルム空間、ノルムは $\|x\|=(\sum_ix_i^2)^{1/2}$)は距離空間だが局所コンパクトでない。$0$ がコンパクト近傍 $K$ を持てば、ある $r>0$ で開球 $B(0,r)\subset K$ となり、閉球 $\overline{B}(0,r/2)$ は閉集合 $K$(Hausdorff 空間のコンパクト集合は閉)の閉部分集合としてコンパクトになる。ところが拡大 $x\mapsto(2/r)x$ は $\ell^2$ の同相写像で $\overline{B}(0,r/2)$ を閉単位球 $\overline{B}(0,1)$ に写すので、閉単位球もコンパクトになるが、これはコンパクト空間の記事の注意(無限次元では有界閉球がコンパクトでない)に反する。任意の点は平行移動で $0$ に移るので、$\ell^2$ のどの点もコンパクト近傍を持たない。この例は「距離空間かつ Hausdorff」から局所コンパクト性が従わないことをあらためて示す。

そのほかの反例

Sorgenfrey直線は Hausdorff な正規空間だが、コンパクト部分集合が高々可算なので局所コンパクトでない(Sorgenfrey直線の記事の系(コンパクト性の各種条件の不成立))。Hausdorff 性を落とした反例は rem-lc-convention の Sierpinski 空間である。可算無限個の $\mathbb{R}$ の積 $\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$ は Hausdorff だが局所コンパクトでない(prop-locally-compact-space-product)。

性質

部分空間・積・像

閉部分空間への遺伝

局所コンパクト空間の閉部分空間は局所コンパクトである。

$A\subset X$ を閉集合とし相対位相を入れ、$a\in A$ とする。$X$ における $a$ のコンパクト近傍 $K$ をとる。$A\cap K$ はコンパクト集合 $K$ の閉部分集合なのでコンパクトであり、$A$ の開集合 $A\cap\operatorname{Int}K\ni a$ を含むから、$A$ における $a$ の近傍である。Hausdorff 性は部分空間に遺伝する(分離公理の記事の命題(基本的な分離公理の遺伝性))ので、$A$ は局所コンパクトである。$\square$

開部分空間への遺伝

局所コンパクト空間の開部分空間は局所コンパクトである。

$U\subset X$ を開集合とし、$x\in U$ とする。thm-locally-compact-space-equivalences の 3 により、開集合 $V$ で $x\in V\subset\overline{V}\subset U$ かつ $\overline{V}$ がコンパクトとなるものがある。$V$ は $U$ でも開であり、$\overline{V}$ は $U$ における $x$ のコンパクト近傍である。Hausdorff 性は部分空間へ遺伝するので、$U$ は局所コンパクトである。$\square$

閉部分空間と開部分空間についての二つの命題は、任意の部分空間が局所コンパクトだという主張ではない(ex-locally-compact-space-rationals)。局所コンパクトになる部分空間は次のように特徴づけられる。

局所コンパクトな部分空間の特徴づけ

$X$ を局所コンパクト空間、$A\subset X$ を部分空間とする。$A$ が局所コンパクトであるための必要十分条件は、$A$ がその閉包 $\overline{A}$ の開集合であること、すなわち $X$ の開集合 $U$ と閉集合 $F$ により $A=U\cap F$ と書けること($A$ が局所閉集合であること)である。

$A$ が $\overline{A}$ で開なら、$\overline{A}$ は prop-lc-closed-subspace により局所コンパクトで、その開部分空間 $A$ は prop-lc-open-subspace により局所コンパクトである。なお「$\overline{A}$ で開」と「$A=U\cap F$ の形」は同値である:前者なら $A=U\cap\overline{A}$ となる開集合 $U$ があり、後者なら $A\subset\overline{A}\subset F$ から $A=U\cap\overline{A}$ である。
逆に $A$ が局所コンパクトとし、$x\in A$ をとる。$A$ における $x$ のコンパクト近傍 $K$ をとると、相対位相の定義により $X$ の開集合 $U$ で $x\in U\cap A\subset K$ となるものがある。$K$ は Hausdorff 空間 $X$ のコンパクト部分集合なので $X$ の閉集合であり、したがって $\overline{U\cap A}\subset K\subset A$ である。ここで開集合 $U$ について $U\cap\overline{A}\subset\overline{U\cap A}$ が成り立つ:$y\in U\cap\overline{A}$ と $y$ の開近傍 $W$ に対し、$W\cap U$ は $y$ の開近傍なので $A$ と交わり、よって $W$ は $U\cap A$ と交わる。以上から $x\in U\cap\overline{A}\subset A$ であり、$U\cap\overline{A}$ は $\overline{A}$ の開集合である。$x\in A$ は任意だったから、$A$ はこのような開集合の和として $\overline{A}$ の開集合である。$\square$

開写像による像

$f\colon X\to Y$ を局所コンパクト空間 $X$ から Hausdorff 空間 $Y$ への連続な全射で開写像であるものとする。このとき $Y$ は局所コンパクトである。

$y\in Y$ に対し $f(x)=y$ となる $x\in X$ をとり、$x$ のコンパクト近傍 $K$ をとる。$f(K)$ はコンパクト集合の連続像なのでコンパクトであり、$f$ が開写像なので $f(\operatorname{Int}K)$ は $y$ を含む $Y$ の開集合で $f(K)$ に含まれる。よって $f(K)$ は $y$ のコンパクト近傍である。$\square$

開写像であるという仮定は落とせない。可算無限集合 $\mathbb{Q}$ に離散位相を入れた空間から通常の位相の $\mathbb{Q}$ への恒等写像は連続な全単射で、定義域は局所コンパクト(ex-lc-3)だが、終域は局所コンパクトでない(ex-locally-compact-space-rationals)。したがって局所コンパクト性は一般の連続像では保たれない。一方、完全写像による像では保たれる(完全写像の記事の定理(完全像への遺伝))。

有限個の積と無限個の積
  1. 局所コンパクト空間 $X_1,\dots,X_n$ の直積位相による積 $X_1\times\cdots\times X_n$ は局所コンパクトである。
  2. 可算無限個の $\mathbb{R}$ の積 $\mathbb{R}^{\mathbb{N}}$(直積位相)は Hausdorff だが局所コンパクトでない。一般に、Hausdorff 空間の族 $(X_i)_{i\in I}$ の積が局所コンパクトで空でないならば、各 $X_i$ は局所コンパクトで、有限個を除くすべての $X_i$ はコンパクトである。
  1. Hausdorff 空間の積は Hausdorff である(Tychonoffの定理 の記事の命題(Hausdorff 性の保存))。点 $(x_1,\dots,x_n)$ に対し、各 $x_i$ のコンパクト近傍 $K_i$ をとる。$K_1\times\cdots\times K_n$ は有限個のコンパクト空間の積なのでコンパクトであり(Tychonoffの定理。有限個の場合は選択公理を要しない)、開集合 $\operatorname{Int}K_1\times\cdots\times\operatorname{Int}K_n$ を含むので、この点のコンパクト近傍である。
  2. 後半を示せば、$\mathbb{R}$ がコンパクトでないことから前半が従う。$X=\prod_{i\in I}X_i$ が局所コンパクトで空でないとし、点 $x\in X$ のコンパクト近傍 $K$ をとる。射影 $\pi_i\colon X\to X_i$ は連続な開写像であり全射なので、各 $X_i$ は prop-locally-compact-space-image により局所コンパクトである。また直積位相の定義により、有限集合 $J\subset I$ と各 $j\in J$ の開集合 $U_j\subset X_j$ で
    $$x\in\bigcap_{j\in J}\pi_j^{-1}(U_j)\subset K$$
    となるものがある。$i\notin J$ に対し、$\pi_i$ は左辺の集合を $X_i$ 全体に写すので $\pi_i(K)=X_i$ であり、コンパクト集合の連続像として $X_i$ はコンパクトである。$\square$

一点コンパクト化と Hausdorff コンパクト化

一点を付け加えるコンパクト化

$X$ を局所コンパクト空間とし、$X$ に属さない一点 $\infty$ を付け加えた集合 $X^*:=X\cup\{\infty\}$ に、次の集合族を開集合系として与える。

  • $X$ の開集合 $U$、および
  • $X$ のコンパクト集合 $K$ に対する $X^*\setminus K$。
    このとき $X^*$ はコンパクト Hausdorff 空間であり、$X$ は $X^*$ の開部分空間である。さらに、$X$ がコンパクトでなければ $X$ は $X^*$ で稠密であり、$X$ がコンパクトならば $\infty$ は $X^*$ の孤立点である。この $X^*$ を $X$ の一点コンパクト化(one-point compactification、Alexandroff コンパクト化)という。

上の集合族を $\mathcal{T}$ と書く。$\emptyset$ は $X$ の開集合、$X^*=X^*\setminus\emptyset$ は $\emptyset$ がコンパクトなので、ともに $\mathcal{T}$ に属する。$X$ のコンパクト集合は Hausdorff 性により $X$ の閉集合であることを繰り返し使う。
有限交叉:$U_1\cap U_2$ は $X$ の開集合である。$U\cap(X^*\setminus K)=U\cap(X\setminus K)$ は $X$ の開集合である。$(X^*\setminus K_1)\cap(X^*\setminus K_2)=X^*\setminus(K_1\cup K_2)$ で、$K_1\cup K_2$ はコンパクトである。
任意の和:$X$ の開集合だけの和は $X$ の開集合である。$X^*\setminus K_\lambda$($\lambda\in\Lambda\neq\emptyset$)の和は $X^*\setminus\bigcap_\lambda K_\lambda$ であり、$\bigcap_\lambda K_\lambda$ は閉集合の共通部分としてコンパクト集合 $K_{\lambda_0}$ の閉部分集合なのでコンパクトである。両方の型が混じる和は、$U:=\bigcup U_\mu$($X$ の開集合)と $K:=\bigcap K_\lambda$(コンパクト)により $U\cup(X^*\setminus K)=X^*\setminus(K\setminus U)$ と書け、$K\setminus U=K\cap(X\setminus U)$ はコンパクト集合 $K$ の閉部分集合なのでコンパクトである。よって $\mathcal{T}$ は位相である。
$X$ の相対位相:$U\cap X=U$、$(X^*\setminus K)\cap X=X\setminus K$ はどちらも $X$ の開集合であり、逆に $X$ の開集合は $\mathcal{T}$ に属する。よって $X$ の相対位相はもとの位相に一致し、$X$ 自身が $\mathcal{T}$ に属するので $X$ は $X^*$ の開部分空間である。
コンパクト性:$X^*$ の開被覆 $\mathcal{U}$ をとる。$\infty$ を含む成員はある $X^*\setminus K$ の形である。$K$ は $X$ のコンパクト集合で、$\mathcal{U}$ の成員と $X$ との共通部分は $X$ の開集合なので、有限個の成員 $W_1,\dots,W_n\in\mathcal{U}$ で $K\subset W_1\cup\cdots\cup W_n$ となる。これに $X^*\setminus K$ を加えた有限個の成員が $X^*$ を覆う。
Hausdorff 性:$X$ の相異なる二点は $X$ の交わらない開集合で分離でき、それらは $X^*$ でも開である。$x\in X$ と $\infty$ については、$x$ のコンパクト近傍 $K$ をとると $\operatorname{Int}K$ と $X^*\setminus K$ が交わらない開集合で、それぞれ $x$、$\infty$ を含む。ここで $X$ の局所コンパクト性を使った。
稠密性と孤立性:$\infty$ の近傍は $X^*\setminus K$($K$ コンパクト)を含む。$X$ がコンパクトでなければ $K\neq X$ なので $X^*\setminus K$ は $X$ と交わり、$X$ は稠密である。$X$ がコンパクトなら $\{\infty\}=X^*\setminus X$ は開集合である。$\square$

コンパクト化の一般論との関係

thm-locally-compact-space-one-point は Alexandroff による構成で、$\mathbb{R}^n$ の一点コンパクト化は球面 $S^n$ に同相である(立体射影による。Mun00 §29 の例、Engelking89 §3.5)。$X$ をコンパクト Hausdorff 空間に稠密に埋め込む一般の構成(コンパクト化)、その中での一点コンパクト化の一意性、Stone–Čech コンパクト化との比較は 一点コンパクト化・コンパクト化が扱う。「一点コンパクト化」と「局所コンパクト化」は同義語ではない。

コンパクト化で開になること

$X$ を Tychonoff空間とする。ここで $X$ の Hausdorff コンパクト化とは、コンパクト Hausdorff 空間 $cX$ と、像が稠密な位相的埋め込み $e\colon X\to cX$ の組をいう(Tychonoff空間 の記事と同じ定義)。このとき次の条件は同値である。

  1. $X$ は局所コンパクトである。
  2. 任意の Hausdorff コンパクト化 $e\colon X\to cX$ で、$e(X)$ は $cX$ の開集合である。
  3. ある Hausdorff コンパクト化 $e\colon X\to cX$ で、$e(X)$ は $cX$ の開集合である。

$X$ を $e(X)$ と同一視する。1 を仮定し、Hausdorff コンパクト化 $cX$ と $x\in X$ をとり、$X$ における $x$ のコンパクト近傍 $K$ をとる。相対位相の定義から、$cX$ の開集合 $O$ で $x\in O$ かつ $O\cap X\subset K$ となるものをとれる。$K$ は $cX$ のコンパクト部分集合だから閉である。$O\setminus K$ は $X$ と交わらない開集合だが、$X$ は $cX$ で稠密なので空である。よって $O\subset K\subset X$ であり、$X$ は $cX$ で開である。したがって 1 から 2 が従う。
2 から 3:Tychonoff 空間には Hausdorff コンパクト化が存在する(Tychonoff空間の記事の命題(Hausdorff コンパクト化による特徴づけ))ので、その一つに 2 を適用すればよい。
3 を仮定する。コンパクト Hausdorff 空間 $cX$ は正規である(コンパクト空間の記事の命題(コンパクト Hausdorff 空間の正規性))から、任意の $x\in X$ に対し、交わらない閉集合 $\{x\}$ と $cX\setminus X$($X$ が開なので閉)を分離する交わらない開集合 $V\ni x$、$V'\supset cX\setminus X$ をとると、$\overline{V}\subset cX\setminus V'\subset X$ なので、$cX$ の開集合 $V$ で $x\in V\subset\overline{V}\subset X$ となるものが得られる($cX\setminus X=\emptyset$ なら $V=cX$ でよい)。$\overline{V}$ は $cX$ の閉部分集合なのでコンパクトで、$X$ における $x$ のコンパクト近傍でもある。$X$ は Hausdorff なので 1 が従う。$\square$

分離公理と Baire 性

局所コンパクト空間は Tychonoff 空間

局所コンパクト空間 $X$ は Tychonoff 空間である。すなわち、任意の閉集合 $F\subset X$ と $x\in X\setminus F$ に対し、$f(x)=0$ かつ $F$ 上で $1$ となる連続写像 $f\colon X\to[0,1]$ が存在する。特に $X$ は正則空間である。

thm-locally-compact-space-equivalences の 3 を $O:=X\setminus F$ に適用し、$x\in V\subset\overline{V}\subset X\setminus F$ かつ $\overline{V}$ がコンパクトとなる開集合 $V$ をとる。$\overline{V}$ はコンパクト Hausdorff 空間なので正規であり(コンパクト空間の記事の命題(コンパクト Hausdorff 空間の正規性))、$\{x\}$ と $\overline{V}\setminus V$ はその交わらない閉集合である($\{x\}$ は Hausdorff 性から閉、$\overline{V}\setminus V=\overline{V}\cap(X\setminus V)$ は閉)。Urysohnの補題(第2可算公理の記事の補題(閉集合を関数で分離する)、Mun00 §33 Theorem 33.1)により、連続写像 $g\colon\overline{V}\to[0,1]$ で $g(x)=0$、$\overline{V}\setminus V$ 上で $1$ となるものがある。$\overline{V}\setminus V=\emptyset$ のときは $g$ を $0$ にとる。
$f\colon X\to[0,1]$ を、$\overline{V}$ 上では $g$、$X\setminus V$ 上では定数 $1$ と定める。二つの定義域は閉集合で $X$ を覆い、共通部分 $\overline{V}\setminus V$ の上では両方の定義が $1$ で一致するので、$f$ は well-defined で、閉集合上の連続写像の貼り合わせとして連続である。$f(x)=g(x)=0$ であり、$F\subset X\setminus V$ 上で $f=1$ である。$X$ は Hausdorff なので Tychonoff 空間である。Tychonoff 空間が正則であることは分離公理の記事の命題(完全正則性を経由する含意)による。$\square$

局所コンパクト空間は正規とは限らない。Tychonoffの板($[0,\omega_1]\times[0,\omega]$ から点 $(\omega_1,\omega)$ を除いた空間)はコンパクト Hausdorff 空間の開部分空間なので局所コンパクトだが、正規でない(Engelking89 §3.1 の Tychonoff の板の例)。

局所コンパクト空間は Baire 空間

局所コンパクト空間 $X$ は Baire 空間である。すなわち、$X$ の稠密な開集合の列 $U_1,U_2,\dots$ に対し $\bigcap_{n}U_n$ は $X$ で稠密である。

Baire 性の証明の所在

証明は Baireのカテゴリー定理の記事の定理(Baire のカテゴリー定理)の第 2 項に、局所コンパクト Hausdorff 空間の場合の証明として与えられている。その証明が使うのは thm-locally-compact-space-equivalences の 3 と、コンパクト空間における有限交叉性による議論だけである。$\mathbb{Q}$ が Baire 空間でないこと(同記事の例)は、ex-locally-compact-space-rationals と整合する。

商写像との積

局所コンパクト因子と商写像

$X$ を局所コンパクト空間、$q\colon Y\to Z$ を商写像とする。このとき
$$ \operatorname{id}_X\times q\colon X\times Y\longrightarrow X\times Z $$
は商写像である(Whitehead の定理、Mun00 §29 Exercise 11、Engelking89 §3.3 Theorem 3.3.17)。

$p:=\operatorname{id}_X\times q$ とおく。$q$ は全射なので $p$ も全射かつ連続である。$W\subset X\times Y$ を開集合で、$p$ のファイバーの和($W=p^{-1}(p(W))$)になっているものとし、$p(W)$ が開であることを示せばよい。$(x,z)\in p(W)$ をとり、$q(y)=z$ かつ $(x,y)\in W$ となる $y$ をとる。直積位相により $x\in O$、$y\in N$ かつ $O\times N\subset W$ となる開集合 $O,N$ がある。thm-locally-compact-space-equivalences の 3 により、$x\in U\subset K\subset O$ となる開集合 $U$ とコンパクト集合 $K$ をとれる。
$B:=(K\times Y)\setminus W$ は $K\times Y$ の閉集合である。コンパクト因子に沿う射影 $K\times Y\to Y$ は閉写像である(完全写像の記事の命題(コンパクトな因子に沿う積射影)を座標交換の同相 $K\times Y\cong Y\times K$ と合成する)ので、$B$ の $Y$ への射影 $p_Y(B)$ は閉である。$V:=Y\setminus p_Y(B)$ は開で、$K\times\{y\}\subset O\times N\subset W$ より $y\in V$ であり、$K\times V\subset W$ である。$q(y')=q(y'')$ なら各 $k\in K$ について $(k,y')$ と $(k,y'')$ は $p$ で同じ像を持ち、$W$ は $p$ のファイバーの和だから、一方が $W$ に属することと他方が属することは同値である。よって $V$ は $q$ のファイバーの和である。$q$ が商写像だから $q(V)$ は $Z$ で開であり、$U\times q(V)$ は $(x,z)$ を含む開集合で $p(K\times V)\subset p(W)$ に含まれる。よって $p(W)$ は開であり、$p$ は商写像である。$\square$

補足

局所コンパクト性は、解析学と幾何学のいくつかの理論の前提として現れる。局所コンパクト Hausdorff 空間 $X$ 上では、無限遠で消える連続関数の空間 $C_0(X)$ とその上の線形汎関数を測度で表す理論や、位相群が局所コンパクトな場合の不変測度の理論が展開され、コンパクト開位相を入れた写像空間の指数法則や評価写像の連続性も、定義域の局所コンパクト性を仮定して成り立つ。位相多様体は局所的に $\mathbb{R}^n$ に同相な Hausdorff 空間なので局所コンパクトである。一方、無限次元の関数空間(ex-locally-compact-space-normed)や Zariski 位相のような Hausdorff でない空間には本記事の意味の局所コンパクト性は当てはまらない。

関連項目

参考文献

[1]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §29(局所コンパクト性、Theorem 29.1 一点コンパクト化、Theorem 29.2 同値条件、Corollary 29.3 開・閉部分空間、§29 の例($S^n$ との同相)、Exercise 11 Whitehead の定理)、§33 Theorem 33.1(Urysohn の補題)
[2]
Ryszard Engelking, General Topology, Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, 1989, §3.1(Tychonoff の板)、§3.3(局所コンパクト空間:定義、Tychonoff 性、部分空間、積、Theorem 3.3.17)、§3.5(Alexandroff コンパクト化)
[3]
John L. Kelley, General Topology, Graduate Texts in Mathematics 27, Springer-Verlag, 1975, Chapter 5(コンパクト空間、局所コンパクト空間、一点コンパクト化)

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