群論

同義語:group theory

概要

群論(group theory)とは、群(結合律・単位元・逆元をもつ二項演算を備えた集合)とその構造・作用・表現を研究する代数学の分野である。対称性をもつ対象の対称変換は写像の合成について群をなすので、群論は幾何学・数論・解析学・物理学に現れる対称性を扱う共通の言語になる。有限群論・アーベル群論・Lie 群と代数群・組合せ群論・幾何学的群論・表現論を主要な下位分野とし、Lagrange の定理(部分群の位数は群の位数を割る)、準同型定理、Cayley の定理(任意の群は対称群の部分群)、Sylow の定理、有限アーベル群の基本定理、有限単純群の分類が基本定理である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 集合の基本的な用語、集合の演算, 写像、像、逆像、写像のグラフ

定義

群と群論

集合 $G$ と、その上の二項演算 $G\times G\to G$、$(a,b)\mapsto ab$ の組が次の 3 条件を満たすとき、$G$ を群(group)という。

  1. (結合律)任意の $a,b,c\in G$ について $(ab)c=a(bc)$ が成り立つ。
  2. (単位元の存在)ある $e\in G$ が存在して、任意の $a\in G$ について $ea=ae=a$ が成り立つ。
  3. (逆元の存在)任意の $a\in G$ に対して、ある $a'\in G$ が存在して $a'a=aa'=e$ が成り立つ。
    条件 2 の $e$ は一意に定まり、条件 3 の $a'$ も各 $a$ について一意に定まる。前者を $G$ の単位元、後者を $a$ の逆元といい $a^{-1}$ と書く。さらに任意の $a,b\in G$ について $ab=ba$ が成り立つとき、$G$ をアーベル群(可換群)という。集合 $G$ が有限集合のとき $G$ を有限群といい、その元の個数を $G$ の位数といって $|G|$ と書く。

群論(group theory)とは、群とその構造・作用・表現を研究する代数学の分野である。

群の定義から直ちに従う基本事項のうち、単位元・逆元の一意性は 単位元・逆元 の記事が、元の冪と位数、直積群、剰余類などの群の基本性質は公開記事 群 が扱い、本記事では再掲しない。消去律($ab=ac$ または $ba=ca$ ならば $b=c$)は定義から直ちに従う。以下では、分野全体を見渡すために必要な最小限の語を定める。

部分群・剰余類・正規部分群

群 $G$ の部分集合 $H$ が $G$ の演算について閉じており($a,b\in H$ ならば $ab\in H$)、単位元 $e$ を含み、逆元について閉じている($a\in H$ ならば $a^{-1}\in H$)とき、$H$ を $G$ の部分群(部分群)といい $H\le G$ と書く。$g\in G$ に対し $gH:=\{gh\mid h\in H\}$ を $H$ の左剰余類、$Hg:=\{hg\mid h\in H\}$ を右剰余類という。左剰余類の個数(無限のこともある)を $H$ の $G$ における指数(指数(群論))といい $[G:H]$ と書く。任意の $g\in G$ について $gH=Hg$ が成り立つとき、$H$ を $G$ の正規部分群(正規部分群)といい $H\trianglelefteq G$ と書く。このとき左剰余類の集合 $G/H$ は $(aH)(bH):=abH$ によって群になり、これを $G$ の $H$ による剰余群(剰余群)という。

群準同型と核

群 $G,G'$ の間の写像 $f\colon G\to G'$ が任意の $a,b\in G$ について $f(ab)=f(a)f(b)$ を満たすとき、$f$ を群準同型(群準同型と同型)という。$f$ が全単射でもあるとき $f$ を同型といい、同型が存在する 2 つの群は同型であるといって $G\cong G'$ と書く。$G'$ の単位元 $e'$ の逆像 $\ker f:=\{a\in G\mid f(a)=e'\}$ を $f$ の核(群準同型の核、群準同型と同型)、$f(G)$ を $f$ の像という。核は $G$ の正規部分群であり、像は $G'$ の部分群である。

群論の問いの多くは、「与えられた群がどのような部分群・正規部分群をもつか」「2 つの群が同型かどうか」「群がどのような集合やベクトル空間に群の作用として働くか」という形をとる。同型な群は群としては区別しないので、群論の主張はつねに同型を除いて述べられる。

概要

群は、Galois が方程式の根の置換を調べたことに始まり(Galois理論)、Cayley によって抽象的な公理で定義された(DF04)。対称性をもつ対象があれば、その対称変換の全体は写像の合成を演算として群をなす。したがって群論は、代数学の内部にとどまらず、幾何学・数論・解析学・物理学に現れる対称性を扱う共通の言語になっている。研究対象と手法によって、群論は次の下位分野に分けて語られることが多い(Rob96)。

近い名前を混同しないための注意

完全群(交換子部分群が群全体に一致する群)と単純群(自明群と群全体以外の正規部分群をもたない自明でない群)は同じ条件を表す語ではない。可除群と被約群も同じクラスではなく、被約群は自明でない可除部分群をもたない群である。Kleinの四元群(位数 4 の非巡回アーベル群)、四元数群(位数 8 の非アーベル群)、四元数体(可除環)は、名前が似ていても別の対象である。また、有限群と有限アーベル群では仮定の範囲が異なるので、有限アーベル群の基本定理による分類を有限群一般へ広げてはならない。位相群・半位相群・準位相群・パラ位相群も、演算の連続性の条件が異なる別々の概念である。

学ぶ順序と群のクラス

群論の基礎は、公開記事を次の順序でたどると学べる。

主要な定理

以下では、群論の各分野に共通する基本定理を掲げる。有限群の位数に関する定理から始める。

部分群の位数と群の位数の関係

$G$ を有限群、$H$ をその部分群とする。このとき
$$|G|=[G:H]\,|H|$$
が成り立つ。とくに $|H|$ は $|G|$ の約数であり、任意の $g\in G$ の位数($g^n=e$ となる最小の正整数 $n$)は $|G|$ の約数である。

これは Lagrange の定理(Lagrangeの定理)である。まず、$H$ の相異なる左剰余類は互いに交わらず、それらの和集合は $G$ 全体であること、すなわち左剰余類の全体が $G$ の分割をなすことを使う。これは $a\sim b\iff a^{-1}b\in H$ が $G$ 上の同値関係であり、$a$ を含む同値類が $aH$ に一致することから従い、証明は公開記事 群 の命題「左剰余類は同値類である」に譲る。
次に、各左剰余類 $gH$ と $H$ の間に全単射があることを示す。写像 $\varphi\colon H\to gH$ を $\varphi(h):=gh$ で定める。定義から $\varphi$ は全射である。$\varphi(h)=\varphi(h')$、すなわち $gh=gh'$ ならば、両辺に左から $g^{-1}$ を掛けて結合律を使うと $h=(g^{-1}g)h=g^{-1}(gh)=g^{-1}(gh')=(g^{-1}g)h'=h'$ となるので、$\varphi$ は単射である。よって $\varphi$ は全単射であり、$|gH|=|H|$ である。
$G$ は有限集合なので左剰余類は有限個 $g_1H,\dots,g_kH$($k=[G:H]$)であり、これらは互いに交わらず、和集合が $G$ である。したがって $|G|=\sum_{i=1}^{k}|g_iH|=k|H|=[G:H]\,|H|$ が成り立つ。
最後の主張について。$G$ は有限なので $g,g^2,g^3,\ldots$ には重複があり、$g^i=g^j$($i< j$)から $g^{j-i}=e$ となる。よって $g$ の位数は存在する。$g$ の位数を $n$ とすると、$\langle g\rangle:=\{e,g,g^2,\dots,g^{n-1}\}$ は $G$ の部分群であり(積と逆元について閉じていることは $g^ig^j=g^{i+j}$ と $g^n=e$ から従う)、$e,g,\dots,g^{n-1}$ は相異なる($g^i=g^j$、$0\le i< j< n$ なら $g^{j-i}=e$ となり $n$ の最小性に反する)ので $|\langle g\rangle|=n$ である。前半より $n$ は $|G|$ の約数である。$\square$

Lagrangeの定理の帰結と逆の不成立

thm-group-theory-lagrange から、位数が素数 $p$ の群は単位元でない元 1 つで生成される巡回群であることが従う(証明は 有限群の分類(位数1から100) の命題「素数位数の群」に譲る)。一方、Lagrange の定理の逆、すなわち「$|G|$ の任意の約数 $d$ に対して位数 $d$ の部分群が存在する」は一般には成り立たない。反例は prop-group-theory-a4-no-order-6 で完全に証明する。逆が部分的に成り立つ場合を保証するのが Cauchy の定理(Cauchyの定理:$|G|$ を割る素数 $p$ に対して位数 $p$ の元が存在する)と Sylow の定理(thm-group-theory-sylow)である。

準同型の像と核による商

$f\colon G\to G'$ を群準同型とする。このとき $\ker f$ は $G$ の正規部分群であり、$aH\mapsto f(a)$($H:=\ker f$)は剰余群 $G/\ker f$ から像 $f(G)$ への同型を与える。すなわち
$$G/\ker f\cong f(G)$$
である。とくに $f$ が全射ならば $G/\ker f\cong G'$ である。

準同型定理の出典

これは準同型定理(第1同型定理、準同型定理)である。証明は 群準同型と同型 および DF04 に譲る。核が正規部分群であることは $f(gag^{-1})=f(g)f(a)f(g)^{-1}=e'$ から、写像が矛盾なく定まること(well-defined)は $aH=bH\iff a^{-1}b\in\ker f\iff f(a)=f(b)$ から従う。第2同型定理($H\le G$、$N\trianglelefteq G$ のとき $HN/N\cong H/(H\cap N)$)・第3同型定理($N\le H$ がともに $G$ の正規部分群のとき $(G/N)/(H/N)\cong G/H$)とあわせて、剰余群の計算の基本道具である。

対称群への埋め込み

任意の群 $G$ は、集合 $G$ 上の全単射全体のなす群($G$ 上の対称群)$\mathrm{Sym}(G)$ のある部分群と同型である。とくに位数 $n$ の有限群は $n$ 次の対称群 $S_n$ の部分群と同型である。

これは Cayley の定理(Cayleyの定理)である。$\mathrm{Sym}(G)$ は写像の合成を演算とし、恒等写像 $\mathrm{id}_G$ を単位元、逆写像を逆元とする群である(合成の結合律は写像一般について成り立つ)。
各 $g\in G$ に対し、写像 $\lambda_g\colon G\to G$ を $\lambda_g(x):=gx$ で定める(左移動)。結合律により、任意の $x\in G$ について $\lambda_g(\lambda_{g^{-1}}(x))=g(g^{-1}x)=(gg^{-1})x=x$ であり、同様に $\lambda_{g^{-1}}(\lambda_g(x))=x$ である。よって $\lambda_g\circ\lambda_{g^{-1}}=\lambda_{g^{-1}}\circ\lambda_g=\mathrm{id}_G$ となり、$\lambda_g$ は $\lambda_{g^{-1}}$ を逆写像にもつ全単射、すなわち $\lambda_g\in\mathrm{Sym}(G)$ である。
写像 $\Lambda\colon G\to\mathrm{Sym}(G)$ を $\Lambda(g):=\lambda_g$ で定める。任意の $g,h\in G$ と $x\in G$ について、結合律より $\lambda_{gh}(x)=(gh)x=g(hx)=\lambda_g(\lambda_h(x))$ なので $\lambda_{gh}=\lambda_g\circ\lambda_h$、すなわち $\Lambda(gh)=\Lambda(g)\Lambda(h)$ である。よって $\Lambda$ は群準同型である。
$\Lambda$ が単射であることを示す。$\Lambda(g)=\Lambda(h)$ とすると $\lambda_g=\lambda_h$ であり、とくに $x=e$ での値を比べて $g=ge=\lambda_g(e)=\lambda_h(e)=he=h$ を得る。
したがって $\Lambda$ は $G$ から $\mathrm{Sym}(G)$ への単射準同型であり、thm-group-theory-first-isomorphism により(あるいは直接に)$G\cong\Lambda(G)\le\mathrm{Sym}(G)$ である。$G$ が位数 $n$ の有限群ならば、$G$ の元に $1,\dots,n$ の番号を付けることで $\mathrm{Sym}(G)\cong S_n$ となるので、$G$ は $S_n$ の部分群と同型である。$\square$

$\Lambda$ を $G$ の左正則表現という。この定理により、抽象的な群はすべて置換群(置換群)として実現でき、群の作用(群の作用)による研究の出発点になる。

Sylow部分群の存在と共役性

$G$ を位数 $p^am$($p$ は素数、$a\ge0$、$m$ は $p$ と互いに素な正整数)の有限群とする。位数 $p^a$ の部分群を $G$ の Sylow $p$ 部分群(Sylow p部分群)という。このとき次が成り立つ。

  1. $G$ は Sylow $p$ 部分群をもつ。
  2. Sylow $p$ 部分群 $P$ を1つ固定すると、任意の $p$ 部分群は $P$ のある共役に含まれる。とくに Sylow $p$ 部分群は互いに共役である。
  3. Sylow $p$ 部分群の個数 $n_p$ は $m$ の約数であり、$n_p\equiv1\pmod p$ を満たす。
Sylowの定理の出典

これは Sylow の定理(Sylowの定理)である。証明は DF04 および Rob96 に譲る。存在の証明は $G$ の位数 $p^a$ の部分集合全体への作用、または類等式(群の中心)と位数に関する帰納法による。3 の条件は $n_p=1$、すなわち Sylow $p$ 部分群が正規部分群であることをしばしば導き、小位数の群の分類(有限群の分類(位数1から100))の主要な道具になる。

有限アーベル群の巡回群への分解

$G$ を有限アーベル群とする。このとき、$1< d_1\mid d_2\mid\cdots\mid d_r$ を満たす正整数 $d_1,\dots,d_r$ が存在して
$$G\cong C_{d_1}\times C_{d_2}\times\cdots\times C_{d_r}$$
となる($C_d$ は位数 $d$ の巡回群)。$r$ と $(d_1,\dots,d_r)$ は $G$ から一意に定まり、$G$ の不変因子という。同値な形として、$G$ は素数冪位数の巡回群の直積に、因子の並べ方を除いて一意に分解する。

有限アーベル群の基本定理の出典

証明と、不変因子形と素因子形の相互変換、および位数を固定したときの同型類の個数の数え方は、公開記事 有限アーベル群の基本定理 に譲る。有限生成アーベル群への拡張(自由部分 $\mathbb{Z}^s$ を付け加える)は 有限生成アーベル群の基本定理 が扱う。この定理の仮定「アーベル群」は落とせない。位数 6 の非アーベル群 3次の対称群 は巡回群の直積には同型でない。

有限単純群の分類の言明

任意の有限単純群は、次のいずれかと同型である。

  1. 素数位数の巡回群 $C_p$。
  2. $n\ge5$ に対する交代群 $A_n$。
  3. Lie 型の有限単純群(有限体上の古典群および例外型 Chevalley群・捻れ型の群から作られる 16 の無限族)。
  4. 26 個の散在型単純群。
有限単純群の分類の出典

この定理は 1980 年代初頭に完成が宣言され、数百編の論文にわたる第2世代の証明の整理が進められている(2026年9月時点)。本記事では言明のみを掲げ、証明の概観も扱わない。各群が実際に単純であること(たとえば $n\ge5$ での $A_n$ の単純性)の証明は DF04 に譲る。有限単純群は、組成列(Jordan–Hölderの定理)を通じて任意の有限群の「構成要素」になるので、この分類は有限群論全体の基礎になる。Tits 群 ${}^2F_4(2)'$ は慣例上 Lie 型に含め、散在型 26 個には数えない。

例と反例

対称群と交代群

$n$ 個の文字 $\{1,\dots,n\}$ の置換(この集合からそれ自身への全単射)の全体は、写像の合成を演算として位数 $n!$ の群をなす。これを $n$ 次の対称群 $S_n$ という(対称群)。任意の置換は互換(2 つの文字を入れ替える置換)の積として書け、その互換の個数の偶奇は書き方によらない(証明は 対称群 の記事または DF04 に譲る)。偶数個の互換の積として書ける置換(偶置換)の全体は $S_n$ の指数 2 の正規部分群をなし($n\ge2$)、これを交代群 $A_n$ という(交代群)。thm-group-theory-cayley により、あらゆる有限群は対称群の部分群として現れる。$S_3$ は位数最小の非アーベル群であり(3次の対称群)、$n\ge5$ に対する $A_n$ は非アーベル単純群の最初の例である。

巡回群と整数の加法群

整数全体 $\mathbb{Z}$ は加法を演算として群をなす(単位元は $0$、$a$ の逆元は $-a$)。これは 1 つの元 $1$ で生成される無限巡回群であり、その部分群はすべて $n\mathbb{Z}$($n\ge0$)の形である。正整数 $n$ に対し、剰余群 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ は位数 $n$ の巡回群 $C_n$ であり、位数 $n$ の巡回群は同型を除いてこれに限る(巡回群)。巡回群はすべてアーベル群であり、thm-group-theory-finite-abelian により有限アーベル群はすべて巡回群の直積になる。

行列群の例

体 $K$ 上の $n$ 次正則行列の全体は、行列の積を演算として群をなす。これを一般線型群 $\mathrm{GL}_n(K)$ という(一般線型群)。行列式が $1$ の行列のなす部分群 $\mathrm{SL}_n(K)$、実直交行列のなす直交群 $\mathrm{O}(n)$(直交群)、複素ユニタリ行列のなすユニタリ群 $\mathrm{U}(n)$(ユニタリ群)などは、Lie 群と代数群の基本例であり、$K$ が有限体のとき $\mathrm{GL}_n(K)$ は有限群である。thm-group-theory-cfsg の Lie 型の単純群は、これらの群の商や部分群として得られる。$n\ge2$ のとき $\mathrm{GL}_n(K)$ は非アーベル群である。

集合の上の自由群

集合 $X$ の元とその形式的な逆元を並べた語のうち、隣り合う $x$ と $x^{-1}$ を消去して簡約したもの全体は、語の連結を演算として群をなす。これを $X$ 上の自由群 $F(X)$ という(自由群)。$F(X)$ から任意の群 $G$ への準同型は、$X$ から $G$ への写像を任意に与えるごとに一意に定まる(普遍性)。したがって任意の群は自由群の剰余群であり、生成元と関係式による記述(群の表示)はこの事実に基づく。$|X|\ge2$ のとき $F(X)$ は非アーベル群であり、位数 2 以上の有限位数の元をもたない(無捻群)。

4次の交代群の位数6の部分群の不存在

4 次の交代群 $A_4$ は位数 12 の群であるが、位数 6 の部分群をもたない。したがって Lagrange の定理(thm-group-theory-lagrange)の逆は成り立たない。

まず $A_4$ の元を数える。$S_4$ の元は、恒等置換 1 個、互換 6 個、3 文字の巡回置換(巡回置換)$(a\,b\,c)$ 8 個、互いに素な 2 つの互換の積 $(a\,b)(c\,d)$ 3 個、4 文字の巡回置換 6 個であり、あわせて $24=4!$ 個である。3 文字の巡回置換は $(a\,b\,c)=(a\,c)(a\,b)$ と 2 個の互換の積に書けるので偶置換であり、$(a\,b)(c\,d)$ も偶置換である。互換と 4 文字の巡回置換 $(a\,b\,c\,d)=(a\,d)(a\,c)(a\,b)$ は奇置換である。よって $A_4$ は恒等置換、8 個の 3 文字の巡回置換、3 個の $(a\,b)(c\,d)$ からなり、$|A_4|=12$ である。
$A_4$ が位数 6 の部分群 $H$ をもつと仮定する。thm-group-theory-lagrange より $[A_4:H]=12/6=2$ である。指数 2 の部分群は正規部分群である。実際、$g\in H$ ならば $gH=H=Hg$ であり、$g\notin H$ ならば左剰余類は $H$ と $gH$ の 2 個で互いに交わらず和集合が $A_4$ なので $gH=A_4\setminus H$、右剰余類についても同様に $Hg=A_4\setminus H$ となり、$gH=Hg$ である。
よって剰余群 $A_4/H$ が定まり、その位数は 2 である。位数 2 の群 $\{u,x\}$($u$ は単位元)では $x^2\in\{u,x\}$ であり、$x^2=x$ なら消去律より $x=u$ となって矛盾するので $x^2=u$ である。すなわち位数 2 の群では任意の元の 2 乗が単位元である。したがって任意の $\sigma\in A_4$ について $(\sigma H)^2=\sigma^2H=H$、すなわち $\sigma^2\in H$ である。
$\sigma$ を 3 文字の巡回置換とすると $\sigma^3$ は恒等置換なので $\sigma=\sigma^4=(\sigma^2)^2$ であり、$\sigma^2\in H$ と $H$ が積について閉じていることから $\sigma\in H$ である。ゆえに $H$ は 8 個の 3 文字の巡回置換をすべて含み、恒等置換とあわせて $|H|\ge9>6$ となって $|H|=6$ に反する。したがって $A_4$ は位数 6 の部分群をもたない。$\square$

反例
  • 0 以上の整数の全体 $\mathbb{N}$ は加法について結合律と単位元 $0$ の存在を満たす(モノイドである)が、$1$ の逆元をもたないので群ではない。破れるのは def-group-theory-group の条件 3 である。
  • 有理数全体 $\mathbb{Q}$ は乗法についてモノイドであるが、$0$ が逆元をもたないので群ではない。$0$ を除いた $\mathbb{Q}\setminus\{0\}$ は群である。
  • Lagrange の定理の逆は成り立たない。$A_4$ は位数 12 で $6\mid12$ だが位数 6 の部分群をもたない(prop-group-theory-a4-no-order-6)。逆が成り立つ群のクラス(アーベル群、より一般に冪零群・可解群の一部)については Rob96 を参照。
  • 部分群が正規部分群であるとは限らない。$S_3$ の部分群 $\{e,(1\,2)\}$ は $(1\,3)$ による共役で $\{e,(2\,3)\}$ に移るので正規部分群でない(3次の対称群)。
  • 準同型の像は部分群だが、正規部分群とは限らない。$C_2\to S_3$、$1\mapsto(1\,2)$ の像は上の非正規部分群である。
  • 位数が等しい群が同型とは限らない。位数 4 の群には $C_4$ と Kleinの四元群 の 2 つの同型類があり、前者は位数 4 の元をもつが後者はもたない。

関連項目

参考文献

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