Max Noetherの基本定理

同義語:Max Noether's fundamental theoremNoetherの基本定理AF+BG定理Noether's AF+BG theoremNoetherの条件

概要

Max Noetherの基本定理(Max Noether's fundamental theorem)とは、代数閉体 $k$ 上の射影平面曲線 $F,G,H$ で $F,G$ が共通成分をもたないとき、$H=AF+BG$($A,B$ は次数 $\deg H-\deg F$、$\deg H-\deg G$ の形式)と書けることと、$F$ と $G$ の各交点での局所環で $H$ がイデアル $(F,G)$ に属すること(Noether の条件)が同値であるという定理である。AF+BG 定理ともいう。交点が $F$ の単純点なら、条件は交点数の不等式で確かめられる。応用に、2 次曲線に内接する六角形の Pascal の定理、Pappus の定理、2 つの 3 次曲線の 9 つの交点のうち 8 点を通る 3 次曲線は残りの 1 点も通るという Cayley–Bacharach の定理が導かれる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Bézoutの定理, 交点数(平面曲線), 射影平面, 離散付値環

Max Noether の基本定理(Max Noether's fundamental theorem)とは、代数閉体 $k$ 上の射影平面曲線 $F,G,H$ について、$F$ と $G$ が共通成分をもたないとき、
$$ H=AF+BG\qquad(A,B\text{ は次数 }\deg H-\deg F,\ \deg H-\deg G\text{ の形式}) $$
と書けることと、$F$ と $G$ の各交点 $P$ で「$H$ が $P$ での局所環の中でイデアル $(F,G)$ に属する」こと(Noether の条件)が同値である、という定理である。AF+BG 定理ともいう。
$H=AF+BG$ と書ければ、$H$ と $F$ の交わりは $B$ と $F$ の交わりと $G$ と $F$ の交わりを合わせたものになる。そこでこの定理は、「$H$ が $F$ と交わる点のうち、$G$ が $F$ と交わる分を取り除いた残りを、ちょうど $F$ と交わる曲線 $B$ がある」ことを、交点ごとの局所的な条件に帰着させる道具になる。この記事では定理を完全に証明し、Noether の条件を確かめる判定法を示し、応用として、2 次曲線に内接する六角形についての Pascal の定理、2 直線についての Pappus の定理、3 次曲線の 9 つの交点についての Cayley–Bacharach の定理を導く。以下、$k$ はいつも代数閉体とする。

交点サイクル

射影平面の点の有限個の整数係数の形式和 $D=\sum_Pn_PP$ を 0 サイクルといい、$\deg D:=\sum_Pn_P$ をその次数という。すべての $n_P\ge0$ のとき $D\ge0$ と書き、$D-D'\ge0$ のとき $D\ge D'$ と書く。
共通成分をもたない射影平面曲線 $F,G$ に対し、
$$ F\bullet G:=\sum_{P\in\mathbb{P}^2}I(P,F\cap G)\,P $$
を交点サイクルという($I(P,F\cap G)$ は 交点数(平面曲線))。Bézoutの定理 により $F\bullet G\ge0$ で、$\deg(F\bullet G)=\deg F\cdot\deg G$ である。交点数の性質から
$$ F\bullet G=G\bullet F,\qquad F\bullet(GH)=F\bullet G+F\bullet H,\qquad F\bullet(G+AF)=F\bullet G $$
が成り立つ(最後の式の $A$ は次数 $\deg G-\deg F$ の形式)。とくに $H=AF+BG$ なら
$$ H\bullet F=(BG)\bullet F=B\bullet F+G\bullet F $$
である。つまり $H\bullet F\ge G\bullet F$ のとき、$B\bullet F=H\bullet F-G\bullet F$ となる曲線 $B$ を探すには、$H=AF+BG$ と書ければよい。

Noether の条件と主定理

点 $P$ での射影平面の局所環を $\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)$ とし、$P$ を通らない直線 $L$ をとって、形式 $F$ に $F_*:=F/L^{\deg F}\in\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)$ を対応させる。$L$ を替えても $F_*$ は単元倍しか変わらない。

Noether の条件

射影平面曲線 $F,G$ が $P$ を通る共通成分をもたないとし、$H$ を形式とする。
$$ H_*\in(F_*,G_*)\subset\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2) $$
すなわち $H_*=aF_*+bG_*$ となる $a,b\in\mathcal{O}_P(\mathbb{P}^2)$ があるとき、$P$ で($F,G,H$ について)Noether の条件が成り立つという。

$P\notin F\cap G$ なら $F_*$ か $G_*$ が単元なので、条件は自動的に成り立つ。

Max Noether の基本定理

$F,G,H$ を射影平面曲線($H$ は形式でもよい)とし、$F$ と $G$ は共通成分をもたないとする。$A,B$ を次数 $\deg H-\deg F$、$\deg H-\deg G$ の形式(次数が負なら $0$)として $H=AF+BG$ と書けることと、$F\cap G$ のすべての点で Noether の条件が成り立つことは同値である。

(Ful08 §5.5、p. 61。)

Max Noether の基本定理の証明

$H=AF+BG$ なら、$L$ を $P$ を通らない直線として両辺を $L^{\deg H}$ で割ると、次数の関係から $H_*=A_*F_*+B_*G_*$ となり、各点で Noether の条件が成り立つ。
逆を示す。$F\cap G$ は有限なので(Bézoutの定理 の補題「共通成分のない曲線の交わりは有限」)、射影変換で、直線 $Z$ の上に $F\cap G$ の点がないようにする。射影変換は局所環の同型を与えるので、Noether の条件は保たれる。Bézoutの定理 の証明の段 0 と同じく、$F,G$ は $Z$ で割り切れず、$f:=F(x,y,1)$、$g:=G(x,y,1)$ は共通因子をもたない。$h:=H(x,y,1)$ とおく。$P=[a:b:1]$ で $L=Z$ をとると、$F_*,G_*,H_*$ は $\mathcal{O}_{(a,b)}$ の元 $f,g,h$ と同一視され、Noether の条件は「$h$ の $\mathcal{O}_{(a,b)}/(f,g)$ での像が $0$」ということである。
交点数(平面曲線) の補題「大域の商は局所の商の直積」により、$k[x,y]/(f,g)\to\prod_{Q\in V(f,g)}\mathcal{O}_Q/(f,g)$ は同型である。すべての交点は $\{Z\ne0\}$ にあるので、仮定から $h$ の像は各成分で $0$ であり、したがって $k[x,y]/(f,g)$ での $h$ の像は $0$、すなわち
$$ h=af+bg\qquad(a,b\in k[x,y]) $$
である。$N\ge\max(\deg H,\ \deg a+\deg F,\ \deg b+\deg G)$ をとる。多項式 $p$ の斉次化を $p^*$ と書くと、$Z^{N-\deg H}H$ と $Z^{N-\deg a-\deg F}a^*F+Z^{N-\deg b-\deg G}b^*G$ はどちらも次数 $N$ の形式で、$Z=1$ を代入するとどちらも $h$ になる。次数 $N$ の形式は $Z=1$ を代入したもので決まるので、両者は等しく、$Z^{N-\deg H}H\in(F,G)$ である。Bézoutの定理 の補題「無限遠直線を掛ける写像の単射性」を $N-\deg H$ 回使うと、$H=A'F+B'G$ となる多項式 $A',B'$ がある。$A',B'$ を斉次成分に分け、両辺の次数 $\deg H$ の部分をとると、
$$ H=A'_sF+B'_tG\qquad(s=\deg H-\deg F,\ t=\deg H-\deg G) $$
を得る($A'_s$ は $A'$ の $s$ 次の斉次成分で、$s< 0$ なら $0$)。$\square$

Noether の条件の判定法

定理を使うには、Noether の条件を確かめる手段が要る。次の 3 つが基本である。$m_P$ は点の重複度を表す。

Noether の条件の判定法

$F,G,H$ を射影平面曲線、$P\in F\cap G$ とし、$F,G$ は $P$ を通る共通成分をもたないとする。次のどれかが成り立てば、$P$ で Noether の条件が成り立つ。

  1. $F$ と $G$ が $P$ で横断的に交わり、$P\in H$ である。
  2. $P$ が $F$ の単純点で、$I(P,H\cap F)\ge I(P,G\cap F)$ である。
  3. $F$ と $G$ が $P$ で共通の接線をもたず、$m_P(H)\ge m_P(F)+m_P(G)-1$ である。

(Ful08 §5.5 Proposition 1、p. 61–62。)

アフィン座標で $P=(0,0)$ とし、$F,G,H$ を非斉次化した多項式を同じ文字で書く。$\mathcal{O}:=\mathcal{O}_P$、$\mathfrak{a}:=(x,y)$ とする。
3:$m_P(H)\ge m_P(F)+m_P(G)-1$ は $H\in\mathfrak{a}^t$($t=m_P(F)+m_P(G)-1$)ということである。交点数(平面曲線) の補題「接線と交点数」の 1 により、共通の接線がなければ $\mathfrak{a}^t\mathcal{O}\subset(F,G)$ なので、$H\in(F,G)$ である。
1:横断的に交わるとは $m_P(F)=m_P(G)=1$ で接線が異なることであり、$P\in H$ は $m_P(H)\ge1=1+1-1$ なので、3 の特別な場合である。
2:重複度は積について足し算なので、$m_P(F)=1$ なら $F$ の成分のうち $P$ を通るのはただ 1 つの $F_1$ で、その重複度は $1$、$m_P(F_1)=1$ である。ほかの成分は $\mathcal{O}$ の単元なので $(F,K)=(F_1,K)$($K$ は任意)である。$R:=\mathcal{O}/(F_1)$ は既約曲線 $F_1$ の $P$ での局所環であり、$P$ は $F_1$ の単純点なので $R$ は 離散付値環 である(代数曲線 の定理「Jacobi の判定法(平面曲線)」と、非特異な点の局所環が離散付値環であること)。その付値を $\operatorname{ord}$、一意化元を $\tau$ とし、多項式 $K$ の $R$ での像を $\bar K$ と書く。$\bar K\ne0$ で $\operatorname{ord}\bar K=e$ なら $(\bar K)=(\tau^e)$ であり、$R/(\tau^e)$ は $1$ 次元の商 $(\tau^i)/(\tau^{i+1})\cong R/(\tau)=k$ を $e$ 個重ねたものなので
$$ I(P,K\cap F)=\dim_k\mathcal{O}/(F_1,K)=\dim_kR/(\bar K)=\operatorname{ord}\bar K $$
である($\bar K=0$ なら両辺とも $\infty$)。仮定 $I(P,H\cap F)\ge I(P,G\cap F)$ は $\operatorname{ord}\bar H\ge\operatorname{ord}\bar G$ となり、$\bar G\ne0$(共通成分がない)なので $\bar H\in(\bar G)$ である。$R=\mathcal{O}/(F_1)$ に戻すと $H\in(F_1,G)=(F,G)$ である。$\square$

残りの交わりを切る曲線

$F,G,H$ を射影平面曲線とし、$F$ は $G$ とも $H$ とも共通成分をもたないとする。次のどちらかが成り立てば、$B\bullet F=H\bullet F-G\bullet F$ となる次数 $\deg H-\deg G$ の形式 $B$ がある($B$ が $0$ でない定数のときは $B\bullet F=0$ と約束する)。

  1. $F$ と $G$ が $\deg F\cdot\deg G$ 個の相異なる点で交わり、$H$ はそのすべてを通る。
  2. $F\cap G$ の点はすべて $F$ の単純点で、$H\bullet F\ge G\bullet F$ である。

1 の場合、Bézoutの定理 の系「共有点の個数と重複度」の 3 により各交点で横断的に交わるので、prop-mnt-criteria の 1 が使える。2 の場合は prop-mnt-criteria の 2 が使える。どちらでも thm-mnt-main により $H=AF+BG$ となる形式 $A,B$ があり、節「交点サイクル」の計算から $H\bullet F=B\bullet F+G\bullet F$ である。$B$ が $F$ と共通成分をもてば $H=AF+BG$ も $F$ と共通成分をもつので、$B\bullet F$ は定まる。$\deg(H\bullet F)>\deg(G\bullet F)$ なら $B$ は定数でない(等しければ $B$ は $0$ でない定数で、$H\bullet F=G\bullet F$)。$\square$

応用:9 つの点と六角形

3 次曲線どうしは $3\cdot3=9$ 点で交わる。その 9 点の一部を別の曲線が通ると、残りの点について何が言えるかを、cor-mnt-residual で調べる(Ful08 §5.6、p. 62–64)。

3 次曲線と 2 次曲線の 9 つの点

$C,C'$ を 3 次曲線、$Q$ を 2 次曲線とし、$C'\bullet C=\sum_{i=1}^9P_i$、$Q\bullet C=\sum_{i=1}^6P_i$ で、$P_1,\dots,P_6$ は $C$ の単純点とする(点は相異なるとは限らない)。このとき $P_7,P_8,P_9$ は 1 本の直線の上にある。より正確に、$L\bullet C=P_7+P_8+P_9$ となる直線 $L$ がある。

cor-mnt-residual の 2 を $F=C$、$G=Q$、$H=C'$ に使う。$C\cap Q$ の点は $P_1,\dots,P_6$ で、$C$ の単純点であり、$C'\bullet C\ge Q\bullet C$ である。よって次数 $3-2=1$ の形式 $L$ で $L\bullet C=C'\bullet C-Q\bullet C=P_7+P_8+P_9$ となるものがあり、次数が正なので $L$ は直線である。$\square$

Pascal の定理

$Q$ を既約な 2 次曲線、$P_1,\dots,P_6$ を $Q$ の上の相異なる 6 点とし、$P_iP_j$ で $P_i$ と $P_j$ を通る直線を表す。3 組の対辺の交点
$$ X:=P_1P_2\cap P_4P_5,\qquad Y:=P_2P_3\cap P_5P_6,\qquad Z:=P_3P_4\cap P_6P_1 $$
は 1 本の直線の上にある。

既約な 2 次曲線と直線の共有点は、Bézout の定理から 2 個以下なので、6 点のどの 3 点も同じ直線の上にない。したがって辺の 6 本の直線は相異なり、$X,Y,Z$ は定まる。$C:=P_1P_2\cdot P_3P_4\cdot P_5P_6$、$C':=P_2P_3\cdot P_4P_5\cdot P_6P_1$ とおく。異なる 2 直線は 1 点で交点数 $1$ で交わるので、$C'\bullet C$ は 9 組の直線の交点の和で、
$$ C'\bullet C=P_1+P_2+\cdots+P_6+X+Y+Z $$
である(たとえば $P_1P_2\cap P_2P_3=P_2$、$P_1P_2\cap P_6P_1=P_1$、$P_1P_2\cap P_4P_5=X$)。直線 $P_1P_2$ と $Q$ の交点は $P_1,P_2$ の 2 点で、交点数の和が $2$ なのでそれぞれ $1$ である。よって $Q\bullet C=P_1+\cdots+P_6$ である。$P_1$ は $C$ の 3 本の直線のうち $P_1P_2$ だけの上にあるので $C$ の単純点で、ほかの $P_i$ も同じである。prop-mnt-cubic-conic により $X,Y,Z$ は 1 本の直線の上にある。$\square$

実数の平面の楕円・放物線・双曲線は、方程式の $3\times3$ の係数行列の行列式が $0$ でないので、複素数の範囲でも 2 本の直線の積に分解しない(2 直線の積なら係数行列の階数は $2$ 以下)。したがって cor-mnt-pascal を $k=\mathbb{C}$ で使え、実の六角形の $X,Y,Z$ のうち 2 点が異なれば、それらを通る直線は実の直線なので、3 点は実の射影平面で 1 本の直線の上にある。対辺が平行な場合は交点が無限遠点になる。円の場合の高校数学による証明と、3 次式の恒等式による証明は Pascalの定理 にある。

Pappus の定理

相異なる 2 直線 $\ell,m$ の上に、$\ell\cap m$ と異なる相異なる 3 点 $A,B,C\in\ell$ と $A',B',C'\in m$ をとる。このとき $AB'\cap A'B$、$B'C\cap BC'$、$CA'\cap C'A$ は 1 本の直線の上にある。

prf-cor-mnt-pascal で $Q$ を 2 直線の積 $\ell m$ に、六角形を $A,B',C,A',B,C'$ に替える。各辺は $\ell$ の点と $m$ の点を結ぶので、$\ell$ とも $m$ とも異なり、6 点のうちちょうど 2 点を通る。したがって $C:=AB'\cdot CA'\cdot BC'$ と $C':=B'C\cdot A'B\cdot C'A$ の 6 本の直線は相異なり、$C'\bullet C$ は 6 点と 3 つの対辺の交点の和、$Q\bullet C$ は 6 点の和で、6 点は $C$ の単純点である。prop-mnt-cubic-conic から結論が従う。$\square$

Pappus の定理の高校数学による証明は Pappusの六角形定理 にある。

Cayley–Bacharach の定理

既約な 3 次曲線の上の 9 つの点

$C$ を既約な 3 次曲線、$C',C''$ を 3 次曲線とする。$C'\bullet C=\sum_{i=1}^9P_i$ で $P_i$ はすべて $C$ の単純点(相異なるとは限らない)とし、$C''\bullet C=\sum_{i=1}^8P_i+R$ とする。このとき $R=P_9$ である。

(Ful08 §5.6 Proposition 3、p. 63。)

$R\ne P_9$ と仮定する。既約な 3 次曲線の多重点は高々 1 つである(2 つあれば、それらを通る直線と $C$ の交点数の和が $2+2>3$ となり Bézoutの定理 に反する)。$P_9$ を通る直線で、$R$ も $C$ の多重点も通らないもの $L$ をとる($P_9$ を通る直線は無限にある)。$L$ は既約な $C$ の成分でないので $L\bullet C=P_9+S+T$ と書け、$S,T$ は $C$ の単純点である。
$$ (LC'')\bullet C=P_9+S+T+\sum_{i=1}^8P_i+R=C'\bullet C+R+S+T\ \ge\ C'\bullet C $$
で、$C\cap C'$ の点はすべて $C$ の単純点なので、cor-mnt-residual の 2($F=C$、$G=C'$、$H=LC''$)により、次数 $1$ の $L'$ で $L'\bullet C=R+S+T$ となるものがある。$S\ne T$ なら $L$ と $L'$ はどちらも $S,T$ を通るので $L=L'$ である。$S=T$ なら、$L$ と $L'$ はどちらも単純点 $S$ で $C$ との交点数が $2$ 以上なので、交点数の性質 (v) の等号の条件から、どちらも $S$ での $C$ の接線であり、$L=L'$ である。すると $L\bullet C=L'\bullet C$ から $R=P_9$ となり、仮定に反する。$\square$

$C$ が既約とは限らない場合でも、9 点が相異なるなら同じ結論が成り立つ。

Cayley–Bacharach の定理(3 次曲線)

2 つの 3 次曲線 $C_1,C_2$ が相異なる 9 点 $P_1,\dots,P_9$ で交わるとする。$P_1,\dots,P_8$ を通る 3 次曲線は $P_9$ も通る。

要点:$P_1,\dots,P_8$ を通る 3 次の形式の空間 $V$ が 2 次元であることを、Bézoutの定理 で示す。そうなら $V$ は $C_1,C_2$ で張られ、その元はすべて $P_9$ で $0$ になる。

詳しい証明を開く

$C_1,C_2$ は共通成分をもたないので比例せず、$V$ は 2 次元以上である。準備として 2 つのことを確かめる。(a) 9 点のうち 4 点が同じ直線の上にあることはない。直線 $M$ が 4 点を通れば、$M$ と $C_1$ は $3$ 個より多くの共有点をもつので、Bézoutの定理 の系「共有点の個数と重複度」により $M$ は $C_1$ の成分であり、$C_2$ の成分でもあって、共通成分になる。(b) 9 点のうち 7 点が同じ 2 次曲線 $Q$ の上にあることはない。$7>6$ なので $Q$ は $C_1$ とも $C_2$ とも共通成分をもつ。$Q$ が既約なら共通成分になり、$Q$ が 2 直線の積なら 7 点のうち 4 点が一方の直線の上にあり (a) に反する。

$\dim V\ge3$ と仮定して矛盾を導く。このとき任意の 2 点 $R,S$ について、$R,S$ でも $0$ になる $0$ でない $D\in V$ がある(1 次の条件を 2 つ加えても $0$ でない解が残る)。

場合 1:$P_1,\dots,P_8$ のうち 3 点、たとえば $P_1,P_2,P_3$ が直線 $M$ の上にある。(a) により $P_4,\dots,P_8$ は $M$ の上になく、そのどの 4 点も同じ直線の上にないので、Bézoutの定理 の系「5 点を通る 2 次曲線」により、$P_4,\dots,P_8$ を通る 2 次曲線 $Q_0$ はただ 1 つである。$M$ の上の $P_1,P_2,P_3$ と異なる点 $R$ と、$M$ にも $Q_0$ にもない点 $S$ をとり、$D$ を上のようにとる。$D$ と $M$ は 4 点を共有するので $D=M\cdot D'$ と書け、2 次曲線 $D'$ は $P_4,\dots,P_8$ と $S$ を通る。一意性から $D'=Q_0$ だが、$S\notin Q_0$ に反する。

場合 2:$P_1,\dots,P_8$ のどの 3 点も同じ直線の上になく、そのうち 6 点、たとえば $P_1,\dots,P_6$ が 2 次曲線 $Q$ の上にある。どの 3 点も同じ直線の上にないので $Q$ は既約である。$Q$ の上の $P_1,\dots,P_6$ と異なる点 $R$ と、$Q$ にも直線 $P_7P_8$ にもない点 $S$ をとり、$D$ をとる。$D$ と既約な $Q$ は 7 点を共有するので $D=Q\cdot M'$ と書け、直線 $M'$ は $P_7,P_8$ を通る((b) により $P_7,P_8\notin Q$)ので $M'=P_7P_8$ である。$S$ は $Q$ にも $M'$ にもないので $D(S)\ne0$ となり、矛盾する。

場合 3:$P_1,\dots,P_8$ のどの 3 点も同じ直線の上になく、どの 6 点も同じ 2 次曲線の上にない。直線 $M:=P_1P_2$ の上に $P_1,P_2$ と異なる 2 点 $R,S$ をとり、$D$ をとる。$D$ と $M$ は 4 点を共有するので $D=M\cdot D'$ で、2 次曲線 $D'$ は $M$ の上にない 6 点 $P_3,\dots,P_8$ を通り、仮定に反する。

以上により $\dim V=2$ で、$V$ は $C_1,C_2$ で張られる。$P_1,\dots,P_8$ を通る 3 次曲線 $D=aC_1+bC_2$ は $P_9$ も通る。$\square$

prop-mnt-cb-irreducible は、3 次曲線 $C$ の単純点の上の「加法」(2 点 $P,Q$ を通る直線と $C$ の 3 つ目の交点を使う演算)が結合法則をみたすことの証明に使われ、楕円曲線 の群の構造を与える(この記事では証明しない。Ful08 §5.6 Proposition 4、p. 63–64)。

反例:条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
各交点での Noether の条件$F=YZ-X^2$、$G=Y$、$H=X$$H$ は $F\cap G$ を通るが $H=AF+BG$ と書けない
無限遠点を含むすべての交点$F=Y$、$G=Y-Z$、$H=X$$x\in(y,\,y-1)$ だが $H=AF+BG$ と書けない
係数体が代数閉$k=\mathbb{R}$、$F=X^2+Y^2+Z^2$、$G=Z$、$H=X$実の交点はなく条件は空だが $H=AF+BG$ と書けない
判定法 2 の単純点$F=y^2-x^3$、$G=x$、$H=y$(原点)$I(P,H\cap F)\ge I(P,G\cap F)$ から Noether の条件
9 点が 2 つの 3 次曲線の交わり格子点 $\{0,1,2\}^2$ の 8 点と点 $(3,3)$8 点を通る 3 次曲線が 9 点目も通る

各行の反例が破る条件と、崩れる結論を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:$F\cap G$ は $[0:0:1]$ だけで、$z=1$ として $I=\dim\mathcal{O}/(y-x^2,y)=\dim\mathcal{O}/(x^2,y)=2$ である。$H=X$ はこの点を通るが、$x\notin(x^2,y)$ なので Noether の条件は成り立たない。次数から $A=0$、$B$ は定数で、$X=bY$ とは書けない。$[0:0:1]$ は $F$ の単純点だが、$H\bullet F=[0:0:1]+[0:1:0]$ で、判定法 2 の交点数の条件 $I([0:0:1],H\cap F)\ge I([0:0:1],G\cap F)=2$ が破れている(左辺は $1$)。「交点を通る」だけでは、接する交点での Noether の条件は出ない。

2 行目:アフィン平面では $y$ と $y-1$ は交わらず、$x=x\cdot1=x(y-(y-1))\in(y,y-1)$ である。射影平面では交点 $[1:0:0]$ があり、$X=1$ で非斉次化すると $F_*=y$、$G_*=y-z$、$H_*=1$ で、$1\notin(y,y-z)$ なので Noether の条件が破れる。実際 $X=aY+b(Y-Z)$ とは書けない。アフィンの条件だけでは、次数のそろった等式が出ない。

3 行目:$X^2+Y^2+Z^2=0$、$Z=0$ をみたす実の点はないが、$\mathbb{C}$ では $[1:\pm i:0]$ で交わり、そこで $H_*=1$ は $(F_*,G_*)$ に属さない。証明で使った「大域の商は局所の商の直積」が代数閉でない体では成り立たない。

4 行目:原点は $F$ の尖点(多重点)で、$I(P,H\cap F)=I(P,x^3\cap y)=3\ge2=I(P,y^2\cap x)=I(P,G\cap F)$ だが、$(y^2-x^3,x)=(y^2,x)$ に $y$ は属さない。

5 行目:3 次曲線 $x(x-1)(x-2)$ と $y(y-1)(y-2)$ は格子点 9 個で交わる。8 点 $\{0,1,2\}^2\setminus\{(2,2)\}$ と $(3,3)$ の 9 点は 2 つの 3 次曲線の交わりではない。$x(x-1)(x-2)$ は 8 点を通るが $(3,3)$ で $6\ne0$ である。一方 thm-mnt-cayley-bacharach により、8 点を通る 3 次曲線はすべて $(2,2)$ を通る。

関連項目

参考文献

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