判別式(高校数学)

同義語:判別式とは何かdiscriminant (high school mathematics)

概要

判別式(高校数学)とは、2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$($a\ne0$)の判別式 $D=b^2-4ac$ の正体と、ほかの判別式を扱う 3 本の記事への案内である。$D$ は 2 つの解 $\alpha,\beta$ の差の 2 乗に $a^2$ を掛けた $a^2(\alpha-\beta)^2$ に等しく、実数係数なら差が実数か純虚数かで符号が決まる。① 2次方程式の判別式の正体ではこの等式と符号の意味を、② 3次方程式と多項式の判別式では解の差の 2 乗の積としての $n$ 次式の判別式($x^3+px+q$ では $-4p^3-27q^2$)と終結式を、③ 2次形式と2次曲線の判別式では $ax^2+bxy+cy^2$ の判別式が符号・因数分解・2 次曲線の漸近線の向き・整数の 2 次形式に果たす役割を証明する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 2次方程式, 複素数
2 次方程式の解の公式 $x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$ の根号の中にある $b^2-4ac$ は、判別式と呼ばれる。高校では「正なら異なる 2 つの実数解、$0$ なら重解、負なら虚数解」と、解の種類を見分ける道具として習う。では、この式はそもそも何を表す数なのか。また、ほかに「判別式」と呼ばれるものはあるのか。この記事は、これらの問いに答える 3 本の記事への案内である。判別式の定義と正体を短く述べたあと、高校の計算と大学の概念の対応を表にし、どの順番で何を読めばよいかを示す。体の上の多項式の判別式を大学の言葉で扱う用語解説は 判別式 である。

判別式とは

2 次方程式の判別式

$a,b,c$ を実数(または複素数)とし、$a\ne0$ とする。2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$ に対して
$$ D=b^2-4ac $$
を、この方程式の 判別式 という。

判別式の正体は、2 つの解の差の 2 乗 である。2 つの解を $\alpha,\beta$ とすると、いつも
$$ b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2 $$
が成り立つ。この等式の証明は 2次方程式の判別式の正体 にある。まず数で確かめる。

判別式と解の差の 2 乗を比べる
方程式$D=b^2-4ac$解 $\alpha,\beta$$a^2(\alpha-\beta)^2$
$x^2-5x+6=0$$25-24=1$$3,\ 2$$1\cdot1^2=1$
$x^2-4x+4=0$$16-16=0$$2,\ 2$$1\cdot0^2=0$
$x^2+2x+5=0$$4-20=-16$$-1+2i,\ -1-2i$$1\cdot(4i)^2=-16$
$2x^2-3x-2=0$$9+16=25$$2,\ -\dfrac12$$4\cdot\left(\dfrac52\right)^2=25$

どの行でも、判別式と $a^2(\alpha-\beta)^2$ が一致している。

図 1 は、表の最初の 3 つの方程式について、解を複素数平面に置いたものである。2 つの解が異なる実数なら差 $\alpha-\beta$ は実数で、2 乗は正になる。重解なら差は $0$ である。共役な虚数解なら差は純虚数($4i$)で、2 乗は負になる。判別式の符号が解の種類を表すのは、このためである。図の矢印は $\beta$ から $\alpha$ への向きで、差 $\alpha-\beta$ を表す。
図1:3 つの 2 次方程式の解を複素数平面に置いた図。差 α − β が実数なら (α − β)² > 0、0 なら 0、純虚数なら (α − β)² < 0 図1:3 つの 2 次方程式の解を複素数平面に置いた図。差 α − β が実数なら (α − β)² > 0、0 なら 0、純虚数なら (α − β)² < 0

判別式で重解を見つける

$x$ の係数が偶数 $b=2b'$ のときは、$D=4b'^2-4ac=4(b'^2-ac)$ なので、$\dfrac D4=b'^2-ac$ の符号を調べればよい。$x^2+2mx+m+2=0$ では $b'=m$ なので、重解をもつのは $\dfrac D4=m^2-1\cdot(m+2)=(m-2)(m+1)=0$ のとき、つまり $m=2$ または $m=-1$ のときである。$m=2$ では $x^2+4x+4=(x+2)^2$、$m=-1$ では $x^2-2x+1=(x-1)^2$ となり、確かに重解をもつ。「判別式が $0$」は「2 つの解の差が $0$」と同じことなので、重解の判定になる。

「解の差の 2 乗」という見方は、3 次以上の方程式にそのまま広がる。一方、2 変数の式 $ax^2+bxy+cy^2$ にも同じ $b^2-4ac$ が現れ、こちらは式の符号や因数分解を判定する。この 2 つの広がりが、残りの 2 本の記事の主題である。
判別式は、高校数学のほかの記事でも道具として使う。2 次関数の最小値を平方完成で求める計算(2次関数の最大・最小)では、頂点の $y$ 座標に $-\dfrac{D}{4a}$ が現れる。解が決まった範囲に入る条件(解の配置)では、判別式・軸・端の値の 3 つを調べる。「つねに $0$ 以上の 2 次式は判別式が $0$ 以下」という考え方は、判別式で示す不等式 や Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の証明でも使う(この 2 本への案内は 判別式で示す不等式とCauchy–Schwarzの不等式)。解の和と積から判別式を計算する考え方は、根と係数の関係と対称式 でも使う。

高校の計算と大学の概念

高校で判別式を使う場面は、大学では次の概念として整理される。右の列は、その内容を扱う記事である。

高校の計算大学の概念記事
解の公式の根号の中 $b^2-4ac$解の差の 2 乗 $a^2(\alpha-\beta)^2$2次方程式の判別式の正体
$D>0,\ D=0,\ D<0$ で解の種類を分ける実数の差の 2 乗は正、純虚数の 2 乗は負2次方程式の判別式の正体
放物線と直線が接する ⇔ $D=0$重根による接触の判定2次方程式の判別式の正体
3 次方程式の実数解の個数を極値で調べる$n$ 次式の判別式 $\prod_{i< j}(\alpha_i-\alpha_j)^2$3次方程式と多項式の判別式
重解 ⇔ $f(\alpha)=f'(\alpha)=0$終結式 $\operatorname{Res}(f,f')$3次方程式と多項式の判別式
$x^2+xy+y^2\ge0$ を $x$ の 2 次式とみて示す2次形式の判別式と定値性2次形式と2次曲線の判別式
楕円・放物線・双曲線2 次形式の判別式の符号2次形式と2次曲線の判別式
$x^2+y^2$ で表せる整数整数の 2 次形式の同値2次形式と2次曲線の判別式

3 つの記事と読む順番

はじめて学ぶときは ① から読むとよい。② と ③ はどちらも ① の結果を使うが、互いには独立しているので、どちらから読んでもよい。

  1. 2次方程式の判別式の正体:$b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2$ を、解と係数の関係を使って証明する。係数が複素数でも「判別式が $0$ ⇔ 重解」が成り立つこと、実数係数なら判別式の符号で解の種類が決まる理由、判別式が放物線の頂点の深さや $x$ 軸との 2 交点の距離を表すことが分かる。
  2. 3次方程式と多項式の判別式:解の差の 2 乗をすべて掛けたものとして $n$ 次式の判別式を定める。$x^3+px+q$ の判別式が $-4p^3-27q^2$ であることを、導関数を使って証明し、それが極大値と極小値の積の $-27$ 倍であることを示す。符号で 3 次方程式の実数解の個数が分かること、4 次以上では符号だけでは決まらないこと、判別式が $f$ と $f'$ の終結式で表せることが分かる。
  3. 2次形式と2次曲線の判別式:$ax^2+bxy+cy^2$ の判別式 $b^2-4ac$ が、式の符号(いつも正か、正負両方をとるか)と因数分解を決めることを証明する。変数を 1 次式で取り替えると判別式が行列式の 2 乗倍になること、2 次曲線の漸近線の向きとの関係、整数の 2 次形式($x^2+5y^2$ と $2x^2+2xy+3y^2$ など)が分かる。
どの疑問にどの記事が答えるか
疑問答える記事
$b^2-4ac$ は何を表す数か①
判別式が負だと虚数解になるのはなぜか①
判別式はグラフの何を表すか①
3 次方程式にも判別式はあるか②
判別式を使わずに重解を見つける方法とどう関係するか②($f$ と $f'$ の共通の解)
4 次以上ではどうなるか②
$x^2+xy+y^2$ の判別式は何を判定しているか③
楕円と双曲線の違いは判別式でどう見えるか③
整数論の「2 次形式の判別式」とは何か③

同じ名前の 3 つの量

3 本の記事で扱う判別式を、1 つずつ例で並べておく。どれも「$b^2-4ac$ の仲間」だが、表しているものが違う。

3 種類の判別式を計算する
  • 2 次方程式 $x^2-4x+3=0$:$D=16-12=4$。解 $1,3$ の差の 2 乗 $(3-1)^2=4$ に等しい(①)。
  • 3 次方程式 $x^3-3x+1=0$:$\Delta=-4\cdot(-3)^3-27\cdot1^2=108-27=81>0$。異なる 3 つの実数解をもつ(②)。
  • 2 次形式 $x^2+xy+y^2$:$D=1-4=-3<0$。$(x,y)\ne(0,0)$ ならいつも正である(③)。
    1 つ目と 2 つ目は「解の差」を、3 つ目は「式の符号」を表している。3 つ目は、$y\ne0$ のとき $x^2+xy+y^2=y^2(t^2+t+1)$($t=\dfrac xy$)と書けるので、1 変数の $t^2+t+1$ の判別式と同じ値になる。

このほかにも「判別式」と呼ばれる量がある。

  • 不等式の証明:「$a\ne0$ のとき、すべての実数 $t$ で $at^2+bt+c\ge0$ ⇔ $a>0$ かつ $b^2-4ac\le0$」を使う技法は 判別式で示す不等式 で扱う($a\ne0$ を外すと崩れる。$a=b=0$、$c=1$ ならどの $t$ でも値は $1\ge0$ だが、$a>0$ ではない)。解が決まった範囲に入る条件は 解の配置 で扱う。
  • 3 次方程式の解の公式(Cardano の公式)に出てくる $\left(\dfrac q2\right)^2+\left(\dfrac p3\right)^3$ も判別式と呼ばれることがある。これは ② の $\Delta$ を $-108$ で割ったもので、符号が逆になる(計算は 3次方程式と多項式の判別式 の、Cardano の公式との関係を述べた注意にある)。
  • 大学では、代数体(有理数に $\sqrt2$ などを加えた数の世界)の判別式や、楕円曲線の判別式も現れる。これらは定義が異なるが、どれも「重なり」を検出する。楕円曲線の判別式は、$0$ になると曲線がとがったり自分と交わったりする。代数体の判別式は $0$ にはならない($0$ でない整数で、有理数に $\sqrt2$ を加えた数の世界では $8$)。その代わり、素数 $p$ で割り切れるかどうかが、$p$ で割った余りの世界で見たときに重なりが起きるかどうかを表す。詳しくは 判別式 にある。

さらに先へ

  • 体の上の多項式の判別式の一般論(判別式が係数の整数係数の多項式であることの証明、Galois 群との関係)は、用語解説 判別式 にある。5 次式 $x^5+ax^4+bx^3+cx^2+dx+e$ の判別式はすでに 59 項になる(Mil22 第 4 章)。
  • 2 次曲線の分類の証明(回転と平行移動で標準形に直す)は 2次曲線と2次形式 にある。

関連項目

参考文献

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