Miquelの定理

同義語:ミケルの定理Miquel点Miquel's theorem

概要

Miquelの定理(Miquel's theorem)とは、三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ を含む直線の上に頂点と異なる点 $L$、$M$、$N$ をとると、3 つの円 $AMN$、$BNL$、$CLM$ が 1 点(Miquel 点)を共有するという定理である。点が辺の延長にあっても、角を $180^\circ$ を法として測る有向角で配置によらずに証明できる。完全四辺形の形では、どの 2 本も平行でなくどの 3 本も 1 点で交わらない 4 本の直線から 3 本ずつ選んだ 4 つの三角形の外接円が、頂点でない 1 点 $P$ を共有する。$P$ から 4 本の直線に下ろした垂線の足は一直線上にあり(共通の Simson 線)、4 つの三角形の垂心も一直線上にある(共通の Steiner 線)。$P$ は、完全四辺形の辺の上の点を移し合う回転相似の中心でもある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Simson線, Steiner線, 円に内接する四角形, 円周角の定理(高校数学), 接弦定理

高校での出発点:辺の上の点を通る 3 つの円

三角形 $ABC$ の 3 辺の上に 1 点ずつ点をとる。各頂点と、その頂点を挟む 2 辺の上の点を通る円を描くと、円は 3 つできる。3 つの円はいつも 1 点で交わる。まず特別な点で確かめ、次に一般の点で確かめる。以下、Simson線 と同じ三角形 $A(-3,4)$、$B(-4,-3)$、$C(4,-3)$(外接円 $x^2+y^2=25$、外心 $O(0,0)$、垂心 $H(-3,-2)$)を使う。

辺の中点をとる

辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点 $L(0,-3)$、$M\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$、$N\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$ をとる。外心 $O$ は 3 辺の垂直二等分線の交点なので、$\angle OMA=\angle ONA=90^\circ$ である。直径に対する円周角 により、$M$ と $N$ は $OA$ を直径とする円の上にある。よって円 $AMN$ は $OA$ を直径とする円で、$O$ を通る。同じく円 $BNL$ は $OB$ を、円 $CLM$ は $OC$ を直径とする円で、3 つの円はどれも $O$ を通る。
座標でも確かめる。$OA$ の中点は $\left(-\dfrac32,2\right)$ で、$M$ までの距離の 2 乗は $2^2+\left(\dfrac32\right)^2=\dfrac{25}4$、$N$ までは $2^2+\left(\dfrac32\right)^2=\dfrac{25}4$、$O$ までは $\dfrac94+4=\dfrac{25}4$ で、どれも半径 $\dfrac52$ の 2 乗である。

高さの足をとる

3 つの頂点から向かい合う辺に下ろした垂線の足 $L(-3,-3)$、$M(0,1)$、$N\left(-\dfrac{96}{25},-\dfrac{47}{25}\right)$ をとる。垂心 $H$ は 3 本の垂線の上にあるので $\angle HMA=\angle HNA=90^\circ$ で、円 $AMN$ は $AH$ を直径とする円である。同じく円 $BNL$、円 $CLM$ は $BH$、$CH$ を直径とする円で、3 つの円はどれも $H$ を通る。

辺の中点をとると、3 つの円は外心 O で交わる 辺の中点をとると、3 つの円は外心 O で交わる
高さの足をとると、3 つの円は垂心 H で交わる 高さの足をとると、3 つの円は垂心 H で交わる
一般の点をとる

$L(0,-3)$(辺 $BC$ の中点)、$M\left(-\dfrac32,\dfrac52\right)$(辺 $CA$ の上。$x+y=1$ を満たす)、$N\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$(辺 $AB$ の中点)をとる。3 点を通る円を、中心 $(p,q)$ から 3 点までの距離が等しいという連立方程式で求めると、次のようになる。

  • 円 $AMN$:中心 $\left(-\dfrac{13}4,\dfrac94\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{25}8$
  • 円 $BNL$:中心 $\left(-2,-\dfrac32\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{25}4$
  • 円 $CLM$:中心 $\left(2,\dfrac12\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{65}4$
    点 $P(-2,1)$ から 3 つの中心までの距離の 2 乗は
    $$ \left(\frac54\right)^2+\left(-\frac54\right)^2=\frac{25}8,\qquad 0^2+\left(\frac52\right)^2=\frac{25}4,\qquad (-4)^2+\left(\frac12\right)^2=\frac{65}4 $$
    で、それぞれの半径の 2 乗に等しい。3 つの円は $P$ を通る。
    円 $BNL$ の中心を求める計算を開く

    中心を $(p,q)$ とする。$B(-4,-3)$ と $L(0,-3)$ から等距離なので $p=-2$ である。$B$ と $N\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$ から等距離なので $(p+4)^2+(q+3)^2=\left(p+\dfrac72\right)^2+\left(q-\dfrac12\right)^2$ で、展開して整理すると $p+7q=-\dfrac{25}2$ である。$p=-2$ を代入して $q=-\dfrac32$ である。半径の 2 乗は $(-2+4)^2+\left(-\dfrac32+3\right)^2=4+\dfrac94=\dfrac{25}4$ である。

辺 BC、CA、AB の上の点 L、M、N について、円 AMN(赤)、円 BNL(緑)、円 CLM(紫)は 1 点 P で交わる 辺 BC、CA、AB の上の点 L、M、N について、円 AMN(赤)、円 BNL(緑)、円 CLM(紫)は 1 点 P で交わる
この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 辺の上の点をどうとっても、3 つの円は 1 点で交わるか。点が辺の延長にあってもよいか。→ thm-mql-triangle
  2. 4 本の直線から 3 本ずつ選んで 4 つの三角形を作ると、4 つの外接円は 1 点で交わるか。→ thm-mql-quad
  3. その点の Simson線・Steiner線 は 4 つの三角形でどうなるか。→ cor-mql-lines
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    3 点を通る円の中心を連立方程式で求める3 つの円の共有点Miquel 点
    対角の和が $180^\circ$ の四角形は円に内接する有向角の和で角を送る位置によらない証明
    4 本の直線と 4 つの三角形完全四辺形の Miquel 点回転相似の中心

言葉の準備:有向角と接線

角は Simson線 と同じく 有向角 $\measuredangle(\ell,m)$(直線 $\ell$ から $m$ へ、反時計回りに $180^\circ$ を法として測った角)で表す。$\measuredangle XYZ$ は直線 $YX$ から直線 $YZ$ への有向角である。Simson線 で示した次の 2 つを使う。

  • 有向角の性質:(i) $\measuredangle(\ell,m)+\measuredangle(m,n)=\measuredangle(\ell,n)$、(ii) $\measuredangle(m,\ell)=-\measuredangle(\ell,m)$、(iii) 同じ点を通る 2 本の直線 $m$、$m'$ について $\measuredangle(\ell,m)=\measuredangle(\ell,m')$ なら $m=m'$、(iv) $\ell\perp m$ と $\measuredangle(\ell,m)=90^\circ$ は同じ。
  • 有向角による共円の判定:異なる 2 点 $W$、$X$ と、直線 $WX$ の上にない 2 点 $Y$、$Z$ について、4 点が同一円周上にあることと $\measuredangle WYX=\measuredangle WZX$ は同値である。
    2 つの円が接する場合のために、接線の形も用意する。
接線と弦の有向角

円 $\omega$ の上の異なる 3 点 $N$、$X$、$Y$ と、$N$ における $\omega$ の接線 $t$ について
$$ \measuredangle(t,NX)=\measuredangle NYX $$
である。

これは 円周角の定理(高校数学) の補題「接線と弦の有向角」そのもので、普通の角で書くと 接弦定理 である。

接線と弦の有向角を確かめる

円 $x^2+y^2=25$ の点 $N=B(-4,-3)$ における接線 $t$ は、半径の向き $(-4,-3)$ に垂直で、向きは $(3,-4)$ である。$X=C(4,-3)$、$Y=A(-3,4)$ とすると、直線 $BC$ は $x$ 軸に平行なので $\measuredangle(t,BC)=0^\circ-\theta_t$ で、$\tan\theta_t=-\dfrac43$ から $\theta_t\approx-53.13^\circ$、つまり $\measuredangle(t,BC)\approx53.13^\circ$ である。一方 $\measuredangle BAC=\theta_{AC}-\theta_{AB}$ で、直線 $AC$ の傾きは $-1$($\theta_{AC}=-45^\circ$)、直線 $AB$ の傾きは $7$($\theta_{AB}\approx81.87^\circ$)なので、$-45^\circ-81.87^\circ=-126.87^\circ\equiv53.13^\circ$ である。2 つは等しい。

主定理 1:三角形の形

Miquel の定理(三角形の形)

三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ を含む直線の上に、頂点と異なる点 $L$、$M$、$N$ をとる。このとき、3 つの円 $AMN$、$BNL$、$CLM$ は 1 点を共有する。

3 つの円はどれも決まる。たとえば $M$ は直線 $CA$ の上、$N$ は直線 $AB$ の上の $A$ と異なる点で、直線 $CA$ と $AB$ は異なるので、$A$、$M$、$N$ は一直線上にない。

2 つの円の共有点が 3 つ目の円に乗ることを示す

方針:円 $AMN$ と円 $BNL$ の共有点 $P$ をとり、$P$ から $M$、$N$、$L$ を見る有向角を、頂点 $A$、$B$ での角に送る。足すと頂点 $C$ での角になり、有向角による共円の判定で $P$ が円 $CLM$ の上にあることが分かる。円 $AMN$、$BNL$、$CLM$ を $\omega_A$、$\omega_B$、$\omega_C$ と書く。
段 1(共有点 $P$ をとる)。$\omega_A$ と $\omega_B$ はどちらも $N$ を通る。2 つは異なる円である(同じ円なら、その円が直線 $AB$ の上の異なる 3 点 $A$、$B$、$N$ を通ることになるが、直線と円の共有点は 2 個まで)。異なる 2 つの円が $N$ 以外の点で交わるときは、その点を $P$ とする。$N$ だけを共有する($N$ で接する)ときは $P=N$ とする。
段 2($P=L$ または $P=M$)。$L$ と $M$ は $\omega_C$ の上にあるので、$P$ は $\omega_C$ の上にある。
段 3($P$ が $L$、$M$、$N$ のどれとも異なる場合)。$P$、$A$、$M$、$N$ は $\omega_A$ の上にあり、$P\ne M$、$P\ne N$ である。$A$ は直線 $MN$ の上になく、$P$ も直線 $MN$ の上にない(円の上の異なる 3 点は一直線上にない。$P=A$ なら次の式は両辺が同じ角になる)。有向角による共円の判定から
$$ \measuredangle MPN=\measuredangle MAN=\measuredangle(CA,AB) $$
である(直線 $AM$ は直線 $CA$、直線 $AN$ は直線 $AB$)。同じく $\omega_B$ で
$$ \measuredangle NPL=\measuredangle NBL=\measuredangle(AB,BC) $$
である。性質 (i) により
$$ \measuredangle MPL=\measuredangle MPN+\measuredangle NPL=\measuredangle(CA,AB)+\measuredangle(AB,BC)=\measuredangle(CA,BC)=\measuredangle MCL $$
である。$M\ne L$ で($M=L$ ならその点は直線 $CA$ と $BC$ の共有点 $C$ になる)、$C$ は直線 $ML$ の上にない(直線 $CM$ は $CA$、直線 $CL$ は $BC$ で、異なる)。$P$ も直線 $ML$ の上にない。もし上にあれば $\measuredangle MPL=0^\circ$ となり、$\measuredangle MCL=0^\circ$ から $C$ が直線 $ML$ の上にあることになるからである。有向角による共円の判定により、$P$、$C$、$M$、$L$ は同一円周上にあり、$P$ は $\omega_C$ の上にある。
段 4($P=N$、つまり $\omega_A$ と $\omega_B$ が $N$ で接する場合)。$N$ における共通の接線を $t$ とする。lem-mql-tangent により、$\omega_A$ で $\measuredangle(t,NM)=\measuredangle NAM$、$\omega_B$ で $\measuredangle(t,NL)=\measuredangle NBL$ である。性質 (i)・(ii) により
$$ \measuredangle MNL=\measuredangle(NM,t)+\measuredangle(t,NL)=-\measuredangle NAM+\measuredangle NBL=\measuredangle(AM,AN)+\measuredangle(BN,BL)=\measuredangle(CA,AB)+\measuredangle(AB,BC)=\measuredangle MCL $$
である。段 3 と同じ理由で $N$、$C$ は直線 $ML$ の上になく、$N$ は $\omega_C$ の上にある。
以上で、どの場合も $P$ は 3 つの円の共有点である。$\square$

この点 $P$ を、点 $L$、$M$、$N$ に対する Miquel 点 という。3 つの円を Miquel 円という。
ex-mql-start で段 3 の角を確かめる。$P(-2,1)$ から見て $\angle MPN\approx126.87^\circ$、$\angle NPL\approx98.13^\circ$、$\angle MPL=135^\circ$ で、三角形の角 $A\approx53.13^\circ$、$B\approx81.87^\circ$、$C=45^\circ$ と比べると、どれも $180^\circ$ から頂点の角を引いたものである(普通の角では、$P$ が三角形の内部にあると「和が $180^\circ$」の形になる)。有向角では、どの配置でも段 3 の等式の形になる。普通の角のままだと配置で式が変わる例を ex-mql-cx-angle で見る。

円に内接する四角形の問題との関係

円に内接する四角形 の数学オリンピックの問題の解説の最後で述べた「3 つの円 $AMN$、$BML$、$CLN$ はいつも 1 点で交わる」が thm-mql-triangle である(その記事では $M$ が辺 $AB$、$N$ が辺 $AC$ の上にある)。

主定理 2:完全四辺形の形

完全四辺形

平面の 4 本の直線で、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないものを 完全四辺形 という。4 本から 3 本を選ぶ方法は 4 通りあり、選んだ 3 本は三角形を作る。この 4 つの三角形を、完全四辺形の三角形という。4 本の直線の交点(頂点)は 6 個ある。

Miquel の定理(完全四辺形の形)

完全四辺形の 4 つの三角形の外接円は、1 点を共有する。この点を完全四辺形の Miquel 点 という。Miquel 点は 6 個の頂点のどれとも異なる。

主定理 1 を 2 回使う

方針:3 本で三角形 $ABC$ を作り、4 本目がその 3 辺と交わる点を $L$、$M$、$N$ とする。thm-mql-triangle を三角形 $ABC$ と三角形 $AMN$ の 2 つに使い、得られる 2 つの点が同じ点であることを示す。
段 1(名前を付ける)。4 本の直線を $\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$、$\ell_4$ とし、$\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$ の作る三角形を $ABC$($\ell_1=BC$、$\ell_2=CA$、$\ell_3=AB$)とする。$\ell_4$ と $BC$、$CA$、$AB$ の交点を $L$、$M$、$N$ とする。どの 3 本も 1 点で交わらないので、$L$、$M$、$N$ は頂点と異なり、互いに異なる。4 つの三角形は $ABC$、$AMN$($\ell_2,\ell_3,\ell_4$)、$BNL$($\ell_1,\ell_3,\ell_4$)、$CLM$($\ell_1,\ell_2,\ell_4$)である。
段 2(三角形 $ABC$ に使う)。thm-mql-triangle により、円 $AMN$、$BNL$、$CLM$ は 1 点 $P$ を共有する。
段 3(三角形 $AMN$ に使う)。三角形 $AMN$ の辺 $MN$、$NA$、$AM$ を含む直線の上に、それぞれ $L$、$B$、$C$ がある(頂点と異なる)。thm-mql-triangle により、円 $ABC$(頂点 $A$ と、$A$ を挟む 2 辺の上の $B$、$C$)、円 $MCL$、円 $NLB$ は 1 点 $Q$ を共有する。
段 4($P=Q$)。$P$ と $Q$ はどちらも円 $BNL$ と円 $CLM$ の上にある。この 2 つの円は異なり(同じなら直線 $BC$ の上の 3 点 $B$、$C$、$L$ を通る)、$L$ を共有する。異なる 2 つの円の共有点は 2 個までなので、共有点は $L$ ともう 1 点以下である。$P\ne L$ である($P=L$ なら $L$ が円 $AMN$ の上にあり、円が直線 $\ell_4$ の上の 3 点 $L$、$M$、$N$ を通ることになる)。$Q\ne L$ である($Q=L$ なら $L$ が円 $ABC$ の上にあり、円が直線 $BC$ の上の 3 点 $B$、$C$、$L$ を通ることになる)。よって $P=Q$ で、$P$ は 4 つの円すべての上にある。
段 5(頂点と異なる)。$P$ が頂点 $V=\ell_i\cap\ell_j$ に一致するとする。残りの 2 本を $\ell_k$、$\ell_m$ とすると、$\ell_i$、$\ell_k$、$\ell_m$ の作る三角形の外接円は $P=V$ を通る。$V$ はこの三角形の辺 $\ell_i$ の上にあり、どの 3 本も 1 点で交わらないので、この三角形の頂点($\ell_i\cap\ell_k$、$\ell_i\cap\ell_m$、$\ell_k\cap\ell_m$)ではない。すると外接円が直線 $\ell_i$ の上の 3 点(2 つの頂点と $V$)を通ることになり、矛盾する。$\square$

完全四辺形の 4 つの円

三角形 $ABC$ の 3 本の直線 $BC:\ y=-3$、$CA:\ x+y=1$、$AB:\ 7x-y+25=0$ に、4 本目 $\ell_4:\ 3x+5y+8=0$ を加える。$\ell_4$ との交点は
$$ L\left(\frac73,-3\right),\qquad M\left(\frac{13}2,-\frac{11}2\right),\qquad N\left(-\frac72,\frac12\right) $$
である(たとえば $L$ は $y=-3$ を代入して $3x-15+8=0$、$x=\dfrac73$)。4 つの外接円は次のとおりである。

三角形中心半径の 2 乗$P(0,-5)$ までの距離の 2 乗
$ABC$$(0,0)$$25$$25$
$AMN$$\left(\dfrac{15}4,\dfrac54\right)$$\dfrac{425}8$$\dfrac{225}{16}+\dfrac{625}{16}=\dfrac{425}8$
$BNL$$\left(-\dfrac56,-\dfrac53\right)$$\dfrac{425}{36}$$\dfrac{25}{36}+\dfrac{400}{36}=\dfrac{425}{36}$
$CLM$$\left(\dfrac{19}6,-\dfrac{19}3\right)$$\dfrac{425}{36}$$\dfrac{361}{36}+\dfrac{64}{36}=\dfrac{425}{36}$

4 つの円はどれも $P(0,-5)$ を通る。$P$ は Simson線 と Steiner線 で使った点である。

4 本の直線 BC、CA、AB、LMN から 3 本ずつ選んだ 4 つの三角形の外接円(灰・赤・緑・紫)は、Miquel 点 P で交わる 4 本の直線 BC、CA、AB、LMN から 3 本ずつ選んだ 4 つの三角形の外接円(灰・赤・緑・紫)は、Miquel 点 P で交わる

主定理 1(三角形の形)主定理 2(完全四辺形の形)
与えるもの三角形と、3 辺を含む直線の上の 3 点一般の位置にある 4 本の直線
円頂点と隣の 2 点を通る 3 つの円4 つの三角形の外接円
共有点Miquel 点(点のとり方で動く)Miquel 点(4 本で決まる、頂点でない)
証明に使うもの有向角による共円の判定、接線の有向角主定理 1 を 2 回、2 円の共有点は 2 個まで
特別な場合中点なら外心、高さの足なら垂心3 点 $L$、$M$、$N$ が一直線上の場合

Miquel 点の Simson 線と Steiner 線

完全四辺形の Miquel 点は 4 つの三角形の外接円の上にあるので、Simson線 と Steiner線 の定理を 4 つの三角形それぞれに使える。4 本の直線は共通なので、直線も共通になる。

共通の Simson 線と Steiner 線

完全四辺形の Miquel 点を $P$ とする。

  1. $P$ から 4 本の直線に下ろした垂線の足は、一直線上にある。この直線は 4 つの三角形に共通の Simson 線である。
  2. $P$ を 4 本の直線で折り返した点は一直線上にあり、その直線は 4 つの三角形の垂心をすべて通る。とくに、完全四辺形の 4 つの三角形の垂心は一直線上にある。
2 つの三角形で共通の 2 つの足

段 1(1)。4 本の直線を $\ell_1,\dots,\ell_4$、$P$ から $\ell_i$ に下ろした垂線の足を $F_i$ とする。thm-mql-quad により、$P$ は 4 つの三角形の外接円の上にあり、どの三角形の頂点でもない。$\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_3$ の三角形に Simson線 の定理を使うと、$F_1$、$F_2$、$F_3$ は一直線上にある。$\ell_1$、$\ell_2$、$\ell_4$ の三角形に使うと、$F_1$、$F_2$、$F_4$ は一直線上にある。頂点でない点の足は互いに異なるので(Simson線 の「角の移しかえ」の節の最初の段落)、$F_1\ne F_2$ である。2 本の直線はどちらも異なる 2 点 $F_1$、$F_2$ を通るので同じ直線で、4 つの足はその上にある。残りの 2 つの三角形の Simson 線も、2 つの足を共有するので同じ直線である。
段 2(2)。$P$ を $\ell_i$ で折り返した点は $\varphi_{P,2}(F_i)$($P$ を中心とする比 $2$ の相似拡大による $F_i$ の像)なので、段 1 の直線の像の上に 4 点が並ぶ。この像は、4 つの三角形それぞれの Steiner 線であり、Steiner線 の定理によりその三角形の垂心を通る。$\square$

共通の直線を確かめる

ex-mql-quad の完全四辺形で、$P(0,-5)$ から $BC$、$CA$、$AB$ への足は $(0,-3)$、$(3,-2)$、$\left(-\dfrac{21}5,-\dfrac{22}5\right)$ だった(Simson線)。$\ell_4:\ 3x+5y+8=0$ への足は、$(3t,-5+5t)$ を代入して $9t-25+25t+8=0$、$t=\dfrac12$ で $\left(\dfrac32,-\dfrac52\right)$ である。$\dfrac13\cdot\dfrac32-3=-\dfrac52$ なので、4 つ目の足も Simson 線 $y=\dfrac13x-3$ の上にある。
4 つの三角形の垂心は
$$ ABC:\ (-3,-2),\qquad AMN:\ \left(-\frac{15}2,-\frac72\right),\qquad BNL:\ \left(-\frac72,-\frac{13}6\right),\qquad CLM:\ \left(\frac{13}2,\frac76\right) $$
で、どれも Steiner 線 $y=\dfrac13x-1$ の上にある(たとえば $\dfrac13\cdot\dfrac{13}2-1=\dfrac76$)。

三角形 $BNL$ の垂心の計算を開く

$B(-4,-3)$、$N\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$、$L\left(\dfrac73,-3\right)$ である。辺 $BL$ は $x$ 軸に平行なので、$N$ からの垂線は $x=-\dfrac72$ である。$\overrightarrow{NL}=\left(\dfrac{35}6,-\dfrac72\right)$ は $(5,-3)$ の向きなので、$B$ からの垂線は $5(x+4)-3(y+3)=0$ である。$x=-\dfrac72$ を代入すると $\dfrac52-3y-9=0$、$y=-\dfrac{13}6$ である。

Miquel 点 P から 4 本の直線に下ろした足は赤い直線(共通の Simson 線)の上に並び、4 つの三角形 ABC、AMN、BNL、CLM の垂心 H1〜H4 は青い直線(共通の Steiner 線)の上に並ぶ Miquel 点 P から 4 本の直線に下ろした足は赤い直線(共通の Simson 線)の上に並び、4 つの三角形 ABC、AMN、BNL、CLM の垂心 H1〜H4 は青い直線(共通の Steiner 線)の上に並ぶ
逆に、Simson線 の定理の逆向きを使うと、Miquel 点は次のように見つかる。三角形 $ABC$ の外接円の上の点 $P$ の Simson 線の上に点 $F_4$ をとり、$F_4$ を通って $PF_4$ に垂直な直線を $\ell_4$ とする($P$ は Simson 線の上にないので $F_4\ne P$)。$\ell_4$ が $CA$、$AB$ と平行でなく $A$ を通らなければ、$P$ から $CA$、$AB$、$\ell_4$ への足は Simson 線の上に並ぶので、$P$ は $CA$、$AB$、$\ell_4$ の作る三角形の外接円の上にある。ex-mql-quad の $\ell_4$ は、$P(0,-5)$ と Simson 線の上の点 $\left(\dfrac32,-\dfrac52\right)$ からこうして作った。

例と反例

thm-mql-triangle と thm-mql-quad の条件を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$L$、$M$、$N$ は頂点と異なる$N=A$円 $AMN$ が 1 つに決まり、3 つの円が 1 点を共有する
角を有向角で測る$L$ が辺 $BC$ の延長の上普通の角で「$\angle MPN=180^\circ-A$ などが成り立ち、3 つの角の和が $360^\circ$」
どの 2 本も平行でない4 本目を $y=1$($BC$ と平行)にとる4 つの三角形の外接円が頂点でない 1 点を共有する
反例:点が頂点に重なる

ex-mql-start の $L(0,-3)$、$M\left(-\dfrac32,\dfrac52\right)$ と、$N=A$ をとる。「円 $AMN$」は $A$ と $M$ の 2 点だけを通る円で、そのような円は無数にある。円 $BNL$($=$ 円 $BAL$)と円 $CLM$ の共有点は $L$ ともう 1 点だけなので、$A$ と $M$ を通る円をどれか選ぶと、ふつうはどちらの共有点も通らない。たとえば $AM$ を直径とする円は、中心 $\left(-\dfrac94,\dfrac{13}4\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac98$ で、$L$ までの距離の 2 乗は $\dfrac{81}{16}+\dfrac{625}{16}=\dfrac{353}8$ となり、$L$ を通らない。円 $BAL$ と円 $CLM$ のもう 1 つの共有点は $\left(-\dfrac{228}{629},\dfrac{2369}{629}\right)$ で、この円の中心までの距離の 2 乗は $\dfrac98+\dfrac{1701}{629}$ となり、半径の 2 乗 $\dfrac98$ と異なるので、この点も通らない。

反例:普通の角では和が差に変わる

$L\left(\dfrac92,-3\right)$(辺 $BC$ を $C$ の先へ延ばした部分)、$M\left(\dfrac52,-\dfrac32\right)$(辺 $CA$ の上)、$N\left(-\dfrac72,\dfrac12\right)$(辺 $AB$ の中点)をとる。3 つの円の共有点は $P\left(4,\dfrac12\right)$ で、三角形の外にある。たとえば円 $CLM$ は中心 $\left(\dfrac{17}4,-\dfrac54\right)$、半径の 2 乗 $\dfrac{25}8$ で、$P$ までの距離の 2 乗は $\left(-\dfrac14\right)^2+\left(\dfrac74\right)^2=\dfrac{50}{16}=\dfrac{25}8$ である。
$P$ から見た普通の角は $\angle MPN\approx53.13^\circ$、$\angle NPL\approx98.13^\circ$、$\angle MPL=45^\circ$ で、$\angle MPL=\angle NPL-\angle MPN$ と差になっている。ex-mql-start のように $P$ が内部にあるときの「$\angle MPN+\angle NPL+\angle LPM=360^\circ$、各角は $180^\circ$ から頂点の角を引いたもの」は、ここでは成り立たない($\angle MPN$ は $180^\circ-A$ ではなく $A$ に等しく、$\angle MPL$ は $C$ に等しい)。普通の角で証明を書くと、配置ごとに式を変える必要がある。有向角の等式 $\measuredangle MPL=\measuredangle MPN+\measuredangle NPL$ はどの配置でも成り立ち、prf-mql-triangle の段 3 はそのまま通る。

L が辺 BC の延長にあると、共有点 P は三角形の外に出て、P から見た角の関係が和から差に変わる L が辺 BC の延長にあると、共有点 P は三角形の外に出て、P から見た角の関係が和から差に変わる

反例:平行な 2 本

三角形 $ABC$ の 3 本の直線に、$BC$($y=-3$)と平行な直線 $y=1$ を加える。$y=1$ と $CA$、$AB$ の交点は $M(0,1)$、$N\left(-\dfrac{24}7,1\right)$ である。$BC$ と $y=1$ の両方を含む三角形はないので、三角形は $ABC$ と $AMN$ の 2 つだけである。$\overrightarrow{AM}=(3,-3)=\dfrac37\overrightarrow{AC}$ なので、三角形 $AMN$ は三角形 $ABC$ を $A$ を中心に $\dfrac37$ 倍に縮めたものである。外接円も同じ相似拡大で移り、円 $AMN$ は中心 $\left(-\dfrac{12}7,\dfrac{16}7\right)$、半径 $\dfrac{15}7$ である。中心間の距離は $\dfrac{20}7=5-\dfrac{15}7$ で半径の差に等しいので、2 つの円は $A$ で内側から接し、共有点は頂点 $A$ だけである。「頂点でない 1 点を共有する」は成り立たない。

4 本目の直線 y=1 が BC と平行だと三角形は 2 つだけになり、2 つの外接円は頂点 A で接する 4 本目の直線 y=1 が BC と平行だと三角形は 2 つだけになり、2 つの外接円は頂点 A で接する

大学数学で見る:回転相似の中心

Miquel 点は回転相似の中心

ex-mql-quad の Miquel 点 $P(0,-5)$ を複素数 $p=-5i$ で表す。$A$、$B$、$M$、$L$ を複素数 $a$、$b$、$m$、$l$ で表すと
$$ \frac{b-p}{a-p}=\frac{-4+2i}{-3+9i}=\frac{1+i}3,\qquad \frac{l-p}{m-p}=\frac{\frac73+2i}{\frac{13}2-\frac12i}=\frac{1+i}3 $$
で、2 つの比が等しい。したがって $f(z)=p+\dfrac{1+i}3(z-p)$ は $A$ を $B$ に、$M$ を $L$ に移す。$f$ は $P$ を中心に $45^\circ$ 回して $\dfrac{\sqrt2}3$ 倍する 回転相似 である(相似変換と相似の中心)。

2 つの比の計算を開く

$a-p=-3+9i$、$b-p=-4+2i$ で、$\dfrac{-4+2i}{-3+9i}=\dfrac{(-4+2i)(-3-9i)}{9+81}=\dfrac{12+36i-6i+18}{90}=\dfrac{30+30i}{90}=\dfrac{1+i}3$ である。$m-p=\dfrac{13}2-\dfrac12i$、$l-p=\dfrac73+2i$ で、$\dfrac{\left(\frac73+2i\right)\left(\frac{13}2+\frac12i\right)}{\frac{169+1}4}=\dfrac{\frac{91}6-1+\left(\frac76+13\right)i}{\frac{85}2}=\dfrac{\frac{85}6(1+i)}{\frac{85}2}=\dfrac{1+i}3$ である。

Miquel 点は回転相似の中心

thm-mql-quad の記号で、Miquel 点 $P$ を中心とする回転相似で、$A$ を $B$ に、$M$ を $L$ に移すものがある。

2 組の有向角が等しい三角形

要点:円 $AMN$ と円 $BNL$ の円周角と、$N$ を通る 2 本の直線($AB$ と $\ell_4$)を使うと、三角形 $PAM$ と三角形 $PBL$ の 2 組の角が有向角として等しくなる。向きまで含めて相似な 2 つの三角形は、共通の頂点 $P$ を中心とする回転相似で移り合う。

詳しい証明を開く

段 1(角)。円 $AMN$ の上で $\measuredangle PAM=\measuredangle PNM$、直線 $NM$ と $NL$ は同じ直線 $\ell_4$ なので $\measuredangle PNM=\measuredangle PNL$、円 $BNL$ の上で $\measuredangle PNL=\measuredangle PBL$ である。よって $\measuredangle PAM=\measuredangle PBL$ である。同じく、円 $AMN$ で $\measuredangle PMA=\measuredangle PNA$、直線 $NA$ と $NB$ は同じ直線 $AB$ なので $\measuredangle PNA=\measuredangle PNB$、円 $BNL$ で $\measuredangle PNB=\measuredangle PLB$ で、$\measuredangle PMA=\measuredangle PLB$ である($P$ は頂点でないので、使う点はすべて異なり、共円の判定の条件を満たす)。

段 2(回転相似)。$P$ を中心とし、半直線 $PA$ を半直線 $PB$ に重ねる角だけ回して $\dfrac{PB}{PA}$ 倍する回転相似を $g$ とする。$g(A)=B$ である。$g$ は有向角を保つので、$g(M)$ は、$B$ を通り直線 $BP$ と有向角 $\measuredangle PAM$ をなす直線と、$P$ を通り直線 $PB$ と有向角 $\measuredangle APM$ をなす直線の交点である。段 1 より前者は直線 $BL$ である。三角形 $PAM$ で性質 (i) から $\measuredangle(PA,PM)+\measuredangle(PM,MA)+\measuredangle(MA,AP)=\measuredangle(PA,AP)=0^\circ$ なので $\measuredangle APM=\measuredangle PAM+\measuredangle AMP$ で、三角形 $PBL$ でも同じく $\measuredangle BPL=\measuredangle PBL+\measuredangle BLP$ である。段 1 から $\measuredangle APM=\measuredangle BPL$ となり、後者は直線 $PL$ である。2 本の交点は $L$ なので、$g(M)=L$ である。$\square$

相似変換と相似の中心 では、線分 $AB$ を線分 $CD$ に移す回転相似の中心が、直線 $AC$ と $BD$ の交点 $X$ を通る 2 つの円 $ABX$、$CDX$ のもう 1 つの交点になることを、証明せずに紹介している。prop-mql-spiral はその主張の一つの場合(線分 $AM$ を線分 $BL$ に移し、$X=N$)にあたる。

さらに広がる見方

円の中心と Clifford の列

完全四辺形の 4 つの外接円の中心は、1 つの円の上にある(Wei26。この記事では証明しない)。ex-mql-quad では中心 $(0,0)$、$\left(\dfrac{15}4,\dfrac54\right)$、$\left(-\dfrac56,-\dfrac53\right)$、$\left(\dfrac{19}6,-\dfrac{19}3\right)$ が同じ円の上にあることを、3 点を通る円に 4 点目を代入して確かめられる。

5 本以上の直線と Möbius 幾何の話を開く

直線を 5 本にすると、4 本ずつ選んで 5 つの Miquel 点ができ、それらは 1 つの円の上にある。本数を増やすと点と円が交互に現れる列が続き、Clifford の円定理の列と呼ばれる(紹介にとどめる)。円と直線を同じ仲間として扱い、反転で移り合うものとして調べるのが Möbius 幾何で、Miquel の定理はその基本的な定理の一つである(円に関する反転)。

さらに先へ

  • 3 つの円の共有点は、2 つずつの円の根軸の交点(根心)としても現れる。根軸と共有点の関係は 根軸と根心 で扱う。
  • 完全四辺形のもう 1 つの有名な共線は、3 本の対角線の中点が並ぶ Newton–Gauss線 である。
  • 4 点が同一円周上にあることを複比が実数になることで表すと、Miquel の定理は複素数の計算でも示せる(円周上の4点の複比)。

関連項目

参考文献

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