発散級数

同義語:divergent series

概要

発散級数(divergent series)とは、部分和の列が収束しない級数のことで、実数の項なら $+\infty$ や $-\infty$ に発散するものと振動するものに分かれる。発散級数には Cesàro 和・Abel 和・Borel 和などの総和法で値を割り当てられ、収束する級数に通常の和を与える正則性、線形性、先頭の項を外に出せる安定性が基本の性質である。線形で安定な総和法は等比級数 $\sum z^n$ に値を与えるならそれは $\frac1{1-z}$ に限り、$1+1+1+\cdots$ や $1+2+3+\cdots$ には値を与えられない。行列による総和法が正則であるための条件は Silverman–Toeplitz の定理で与えられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 級数, 数列の極限, Abelの連続性定理

部分和が収束しない級数を 発散級数(divergent series)という。$1+1+1+\cdots$ のように $+\infty$ に発散するものも、$1-1+1-1+\cdots$ のように部分和が振動するものも発散級数である。発散級数には通常の意味の和はないが、部分和の平均をとる(Cesàro 和)、冪級数の端点での極限をとる(Abel 和)などの規則で値を割り当てることができ、そのような規則を 総和法 という。Fourier 級数の Cesàro 平均(Fejér の定理)や、冪級数の境界での振る舞い(Abel の連続性定理と Tauber の定理)など、総和法は解析学のあちこちに現れる。
ただし、どんな値でも割り当ててよいわけではない。収束する級数には通常の和を与え(正則性)、和の線形性と「先頭の項を外へ出せる」性質(安定性)を保つことを求めると、割り当てられる値はかなり強く制限される。この記事では、発散級数の分類と総和法の性質を定義し、線形で安定な総和法が等比級数に与える値が $\frac1{1-z}$ に限ること、$1+1+1+\cdots$ や $1+2+3+\cdots$ にはどの線形で安定な総和法も値を与えられないことを示す。さらに、行列による総和法が正則であるための条件(Silverman–Toeplitz の定理)を証明し、Borel の総和法で等比級数の和が半平面まで広がることを計算する。

発散級数

級数の言葉は 級数 の定義「級数と部分和」に従う。この記事では、項 $a_0,a_1,a_2,\dots$ を $0$ 番から数え、部分和を $s_n:=a_0+\cdots+a_n$ とする。項は実数または複素数とする。

発散級数

級数 $\sum_{n\ge0}a_n$ は、部分和の列 $(s_n)$ が収束しないとき 発散する といい、そのような級数を 発散級数 という。項が実数のとき、発散級数は次の 3 つに分かれる。

  1. $s_n\to+\infty$ となる($+\infty$ に発散する)。
  2. $s_n\to-\infty$ となる($-\infty$ に発散する)。
  3. どちらでもない(振動する)。このとき $(s_n)$ は有界なこともあり、有界でないこともある。

項が非負の級数は収束するか $+\infty$ に発散するかのどちらかで、振動しない(級数 の命題「正項級数の収束と部分和の有界性」)。

発散級数の例
  1. $\sum1=1+1+1+\cdots$ は $s_n=n+1\to+\infty$。調和級数 $\sum\frac1{n+1}$ も $+\infty$ に発散する。
  2. $\sum(-1)^n=1-1+1-\cdots$ は $s_n$ が $1,0,1,0,\dots$ で、有界に振動する。
  3. $\sum(-1)^n(n+1)=1-2+3-4+\cdots$ は $s_n$ が $1,-1,2,-2,3,\dots$ で、有界でなく振動する。
  4. 複素数 $z\ne1$ について、等比級数 $\sum z^n$ の部分和は $s_n=\frac{1-z^{n+1}}{1-z}$ であり、$|z|\ge1$ なら項が $0$ に近づかないので発散する(級数 の命題「収束する級数の項は0に近づく」)。

総和法

総和法とは、ある範囲の級数に数を割り当てる規則のことである。級数 $\sum a_n$ を項の列 $a=(a_0,a_1,\dots)$ と同一視する。

総和法とその性質

総和法 $T$ とは、項の列の集合の部分集合 $D_T$ と写像 $T\colon D_T\to\mathbb{C}$ の組である。$a\in D_T$ のとき級数 $\sum a_n$ は $T$ 総和可能 であるといい、$T(a)$ をその $T$ 和 という。$T$ について次の性質を考える。

  1. 正則:収束するすべての級数は $D_T$ に属し、$T$ 和は通常の和に等しい。
  2. 線形:$D_T$ は数列の和とスカラー倍で閉じ、$T$ は線形写像である。
  3. 安定:$a=(a_0,a_1,\dots)$ と、先頭の項を除いた $a':=(a_1,a_2,\dots)$ について、$a\in D_T$ と $a'\in D_T$ は同値であり、そのとき $T(a)=a_0+T(a')$ である。

通常の和(収束する級数だけを総和可能とし、和を割り当てる)は正則・線形・安定な総和法である。Cesàro 和と Abel 和は Abelの連続性定理 の定義「Abel 和と Cesàro 和」で定めた。Cesàro 和は部分和の平均 $\sigma_N:=\frac{s_0+\cdots+s_N}{N+1}$ の極限、Abel 和は $\lim_{x\to1-0}\sum a_nx^n$ である。同じ記事の補題「収束する列の平均」と定理「Abelの連続性定理」は、どちらも正則であることを述べている。線形であることは極限の線形性から分かる。

Cesàro 和と Abel 和は安定である

Cesàro 和と Abel 和はどちらも安定である。

$a'=(a_1,a_2,\dots)$ の部分和は $s_n':=s_{n+1}-a_0$ である。
Cesàro 和:$a'$ の部分和の平均は
$$ \sigma_N'=\frac1{N+1}\sum_{n=0}^{N}(s_{n+1}-a_0)=\frac{1}{N+1}\Bigl(\sum_{n=0}^{N+1}s_n-s_0\Bigr)-a_0=\frac{N+2}{N+1}\,\sigma_{N+1}-\frac{a_0}{N+1}-a_0 $$
である($s_0=a_0$)。$\frac{N+2}{N+1}\to1$ なので、$\sigma_N\to s$ と $\sigma_N'\to s-a_0$ は同値である。
Abel 和:$0< x<1$ と $N\ge1$ について $\sum_{n=0}^{N}a_nx^n=a_0+x\sum_{n=0}^{N-1}a_{n+1}x^n$ なので、$f(x):=\sum_{n\ge0}a_nx^n$ と $g(x):=\sum_{n\ge0}a_{n+1}x^n$ の一方が収束すれば他方も収束し、$f(x)=a_0+xg(x)$ である($x=0$ では両方とも収束する)。$x\to1-0$ で $x\to1$ なので、$f(x)\to s$ と $g(x)\to s-a_0$ は同値である。$\square$

線形で安定な総和法が決める値

安定性と線形性だけから、多くの発散級数の値は(値が付くなら)1 通りに決まり、値が付けられない級数もある。

線形で安定な総和法と等比級数

$T$ を線形で安定な総和法とする。

  1. 複素数 $z\ne1$ について等比級数 $\sum z^n$ が $T$ 総和可能なら、その $T$ 和は $\frac1{1-z}$ である。とくに $1-1+1-\cdots$ の $T$ 和は $\frac12$、$1+2+4+8+\cdots$ の $T$ 和は $-1$ である。
  2. $1+1+1+\cdots$ は $T$ 総和可能でない。
  3. $1+2+3+\cdots$ は $T$ 総和可能でない。

1:$a:=(1,z,z^2,\dots)\in D_T$、$S:=T(a)$ とする。安定性から $a'=(z,z^2,\dots)\in D_T$ で $S=1+T(a')$ である。$z\ne0$ なら $a'=za$ であり、線形性から $T(a')=zS$、したがって $S=1+zS$、$S=\frac1{1-z}$ である。$z=0$ なら $a'$ は零列で $T(a')=0$(線形性)なので $S=1$ である。
2:$e:=(1,1,1,\dots)\in D_T$ とすると、安定性から $e'=e$ について $T(e)=1+T(e)$ となり、矛盾する。
3:$b:=(1,2,3,\dots)\in D_T$ とする。$c:=(0,1,2,3,\dots)$ は先頭の項を除くと $b$ になるので、安定性から $c\in D_T$ で $T(c)=0+T(b)$ である。線形性から $b-c=(1,1,1,\dots)\in D_T$ となり、2 に反する。$\square$

1 の $1+2+4+\cdots=-1$ は、$\frac1{1-z}$ に $z=2$ を代入した値である。Abel 和や Cesàro 和はこの級数に値を与えない($\sum2^nx^n$ は $x$ が $1$ に近いと発散し、Cesàro 平均は $+\infty$ に発散する)。実際、次の節の prop-ds-positive により、成分が非負の正則な行列による総和法は $+\infty$ に発散する級数に有限の値を与えない。
3 から、「$1+2+3+\cdots=-\frac1{12}$」はどの線形で安定な総和法の値でもない。$-\frac1{12}$ は Riemannゼータ関数 の解析接続の値 $\zeta(-1)$ であり、級数の和ではない(同じ記事の例「解析接続の値は級数の和ではない」)。

行列による総和法

部分和の列を無限行列で別の列に写し、その極限をとる総和法を考える。Cesàro 和はその代表である。

行列による総和法

複素数の無限行列 $C=(c_{mn})_{m,n\ge0}$ を固定する。級数 $\sum a_n$ の部分和 $(s_n)$ について、各 $m$ で $t_m:=\sum_{n\ge0}c_{mn}s_n$ が収束し、$(t_m)$ が $t$ に収束するとき、$\sum a_n$ は $C$ 総和可能 であるといい、$t$ を $C$ 和 という。$C$ による総和法は線形である。

$c_{mn}=\frac1{m+1}$($n\le m$)、$c_{mn}=0$($n>m$)とすれば $t_m=\sigma_m$ で、Cesàro 和に戻る。$c_{mn}=1$($n=m$)、$0$($n\ne m$)なら通常の和である。

Silverman–Toeplitz の定理

行列 $C=(c_{mn})$ による総和法が正則であるための必要十分条件は、次の 3 つが成り立つことである。

  1. $M:=\sup_m\sum_{n\ge0}|c_{mn}|<\infty$。
  2. 各 $n$ について $c_{mn}\to0$($m\to\infty$)。
  3. $\sum_{n\ge0}c_{mn}\to1$($m\to\infty$)。

正則とは、収束する部分和の列 $s_n\to s$ についてつねに $t_m$ が定義されて $t_m\to s$ となることである。1 は各行の絶対値の和が一様に有界であること、2 は有限個の部分和を変えても $C$ 和が変わらないこと、3 は定数列が保たれることを表す。

十分性は誤差を前後に分け、必要性は一様有界性原理による

十分性。 1〜3 を仮定し、$s_n\to s$ とする。$(s_n)$ は有界なので、1 から各 $m$ で $\sum_nc_{mn}s_n$ は絶対収束し、$t_m$ が定義される。$e_n:=s_n-s$ とおくと
$$ t_m-s=s\Bigl(\sum_{n\ge0}c_{mn}-1\Bigr)+\sum_{n\ge0}c_{mn}e_n $$
である。第 1 項は 3 により $0$ に近づく。$\varepsilon>0$ をとり、$n\ge N$ なら $|e_n|\le\varepsilon$ となる $N$ をとると
$$ \Bigl|\sum_{n\ge0}c_{mn}e_n\Bigr|\le\sum_{n< N}|c_{mn}|\,|e_n|+\varepsilon\sum_{n\ge N}|c_{mn}|\le\sum_{n< N}|c_{mn}|\,|e_n|+M\varepsilon $$
であり、右辺の有限和は 2 により $m\to\infty$ で $0$ に近づく。よって $\limsup_m|t_m-s|\le M\varepsilon$ で、$\varepsilon$ は任意なので $t_m\to s$ である。
必要性。 正則であるとする。2 は、$n$ 番目だけが $1$ で残りが $0$ の部分和の列($0$ に収束する)に正則性を当てれば $t_m=c_{mn}\to0$ として得られる。3 は、定数列 $s_n=1$ に当てれば $t_m=\sum_nc_{mn}\to1$ として得られる。1 は Banach空間 の定理「一様有界性原理」から従う。

1 の証明を開く

$0$ に収束する数列の空間 $c_0$ は上限ノルム $\|s\|_\infty:=\sup_n|s_n|$ について Banach 空間である(Banach空間 の命題「数列の空間の完備性」の 2)。

各行の絶対値の和は有限。 $m$ を固定し、$K\ge0$ について $\varphi_{m,K}(s):=\sum_{n\le K}c_{mn}s_n$ とおく。これは $c_0$ 上の有界線形汎関数で、$|\varphi_{m,K}(s)|\le\bigl(\sum_{n\le K}|c_{mn}|\bigr)\|s\|_\infty$ である。$s_n:=\overline{c_{mn}}/|c_{mn}|$($c_{mn}\ne0$ かつ $n\le K$)、それ以外は $s_n:=0$ とおくと $s\in c_0$、$\|s\|_\infty\le1$ で $\varphi_{m,K}(s)=\sum_{n\le K}|c_{mn}|$ なので、$\|\varphi_{m,K}\|=\sum_{n\le K}|c_{mn}|$ である。正則性から、各 $s\in c_0$ について $\sum_nc_{mn}s_n$ は収束するので、$\sup_K|\varphi_{m,K}(s)|<\infty$ である。一様有界性原理により $\sup_K\|\varphi_{m,K}\|=\sum_n|c_{mn}|<\infty$ である。

行についての一様な有界性。 $\varphi_m(s):=\sum_nc_{mn}s_n=t_m$ は $c_0$ 上の線形汎関数で、上の評価から $|\varphi_m(s)|\le\bigl(\sum_n|c_{mn}|\bigr)\|s\|_\infty$、上と同じ $s$ をとって $|\varphi_m(s)|\ge\sum_{n\le K}|c_{mn}|$ となるので $\|\varphi_m\|=\sum_n|c_{mn}|$ である。正則性から、各 $s\in c_0$ について $\varphi_m(s)=t_m\to0$ なので $\sup_m|\varphi_m(s)|<\infty$ である。一様有界性原理により $\sup_m\|\varphi_m\|=\sup_m\sum_n|c_{mn}|<\infty$ である。$\square$

Cesàro 和の行列では $\sum_n|c_{mn}|=1$、各列は $\frac1{m+1}\to0$、行の和は $1$ なので、thm-ds-toeplitz から正則性が改めて分かる。成分が非負の正則な行列は、$+\infty$ への発散も保つ。

非負の正則な行列は $+\infty$ への発散を保つ

行列 $C=(c_{mn})$ による総和法が正則で、すべての成分が実数で $c_{mn}\ge0$ とする。実数の部分和の列が $s_n\to+\infty$ を満たし、各 $m$ で $t_m=\sum_nc_{mn}s_n$ が収束するなら、$t_m\to+\infty$ である。とくに $+\infty$ に発散する級数は $C$ 総和可能でない。

$K>0$ をとり、$n\ge N$ なら $s_n\ge K$ となる $N$ をとる。$c_{mn}\ge0$ なので
$$ t_m\ge\sum_{n< N}c_{mn}s_n+K\sum_{n\ge N}c_{mn}=\sum_{n< N}c_{mn}(s_n-K)+K\sum_{n\ge0}c_{mn} $$
である。thm-ds-toeplitz の 2 により右辺の有限和は $0$ に近づき、3 により最後の項は $K$ に近づく。よって $\liminf_mt_m\ge K$ で、$K$ は任意なので $t_m\to+\infty$ である。$\square$

Borel の総和法

行列の代わりに連続な重みを使う総和法もある。

Borel 和

級数 $\sum a_n$ の部分和 $(s_n)$ について、すべての $t\ge0$ で $\sum_{n\ge0}s_n\frac{t^n}{n!}$ が収束し、
$$ \lim_{t\to+\infty}e^{-t}\sum_{n=0}^{\infty}s_n\frac{t^n}{n!}=s $$
となるとき、$\sum a_n$ は Borel 総和可能 であるといい、$s$ を Borel 和 という。

Borel 和は正則である

収束する級数は Borel 総和可能で、Borel 和は通常の和に等しい。

重みの和が 1 で各重みが 0 に近づく

$w_n(t):=e^{-t}\frac{t^n}{n!}$ とおく。$w_n(t)\ge0$、$\sum_nw_n(t)=e^{-t}e^t=1$ であり、各 $n$ で $w_n(t)\to0$($t\to+\infty$)である($e^t\ge\frac{t^{n+1}}{(n+1)!}$ から $w_n(t)\le\frac{n+1}{t}$)。$s_n\to s$ とし、$e_n:=s_n-s$ とおく。$(s_n)$ は有界なので $\sum_ns_nw_n(t)$ は収束し、$e^{-t}\sum_ns_n\frac{t^n}{n!}-s=\sum_ne_nw_n(t)$ である。$\varepsilon>0$ をとり、$n\ge N$ で $|e_n|\le\varepsilon$ となる $N$ をとると、$\bigl|\sum_ne_nw_n(t)\bigr|\le\sum_{n< N}|e_n|w_n(t)+\varepsilon$ であり、右辺の有限和は $t\to+\infty$ で $0$ に近づく。$\square$

これは thm-ds-toeplitz の十分性の証明を、行の番号 $m$ を連続な $t$ に替えて繰り返したものである。

等比級数の Borel 和

複素数 $z\ne1$ について $\sum z^n$ を考える。$s_n=\frac{1-z^{n+1}}{1-z}$ なので
$$ e^{-t}\sum_{n=0}^{\infty}s_n\frac{t^n}{n!}=\frac{e^{-t}\bigl(e^t-ze^{zt}\bigr)}{1-z}=\frac{1-ze^{(z-1)t}}{1-z} $$
である(級数はすべての $t$ で収束する)。$|e^{(z-1)t}|=e^{(\operatorname{Re}z-1)t}$ なので、$z\ne0$ のとき右辺が $t\to+\infty$ で収束するのは $\operatorname{Re}z< 1$ のときに限り、そのとき極限は $\frac1{1-z}$ である($z=0$ では右辺はつねに $1$)。よって $\sum z^n$ は $\operatorname{Re}z< 1$ のときに限り Borel 総和可能で、Borel 和は $\frac1{1-z}$ である。

等比級数 $\sum z^n$($z\ne1$)について、各総和法で和が付く範囲を比べると次のようになる。和が付けばその値はどれも $\frac1{1-z}$ である。

総和法$\sum z^n$ が総和可能な $z$ の範囲理由
通常の和$\lvert z\rvert< 1$級数 の定理「等比級数の和」と ex-ds-examples の 4
Cesàro 和$\lvert z\rvert\le1$、$z\ne1$$\sigma_N=\frac1{1-z}-\frac{z(1-z^{N+1})}{(N+1)(1-z)^2}$
Abel 和$\lvert z\rvert\le1$、$z\ne1$$0\le x< 1$ で $\sum z^nx^n=\frac1{1-zx}$($\lvert z\rvert\le1$ のとき)
Borel 和$\operatorname{Re}z< 1$ex-ds-borel-geometric

Cesàro 和の行は、$|z|\le1$ なら第 2 項が $0$ に近づき、$|z|>1$ なら第 2 項の絶対値が $\frac{|z|^{N+2}-|z|}{(N+1)|1-z|^2}\to\infty$ となることによる。Abel 和の行は、$|z|>1$ なら $x>\frac1{|z|}$ で冪級数が発散することによる。$|z|=1$、$z\ne1$ の等比級数は Cesàro 和・Abel 和・Borel 和のどれでも和が付き、$|z|>1$ かつ $\operatorname{Re}z< 1$ の等比級数(たとえば $z=-2$ の $1-2+4-8+\cdots$。Borel 和は $\frac13$)は Borel 和だけで和が付く。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
thm-ds-geometric の安定性偶数番目の部分和の極限 $\lim_Ns_{2N}$ を和とする総和法正則かつ線形だが、$1-1+1-\cdots$ に $\frac12$ でなく $1$ を与える
thm-ds-toeplitz の 3$c_{mn}=\frac{2}{m+1}$($n\le m$)、$0$($n>m$)収束する級数の和を 2 倍にし、正則でない
thm-ds-toeplitz の 2$c_{m0}=1$、$c_{mn}=0$($n\ge1$)$C$ 和がつねに $s_0=a_0$ で、正則でない
thm-ds-toeplitz の 1$c_{mm}=m+1$、$c_{m,m+1}=-m$、他は $0$$s_n=\frac{(-1)^n}{\sqrt n}$($s_0:=0$)は $0$ に収束するが $(t_m)$ は有界でない
prop-ds-positive の成分の非負性$c_{mm}=2$、$c_{m,m+1}=-1$、他は $0$正則だが、$s_n=2^n$($1+1+2+4+\cdots$)を $0$ に写す

1 行目:$1-1+1-\cdots$ の偶数番目の部分和は $1$ である。先頭の項を除いた $-1+1-1+\cdots$ の偶数番目の部分和は $-1$ なので、$1\ne1+(-1)$ となり安定でない。4 行目:$t_m=(m+1)s_m-ms_{m+1}=s_m+m(s_m-s_{m+1})$ で、$m$ が偶数なら $m(s_m-s_{m+1})=m\bigl(\frac1{\sqrt m}+\frac1{\sqrt{m+1}}\bigr)\ge\sqrt m$ である。2 と 3 は成り立つ(各列の成分は 2 つの行にしか現れず、行の和は $1$)。5 行目:$\sum_n|c_{mn}|=3$、各列は 2 つの行を除いて $0$、行の和は $1$ なので thm-ds-toeplitz により正則であり、$t_m=2\cdot2^m-2^{m+1}=0$ である。

補足

総和法の使われ方と文献

連続な周期関数の Fourier 級数では、部分和の Cesàro 平均が元の関数に一様収束する(Fejér の定理。Parsevalの等式 の命題「部分和の平均の一様収束」)。部分和そのものの収束を調べる前に、より扱いやすい総和法で和を付け、Tauber 型の定理で通常の収束を取り戻す、というのが総和法の典型的な使い方である(Abelの連続性定理 の定理「Tauberの定理」と注意「総和法としての見方」)。この記事の定理・命題の証明は、級数・Abelの連続性定理・Banach空間 の定理から組み立てたものである。

関連項目

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