正規閉包(normal closure)とは、体の代数拡大 $L/K$ に対し、$L$ を含み $K$ 上正規な拡大体で、それ以上小さくできないもののことである。$L$ の各元の $K$ 上の共役をすべて $L$ に補った体として得られ、$L$ 上の同型を除いて一意である。有限次拡大では $L$ の埋め込みの像全体の合成体であり、たとえば $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}$ の正規閉包は $x^3-2$ の分解体 $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2},\omega)$ である。$L/K$ が $n$ 次の分離拡大なら正規閉包は $L$ を含む最小の Galois 拡大(Galois 閉包)で、その Galois 群は $n$ 次の対称群の部分群になる。群論では部分集合を含む最小の正規部分群も正規閉包とよぶ。
前提知識: 体の拡大, 代数拡大, 最小多項式, 正規拡大, 分解体
本記事は体論の正規閉包を扱う。群論では、群の部分集合を含む最小の正規部分群も正規閉包とよばれる。こちらは rem-normal-closure-group で説明する。
$L/K$ を体の拡大とする。$L$ のすべての元が $K$ 上代数的($K$ 係数の $0$ でない多項式の根)であるとき $L/K$ を代数拡大という。$K$ 上代数的な $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式を $m_{\alpha,K}$ と書く。$m_{\alpha,K}$ は既約で、$g\in K[x]$ が $g(\alpha)=0$ を満たすことと $m_{\alpha,K}\mid g$ は同値である(体の拡大 の記事の命題「最小多項式の存在と一意性」)。多項式 $f\in K[x]$ が体 $E\supset K$ で分解するとは、$E[x]$ で $f$ が $1$ 次式の積に書けることをいう。代数拡大 $L/K$ が正規拡大であるとは、すべての $\alpha\in L$ について $m_{\alpha,K}$ が $L$ で分解することをいう(正規拡大 の記事の定義「正規拡大」)。$K\subset E\subset L$ を満たす $L$ の部分体 $E$ を $L/K$ の中間体という。
$L/K$ を代数拡大とする。$L$ の拡大体 $N$ が $L/K$ の正規閉包(normal closure)であるとは、次の 2 条件を満たすことをいう。
この定義は 正規拡大 の記事の定義「正規閉包」と同じである。すなわち正規閉包とは、$L$ を含み $K$ 上正規な拡大のうち、それ以上小さくできないものである。$L/K$ がすでに正規なら、$N=L$ は条件を満たし、逆に $N=L$ が正規閉包なら $L/K$ は正規である。
$L$ を含む体 $\Omega$ で $\Omega/K$ が正規拡大であるものを 1 つ固定すると、正規閉包は $\Omega$ の部分体として 1 つに定まる(thm-normal-closure-conjugates)。これを $\Omega$ における $L/K$ の正規閉包といい、本記事では $N_\Omega(L/K)$ と書く。$\Omega$ として $L$ の代数閉包 $\overline{L}$ をとることができる。$\overline{L}/L$ と $L/K$ が代数拡大なので $\overline{L}/K$ も代数拡大であり(体の拡大 の記事の系「代数的な元のなす部分体と推移性」)、$\overline{L}$ は代数閉体なので $K$ の代数閉包でもある。任意の体の代数閉包はその体の上で正規である(正規拡大 の記事の例「代数的数全体の体」の最後の文)ので、$\overline{L}/K$ は正規拡大である。
$\alpha$ の $K$ 上の共役とは、$m_{\alpha,K}$ が分解する拡大体における $m_{\alpha,K}$ の根のことである。正規閉包は、$L$ の元の共役をすべて $L$ に補った体である(thm-normal-closure-conjugates)。
体 $\Omega$ の部分体の族 $(E_\lambda)$ について、すべての $E_\lambda$ を含む $\Omega$ の最小の部分体をその合成体という。$K\subset L$ かつ $K\subset\Omega$ のとき、$L$ から $\Omega$ への体の準同型で $K$ の元を動かさないものを、$L$ の $K$ 上の($\Omega$ への)埋め込みという。
$\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ は $x^3-2$ の根を 1 つしか含まず、$\mathbb{Q}$ 上正規でない。足りない根 $\omega\sqrt[3]2,\omega^2\sqrt[3]2$($\omega=(-1+\sqrt{-3})/2$)を補うと $x^3-2$ の分解体 $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2,\omega)$ になり、これは正規である。正規閉包は、このように「欠けている共役を補う」操作の結果であり、正規でない拡大を含む最小の正規拡大である。
有限次の場合、正規閉包は $L$ の $K$ 上の埋め込みの像 $\sigma(L)$ をすべて合わせた体でもある(thm-normal-closure-embeddings)。$L$ 自身を正規にできないとき、$L$ の「共役な体」をすべて含む体に移れば正規になる。分離的な拡大の場合、正規閉包はGalois拡大になり、そのGalois群は $[L:K]$ 次の対称群の部分群として実現される(thm-normal-closure-galois)。このため正規閉包は、正規でない拡大を Galois理論 で調べるための基本的な道具になる。
$\alpha=\sqrt[3]2\in\mathbb{R}$、$L=\mathbb{Q}(\alpha)$ とし、$\Omega$ を複素数のうち $\mathbb{Q}$ 上代数的なもの全体 $\overline{\mathbb{Q}}$ とする。$\overline{\mathbb{Q}}$ は $\mathbb{C}$ の部分体で、$\mathbb{Q}$ 上正規である(正規拡大 の記事の例「代数的数全体の体」)。$m_{\alpha,\mathbb{Q}}=x^3-2$ の根は $\alpha,\omega\alpha,\omega^2\alpha$ なので、thm-normal-closure-conjugates の 2 により
$$
N_\Omega(L/\mathbb{Q})=\mathbb{Q}(\alpha,\omega\alpha,\omega^2\alpha)=\mathbb{Q}(\alpha,\omega)
$$
であり、これは $x^3-2$ の分解体で、$[N:\mathbb{Q}]=6$ である(分解体 の記事の例「$x^3-2$ の分解体」)。$[L:\mathbb{Q}]=3$ で $6=3!$ なので、thm-normal-closure-galois の上界 $[N:K]\le n!$ で等号が成り立つ。$L$ の $\mathbb{Q}$ 上の埋め込み $L\to\mathbb{C}$ は $\alpha$ を 3 つの根のどれかに送る 3 つであり、その像 $\mathbb{Q}(\alpha)$、$\mathbb{Q}(\omega\alpha)$、$\mathbb{Q}(\omega^2\alpha)$ の合成体が $N$ である(thm-normal-closure-embeddings)。実際、$\mathbb{Q}(\alpha)$ と $\mathbb{Q}(\omega\alpha)$ だけで $\omega=\omega\alpha/\alpha$ を含む。
$\beta=\sqrt[4]2>0$、$L=\mathbb{Q}(\beta)$ とする。$x^4-2$ は $\mathbb{Q}$ 上既約で(既約多項式 の記事の例「Eisenstein の判定法の適用例」の 1)、$\mathbb{C}$ における根は $\pm\beta,\pm i\beta$ である。thm-normal-closure-conjugates の 2 により $\overline{\mathbb{Q}}$ の中の正規閉包は $\mathbb{Q}(\beta,-\beta,i\beta,-i\beta)=\mathbb{Q}(\beta,i)$ であり、$i\notin L\subset\mathbb{R}$ なので $[\mathbb{Q}(\beta,i):L]=2$、$[N:\mathbb{Q}]=8$ である(正規拡大 の記事の「正規閉包」の節の計算と同じ)。$[L:\mathbb{Q}]=4$ で $8<4!=24$ なので、正規閉包の次数は $n!$ に達するとは限らない。thm-normal-closure-galois により $8$ は $24$ を割り切る。
$\theta=2\cos(2\pi/9)$、$L=\mathbb{Q}(\theta)$ とする。$(2\cos a)^3-3(2\cos a)=2\cos3a$ を $a=2\pi/9$ に用いると $\theta^3-3\theta=2\cos(2\pi/3)=-1$ なので、$\theta$ は $f=x^3-3x+1$ の根である。$f$ は有理数の根をもたない(有理根は $\pm1$ に限られるが、$f(1)=-1$、$f(-1)=3$ である。既約多項式 の記事の命題「有理根の判定」)ので、3 次式として $\mathbb{Q}$ 上既約であり、$[L:\mathbb{Q}]=3$ である。
$(2\cos a)^2-2=2\cos2a$ により、$\theta^2-2=2\cos(4\pi/9)$、$(\theta^2-2)^2-2=2\cos(8\pi/9)$ も $L$ に属する。$a=4\pi/9,8\pi/9$ についても $3a\equiv\pm2\pi/3\pmod{2\pi}$ なので、これらも $f$ の根である。$2\cos(2\pi/9)$、$2\cos(4\pi/9)$、$2\cos(8\pi/9)$ は相異なる($\cos$ は $[0,\pi]$ で狭義単調減少)ので、$f$ の 3 つの根がすべて $L$ にある。$L$ の各元の最小多項式は、$L=\mathbb{Q}(\theta)$ が $f$ の分解体であることから $L$ で分解する(正規拡大 の記事の定理「有限次正規拡大と多項式の分解体」)。よって $L/\mathbb{Q}$ は正規で、正規閉包は $L$ 自身であり、次数は $3<3!$ である。
同様に、2 次拡大(正規拡大 の記事の命題「2 次拡大の正規性」)、有限体の有限次拡大、円分体はすでに正規なので、正規閉包は自分自身である。
ex-normal-closure-cbrt2 の $L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$、$N=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2,\omega)$ で、複素共役 $z\mapsto\overline z$ を $N$ に制限した写像 $c$ を考える。$c$ は $N$ を $N$ に移す($\overline{\omega}=\omega^2\in N$)体の同型で、実数 $\sqrt[3]2$ を動かさないので $L$ の元を動かさず、$c(\omega)=\omega^2\neq\omega$ なので恒等写像でない。したがって $N$ から $N$ 自身への $L$ 上の同型が少なくとも 2 つある。
正規閉包は $L$ 上の同型を除いて一意である(thm-normal-closure-uniqueness)が、この例は「$L$ 上同型である」を満たすが「その同型がただ 1 つに定まる」を満たさない。2 つの正規閉包を同一視する方法は選び方に依存し、正規閉包は $L$ から標準的に決まる体ではない。これは 代数閉体 の記事の注意「代数閉包の証明と選択公理」で述べられている代数閉包の場合と同じ現象である。
$\Omega=L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ とする。$L\subset E\subset\Omega$ を満たす体は $E=L$ だけであり、$L/\mathbb{Q}$ は正規でない。したがって $\Omega$ の中には $L/\mathbb{Q}$ の正規閉包がない。この例は「$\Omega$ が $L$ を含む」を満たすが「$\Omega/K$ が正規拡大」を満たさず、thm-normal-closure-conjugates の結論「$\Omega$ の中に正規閉包がある」を破る。$\Omega$ の中に正規閉包があることを保証するには、$\Omega/K$ が正規であれば十分である。ただしこれは必要条件ではない。たとえば $\mathbb{C}$ は $\mathbb{Q}$ 上代数拡大でないので $\mathbb{Q}$ 上正規でないが、$L$ の正規閉包 $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2,\omega)$ を含む。
$p$ を素数、$K=\mathbb{F}_p(t)$ を有理関数体、$L=K(u)$($u^p=t$)とする。$L/K$ は正規拡大である(正規拡大 の記事の例「反例:分離的でない正規拡大」)ので、正規閉包は $L$ 自身である。しかし $u$ の最小多項式 $x^p-t=(x-u)^p$ は重根をもつので、$L/K$ は分離拡大でない。
$L$ を含む Galois 拡大 $M/K$ は存在しない。Galois 拡大は分離拡大であり、分離拡大の中間体は基礎体上分離的なので(分離拡大 の記事の命題「中間体への遺伝」)、そのような $M$ があれば $L/K$ が分離的になってしまうからである。この例は「$L/K$ は有限次拡大」を満たすが「$L/K$ は分離拡大」を満たさず、thm-normal-closure-galois の結論「正規閉包は Galois 拡大である」を破る。分離的な拡大に対しては正規閉包を Galois 閉包ともいうが、この 2 つの語は分離的でない拡大では同じ意味にならない。
$\Omega$ を $K$ を含む体、$E$ を $K\subset E\subset\Omega$ を満たす体で $E/K$ が正規拡大であるものとする。$\alpha\in E$ ならば、$m_{\alpha,K}$ の $\Omega$ における根はすべて $E$ に属する。
正規性により $E[x]$ で $m_{\alpha,K}=\prod_{k}(x-a_k)$($a_k\in E$)と書ける。$\beta\in\Omega$ が $m_{\alpha,K}$ の根なら $\prod_k(\beta-a_k)=0$ であり、$\Omega$ は体なのである $k$ で $\beta=a_k\in E$ である。$\square$
$L/K$ を代数拡大、$\Omega$ を $L$ を含む体で $\Omega/K$ が正規拡大であるものとする。$L=K(S)$ となる部分集合 $S\subset L$ をとり、$\alpha\in S$ についての $m_{\alpha,K}$ の $\Omega$ における根全体の集合を $R_S$、$N_S:=K(R_S)$ とおく。
1:$S\subset R_S$ なので $L=K(S)\subset N_S$ である。$N_S$ は $K$ 上代数的な元で生成されるので、$N_S/K$ は代数拡大である(体の拡大 の記事の系「代数的な元のなす部分体と推移性」)。
$N_S/K$ が正規であることを示す。$\beta\in N_S$ をとる。$K(R_S)$ は、$R_S$ の有限部分集合 $R_0$ についての $K(R_0)$ 全体の合併である(これらの合併は部分体であり、$K\cup R_S$ を含む)。よって $\beta\in K(R_0)$ となる有限集合 $R_0\subset R_S$ があり、$R_0$ の元がそれぞれ $m_{\alpha_1,K},\dots,m_{\alpha_k,K}$($\alpha_j\in S$)のどれかの根になるように $\alpha_1,\dots,\alpha_k$ を選べる。$f:=\prod_{j=1}^km_{\alpha_j,K}$ とおく。各 $m_{\alpha_j,K}$ は $\Omega$ に根 $\alpha_j$ をもつので、$\Omega/K$ の正規性により $\Omega$ で分解し、$f$ も $\Omega$ で分解する。$f$ の $\Omega$ における根全体で $K$ 上生成される体を $F$ とすると、$F$ は $f$ の $K$ 上の分解体であり、$R_0\subset F\subset N_S$ である。$F/K$ は有限個の代数的な元で生成されるので有限次であり、正規拡大 の記事の定理「有限次正規拡大と多項式の分解体」により正規である。$\beta\in F$ なので、lem-normal-closure-roots により $m_{\beta,K}$ の $\Omega$ における根はすべて $F\subset N_S$ に属する。$m_{\beta,K}$ は $\beta\in\Omega$ を根にもつので $\Omega$ で分解し、その $1$ 次因子はすべて $N_S[x]$ に属する。よって $m_{\beta,K}$ は $N_S$ で分解し、$N_S/K$ は正規拡大である。
$L\subset E\subset\Omega$、$E/K$ 正規とする。$\alpha\in S$ は $E$ に属するので、lem-normal-closure-roots により $m_{\alpha,K}$ の $\Omega$ における根はすべて $E$ に属する。よって $R_S\subset E$、$N_S\subset E$ である。
2:まず $N_S$ は $L/K$ の正規閉包である。実際 1 により $N_S/K$ は正規で $L$ を含み、$L\subset E\subset N_S$、$E/K$ 正規なら 1 により $N_S\subset E$、すなわち $E=N_S$ である。次に $N'\subset\Omega$ を $L/K$ の任意の正規閉包とすると、1 により $N_S\subset N'$ であり、$N_S/K$ は正規で $L\subset N_S\subset N'$ なので、正規閉包の定義の 2 により $N_S=N'$ である。とくに $S$ を別の生成系 $S'$ に替えても $N_{S'}=N_S$ である。最後に、$N_S$ は $L\subset E\subset\Omega$、$E/K$ 正規となる $E$ の 1 つであり、1 によりそのすべてに含まれるので、それらの共通部分に等しい。$\square$
$S=L$ とすれば、$N_\Omega(L/K)$ は $L$ のすべての元の $\Omega$ における共役を $K$ に添加した体である。$S$ を生成系にとれば、生成元の共役だけを添加すれば足りる。とくに $L=K(\theta)$ が単純拡大なら、$N_\Omega(L/K)$ は $m_{\theta,K}$ の $\Omega$ における根で生成され、$m_{\theta,K}$ の $K$ 上の分解体である。
$L/K$ を代数拡大とする。
$\overline{L}$ を $L$ の代数閉包とすると、定義の節で見たとおり $\overline{L}/K$ は正規拡大である。
1:thm-normal-closure-conjugates を $\Omega=\overline{L}$ に適用すればよい。
2:$N$ を $L/K$ の正規閉包とする。$N/L$ は代数拡大($N/K$ が代数拡大なので)であり、$\overline{L}$ は代数閉体なので、包含写像 $L\to\overline{L}$ は体の準同型 $\tau\colon N\to\overline{L}$ に延長できる(Lan02 Chapter V §2 の、代数拡大から代数閉体への準同型の延長定理)。$\tau$ は $L$ の元、とくに $K$ の元を動かさない単射である。$y=\tau(x)\in\tau(N)$ について、$\tau$ は $K$ 係数の多項式の値を保つので $m_{y,K}=m_{x,K}$ であり、$m_{x,K}$ の $N[x]$ での $1$ 次式への分解を $\tau$ で移すと $\tau(N)[x]$ での分解になる。よって $\tau(N)/K$ は正規である。$L\subset E\subset\tau(N)$、$E/K$ 正規なら、同じ理由で $\tau^{-1}(E)/K$ は正規で $L\subset\tau^{-1}(E)\subset N$ なので、$\tau^{-1}(E)=N$、$E=\tau(N)$ である。したがって $\tau(N)$ は $\overline{L}$ に含まれる $L/K$ の正規閉包であり、thm-normal-closure-conjugates の 2 により $\tau(N)=N_{\overline{L}}(L/K)$ である。$N=N_1,N_2$ に適用して得られる $L$ 上の同型 $\tau_i\colon N_i\to N_{\overline{L}}(L/K)$ について、$\tau_2^{-1}\circ\tau_1\colon N_1\to N_2$ が求める同型である。
3:$L=K(\alpha_1,\dots,\alpha_s)$ と有限個の元で書ける。2 により正規閉包は $N_{\overline{L}}(L/K)$ と同型であり、thm-normal-closure-conjugates によりこれは $\prod_jm_{\alpha_j,K}$ の有限個の根で $K$ 上生成されるので、有限次である。$\square$
2 の証明で用いた準同型の延長定理は、一般には Zornの補題 を使う。$L/K$ が有限次の場合は、正規閉包がある多項式の $L$ 上の分解体になることを示し、分解体 の記事の定理「分解体の同型の延長」を用いて Zorn の補題なしに示せる。この証明は 正規拡大 の記事の定理「有限次拡大の正規閉包」にある。
合成体と埋め込みは節「定義」の最後の段落で定めたものを使う。
$L/K$ を有限次拡大、$\Omega$ を $L$ を含む体で $\Omega/K$ が正規拡大であるものとする。$L$ の $K$ 上の埋め込み $\sigma\colon L\to\Omega$ は有限個であり、$N_\Omega(L/K)$ はそれらの像 $\sigma(L)$ 全体の合成体に等しい。
$L=K(\alpha_1,\dots,\alpha_s)$ と書く。埋め込み $\sigma$ は $\alpha_j$ での値で決まり、$\sigma(\alpha_j)$ は $m_{\alpha_j,K}$ の $\Omega$ における根(有限個)なので、埋め込みは有限個である。$N:=N_\Omega(L/K)$、$C$ を $\sigma(L)$ 全体の合成体とする。
$C\subset N$:$\alpha\in L$ と埋め込み $\sigma$ について、$m_{\alpha,K}(\sigma(\alpha))=\sigma(m_{\alpha,K}(\alpha))=0$ なので、$\sigma(\alpha)$ は $m_{\alpha,K}$ の $\Omega$ における根であり、thm-normal-closure-conjugates($S=L$ の場合)により $N$ に属する。よって各 $\sigma(L)\subset N$ であり、$C\subset N$ である。
$N\subset C$:thm-normal-closure-conjugates により、$\alpha\in L$ と $m_{\alpha,K}$ の $\Omega$ における根 $\beta$ について $\beta\in C$ を示せばよい。$S:=\{\alpha,\alpha_1,\dots,\alpha_s\}$、$f:=m_{\alpha,K}\prod_jm_{\alpha_j,K}$ とおくと、thm-normal-closure-conjugates により $N=N_S$ は $f$ の $\Omega$ における根で $K$ 上生成され、$f$ の $K$ 上の分解体である。$N$ は $f$ の根で $K(\alpha)$ 上にも $K(\beta)$ 上にも生成されるので、$f$ の $K(\alpha)$ 上の分解体でも $K(\beta)$ 上の分解体でもある。Galois拡大 の記事の補題「単純拡大への同型の延長」により、$\alpha$ を $\beta$ に送る $K$ 上の同型 $\sigma_1\colon K(\alpha)\to K(\beta)$ がある。$f$ の係数は $K$ に属するので $\sigma_1$ で動かず、分解体 の記事の定理「分解体の同型の延長」により $\sigma_1$ は同型 $\tau\colon N\to N$ に延長される。$\sigma:=\tau|_L$ は $L$ の $K$ 上の埋め込みで $\sigma(\alpha)=\beta$ なので、$\beta\in\sigma(L)\subset C$ である。$\square$
$L/K$ を $n$ 次の有限次分離拡大、$\Omega$ を $L$ を含む体で $\Omega/K$ が正規拡大であるものとし、$N=N_\Omega(L/K)$ とおく。
1:原始元定理により $L=K(\theta)$ となる $\theta\in L$ がある。thm-normal-closure-conjugates を $S=\{\theta\}$ に適用すると、$N$ は $m_{\theta,K}$ の $\Omega$ における根で $K$ 上生成され、$m_{\theta,K}$ は $\Omega$ で分解するので、$N$ は $m_{\theta,K}$ の $K$ 上の分解体である。$L/K$ は分離的なので $\theta$ は分離的であり、$m_{\theta,K}$ は重根をもたない(分離多項式)。したがって $N$ は分離多項式の分解体であり、Galois拡大 の記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」の 4 ⇒ 1 により $N/K$ は有限次 Galois 拡大である。$\deg m_{\theta,K}=[K(\theta):K]=n$ で、根 $\theta_1,\dots,\theta_n$ は相異なる。
2:$\sigma\in\operatorname{Gal}(N/K)$ について $m_{\theta,K}(\sigma(\theta_i))=\sigma(m_{\theta,K}(\theta_i))=0$ なので $\sigma(\theta_i)$ はある $\theta_j$ に等しい。$\sigma$ は単射なので根の集合 $\{\theta_1,\dots,\theta_n\}$ の置換を引き起こし、$\sigma$ にこの置換を対応させる写像 $\operatorname{Gal}(N/K)\to S_n$ は群準同型である。$N=K(\theta_1,\dots,\theta_n)$ なので $\sigma$ は根での値で決まり、この準同型は単射である。よって $\operatorname{Gal}(N/K)$ は $S_n$ の部分群と同型であり、同じ特徴づけにより $|\operatorname{Gal}(N/K)|=[N:K]$ なので、Lagrangeの定理により $[N:K]$ は $|S_n|=n!$ を割り切る。
3:$N/K$ は有限次正規拡大で、$\theta_i,\theta_j$ は同じ既約多項式 $m_{\theta,K}$ の $N$ における根なので、正規拡大 の記事の命題「共役への自己同型の存在」により $\sigma(\theta_i)=\theta_j$ となる $\sigma\in\operatorname{Gal}(N/K)$ がある。$\square$
$L/K$ が分離的でない単純拡大 $K(\theta)$ の場合も、$N$ は $m_{\theta,K}$ の分解体なので $[N:K]\le n!$ である(分解体 の記事の定理「分解体の存在」)が、$N/K$ は Galois 拡大でない(ex-normal-closure-inseparable)。分離的な有限次拡大の正規閉包を $L/K$ の Galois 閉包(Galois closure)ともいう。1 により、それは $L$ を含む最小の Galois 拡大である。$L\subset E\subset\Omega$ で $E/K$ が Galois なら $E/K$ は正規なので、thm-normal-closure-conjugates により $N\subset E$ だからである。
$M/K$ を有限次 Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(M/K)$、$L$ を中間体、$H=\operatorname{Gal}(M/L)$ とし、
$$
C:=\bigcap_{g\in G}gHg^{-1}
$$
とおく。このとき $M$ の中の $L/K$ の正規閉包 $N=N_M(L/K)$ は $C$ の固定体 $M^C$ に等しい。$C$ は $H$ に含まれる $G$ の正規部分群のうち最大のものであり、$N/K$ は Galois 拡大で $\operatorname{Gal}(N/K)\cong G/C$ である。
$M/K$ は正規なので、thm-normal-closure-embeddings を $\Omega=M$ に適用できる。$L$ の $K$ 上の埋め込み $\sigma\colon L\to M$ は $G$ の元の制限である。実際、正規拡大 の記事の定理「有限次正規拡大と多項式の分解体」により $M$ はある $f\in K[x]$ の $K$ 上の分解体であり、$M$ は $f$ の根で $L$ 上にも $\sigma(L)$ 上にも生成されるので、$f$ の $L$ 上の分解体でも $\sigma(L)$ 上の分解体でもある。分解体 の記事の定理「分解体の同型の延長」を同型 $\sigma\colon L\to\sigma(L)$ と $f$ に適用すると、$\sigma$ は同型 $g\colon M\to M$ に延び、$g$ は $K$ を動かさないので $g\in G$ である。逆に $g\in G$ の $L$ への制限は埋め込みである。よって $N$ は $g(L)$($g\in G$)全体の合成体である。
Galois理論 の記事の定理「Galois理論の基本定理」の 3 により $\operatorname{Gal}(M/g(L))=gHg^{-1}$ である。$\tau\in G$ が有限個の中間体 $g(L)$ の合成体の元をすべて固定することは、各 $g(L)$ の元をすべて固定することと同値である($\tau$ が固定する元全体は部分体である)。したがって $\operatorname{Gal}(M/N)=\bigcap_{g}gHg^{-1}=C$ であり、基本定理の 1 により $N=M^{\operatorname{Gal}(M/N)}=M^C$ である。
$C\subset H$ は明らかである($g=e$ の項)。$h\in G$ について $hCh^{-1}=\bigcap_g(hg)H(hg)^{-1}=C$($g\mapsto hg$ は $G$ の全単射)なので $C$ は正規部分群である。$C'\subset H$ が $G$ の正規部分群なら、すべての $g$ で $C'=gC'g^{-1}\subset gHg^{-1}$ なので $C'\subset C$ である。$N/K$ は正規で、Galois 拡大 $M/K$ の中間体なので分離的でもあり、Galois 拡大である。基本定理の 4 により制限写像は同型 $G/\operatorname{Gal}(M/N)\cong\operatorname{Gal}(N/K)$、すなわち $G/C\cong\operatorname{Gal}(N/K)$ を与える。$\square$
$C$ を $H$ の正規核(normal core)という(部分群の正規核)。この命題から、$L/K$ が正規であることと $C=H$、すなわち $H$ が $G$ の正規部分群であることが同値であることが再び分かる(基本定理の 4)。ex-normal-closure-cbrt2 では $G\cong S_3$ で、$L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ に対応する $H$ は位数 $2$ の部分群であり、その 3 つの共役の共通部分は $\{e\}$ なので、$N=M^{\{e\}}=M=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2,\omega)$ である。$G$ は左剰余類の集合 $G/H$($[G:H]=[L:K]$ 個の元)に左からの積で作用し、その作用の核が $C$ である。これは thm-normal-closure-galois の 2・3 の、根の置換による埋め込みと推移性を群の側から見たものである。
群 $G$ の部分集合 $X$ に対し、$X$ を含む $G$ の正規部分群全体の共通部分を $X$ の正規閉包(normal closure)といい、$\langle\!\langle X\rangle\!\rangle$ や $X^G$ と書く。正規部分群の共通部分は正規部分群なので、これは $X$ を含む最小の正規部分群であり、共役 $gxg^{-1}$($g\in G$、$x\in X$)全体で生成される部分群に等しい(生成される部分群は共役で生成元が入れ替わるので正規であり、$X$ を含む正規部分群はすべての共役を含む)。群の表示 $\langle X\mid R\rangle$ は、$X$ 上の自由群をその部分集合 $R$(関係式の集合)の正規閉包で割った剰余群である。
体論の正規閉包とは別の概念であるが、「含む最小の正規なもの」という形は共通している。体の側では正規閉包が「大きく」する操作であるのに対し、prop-normal-closure-core の正規核 $C$ は $H$ に含まれる最大の正規部分群で、「小さく」する操作である。Galois 対応は包含を逆にするので、体の正規閉包には部分群の正規核が対応する。部分群の正規閉包($H$ を含む最小の正規部分群)には、$L$ に含まれる $K$ 上正規な最大の中間体($L$ のすべての共役 $g(L)$ の共通部分)が対応する。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する