Euler線(Euler line)とは、正三角形でない三角形の外心 $O$・重心 $G$・垂心 $H$ を通る直線である。3 点がいつも一直線上にあり $G$ が線分 $OH$ を $1:2$ に内分することは、重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で説明できる。この相似拡大は三角形を中点三角形に移し、向きと垂直を保つので、各頂点からの垂線を向かいの辺の垂直二等分線に移し、垂心を外心に移す。外心を原点にとれば $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ となり、外接円の半径 $R$ と辺の長さ $a,b,c$ について $OH^2=9R^2-(a^2+b^2+c^2)$ が成り立つ。正三角形では $O=G=H$ となり、Euler 線は定まらない。
前提知識: 三角形の外心, 三角形の重心(高校数学), 三角形の垂心, 位置ベクトルと内分点
三角形の外心 $O$・重心 $G$・垂心 $H$ の 3 点を 1 つの図に描くと、いつも 1 本の直線の上に並ぶ。この直線を Euler 線 という。五心の全体の案内は 三角形の五心 にある。まず座標で確かめる。
この記事では、点 $A,B,C,\dots$ の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c,\dots$ と書き、座標平面では位置ベクトルも同じ成分で書く。外心・重心・垂心の求め方は、それぞれ 三角形の外心、三角形の重心(高校数学)、三角形の垂心 にある。
$A(5,12)$、$B(0,0)$、$C(14,0)$ とする。三角形の五心 で求めたとおり
$$
O\Bigl(7,\frac{33}8\Bigr),\qquad G\Bigl(\frac{19}3,4\Bigr),\qquad H\Bigl(5,\frac{15}4\Bigr)
$$
である。2 つのベクトルを計算する。
$$
\overrightarrow{OG}=\Bigl(\frac{19}3-7,\ 4-\frac{33}8\Bigr)=\Bigl(-\frac23,\ -\frac18\Bigr),\qquad
\overrightarrow{GH}=\Bigl(5-\frac{19}3,\ \frac{15}4-4\Bigr)=\Bigl(-\frac43,\ -\frac14\Bigr)
$$
で、$\overrightarrow{GH}=2\,\overrightarrow{OG}$ である。よって $O,G,H$ は一直線上にあり、$G$ は線分 $OH$ を $1:2$ に内分する。
$A(1,2)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ とする。$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AC}=(-1,-2)\cdot(5,-2)=-1<0$ なので $\angle A$ は鈍角である。
三角形の垂心 では、外心 $O$ を原点にとると $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ となることを示した。重心は $\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ なので $\vec h=3\vec g$ で、$O,G,H$ が一直線上にあることはこの式から計算で出る。しかし、なぜ「3 倍」なのか、なぜ $G$ が $O$ と $H$ の間に来るのかは、計算だけでは見えにくい。この記事では、重心を中心に三角形を $-\frac12$ 倍に縮める変換を使って、図形の言葉で理由を見る。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 外心を原点にとると $\vec h=3\vec g$ | 重心を中心とする $-\frac12$ 倍の相似拡大で $H$ が $O$ に移る | thm-eul-main |
| 中点連結定理 | 同じ相似拡大で三角形が中点三角形に移る | lem-eul-medial |
| 垂線と垂直二等分線は平行 | 相似拡大は向きと垂直を保つ | lem-eul-props |
| $\lvert\vec a+\vec b+\vec c\rvert^2$ を展開する | $OH^2=9R^2-(a^2+b^2+c^2)$ | prop-eul-oh |
点 $P$ と $0$ でない実数 $k$ に対し、平面の点 $X$ を
$$
\vec x\ \longmapsto\ \vec p+k(\vec x-\vec p)
$$
で定まる点に移す変換を、$P$ を 中心 とする 比 $k$ の 相似拡大 といい、$\varphi_{P,k}$ と書く。つまり $\overrightarrow{P\varphi_{P,k}(X)}=k\,\overrightarrow{PX}$ である。
$k>0$ なら $X$ の像は半直線 $PX$ の上にあり、$k<0$ なら $P$ をはさんで反対側にある。$k=-1$ は $P$ に関する点対称、$k=1$ は何も動かさない変換である。中心 $P$ 自身は $\varphi_{P,k}(P)=P$ で動かない。
相似拡大は、図形の形を保って大きさだけを変える。この記事で使う性質をまとめて証明する。
$\varphi=\varphi_{P,k}$($k\ne0$)とし、$X'=\varphi(X)$ のように像にダッシュを付ける。
方針:1 を定義から計算し、2〜5 はすべて 1 から出す。6 は合成を計算する。
段 1(性質 1)。$\vec y\,'-\vec x\,'=\bigl(\vec p+k(\vec y-\vec p)\bigr)-\bigl(\vec p+k(\vec x-\vec p)\bigr)=k(\vec y-\vec x)$ である。長さをとると $X'Y'=|k|\,XY$ である。
段 2(性質 2)。直線 $\ell$ を、点 $X_0$ を通り向き $\vec d\ne\vec0$ の直線 $\{\vec x_0+t\vec d\}$ とする。$\ell$ の点 $X=\vec x_0+t\vec d$ の像は、性質 1 により $\vec x_0\,'+k t\vec d$ である。$t$ がすべての実数を動くと $kt$ もすべての実数を動く($k\ne0$)ので、$\ell$ の像は $X_0'$ を通り向き $\vec d$ の直線である。これは $\ell$ と平行か、$\ell$ と一致する。
段 3(性質 3)。段 2 から、像の直線の向きはもとの直線の向き $\vec d$ と同じである。2 直線の向き $\vec d_1,\vec d_2$ が $\vec d_1\cdot\vec d_2=0$ なら、像の 2 直線の向きも $\vec d_1,\vec d_2$ で、やはり垂直である。
段 4(性質 4)。中点 $M$ は $\vec m=\frac{\vec x+\vec y}2$ で、$\vec m\,'=\vec p+k\bigl(\frac{\vec x+\vec y}2-\vec p\bigr)=\frac{\bigl(\vec p+k(\vec x-\vec p)\bigr)+\bigl(\vec p+k(\vec y-\vec p)\bigr)}2=\frac{\vec x\,'+\vec y\,'}2$ である。
段 5(性質 5)。円の点 $X$($CX=r$)の像は、性質 1 により $C'X'=|k|\,r$ を満たす。逆に $C'Y=|k|r$ を満たす点 $Y$ をとると、段 6 の逆の変換で $Y=\varphi(X)$ となる $X$ があり、性質 1 から $CX=\frac{C'Y}{|k|}=r$ である。よって像はちょうど中心 $C'$、半径 $|k|r$ の円である。
段 6(性質 6)。$\psi=\varphi_{P,1/k}$ とおくと、$\psi(\varphi(X))$ の位置ベクトルは $\vec p+\frac1k\bigl(\vec p+k(\vec x-\vec p)-\vec p\bigr)=\vec p+(\vec x-\vec p)=\vec x$ で、同じく $\varphi(\psi(X))=X$ である。よって $\varphi(X)=\varphi(Y)$ なら両辺に $\psi$ を施して $X=Y$ である。点 $Q$ が 2 直線 $\ell,m$ の交点なら $\varphi(Q)$ は $\varphi(\ell)$ と $\varphi(m)$ の両方の上にある。逆に $\varphi(\ell)$ と $\varphi(m)$ の共通の点は $\psi$ で $\ell$ と $m$ の共通の点に戻るので、交点はただ 1 つ $\varphi(Q)$ である。$\square$
原点を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で、中心 $(1,0)$・半径 $2$ の円を移す。性質 5 から、像は中心 $\bigl(-\frac12,0\bigr)$・半径 $1$ の円である。円の点 $(3,0)$ の像は $\bigl(-\frac32,0\bigr)$ で、中心 $\bigl(-\frac12,0\bigr)$ からの距離は $1$ である。円の点 $(1,2)$ の像は $\bigl(-\frac12,-1\bigr)$ で、これも中心から距離 $1$ である。
三角形 $ABC$ の辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点を $M_a$、$M_b$、$M_c$ とする。三角形 $M_aM_bM_c$ を三角形 $ABC$ の 中点三角形 という。
三角形 $ABC$ の重心を $G$ とし、$\varphi=\varphi_{G,-1/2}$ とする。このとき
$$
\varphi(A)=M_a,\qquad \varphi(B)=M_b,\qquad \varphi(C)=M_c
$$
である。つまり $\varphi$ は三角形 $ABC$ を中点三角形 $M_aM_bM_c$ に移す。
方針:$\vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$ を定義の式に入れる。
段 1。def-eul-homothety から
$$
\varphi(A)\text{ の位置ベクトル}=\vec g-\frac12(\vec a-\vec g)=\frac32\vec g-\frac12\vec a=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}2-\frac{\vec a}2=\frac{\vec b+\vec c}2
$$
である。
段 2。$\frac{\vec b+\vec c}2$ は辺 $BC$ の中点 $M_a$ の位置ベクトルである(位置ベクトルと内分点)。よって $\varphi(A)=M_a$ である。$B$、$C$ についても、文字を入れかえた同じ計算で $\varphi(B)=M_b$、$\varphi(C)=M_c$ となる。$\square$
言いかえると、$G$ は $A$ と $M_a$ を結ぶ線分(中線)の上にあり、$AG:GM_a=2:1$ である。これは 三角形の重心(高校数学) の「重心は中線を $2:1$ に分ける」ことそのものである。
3 辺 13, 14, 15 の三角形 $ABC$ と、その中点三角形 $M_aM_bM_c$(緑の破線)。灰色の矢印は、重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で各頂点が向かいの辺の中点に移ることを表す図。
ex-eul-first の三角形で $G\bigl(\frac{19}3,4\bigr)$ である。$\overrightarrow{GA}=\bigl(5-\frac{19}3,\ 12-4\bigr)=\bigl(-\frac43,\ 8\bigr)$ なので
$$
\varphi(A)=G-\frac12\overrightarrow{GA}=\Bigl(\frac{19}3+\frac23,\ 4-4\Bigr)=(7,0)
$$
で、これは $BC$ の中点 $M_a=\bigl(\frac{0+14}2,0\bigr)$ である。同じく $\varphi(B)=\bigl(\frac{19}2,6\bigr)=M_b$、$\varphi(C)=\bigl(\frac52,6\bigr)=M_c$ となる。
lem-eul-props の 1 を $X=B$、$Y=C$ に使うと $\overrightarrow{M_bM_c}=-\frac12\overrightarrow{BC}$ である。つまり $M_bM_c\parallel BC$、$M_bM_c=\frac12BC$ で、これは 中点連結定理(中点連結定理)である。中点三角形の 3 辺は、もとの三角形の 3 辺に平行で長さが半分である。
三角形 $ABC$ の外心を $O$、重心を $G$、垂心を $H$ とし、$\varphi=\varphi_{G,-1/2}$ とする。このとき $\varphi(H)=O$ である。したがって
$$
\overrightarrow{GO}=-\frac12\,\overrightarrow{GH}
$$
が成り立ち、$O,G,H$ は一直線上にある。$O\ne H$ のとき、$G$ は線分 $OH$ を $1:2$ に内分する。
方針:$\varphi$ で $A$ からの垂線がどこへ移るかを調べる。lem-eul-medial で $A$ は $M_a$ に移り、lem-eul-props で向きと垂直は保たれるので、垂線は $BC$ の垂直二等分線に移る。3 本の垂線の交点 $H$ は、3 本の垂直二等分線の交点 $O$ に移る。
段 1($A$ からの垂線の像)。$A$ からの垂線 $\ell_A$ は、$A$ を通り直線 $BC$ に垂直な直線である。lem-eul-props の 2 により、$\varphi(\ell_A)$ は $\ell_A$ と同じ向きの直線で、lem-eul-medial により $\varphi(A)=M_a$ を通る。よって $\varphi(\ell_A)$ は、$M_a$ を通り $BC$ に垂直な直線、つまり辺 $BC$ の垂直二等分線である。
段 2(残りの 2 本)。同じく、$B$ からの垂線の像は辺 $CA$ の垂直二等分線、$C$ からの垂線の像は辺 $AB$ の垂直二等分線である。
段 3($\varphi(H)=O$)。$H$ は $\ell_A$ と $B$ からの垂線の交点である。lem-eul-props の 6 により、$\varphi(H)$ は段 1・段 2 の 2 本の垂直二等分線(辺 $BC$ と辺 $CA$ の)の交点である。この 2 本の交点は外心 $O$ だけである(三角形の外心)。よって $\varphi(H)=O$ である。
段 4(ベクトルの式)。def-eul-homothety から $\vec o=\vec g-\frac12(\vec h-\vec g)$、つまり $\vec o-\vec g=-\frac12(\vec h-\vec g)$ で、これは $\overrightarrow{GO}=-\frac12\overrightarrow{GH}$ である。
段 5(一直線と比)。段 4 から $O$ は直線 $GH$ の上にある($H=G$ のときは $O=G$ でもある)。$O\ne H$ のときは $\overrightarrow{GH}\ne\vec0$ で、$\overrightarrow{GO}$ と $\overrightarrow{GH}$ は向きが反対なので $G$ は $O$ と $H$ の間にあり、$GO=\frac12GH$ から $OG:GH=1:2$ である。$\square$
同じ三角形で、$A$ からの垂線(赤の破線)と辺 $BC$ の垂直二等分線(青の破線)は平行で、重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で前者が後者に移る。3 本の垂線の交点 $H$ は 3 本の垂直二等分線の交点 $O$ に移り、$O,G,H$ が 1 本の直線(灰色)に並ぶことを見る図。
ex-eul-first の三角形で、$H\bigl(5,\frac{15}4\bigr)$、$G\bigl(\frac{19}3,4\bigr)$ から $\overrightarrow{GH}=\bigl(-\frac43,-\frac14\bigr)$ である。
$$
\varphi(H)=G-\frac12\overrightarrow{GH}=\Bigl(\frac{19}3+\frac23,\ 4+\frac18\Bigr)=\Bigl(7,\ \frac{33}8\Bigr)
$$
で、これは外心 $O$ と一致する。$A$ からの垂線 $x=5$ は、$\varphi$ で $M_a(7,0)$ を通る縦の直線 $x=7$、つまり $BC$ の垂直二等分線に移る(図2)。
三角形 $ABC$ で $O\ne H$ のとき、$O,G,H$ を通る直線を三角形 $ABC$ の Euler 線 という。
$O=H$ となるのは正三角形のときに限る(三角形の五心 の「2 つの心が一致すれば正三角形」)。正三角形では $O=G=H$ となり、Euler 線は定まらない(ex-eul-equilateral)。
thm-eul-main の式 $\overrightarrow{GO}=-\frac12\overrightarrow{GH}$ を、外心 $O$ を原点として書くと $-\vec g=-\frac12(\vec h-\vec g)$、つまり $\vec h=3\vec g=\vec a+\vec b+\vec c$ である。これは 三角形の垂心 で内積を使って示した式と同じである。
三角形の垂心 の方法は「外接円の半径が等しい」ことから内積の計算で $\vec h$ を求めた。この記事の方法は、内積を使わず「相似拡大は向きと垂直を保つ」ことだけを使った。$3$ という数は、$-\frac12$ 倍して $O$ になる点 $H$ を $G$ から見ると $\overrightarrow{GH}=-2\overrightarrow{GO}$、したがって $\overrightarrow{OH}=\overrightarrow{OG}+\overrightarrow{GH}=3\overrightarrow{OG}$ となることから来ている。
thm-eul-main の証明を逆にたどると、垂心の存在そのものが外心の存在から出る。
三角形 $ABC$ の 3 本の垂線は 1 点で交わり、その点は $\varphi_{G,-2}(O)$ である。
方針:lem-eul-props の 6 により $\psi=\varphi_{G,-2}$ は $\varphi_{G,-1/2}$ の逆の変換である。$\psi$ で 3 本の垂直二等分線を移すと 3 本の垂線になることを示す。
段 1。lem-eul-medial と逆の変換の関係から $\psi(M_a)=A$ である。辺 $BC$ の垂直二等分線は $M_a$ を通り $BC$ に垂直なので、lem-eul-props の 2 により、その像は $A$ を通り $BC$ に垂直な直線、つまり $A$ からの垂線である。$B$、$C$ についても同じである。
段 2。3 本の垂直二等分線は外心 $O$ で交わる(三角形の外心)。lem-eul-props の 6 により、3 本の垂線は $\psi(O)$ を通る。$\square$
この証明は、三角形の垂心 の「大きな三角形の外心として見る」証明と同じものである。そこでは各頂点を通り向かいの辺に平行な直線で大きな三角形 $A'B'C'$ を作り、$\vec a\,'=\vec b+\vec c-\vec a$ とした。$\varphi_{G,-2}(A)$ の位置ベクトルは $\vec g-2(\vec a-\vec g)=3\vec g-2\vec a=\vec b+\vec c-\vec a$ なので、大きな三角形は $\varphi_{G,-2}$ による三角形 $ABC$ の像である。
相似拡大は三角形を三角形に移し、辺の中点・垂直・長さの比を保つので、心を心に移す。
三角形 $ABC$ の中点三角形 $M_aM_bM_c$ について、
方針:$\varphi=\varphi_{G,-1/2}$ が三角形 $ABC$ を $M_aM_bM_c$ に移すこと(lem-eul-medial)と、lem-eul-props を使う。
段 1(重心)。中点三角形の重心は $\frac{\vec m_a+\vec m_b+\vec m_c}3=\frac13\cdot\frac{(\vec b+\vec c)+(\vec c+\vec a)+(\vec a+\vec b)}2=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3=\vec g$ である。
段 2(垂心)。$A$ からの垂線は、$\varphi$ で「$M_a$ を通り $BC$ に垂直な直線」に移る(prf-thm-eul-main の段 1)。中点連結定理から $M_bM_c\parallel BC$ なので、これは中点三角形の $M_a$ から $M_bM_c$ への垂線である。3 本とも同じなので、$\varphi$ は $ABC$ の垂線を中点三角形の垂線に移し、垂心 $H$ を中点三角形の垂心に移す。thm-eul-main により $\varphi(H)=O$ なので、中点三角形の垂心は $O$ である。
段 3(外心)。$OA=OB=OC=R$ で、lem-eul-props の 1 により $\varphi(O)$ から $M_a,M_b,M_c$ までの距離はどれも $\frac12R$ である。よって $N=\varphi(O)$ は中点三角形の外心で、外接円の半径は $\frac R2$ である。
段 4($N$ は $OH$ の中点)。$\vec n=\vec g-\frac12(\vec o-\vec g)=\frac{3\vec g-\vec o}2$ である。rem-eul-vector の $3\vec g=\vec h+2\vec o$($\overrightarrow{OH}=3\overrightarrow{OG}$ を位置ベクトルで書いたもの)を入れると $\vec n=\frac{\vec h+2\vec o-\vec o}2=\frac{\vec o+\vec h}2$ である。$\square$
ex-eul-first の三角形で、$M_a(7,0)$、$M_b\bigl(\frac{19}2,6\bigr)$、$M_c\bigl(\frac52,6\bigr)$、$O\bigl(7,\frac{33}8\bigr)$ である。
中点三角形の外接円は、3 辺の中点を通る。この円は、じつは 3 本の垂線の足と、垂心と頂点を結ぶ線分の中点も通る。これが 九点円 であり、その中心 $N$ は Euler 線の上、$OH$ の中点にある。
三角形 $ABC$ の外接円の半径を $R$、辺の長さを $a,b,c$ とすると
$$
OH^2=9R^2-(a^2+b^2+c^2),\qquad OG^2=R^2-\frac{a^2+b^2+c^2}9
$$
である。とくに $a^2+b^2+c^2\le9R^2$ で、等号は正三角形のときに限る。
方針:外心 $O$ を原点にとり、$\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$(rem-eul-vector)の長さの 2 乗を展開する。内積の和 $\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a$ は辺の長さで書ける。
段 1($OH^2$ の展開)。$|\vec a|=|\vec b|=|\vec c|=R$ なので
$$
OH^2=|\vec a+\vec b+\vec c|^2=|\vec a|^2+|\vec b|^2+|\vec c|^2+2(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)=3R^2+2(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)
$$
である。
段 2(辺の長さ)。$a^2=|\vec b-\vec c|^2=|\vec b|^2-2\vec b\cdot\vec c+|\vec c|^2=2R^2-2\,\vec b\cdot\vec c$ である。同じく $b^2=2R^2-2\,\vec c\cdot\vec a$、$c^2=2R^2-2\,\vec a\cdot\vec b$ である。3 式を足すと
$$
a^2+b^2+c^2=6R^2-2(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)
$$
である。
段 3(結論)。段 2 から $2(\vec a\cdot\vec b+\vec b\cdot\vec c+\vec c\cdot\vec a)=6R^2-(a^2+b^2+c^2)$ で、段 1 に入れると $OH^2=9R^2-(a^2+b^2+c^2)$ である。thm-eul-main から $OG=\frac13OH$ なので $OG^2=\frac19OH^2=R^2-\frac{a^2+b^2+c^2}9$ である。
段 4(不等式)。$OH^2\ge0$ から $a^2+b^2+c^2\le9R^2$ である。等号は $O=H$ のときで、それは正三角形のときに限る(三角形の五心)。$\square$
| 変えたこと・外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 正三角形でない($O\ne H$) | Euler 線が 1 本に決まる | ex-eul-equilateral |
| 相似拡大の比を $-\frac12$ から $\frac12$ に変える | 頂点が向かいの辺の中点に移る | ex-eul-wrong-ratio |
| 相似拡大の代わりに、垂直を保たない変換を使う | 外心が外心に、垂心が垂心に移る | ex-eul-shear |
| 重心の代わりに内心をとる | 3 点が一直線上にある | ex-eul-incenter |
$A(0,\sqrt3)$、$B(-1,0)$、$C(1,0)$ の正三角形では、$O=G=H=\bigl(0,\frac{\sqrt3}3\bigr)$ である(三角形の五心)。thm-eul-main の $\overrightarrow{GO}=-\frac12\overrightarrow{GH}$ は $\vec0=\vec0$ として成り立つが、3 点が 1 点に重なるので、それらを通る直線は無数にある。満たさない条件:$O\ne H$。崩れる主張:Euler 線がただ 1 本に決まること。
ex-eul-first の三角形で、比を $\frac12$ に変えた $\varphi_{G,1/2}$ を使うと
$$
\varphi_{G,1/2}(A)=G+\frac12\overrightarrow{GA}=\Bigl(\frac{19}3-\frac23,\ 4+4\Bigr)=\Bigl(\frac{17}3,\ 8\Bigr)
$$
で、これは中線 $AM_a$ の上の $A$ と $G$ の中点であり、辺 $BC$ の中点 $(7,0)$ ではない。$A$ からの垂線 $x=5$ は $\varphi_{G,1/2}$ で縦の直線 $x=\frac{17}3$ に移るが、これは $BC$ の垂直二等分線 $x=7$ ではない。$\varphi_{G,k}(A)=G+k\overrightarrow{GA}$ で、$\overrightarrow{GM_a}=-\frac12\overrightarrow{GA}$ かつ $\overrightarrow{GA}\ne\vec0$ なので、$\varphi_{G,k}(A)=M_a$ となる $k$ は $-\frac12$ だけである。符号だけを変えた $\frac12$ では、上のとおり中点に届かない。崩れる主張:lem-eul-medial、したがって prf-thm-eul-main の段 1。
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,3)$ の三角形は、$O(2,1)$、$G\bigl(\frac53,1\bigr)$、$H(1,1)$ で、Euler 線は $y=1$ である(三角形の垂心 と同じ三角形)。これを、$x$ 座標だけを $y$ の分ずらす変換 $T(x,y)=(x+y,\ y)$ で移すと、$A'(0,0)$、$B'(4,0)$、$C'(4,3)$ となる。
左はもとの三角形と Euler 線、右は $(x,y)\mapsto(x+y,y)$ で移した三角形とその Euler 線。白抜きの点はもとの外心・垂心の像で、新しい三角形の外心・垂心とは一致しないことを見る図(重心だけは重心に移る)。
ex-eul-first の三角形の内心は $I(6,4)$ である(三角形の内心と傍心)。Euler 線は $O\bigl(7,\frac{33}8\bigr)$ を通り向き $\overrightarrow{OG}=\bigl(-\frac23,-\frac18\bigr)$ の直線で、$x=6$ での $y$ 座標は $\frac{33}8+\bigl(-\frac18\bigr)\cdot\frac32=\frac{33}8-\frac3{16}=\frac{63}{16}$ である。$I$ の $y$ 座標 $4=\frac{64}{16}$ とは異なるので、$I$ は Euler 線の上にない。二等辺三角形では内心も対称の軸の上にあり Euler 線に乗るが(三角形の五心)、一般の三角形では乗らない。
thm-eul-main は「重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大」という 1 つの変換で説明できた。相似拡大と平行移動を合わせた変換の全体は、合成について閉じた集まり(群)をなす。
$0$ でない実数 $k$ とベクトル $\vec v$ に対し、変換 $\vec x\mapsto k\vec x+\vec v$ を考える。
方針:相似拡大の式 $\vec p+k(\vec x-\vec p)=k\vec x+(1-k)\vec p$ を使い、合成を計算する。
段 1(1)。$k\ne1$ のとき $\vec p=\frac{\vec v}{1-k}$ とおくと $(1-k)\vec p=\vec v$ なので、$k\vec x+\vec v=\vec p+k(\vec x-\vec p)$ で、これは $\varphi_{P,k}$ である。$k=1$ なら $\vec x\mapsto\vec x+\vec v$ で、平行移動である。
段 2(2)。$\vec x$ を先に $k\vec x+\vec v$ に移し、それを $l(\,\cdot\,)+\vec w$ で移すと $l(k\vec x+\vec v)+\vec w=kl\,\vec x+(l\vec v+\vec w)$ である。
段 3(3)。$\varphi_{P,k}$ は $\vec x\mapsto k\vec x+(1-k)\vec p$、$\varphi_{Q,l}$ は $\vec x\mapsto l\vec x+(1-l)\vec q$ なので、段 2 から合成は
$$
\vec x\longmapsto kl\,\vec x+\bigl(l(1-k)\vec p+(1-l)\vec q\bigr)
$$
である。$kl=1$ なら段 1 により平行移動である。$kl\ne1$ なら段 1 により比 $kl$ の相似拡大で、中心は
$$
\vec c=\frac{l(1-k)\vec p+(1-l)\vec q}{1-kl}
$$
である。係数の和は $\frac{l-kl+1-l}{1-kl}=1$ なので、$\vec c$ は $\vec p$ と $\vec q$ に和が $1$ の重みを付けた点であり、直線 $PQ$ の上にある(位置ベクトルと内分点。$P=Q$ なら $\vec c=\vec p$)。$\square$
2 から、変換 $\vec x\mapsto k\vec x+\vec v$($k\ne0$)の全体は合成で閉じている。何も動かさない変換($k=1$、$\vec v=\vec0$)を含み、逆の変換 $\vec x\mapsto\frac1k\vec x-\frac1k\vec v$ も同じ形である。このように、合成で閉じていて、何も動かさない変換と逆の変換を含む変換の集まりを 変換群 という(群)。
ex-eul-first の三角形で、$\varphi_{G,-1/2}$ のあとに外心を中心とする比 $2$ の相似拡大 $\varphi_{O,2}$ を行う。比は $\bigl(-\frac12\bigr)\cdot2=-1$ なので、prop-eul-group の 3 により、合成は直線 $GO$(Euler 線)の上の点に関する点対称である。中心は $\vec c=\frac{2\cdot\frac32\vec g+(1-2)\vec o}{2}=\frac{3\vec g-\vec o}2$ で、cor-eul-medial-centers の $N$、つまり $OH$ の中点 $\bigl(6,\frac{63}{16}\bigr)$ である。
確かめる。$A(5,12)$ は $\varphi_{G,-1/2}$ で $M_a(7,0)$ に移り、$\varphi_{O,2}$ で $O+2\overrightarrow{OM_a}=\bigl(7,\frac{33}8\bigr)+2\bigl(0,-\frac{33}8\bigr)=\bigl(7,-\frac{33}8\bigr)$ に移る。$N$ に関する $A$ の対称な点は $2N-A=\bigl(12-5,\ \frac{63}8-12\bigr)=\bigl(7,-\frac{33}8\bigr)$ で、一致する。
ex-eul-shear で見たように、重心・中点・「一直線上にある」は、ずらす変換を一例として含む アフィン変換($\vec x\mapsto P\vec x+\vec v$ の形の変換で、行列 $P$ の行列式が $0$ でないもの。1次変換と行列式:面積の拡大率)でも保たれる。行列式が $0$ でないという条件は、三角形を線分や 1 点につぶさず、逆の変換をもつための条件である。一方、外心・垂心は長さや垂直を使って定まるので、アフィン変換では保たれない。相似拡大・回転・平行移動・鏡映とそれらの合成(相似変換)は長さの比と角を保つので、外心を外心に、垂心を垂心に移す。
したがって、Euler 線の定理は「相似変換で保たれる性質」についての定理であり、重心だけについての定理(中線が 1 点で交わる、など)はより広い「アフィン変換で保たれる性質」についての定理である。幾何学を「どの変換の群で保たれる性質を調べるか」で分類する見方は、Klein の Erlangen プログラム と呼ばれる(Erlangenプログラム)。複素数平面では、向きを保つ相似変換は $z\mapsto\alpha z+\beta$($\alpha\ne0$)と書ける(複素数平面と図形)。
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