Ptolemyの第2定理

同義語:トレミーの第2定理内接四角形の対角線の比Ptolemy's second theorem

概要

Ptolemyの第2定理(Ptolemy's second theorem)とは、円に内接する四角形 $ABCD$(頂点がこの順に円周上に並ぶ凸四角形)で、$a=AB$、$b=BC$、$c=CD$、$d=DA$ とすると、対角線の比が $\frac{AC}{BD}=\frac{ad+bc}{ab+cd}$ となるという定理である。四角形を 2 本の対角線のそれぞれで 2 つの三角形に分け、面積を三角形の面積の公式 $\frac{xyz}{4R}$($R$ は外接円の半径)で 2 通りに書くと示せる。Ptolemyの定理 $AC\cdot BD=ac+bd$ と合わせると、$AC^2=\frac{(ac+bd)(ad+bc)}{ab+cd}$ のように対角線が 4 辺で表せる。4 辺を並べ替えた四角形の 3 本目の対角線も使うと、面積は 3 本の対角線の積を $4R$ で割ったものである。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Ptolemyの定理, 三角形の面積の公式, 円に内接する四角形, 正弦定理(高校数学)

高校での出発点:対角線の積が分かったら、比も知りたい

円に内接する四角形 $ABCD$ では、2 本の対角線の積が、向かい合う辺の積の和に等しい:
$$ AC\cdot BD=AB\cdot CD+AD\cdot BC . $$
これが Ptolemyの定理 である。この式は対角線の 積 を 4 辺で与えるが、2 本の対角線をそれぞれ求めるには、もう 1 つ式が要る。そこで対角線の 比 $\dfrac{AC}{BD}$ を 4 辺で表せないかを考える。まず数値で様子を見る。

座標で対角線の比を計算する

円 $x^2+y^2=25$ の上に $A(5,0)$、$B(3,4)$、$C(-3,4)$、$D(0,-5)$ をとる(Ptolemyの定理 の最初の例と同じ 4 点)。この順に円周を反時計回りに進むので、$ABCD$ は円に内接する凸四角形である。2 点間の距離の公式で 6 本の長さを求めると
$$ AB=2\sqrt5,\quad BC=6,\quad CD=3\sqrt{10},\quad DA=5\sqrt2,\quad AC=4\sqrt5,\quad BD=3\sqrt{10} $$
である。対角線の比は
$$ \frac{AC}{BD}=\frac{4\sqrt5}{3\sqrt{10}}=\frac{4}{3\sqrt2}=\frac{2\sqrt2}3 $$
である。一方、対角線 $AC$ の端点 $A$ に集まる 2 辺の積と、端点 $C$ に集まる 2 辺の積を足すと
$$ AB\cdot AD+CB\cdot CD=2\sqrt5\cdot5\sqrt2+6\cdot3\sqrt{10}=10\sqrt{10}+18\sqrt{10}=28\sqrt{10} $$
で、対角線 $BD$ の端点 $B$、$D$ について同じことをすると
$$ BA\cdot BC+DA\cdot DC=2\sqrt5\cdot6+5\sqrt2\cdot3\sqrt{10}=12\sqrt5+15\sqrt{20}=12\sqrt5+30\sqrt5=42\sqrt5 $$
である。その比は
$$ \frac{28\sqrt{10}}{42\sqrt5}=\frac{2\sqrt2}3 $$
で、対角線の比と一致する。

等脚台形で確かめる

$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(5,4)$、$D(3,4)$ の等脚台形は円に内接する。実際、点 $\left(4,\dfrac18\right)$ から 4 頂点までの距離の 2 乗は、たとえば $A$ では $16+\dfrac1{64}=\dfrac{1025}{64}$、$C$ では $1+\left(\dfrac{31}8\right)^2=\dfrac{1025}{64}$ で、$B$、$D$ でも同じ値になる。辺は $AB=8$、$BC=5$、$CD=2$、$DA=5$、対角線は $AC=\sqrt{25+16}=\sqrt{41}$、$BD=\sqrt{25+16}=\sqrt{41}$ で、比は $1$ である。端点に集まる辺の積の和は
$$ AB\cdot AD+CB\cdot CD=8\cdot5+5\cdot2=50,\qquad BA\cdot BC+DA\cdot DC=8\cdot5+5\cdot2=50 $$
で、比は $\dfrac{50}{50}=1$ となり、やはり一致する。

2 つの例では、対角線の比が「その対角線の両端に集まる辺の積の和」の比に等しかった。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 円に内接する四角形で、いつもこの比の等式が成り立つか。→ thm-ptol2-main
  2. Ptolemyの定理と組み合わせると、対角線の長さを 4 辺だけで書けるか。→ cor-ptol2-diagonals
  3. 同じ 4 辺を並べ替えると、何が変わり、何が変わらないか。→ prop-ptol2-three
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    三角形の面積 $S=\dfrac{abc}{4R}$面積を 2 通りに書く同じ量を 2 つの分割で数える
    対角線の積(Ptolemyの定理)対角線の比(第 2 定理)積と比から 2 つの量を決める
    4 辺の並べ方を変える3 本目の対角線4 辺の巡回的な並べ方の 3 通り
    証明の考え方は、四角形の面積を 2 通りに書くことである。対角線 $BD$ で 2 つの三角形に分けても(図 1)、対角線 $AC$ で分けても(図 2)、四角形の面積は同じである。
    対角線 BD で三角形 ABD と三角形 CBD に分けた四角形 対角線 BD で三角形 ABD と三角形 CBD に分けた四角形
    同じ四角形を対角線 AC で三角形 ABC と三角形 ACD に分けたもの 同じ四角形を対角線 AC で三角形 ABC と三角形 ACD に分けたもの

言葉の準備:記号と、三角形の面積の公式

以下、円に内接する四角形 $ABCD$ というときは、4 つの頂点が 1 つの円 $\Gamma$ の上に $A$、$B$、$C$、$D$ の順に並ぶ凸四角形を考える(円に内接する四角形)。$\Gamma$ の半径を $R$ とし、辺と対角線の長さを
$$ a=AB,\quad b=BC,\quad c=CD,\quad d=DA,\qquad p=AC,\quad q=BD $$
と書く。四角形の面積を $K$ で表す。
4 頂点のうちどの 3 つをとっても、その三角形の外接円は $\Gamma$ である。3 点は $\Gamma$ の上にあって一直線上にはなく、一直線上にない 3 点を通る円はただ 1 つだからである。したがって、三角形 $ABC$、$ACD$、$ABD$、$CBD$ の外接円の半径はどれも $R$ である。

三角形の面積と外接円の半径

3 辺の長さが $x$、$y$、$z$ で、外接円の半径が $R$ の三角形の面積 $S$ は
$$ S=\frac{xyz}{4R} $$
である。

正弦定理で正弦を消す

長さ $x$ の辺の向かいの角を $\theta$ とする。2 辺とその間の角による面積の公式から $S=\dfrac12yz\sin\theta$ である。正弦定理(高校数学) により $\dfrac x{\sin\theta}=2R$、つまり $\sin\theta=\dfrac x{2R}$ である。代入すると $S=\dfrac12yz\cdot\dfrac x{2R}=\dfrac{xyz}{4R}$ となる。$\square$

この公式は 三角形の面積の公式 でも扱っている。数値で確かめておく。

面積の公式を 2 つの三角形で確かめる
  1. 3 辺が $3$、$4$、$5$ の直角三角形。斜辺が外接円の直径なので $R=\dfrac52$ で、$\dfrac{3\cdot4\cdot5}{4\cdot\frac52}=\dfrac{60}{10}=6$ は、底辺 $\times$ 高さ $\mathbin{÷}2=\dfrac{3\cdot4}2=6$ と一致する。
  2. ex-ptol2-start の三角形 $ABD$。3 辺は $AB=2\sqrt5$、$AD=5\sqrt2$、$BD=3\sqrt{10}$、$R=5$ なので
    $$ \frac{2\sqrt5\cdot5\sqrt2\cdot3\sqrt{10}}{4\cdot5}=\frac{30\sqrt{100}}{20}=\frac{300}{20}=15 $$
    である。座標で計算すると、$\overrightarrow{AB}=(-2,4)$、$\overrightarrow{AD}=(-5,-5)$ から面積は $\dfrac12\lvert(-2)(-5)-4\cdot(-5)\rvert=\dfrac12\cdot30=15$ で、一致する。

主定理:対角線の比は、端点に集まる辺の積の和の比

Ptolemy の第 2 定理

円に内接する四角形 $ABCD$ で、$a=AB$、$b=BC$、$c=CD$、$d=DA$ とすると
$$ \frac{AC}{BD}=\frac{ad+bc}{ab+cd} $$
が成り立つ。つまり $AC\cdot(ab+cd)=BD\cdot(ad+bc)$ である。

式の形は次のように覚えられる。分子は、対角線 $AC$ の両端 $A$、$C$ に集まる 2 辺の積の和で、分母は、対角線 $BD$ の両端 $B$、$D$ に集まる 2 辺の積の和である。
$$ \frac{AC}{BD}=\frac{\underbrace{AB\cdot AD}_{A\text{ に集まる 2 辺}}+\underbrace{CB\cdot CD}_{C\text{ に集まる 2 辺}}}{\underbrace{BA\cdot BC}_{B\text{ に集まる 2 辺}}+\underbrace{DA\cdot DC}_{D\text{ に集まる 2 辺}}} $$

面積を 2 通りに書く

方針:四角形の面積 $K$ を、対角線 $BD$ で分けた 2 つの三角形の和と、対角線 $AC$ で分けた 2 つの三角形の和の 2 通りに書く。4 つの三角形の外接円はどれも $\Gamma$ なので、lem-ptol2-area の分母はどれも $4R$ である。
段 1(対角線 $BD$ で分ける)。四角形 $ABCD$ は凸なので、対角線 $BD$ は四角形の内部を通り、四角形を三角形 $ABD$ と三角形 $CBD$ に重なりなく分ける(図 1)。三角形 $ABD$ の 3 辺は $AB=a$、$AD=d$、$BD=q$、三角形 $CBD$ の 3 辺は $CB=b$、$CD=c$、$BD=q$ で、どちらの外接円の半径も $R$ である。lem-ptol2-area により
$$ K=\triangle ABD+\triangle CBD=\frac{adq}{4R}+\frac{bcq}{4R}=\frac{q(ad+bc)}{4R} $$
である。
段 2(対角線 $AC$ で分ける)。同じく、対角線 $AC$ は四角形を三角形 $ABC$ と三角形 $ACD$ に重なりなく分ける(図 2)。三角形 $ABC$ の 3 辺は $a$、$b$、$p$、三角形 $ACD$ の 3 辺は $c$、$d$、$p$ である。lem-ptol2-area により
$$ K=\triangle ABC+\triangle ACD=\frac{abp}{4R}+\frac{cdp}{4R}=\frac{p(ab+cd)}{4R} $$
である。
段 3(比べる)。段 1 と段 2 の右辺はどちらも $K$ なので
$$ \frac{p(ab+cd)}{4R}=\frac{q(ad+bc)}{4R} $$
である。両辺に $4R$ を掛けると $p(ab+cd)=q(ad+bc)$ となる。$q>0$、$ab+cd>0$ なので、両辺を $q(ab+cd)$ で割って
$$ \frac pq=\frac{ad+bc}{ab+cd} $$
を得る。$\square$

証明の段 1・段 2 で出てきた式 $K=\dfrac{q(ad+bc)}{4R}=\dfrac{p(ab+cd)}{4R}$ そのものも、四角形の面積の公式として使える。

辺が $25$、$60$、$52$、$39$ の四角形で証明をたどる

$a=25$、$b=60$、$c=52$、$d=39$ の四角形 $ABCD$ を、$AC=65$ となるように作る。$25^2+60^2=625+3600=4225=65^2$、$52^2+39^2=2704+1521=4225=65^2$ なので、三角形 $ABC$ と三角形 $ACD$ は $AC$ を斜辺とする直角三角形である。$B$ と $D$ を直線 $AC$ の反対側にとると、$\angle B=\angle D=90^\circ$ で、$B$、$D$ はどちらも $AC$ を直径とする円の上にある(円周角の定理(高校数学) の逆)。よって四角形は半径 $R=\dfrac{65}2$ の円に内接する。もう 1 本の対角線は、Ptolemyの定理 から
$$ BD=\frac{ac+bd}{AC}=\frac{1300+2340}{65}=\frac{3640}{65}=56 $$
である。
段 1($BD$ で分ける)。$4R=130$ なので
$$ \triangle ABD=\frac{25\cdot39\cdot56}{130}=\frac{54600}{130}=420,\qquad \triangle CBD=\frac{60\cdot52\cdot56}{130}=\frac{174720}{130}=1344 $$
で、$K=420+1344=1764$ である。
段 2($AC$ で分ける)。
$$ \triangle ABC=\frac{25\cdot60\cdot65}{130}=750,\qquad \triangle ACD=\frac{52\cdot39\cdot65}{130}=1014 $$
で、$K=750+1014=1764$ である。直角三角形の面積 $\dfrac{25\cdot60}2=750$、$\dfrac{52\cdot39}2=1014$ とも一致する。
段 3(比)。$ad+bc=975+3120=4095$、$ab+cd=1500+2028=3528$ で、どちらも $63$ で割り切れて
$$ \frac{ad+bc}{ab+cd}=\frac{4095}{3528}=\frac{65}{56}=\frac{AC}{BD} $$
となる。

正弦定理を使う別の証明を開く

頂点 $B$、$A$ の内角 $\angle ABC$、$\angle BAD$ を $B$、$A$ と書く。三角形 $ABC$ の外接円の半径は $R$ なので、正弦定理(高校数学) により $AC=2R\sin B$ である。同じく三角形 $ABD$ で $BD=2R\sin A$ である。よって $\dfrac{AC}{BD}=\dfrac{\sin B}{\sin A}$ である。

一方、円に内接する四角形では $\angle ADC=180^\circ-B$、$\angle BCD=180^\circ-A$ である(円に内接する四角形)。$\sin(180^\circ-\theta)=\sin\theta$ を使うと、対角線 $AC$ で分けて $K=\dfrac12ab\sin B+\dfrac12cd\sin(180^\circ-B)=\dfrac12(ab+cd)\sin B$、対角線 $BD$ で分けて $K=\dfrac12ad\sin A+\dfrac12bc\sin(180^\circ-A)=\dfrac12(ad+bc)\sin A$ である。2 つの式を等しいとおくと $\dfrac{\sin B}{\sin A}=\dfrac{ad+bc}{ab+cd}$ で、前の段落の式と合わせて $\dfrac{AC}{BD}=\dfrac{ad+bc}{ab+cd}$ を得る。

系:4 辺から対角線の長さを求める

Ptolemyの定理 は対角線の積 $pq$ を、thm-ptol2-main は対角線の比 $\dfrac pq$ を、4 辺で与える。積と比が分かれば、2 つの長さはそれぞれ決まる。

対角線の長さの公式

円に内接する四角形 $ABCD$ で、$a=AB$、$b=BC$、$c=CD$、$d=DA$、$p=AC$、$q=BD$ とすると
$$ p^2=\frac{(ac+bd)(ad+bc)}{ab+cd},\qquad q^2=\frac{(ac+bd)(ab+cd)}{ad+bc} $$
である。

積と比を掛けて、割る

Ptolemyの定理 により $pq=ac+bd$ である。thm-ptol2-main により $\dfrac pq=\dfrac{ad+bc}{ab+cd}$ である。2 式を掛けると $q$ が消えて
$$ p^2=pq\cdot\frac pq=(ac+bd)\cdot\frac{ad+bc}{ab+cd} $$
である。1 つ目の式を 2 つ目の式で割ると $p$ が消えて
$$ q^2=pq\mathbin{÷}\frac pq=(ac+bd)\cdot\frac{ab+cd}{ad+bc} $$
である。$\square$

同じ式は Brahmaguptaの公式 では、余弦定理で角 $B$ の余弦を 4 辺で表し、それを代入して導いている。ここでは角を使わずに、積と比から出した。

座標の例で対角線を求める

ex-ptol2-start の四角形($a=2\sqrt5$、$b=6$、$c=3\sqrt{10}$、$d=5\sqrt2$)で、3 つの和を計算する。
$$ ac+bd=2\sqrt5\cdot3\sqrt{10}+6\cdot5\sqrt2=6\sqrt{50}+30\sqrt2=30\sqrt2+30\sqrt2=60\sqrt2 $$
$$ ad+bc=28\sqrt{10},\qquad ab+cd=42\sqrt5 $$
(後の 2 つは ex-ptol2-start で計算した)。cor-ptol2-diagonals により
$$ p^2=\frac{60\sqrt2\cdot28\sqrt{10}}{42\sqrt5}=\frac{1680\sqrt{20}}{42\sqrt5}=40\cdot2=80,\qquad q^2=\frac{60\sqrt2\cdot42\sqrt5}{28\sqrt{10}}=\frac{2520\sqrt{10}}{28\sqrt{10}}=90 $$
で、$p=\sqrt{80}=4\sqrt5$、$q=\sqrt{90}=3\sqrt{10}$ となる。座標から求めた $AC=4\sqrt5$、$BD=3\sqrt{10}$ と一致する。

同じ型の 2 例目(辺 25, 39, 60, 52)を開く

$a=25$、$b=39$、$c=60$、$d=52$ とする。$ac+bd=1500+2028=3528$、$ad+bc=1300+2340=3640$、$ab+cd=975+3120=4095$ で、$\dfrac{3640}{4095}=\dfrac89$ である。

$$p^2=3528\cdot\frac89=3136=56^2,\qquad q^2=3528\cdot\frac98=3969=63^2$$

で、$p=56$、$q=63$ である。$pq=3528=ac+bd$ で、Ptolemy の定理とも合う。

4 辺を並べ替える:3 本目の対角線

同じ 4 つの長さ $25$、$60$、$52$、$39$ でも、並べる順を変えると別の四角形になる(2 通りの並べ方で面積が等しいことは Brahmaguptaの公式 でも見た)。図 3 は、同じ半径 $\dfrac{65}2$ の円に、辺を 3 通りの順に並べて内接させたものである。対角線の長さは $65$、$56$、$63$ の 3 種類が現れ、どの四角形もそのうちの 2 本をもつ。
辺 25, 60, 52, 39 を 3 通りの順に並べて同じ円に内接させた四角形。対角線は 65、56、63 の 3 種類で、どの四角形もそのうち 2 本をもつ 辺 25, 60, 52, 39 を 3 通りの順に並べて同じ円に内接させた四角形。対角線は 65、56、63 の 3 種類で、どの四角形もそのうち 2 本をもつ
円周を 1 周する並べ方で、回転と裏返しで重なるものを同じとみると、4 つの長さの並べ方は $\dfrac{3!}2=3$ 通りである($a$ を先頭に固定すると残り 3 つの並べ方は $3!=6$ 通りで、逆回りに読むと同じものが 2 つずつある)。

辺の順対角線対角線の積Ptolemy の定理の右辺
$a,b,c,d=25,60,52,39$$65$、$56$$3640$$ac+bd=1300+2340$
$a,c,b,d=25,52,60,39$$63$、$56$$3528$$ab+cd=1500+2028$
$a,b,d,c=25,60,39,52$$65$、$63$$4095$$ad+bc=975+3120$

表の 2 行目は、図 3 の中央($25,39,60,52$ の順)を逆回りに読んだものである。

3 本目の対角線と面積

円 $\Gamma$(半径 $R$)に内接する四角形 $ABCD$ の辺を $a,b,c,d$、対角線を $p=AC$、$q=BD$、面積を $K$ とする。このとき次が成り立つ。
(1) $\Gamma$ に、辺が順に $a,c,b,d$ の四角形が内接する。その四角形の対角線の 1 本は $q$ で、もう 1 本の長さ $r$ は
$$ r^2=\frac{(ad+bc)(ab+cd)}{ac+bd} $$
を満たす。
(2) $K=\dfrac{pqr}{4R}$ である。

弧の中心角で書く

要点:辺 $a,b,c,d$ の弧の中心角を $2\alpha,2\beta,2\gamma,2\delta$ とすると、弦の長さはどれも $2R\sin(\text{中心角の半分})$ で、$p=2R\sin(\alpha+\beta)$、$q=2R\sin(\beta+\gamma)$、$r=2R\sin(\alpha+\gamma)$ となる。一方、対角線 $AC$ と $BD$ のなす角は $\alpha+\gamma$ で、$K=\dfrac12pq\sin(\alpha+\gamma)=\dfrac{pqr}{4R}$ である。

詳しい証明を開く

段 1(弦の長さ)。$\Gamma$ の中心を $O$ とし、他の頂点を含まない弧 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中心角を $2\alpha,2\beta,2\gamma,2\delta$ とする。4 つの弧で円周を 1 周するので $2\alpha+2\beta+2\gamma+2\delta=360^\circ$、つまり $\alpha+\beta+\gamma+\delta=180^\circ$ である。中心角 $2\theta$($0^\circ<2\theta<360^\circ$)の弧の両端を $X$、$Y$ とし、この弧に含まれない $\Gamma$ の上の点 $Z$ をとると、円周角の定理(高校数学) により $\angle XZY=\theta$ である。三角形 $XYZ$ の外接円は $\Gamma$ なので、正弦定理により $XY=2R\sin\theta$ である。よって $a=2R\sin\alpha$、$b=2R\sin\beta$、$c=2R\sin\gamma$、$d=2R\sin\delta$ である。対角線 $AC$ は弧 $AB$ と弧 $BC$ を合わせた中心角 $2(\alpha+\beta)$ の弧の弦なので $p=2R\sin(\alpha+\beta)$、同じく $q=2R\sin(\beta+\gamma)$ である。

段 2(並べ替えた四角形)。$\Gamma$ の上に点 $A'$ をとり、そこから反時計回りに中心角 $2\alpha$、$2\gamma$、$2\beta$ だけ進んだ点を $B'$、$C'$、$D'$ とする。残りの弧 $D'A'$ の中心角は $360^\circ-2\alpha-2\gamma-2\beta=2\delta$ である。段 1 と同じく、四角形 $A'B'C'D'$ の辺は順に $2R\sin\alpha=a$、$2R\sin\gamma=c$、$2R\sin\beta=b$、$2R\sin\delta=d$ で、対角線は $B'D'=2R\sin(\gamma+\beta)=q$ と $r=A'C'=2R\sin(\alpha+\gamma)$ である。四角形 $A'B'C'D'$ に cor-ptol2-diagonals の $p^2$ の式を、辺 $a,b,c,d$ を $a,c,b,d$ に置き換えて使うと、$r^2=\dfrac{(ab+cd)(ad+cb)}{ac+bd}$ となる。これで (1) が示された。

段 3(対角線のなす角)。対角線 $AC$ と $BD$ の交点を $P$ とする。三角形 $APD$ で、$\angle APB$ は $P$ における外角なので、$\angle APB=\angle PAD+\angle PDA$ である。$\angle PAD=\angle CAD$ は弧 $CD$ に対する円周角で $\gamma$、$\angle PDA=\angle BDA$ は弧 $AB$ に対する円周角で $\alpha$ である。よって $\angle APB=\alpha+\gamma$ である。

段 4(面積)。$\theta=\alpha+\gamma$ とおく。四角形は $P$ のまわりの 4 つの三角形に分かれ、$P$ における 4 つの角は $\theta$、$180^\circ-\theta$、$\theta$、$180^\circ-\theta$ で、正弦はどれも $\sin\theta$ である。よって $K=\dfrac12(PA\cdot PB+PB\cdot PC+PC\cdot PD+PD\cdot PA)\sin\theta=\dfrac12(PA+PC)(PB+PD)\sin\theta=\dfrac12pq\sin\theta$ である。段 2 から $\sin\theta=\dfrac r{2R}$ なので、$K=\dfrac12pq\cdot\dfrac r{2R}=\dfrac{pqr}{4R}$ である。これで (2) が示された。$\square$

3 本の対角線で面積を求める
  1. 辺 $25,60,52,39$、$R=\dfrac{65}2$。$p=65$、$q=56$ で、prop-ptol2-three (1) の式は $r^2=\dfrac{4095\cdot3528}{3640}=3969$、$r=63$ である。面積は
    $$ K=\frac{65\cdot56\cdot63}{4\cdot\frac{65}2}=\frac{229320}{130}=1764 $$
    で、ex-ptol2-trace の $1764$ と一致する。
  2. ex-ptol2-start の四角形、$R=5$。$r^2=\dfrac{28\sqrt{10}\cdot42\sqrt5}{60\sqrt2}=\dfrac{1176\sqrt{50}}{60\sqrt2}=\dfrac{1176\cdot5}{60}=98$ で、$r=7\sqrt2$ である。面積は
    $$ K=\frac{4\sqrt5\cdot3\sqrt{10}\cdot7\sqrt2}{20}=\frac{84\sqrt{100}}{20}=42 $$
    である。座標で計算すると、$4$ 頂点 $(5,0)$、$(3,4)$、$(-3,4)$、$(0,-5)$ の四角形の面積は、靴ひも公式 で
    $$ \frac12\bigl\lvert(5\cdot4-3\cdot0)+(3\cdot4-(-3)\cdot4)+((-3)(-5)-0\cdot4)+(0\cdot0-5\cdot(-5))\bigr\rvert=\frac12(20+24+15+25)=42 $$
    で、一致する。

大学数学で見る:3 つの積と、比としての第 2 定理

表の右の 2 列を見ると、3 本の対角線 $p,q,r$ の積が、4 辺を 2 つずつ組にする 3 通りの分け方にちょうど対応している。

対角線の積の 3 つの式

3 通りの並べ方の四角形に Ptolemyの定理 を使うと
$$ pq=ac+bd,\qquad qr=ab+cd,\qquad rp=ad+bc $$
である(1 つ目は四角形 $ABCD$、2 つ目は辺の順 $a,c,b,d$ の四角形で向かい合う辺の組が $a$ と $b$、$c$ と $d$、3 つ目は辺の順 $a,b,d,c$ の四角形で向かい合う辺の組が $a$ と $d$、$b$ と $c$)。4 つの辺を 2 つずつの組に分ける分け方は、$\{a,c\},\{b,d\}$、$\{a,b\},\{c,d\}$、$\{a,d\},\{b,c\}$ の 3 通りで、それが 3 つの積に 1 つずつ対応する。
この見方では、thm-ptol2-main は 2 つの Ptolemy の定理の比である:
$$ \frac pq=\frac{rp}{qr}=\frac{ad+bc}{ab+cd}. $$
cor-ptol2-diagonals と prop-ptol2-three (1) も、$p^2=\dfrac{(pq)(rp)}{qr}$、$q^2=\dfrac{(pq)(qr)}{rp}$、$r^2=\dfrac{(qr)(rp)}{pq}$ という 1 つの形にまとまる。3 つの量 $p,q,r$ を、2 つずつの積 3 つから求める計算である。

ただし、この見方で thm-ptol2-main を証明するには、並べ替えた四角形が同じ円に内接すること(prop-ptol2-three (1) の前半)が先に要る。この記事の prf-ptol2-main は、並べ替えを使わずに面積だけで示した。

例と反例

thm-ptol2-main の仮定や式の組み方を外すと、比の等式が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
四角形が円に内接する辺 $3,4,3,4$、$\angle B=60^\circ$ の平行四辺形$\dfrac{AC}{BD}=\dfrac{ad+bc}{ab+cd}$
4 頂点が円周上にこの順に並ぶex-ptol2-start の 4 点を $A,C,B,D$ の順に結んだ交差した四角形比の等式
分子に対角線 $AC$ の端点の辺を集める分子と分母を入れかえた式比の等式
反例:円に内接しない平行四辺形

$AB=3$、$BC=4$、$\angle ABC=60^\circ$ の平行四辺形 $ABCD$ を考える(図 4)。平行四辺形の隣り合う角の和は $180^\circ$ なので $\angle BAD=120^\circ$ である。余弦定理(高校数学) により
$$ AC^2=3^2+4^2-2\cdot3\cdot4\cos60^\circ=25-12=13,\qquad BD^2=3^2+4^2-2\cdot3\cdot4\cos120^\circ=25+12=37 $$
である($BD$ は三角形 $ABD$ で $\angle BAD$ の向かいの辺)。よって $\dfrac{AC}{BD}=\sqrt{\dfrac{13}{37}}\approx0.593$ である。一方、$a=c=3$、$b=d=4$ なので $\dfrac{ad+bc}{ab+cd}=\dfrac{12+12}{12+12}=1$ である。両者は等しくない。
この平行四辺形は円に内接しない。向かい合う角が $60^\circ$ と $60^\circ$ で、和が $180^\circ$ でないからである(円に内接する四角形)。prf-ptol2-main で使った「4 つの三角形の外接円がどれも同じ円」が成り立たず、lem-ptol2-area の分母 $4R$ がそろわない。

辺 3, 4, 3, 4 で角 B が 60° の平行四辺形。対角線は AC が √13、BD が √37 で、円に内接しない 辺 3, 4, 3, 4 で角 B が 60° の平行四辺形。対角線は AC が √13、BD が √37 で、円に内接しない

反例:頂点の並ぶ順を変えた交差した四角形

ex-ptol2-start の 4 点を $A$、$C$、$B$、$D$ の順に結んだ四角形 $ACBD$ は、辺 $AC$ と $BD$ が交差する。この四角形の「辺」は $AC=4\sqrt5$、$CB=6$、$BD=3\sqrt{10}$、$DA=5\sqrt2$、「対角線」は $AB=2\sqrt5$、$CD=3\sqrt{10}$ である。thm-ptol2-main の式を形式的に当てはめると、「対角線」の比は
$$ \frac{AB}{CD}=\frac{2\sqrt5}{3\sqrt{10}}=\frac{\sqrt2}3\approx0.471 $$
で、端点に集まる辺の積の和の比は
$$ \frac{AC\cdot AD+BC\cdot BD}{CA\cdot CB+DA\cdot DB}=\frac{4\sqrt5\cdot5\sqrt2+6\cdot3\sqrt{10}}{4\sqrt5\cdot6+5\sqrt2\cdot3\sqrt{10}}=\frac{38\sqrt{10}}{54\sqrt5}=\frac{19\sqrt2}{27}\approx0.995 $$
である。4 点は同じ円の上にあるが、等式は成り立たない。交差した四角形では、対角線で分けた 2 つの三角形が重なり合い、prf-ptol2-main の「面積の和」が四角形の面積にならない。

反例:分子と分母を入れかえる

ex-ptol2-start の四角形で、分子に対角線 $BD$ の端点の辺を集めた式 $\dfrac{ab+cd}{ad+bc}$ を計算すると
$$ \frac{42\sqrt5}{28\sqrt{10}}=\frac{3}{2\sqrt2}=\frac{3\sqrt2}4\approx1.061 $$
で、$\dfrac{AC}{BD}=\dfrac{2\sqrt2}3\approx0.943$ と等しくない。これは $\dfrac{BD}{AC}$ の値である。「$AC$ の比には、$A$ と $C$ に集まる辺」と覚えれば取り違えない。

さらに先へ

  • 4 つの頂点を、円 $\Gamma$ に内側から接する 4 つの円に替え、辺の長さを共通接線の長さに替えても、Ptolemyの定理と同じ形の等式が成り立つ。これが Caseyの定理 である。
  • prop-ptol2-three (2) と Brahmaguptaの公式 $K=\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}$ はどちらも円に内接する四角形の面積の式で、前者は対角線と外接円の半径、後者は 4 辺だけで書く。円に内接しない四角形の面積は Bretschneiderの公式 で扱う。
  • 円に内接する多角形の辺を弦の長さ $2R\sin(\text{円周角})$ で書く考え方(prf-ptol2-three の要点)は、六角形の 3 本の対角線が 1 点で交わる条件を調べる 7円定理 でも使う。
  • prop-ptol2-three の 3 本の対角線と面積の式 $K=\dfrac{pqr}{4R}$ は Wei26 にも載っている。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する