2直線のなす角

同義語:angle between two lines

概要

2直線のなす角(angle between two lines)とは、交わる 2 直線がつくる 4 つの角のうち $90^\circ$ 以下のもの(平行または一致なら $0^\circ$)である。傾き $m_1$、$m_2$ の 2 直線は $1+m_1m_2=0$ のとき垂直で、$1+m_1m_2\ne0$ のとき $\tan\theta=\left|\frac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right|$ となる。この式の分母は方向ベクトル $(1,m_1)$、$(1,m_2)$ の内積、分子はその 2 つを並べた行列式にあたる。$y$ 軸に平行な直線を含む場合は、2 直線 $a_ix+b_iy+c_i=0$ の法線ベクトル $(a_i,b_i)$ の内積から $\cos\theta$ を求める。公式の角は $90^\circ$ 以下なので、三角形の鈍角の内角とは一致しない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトルの内積(高校数学), 三角比と鈍角への拡張, 三角関数の公式の導き方と確かめ方

高校での出発点:傾きから角を求める

数学 II では、傾き $m_1$ の直線と傾き $m_2$ の直線のなす角 $\theta$ を、次の公式で求めると習う。
$$ \tan\theta=\left|\frac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right| $$
ここで $\theta$ は $0^\circ$ 以上 $90^\circ$ 以下の角である。分母が $0$ になる $1+m_1m_2=0$ は、2 直線が垂直になる場合である。

公式で角を求める
  1. $y=2x$ と $y=3x$。$m_1=3$、$m_2=2$ とすると
    $$ \tan\theta=\left|\frac{3-2}{1+3\cdot2}\right|=\frac17 $$
    である。$\theta$ は約 $8.13^\circ$ で、2 本はかなり近い向きの直線である。
  2. $y=3x$ と $y=\dfrac12x$。$m_1=3$、$m_2=\dfrac12$ とすると
    $$ \tan\theta=\left|\frac{3-\frac12}{1+3\cdot\frac12}\right|=\left|\frac{\frac52}{\frac52}\right|=1 $$
    なので、$\theta=45^\circ$ である(図 1)。$m_1$ と $m_2$ を入れかえると分子の符号が変わるが、絶対値をとるので答えは同じである。
公式が使えない 2 つの場合
  1. $y=2x$ と $y=-\dfrac12x$。$1+m_1m_2=1+2\cdot\left(-\dfrac12\right)=0$ で、分母が $0$ になり公式は使えない。この 2 本は垂直である(直線の方程式と点と直線の距離 の垂直条件 $m_1m_2=-1$)。
  2. $x=1$ と $y=2x$。$x=1$ は $y$ 軸に平行で傾きがないので、公式に入れる $m_1$ がない。それでも 2 本は交わり、角をなしている。この角は ex-abl-general (1) で求める。

直線 y = 3x と y = x/2。x 軸の正の向きから測った角(傾斜角)α₁、α₂ の差が、2 直線のなす角 θ = 45° になる 直線 y = 3x と y = x/2。x 軸の正の向きから測った角(傾斜角)α₁、α₂ の差が、2 直線のなす角 θ = 45° になる
公式は便利だが、次のことは公式を見ただけでは分からない。この記事ではこれらに答える。

  1. 「2 直線のなす角」とは、正確にはどの角のことか。→ def-abl-angle
  2. 公式はなぜ成り立つのか。なぜ絶対値がつくのか。→ thm-abl-slope、prf-abl-slope-addition
  3. $y$ 軸に平行な直線を含む場合は、どう求めればよいか。→ thm-abl-general
  4. 公式の答えと三角形の内角は、いつ一致するか。→ ex-abl-triangle、ex-abl-obtuse
  5. 分子 $m_1-m_2$ と分母 $1+m_1m_2$ は、それぞれ何を表しているのか。→ prf-abl-slope-vector、prop-abl-complex
    先に答えを言うと、分母の $1+m_1m_2$ は 2 直線の方向ベクトル $(1,m_1)$、$(1,m_2)$ の内積であり、分子の $m_1-m_2$ は同じ 2 つのベクトルを並べた行列式(符号を除いて)である。内積はなす角の余弦に、行列式は正弦に比例するので、その比が正接になる。
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    傾き $m$傾斜角 $\alpha$ の正接 $\tan\alpha$(lem-abl-slope-tan)実射影直線の座標
    $\tan\theta=\left\lvert\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right\rvert$傾斜角の差と正接の加法定理(prf-abl-slope-addition)向きのついた角
    分母 $1+m_1m_2$方向ベクトルの内積(prf-abl-slope-vector)内積
    分子 $m_1-m_2$方向ベクトルの行列式(prf-abl-slope-vector)外積・行列式
    $ax+by+c=0$ どうしの角法線ベクトルのなす角(thm-abl-general)内積空間の角
    $1+m_1m_2$ と $m_1-m_2$ を組にする$z_1\overline{z_2}$ の実部と虚部(prop-abl-complex)複素数の積と偏角

取り出す構造:傾斜角と、2 直線のなす角

まず、「なす角」を定義する。2 本の直線が 1 点で交わると、交点のまわりに 4 つの角ができる。向かい合う角(対頂角)は等しく、隣り合う角の和は $180^\circ$ なので、4 つの角の大きさは $\theta$ と $180^\circ-\theta$ の 2 種類である。このうち $90^\circ$ 以下のほうを選ぶ。

2 直線のなす角

2 直線 $\ell_1$、$\ell_2$ が 1 点で交わるとき、交点のまわりにできる 4 つの角のうち、$0^\circ$ より大きく $90^\circ$ 以下のものの大きさ $\theta$ を、$\ell_1$ と $\ell_2$ の なす角 という。$\ell_1$ と $\ell_2$ が平行であるか一致するときは、なす角を $0^\circ$ とする。

4 つの角が $\theta$ と $180^\circ-\theta$ のとき、どちらかは $90^\circ$ 以下なので、なす角はいつもただ 1 つに決まる。$\theta=90^\circ$ のとき、4 つの角はすべて $90^\circ$ で、2 直線は 垂直 である。なす角は直線の平行移動で変わらない。平行移動しても、2 直線が交わってできる角の形は変わらないからである。
次に、1 本の直線の向きを角で表す。

直線の傾斜角

直線 $\ell$ に対し、$\ell$ に平行で原点を通る直線を $\ell_0$ とする。$0^\circ\le\alpha<180^\circ$ を満たす角 $\alpha$ で、点 $(\cos\alpha,\sin\alpha)$ が $\ell_0$ 上にあるものを、$\ell$ の 傾斜角 という。

$\ell_0$ は原点を中心とする単位円と 2 点で交わり、その 2 点は原点について対称である。$x$ 軸の正の向きから反時計回りに測った角で表すと、2 点の角は $180^\circ$ 違うので、ちょうど一方が $0^\circ$ 以上 $180^\circ$ 未満の範囲に入る。よって傾斜角はいつもただ 1 つに決まる。傾斜角は「$x$ 軸の正の向きを反時計回りに何度回すと $\ell$ の向きになるか」を表す。単位円の上の点を $(\cos\alpha,\sin\alpha)$ と書くことは 三角比と鈍角への拡張 で扱った。

傾斜角を読む
  1. $y=x$ は点 $\left(\dfrac1{\sqrt2},\dfrac1{\sqrt2}\right)=(\cos45^\circ,\sin45^\circ)$ を通るので、傾斜角は $45^\circ$ である。
  2. $y=-x+5$ に平行で原点を通る直線は $y=-x$ で、点 $\left(-\dfrac1{\sqrt2},\dfrac1{\sqrt2}\right)=(\cos135^\circ,\sin135^\circ)$ を通る。傾斜角は $135^\circ$ である。
  3. $x=2$ に平行で原点を通る直線は $y$ 軸で、点 $(0,1)=(\cos90^\circ,\sin90^\circ)$ を通る。傾斜角は $90^\circ$ である。$y=3$ の傾斜角は $0^\circ$ である。
傾きは傾斜角の正接

直線 $\ell$ の傾斜角を $\alpha$ とする。

  1. $\ell$ が $y$ 軸に平行であることと、$\alpha=90^\circ$ であることは同値である。
  2. $\ell$ が $y$ 軸に平行でなく、傾きが $m$ ならば、$\cos\alpha\ne0$ かつ $\tan\alpha=m$ である。
単位円の上の点を直線の式に代入する

方針:原点を通る平行な直線 $\ell_0$ の式に、点 $(\cos\alpha,\sin\alpha)$ を代入する。
段 1(1 の証明)。$\ell$ が $y$ 軸に平行なら $\ell_0$ は $y$ 軸 $x=0$ である。点 $(\cos\alpha,\sin\alpha)$ が $x=0$ 上にあることは $\cos\alpha=0$ と同じで、$0^\circ\le\alpha<180^\circ$ の範囲では $\alpha=90^\circ$ と同値である。逆に $\alpha=90^\circ$ なら、$\ell_0$ は点 $(0,1)$ と原点を通るので $y$ 軸であり、$\ell$ は $y$ 軸に平行である。
段 2(2 の証明)。$\ell$ の傾きが $m$ なら、$\ell_0$ は傾き $m$ で原点を通るので $y=mx$ である。点 $(\cos\alpha,\sin\alpha)$ がその上にあるので
$$ \sin\alpha=m\cos\alpha $$
である。もし $\cos\alpha=0$ なら、この式から $\sin\alpha=0$ となり、$\cos^2\alpha+\sin^2\alpha=1$ に反する。よって $\cos\alpha\ne0$ で、両辺を $\cos\alpha$ で割ると $\tan\alpha=\dfrac{\sin\alpha}{\cos\alpha}=m$ である。$\square$

傾斜角が分かると、2 直線のなす角は傾斜角の差から決まる。

なす角は傾斜角の差で決まる

2 直線 $\ell_1$、$\ell_2$ の傾斜角を $\alpha_1$、$\alpha_2$ とし、$\delta:=\alpha_1-\alpha_2$ とおく($-180^\circ<\delta<180^\circ$)。$\ell_1$ と $\ell_2$ のなす角 $\theta$ は
$$ \theta=\begin{cases}|\delta| & (|\delta|\le90^\circ)\\ 180^\circ-|\delta| & (|\delta|>90^\circ)\end{cases} $$
である。

原点を通る直線に移して単位円の上で比べる

方針:2 本を平行移動して原点を通る直線 $\ell_{1,0}$、$\ell_{2,0}$ にする。なす角は平行移動で変わらないので、原点のまわりの 4 つの角を調べればよい。
段 1(平行な場合)。$\delta=0$ なら $\alpha_1=\alpha_2$ で、$\ell_{1,0}$ と $\ell_{2,0}$ は同じ点 $(\cos\alpha_1,\sin\alpha_1)$ と原点を通るので一致する。つまり $\ell_1$ と $\ell_2$ は平行か一致し、なす角は定義により $0^\circ=|\delta|$ である。逆に $\delta\ne0$ なら、2 本の傾斜角は違い、単位円との交点の組も違うので、$\ell_{1,0}$ と $\ell_{2,0}$ は原点だけで交わる。
段 2(4 つの角)。$\delta\ne0$ とする。$A=(\cos\alpha_1,\sin\alpha_1)$ は $\ell_{1,0}$ 上、$B=(\cos\alpha_2,\sin\alpha_2)$ は $\ell_{2,0}$ 上の点で、どちらも単位円の上半分(角が $0^\circ$ 以上 $180^\circ$ 未満の部分)にある。半直線 $OA$ と $OB$ のなす角 $\angle AOB$ は、$x$ 軸から測った角の差 $|\alpha_1-\alpha_2|=|\delta|$ に等しい。原点のまわりの 4 つの角は $\angle AOB$ とその隣の角なので、大きさは $|\delta|$ と $180^\circ-|\delta|$ である。
段 3($90^\circ$ 以下のほうを選ぶ)。$|\delta|\le90^\circ$ なら $|\delta|$ のほうが $90^\circ$ 以下で、$\theta=|\delta|$ である。$|\delta|>90^\circ$ なら $180^\circ-|\delta|<90^\circ$ で、$\theta=180^\circ-|\delta|$ である。$\square$

傾斜角の差でなす角を求める

図 1 の $y=3x$、$y=\dfrac12x$ では、$\alpha_1$ は約 $71.57^\circ$、$\alpha_2$ は約 $26.57^\circ$ で、差 $\delta$ は $45^\circ$ である。$|\delta|\le90^\circ$ なので、lem-abl-angle-diff により、なす角は $45^\circ$ になる。

主定理:傾きで表すなす角の正接

傾きで表すなす角

2 直線 $\ell_1$:$y=m_1x+q_1$、$\ell_2$:$y=m_2x+q_2$ のなす角を $\theta$ とする。

  1. $\ell_1$ と $\ell_2$ が垂直であることと、$1+m_1m_2=0$ であることは同値である。
  2. $1+m_1m_2\ne0$ ならば
    $$ \tan\theta=\left|\frac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right| $$
    である。

証明を 2 通り与える。1 つ目は傾斜角と正接の加法定理を使う高校の方法、2 つ目は方向ベクトルの内積を使う方法である。

高校数学で解く:傾斜角の差と加法定理

方針:傾斜角を $\alpha_1$、$\alpha_2$、$\delta:=\alpha_1-\alpha_2$ とし、$\cos\delta$ と $\sin\delta$ を加法定理で傾きの式に直す。最後に lem-abl-angle-diff で $\theta$ と $\delta$ を結ぶ。
段 1(準備)。2 本とも傾きをもつので、lem-abl-slope-tan により $\cos\alpha_1\ne0$、$\cos\alpha_2\ne0$、$\tan\alpha_1=m_1$、$\tan\alpha_2=m_2$ である。
段 2($\cos\delta$)。余弦の加法定理 $\cos(\alpha_1-\alpha_2)=\cos\alpha_1\cos\alpha_2+\sin\alpha_1\sin\alpha_2$ の右辺を $\cos\alpha_1\cos\alpha_2$ でくくると
$$ \cos\delta=\cos\alpha_1\cos\alpha_2\left(1+\frac{\sin\alpha_1}{\cos\alpha_1}\cdot\frac{\sin\alpha_2}{\cos\alpha_2}\right)=\cos\alpha_1\cos\alpha_2\,(1+m_1m_2) $$
である。
段 3($\sin\delta$)。正弦の加法定理 $\sin(\alpha_1-\alpha_2)=\sin\alpha_1\cos\alpha_2-\cos\alpha_1\sin\alpha_2$ も同じようにくくると
$$ \sin\delta=\cos\alpha_1\cos\alpha_2\left(\frac{\sin\alpha_1}{\cos\alpha_1}-\frac{\sin\alpha_2}{\cos\alpha_2}\right)=\cos\alpha_1\cos\alpha_2\,(m_1-m_2) $$
である。
段 4(1 の証明)。lem-abl-angle-diff により、$\theta=90^\circ$ となるのは $|\delta|=90^\circ$ のときだけである($|\delta|<90^\circ$ なら $\theta=|\delta|<90^\circ$、$|\delta|>90^\circ$ なら $\theta=180^\circ-|\delta|<90^\circ$)。$-180^\circ<\delta<180^\circ$ の範囲で $|\delta|=90^\circ$ となることは $\cos\delta=0$ と同値である。段 2 と $\cos\alpha_1\cos\alpha_2\ne0$ により、$\cos\delta=0$ は $1+m_1m_2=0$ と同値である。
段 5($\tan\delta$)。$1+m_1m_2\ne0$ とする。段 2 から $\cos\delta\ne0$ なので、段 3 を段 2 で割って
$$ \tan\delta=\frac{\sin\delta}{\cos\delta}=\frac{\cos\alpha_1\cos\alpha_2\,(m_1-m_2)}{\cos\alpha_1\cos\alpha_2\,(1+m_1m_2)}=\frac{m_1-m_2}{1+m_1m_2} $$
である。
段 6(絶対値がつく理由)。lem-abl-angle-diff により、$\theta$ は $\delta$、$-\delta$、$180^\circ-\delta$、$180^\circ+\delta$ のどれかに等しい($\delta$ の符号と大きさで決まる)。$\sin(x+180^\circ)=-\sin x$、$\cos(x+180^\circ)=-\cos x$ から $\tan(x+180^\circ)=\tan x$ であり、$\sin(-x)=-\sin x$、$\cos(-x)=\cos x$ から $\tan(-x)=-\tan x$ である。よって $\tan\theta$ は $\tan\delta$ か $-\tan\delta$ のどちらかである。一方、$0^\circ\le\theta<90^\circ$ なので $\tan\theta\ge0$ である。0 以上で、絶対値が $|\tan\delta|$ に等しい数は $|\tan\delta|$ だけなので、$\tan\theta=|\tan\delta|=\left|\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right|$ である。$\square$

段 5 までで分かるように、絶対値をとる前の $\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}$ は、$\ell_2$ の向きから $\ell_1$ の向きまで回る角 $\delta$ の正接である。正接の加法定理 $\tan(\alpha-\beta)=\dfrac{\tan\alpha-\tan\beta}{1+\tan\alpha\tan\beta}$ そのものは 加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く で扱った(そこでは和の形 $\tan(\alpha+\beta)$ を導いている。$\beta$ を $-\beta$ に替えると差の形になる)。この証明では、正接の式を使う代わりに $\cos\delta$ と $\sin\delta$ を別々に計算した。こうすると、分母が $0$ になる場合(垂直)も同じ計算で扱える。

大学数学で見る:方向ベクトルの内積と行列式

方針:2 直線の方向ベクトル $u_1=(1,m_1)$、$u_2=(1,m_2)$ のなす角を内積で求め、そこから直線のなす角を読む。正弦は、余弦から $\sin^2+\cos^2=1$ で求める。途中で出る恒等式が、分子 $m_1-m_2$ の正体を教える。
段 1(直線のなす角とベクトルのなす角)。$\ell_1$ は、1 点から $u_1$ の向きに進む直線で、$u_1$ と $-u_1$ のどちらの向きに進んでも同じ直線である(直線の方程式と点と直線の距離 の方向ベクトル)。$\ell_2$ と $u_2$ も同じである。原点から $u_1$、$-u_1$、$u_2$、$-u_2$ の向きに引いた 4 本の半直線が、平行移動した 2 直線の交点のまわりの 4 つの角を作る。$u_1$ と $u_2$ のなす角を $\varphi$($0^\circ\le\varphi\le180^\circ$)とすると、4 つの角は $\varphi$ と $180^\circ-\varphi$ なので、$\theta$ はそのうち $90^\circ$ 以下のほうである。$\cos(180^\circ-\varphi)=-\cos\varphi$ で、$0^\circ$ 以上 $90^\circ$ 以下の角の余弦は $0$ 以上なので
$$ \cos\theta=|\cos\varphi|=\frac{|u_1\cdot u_2|}{|u_1|\,|u_2|}=\frac{|1+m_1m_2|}{\sqrt{1+m_1^2}\,\sqrt{1+m_2^2}} $$
である。2 つ目の等号で、内積となす角の関係 $u_1\cdot u_2=|u_1||u_2|\cos\varphi$(ベクトルの内積(高校数学))を使った。$u_1$ と $u_2$ が平行($\varphi=0^\circ$ または $180^\circ$)のときは、2 直線は平行か一致で、4 つの角はできないが、定義により $\theta=0^\circ$ である。このときも $\cos\theta=1=|\cos\varphi|$ なので、上の式は成り立つ。
段 2(恒等式)。展開すると
$$ (1+m_1^2)(1+m_2^2)-(1+m_1m_2)^2=(1+m_1^2+m_2^2+m_1^2m_2^2)-(1+2m_1m_2+m_1^2m_2^2)=m_1^2-2m_1m_2+m_2^2=(m_1-m_2)^2 $$
である。
段 3($\sin\theta$)。$0^\circ\le\theta\le90^\circ$ なので $\sin\theta\ge0$ で、$\sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}$ である。段 1・段 2 から
$$ \sin^2\theta=1-\frac{(1+m_1m_2)^2}{(1+m_1^2)(1+m_2^2)}=\frac{(1+m_1^2)(1+m_2^2)-(1+m_1m_2)^2}{(1+m_1^2)(1+m_2^2)}=\frac{(m_1-m_2)^2}{(1+m_1^2)(1+m_2^2)} $$
なので、$\sin\theta=\dfrac{|m_1-m_2|}{\sqrt{1+m_1^2}\,\sqrt{1+m_2^2}}$ である。
段 4(まとめ)。1:$\theta=90^\circ$ は $\cos\theta=0$ と同値で、段 1 の式の分子を見ると $1+m_1m_2=0$ と同値である。2:$1+m_1m_2\ne0$ なら $\cos\theta>0$ で、段 3 を段 1 で割ると、共通の分母 $\sqrt{1+m_1^2}\sqrt{1+m_2^2}$ が消えて $\tan\theta=\dfrac{|m_1-m_2|}{|1+m_1m_2|}$ となる。$\square$

2 つ目の証明で、分母 $1+m_1m_2$ は方向ベクトルの内積 $u_1\cdot u_2$ であり、分子 $m_1-m_2$ は $u_1$、$u_2$ を並べた行列 $\begin{pmatrix}1&1\\m_1&m_2\end{pmatrix}$ の行列式(の $-1$ 倍)$1\cdot m_1-1\cdot m_2$ であることが分かる。行列式の絶対値は $u_1$、$u_2$ が作る平行四辺形の面積で、それは $|u_1||u_2|\sin\varphi$ に等しい(1次変換と行列式:面積の拡大率)。段 2 の恒等式は、この「内積の 2 乗と面積の 2 乗の和は長さの 2 乗の積」という関係を 2 次元で書いたものである。

2 つの方法で同じ角を求める

$y=3x$ と $y=\dfrac12x$(図 1)。
(1) 加法定理の方法:ex-abl-hs-first (2) で $\tan\theta=1$、$\theta=45^\circ$ を得た。
(2) 内積の方法:方向ベクトルとして $(1,3)$ と、$\left(1,\dfrac12\right)$ を $2$ 倍した $(2,1)$ を使う(向きを変えずに長さだけ変えても角は変わらない)。内積は $1\cdot2+3\cdot1=5$、長さは $\sqrt{10}$ と $\sqrt5$ なので
$$ \cos\theta=\frac{|5|}{\sqrt{10}\,\sqrt5}=\frac5{\sqrt{50}}=\frac1{\sqrt2} $$
で、$\theta=45^\circ$ である。行列式は $1\cdot1-3\cdot2=-5$ で、$\sin\theta=\dfrac{|-5|}{\sqrt{50}}=\dfrac1{\sqrt2}$ も一致する。

一般形の直線:法線ベクトルで測る

$y$ 軸に平行な直線を含めて扱うには、直線を $ax+by+c=0$ の形で表し、法線ベクトル $(a,b)$ を使う。直線の方程式と点と直線の距離 で見たように、$(a,b)$ は直線に垂直なベクトルで、$(-b,a)$ は方向ベクトルである。

法線ベクトルで表すなす角

2 直線 $\ell_1$:$a_1x+b_1y+c_1=0$、$\ell_2$:$a_2x+b_2y+c_2=0$($(a_i,b_i)\ne(0,0)$)のなす角を $\theta$ とし、$n_i:=(a_i,b_i)$ とおく。このとき
$$ \cos\theta=\frac{|a_1a_2+b_1b_2|}{|n_1|\,|n_2|},\qquad \sin\theta=\frac{|a_1b_2-a_2b_1|}{|n_1|\,|n_2|} $$
である。特に、$a_1a_2+b_1b_2\ne0$ ならば $\tan\theta=\dfrac{|a_1b_2-a_2b_1|}{|a_1a_2+b_1b_2|}$ であり、$a_1a_2+b_1b_2=0$ となるのは 2 直線が垂直なときである。

方向ベクトルの内積は法線ベクトルの内積に等しい

方針:方向ベクトル $u_i=(-b_i,a_i)$ について prf-abl-slope-vector と同じ計算をし、内積・長さが法線ベクトルのものと一致することを使う。
段 1(内積と長さ)。$u_1\cdot u_2=(-b_1)(-b_2)+a_1a_2=a_1a_2+b_1b_2=n_1\cdot n_2$、$|u_i|=\sqrt{b_i^2+a_i^2}=|n_i|$ である。
段 2($\cos\theta$)。prf-abl-slope-vector の段 1 は、2 直線の方向ベクトルが何であっても成り立つ。$u_1$、$u_2$ に使うと、段 1 から
$$ \cos\theta=\frac{|u_1\cdot u_2|}{|u_1|\,|u_2|}=\frac{|a_1a_2+b_1b_2|}{|n_1|\,|n_2|} $$
である。
段 3(恒等式)。展開すると
$$ (a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)-(a_1a_2+b_1b_2)^2=a_1^2b_2^2+b_1^2a_2^2-2a_1a_2b_1b_2=(a_1b_2-a_2b_1)^2 $$
である(左辺の $a_1^2a_2^2$ と $b_1^2b_2^2$ は打ち消し合う)。
段 4($\sin\theta$ と $\tan\theta$)。$\sin\theta\ge0$ なので、段 2・段 3 から
$$ \sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}=\frac{\sqrt{(a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)-(a_1a_2+b_1b_2)^2}}{|n_1|\,|n_2|}=\frac{|a_1b_2-a_2b_1|}{|n_1|\,|n_2|} $$
である。$a_1a_2+b_1b_2\ne0$ なら $\cos\theta\ne0$ で、割ると $\tan\theta$ の式を得る。$a_1a_2+b_1b_2=0$ は $\cos\theta=0$、つまり $\theta=90^\circ$ と同値である。$\square$

段 3 の恒等式は 2 次元の Lagrange の恒等式 で、ここから $|n_1\cdot n_2|\le|n_1||n_2|$(Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学))も出る。$\sin\theta=0$ となるのは $a_1b_2-a_2b_1=0$ のときで、これは 直線の方程式と点と直線の距離 の平行条件(一致を含む)と同じである。
thm-abl-slope は、この定理の特別な場合である。$y=mx+q$ を $mx-y+q=0$ と書くと $n=(m,-1)$ なので、
$$ a_1a_2+b_1b_2=m_1m_2+1,\qquad a_1b_2-a_2b_1=-m_1+m_2 $$
となり、$\tan\theta=\dfrac{|m_2-m_1|}{|1+m_1m_2|}$ が出る。

法線ベクトルで角を求める
  1. $x=1$ と $y=2x$。$x-1=0$ と $2x-y=0$ なので $n_1=(1,0)$、$n_2=(2,-1)$ である。
    $$ \cos\theta=\frac{|1\cdot2+0\cdot(-1)|}{1\cdot\sqrt5}=\frac2{\sqrt5},\qquad \sin\theta=\frac{|1\cdot(-1)-2\cdot0|}{1\cdot\sqrt5}=\frac1{\sqrt5},\qquad \tan\theta=\frac12 $$
    で、$\theta$ は約 $26.57^\circ$ である。傾斜角で確かめると、$y=2x$ の傾斜角は $\tan\alpha=2$ を満たす約 $63.43^\circ$、$x=1$ の傾斜角は $90^\circ$ で、差は約 $26.57^\circ$ である。ex-abl-hs-fail (2) で傾きの公式が使えなかった場合も、この方法なら求まる。
  2. $3x+4y-1=0$ と $x-7y+2=0$。$n_1=(3,4)$、$n_2=(1,-7)$、$|n_1|=5$、$|n_2|=\sqrt{50}=5\sqrt2$ である。
    $$ \cos\theta=\frac{|3-28|}{5\cdot5\sqrt2}=\frac{25}{25\sqrt2}=\frac1{\sqrt2},\qquad \sin\theta=\frac{|3\cdot(-7)-1\cdot4|}{25\sqrt2}=\frac1{\sqrt2} $$
    なので、$\theta=45^\circ$ である。傾きで計算しても $m_1=-\dfrac34$、$m_2=\dfrac17$ から $\left|\dfrac{-\frac34-\frac17}{1-\frac3{28}}\right|=\left|\dfrac{-\frac{25}{28}}{\frac{25}{28}}\right|=1$ で一致する。

例:角の条件から直線を求める、三角形の角を求める

3 つの傾きから三角形の角を求める

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(2,4)$ を頂点とする三角形の 3 つの角を求める(図 2)。辺の直線の傾きは、$AB$ が $0$、$AC$ が $\dfrac{4}{2}=2$、$BC$ が $\dfrac{4-0}{2-6}=-1$ である。
段 1(直線のなす角)。thm-abl-slope で、

  • $AB$ と $AC$:$\tan\theta_A=\left|\dfrac{2-0}{1+0}\right|=2$。
  • $BA$ と $BC$:$\tan\theta_B=\left|\dfrac{-1-0}{1+0}\right|=1$、つまり $\theta_B=45^\circ$。
  • $CA$ と $CB$:$\tan\theta_C=\left|\dfrac{2-(-1)}{1+2\cdot(-1)}\right|=|-3|=3$。
    段 2(内角と一致するか)。直線のなす角は $90^\circ$ 以下の角なので、三角形の内角が鈍角ならば一致しない(ex-abl-obtuse)。内角が鋭角かどうかは、頂点から出る 2 辺のベクトルの内積の符号で分かる。
    $$ \overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=(6,0)\cdot(2,4)=12,\quad \overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{BC}=(-6,0)\cdot(-4,4)=24,\quad \overrightarrow{CA}\cdot\overrightarrow{CB}=(-2,-4)\cdot(4,-4)=8 $$
    はどれも正なので、3 つの内角はすべて鋭角で、直線のなす角 $\theta_A$、$\theta_B$、$\theta_C$ に等しい。
    段 3(和)。三角形の内角の和は $180^\circ$ なので(三角形の内角の和)、$\tan\theta=1,2,3$ となる $0^\circ$ と $90^\circ$ の間の角を $\theta_B,\theta_A,\theta_C$ として
    $$ \theta_B+\theta_A+\theta_C=45^\circ+\theta_A+\theta_C=180^\circ $$
    である。数値では $\theta_A$ は約 $63.43^\circ$、$\theta_C$ は約 $71.57^\circ$ で、和は $180^\circ$ になる。逆正接の記号を使うと $\arctan1+\arctan2+\arctan3=\pi$ で、同じ等式を 逆三角関数(高校数学) では逆正接の加法公式から導いている。

三角形 A(0, 0)、B(6, 0)、C(2, 4)。辺の傾きは 0、2、−1 で、3 つの角の正接は 2、1、3 になる 三角形 A(0, 0)、B(6, 0)、C(2, 4)。辺の傾きは 0、2、−1 で、3 つの角の正接は 2、1、3 になる

与えられた直線と 45° をなす直線

点 $(1,2)$ を通り、直線 $y=2x$ と $45^\circ$ の角をなす直線を求める(図 3 の左)。
段 1(傾きをもつ直線)。求める直線の傾きを $m$ とする。$1+2m=0$ なら垂直でなす角は $90^\circ$ なので、$1+2m\ne0$ としてよい。thm-abl-slope により条件は $\left|\dfrac{m-2}{1+2m}\right|=\tan45^\circ=1$ である。両辺を 2 乗して分母を払うと $(m-2)^2=(1+2m)^2$、展開して
$$ m^2-4m+4=1+4m+4m^2\iff 3m^2+8m-3=0\iff(3m-1)(m+3)=0 $$
なので、$m=\dfrac13$ または $m=-3$ である。どちらも $1+2m\ne0$ を満たす。確かめると、$m=-3$ では $\dfrac{-3-2}{1-6}=1$、$m=\dfrac13$ では $\dfrac{\frac13-2}{1+\frac23}=-1$ で、絶対値はどちらも $1$ である。
段 2(傾きをもたない直線)。$(1,2)$ を通り $y$ 軸に平行な直線 $x=1$ と $y=2x$ のなす角は、ex-abl-general (1) により $\tan\theta=\dfrac12$ の角で、$45^\circ$ ではない。
答えは $y=-3x+5$ と $y=\dfrac13x+\dfrac53$ の 2 本である。2 本の傾きの積は $(-3)\cdot\dfrac13=-1$ で、2 本は垂直である。$y=2x$ の向きを反時計回りに $45^\circ$ 回した直線と、時計回りに $45^\circ$ 回した直線なので、互いに $90^\circ$ をなすのは当然である(rem-abl-rotation でこの 2 本を回転として求めなおす)。

左は、点 (1, 2) を通り y = 2x と 45° をなす 2 直線(傾き −3 と 1/3)。右は、原点を通り y = x と 45° をなす 2 直線 y = 0 と x = 0。右の x = 0 は傾きを文字でおく方法では求まらない 左は、点 (1, 2) を通り y = 2x と 45° をなす 2 直線(傾き −3 と 1/3)。右は、原点を通り y = x と 45° をなす 2 直線 y = 0 と x = 0。右の x = 0 は傾きを文字でおく方法では求まらない

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
$1+m_1m_2\ne0$なす角が $\tan\theta=\left\lvert\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\right\rvert$ で求まるex-abl-perp
2 本とも $y$ 軸に平行でない傾きを文字でおいて条件を解けば、条件を満たす直線がすべて求まるex-abl-lost-vertical
2 本の「直線」の角を考える公式の角が、三角形の内角(2 本の半直線の角)に等しいex-abl-obtuse
反例:垂直な 2 直線では正接の式が使えない

$y=2x$ と $y=-\dfrac12x$ では $1+m_1m_2=0$ で、公式の右辺は分母が $0$ になり意味をもたない。左辺の $\tan90^\circ$ も定義されない。
傾き $m_2$ を $-\dfrac12$ に近づけると、公式の値は大きくなっていく。たとえば $m_2=-0.49$ では $\left|\dfrac{2+0.49}{1-0.98}\right|=\dfrac{2.49}{0.02}=124.5$ で、$\theta$ は約 $89.54^\circ$ である。$\theta$ が $90^\circ$ に近づくと正接の値はいくらでも大きくなるので、ちょうど $90^\circ$ の場合は正接で表せない。
満たさない仮定:$1+m_1m_2\ne0$。崩れる主張:正接の式でなす角を求めること。prf-abl-slope-vector の余弦の式 $\cos\theta=\dfrac{|1+m_1m_2|}{\sqrt{1+m_1^2}\sqrt{1+m_2^2}}$ なら、分母が $0$ にならないので、この場合も $\cos\theta=0$、$\theta=90^\circ$ と求まる。

反例:傾きでおくと $y$ 軸に平行な直線を落とす

原点を通り、直線 $y=x$ と $45^\circ$ の角をなす直線を求める(図 3 の右)。
(1) 傾きを $m$ とおくと、条件は $\left|\dfrac{m-1}{1+m}\right|=1$、つまり $(m-1)^2=(1+m)^2$ で、展開すると $-2m=2m$、$m=0$ である。見つかるのは $y=0$ の 1 本だけである。
(2) しかし $y$ 軸 $x=0$ の傾斜角は $90^\circ$、$y=x$ の傾斜角は $45^\circ$ で、差は $45^\circ$ である。$x=0$ も条件を満たす。
(3) 一般形でおくと落とさない。求める直線を $ax+by=0$($(a,b)\ne(0,0)$)とすると、thm-abl-general により条件は
$$ \frac{|a+b|}{\sqrt2\,\sqrt{a^2+b^2}}=\cos45^\circ=\frac1{\sqrt2}\iff(a+b)^2=a^2+b^2\iff ab=0 $$
である。$a=0$ なら $by=0$($b\ne0$)で $y=0$、$b=0$ なら $ax=0$($a\ne0$)で $x=0$ である。2 本とも求まる。
満たさない仮定:答えの直線が $y$ 軸に平行でないこと。崩れる主張:傾きを文字でおいて解けば答えがすべて求まること。傾きでおくときは、$y$ 軸に平行な直線を別に調べる必要がある。ex-abl-45deg の段 2 はその確認である。

反例:三角形の鈍角は公式の角と一致しない

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(-1,2)$ の三角形の角 $\angle BAC$ を求める(図 4)。
(1) 直線 $AB$ の傾きは $0$、直線 $AC$ の傾きは $-2$ なので、公式では $\tan\theta=\left|\dfrac{-2-0}{1+0}\right|=2$、$\theta$ は約 $63.43^\circ$ である。
(2) ベクトルで求めると、$\overrightarrow{AB}=(4,0)$、$\overrightarrow{AC}=(-1,2)$ で
$$ \cos\angle BAC=\frac{4\cdot(-1)+0\cdot2}{4\cdot\sqrt5}=-\frac1{\sqrt5}<0 $$
なので $\angle BAC$ は鈍角で、約 $116.57^\circ$ である。これは $180^\circ-\theta$ に等しい。
満たさない仮定:考える角が「2 本の直線」の角であること(三角形の角は 2 本の半直線の角である)。崩れる主張:公式の角が三角形の内角に等しいこと。直線には向きがないので、公式は $\theta$ と $180^\circ-\theta$ を区別できない。半直線の角を知るには、ex-abl-triangle の段 2 のように内積の符号を確かめる。

三角形 A(0, 0)、B(4, 0)、C(−1, 2)。内角 ∠BAC は約 116.57° の鈍角で、直線 AB と AC のなす角(約 63.43°)はその補角である 三角形 A(0, 0)、B(4, 0)、C(−1, 2)。内角 ∠BAC は約 116.57° の鈍角で、直線 AB と AC のなす角(約 63.43°)はその補角である

大学数学で見る:向きのついた角と複素数

prf-abl-slope-addition の段 5 で、絶対値をとる前の $\dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}$ は、傾斜角の差 $\delta=\alpha_1-\alpha_2$ の正接だった。$\delta$ は「$\ell_2$ から $\ell_1$ へ反時計回りに何度回るか」という 向きのついた角 である。直線には向きがないので、$\delta$ と $\delta\pm180^\circ$ は同じ回り方を表す。正接は $180^\circ$ ごとに同じ値をとるので、向きのついた角を表すのにちょうど合っている。分母と分子を組にすると、この角は複素数の積から一度に読める。

内積と行列式は複素数の積の実部と虚部

$0$ でないベクトル $u=(p_1,q_1)$、$v=(p_2,q_2)$ に複素数 $z=p_1+iq_1$、$w=p_2+iq_2$ を対応させ、$x$ 軸の正の向きから測った $u$、$v$ の向きの角を $\alpha$、$\beta$ とする。このとき
$$ z\,\overline{w}=(p_1p_2+q_1q_2)+i\,(q_1p_2-p_1q_2)=|z|\,|w|\bigl(\cos(\alpha-\beta)+i\sin(\alpha-\beta)\bigr) $$
である。特に、$u\cdot v=|u||v|\cos(\alpha-\beta)$、$q_1p_2-p_1q_2=|u||v|\sin(\alpha-\beta)$ である。

成分で展開し、極形式でも展開する

方針:同じ積を 2 通りに計算し、実部と虚部を比べる。
段 1(成分で)。$\overline{w}=p_2-iq_2$ なので、$i^2=-1$ を使って展開すると
$$ (p_1+iq_1)(p_2-iq_2)=p_1p_2-ip_1q_2+iq_1p_2-i^2q_1q_2=(p_1p_2+q_1q_2)+i\,(q_1p_2-p_1q_2) $$
である。
段 2(極形式で)。$z=|z|(\cos\alpha+i\sin\alpha)$、$w=|w|(\cos\beta+i\sin\beta)$ と書けるので、$\overline{w}=|w|(\cos\beta-i\sin\beta)$ である。展開すると
$$ z\,\overline{w}=|z||w|\bigl((\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta)+i\,(\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta)\bigr) $$
で、余弦と正弦の加法定理により、実部の括弧は $\cos(\alpha-\beta)$、虚部の括弧は $\sin(\alpha-\beta)$ である。
段 3(比べる)。段 1 と段 2 の実部どうし、虚部どうしを比べ、$|z|=|u|$、$|w|=|v|$ を使うと最後の 2 式を得る。$\square$

$u=(1,m_1)$、$v=(1,m_2)$ とすると $z\,\overline w=(1+m_1m_2)+i\,(m_1-m_2)$ である。thm-abl-slope の分母と分子は、この複素数の実部と虚部であり、その比が向きのついた角の正接になる。2 つの証明の関係もここから分かる。prf-abl-slope-addition は極形式(段 2)で、prf-abl-slope-vector は成分(段 1)で同じ量を計算していた。複素数を掛けることが回転と拡大であることは 複素数の掛け算は回転と拡大 で扱い、2 つの複素数の比の偏角で角を測る方法は 複素数平面と図形 で扱う。

向きのついた角を複素数で読む
  1. $y=3x$ と $y=\dfrac12x$ の方向ベクトル $(1,3)$、$(2,1)$ では、$z\,\overline{w}=(1+3i)(2-i)=2-i+6i-3i^2=5+5i$ である。偏角は $45^\circ$ で、$y=\dfrac12x$ から $y=3x$ へ反時計回りに $45^\circ$ 回ることが分かる(図 1)。
  2. 順番を入れかえると $(2+i)(1-3i)=2-6i+i-3i^2=5-5i$ で、偏角は $-45^\circ$ である。$y=3x$ から $y=\dfrac12x$ へは時計回りに $45^\circ$ 回る。絶対値をとる thm-abl-slope は、この 2 つを区別しない。
回転すると傾きは 1 次分数変換で変わる

傾き $m=\tan\alpha$ の直線を反時計回りに角 $\varphi$ だけ回すと、傾斜角は $\alpha+\varphi$ になる。$t=\tan\varphi$ とおくと、正接の加法定理(加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)により、新しい傾きは
$$ \tan(\alpha+\varphi)=\frac{m+t}{1-mt} $$
である($\cos\alpha$、$\cos\varphi$、$\cos(\alpha+\varphi)$ が $0$ でないとき)。$y=2x$ を $\pm45^\circ$ 回すと、$t=1$ で $\dfrac{2+1}{1-2}=-3$、$t=-1$ で $\dfrac{2-1}{1+2}=\dfrac13$ となり、ex-abl-45deg の 2 本が求まる。
$m\mapsto\dfrac{m+t}{1-mt}$ は分数の形の変換(1 次分数変換)で、方向ベクトル $(1,m)$ に回転行列を掛けたときの傾きの変化を表している。分母 $1-mt$ が $0$ になるとき、回した直線は $y$ 軸に平行になり、傾きがない。傾き全体に「傾きがない」という 1 つの値($\infty$ と書く)を付け加えると、この変換はいつも意味をもつ。原点を通る直線全体をこのように 1 つの図形とみたものを、大学では実射影直線と呼ぶ(射影空間 の 1 次元の場合)。分数の形の変換と行列の積の対応は 1次分数変換(高校数学) と 分数型の漸化式と1次分数変換 で扱う。

さらに先へ

  • 空間の 2 平面 $a_1x+b_1y+c_1z=d_1$、$a_2x+b_2y+c_2z=d_2$ のなす角も、法線ベクトルを使って $\cos\theta=\dfrac{|a_1a_2+b_1b_2+c_1c_2|}{\sqrt{a_1^2+b_1^2+c_1^2}\sqrt{a_2^2+b_2^2+c_2^2}}$ で定める。thm-abl-general の余弦の式と同じ形である。平面の方程式と法線ベクトルは 空間の平面と法線ベクトル で扱う。
  • 2 つの曲線が交わる角は、交点での 2 本の接線のなす角として定める。接線の傾きは微分係数なので、thm-abl-slope に微分係数を入れれば求まる(接線・法線と曲線の凹凸)。円に関する反転 は、曲線どうしの交わる角の大きさを変えない変換である。
  • 直線を動かして、円や領域に接する位置を探す方法では、接する条件を「中心と直線の距離が半径に等しい」と式にする。角ではなく距離を使うこの方法は、次に読む 領域を使った最大・最小 で扱う。
  • $n$ 次元のベクトル $u$、$v$ のなす角も $\cos\varphi=\dfrac{u\cdot v}{|u||v|}$ で定める。右辺が $-1$ 以上 $1$ 以下であることを保証するのが Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) で、thm-abl-general の証明の段 3 の恒等式はその 2 次元の場合を等式で示したものである。

関連項目

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