楕円の周の長さ(perimeter of an ellipse)とは、楕円 $\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1$($a,b>0$)を 1 周する曲線の長さで、$L=\int_0^{2\pi}\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}\,dt$ と表される。$a\ne b$ のとき被積分関数の原始関数は初等関数では書けない(第 2 種の完全楕円積分)が、$\pi(a+b)\le L\le\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$ が成り立ち、どちらの等号も $a=b$ のときに限る。下の評価は被積分関数を各点で $a\sin^2t+b\cos^2t$ と比べて示せ、等周不等式から出る $L\ge2\pi\sqrt{ab}$ より強い。$a=3$、$b=2$ では $L=15.8654\ldots$ である。
円の周の長さは $2\pi r$ である。楕円の周の長さはどうだろうか。媒介変数表示と曲線の長さ の公式で積分に書いてみる。
楕円の点を $(x,y)=(3\cos t,\ 2\sin t)$($0\le t\le2\pi$)と表す。$\dfrac{dx}{dt}=-3\sin t$、$\dfrac{dy}{dt}=2\cos t$ なので、周の長さは
$$
L=\int_0^{2\pi}\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2}\,dt=\int_0^{2\pi}\sqrt{9\sin^2t+4\cos^2t}\,dt=\int_0^{2\pi}\sqrt{4+5\sin^2t}\,dt
$$
である($4\cos^2t=4-4\sin^2t$ を使った)。
円 $x^2+y^2=r^2$ なら同じ計算で被積分関数は $\sqrt{r^2\sin^2t+r^2\cos^2t}=r$ となり、$L=2\pi r$ が出る。ところが $\sqrt{4+5\sin^2t}$ は、高校で習う関数では原始関数が書けないことが知られている(rem-peri-elliptic。この記事では証明しない)。数値積分で求めると
$$
L=15.8654\ldots
$$
である(ex-peri-simpson の計算)。
原始関数が書けないなら、せめて $a$、$b$ の簡単な式で上下から挟みたい。楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ に近い円を 3 つ考えてみる。
$a=3$、$b=2$ で、次の 3 つの円の周を求める。
a=3、b=1 の楕円(黒)と、半径 (a+b)/2 の円(青)、半径 √((a²+b²)/2) の円(赤の破線)、面積が同じ円(緑の点線)。凡例の数は周の長さ
図 1 は $a=3$、$b=1$ の場合である。楕円の周 $13.364\ldots$ は、やはり $\pi(a+b)=12.566\ldots$ と $\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}=14.049\ldots$ の間にある。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 媒介変数表示の曲線の長さ | 周の長さの積分 $L(a,b)$ | 第 2 種の完全楕円積分 |
| 2 乗して比べる不等式 | 被積分関数の下からの評価 | 各点での Cauchy–Schwarz の不等式 |
| 分散が $0$ 以上 | 積分の 2 乗の平均による上からの評価 | 積分による内積の Cauchy–Schwarz の不等式 |
| Simpson の公式 | 数値積分 | 周期関数の数値積分 |
以下、$a>0$、$b>0$ とする($a\ge b$ とは限らない)。
楕円 $E:\ \dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ を $P(t)=(a\cos t,\ b\sin t)$($0\le t\le2\pi$)で表す。$t$ が $0$ から $2\pi$ まで増えると、$P(t)$ は $E$ を反時計回りにちょうど 1 周する。$E$ の 周の長さ を
$$
L(a,b)=\int_0^{2\pi}\lvert P'(t)\rvert\,dt=\int_0^{2\pi}\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}\,dt
$$
で定める。被積分関数 $\lvert P'(t)\rvert=\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}$ を、点 $P(t)$ の 速さ とよぶ。
これは 媒介変数表示と曲線の長さ の曲線の長さの公式を、1 周だけたどる媒介変数表示に当てはめたものである。$t$ は中心から見た角ではない(楕円の共役直径 の例「媒介変数と中心から見た角」)が、長さの公式には媒介変数の取り方は関係しない。
$a>0$、$b>0$ のとき
$$
\pi(a+b)\le L(a,b)\le\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}
$$
である。左の等号も右の等号も、$a=b$ のときに限って成り立つ。
証明の前に、被積分関数を見ておく。図 2 は $a=3$、$b=2$ の速さ $f(t)=\sqrt{9\sin^2t+4\cos^2t}$ のグラフである。速さは $t=0,\pi$ で最小の $b=2$、$t=\dfrac\pi2,\dfrac{3\pi}2$ で最大の $a=3$ をとる。下からの評価は、速さのグラフのすぐ下にある関数 $3\sin^2t+2\cos^2t$ を積分したもの、上からの評価は速さの「2 乗の平均の平方根」を使ったものである。
a=3、b=2 の速さ(黒)と、そのすぐ下の 3sin²t+2cos²t(青の破線)、2 乗の平均の平方根 √6.5(赤)、速さの平均(灰色の点線)
$f(t)=\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}$ とおく。$L=L(a,b)=\displaystyle\int_0^{2\pi}f(t)\,dt$ である。
段 1(各点での下からの評価)。$g(t)=a\sin^2t+b\cos^2t$ とおく。$f(t)\ge0$、$g(t)>0$ なので、$f(t)\ge g(t)$ を示すには $f(t)^2\ge g(t)^2$ を示せばよい。$s=\sin^2t$、$c=\cos^2t$($s+c=1$)とおくと
$$
f(t)^2-g(t)^2=a^2s+b^2c-(as+bc)^2=a^2s(1-s)+b^2c(1-c)-2abs\,c
$$
である。$1-s=c$、$1-c=s$ なので
$$
f(t)^2-g(t)^2=a^2sc+b^2sc-2ab\,sc=(a-b)^2\sin^2t\cos^2t\ge0
$$
である。よってすべての $t$ で $f(t)\ge g(t)$ である。
段 2(下の評価)。段 1 の不等式を $0$ から $2\pi$ まで積分する。2 倍角の公式 $\sin^2t=\dfrac{1-\cos2t}2$、$\cos^2t=\dfrac{1+\cos2t}2$ から $\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin^2t\,dt=\int_0^{2\pi}\cos^2t\,dt=\pi$ なので
$$
L=\int_0^{2\pi}f(t)\,dt\ge\int_0^{2\pi}\bigl(a\sin^2t+b\cos^2t\bigr)\,dt=\pi a+\pi b=\pi(a+b)
$$
である。
段 3(上の評価)。$c=\dfrac L{2\pi}$(速さの平均)とおく。$(f(t)-c)^2\ge0$ を積分すると
$$
0\le\int_0^{2\pi}\bigl(f(t)-c\bigr)^2dt=\int_0^{2\pi}f(t)^2\,dt-2c\int_0^{2\pi}f(t)\,dt+2\pi c^2
$$
である。右辺の第 1 項は、段 2 と同じ積分で $\displaystyle\int_0^{2\pi}(a^2\sin^2t+b^2\cos^2t)\,dt=\pi(a^2+b^2)$、第 2 項と第 3 項は $-2cL+2\pi c^2=-\dfrac{L^2}\pi+\dfrac{L^2}{2\pi}=-\dfrac{L^2}{2\pi}$ である。よって
$$
0\le\pi(a^2+b^2)-\frac{L^2}{2\pi},\qquad\text{つまり}\qquad L^2\le2\pi^2(a^2+b^2)
$$
で、$L>0$ なので $L\le\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$ である。
段 4(等号の条件)。$a=b$ なら、lem-peri-basic の (1) により $L=2\pi a$ で、$\pi(a+b)=2\pi a$、$\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}=2\pi a$ なので、両方の等号が成り立つ。
逆に、左の等号が成り立つとする。$h(t)=f(t)-g(t)$ は連続で、段 1 により $h(t)\ge0$、段 2 により $\displaystyle\int_0^{2\pi}h(t)\,dt=0$ である。このとき $h$ はいつも $0$ である(下の「詳細」)。$t=\dfrac\pi4$ で $f^2-g^2=(a-b)^2\cdot\dfrac12\cdot\dfrac12=0$ なので $a=b$ である。
右の等号が成り立つとすると、段 3 の積分 $\displaystyle\int_0^{2\pi}(f(t)-c)^2\,dt$ が $0$ で、同じ理由で $(f(t)-c)^2$ はいつも $0$、つまり $f$ は定数 $c$ である。$f(0)=b$、$f\!\left(\dfrac\pi2\right)=a$ なので $a=b$ である。$\square$
連続関数 $h$ が区間 $[0,2\pi]$ でいつも $h\ge0$ で、積分が $0$ なら、$h$ はいつも $0$ である。もし $h(t_0)>0$ となる $t_0$ があれば、連続性から $t_0$ を含む長さ $\delta>0$ の区間 $I$ で $h(t)>\dfrac{h(t_0)}2$ となる。$h\ge0$ なので、積分は $I$ の上の積分以上で、$\displaystyle\int_0^{2\pi}h\ge\frac{h(t_0)}2\cdot\delta>0$ となり、積分が $0$ であることに反する。
段 3 は、積分による内積の Cauchy–Schwarz の不等式 $\left(\displaystyle\int_0^{2\pi}f\cdot1\,dt\right)^2\le\int_0^{2\pi}f^2\,dt\int_0^{2\pi}1^2\,dt$ そのものである(Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の積分による内積の例)。ここでは、平均 $c$ からのずれの 2 乗の積分が $0$ 以上であることから直接示した。段 1 も、ベクトル $(a\sin t,b\cos t)$ と $(\sin t,\cos t)$ の Cauchy–Schwarz の不等式 $a\sin^2t+b\cos^2t\le\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}\sqrt{\sin^2t+\cos^2t}$ と読める。
a=1 に固定して b を 0 から 1 まで動かしたときの周の長さ(黒)と、上の評価(赤の破線)、下の評価(青)、面積が同じ円の周(緑の点線)
図 3 のように、3 本の曲線は $b=1$(円)で 1 点に集まる。$b$ が $1$ に近いほど、どちらの評価も周の長さによく合う。
等周不等式(高校数学) の例「楕円の周の長さの下からの評価」は、等周不等式から $L\ge2\pi\sqrt{ab}$ を導いている。相加平均と相乗平均の関係 $\dfrac{a+b}2\ge\sqrt{ab}$ から $\pi(a+b)\ge2\pi\sqrt{ab}$ なので、thm-peri-main の下の評価の方が強い($a\ne b$ なら真に強い)。$a=3$、$b=2$ では $2\pi\sqrt6=15.390\ldots$ で、$\pi(a+b)=15.707\ldots$ より $0.317\ldots$ 小さい。等周不等式はどんな閉曲線にも使える代わりに、楕円に特有の情報を使っていない。
周の長さを精しく求めるには、数値積分を使う。lem-peri-basic の (4) により、区間 $\left[0,\dfrac\pi2\right]$ の積分を 4 倍すればよい。
$f(t)=\sqrt{9\sin^2t+4\cos^2t}$ とし、$\left[0,\dfrac\pi2\right]$ を $N$ 等分($N$ は偶数)して Simpson の公式(台形公式とSimpsonの公式(高校数学))を使い、4 倍する。$N=2$ では刻み $h=\dfrac\pi4$ で、$f(0)=2$、$f\!\left(\dfrac\pi4\right)=\sqrt{6.5}=2.5495\ldots$、$f\!\left(\dfrac\pi2\right)=3$ から
$$
4\cdot\frac h3\left\{f(0)+4f\!\left(\frac\pi4\right)+f\!\left(\frac\pi2\right)\right\}=\frac\pi3\,(2+10.198\ldots+3)=15.915\ldots
$$
である。$N$ を増やすと次のようになる。
| $N$ | Simpson の公式の 4 倍 | 誤差 |
|---|---|---|
| $2$ | $15.9153\ldots$ | $5.0\times10^{-2}$ |
| $4$ | $15.8660\ldots$ | $6.4\times10^{-4}$ |
| $8$ | $15.865439\ldots$ | $3.5\times10^{-7}$ |
| $16$ | $15.8654395893\ldots$ | $3\times10^{-13}$ |
$N=16$ で小数第 10 位まで $L=15.8654395893\ldots$ が求まる。誤差は精度の高い数値積分(計算機の多倍長計算)で求めた値との差である。
誤差が $N$ を 2 倍するごとに急に小さくなるのは、被積分関数が滑らかで周期的だからである。この速さの理由は、この記事では証明しない。
周の長さの積分は高校で習う関数では書けない(rem-peri-elliptic)ので、精しい近似式や級数が研究されてきた。Wei26 は次の式を挙げている。どれもこの記事では証明せず、数値で確かめるだけにする。
$h=\dfrac{a-b}{a+b}$ とおく。周の長さは級数
$$
L=\pi(a+b)\left(1+\frac14h^2+\frac1{64}h^4+\frac1{256}h^6+\cdots\right)
$$
で表される。第 1 項だけをとったものが thm-peri-main の下の評価 $\pi(a+b)$ で、括弧の中の項はどれも $0$ 以上である。近似式としては、上の評価と同じ $\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$ のほか、Ramanujan による
$$
\pi\Bigl(3(a+b)-\sqrt{(a+3b)(3a+b)}\Bigr),\qquad\pi(a+b)\left(1+\frac{3h^2}{10+\sqrt{4-3h^2}}\right)
$$
が挙げられている。2 つ目の式は、Wei26 では $h^2$ の位置に $h$ と書かれているが、そこでの $h$ は $\left(\dfrac{a-b}{a+b}\right)^2$ と読む必要がある($h=\dfrac{a-b}{a+b}$ をそのまま入れると、$a=3$、$b=2$ で $16.50\ldots$ となり合わない)。下の表の値は上の $h^2$ の形で計算した。
| 式 | $a=3$、$b=2$($h=0.2$) | 誤差 | $a=3$、$b=1$($h=0.5$) | 誤差 |
|---|---|---|---|---|
| 周の長さ $L$ | $15.86543958\ldots$ | — | $13.36489322\ldots$ | — |
| $2\pi\sqrt{ab}$(面積が同じ円) | $15.3906$ | $-0.47$ | $10.8828$ | $-2.48$ |
| $\pi(a+b)$(下の評価) | $15.7080$ | $-0.16$ | $12.5664$ | $-0.80$ |
| $\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$(上の評価) | $16.0190$ | $+0.15$ | $14.0496$ | $+0.68$ |
| 級数の 2 項まで | $15.86504$ | $-4.0\times10^{-4}$ | $13.35177$ | $-1.3\times10^{-2}$ |
| 級数の 3 項まで | $15.865436$ | $-4.0\times10^{-6}$ | $13.36404$ | $-8.5\times10^{-4}$ |
| Ramanujan の 1 つ目 | $15.865438$ | $-2.0\times10^{-6}$ | $13.36444$ | $-4.5\times10^{-4}$ |
| Ramanujan の 2 つ目 | $15.86543958\ldots$ | $-3.9\times10^{-11}$ | $13.3648928$ | $-4.4\times10^{-7}$ |
$h$ が小さい(楕円が円に近い)ほど、どの式も正確になる。Ramanujan の 2 つ目の式は、$a=3$、$b=2$ では小数第 10 位まで合う。
円の周 $2\pi r$ からの類推で楕円の周を求めようとすると、どこで誤るかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 長さを面積と同じく 1 次変換の拡大率で求める | $a=3$、$b=2$ で $2\pi a\cdot\dfrac ba=2\pi b$ | $L=2\pi b$ |
| 楕円を「平均の半径」の円とみなす($a\ne b$) | $a=3$、$b=2$ で $\pi(a+b)=15.707\ldots$ | $L=\pi(a+b)$ |
| 根号の中を平均してから開く($a\ne b$) | $a=3$、$b=2$ で $\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}=16.019\ldots$ | $L=\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$ |
楕円は、円 $x^2+y^2=a^2$ の $y$ 座標を $\dfrac ba$ 倍したものである。面積はこの変換で一律に $\dfrac ba$ 倍になり、楕円の面積は $\pi a^2\cdot\dfrac ba=\pi ab$ である(1次変換と行列式:面積の拡大率)。同じことを周で行うと $2\pi a\cdot\dfrac ba=2\pi b=12.566\ldots$($a=3$、$b=2$)となるが、正しい周は $15.865\ldots$ である。
理由は、長さの拡大率が場所によって違うことにある。円の点 $(a\cos t,a\sin t)$ の速さは $a$、楕円の点 $(a\cos t,b\sin t)$ の速さは $\sqrt{a^2\sin^2t+b^2\cos^2t}$ で、比は $\sqrt{\sin^2t+\dfrac{b^2}{a^2}\cos^2t}$ である。これは $t=0$(縦に進む所)で $\dfrac ba$、$t=\dfrac\pi2$(横に進む所)で $1$ になる。たとえば円の $-0.2\le t\le0.2$ の弧と $\dfrac\pi2-0.2\le t\le\dfrac\pi2+0.2$ の弧はどちらも長さ $0.4a=1.2$ だが、楕円に移すと長さは $0.806\ldots$ と $1.195\ldots$ になる(数値積分)。
半径 3 の円の上で、長さの等しい 2 つの弧(赤と青)
左の図の y 座標を 2/3 倍すると、赤の弧は短くなり、青の弧はほとんど長さが変わらない
$\pi(a+b)$ は半径 $\dfrac{a+b}2$ の円の周、$\pi\sqrt{2(a^2+b^2)}$ は半径 $\sqrt{\dfrac{a^2+b^2}2}$ の円の周である。thm-peri-main の等号の条件により、$a\ne b$ なら $L$ はどちらとも等しくない。$a=3$、$b=2$ では $L=15.865\ldots$ に対して $15.707\ldots$ と $16.019\ldots$ である。後者は、速さの 2 乗の平均 $\dfrac1{2\pi}\displaystyle\int_0^{2\pi}f^2\,dt=\dfrac{a^2+b^2}2$ の平方根を「平均の速さ」とみなした値で、根号と平均の順を入れかえると等しくならない(図 2 の赤と灰色の線の差)。
$a\ge b$ とし、$e=\sqrt{1-\dfrac{b^2}{a^2}}$(離心率、$0\le e<1$)とおく。lem-peri-basic の (4) で置換 $t=\dfrac\pi2-\theta$ をすると
$$
L=4\int_0^{\pi/2}\sqrt{a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta}\,d\theta=4a\int_0^{\pi/2}\sqrt{1-e^2\sin^2\theta}\,d\theta
$$
となる($a^2\cos^2\theta+b^2\sin^2\theta=a^2-(a^2-b^2)\sin^2\theta=a^2(1-e^2\sin^2\theta)$)。右の積分を $e$ の関数とみたものを 第 2 種の完全楕円積分 $E(e)$ といい、$L=4aE(e)$ である(Wei26 にもこの形で書かれている)。$0< e<1$ のとき、$\sqrt{1-e^2\sin^2\theta}$ の原始関数は初等関数(多項式・指数・対数・三角関数とその逆関数を、四則と合成で組み合わせた関数)では書けない。この記事では証明しない(初等関数で表せない原始関数)。
$e$ を 0 に近づけると楕円は円に近づき、$E(e)$ は $\dfrac\pi2$ に近づく。rem-peri-series の級数は、周の長さ $L=4aE(e)$ を $\pi(a+b)$ と $h$ のべき級数の積で表したものにあたる。同じ種類の積分は レムニスケート の弧長にも現れる。一般の楕円積分は大学向けの 楕円積分 で扱う。
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