三角形の成立条件

同義語:三角形ができる条件triangle inequality condition

概要

三角形の成立条件(triangle inequality condition)とは、正の数 $a,b,c$ を 3 辺の長さとする三角形があるための必要十分条件 $a<b+c$、$b<c+a$、$c<a+b$ のことである。この条件は $\lvert b-c\rvert<a<b+c$ とも、最大のものが残りの 2 つの和より小さいこととも同値で、最大のもの以外は確かめなくてよい。必要性は、辺を延ばして作った三角形で大きい角の向かいの辺が大きいことから示し、十分性は、長さ $a$ の線分の両端を中心とする半径 $c$、$b$ の 2 つの円が交わることを座標で示す。条件を満たす三角形は、合同なものを同じとみればただ 1 つである。等号 $a=b+c$ を許すと 3 点は一直線上に並ぶ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の辺と角の大小, 三角形の合同条件, 2円の位置関係と共通接線, 絶対値と三角不等式

高校での出発点:3 本の棒で三角形を作る

長さ $a$、$b$、$c$ の 3 本の棒がある。これを端でつないで三角形を作れるだろうか。長さ $a$ の棒を置き、その両端 $B$、$C$ から長さ $c$、$b$ の棒を伸ばして、先端が 1 点で出会えばよい。先端の行き先は、$B$ を中心とする半径 $c$ の円と、$C$ を中心とする半径 $b$ の円の上にある。座標で確かめる。

長さ $3,4,5$ と長さ $1,2,4$
  1. $a=5$、$b=4$、$c=3$ とする。$B(0,0)$、$C(5,0)$ とおき、求める点を $A(x,y)$ とする。$AB=3$、$AC=4$ は
    $$ x^2+y^2=9,\qquad (x-5)^2+y^2=16 $$
    である。2 式を引くと $x^2-(x-5)^2=9-16$、つまり $10x-25=-7$ で、$x=\dfrac{18}{10}=\dfrac95$ である。1 つ目の式に入れると $y^2=9-\dfrac{81}{25}=\dfrac{144}{25}$ で、$y=\pm\dfrac{12}5$ である。$A\left(\dfrac95,\dfrac{12}5\right)$ をとれば三角形ができる。
  2. $a=4$、$b=2$、$c=1$ とする。$B(0,0)$、$C(4,0)$、$A(x,y)$ で、$x^2+y^2=1$、$(x-4)^2+y^2=4$ である。引くと $8x-16=-3$ で $x=\dfrac{13}8$、すると $y^2=1-\dfrac{169}{64}=-\dfrac{105}{64}<0$ となり、$y$ はない。2 つの円は交わらず、三角形はできない。
  1. で三角形ができないのは、2 本の棒 $1$ と $2$ をまっすぐにつないでも $3$ にしかならず、$4$ に届かないからである。もう 1 つ、鈍角の三角形になる場合も見ておく。
長さ $2,3,4$

$a=4$、$b=3$、$c=2$ とする。$B(0,0)$、$C(4,0)$、$A(x,y)$ で、$x^2+y^2=4$、$(x-4)^2+y^2=9$ である。引くと $8x-16=-5$ で $x=\dfrac{11}8$、
$$ y^2=4-\frac{121}{64}=\frac{135}{64},\qquad y=\frac{3\sqrt{15}}8 $$
である。$A\left(\dfrac{11}8,\dfrac{3\sqrt{15}}8\right)$ をとれば、$AB=2$、$AC=\sqrt{\left(4-\dfrac{11}8\right)^2+\dfrac{135}{64}}=\sqrt{\dfrac{441+135}{64}}=\sqrt9=3$ で、三角形ができる。この三角形の角 $A$ は約 $104.5^\circ$ の鈍角である。

この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 3 つの正の数がどんなときに三角形の 3 辺になるか。→ thm-tic-main
  2. 確かめる不等式はいくつでよいか。→ lem-tic-forms
  3. 条件を少しゆるめると、何が起こるか。→ ex-tic-cx-equal、ex-tic-cx-notmax
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    2 円の交点を求める三角形の成立条件距離の三角不等式
    $y^2$ の符号$(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)>0$Heron の公式の根号の中
    最大の辺だけ調べる最大 $<$ 残りの和多角形・四面体の成立条件

主定理:3 つの形の条件は同じ

言葉を決める。3 つの正の数 $a,b,c$ について、一直線上にない 3 点 $A$、$B$、$C$ で $BC=a$、$CA=b$、$AB=c$ となるものがあるとき、3 辺の長さが $a,b,c$ の三角形がある という。

三角形の成立条件

正の数 $a,b,c$ について、次の 4 つは同値である。
(R1) 3 辺の長さが $a,b,c$ の三角形がある。
(R2) $a< b+c$、$b< c+a$、$c< a+b$ の 3 つがすべて成り立つ。
(R3) $\lvert b-c\rvert< a< b+c$ が成り立つ。
(R4) $a,b,c$ のうち最大のもの(最大のものが 2 つ以上あればそのうちの 1 つ)を $M$、残りの 2 つを $p$、$q$ とすると、$M< p+q$ が成り立つ。
さらに、条件 (i) の三角形は、合同なものを同じとみれば、ただ 1 つである。

条件 (ii) を 三角形の成立条件 という。条件 (iii) と (iv) は、同じ条件を少ない手間で確かめる形である。証明は、条件 (ii)・(iii)・(iv) の同値(lem-tic-forms)、(i) から (ii)(prop-tic-necessary)、(ii) から (i)(prop-tic-sufficient)の 3 つに分ける。

条件を確かめる
  1. $2,3,4$:最大は $4$ で、$4<2+3=5$ なので三角形がある(ex-tic-234)。
  2. $1,2,4$:最大は $4$ で、$4<1+2=3$ は成り立たないので三角形はない(ex-tic-start (2))。
  3. $5,5,9$:最大は $9$ で、$9<5+5=10$ なので三角形がある。条件 (iii) の形で $a=9$ とすると $\lvert5-5\rvert=0<9<10$ である。

条件の 3 つの形の同値

条件 (ii)・(iii)・(iv) の同値

正の数 $a,b,c$ について、thm-tic-main の条件 (ii)、(iii)、(iv) は同値である。

不等式を 1 つずつ言い換える

段 1((ii) と (iii))。$b< c+a$ は $b-c< a$ と同じである。$c< a+b$ は $c-b< a$、つまり $-(b-c)< a$ と同じである。$b-c$ と $-(b-c)$ の大きい方が $\lvert b-c\rvert$ なので、2 つを合わせると $\lvert b-c\rvert< a$ と同じである(絶対値と三角不等式)。残りの $a< b+c$ はそのままである。よって (ii) と (iii) は同値である。
段 2((ii) から (iv))。(ii) の 3 つの不等式は「どの 1 つも残りの 2 つの和より小さい」と言っている。$M$ もその 1 つなので $M< p+q$ である。
段 3((iv) から (ii))。$M< p+q$ とする。(ii) の 3 つの不等式のうち、$M< p+q$ 以外の 2 つは $p< q+M$ と $q< M+p$ である。$p\le M$ で $q>0$ なので $p\le M< M+q$ である。同じく $q\le M< M+p$ である。よって 3 つとも成り立つ。$\square$

段 3 が、「最大のもの以外は調べなくてよい」理由である。最大のものに加える相手が正の数なので、最大でないものが「残りの和」を超えることはない。

正の数という仮定は条件から出る

条件 (ii) を満たす実数 $a,b,c$ は、自動的に正である。実際、$b< c+a$ と $c< a+b$ を辺々加えると $b+c<2a+b+c$、つまり $0<2a$ で、$a>0$ である。$b$、$c$ も同じである。したがって (ii) は「正の数である」ことまで含んでいる。

必要性:三角形があれば不等式が成り立つ

三角形の 2 辺の和

三角形 $ABC$ で $BC=a$、$CA=b$、$AB=c$ とすると、$a< b+c$、$b< c+a$、$c< a+b$ である。つまり thm-tic-main の (i) から (ii) が出る。

辺を延ばして大きい角を作る

方針:辺 $BA$ を $A$ の先へ $AC$ だけ延ばし、長さ $b+c$ の辺をもつ三角形を作る。その三角形で「大きい角の向かいの辺は大きい」(三角形の辺と角の大小)を使う(Euclid『原論』第 I 巻 命題 20、Hea56 p. 286)。$a< b+c$ を示す。ほかの 2 つは頂点の名前を入れかえれば同じである。
段 1(点 $D$)。半直線 $BA$ を $A$ の先へ延ばし、$AD=AC=b$ となる点 $D$ をとる。$A$ は $B$ と $D$ の間にあるので
$$ BD=BA+AD=c+b $$
である。
段 2(二等辺三角形)。三角形 $ACD$ は $AC=AD$ の二等辺三角形なので、底角は等しい(三角形の合同条件)。
$$ \angle ACD=\angle ADC $$
段 3(角の比較)。$A$ は線分 $BD$ の途中の点なので、半直線 $CA$ は角 $\angle BCD$ の内側を通る。角 $\angle BCD$ は角 $\angle BCA$ と角 $\angle ACD$ に分かれるので、$\angle BCD>\angle ACD$ である。段 2 と $\angle ADC=\angle BDC$($A$ は線分 $BD$ の上)から、三角形 $BCD$ で
$$ \angle BCD>\angle ACD=\angle ADC=\angle BDC $$
である。
段 4(辺の比較)。三角形 $BCD$ で、角 $\angle BCD$ の向かいの辺は $BD$、角 $\angle BDC$ の向かいの辺は $BC$ である。大きい角の向かいの辺は大きい(三角形の辺と角の大小 の主定理)ので、段 3 から $BD>BC$、つまり $b+c>a$ である。$\square$

辺 BA を A の先へ AD = AC だけ延ばす。赤い二等辺三角形 ACD の底角は等しく、∠BCD(青)はそれより大きいので、BD = b + c は BC = a より長い 辺 BA を A の先へ AD = AC だけ延ばす。赤い二等辺三角形 ACD の底角は等しく、∠BCD(青)はそれより大きいので、BD = b + c は BC = a より長い

ex-tic-234 の三角形で点 $D$ を作る

$a=4$、$b=3$、$c=2$、$B(0,0)$、$C(4,0)$、$A\left(\dfrac{11}8,\dfrac{3\sqrt{15}}8\right)$ とする。$D$ は半直線 $BA$ の上で $B$ から $c+b=5$ の点なので、$D=\dfrac52A=\left(\dfrac{55}{16},\dfrac{15\sqrt{15}}{16}\right)$ である。角を測ると
$$ \angle BCD\approx81.2^\circ>\angle ACD=\angle ADC=\angle BDC\approx52.2^\circ $$
で、向かいの辺は $BD=5>BC=4$ である。

十分性:不等式が成り立てば三角形が作れる

ex-tic-start と同じく、座標平面に実際に三角形を置いて示す。

3 辺から三角形を作る

正の数 $a,b,c$ が $a< b+c$、$b< c+a$、$c< a+b$ を満たすとする。$B(0,0)$、$C(a,0)$ とし、
$$ x=\frac{a^2+c^2-b^2}{2a},\qquad y^2=c^2-x^2 $$
とおくと
$$ y^2=\frac{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}{4a^2}>0 $$
である。$y=\sqrt{y^2}$ として $A(x,y)$ をとると、$AB=c$、$AC=b$ で、$A$、$B$、$C$ は一直線上にない。つまり thm-tic-main の (ii) から (i) が出る。

2 つの円の交点を計算する

方針:$A$ は、$B$ を中心とする半径 $c$ の円と、$C$ を中心とする半径 $b$ の円の交点である。交点の $y$ 座標の 2 乗を因数分解し、条件 (ii) から正になることを示す。
段 1($y^2$ の因数分解)。$y^2=c^2-x^2=(c+x)(c-x)$ である。それぞれ通分すると
$$ c+x=\frac{2ac+a^2+c^2-b^2}{2a}=\frac{(a+c)^2-b^2}{2a}=\frac{(a+c+b)(a+c-b)}{2a} $$
$$ c-x=\frac{2ac-a^2-c^2+b^2}{2a}=\frac{b^2-(a-c)^2}{2a}=\frac{(b-a+c)(b+a-c)}{2a} $$
である。掛けると
$$ y^2=\frac{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}{4a^2} $$
となる。
段 2($y^2>0$)。$a+b+c>0$ である。条件 (ii) から $-a+b+c>0$、$a-b+c>0$、$a+b-c>0$ である。4 つの正の数の積を正の数 $4a^2$ で割ったものなので $y^2>0$ である。
段 3(距離の確認)。$AB^2=x^2+y^2=x^2+(c^2-x^2)=c^2$ である。また
$$ AC^2=(x-a)^2+y^2=x^2-2ax+a^2+c^2-x^2=c^2+a^2-2ax=c^2+a^2-(a^2+c^2-b^2)=b^2 $$
である($2ax=a^2+c^2-b^2$ を使った)。長さは正なので $AB=c$、$AC=b$ である。
段 4(一直線上にない)。$B$、$C$ は $x$ 軸の上にあり、$y>0$ なので $A$ は $x$ 軸の上にない。よって $A$、$B$、$C$ は一直線上にない 3 点で、$BC=a$、$CA=b$、$AB=c$ の三角形ができる。$\square$

公式で $A$ を求める
  1. $a=5$、$b=4$、$c=3$ では $x=\dfrac{25+9-16}{10}=\dfrac95$、
    $$ y^2=\frac{12\cdot2\cdot4\cdot6}{4\cdot25}=\frac{576}{100}=\frac{144}{25} $$
    で、ex-tic-start (1) と同じ $A\left(\dfrac95,\dfrac{12}5\right)$ になる。
  2. $a=4$、$b=2$、$c=1$ では、4 つの因数は $7$、$-1$、$3$、$5$ で、$-a+b+c=-1<0$ のために $y^2=-\dfrac{105}{64}<0$ となる。ex-tic-start (2) で交点がなかったのは、この因数が負だからである。

thm-tic-main の証明をまとめる。

3 つの命題を合わせる

(i) から (ii) は prop-tic-necessary、(ii) から (i) は prop-tic-sufficient である。(ii)・(iii)・(iv) の同値は lem-tic-forms である。三角形がただ 1 つであることは、3 辺がそれぞれ等しい 2 つの三角形は合同である(三角形の合同条件)ことによる。$\square$

2 つの円で見る

prf-tic-sufficient の方針のとおり、三角形の頂点 $A$ は、中心間の距離が $a$ で半径が $c$ と $b$ の 2 つの円の交点である。2 つの円が 2 点で交わる条件は、2円の位置関係と共通接線 の定理 thm-tct-position により、中心間の距離 $a$ が「半径の差の絶対値」と「半径の和」の間にあること、つまり
$$ \lvert b-c\rvert< a< b+c $$
である。これは thm-tic-main の条件 (iii) そのものである。Euclid も、3 本の線分から三角形を作るのにこの 2 つの円を使った(『原論』第 I 巻 命題 22、Hea56 p. 292)。
a = 4、b = 3、c = 2 では 2 つの円が 2 点で交わり三角形ができる。a = b + c では外で接し、a > b + c では離れ、a < |b − c| では一方が他方の内部に入って、どちらも三角形ができない a = 4、b = 3、c = 2 では 2 つの円が 2 点で交わり三角形ができる。a = b + c では外で接し、a > b + c では離れ、a < |b − c| では一方が他方の内部に入って、どちらも三角形ができない
図 2 の 4 つの場合を条件 (iii) の言葉で読むと、次のようになる。

2 つの円の 4 つの場合
  1. $a=4$、$b=3$、$c=2$:$\lvert3-2\rvert=1<4<5$ で、2 点で交わる。交点の 1 つが ex-tic-234 の $A$ である。
  2. $a=4$、$b=3$、$c=1$:$a=b+c$ で、外で接する。接点は $(1,0)$ で、3 点は一直線上に並ぶ。
  3. $a=4$、$b=2$、$c=1$:$a>b+c$ で、共有点がない(ex-tic-start (2))。
  4. $a=1$、$b=3$、$c=1$:$a=1<\lvert b-c\rvert=2$ で、半径 $1$ の円が半径 $3$ の円の内部に入り、共有点がない。このとき条件 (ii) のうち $b< c+a$($3<2$)が成り立たない。

3 辺の長さから角を求める 余弦定理(高校数学) で見ても、同じ条件が出る。$\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$ が $-1$ と $1$ の間にあることを変形すると $\lvert b-c\rvert< a< b+c$ になる(同記事の反例「三角形にならない 3 つの長さ」の中の説明)。また、prf-tic-sufficient の $y$ は辺 $BC$ を底辺とする高さなので、面積 $S=\dfrac12ay$ から
$$ 16S^2=4a^2y^2=(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c) $$
となる。これが Heron の公式である(三角形の面積の公式、Heronの公式)。三角形の成立条件は、Heron の公式の根号の中が正であることと同じである。実際、正の数 $a,b,c$ では、$-a+b+c$、$a-b+c$、$a+b-c$ のうちどの 2 つを足しても $2c$、$2b$、$2a$ のどれかになって正なので、2 つが同時に負になることはない。したがって積が正なら 3 つとも正である。
$a$ を $1$ に決めて、$b$ と $c$ を動かすと、三角形ができる $(b,c)$ の範囲が平面の図として見える。

$a=1$ のときの $(b,c)$ の範囲

$a=1$ のとき、条件 (iii) は $\lvert b-c\rvert<1< b+c$ で、次の 3 つの不等式を同時に満たす範囲になる。
$$ b+c>1,\qquad c>b-1,\qquad c< b+1 $$
$bc$ 平面では、直線 $b+c=1$ の右上、2 本の平行線 $c=b-1$ と $c=b+1$ の間の、帯の形の範囲である(境界は含まない)。たとえば $(b,c)=(1.5,1)$ はこの範囲にあり、$(3,1)$ は $b-c=2>1$ なので外、$(0.3,0.4)$ は $b+c=0.7<1$ なので外である。

a = 1 のとき、三角形ができる (b, c) の範囲は、b + c > 1 と |b − c| < 1 で決まる帯の形の範囲になる a = 1 のとき、三角形ができる (b, c) の範囲は、b + c > 1 と |b − c| < 1 で決まる帯の形の範囲になる

例と反例

条件をゆるめたり、確かめ方を誤ったりすると、結論が成り立たなくなる。

外す条件反例成り立たなくなること
不等号に等号を含めない$1,2,3$($3=1+2$)(ex-tic-cx-equal)三角形がある(3 点が一直線上に並ぶ)
最大のものについて確かめる$2,3,10$ で $2<3+10$ だけ確かめる(ex-tic-cx-notmax)三角形がある
平面の三角形の話である6 本の長さ $2,2,2,2,3,3$ の四面体(ex-tic-cx-tetra)各面が条件を満たせば立体ができる
反例:等号を許すとつぶれる

$a=3$、$b=2$、$c=1$ では $a=b+c$ で、条件 (ii) の $a< b+c$ が等号になる。prop-tic-sufficient の式で $x=\dfrac{9+1-4}6=1$、$y^2=1-1=0$ なので、$A$ は $(1,0)$ で、$B(0,0)$、$C(3,0)$ と一直線上に並ぶ。$BA=1$、$AC=2$、$BC=3$ で長さは合っているが、3 点は三角形を作らない(面積 $0$ の「つぶれた三角形」)。
逆に、一直線上にない 3 点では等号は起こらない(prop-tic-necessary は真の不等号 $a< b+c$ を示した)。等号 $a=b+c$ が成り立つのは、$A$ が線分 $BC$ の上にあるときである。

長さ 1、2、3 では、点 A が線分 BC の上にきて、3 点が一直線上に並ぶ 長さ 1、2、3 では、点 A が線分 BC の上にきて、3 点が一直線上に並ぶ

反例:最大でないものだけ確かめる

$2,3,10$ で、$2<3+10$ と $3<10+2$ は成り立つ。しかし最大の $10$ については $10<2+3=5$ が成り立たないので、三角形はない。
$a=10$、$b=3$、$c=2$ として prop-tic-sufficient の式を使うと、$x=\dfrac{100+4-9}{20}=\dfrac{19}4$、$y^2=4-\dfrac{361}{16}=-\dfrac{297}{16}<0$ で、交点はない。半径 $2$ と半径 $3$ の円の中心が $10$ 離れていて、間に $10-2-3=5$ のすき間がある。lem-tic-forms の段 3 が言うとおり、確かめる必要があるのは最大のものだけで、最大でないものが成り立っても何も分からない。

長さ 2、3、10 では、半径 2 と半径 3 の円の中心が 10 離れていて、間に 5 のすき間がある 長さ 2、3、10 では、半径 2 と半径 3 の円の中心が 10 離れていて、間に 5 のすき間がある

反例:どの面も三角形になるのに四面体はできない

空間の 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で、$AB=AC=BD=CD=2$、$AD=BC=3$ となるものを考える。4 つの面の辺はどれも $2,2,3$ で、$3<2+2$ なので、どの面も三角形としては作れる。しかし、この 6 本の長さをもつ 4 点は空間にない。
もしあったとする。辺 $BC$ の中点を $M$ とする。三角形 $ABM$ と $ACM$ は、$AB=AC=2$、$BM=CM$、$AM$ が共通で 3 辺が等しいので合同であり(三角形の合同条件)、$\angle AMB=\angle AMC$ である。2 つの角の和は $180^\circ$ なので、どちらも $90^\circ$ である。三平方の定理から
$$ AM=\sqrt{AB^2-BM^2}=\sqrt{4-\frac94}=\frac{\sqrt7}2 $$
である。三角形 $DBC$ も $DB=DC=2$ なので、同じく $DM=\dfrac{\sqrt7}2$ である。3 点 $A$、$M$、$D$ は 1 つの平面の上にあるので、その平面で prop-tic-necessary(3 点が一直線上にあるときは数直線の上の長さの比較)を使うと
$$ AD\le AM+MD=\sqrt7\approx2.65 $$
となり、$AD=3$ に反する。よってこのような 4 点はない。
四面体(空間の 4 点)では、各面の三角形の成立条件だけでは足りない。十分な条件は行列式で書ける(Heronの公式とCayley–Menger行列式 の反例 ex-hcm-cx-faces が同じ 6 本の長さを扱っている)。

大学数学で見る:距離の三角不等式

prop-tic-necessary の「2 辺の和は残りの 1 辺より長い」は、距離を考えるときに欠かせない性質として、大学では公理に取り出される。

距離空間・ノルム・多角形への広がりを開く

平面の 3 点 $P$、$Q$、$R$ については、一直線上にあるときも込めて $PR\le PQ+QR$ が成り立ち、等号は $Q$ が線分 $PR$ の上にあるときに限る。大学では、集合の 2 点に「距離」$d$ を対応させ、$d(P,R)\le d(P,Q)+d(Q,R)$ を距離の公理の 1 つとして要求する(距離空間、三角不等式)。三角形の成立条件は、この公理の平面での姿である。

ベクトルの言葉では $\|\vec u+\vec v\|\le\|\vec u\|+\|\vec v\|$ で、等号は一方が他方の $0$ 以上の実数倍のときに限る。Axler はこれを「三角形のどの辺も残りの 2 辺の長さの和より短い」という幾何的な意味とともに述べ、2 点を結ぶ折れ線のうち最も短いのは線分 1 本であることを注意している(Axl24 6.17、p. 190)。

4 本以上の長さについては、「最も長いものが残りの長さの和より小さい」ことが、それらを辺とする多角形がある条件になることが知られている(この記事では証明しない)。空間の四面体では、ex-tic-cx-tetra のとおり面ごとの条件では足りない。

さらに先へ

  • 三角形の成立条件を満たす $(a,b,c)$ は、$a=y+z$、$b=z+x$、$c=x+y$($x,y,z$ は正の数)と書き直せる。$x=\dfrac{-a+b+c}2$ などは、prf-tic-sufficient の因数 $-a+b+c$ の半分である。この置き換えは次の記事 Ravi置換 で扱う。
  • 2 辺と間の角、2 辺と 1 つの角など、3 辺以外の指定で三角形がいくつできるかは 三角形の決定と解の個数 で扱う。

関連項目

参考文献

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