循環連分数

同義語:周期連分数periodic continued fraction

概要

循環連分数(periodic continued fraction)とは、部分商がある項から先で周期的に繰り返す無限単純連分数である。無理数の連分数展開が循環することは、整数係数の 2 次方程式の根(2次無理数)であることと同値である。無理数 $\alpha$ の展開が最初から循環することは、$\alpha$ が 2次無理数で $\alpha>1$ かつ共役 $\alpha'$ が $-1<\alpha'<0$ を満たすことと同値で、周期を逆に並べると $-1/\alpha'$ の展開になる(Galois)。平方数でない正の整数 $d$ では $\sqrt d=[a_0;\overline{a_1,\dots,a_{\ell-1},2a_0}]$ となり、Pell 方程式の基本解は周期の長さ $\ell$ の偶奇に応じた収束子から得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 連分数, 2次体, Pell方程式

小数展開が循環することは、有理数であることと同値である。連分数では、有理数の展開は有限で終わり(連分数)、無限に続く展開のうち循環するものは、整数係数の 2 次方程式の根である無理数(2次無理数)にちょうど対応する。たとえば
$$ \sqrt2=[1;2,2,2,\dots],\qquad \sqrt7=[2;1,1,1,4,1,1,1,4,\dots],\qquad \frac{1+\sqrt5}{2}=[1;1,1,1,\dots] $$
である。この記事では、この同値性(後半の向きは Lagrange による)を証明し、さらに次の 3 つを示す。

  1. 無理数 $\alpha$ の展開が最初から循環する(純循環する)ことは、$\alpha$ が 2次無理数で、$\alpha>1$ かつその共役 $\alpha'$ が $-1<\alpha'<0$ を満たすことと同値である。このとき、周期を逆に並べた展開は $-1/\alpha'$ を表す(Galois、1829 年)。
  2. 平方数でない正の整数 $d$ について、$\sqrt d=[a_0;\overline{a_1,\dots,a_{\ell-1},2a_0}]$ の形になり、$a_1,\dots,a_{\ell-1}$ は左右対称に並ぶ。
  3. Pell方程式 $x^2-dy^2=1$ の基本解は、周期の長さ $\ell$ が偶数なら第 $\ell-1$ 収束子、奇数なら第 $2\ell-1$ 収束子から得られる。
    証明の中心は、完全商を $(P_k+\sqrt D)/Q_k$ の形で表し、十分先の完全商が「被約」になること、被約な数が有限個しかないことである。

定義

連分数の記法は 連分数 の記事にしたがう。無理数 $\alpha$ の連分数展開の部分商を $a_0,a_1,a_2,\dots$、完全商を $\alpha_0=\alpha$、$\alpha_{k+1}=1/(\alpha_k-a_k)$、収束子を $p_n/q_n$($p_{-2}=0$、$p_{-1}=1$、$q_{-2}=1$、$q_{-1}=0$、$p_n=a_np_{n-1}+p_{n-2}$、$q_n=a_nq_{n-1}+q_{n-2}$)と書く。次の 2 つを使う。

  • 各 $k\ge1$ で $\alpha=[a_0;a_1,\dots,a_{k-1},\alpha_k]=\dfrac{\alpha_kp_{k-1}+p_{k-2}}{\alpha_kq_{k-1}+q_{k-2}}$ である(連分数 の記事の命題「収束子の漸化式」と、節「有理数の連分数展開」の冒頭の式)。
  • 無理数とその展開(整数 $a_0$ と正の整数 $a_1,a_2,\dots$ の無限列)は一対一に対応する(同じ記事の定理「無理数の連分数展開」)。完全商 $\alpha_k$ は無理数で、その展開は $a_k,a_{k+1},\dots$ である。
循環と純循環

無理数 $\alpha$ の展開が循環する(周期的である)とは、ある $m\ge0$ と $h\ge1$ があって、すべての $k\ge m$ で $a_{k+h}=a_k$ となることをいう。このとき $\alpha=[a_0;\dots,a_{m-1},\overline{a_m,\dots,a_{m+h-1}}]$ と書き、$h$ を周期という。$m=0$ にとれるとき、展開は純循環するといい、$\alpha=[\overline{a_0;a_1,\dots,a_{h-1}}]$ と書く。

$a_{k+1}$ 以降は $\alpha_{k+1}$ だけで決まり、$\alpha_{k+1}$ は $\alpha_k$ だけで決まる。したがって、展開が $m$ から周期 $h$ で循環することは、$\alpha_m=\alpha_{m+h}$ と同値である。
整数係数の 2 次方程式 $at^2+bt+c=0$($a\neq0$)の根である無理数を 2次無理数(quadratic irrational)という。$D>0$ を平方数でない整数とすると、$\mathbb{Q}(\sqrt D):=\{r+s\sqrt D\mid r,s\in\mathbb{Q}\}$ は体で、$\sigma(r+s\sqrt D):=r-s\sqrt D$ はその自己同型である(和と積を保つことは展開して確かめられる。2次体 の記事の共役と同じもの)。$\beta\in\mathbb{Q}(\sqrt D)$ について $\beta':=\sigma(\beta)$ を $\beta$ の共役という。$\beta$ が無理数($s\neq0$)なら $\beta'$ も無理数で、$\beta'\neq\beta$ である。
2次無理数 $\alpha$ は、解の公式によりある $\mathbb{Q}(\sqrt D)$ に属し(下の lem-pcf-standard-form)、$\alpha'$ は $\alpha$ を根とする整数係数の 2 次方程式のもう一つの根である($\sigma$ は有理数を動かさないので $\alpha'$ も同じ方程式の根で、$\alpha'\neq\alpha$)。とくに $\alpha'$ は $D$ のとり方によらない。

被約 2 次無理数

2次無理数 $\alpha$ が被約(reduced)であるとは、$\alpha>1$ かつ $-1<\alpha'<0$ であることをいう。

循環する展開の例
  1. $\sqrt2=[1;\overline2]$、$\sqrt3=[1;\overline{1,2}]$、$\sqrt7=[2;\overline{1,1,1,4}]$、$\sqrt{13}=[3;\overline{1,1,1,1,6}]$、$\sqrt{19}=[4;\overline{2,1,3,1,2,8}]$ である。どれも周期の最後が $2a_0$ で、その前は左右対称である(thm-pcf-sqrt)。$\sqrt d$ 自身は $\sqrt d'=-\sqrt d<-1$ なので被約でなく、純循環しない。
  2. 黄金比 $\varphi=\frac{1+\sqrt5}2=[\overline1]$ は純循環し、$\varphi'=\frac{1-\sqrt5}{2}=-0.618\ldots$ なので被約である。
  3. $\alpha=[\overline{1;2}]$ は $\alpha=1+\cfrac{1}{2+1/\alpha}$ から $2\alpha^2-2\alpha-1=0$、$\alpha=\frac{1+\sqrt3}2$ である。$\alpha'=\frac{1-\sqrt3}2$ で、$-1/\alpha'=\sqrt3+1=[\overline{2;1}]$ は周期を逆に並べた展開である(thm-pcf-galois)。

2 次無理数の完全商

標準形

2次無理数 $\alpha$ は、平方数でない正の整数 $D$ と、$Q_0\neq0$ かつ $Q_0\mid D-P_0^2$ を満たす整数 $P_0,Q_0$ によって $\alpha=(P_0+\sqrt D)/Q_0$ と書ける。

要点:2 次方程式の解の公式で、$D$ を判別式にとる。

詳しい証明を開く

$a\alpha^2+b\alpha+c=0$($a,b,c$ は整数、$a\neq0$)とし、$D:=b^2-4ac$ とおく。$\alpha$ は実数の無理数なので $D>0$ で、$D$ は平方数でない。$\alpha=\frac{-b+\sqrt D}{2a}$ なら $P_0:=-b$、$Q_0:=2a$、$\alpha=\frac{-b-\sqrt D}{2a}=\frac{b+\sqrt D}{-2a}$ なら $P_0:=b$、$Q_0:=-2a$ とおく。どちらでも $D-P_0^2=-4ac=Q_0\cdot(\mp2c)$ は $Q_0$ で割り切れる。$\square$

完全商の表示

$\alpha=(P_0+\sqrt D)/Q_0$ を lem-pcf-standard-form の形とし、$k\ge0$ について
$$ P_{k+1}:=a_kQ_k-P_k,\qquad Q_{k+1}:=\frac{D-P_{k+1}^2}{Q_k} $$
と定める。このとき $P_k,Q_k$ は整数、$Q_k\neq0$、$Q_k\mid D-P_k^2$ であり、$\alpha_k=(P_k+\sqrt D)/Q_k$ である。

要点:$k$ に関する帰納法で、$1/(\alpha_k-a_k)$ の分母を有理化する。

詳しい証明を開く

$k$ で正しいとすると、$\alpha_k-a_k=(\sqrt D-P_{k+1})/Q_k$ であり、$\alpha_{k+1}=\dfrac{Q_k}{\sqrt D-P_{k+1}}=\dfrac{Q_k(P_{k+1}+\sqrt D)}{D-P_{k+1}^2}$ である($D$ は平方数でないので分母は $0$ でない)。$D-P_{k+1}^2=(D-P_k^2)-a_kQ_k(a_kQ_k-2P_k)$ は $Q_k$ で割り切れるので $Q_{k+1}$ は整数で、$0$ でなく、$\alpha_{k+1}=(P_{k+1}+\sqrt D)/Q_{k+1}$ である。$D-P_{k+1}^2=Q_kQ_{k+1}$ なので $Q_{k+1}\mid D-P_{k+1}^2$ である。$\square$

とくに完全商はすべて同じ $\mathbb{Q}(\sqrt D)$ に属し、$\alpha_k'=(P_k-\sqrt D)/Q_k$ である。

被約な数の性質
  1. $\alpha_k$ が被約なら $\alpha_{k+1}$ も被約である。
  2. $\alpha=(P+\sqrt D)/Q$($P,Q$ は整数)が被約なら、$0< P<\sqrt D$、$0< Q<2\sqrt D$ である。とくに、$D$ を固定すると、この形の被約な数は有限個しかない。

要点:1 は $\alpha_{k+1}'=1/(\alpha_k'-a_k)$ と $a_k\ge1$ から、2 は $\alpha\pm\alpha'$ の符号から従う。

詳しい証明を開く

1:$0<\alpha_k-a_k<1$ なので $\alpha_{k+1}>1$ である。$\alpha_k>1$ より $a_k\ge1$ で、$\alpha_k'<0$ と合わせて $\alpha_k'-a_k<-1$ なので、$\alpha_{k+1}'=\sigma\bigl(1/(\alpha_k-a_k)\bigr)=1/(\alpha_k'-a_k)$ は $-1$ と $0$ の間にある。

2:$\alpha-\alpha'=2\sqrt D/Q>0$ から $Q>0$、$\alpha+\alpha'=2P/Q>1-1=0$ から $P>0$、$\alpha'<0$ から $P<\sqrt D$、$\alpha>1$ から $Q< P+\sqrt D<2\sqrt D$ である。$\square$

完全商はいずれ被約になる

$\alpha$ が 2次無理数なら、ある $K$ があって、$k\ge K$ のすべての完全商 $\alpha_k$ は被約である。

$\alpha$ を lem-pcf-standard-form の形に書き、$\sigma$ をその $\mathbb{Q}(\sqrt D)$ の共役とする。$k\ge2$ とし、$c_n:=p_n/q_n$ とおく。$\alpha=\frac{\alpha_kp_{k-1}+p_{k-2}}{\alpha_kq_{k-1}+q_{k-2}}$ を $\alpha_k$ について解くと($\alpha q_{k-1}-p_{k-1}\neq0$ は $\alpha$ が無理数であることによる)
$$ \alpha_k=-\frac{\alpha q_{k-2}-p_{k-2}}{\alpha q_{k-1}-p_{k-1}} $$
であり、両辺に $\sigma$ を施すと
$$ \alpha_k'=-\frac{\alpha'q_{k-2}-p_{k-2}}{\alpha'q_{k-1}-p_{k-1}}=-\frac{q_{k-2}}{q_{k-1}}\cdot\frac{\alpha'-c_{k-2}}{\alpha'-c_{k-1}} $$
となる($k\ge2$ なので $q_{k-2},q_{k-1}>0$)。$c_n\to\alpha$ であり(連分数 の記事の定理「無理数の連分数展開」)、$\alpha'\neq\alpha$ なので、最後の分数は $k\to\infty$ で $1$ に収束する。よって、ある $K_0\ge2$ があって $k\ge K_0$ で $\alpha_k'<0$ である。このとき $k\ge K_0$ について $\alpha_{k+1}>1$、$a_k\ge1$ であり、prf-pcf-reduced の 1 と同じ計算で $\alpha_{k+1}'=1/(\alpha_k'-a_k)\in(-1,0)$ となる。$K:=K_0+1$ とすればよい。$\square$

循環する展開と 2 次無理数

循環する展開と2次無理数

無理数 $\alpha$ の連分数展開が循環することと、$\alpha$ が 2次無理数であることは同値である。

後半の向き(2次無理数なら循環する)は Lagrange による(HW60 Theorem 177、pp. 144–145 と p. 153 の注)。前半の向きの証明は HW60 Theorem 176(p. 144)にあり、両向きとも Ste09 Theorem 5.5.5(pp. 112–114)にもある。ここでは後半の向きを、それらと違って被約な数の有限性から示す。

周期から方程式へ、被約な数の有限性から周期へ

循環するなら 2次無理数. $k\ge m$ で $a_{k+h}=a_k$ とし、$\beta:=\alpha_m$ とおく。$\beta=\alpha_{m+h}=[a_m;\dots,a_{m+h-1},\beta]$ である。有限列 $a_m,\dots,a_{m+h-1}$ の収束子の分子・分母を $P,P',Q,Q'$(第 $h-1$・第 $h-2$ のもの)とすると、連分数 の記事の命題「収束子の漸化式」により $\beta=\frac{\beta P+P'}{\beta Q+Q'}$、すなわち
$$ Q\beta^2+(Q'-P)\beta-P'=0 $$
であり、$Q\ge1$ なので $\beta$ は 2次無理数である。2 次方程式の解の公式から、有理数 $u,w$($w\neq0$)と平方数でない正の整数 $E$ で $\beta=u+w\sqrt E$ と書ける。$m=0$ なら $\alpha=\beta$ である。$m\ge1$ なら $\alpha=\frac{\beta p_{m-1}+p_{m-2}}{\beta q_{m-1}+q_{m-2}}$ は $\beta$ の有理式なので、体 $\mathbb{Q}(\sqrt E)$ に属し、$\alpha=r+s\sqrt E$($r,s\in\mathbb{Q}$)と書ける。$\alpha$ は無理数なので $s\neq0$ であり、$\alpha$ は $(t-r)^2-s^2E=0$ の根である。分母を払えば整数係数の 2 次方程式を得るので、$\alpha$ は 2次無理数である。
2次無理数なら循環する. $\alpha$ を lem-pcf-standard-form の形に書き、lem-pcf-pq により $\alpha_k=(P_k+\sqrt D)/Q_k$ とする。lem-pcf-eventually-reduced により $k\ge K$ の $\alpha_k$ は被約で、lem-pcf-reduced の 2 により組 $(P_k,Q_k)$($k\ge K$)は有限個の値しかとらない。よって $K\le m< m+h$ で $(P_m,Q_m)=(P_{m+h},Q_{m+h})$、すなわち $\alpha_m=\alpha_{m+h}$ となるものがあり、展開は $m$ から周期 $h$ で循環する。$\square$

純循環と被約

直前の完全商の復元

$\beta_k$ と $\beta_{k+1}$ が無理数 $\beta$ の隣り合う完全商で、どちらも被約なら、$\beta_k$ は $\beta_{k+1}$ だけで決まる。すなわち $b_k=\lfloor -1/\beta_{k+1}'\rfloor$、$\beta_k=b_k+1/\beta_{k+1}$ である($b_k$ は $\beta$ の第 $k$ 部分商)。

要点:$\beta_k'=b_k+1/\beta_{k+1}'$ が $(-1,0)$ にあることから $b_k$ が決まる。

詳しい証明を開く

$\beta_k=b_k+1/\beta_{k+1}$ に共役をとると $\beta_k'=b_k+1/\beta_{k+1}'$ であり、$-1<\beta_k'<0$ から $b_k<-1/\beta_{k+1}'< b_k+1$ となる。$-1/\beta_{k+1}'$ は無理数なので $b_k=\lfloor-1/\beta_{k+1}'\rfloor$ である。$\square$

正の整数 $b_0,\dots,b_{h-1}$ とその収束子の分子・分母 $p_n,q_n$ について、$M(b):=\begin{pmatrix}b&1\\1&0\end{pmatrix}$ とおくと、$h$ に関する帰納法と漸化式から
$$ M(b_0)M(b_1)\cdots M(b_{h-1})=\begin{pmatrix}p_{h-1}&p_{h-2}\\q_{h-1}&q_{h-2}\end{pmatrix} $$
である($h=0$ では単位行列)。$M(b)$ は対称行列なので、逆順の積はこの転置 $\begin{pmatrix}p_{h-1}&q_{h-1}\\p_{h-2}&q_{h-2}\end{pmatrix}$ であり、逆順の列 $b_{h-1},\dots,b_0$ について、連分数 の記事の命題「収束子の漸化式」から $t>0$ で
$$ [b_{h-1};b_{h-2},\dots,b_0,t]=\frac{p_{h-1}t+q_{h-1}}{p_{h-2}t+q_{h-2}} $$
が成り立つ。

純循環の判定と周期の逆転
  1. 無理数 $\alpha$ の展開が純循環することと、$\alpha$ が被約 2 次無理数であることは同値である。
  2. $\alpha=[\overline{a_0;a_1,\dots,a_{h-1}}]$ なら、$-1/\alpha'=[\overline{a_{h-1};a_{h-2},\dots,a_0}]$ である。

この定理は Galois による(Gal29 pp. 294–299)。Galois は 2 を先に述べ、それを使って 1 を導いている。

方程式の符号と逆順の列

純循環なら被約で、2 が成り立つ. $\alpha=[\overline{a_0;\dots,a_{h-1}}]$ とする。$a_0=a_h\ge1$ なので部分商はすべて正で、$\alpha=a_0+1/\alpha_1>a_0\ge1$ である。列 $a_0,\dots,a_{h-1}$ の収束子を $p_n/q_n$ とすると、$\alpha=[a_0;\dots,a_{h-1},\alpha]$ から $f(\alpha)=0$、ここで
$$ f(t):=q_{h-1}t^2+(q_{h-2}-p_{h-1})t-p_{h-2} $$
である。$q_{h-1}>0$ であり、$\alpha$ は無理数なので 2次無理数で、$\alpha'$ は $f$ のもう一つの根である。部分商がすべて正なので、$n\ge-1$ で $p_n\ge1$ であり、$q_n$ は $n\ge-1$ で減少しない($q_{-1}=0< q_0=1$、$n\ge1$ で $q_n\ge q_{n-1}$)。また $p_{h-1}-p_{h-2}=(a_{h-1}-1)p_{h-2}+p_{h-3}$ は、$h\ge2$ なら $p_{h-3}$ 以上なので $1$ 以上であり、$h=1$ なら $a_0-1\ge0$ である。よって
$$ f(0)=-p_{h-2}<0,\qquad f(-1)=(q_{h-1}-q_{h-2})+(p_{h-1}-p_{h-2})>0 $$
であり($h=1$ でも $f(-1)=1+(a_0-1)>0$)、$f$ は $(-1,0)$ に根をもつ。もう一つの根は $\alpha>1$ なので、$-1<\alpha'<0$ であり、$\alpha$ は被約である。
逆順の展開 $\gamma:=[\overline{a_{h-1};\dots,a_0}]$ は、上の等式により $\gamma=\frac{p_{h-1}\gamma+q_{h-1}}{p_{h-2}\gamma+q_{h-2}}$、すなわち $g(\gamma)=0$、$g(s):=p_{h-2}s^2+(q_{h-2}-p_{h-1})s-q_{h-1}$ を満たし、前段と同じ理由で $\gamma>1$ である。$s\neq0$ について $f(-1/s)=-g(s)/s^2$ なので、$g$ の 2 つの根は $-1/\alpha\in(-1,0)$ と $-1/\alpha'>1$ である。よって $\gamma=-1/\alpha'$ であり、2 が成り立つ。
被約なら純循環する. $\alpha$ が被約なら、lem-pcf-reduced の 1 によりすべての完全商が被約である。thm-pcf-lagrange により $\alpha_m=\alpha_{m+h}$ となる $m\ge0$、$h\ge1$ がある。$m\ge1$ なら、lem-pcf-predecessor により $\alpha_{m-1}=\alpha_{m+h-1}$ であり、これを繰り返すと $\alpha_0=\alpha_h$ を得る。よって展開は純循環する。$\square$

平方根の展開

以下、$d\ge2$ を平方数でない整数、$a_0:=\lfloor\sqrt d\rfloor$ とし、$\alpha=\sqrt d$ の展開を考える。thm-pcf-lagrange により $a_1,a_2,\dots$ は循環する。$\ell$ を、すべての $k\ge1$ で $a_{k+\ell}=a_k$ となる最小の $\ell\ge1$ とする(thm-pcf-sqrt の証明で、$(a_k)_{k\ge1}$ が $k=1$ から循環することも示す)。

平方根の展開の形
  1. $\sqrt d=[a_0;\overline{a_1,\dots,a_{\ell-1},2a_0}]$ であり、$\sqrt d+a_0=[\overline{2a_0;a_1,\dots,a_{\ell-1}}]$ の最小の周期も $\ell$ である。
  2. $1\le k\le\ell-1$ について $a_k=a_{\ell-k}$ である。
被約な $\sqrt d+a_0$ に純循環の判定を使う

$\beta:=\sqrt d+a_0$ は、$\beta>1$、$\beta'=a_0-\sqrt d\in(-1,0)$ なので被約であり、thm-pcf-galois により純循環する。$\beta$ の部分商を $b_k$、完全商を $\beta_k$ とする。$2a_0<\beta<2a_0+1$ から $b_0=2a_0$、$\beta-b_0=\sqrt d-a_0=\alpha-a_0$ なので $\beta_1=\alpha_1$ であり、$k\ge1$ で $b_k=a_k$、$\beta_k=\alpha_k$ である。$\beta$ が周期 $h$ で純循環すれば $a_{k+h}=a_k$($k\ge1$)なので、$(a_k)_{k\ge1}$ は $k=1$ から循環する。
逆に $\ell$ について、$\beta_1=\beta_{1+\ell}$(展開が等しい)である。すべての $\beta_k$ は被約なので、lem-pcf-predecessor により $\beta_0=\beta_\ell$、すなわち $a_\ell=b_\ell=b_0=2a_0$ である。よって $b$ は周期 $\ell$ で純循環し、上の段落から $b$ の周期は $(a_k)_{k\ge1}$ の周期でもあるので、$\ell$ が $b$ の最小の周期である。これで 1 が示された。
2:$-1/\beta'=1/(\sqrt d-a_0)=\alpha_1=[\overline{a_1;\dots,a_{\ell-1},2a_0}]$ である。一方 thm-pcf-galois の 2 を $\beta=[\overline{2a_0;a_1,\dots,a_{\ell-1}}]$ に使うと $-1/\beta'=[\overline{a_{\ell-1};a_{\ell-2},\dots,a_1,2a_0}]$ である。展開は一意なので、部分商を比べて $a_k=a_{\ell-k}$($1\le k\le\ell-1$)を得る。$\square$

$\sqrt d$ を lem-pcf-standard-form の形 $(0+\sqrt d)/1$ に書き、lem-pcf-pq の $P_k,Q_k$ をとる。

平方根の完全商と収束子
  1. $k\ge1$ について $p_{k-1}^2-dq_{k-1}^2=(-1)^kQ_k$ である。
  2. $k\ge1$ について $Q_k>0$ であり、$Q_k=1$ となるのは $\ell\mid k$ のときに限る。
  3. $1\le k\le\ell-1$ について $a_k\le a_0$ である。

1:$\sqrt d=\frac{\alpha_kp_{k-1}+p_{k-2}}{\alpha_kq_{k-1}+q_{k-2}}$ に $\alpha_k=(P_k+\sqrt d)/Q_k$ を代入して分母を払うと、$\sqrt d\bigl((P_k+\sqrt d)q_{k-1}+Q_kq_{k-2}\bigr)=(P_k+\sqrt d)p_{k-1}+Q_kp_{k-2}$ である。$1$ と $\sqrt d$ の係数を比べて
$$ dq_{k-1}=P_kp_{k-1}+Q_kp_{k-2},\qquad p_{k-1}=P_kq_{k-1}+Q_kq_{k-2} $$
を得る。前者に $q_{k-1}$、後者に $p_{k-1}$ を掛けて引くと、$p_{k-1}^2-dq_{k-1}^2=Q_k(p_{k-1}q_{k-2}-p_{k-2}q_{k-1})=(-1)^kQ_k$ である(連分数 の記事の命題「隣り合う収束子の行列式」)。
2:$k\ge1$ の $\alpha_k=\beta_k$ は被約なので、lem-pcf-reduced の 2 により $Q_k>0$ である。$Q_k=1$ なら $\alpha_k=P_k+\sqrt d$ で、$-1<\alpha_k'=P_k-\sqrt d<0$ から $P_k=a_0$、すなわち $\beta_k=\beta_0$ である。逆に $\beta_k=\beta_0$ なら、$\sqrt d$ の係数を比べて $Q_k=1$ である。$\beta_k=\beta_0$ は $b_k,b_{k+1},\dots$ と $b_0,b_1,\dots$ が一致すること、すなわち $k$ が $b$ の周期であることと同値で、$b$ の最小の周期は $\ell$ なので、これは $\ell\mid k$ と同値である($k=q\ell+r$、$0\le r<\ell$ なら $r$ も周期になり、最小性から $r=0$)。
3:2 により $Q_k\ge2$ なので、$P_k<\sqrt d$(lem-pcf-reduced の 2)と合わせて $a_k=\lfloor(P_k+\sqrt d)/Q_k\rfloor<\sqrt d$、よって $a_k\le a_0$ である。$\square$

$d=13$ の値は次のとおりで、$\ell=5$ である。

$k$$0$$1$$2$$3$$4$$5$$6$$7$$8$$9$$10$
$P_k$$0$$3$$1$$2$$1$$3$$3$$1$$2$$1$$3$
$Q_k$$1$$4$$3$$3$$4$$1$$4$$3$$3$$4$$1$
$a_k$$3$$1$$1$$1$$1$$6$$1$$1$$1$$1$$6$
$(p_{k-1},q_{k-1})$$(3,1)$$(4,1)$$(7,2)$$(11,3)$$(18,5)$$(119,33)$$(137,38)$$(256,71)$$(393,109)$$(649,180)$
$p_{k-1}^2-13q_{k-1}^2$$-4$$3$$-3$$4$$-1$$4$$-3$$3$$-4$$1$

Pell方程式の基本解

Pell方程式の基本解と周期
  1. $x^2-dy^2=1$ の正の解は、$\ell\mid k$ かつ $k$ が偶数である $k\ge1$ についての $(p_{k-1},q_{k-1})$ の全体である。基本解は、$\ell$ が偶数なら $(p_{\ell-1},q_{\ell-1})$、奇数なら $(p_{2\ell-1},q_{2\ell-1})$ である。
  2. $x^2-dy^2=-1$ が整数解をもつのは $\ell$ が奇数のときに限る。その正の解は、$\ell\mid k$ かつ $k$ が奇数である $k$ についての $(p_{k-1},q_{k-1})$ の全体である。
正の解は収束子で、収束子の値は $(-1)^kQ_k$

1:Pell方程式 の記事の命題「正の解は収束子である」により、正の解はある $n\ge0$ について $(p_n,q_n)$ である。$k:=n+1$ とすると prop-pcf-sqrt-pq の 1・2 により $p_n^2-dq_n^2=(-1)^kQ_k$、$Q_k>0$ なので、これが $1$ になるのは $Q_k=1$ かつ $k$ が偶数、すなわち $\ell\mid k$ かつ $k$ が偶数のときである。正の解 $(x,y)$ では $x+y\sqrt d$ は $x$ について増加し、$p_n$ は $n\ge0$ で狭義に増加する($p_n-p_{n-1}=(a_n-1)p_{n-1}+p_{n-2}>0$)ので、基本解は条件を満たす最小の $k$、すなわち $\ell$ が偶数なら $k=\ell$、奇数なら $k=2\ell$ に対応する。
2:$(x,y)$ を正の解とすると、$x^2=dy^2-1\ge2y^2-1\ge y^2$ から $x\ge y$ で、$\gcd(x,y)=1$ である。$\sqrt d-x/y=1/\bigl(y(y\sqrt d+x)\bigr)$ と $y\sqrt d+x\ge(\sqrt2+1)y>2y$ から $|\sqrt d-x/y|<1/(2y^2)$ なので、Pell方程式 の記事の補題「収束子であるための十分条件」により $(x,y)=(p_n,q_n)$ となる $n$ がある。1 と同様に、値 $-1$ をとるのは $\ell\mid k$ かつ $k$ が奇数のときで、そのような $k$ があることと $\ell$ が奇数であることは同値である。$x$ か $y$ が $0$ の整数解はない($y=0$ なら $x^2=-1$、$x=0$ なら $dy^2=1$)ので、整数解があれば符号を変えて正の解が得られる。$\square$

$d=13$ では $\ell=5$ が奇数なので、上の表の $k=5$ の $(18,5)$ が $x^2-13y^2=-1$ の解、$k=10$ の $(649,180)$ が基本解である。$\sqrt7=[2;\overline{1,1,1,4}]$ では $\ell=4$ が偶数で、$(p_3,q_3)=(8,3)$ が基本解であり、$x^2-7y^2=-1$ は解をもたない。

条件を外した反例

外す条件・変える値反例成り立たなくなること
2次無理数を 3 次の代数的数にする$\sqrt[3]2$展開が循環すること
2次無理数を超越数にする$e$展開が循環すること
被約の条件 $-1<\alpha'<0$ を外す($\alpha>1$ は保つ)$\sqrt2$純循環すること
被約の条件 $\alpha>1$ を外す($-1<\alpha'<0$ は保つ)$\frac{\sqrt5-1}4$純循環すること
反例の確かめ

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  1. $\sqrt[3]2$:$t^3-2$ は有理数の根をもたない(候補 $\pm1,\pm2$ はどれも根でない)ので、3 次式として $\mathbb{Q}$ 上既約である。$\sqrt[3]2$ が整数係数の 2 次式 $g$ の根なら、$g$ と $t^3-2$ の最大公約多項式は $1$ 次か $2$ 次の有理係数の因子になり、既約性に反する。よって $\sqrt[3]2$ は 2次無理数でなく、thm-pcf-lagrange により展開は循環しない。部分商に知られた規則はない(Ste09 Open Problem 5.5.7、p. 114)。
  2. $e$:$e=[2;1,2,1,1,4,1,1,6,\dots]$ で、部分商 $2k$($k=1,2,\dots$)が現れる(連分数 の記事の例「円周率とネイピア数」)。部分商が有界でないので循環しない。とくに $e$ は 2次無理数でない。
  3. $\sqrt2$:$\sqrt2>1$ だが $\sqrt2'=-\sqrt2<-1$ で、$\sqrt2=[1;\overline2]$ は純循環しない($a_0=1\neq2=a_1=a_2=\cdots$)。
  4. $\frac{\sqrt5-1}4$:$\alpha=0.309\ldots<1$、$\alpha'=\frac{-\sqrt5-1}4=-0.809\ldots$ である。$1/\alpha=\sqrt5+1$、$\sqrt5+1-3=\sqrt5-2$、$1/(\sqrt5-2)=\sqrt5+2$ から $\alpha=[0;3,\overline4]$ で、$a_0=0$ が二度と現れないので純循環しない。

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy, E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 4th ed., Oxford, Clarendon Press, 1960, §10.12 Theorem 176(循環連分数は 2 次無理数、p. 144)、Theorem 177(2 次無理数の展開は循環する、pp. 144–145)、第 10 章の注 §10.12(Lagrange、p. 153)
[2]
William Stein, Elementary Number Theory: Primes, Congruences, and Secrets: A Computational Approach, Undergraduate Texts in Mathematics, Springer, 2009, Theorem 5.5.5(pp. 112–114)、Open Problem 5.5.7(p. 114)。頁は著者による 2017 年 1 月 23 日の改訂版による
[3]
Évariste Galois, Démonstration d'un théorème sur les fractions continues périodiques, Annales de Mathématiques pures et appliquées 19 (1828–1829), 1829, pp. 294–301(定理と周期の逆転 pp. 294–297、被約と純循環 pp. 298–299)

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