Einstein方程式

同義語:Einstein 方程式Einstein field equationsEinsteinの場の方程式アインシュタイン方程式重力場の方程式

概要

Einstein方程式(Einstein field equations)とは、時空の計量 $g$ と物質のエネルギー運動量テンソル $T$ を結ぶ方程式 $\mathrm{Ric}-\frac12Sg+\Lambda g=\kappa T$ である。Bianchi 恒等式から $T$ の発散は $0$ でなければならず、次元 $n\ge3$ では真空の方程式は Einstein 条件 $\mathrm{Ric}=\frac{2\Lambda}{n-2}g$ と同値になる。4 次元の計量 $-h\,dt^2+h^{-1}dr^2+r^2g_{S^2}$ が真空の方程式を満たすのは $h=1-\frac{2m}{r}-\frac{\Lambda}{3}r^2$ のときに限り、Schwarzschild 解はその例である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 時空, リッチテンソル, スカラー曲率

Einstein 方程式(Einstein field equations)は、一般相対論で時空の計量 $g$ と物質の分布を結びつける方程式
$$ \mathrm{Ric}-\frac12S\,g+\Lambda g=\kappa T $$
である。左辺は リッチテンソル $\mathrm{Ric}$ と スカラー曲率 $S$ から作る Einstein テンソルに宇宙定数 $\Lambda$ の項を加えたもの、右辺の $T$ は物質のエネルギーと運動量の分布を表すエネルギー運動量テンソル、$\kappa$ は Newton の重力定数 $G_{\mathrm N}$ による定数 $8\pi G_{\mathrm N}$(光速を $1$ とする単位)である。曲率が物質の分布で決まり、物質は曲がった時空の測地線に沿って動く、というのが一般相対論の基本の構図である。
この記事では、Bianchi 恒等式から右辺の発散が $0$ でなければならないこと、トレースをとって方程式を $\mathrm{Ric}$ について解いた形に書き直せること、次元が 3 以上なら物質のない場合の方程式が Einstein 条件 $\mathrm{Ric}=\lambda g$ と同値であることを示す。そのうえで、球対称で静的な形の計量 $-h(r)\,dt^2+h(r)^{-1}dr^2+r^2g_{S^2}$ が真空の方程式を満たすのは $h(r)=1-\frac{2m}r-\frac\Lambda3r^2$ のときに限ることを証明し、Schwarzschild 解をその特別な場合として得る。また一様等方な宇宙の膨張を表す方程式を導く。

定義

以下 $(M,g)$ は $n$ 次元($n\ge2$)の Lorentz 多様体(符号 $(-,+,\dots,+)$)とし、時空 の記事と同じ規約をとる。曲率テンソルを $R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z$、リッチテンソルを $\mathrm{Ric}(Y,Z)=\operatorname{tr}(X\mapsto R(X,Y)Z)$、スカラー曲率を $S=\operatorname{tr}_g\mathrm{Ric}$ とする(リッチテンソル と同じ流儀)。対称な $(0,2)$ 型テンソル場 $T$ のトレースを $\tau:=\operatorname{tr}_gT=g^{ab}T_{ab}$ と書く。

Einstein 方程式

$(M,g)$ の Einstein テンソル を
$$ G:=\mathrm{Ric}-\frac12S\,g $$
と定める。対称な $(0,2)$ 型テンソル場 $T$(エネルギー運動量テンソル)と定数 $\Lambda$(宇宙定数)、$\kappa>0$ に対し、
$$ G+\Lambda g=\kappa T $$
を Einstein 方程式 という。$T=0$ の場合を 真空の Einstein 方程式 という。

物理では $n=4$ で、$\kappa=8\pi G_{\mathrm N}$ とする。重力定数を $1$ とする単位では $\kappa=8\pi$ で、時空 や リッチテンソル の記事の式はこの形である。この方程式は Ein15 で与えられた(同論文 p. 845 の式 (2a)。同論文は宇宙定数のない場合で、thm-efe-trace の形に書かれ、リッチテンソルの符号の規約がこの記事と逆である)。

完全流体

未来向きの時間的なベクトル場 $u$($g(u,u)=-1$、流体の 4 元速度)と関数 $\rho,p$(エネルギー密度と圧力)に対し
$$ T=(\rho+p)\,u^\flat\otimes u^\flat+p\,g\qquad(u^\flat:=g(u,\cdot)) $$
を 完全流体 のエネルギー運動量テンソルという。$T(u,u)=(\rho+p)-p=\rho$ であり、$u$ に直交する $X$ については $T(u,X)=0$、$T(X,X)=p\,g(X,X)$ である。トレースは、$u$ と $u$ に直交する正規直交基底でとると $\tau=-\rho+(n-1)p$ である。$p=0$ の場合を ダスト(圧力のない物質)という。

基本の性質

物質の保存則が必要であること

$g$、$T$ が Einstein 方程式を満たすなら、$T$ の発散は $0$ である:$\nabla^aT_{ab}=0$。

スカラー曲率 の命題「2回縮約された第2 Bianchi 恒等式」により $\nabla^aG_{ab}=0$ である(同命題の証明は第 2 Bianchi 恒等式・曲率テンソルの対称性・$\nabla g=0$ と縮約だけを使い、計量の正定値性を使わないので、どんな擬リーマン計量でも成り立つ)。リーマン接続は計量を保つ($\nabla g=0$)ので、定数 $\Lambda$ について $\nabla^a(\Lambda g_{ab})=0$ である。よって $\kappa\nabla^aT_{ab}=\nabla^a(G_{ab}+\Lambda g_{ab})=0$ で、$\kappa>0$ から主張を得る。$\square$

$\nabla^aT_{ab}=0$ は、特殊相対論でのエネルギーと運動量の保存則(特殊相対論)を曲がった時空に移したものである。Einstein 方程式は、物質がこの保存則に従うことを方程式自身の帰結として含んでいる。

トレースを反転した形

$n\ge3$ とする。Einstein 方程式 $G+\Lambda g=\kappa T$ は
$$ \mathrm{Ric}=\kappa\Bigl(T-\frac{\tau}{n-2}\,g\Bigr)+\frac{2\Lambda}{n-2}\,g $$
と同値である。このときスカラー曲率は $S=\dfrac{2n\Lambda-2\kappa\tau}{n-2}$ である。とくに $n=4$ では $\mathrm{Ric}=\kappa\bigl(T-\frac12\tau g\bigr)+\Lambda g$ である。

$\operatorname{tr}_gg=n$、$\operatorname{tr}_gG=S-\frac n2S=-\frac{n-2}2S$ である。
Einstein 方程式を仮定してトレースをとると $-\frac{n-2}2S+n\Lambda=\kappa\tau$ なので、$n\ne2$ から $S=\frac{2n\Lambda-2\kappa\tau}{n-2}$ である。これを $\mathrm{Ric}=\kappa T-\Lambda g+\frac12Sg$ に代入すると
$$ \mathrm{Ric}=\kappa T-\Lambda g+\frac{n\Lambda-\kappa\tau}{n-2}g=\kappa\Bigl(T-\frac{\tau}{n-2}g\Bigr)+\frac{2\Lambda}{n-2}g $$
を得る。逆に右の式を仮定してトレースをとると $S=\kappa\bigl(\tau-\frac{n\tau}{n-2}\bigr)+\frac{2n\Lambda}{n-2}=\frac{2n\Lambda-2\kappa\tau}{n-2}$ であり、
$$ G+\Lambda g=\kappa T-\frac{\kappa\tau}{n-2}g+\frac{2\Lambda}{n-2}g-\frac{n\Lambda-\kappa\tau}{n-2}g+\Lambda g=\kappa T $$
となる。$\square$

真空の方程式と Einstein 条件

$n\ge3$ とする。真空の Einstein 方程式 $G+\Lambda g=0$ は
$$ \mathrm{Ric}=\frac{2\Lambda}{n-2}\,g $$
と同値である。すなわち、真空の解は Einstein 定数 $\frac{2\Lambda}{n-2}$ の Einstein 多様体(リッチテンソル の定義「Einstein 条件」)の Lorentz 版である。$n=4$ では $\mathrm{Ric}=\Lambda g$、とくに $\Lambda=0$ なら $\mathrm{Ric}=0$ である。

thm-efe-trace で $T=0$、$\tau=0$ とおけばよい。$\square$

$n=2$ では事情が違う。2 次元ではリッチテンソルは $\mathrm{Ric}=Kg$($K$ は Gauss 曲率)、$S=2K$ なので(リッチテンソル の例「2次元多様体」と同じ計算)、$G=0$ が恒等的に成り立つ。したがって 2 次元の Einstein 方程式は $\Lambda g=\kappa T$ となって計量を何も制約しない(ex-efe-counterexamples の 1 行目)。

一様等方な宇宙

$I\subset\mathbb{R}$ を開区間、$a\colon I\to(0,\infty)$ を滑らかな関数、$(F,g_F)$ を断面曲率が定数 $k$ の 3 次元の連結なリーマン多様体とし、$M=I\times F$ に $g=-dt^2+a(t)^2g_F$ を与える。これは Warped積多様体 の例「Robertson–Walker時空」である。$\dot a=da/dt$ と書く。

一様等方な宇宙の Einstein 方程式

上の $(M,g)$ と、$u=\partial_t$、$t$ だけの関数 $\rho,p$ による完全流体 $T$ について、Einstein 方程式 $G+\Lambda g=\kappa T$ は次の 2 式と同値である。
$$ 3\,\frac{\dot a^2+k}{a^2}=\kappa\rho+\Lambda,\qquad -\Bigl(2\frac{\ddot a}{a}+\frac{\dot a^2+k}{a^2}\Bigr)=\kappa p-\Lambda. $$

Warped積多様体 の例「Robertson–Walker時空」($d=3$)により、$F$ のベクトル場 $V,W$ の持ち上げ $\tilde V,\tilde W$ について
$$ \mathrm{Ric}(\partial_t,\partial_t)=-3\frac{\ddot a}{a},\qquad\mathrm{Ric}(\partial_t,\tilde V)=0,\qquad\mathrm{Ric}(\tilde V,\tilde W)=\frac{a\ddot a+2\dot a^2+2k}{a^2}\,g(\tilde V,\tilde W) $$
である。$g(\partial_t,\partial_t)=-1$ で、空間方向は 3 次元なので
$$ S=3\frac{\ddot a}{a}+3\,\frac{a\ddot a+2\dot a^2+2k}{a^2}=6\,\frac{a\ddot a+\dot a^2+k}{a^2} $$
である。よって
$$ G(\partial_t,\partial_t)=-3\frac{\ddot a}{a}+\frac12S=3\,\frac{\dot a^2+k}{a^2},\qquad G(\tilde V,\tilde W)=-\frac{2a\ddot a+\dot a^2+k}{a^2}\,g(\tilde V,\tilde W),\qquad G(\partial_t,\tilde V)=0 $$
である。一方 ex-efe-fluid から $T(\partial_t,\partial_t)=\rho$、$T(\partial_t,\tilde V)=0$、$T(\tilde V,\tilde W)=p\,g(\tilde V,\tilde W)$、また $\Lambda g(\partial_t,\partial_t)=-\Lambda$ である。対称テンソル $G+\Lambda g-\kappa T$ が $0$ であることは、$\partial_t$ と持ち上げ $\tilde V$ の組での値がすべて $0$ であることと同値で(各点の接空間はこれらで張られる)、$(\partial_t,\tilde V)$ の組は両辺とも $0$、残りの 2 つの組から主張の 2 式を得る。$\square$

第 1 式は宇宙の膨張率 $\dot a/a$ をエネルギー密度と空間の曲率 $k$ で決める式であり、宇宙論の基本の方程式である。

物質だけの平坦な膨張解

$k=0$、$\Lambda=0$、$p=0$(ダスト)とし、$I=(0,\infty)$、$a(t)=t^{2/3}$、$\rho(t)=\dfrac{4}{3\kappa t^2}$ とおく。$\dot a/a=\frac2{3t}$、$\ddot a/a=-\frac2{9t^2}$ なので、第 1 式は $3\cdot\frac4{9t^2}=\frac4{3t^2}=\kappa\rho$、第 2 式は $-\bigl(-\frac4{9t^2}+\frac4{9t^2}\bigr)=0=\kappa p$ で、prop-efe-rw により Einstein 方程式の解である。$t\to0$ で $a\to0$、$\rho\to\infty$ となる。

球対称で静的な真空解

$I\subset(0,\infty)$ を開区間、$h\colon I\to(0,\infty)$ を滑らかな関数とする。2 次元の $B:=\mathbb{R}\times I$(座標 $(t,r)$)に Lorentz 計量 $g_B:=-h(r)\,dt^2+h(r)^{-1}dr^2$ を与え、単位球面 $S^2$(計量 $g_{S^2}$)との Warped積多様体 $M:=B\times_rS^2$、すなわち
$$ g=-h(r)\,dt^2+\frac{dr^2}{h(r)}+r^2g_{S^2} $$
を考える。これは 4 次元の Lorentz 多様体である(同記事の補題「持ち上げの基本性質」の 4)。

球対称で静的な Einstein 計量

$\lambda\in\mathbb{R}$ とする。上の $(M,g)$ について $\mathrm{Ric}=\lambda g$ が成り立つことは、ある定数 $m\in\mathbb{R}$ によって $I$ の上で
$$ h(r)=1-\frac{2m}{r}-\frac{\lambda}{3}r^2 $$
となることと同値である。したがって $(M,g)$ が宇宙定数 $\Lambda$ の真空の Einstein 方程式を満たすことは、$h(r)=1-\frac{2m}r-\frac\Lambda3r^2$ と同値である。

段 1($B$ の上の量). $B$ の上で、$r$ の Hessian(Warped積多様体 の定義「水平持ち上げと垂直持ち上げ」の $H^f$ で $f=r$ としたもの)$H^r$、Laplacian $\Delta r$、勾配の長さ $|\operatorname{grad}r|^2$、$B$ の Gauss 曲率 $K^B$ は
$$ H^r=\frac{h'}2\,g_B,\qquad\Delta r=h',\qquad|\operatorname{grad}r|^2=h,\qquad\mathrm{Ric}^B=K^Bg_B,\quad K^B=-\frac{h''}2 $$
である。

詳細

$g_{tt}=-h$、$g_{rr}=1/h$ から Christoffel 記号は $\Gamma^r_{tt}=\frac12hh'$、$\Gamma^t_{tr}=\frac{h'}{2h}$、$\Gamma^r_{rr}=-\frac{h'}{2h}$ で、ほかは $0$ である($\Gamma^r_{tt}=-\frac12g^{rr}\partial_rg_{tt}$ など)。$H^r(\partial_i,\partial_j)=\partial_i\partial_jr-\Gamma^k_{ij}\partial_kr=-\Gamma^r_{ij}$ なので $H^r=-\frac12hh'\,dt^2+\frac{h'}{2h}dr^2=\frac{h'}2g_B$、そのトレースは $\Delta r=\frac{h'}2\cdot2=h'$ である。$\operatorname{grad}r=g^{rr}\partial_r=h\partial_r$ なので $|\operatorname{grad}r|^2=h^2g_{rr}=h$ である。曲率は $\nabla_{\partial_t}\partial_r=\frac{h'}{2h}\partial_t$、$\nabla_{\partial_r}\partial_r=-\frac{h'}{2h}\partial_r$ から

$$R^B(\partial_t,\partial_r)\partial_r=\nabla_{\partial_t}\Bigl(-\frac{h'}{2h}\partial_r\Bigr)-\nabla_{\partial_r}\Bigl(\frac{h'}{2h}\partial_t\Bigr)=-\frac{h''}{2h}\partial_t$$

となり($[\partial_t,\partial_r]=0$)、$K^B:=g_B(R^B(\partial_t,\partial_r)\partial_r,\partial_t)/(g_{tt}g_{rr})=-\frac{h''}2$ である。2 次元では曲率テンソルの反対称性と対称性から $(0,4)$ 型の曲率テンソルは 1 つの成分で決まり、正規直交基底 $e_0,e_1$($g(e_0,e_0)=-1$)で $\mathrm{Ric}(e_1,e_1)=-g(R(e_0,e_1)e_1,e_0)=K^B$、$\mathrm{Ric}(e_0,e_0)=g(R(e_1,e_0)e_0,e_1)=-K^B$、$\mathrm{Ric}(e_0,e_1)=0$ なので $\mathrm{Ric}^B=K^Bg_B$ である。


段 2($M$ のリッチテンソル). Warped積多様体 の系「リッチテンソルの公式」を $f=r$、$d=\dim S^2=2$、$\mathrm{Ric}^{S^2}=g_{S^2}$ で使う。$X,Y$ を $B$ の、$V,W$ を $S^2$ のベクトル場とし、持ち上げを $\tilde X$ などと書くと、段 1 から
$$ \begin{aligned} \mathrm{Ric}(\tilde X,\tilde Y)&=\mathrm{Ric}^B(X,Y)-\frac2rH^r(X,Y)=\Bigl(-\frac{h''}2-\frac{h'}r\Bigr)g(\tilde X,\tilde Y),\\ \mathrm{Ric}(\tilde X,\tilde V)&=0,\\ \mathrm{Ric}(\tilde V,\tilde W)&=g_{S^2}(V,W)-g(\tilde V,\tilde W)\Bigl(\frac{h'}r+\frac h{r^2}\Bigr)=\frac{1-(rh)'}{r^2}\,g(\tilde V,\tilde W) \end{aligned} $$
である($g(\tilde V,\tilde W)=r^2g_{S^2}(V,W)$、$(rh)'=h+rh'$ を使った)。各点の接空間は水平な持ち上げと垂直な持ち上げで張られるので、$\mathrm{Ric}=\lambda g$ は
$$ \text{(i)}\ \ \frac{h''}2+\frac{h'}r=-\lambda,\qquad\text{(ii)}\ \ (rh)'=1-\lambda r^2 $$
の両方が $I$ で成り立つことと同値である。
段 3(常微分方程式を解く). (ii) は、$I$ が区間なので、ある定数 $m$ によって $rh=r-\frac\lambda3r^3-2m$ となることと同値であり、これは $h=1-\frac{2m}r-\frac\lambda3r^2$ と同値である。さらに (ii) から (i) が従う:(ii) を微分すると $(rh)''=-2\lambda r$ で、$(rh)''=2h'+rh''$ なので $\frac{h''}2+\frac{h'}r=\frac{(rh)''}{2r}=-\lambda$ である。よって $\mathrm{Ric}=\lambda g$ は $h=1-\frac{2m}r-\frac\lambda3r^2$ と同値である。
最後の主張は、$n=4$ の cor-efe-vacuum により真空の Einstein 方程式が $\mathrm{Ric}=\Lambda g$ と同値であることから従う。$\square$

段 3 で (i) が (ii) から自動的に出ることは偶然ではなく、Bianchi 恒等式(prop-efe-divergence で使ったもの)が方程式の間に関係を課していることの表れである。

平坦な解と Schwarzschild 解

$\Lambda=0$ とする。$m=0$ なら $h=1$ で、$g=-dt^2+dr^2+r^2g_{S^2}$ は Minkowski 時空(原点を除く)の極座標による表示である。$m>0$、$I=(2m,\infty)$ なら $h=1-\frac{2m}r>0$ で、thm-efe-static により
$$ g=-\Bigl(1-\frac{2m}r\Bigr)dt^2+\Bigl(1-\frac{2m}r\Bigr)^{-1}dr^2+r^2g_{S^2} $$
は $\mathrm{Ric}=0$ をみたす。これが 時空 の例「Schwarzschild時空」であり、質量 $m$ の球対称な天体の外側の重力場を表す。この解は Sch16(§4 の式 (14)、p. 194)で求められた。同論文の解は $h=1-\alpha/R$ の形で、$\alpha=2m$、$R$ がこの記事の $r$ にあたる。

宇宙定数だけによる解

$m=0$、$\Lambda=3H^2>0$($H>0$)とすると $h=1-H^2r^2$ で、$I=(0,1/H)$ の上で $h>0$ である。thm-efe-static により $g=-(1-H^2r^2)dt^2+(1-H^2r^2)^{-1}dr^2+r^2g_{S^2}$ は $\mathrm{Ric}=3H^2g$ をみたし、物質のない空間が宇宙定数だけで曲がる例である。$r=1/H$ で $h=0$ となり、この座標はそこまでしか使えない。$m>0$ と $\Lambda>0$ を両方もつ解も同じ定理に含まれている。

条件を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
$n\ge3$(cor-efe-vacuum)2 次元の $g=-r^3dt^2+r^{-3}dr^2$($r>0$)真空の解が Einstein 条件 $\mathrm{Ric}=\lambda g$($\lambda$ は定数)を満たす
$T=0$(cor-efe-vacuum)ex-efe-dust の解($\Lambda=0$)$\mathrm{Ric}=\frac{2\Lambda}{n-2}g$
$I$ が区間(thm-efe-static)$I=(1,2)\cup(3,4)$ で、$h=1$($1< r< 2$)、$h=1-\frac1{2r}$($3< r< 4$)$\mathrm{Ric}=0$ ならある 1 つの定数 $m$ で $h=1-\frac{2m}r$
表の反例の確かめ

各行を確かめる。

確認を開く

1 行目:$h=r^3$ とおくと段 1 の計算から Gauss 曲率は $K=-\frac{h''}2=-3r$ で、$\mathrm{Ric}=Kg$、$S=2K$ なので $G=0$ である。よって $\Lambda=0$、$T=0$ の真空の Einstein 方程式を満たす。しかし $\mathrm{Ric}=-3r\,g$ の係数は定数でないので、どんな定数 $\lambda$ についても $\mathrm{Ric}=\lambda g$ でない。

2 行目:prf-efe-rw の式から $\mathrm{Ric}(\partial_t,\partial_t)=-3\frac{\ddot a}{a}=\frac2{3t^2}\ne0$ なので、$\mathrm{Ric}=0$ でない。この例では $\mathrm{Ric}(\tilde V,\tilde W)=\frac2{3t^2}g(\tilde V,\tilde W)$ と $\mathrm{Ric}(\partial_t,\partial_t)=-\frac2{3t^2}g(\partial_t,\partial_t)$ の係数が違い、$\mathrm{Ric}$ は各点でも計量の定数倍でない。

3 行目:$I$ の各成分の上では thm-efe-static が使え、$m=0$、$m=\frac14$ に当たるので $\mathrm{Ric}=0$ である($3< r< 4$ では $h\ge1-\frac16>0$)。しかし 1 つの $m$ で両方の成分を表すことはできない。段 3 で $(rh)'=1$ を積分するところで、$I$ が連結であることを使っている。

補足:方程式の意味

Einstein 方程式は 2 階の偏微分方程式系であり、thm-efe-trace の形で見ると、計量の 2 階微分を含む $\mathrm{Ric}$ が物質の量で決まる。真空では $\mathrm{Ric}=\Lambda g$(4 次元)であるが、曲率テンソルの残りの部分(Weyl テンソル)は方程式で決まらず、重力は物質のない所にも伝わる(Schwarzschild 時空は $\mathrm{Ric}=0$ だが平坦でない。リッチテンソル を参照)。物理の量を表す解の大域的な性質(因果構造・特異点)は 時空・Totally Vicious時空 などで扱われる。

関連項目

参考文献

[1]
Albert Einstein, Die Feldgleichungen der Gravitation, Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften (Berlin) 1915, 844–847, 1915, p. 845 の式 (2a)
[2]
Karl Schwarzschild, Über das Gravitationsfeld eines Massenpunktes nach der Einsteinschen Theorie, Sitzungsberichte der Königlich Preußischen Akademie der Wissenschaften (Berlin) 1916, 189–196, 1916, §4 の式 (14)(p. 194)

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