局所副有限群の表現(representations of locally profinite groups)とは、単位元がコンパクト開部分群の基本近傍系をもつ位相群 $G$ の複素表現を、各ベクトルの安定化群が開となるsmooth性のもとで研究する理論である。コンパクト開部分群 $K$ の固定部分 $V^K$ が表現を組み立て、すべての $V^K$ が有限次元なら許容表現という。Haar測度から作るHecke代数 $C_c^\infty(G)$ はsmooth表現に作用し、平均化冪等元 $e_K$ は $V^K$ への射影を与える。$p$進簡約群や局所Langlands対応の基礎となる。
局所副有限群(locally profinite group)とは、Hausdorff 位相群 $G$ で、単位元の基本近傍系をなすコンパクト開部分群をもつものをいう。
van Dantzig の定理により、これは「局所コンパクトかつ完全不連結な Hausdorff 位相群」と同値であるRen10。コンパクト開部分群は副有限群である。「局所副有限」は、各有限部分集合が有限部分群に含まれるという局所有限群とは別概念である。
$\mathbb R$ は連結で、単位元 $0$ の真の開部分群をもたない。$\mathbb R$ 自身はコンパクトでないので、コンパクト開部分群は存在しない。したがって $\mathbb R$ は局所コンパクト群ではあるが局所副有限群でない。
以下、係数体を $\mathbb C$ とし、表現空間には離散位相を入れる。
局所副有限群 $G$ の表現 $(\pi,V)$ が smooth 表現であるとは、すべての $v\in V$ に対し安定化群
$$
G_v:=\{g\in G:\pi(g)v=v\}
$$
が開部分群であることをいう。同値に、各 $v$ はあるコンパクト開部分群 $K\subset G$ によって固定される。
これは作用 $G\times V\to V$ の連続性と同値である。$V$ が離散位相であることが重要で、Hilbert 空間上の強連続ユニタリー表現とは別の圏を定める。コンパクト開部分群 $K$ に対し
$$
V^K:=\{v\in V:\pi(k)v=v\quad(\forall k\in K)\}
$$
と書けば、smooth 性は $V=\bigcup_KV^K$ と同値である。
smooth 表現 $(\pi,V)$ が許容的(admissible)であるとは、すべてのコンパクト開部分群 $K\subset G$ に対して $\dim_{\mathbb C}V^K<\infty$ となることをいう。
一般の局所副有限群では、既約 smooth 表現が自動的に許容的とは限らない。非アルキメデス局所体上の簡約群に対する許容性定理を使う場合は、群と係数体の仮定を明記する必要があるRen10。
smooth $G$-表現 $V$ の $G$-安定部分空間 $W$ と商 $V/W$ はともに smooth である。
$w\in W$ は $V$ の元でもあるので、あるコンパクト開部分群が $w$ を固定する。よって $W$ は smooth である。$\bar v=v+W\in V/W$ に対して、$v$ を固定するコンパクト開部分群 $K$ を取れば、$k\bar v=\bar v$ がすべての $k\in K$ について成り立つ。よって $V/W$ も smooth である。$\square$
$G$ がコンパクトな局所副有限群なら、任意の既約 smooth 複素表現 $V$ は有限次元で、ある有限商 $G/N$ を経由する。
$0\ne v\in V$ を取る。$v$ を固定するコンパクト開部分群 $K$ が存在する。$G/K$ は有限なので、有限個の共役の共通部分
$$
N=\bigcap_{g\in G}gKg^{-1}
$$
は開正規部分群であり $v$ を固定する。正規性から $N$ はすべての $\pi(g)v$ を固定する。既約性により $Gv$ の線形包は $V$ 全体なので、$N$ は $V$ に自明に作用する。したがって表現は有限群 $G/N$ を経由し、有限個の $\pi(g)v$ で生成されるから有限次元である。$\square$
左 Haar 測度 $dg$ を固定する。局所定数でコンパクトな台をもつ複素数値関数全体を $\mathcal H(G):=C_c^\infty(G)$ と書く。ここで上付き $\infty$ は微分可能性でなく局所定数性を表す。
$f_1,f_2\in\mathcal H(G)$ に対し
$$
(f_1*f_2)(g):=\int_G f_1(x)f_2(x^{-1}g)\,dx
$$
と定める。この畳み込みを積とする結合代数 $\mathcal H(G)$ を $G$ の Hecke 代数という。
$G$ が非離散なら一点の特性関数は局所定数でないため、$\mathcal H(G)$ は一般に単位元をもたない。しかしコンパクト開部分群 $K$ に対し
$$
e_K:=\frac{1}{\operatorname{vol}(K)}1_K
$$
は局所的な単位元として働く。
$K\subset G$ をコンパクト開部分群とする。このとき $e_K*e_K=e_K$ である。また smooth 表現 $(\pi,V)$ に
$$
\pi(f)v:=\int_G f(g)\pi(g)v\,dg
$$
で $\mathcal H(G)$ を作用させると、$\pi(e_K)V=V^K$ となり、$\pi(e_K)$ は $V^K$ への射影である。
$g\in G$ に対し
$$
(1_K*1_K)(g)=\int_K1_K(x^{-1}g)\,dx.
$$
$g\in K$ なら被積分関数は常に $1$、$g\notin K$ なら常に $0$ なので
$$
1_K*1_K=\operatorname{vol}(K)1_K,
$$
従って $e_K*e_K=e_K$ である。
任意の $v\in V$ について
$$
\pi(e_K)v=\frac1{\operatorname{vol}(K)}\int_K\pi(k)v\,dk.
$$
smooth 性により被積分関数は有限商上の有限和として解釈できる。Haar 測度の左不変性から、任意の $k_0\in K$ に対して
$$
\pi(k_0)\pi(e_K)v
=\frac1{\operatorname{vol}(K)}\int_K\pi(k_0k)v\,dk
=\pi(e_K)v.
$$
よって像は $V^K$ に含まれる。逆に $v\in V^K$ なら平均は $v$ に等しい。従って像は $V^K$ であり、冪等性から射影である。$\square$
smooth $G$-表現の圏は、$\mathcal H(G)$ の非退化加群、すなわち $\mathcal H(G)M=M$ を満たす加群の圏と同値である。表現から加群への対応は上の積分作用で与えられる。
この圏同値の証明と誘導表現・Frobenius相互律の詳細は Ren10 Chs. II–III を参照。本記事は一般の局所副有限群の smooth 表現と Hecke 作用の入口を所有し、コンパクト誘導表現、放物型誘導表現と尖点表現、Jacquet 加群は各専用記事へ委ねる。
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