Cauchyの主値

同義語:主値積分コーシーの主値Cauchy principal valueprincipal value integral

概要

Cauchyの主値(Cauchy principal value)とは、特異点の左右または無限遠を対称に扱って定める積分の極限である。適用する領域と収束条件を確認して、解析式や積分・級数の値の計算に使う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 広義積分, Cauchyの積分定理, 留数定理, Jordanの補題

$1/x$ の積分は原点の左右で別々に発散するが、原点のまわりを対称に除いて積分すると、左右の寄与が打ち消し合う。Cauchy の主値は、このように除外の対称性を指定して定める極限である。通常の広義積分が存在する場合には同じ値になるが、主値が存在するだけでは通常の積分が存在するとは限らない。計算したい量がどちらなのかを最初に明示する必要がある。
留数計算で実軸上に極が現れたとき、極を小さな半円でよければ閉曲線を作れる。しかしこの小半円の積分は、半径を零にしても必ずしも消えない。単純極では留数の半周分、すなわち符号付きの $\pi i$ 倍が残る。この寄与を含めて閉曲線の等式を書けば、実軸の主値が求められる。半径が小さいという理由だけで半円を省くと、答えを $\pi i$ だけ取り違える。
この記事では、有限の特異点のまわりの主値と無限遠での主値を区別し、小半円の補題を証明する。その応用として $\operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}e^{ix}/x\,dx=\pi i$ を計算し、さらに通常の広義積分 $\int_0^\infty\sin x/x\,dx=\pi/2$ を導く。後者では実部と虚部の収束状況が異なるため、複素積分全体が主値であっても、虚部は通常の積分として存在することを確認する。

定義と使える条件

有限の特異点における主値

$A< c< B$ とし、$h$ は $[A,B]\setminus\{c\}$ の各閉部分区間で積分可能とする。有限の極限
$$\operatorname{PV}\int_A^Bh(x)\,dx :=\lim_{\varepsilon\downarrow0} \left(\int_A^{c-\varepsilon}h(x)\,dx +\int_{c+\varepsilon}^Bh(x)\,dx\right)$$
が存在するとき、これを特異点 $c$ における Cauchy の主値という。左側と右側で同じ長さ $\varepsilon$ を除くことが定義の一部である。

有限の特異点が複数ある場合には、それぞれの点で対称に除く長さを指定する。各点の局所的な主値が存在すれば、点ごとに小区間を分けて定義できる。異なる点における発散を、除外長さを連動させて打ち消す操作は、この定義には含めない。主値という言葉だけで除外の仕方が一意に決まると考えず、どの点でどの対称性を使うかを書く。

無限遠における主値

$h$ が実軸の各有限区間で積分可能なとき、有限の極限
$$\operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}h(x)\,dx :=\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^Rh(x)\,dx$$
が存在すれば、無限遠での Cauchy の主値という。有限の特異点 $c$ もある場合、この記事ではまず $R>|c|$ を固定し、$c$ のまわりの対称除外の極限をとり、その後 $R\to\infty$ とする。

無限遠での対称性の中心も指定が必要である。左右の通常の尾部が収束していれば、どの固定された分点で足しても同じ値になる。これは 広義積分 の記事の定義「両端での広義積分」と命題「両端での広義積分は分点によらない」が述べる性質である。一方、左右が別々に発散する関数では、$[-R,R]$ と $[c-R,c+R]$ の極限が同じとは限らない。

通常の広義積分との関係

特異点の左右の通常の広義積分がそれぞれ有限の極限をもつなら、対称除外の主値は存在して両者の和に等しい。無限遠についても、左右の尾部がそれぞれ収束すれば主値は通常の積分に等しい。

有限の特異点の場合、$\int_A^{c-\varepsilon}h$ と $\int_{c+\varepsilon}^Bh$ は仮定によってそれぞれ有限の極限をもつ。有限の極限の和の法則により、同じ $\varepsilon$ を使って足した極限はその和である。無限遠では $\int_{-R}^0h$ と $\int_0^Rh$ に同じ法則を適用する。複素数値の関数については実部と虚部に分けて適用すればよい。$\square$

公式の表

量値・関係使える条件根拠
有限点の主値同じ $\varepsilon$ で左右を除いて極限特異点を除く閉部分区間で積分可能def-pv-finite
無限遠の主値$\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^R$有限区間の積分が存在def-pv-infinity
上側の小半円、左から右$-\pi i\operatorname{Res}(f,c)$実軸上の単純極、半径を零へlem-pv-small-arc
下側の小半円、左から右$+\pi i\operatorname{Res}(f,c)$同じ条件、下側でよけるlem-pv-small-arc
$\operatorname{PV}\int e^{i\omega x}/x\,dx$$\pi i$実軸全体、$\omega>0$thm-pv-exponential
$\int_0^\infty\sin\omega x/x\,dx$$\pi/2$$\omega>0$、通常の広義積分cor-pv-dirichlet

小半円の公式は「上側ならいつでも負」というものではない。上側を右から左へたどれば向きが反転して正になる。表では実軸を左から右へ進む経路の途中で極をよける向きに固定している。閉曲線の向きと小半円の向きを図に書けば、符号を決めやすい。

小半円の補題

単純極をよける小半円

$f$ は実数 $c$ の近傍で $c$ を除いて正則で、$c$ は単純極または除去可能特異点とする。$r=\operatorname{Res}(f,c)$ とおく。上側の半円を
$$\gamma_\varepsilon^+:z=c+\varepsilon e^{i\theta},\quad\pi\ge\theta\ge0$$
と左から右へたどると
$$\int_{\gamma_\varepsilon^+}f(z)\,dz\longrightarrow-\pi i r.$$
下側を $z=c+\varepsilon e^{i\theta}$、$-\pi\le\theta\le0$ と左から右へたどると、極限は $+\pi i r$ になる。

単純極の Laurent 展開から、ある円板上で
$$f(z)=\frac{r}{z-c}+h(z)$$
と書け、$h$ は $c$ を含む円板上で正則である。小さい閉円板で $h$ は連続だから、ある定数 $K$ により $|h(z)|\le K$ と抑えられる。半円の長さは $\pi\varepsilon$ なので、$h$ の積分の絶対値は $K\pi\varepsilon\to0$ である。
主部については $dz=i\varepsilon e^{i\theta}d\theta$ だから、上側では
$$\int_{\gamma_\varepsilon^+}\frac{r}{z-c}\,dz =ir\int_\pi^0d\theta=-\pi i r.$$
下側では同じ計算で $ir\int_{-\pi}^0d\theta=+\pi i r$ を得る。正則部分の寄与の極限を加えれば結論である。逆向きにたどる場合は積分が負になるため、それぞれの符号も反転する。$\square$

この補題の条件は極の位数に関わる。半径が小さくなると曲線の長さは小さくなるが、単純極の大きさは $1/\varepsilon$ 程度なので、積は定数程度となる。二位の極では $1/\varepsilon^2$ 程度になり、長さを掛けても $1/\varepsilon$ 程度の発散が残ることがある。留数は主部の中の $1/(z-c)$ の係数だけを見るため、より高い位数の項の積分を抑えることはできない。
上側でよけながら上半平面を閉じると、実軸上の極は内部から除かれる。したがって、その極を内部の留数の和に入れたうえで小半円の寄与も入れると二重に数えることになる。逆に下側でよけて上半平面を閉じると、実軸上の極は内部に入る。この二通りは、留数の和と小半円の符号を両方正しく扱えば同じ主値を与える。

正弦積分の計算

実軸上の単純極と指数型の主値

$\omega>0$ に対して、原点の対称除外の後に無限遠の極限をとる規約で
$$\operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{e^{i\omega x}}x\,dx=\pi i$$
である。

$0< \varepsilon< R$ とする。実線分を $-R$ から $-\varepsilon$ へ進み、原点の上側の小半円を左から右へよけ、$\varepsilon$ から $R$ へ進み、上半円で $R$ から $-R$ へ戻る閉曲線を考える。$f(z)=e^{i\omega z}/z$ の唯一の極 $0$ は小半円の下側にあり、曲線の内部には極がない。よって留数定理から
$$\int_{-R}^{-\varepsilon}\frac{e^{i\omega x}}x\,dx +\int_\varepsilon^R\frac{e^{i\omega x}}x\,dx +\int_{\gamma_\varepsilon^+}\frac{e^{i\omega z}}z\,dz +\int_{C_R}\frac{e^{i\omega z}}z\,dz=0.$$
この曲線の内部は $\{z\in\mathbb C: \operatorname{Im}z>0,\ \varepsilon< |z|< R\}$ であり、原点の回転数は零である。留数定理を有限の極の集合と曲線に対して使う形でも、内部に極がないという同じ結論を得る。
実線分の和の実部は奇関数 $\cos\omega x/x$ の対称積分なので零で、虚部は $2\int_\varepsilon^R\sin\omega x/x\,dx$ である。原点では $\sin\omega x/x\to\omega$ なので、固定した $R$ に対して $\varepsilon\downarrow0$ の極限が存在する。小半円については、留数が $1$ なので lem-pv-small-arc により極限は $-\pi i$ となる。従って
$$2i\int_0^R\frac{\sin\omega x}x\,dx-\pi i +\int_{C_R}\frac{e^{i\omega z}}z\,dz=0.$$
大円弧では $g(z)=1/z$ の最大値は $M(R)=1/R$ である。Jordanの補題 の補題「Jordan の補題」により円弧積分は $0$ に近づく。$R\to\infty$ とすれば、対称除外を行った実積分の極限は $\pi i$ である。ここでは原点の極限を先にとり、その後大円弧を無限遠へ送った。$\square$

Dirichlet の正弦積分

$\omega>0$ に対して、通常の広義積分として
$$\int_0^\infty\frac{\sin\omega x}x\,dx=\frac\pi2$$
が成り立つ。この積分は条件収束する。

$\omega>0$ とし、$u=\omega x$ と置くと $\sin(\omega x)\,dx/x=\sin u\,du/u$ である。広義積分 の記事の例「条件収束する広義積分」により $\int_0^\infty\sin u/u\,du$ は通常の広義積分として条件収束する。この変数変換は有限区間で成り立ち、$\omega>0$ により各端点の極限も対応するので、$\int_0^\infty\sin(\omega x)/x\,dx$ も条件収束する。
値の決定には thm-pv-exponential の証明を使う。その実線分の虚部はこの積分の $2$ 倍であり、小半円と大半円の極限からその虚部は $\pi$ に収束する。従って値は $\pi/2$ である。$\square$

正弦積分の値が正の $\omega$ によらないことは、$u=\omega x$ の変数変換からも分かる。非零の正の周波数についての式を $\omega=0$ にそのまま拡張してはいけない。$\omega=0$ では被積分関数は零関数で、積分は零である。$\omega\downarrow0$ では振動の波長が大きくなり、無限遠に至るまでの寄与が変わるため、点ごとの極限と積分の極限を交換できない。

計算の手順

  1. どこで主値をとるかを定める。 有限の特異点なら左右に同じ $\varepsilon$ を除き、無限遠なら同じ半径 $R$ を使う。両方ある場合は極限の順序を指定する。通常の尾部が存在するなら、その部分の対称性には依存しない。
  2. 極の位数を調べる。 単純極なら lem-pv-small-arc が使える。二位以上の極に対して同じ結論を使わない。主値が存在するかは実積分側でも確認する。
  3. よける側と経路の向きを書く。 上側を左から右へ進めば小円弧は時計回り、寄与は $-\pi i$ 倍の留数である。上半平面を閉じるとこの極は内部から除かれる。下側を使う場合には内部の極の集合も変わる。
  4. 閉曲線の式を組み立てる。 実線分、小半円、大半円、内部の留数の和を省略せずに書く。大円弧の消滅には Jordanの補題 などの独立した評価を用いる。
  5. 指定した順序で極限をとる。 小円弧の有限な極限を残してから大円弧を消す。実部や虚部だけが通常の積分として存在する場合は、その収束を別に示してから主値の等式から値を取り出す。
    上側の小半円で原点をよける積分路 上側の小半円で原点をよける積分路
    図は実軸を左から右へ進み、原点を上側でよけて上半円で閉じる経路である。小半円の矢印は左から右なので時計回りで、角度は $\pi$ から $0$ へ減る。原点は閉曲線の内部から除かれる。小半円の半径を変えた図でも向きと除外される側は同じであり、単純極の寄与が半径によらない主部をもつことを示している。

例題

対称な区間の単純極

$\operatorname{PV}\int_{-1}^1 dx/x$ を求める。使う公式:def-pv-finite。答え:$0\approx0.000000$。通常の広義積分は存在しない。
$\int_{-1}^{-\varepsilon}dx/x=\log\varepsilon$、$\int_\varepsilon^1dx/x=-\log\varepsilon$ なので、各 $\varepsilon$ で和は零である。一方、片側だけではそれぞれ負と正に発散する。主値の値が零であることは、その二つの発散する量の和が通常の積分として存在することを意味しない。

左右の端点が異なる区間

$\operatorname{PV}\int_{-2}^{3}dx/x$ を求める。使う公式:def-pv-finite。答え:$\log(3/2)\approx0.405465$。
対称に除いた積分は $\log\varepsilon-\log2+\log3-\log\varepsilon$ であり、$\varepsilon$ の項が消えて $\log(3/2)$ が残る。特異点のまわりの除外が対称であることと、積分区間全体の端点が対称であることは異なる。後者は主値の定義に要求されていない。

振動する複素積分

$\operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}e^{2ix}/x\,dx$ を求める。使う公式:thm-pv-exponential。答え:$\pi i\approx3.141593i$。
原点の単純極の留数は $1$ であり、上側小半円の極限は $-\pi i$ である。上半平面の内部には極がないので、主値の実線分の寄与はその負号を移した $+\pi i$ となる。虚部の半直線積分 $\int_0^\infty\sin2x/x\,dx$ は $\pi/2\approx1.570796$ である。

実軸上の極を含む有理関数

$$\operatorname{PV}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{(x-1)(x^2+4)}$$
を、$x=1$ の対称除外で求める。使う公式:lem-pv-small-arc と留数定理。答え:$-\pi/10\approx-0.314159$。
上側で $1$ をよける。$f(z)=1/[(z-1)(z^2+4)]$ の実軸上の留数は $1/5$、内部の $2i$ の留数は $1/[4i(2i-1)]$ である。大円弧は $f(z)=O(|z|^{-3})$ と長さの評価で消える。従って主値は
$$2\pi i\frac1{4i(2i-1)}+\frac{\pi i}{5} =\frac\pi{2(2i-1)}+\frac{\pi i}{5}=-\frac\pi{10}.$$
尾部は絶対収束し、主値が必要なのは $x=1$ の近傍だけである。部分分数分解でも、$\frac15\{(x-1)^{-1}-(x+1)/(x^2+4)\}$ から同じ答えが得られる。

使える条件と反例

外す条件反例成り立たなくなること
主値を通常の積分と区別する$1/x$ を $[-1,1]$ で積分主値は零でも通常の積分は存在しない
有限点の除外が対称左に $\varepsilon$、右に $2\varepsilon$ を除く $1/x$極限が $-\log2$ になり、対称主値と異なる
無限遠で左右の尾部が独立に収束$h(x)=x$原点中心の主値は零だが通常の積分はない
小半円の極が単純$f(z)=1/z^2$留数は零だが上側の小半円積分は $-2/\varepsilon$

非対称な除外の反例では、$\int_{-1}^{-\varepsilon}dx/x+\int_{2\varepsilon}^1dx/x=\log\varepsilon-\log(2\varepsilon)=-\log2$ となる。左右の除外幅を入れ替えると $+\log2$ になる。両方の幅が零に近づくという事実だけでは極限の値は定まらない。主値の定義に対称性を含める理由がここにある。$-\log2\approx-0.693147$ で、対称主値の零とは異なる。
無限遠の反例 $h(x)=x$ では、各 $R$ で $\int_{-R}^R x\,dx=0$ なので原点中心の主値は零である。ところが $\int_0^R x\,dx=R^2/2\to\infty$ で、左右の通常の積分は存在しない。さらに中心を固定した $c\ne0$ に変えると
$$\int_{c-R}^{c+R}x\,dx=2cR$$
になり、有限の極限も存在しなくなる。主値を無限区間の積分に使うときは、対称性の中心を黙って変えてはいけない。
二位の極の反例では、原始関数 $-1/z$ を使って
$$\int_{\gamma_\varepsilon^+}\frac{dz}{z^2} =-\frac1\varepsilon-\frac1\varepsilon=-\frac2\varepsilon$$
である。留数は零なのに小半円は発散する。実積分も $\int_{-1}^{-\varepsilon}dx/x^2+\int_\varepsilon^1dx/x^2=2/\varepsilon-2\to\infty$ なので、Cauchy の主値は存在しない。発散項を引いて有限な部分だけを残す別の規約はあり得るが、それはここで定義した Cauchy の主値ではない。
通常の積分が存在するなら主値と一致するという命題は、これらの反例と矛盾しない。反例では通常の積分の存在という条件を満たしていない。主値は収束する通常の積分の値を変更する操作ではなく、通常の積分が存在しない一部の関数にも、指定した対称性のもとで値を付ける操作である。

よくある誤り

誤り正しくはなぜ
主値が有限なら広義積分も収束すると考える左右の片側積分を別々に調べるex-pv-symmetric
小さい半円だから積分も零になると考える単純極の寄与は符号付き $\pi i$ 倍lem-pv-small-arc
上側の小半円の符号を常に正にする左から右では $-\pi i$ 倍角度が $\pi$ から $0$ へ減る
よけた極も内部の留数に数える閉曲線が実際に囲む極だけを数える上側でよけて上を閉じると実軸上の極は外部
複素主値の実部・虚部も両方通常の積分だと考える成分ごとの局所収束と尾部を確認する$\cos x/x$ と $\sin x/x$ は原点で異なる

解法の比較と補足

主値を求めるだけなら、奇関数の対称性や部分分数分解で十分な問題もある。$1/x$ の有限区間での主値はその例である。複素積分の利点は、実軸上の極による局所的な寄与と、半平面内の極による大域的な寄与を一つの等式にまとめられる点にある。両方の寄与が複素数でも、元の有理関数が実数値なら最後の答えで虚部が相殺する。この相殺は符号の確認にも使える。
上側で極をよける方法と下側でよける方法は、同じ主値を求める二つの経路である。上側でよけると小半円が時計回りで $-\pi i r$、極は内部から除かれる。下側でよけると小半円が反時計回りで $+\pi i r$、上を閉じる経路の内部には極が入るため留数の和に $2\pi i r$ が加わる。実線分の主値を解くと両方で同じ $+\pi i r$ が残る。この一致は、半留数の符号だけを暗記するよりも安定した確認方法である。
Hilbert 変換では、核に $1/(x-t)$ 型の特異性があるため主値が使われる。ただし関数空間上での存在や作用素としての性質には別の仮定が必要であり、この記事の単純な有理関数の主値計算から一般の関数にそのまま拡張できるわけではない。ここでは変換の一般論を扱わず、核の特異点を対称に除くという主値の役割だけを押さえる。
数値的に主値を近似する場合には、特異点の左と右で別々の除外長さを選ばないことが大切である。各片側の値が大きくなり、その差だけが有限になる場合は、二つの大きな数の減算で精度を失う。$f(x)=r/(x-c)+h(x)$ のように特異な部分を解析的に取り出せれば、$h$ の通常の積分と既知の主値に分けられる。これは主値の定義を変更するものではなく、同じ極限を安定した形で計算するための分解である。
留数定理と基本的な計算法は LebGCCA26 §5.3(pp. 131–135)と BMPS25 §9.2(p. 144)にある。この記事では既存の留数定理を使い、各積分路または級数に必要な収束と評価を上で示した。

関連項目

参考文献

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