積分の平均値の定理(mean value theorem for integrals)とは、閉区間 $[a,b]$($a<b$)で連続な関数 $f$ について $\int_a^bf(x)\,dx=f(c)(b-a)$ となる $c$ が存在する、すなわち $f$ は平均 $\frac1{b-a}\int_a^bf(x)\,dx$ を区間のどこかで値としてとるという定理である。最大値・最小値の定理で積分を挟んで平均が最小値と最大値の間にあることを示し、中間値の定理で $c$ をとる。$c$ は $a<c<b$ の範囲にとれる。$g\ge0$ も連続なら $\int_a^bf(x)g(x)\,dx=f(c)\int_a^bg(x)\,dx$ となる重み付きの形も成り立つ。$f$ が連続でないときや、重み $g$ が負の値をとるときは成り立たない例がある。積分で表された関数の微分の基礎になる。
前提知識: 定積分, 最大値・最小値の定理(高校数学), 関数の連続性と中間値の定理(高校数学)
テストの点数や 1 日の気温の平均は、値を足して個数で割って求める。では、区間 $a\le x\le b$ で連続に変わる量 $f(x)$ の「平均」は何だろうか。値が無限に多くあるので、足して個数で割ることはできない。答えは定積分を区間の長さで割ったもの $\dfrac1{b-a}\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ である。この記事では、この平均の値を $f$ が実際にどこかでとること(積分の平均値の定理)を、最大値・最小値の定理(高校数学) と 関数の連続性と中間値の定理(高校数学) から証明する。まず例で見る。
$f(x)=x^2$ を $0\le x\le3$ で考える。
$$
\int_0^3x^2\,dx=\Bigl[\frac{x^3}3\Bigr]_0^3=\frac{27}3=9
$$
なので、区間の長さ $3$ で割った平均は $\dfrac93=3$ である。$f(c)=3$ となる $c$ を $0\le c\le3$ で探すと、$c^2=3$ から $c=\sqrt3=1.732\ldots$ である。平均の値 $3$ を、関数は $x=\sqrt3$ で実際にとっている。区間の中点は $1.5$ だが、$c$ は中点ではない。
$f(x)=\sin x$ を $0\le x\le\pi$ で考える。
$$
\int_0^\pi\sin x\,dx=\Bigl[-\cos x\Bigr]_0^\pi=-\cos\pi+\cos0=1+1=2
$$
なので、平均は $\dfrac2\pi=0.6366\ldots$ である。$\sin c=\dfrac2\pi$ となる $c$ は、$0\le c\le\pi$ の中に
$$
c_1=0.6901\ldots,\qquad c_2=\pi-c_1=2.4514\ldots
$$
の 2 つある($\sin(\pi-c)=\sin c$ から)。図 1 のように、高さ $\dfrac2\pi$、横幅 $\pi$ の長方形の面積は $\dfrac2\pi\cdot\pi=2$ で、曲線の下の面積と等しい。長方形の上の辺は、曲線と $c_1$、$c_2$ の 2 点で交わる。
$y=\sin x$($0\le x\le\pi$)の下の面積(青)と、高さ $\frac2\pi$ の長方形(橙)。面積はどちらも $2$ で、長方形の上の辺が曲線と 2 点 $c_1$、$c_2$ で交わることを見る図。
$f(x)=x^2$($0\le x\le3$)を、区間を $n$ 等分した右端の点 $x_k=\dfrac{3k}n$($k=1,2,\ldots,n$)で測り、測った値の平均をとる。$n=10$ なら
$$
\frac1{10}\sum_{k=1}^{10}\Bigl(\frac{3k}{10}\Bigr)^2=\frac{9}{1000}\sum_{k=1}^{10}k^2=\frac9{1000}\cdot385=3.465
$$
である($\sum_{k=1}^{10}k^2=\frac{10\cdot11\cdot21}6=385$)。同じく $n=100$ で $3.04515$、$n=1000$ で $3.0045015$ となり、ex-mvi-start-square の平均 $3$ に近づく(図 2)。
$y=x^2$(青)と、$x_k=\frac{3k}{10}$ で測った 10 個の値(緑の棒)。10 個の値の平均 $3.465$(橙の破線)と、関数の平均 $3$(赤の実線)を比べる図。
ex-mvi-start-sample が、定積分を区間の長さで割ったものを「平均」と呼ぶ理由である。測った値の平均は
$$
\frac1n\sum_{k=1}^nf(x_k)=\frac1{b-a}\sum_{k=1}^nf(x_k)\cdot\frac{b-a}n
$$
と書け、右辺の和は区分求積の和なので、$n\to\infty$ で $\displaystyle\frac1{b-a}\int_a^bf(x)\,dx$ に近づく(区分求積と積分の定義)。
3 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $\displaystyle\frac1{b-a}\int_a^bf(x)\,dx$ | 関数の平均 | def-mvi-average |
| 最大値と最小値で積分を挟む | 平均は最小値と最大値の間 | prf-mvi-main の段 2 |
| 平均の値をとる点がある | 中間値の定理 | thm-mvi-main |
| 積分を $f(c)\,(b-a)$ に置き換えて評価する | 平均値の定理を不等式に使う | ex-mvi-weighted-bound |
| 積分で表された関数の微分 | 細い帯の平均が $f(x)$ に近づく | ex-mvi-ftc |
$a< b$ とし、$f$ を閉区間 $[a,b]$ で連続な関数とする。
$$
\frac1{b-a}\int_a^bf(x)\,dx
$$
を、$f$ の $[a,b]$ での 平均(平均値)という。
平均を $\mu$ と書くと、$\mu(b-a)=\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ である。$f\ge0$ のとき、これは「曲線の下の面積と、高さ $\mu$ の長方形の面積が等しい」と読める。平均は、グラフの山と谷をならして平らにしたときの高さである。
以下、$f$、$g$ は考える閉区間で連続な関数とする。
$a< b$ とし、$f$ を閉区間 $[a,b]$ で連続な関数とする。このとき
$$
\int_a^bf(x)\,dx=f(c)\,(b-a)
$$
となる $c$ が $a\le c\le b$ の範囲にある。言い換えると、$f$ は $[a,b]$ での平均 $\dfrac1{b-a}\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ を、区間のどこかで値としてとる。
証明の考え方は 2 段である。まず、平均は最小値と最大値の間にある(面積を、最小値の高さの長方形と最大値の高さの長方形で挟む)。次に、最小値をとる点と最大値をとる点の間で中間値の定理を使うと、平均の値をとる点が見つかる。
方針:$\mu=\dfrac1{b-a}\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ とおき、$f(c)=\mu$ となる $c$ を見つける。
段 1(最小値と最大値)。$f$ は $[a,b]$ で連続なので、rem-mvi-facts の 3 により、最小値と最大値をとる。$f(d)=m$ が最小値、$f(e)=M$ が最大値となる $[a,b]$ の点を $d$、$e$ とする。すべての $x$ で $m\le f(x)\le M$ である。
段 2(平均は最小値と最大値の間)。rem-mvi-facts の 1 により
$$
m(b-a)\le\int_a^bf(x)\,dx\le M(b-a)
$$
である。$b-a>0$ で割っても不等号の向きは変わらないので、$m\le\mu\le M$ である。
段 3(端の場合)。$\mu=m$ なら $c=d$、$\mu=M$ なら $c=e$ とすれば $f(c)=\mu$ である。
段 4(間の場合)。$m<\mu< M$ とする。このとき $m\ne M$ なので $d\ne e$ である。$d$ と $e$ のうち小さいほうを $p$、大きいほうを $q$ とすると、$[p,q]$ は $[a,b]$ に含まれ、$f$ は $[p,q]$ で連続である。両端の値は $m$ と $M$(順番はどちらでもよい)で、$\mu$ はその間の数なので、rem-mvi-facts の 4 により、$f(c)=\mu$ となる $c$ が $p< c< q$ にある。$c$ は $[a,b]$ の点である。
段 3・段 4 のどちらでも $f(c)=\mu$、すなわち $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx=f(c)\,(b-a)$ となる $c$ が $[a,b]$ にある。$\square$
ex-mvi-start-square と ex-mvi-start-sin は、この定理の $c$ を具体的に求めたものである。定理は $c$ の存在を保証するだけで、$c$ がいくつあるか、どこにあるかは教えない。ex-mvi-start-sin では $c$ は 2 つあった。
thm-mvi-main の $c$ は端点になることもあるのだろうか。実は、いつでも $a< c< b$ にとれる。その鍵は、「どこかで最大値より小さい連続関数は、積分も最大値の長方形より真に小さい」ことである。
$f$ を $[a,b]$ で連続な関数とし、定数 $M$ について、すべての $x$ で $f(x)\le M$ とする。ある点 $x_0$ で $f(x_0)< M$ なら
$$
\int_a^bf(x)\,dx< M(b-a)
$$
である。同じく、すべての $x$ で $f(x)\ge m$ で、ある点で $f(x_0)>m$ なら、$\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx>m(b-a)$ である。
要点:$f$ は $x_0$ で連続なので、$x_0$ を含む長さが正の小区間の上で、$f$ は $M$ より一定の幅だけ小さい。その小区間の分だけ、積分は $M(b-a)$ より小さくなる。
段 1(小区間で一定の幅だけ小さい).$\varepsilon=\dfrac{M-f(x_0)}2>0$ とおく。「ある正の整数 $n$ について、$[a,b]$ の点で $\lvert x-x_0\rvert\le\frac1n$ を満たすものがすべて $f(x)< M-\varepsilon$ を満たす」ことを示す。そうでないと仮定すると、各 $n$ で $\lvert x_n-x_0\rvert\le\frac1n$、$f(x_n)\ge M-\varepsilon$ となる $[a,b]$ の点 $x_n$ がある。はさみうちの原理で $x_n\to x_0$ で、$f$ は $x_0$ で連続なので $f(x_n)\to f(x_0)$ である。極限をとると $f(x_0)\ge M-\varepsilon=\dfrac{M+f(x_0)}2$、すなわち $f(x_0)\ge M$ となり、$f(x_0)< M$ に反する。
段 2(積分を分ける).段 1 の $n$ について、$[a,b]$ と $\bigl[x_0-\frac1n,\ x_0+\frac1n\bigr]$ の共通部分は、長さ $\ell>0$ の閉区間 $[p,q]$ である($a< b$ なので、$x_0$ が端点でも長さは正)。rem-mvi-facts の 2 で $[a,b]$ を $[a,p]$、$[p,q]$、$[q,b]$ に分け($p=a$ や $q=b$ のときは、その部分を除く)、rem-mvi-facts の 1 を $[a,p]$ と $[q,b]$ では定数 $M$ で、$[p,q]$ では定数 $M-\varepsilon$ で使うと
$$\int_a^bf(x)\,dx\le M(p-a)+(M-\varepsilon)(q-p)+M(b-q)=M(b-a)-\varepsilon\ell< M(b-a)$$
である。後半は $-f$ に前半を使えばよい。$\square$
$a< b$ とし、$f$ を $[a,b]$ で連続な関数とする。このとき $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx=f(c)\,(b-a)$ となる $c$ を、$a< c< b$ の範囲にとれる。
方針:$f$ が定数でなければ、平均は最小値と最大値の間(どちらにも等しくない値)にあることを lem-mvi-strict で示し、prf-mvi-main の段 4 の議論を使う。
段 1(定数関数)。$f$ が定数 $C$ なら、平均は $C$ で、$a< c< b$ のどの $c$ でも $f(c)=C$ である。
段 2(定数でない関数)。$f$ が定数でないとする。prf-mvi-main と同じく最小値 $m=f(d)$、最大値 $M=f(e)$、平均 $\mu$ をとる。$f$ は定数でないので $m< M$ である。$f(d)=m< M$ なので、lem-mvi-strict の前半により $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx< M(b-a)$、すなわち $\mu< M$ である。同じく $f(e)=M>m$ なので、後半により $\mu>m$ である。
段 3(点をとる)。$m<\mu< M$ なので、prf-mvi-main の段 4 のとおり、$d$ と $e$ の間(両端を除く)に $f(c)=\mu$ となる $c$ がある。$d$、$e$ は $[a,b]$ の点で、$c$ はその 2 点の間(両端を除く)にあるので、$a\le\min(d,e)< c<\max(d,e)\le b$ から $a< c< b$ である。$\square$
この命題の結論は、微分の平均値の定理「$F(b)-F(a)=F'(c)(b-a)$ となる $c$ が $a< c< b$ にある」とそっくりである。実際、$F(x)=\displaystyle\int_a^xf(t)\,dt$ とおくと、$F'(x)=f(x)$ なので(定積分で表された関数)、2 つの定理は同じ式になる。
| 微分の平均値の定理 | 積分の平均値の定理 | |
|---|---|---|
| 仮定 | $[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能 | $[a,b]$ で連続 |
| 結論 | $F(b)-F(a)=F'(c)(b-a)$ | $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx=f(c)(b-a)$ |
| $c$ の範囲 | $a< c< b$ | $a< c< b$(prop-mvi-open) |
| 意味 | 平均の変化率を、ある瞬間の変化率がとる | 関数の平均を、ある点での値がとる |
| 証明で使うもの | 最大値・最小値の定理と Fermat の定理(Rolle の定理) | 最大値・最小値の定理と中間値の定理 |
| $F(x)=\int_a^xf(t)\,dt$ のとき | $F(b)-F(a)=f(c)(b-a)$ | 同じ式 |
prop-mvi-open は、微分の平均値の定理から直接出すこともできる。
$F(x)=\displaystyle\int_a^xf(t)\,dt$ とおく。$f$ が連続なので、$F$ は $[a,b]$ で微分可能で $F'(x)=f(x)$ である(定積分で表された関数 の定理「積分の上端についての微分」)。特に $F$ は $[a,b]$ で連続である。微分の平均値の定理(平均値の定理による差の評価)により、$F(b)-F(a)=F'(c)(b-a)$ となる $c$ が $a< c< b$ にある。$F(b)-F(a)=\displaystyle\int_a^bf(t)\,dt$、$F'(c)=f(c)$ なので、これは prop-mvi-open の式である。ただし、定積分で表された関数 での「積分の上端についての微分」の証明は、小さな区間での最大値・最小値を使っていて、この記事の prf-mvi-main と同じ考え方を含んでいる。
データの平均では、値ごとに重みを付けた 加重平均 $\dfrac{w_1y_1+\cdots+w_ny_n}{w_1+\cdots+w_n}$(重み $w_k\ge0$)もよく使う。関数でも、重み $g(x)\ge0$ を付けた平均 $\dfrac{\int_a^bf(x)g(x)\,dx}{\int_a^bg(x)\,dx}$ を考えられる。この平均の値も、$f$ はどこかでとる。
$a< b$ とし、$f$、$g$ を $[a,b]$ で連続な関数とする。すべての $x$ で $g(x)\ge0$ なら
$$
\int_a^bf(x)g(x)\,dx=f(c)\int_a^bg(x)\,dx
$$
となる $c$ が $a\le c\le b$ の範囲にある。$g(x)=1$ とすると thm-mvi-main になる。
方針:prf-mvi-main と同じく最小値と最大値で挟む。ただし、挟む不等式に $g(x)\ge0$ を掛けるところで、重みが負でないことを使う。
段 1(挟む)。$f$ の最小値を $m=f(d)$、最大値を $M=f(e)$ とする。すべての $x$ で $m\le f(x)\le M$ で、$g(x)\ge0$ を掛けても不等号の向きは変わらないので
$$
m\,g(x)\le f(x)g(x)\le M\,g(x)
$$
である。$fg$、$g$ は連続なので、rem-mvi-facts の 1(単調性と定数倍)により積分して
$$
m\int_a^bg(x)\,dx\le\int_a^bf(x)g(x)\,dx\le M\int_a^bg(x)\,dx
$$
である。$G=\displaystyle\int_a^bg(x)\,dx$ とおく。$g\ge0$ なので $G\ge0$ である。
段 2($G=0$ の場合)。段 1 の不等式は $0\le\displaystyle\int_a^bf(x)g(x)\,dx\le0$ となるので、左辺の積分は $0$ である。どの $c$ をとっても $f(c)\cdot0=0$ なので、等式が成り立つ。
段 3($G>0$ の場合)。段 1 の不等式を $G>0$ で割ると、$\mu=\dfrac1G\displaystyle\int_a^bf(x)g(x)\,dx$ は $m\le\mu\le M$ を満たす。あとは prf-mvi-main の段 3・段 4 と同じく、$\mu=m$ なら $c=d$、$\mu=M$ なら $c=e$、$m<\mu< M$ なら $d$ と $e$ の間で中間値の定理を使って、$f(c)=\mu$ となる $c$ をとる。$f(c)=\mu$ の両辺に $G$ を掛けると、定理の等式になる。$\square$
$f(x)=e^x$、$g(x)=x$ を $[0,1]$ で考える。$g\ge0$ である。部分積分で
$$
\int_0^1xe^x\,dx=\Bigl[xe^x\Bigr]_0^1-\int_0^1e^x\,dx=e-(e-1)=1,\qquad\int_0^1x\,dx=\frac12
$$
なので、$1=e^c\cdot\dfrac12$ から $e^c=2$、$c=\log2=0.6931\ldots$ である。重みのない平均の点 $\log(e-1)=0.5413\ldots$(ex-mvi-find-c の 2)より右にある。重み $x$ が右側の値を重く数えるからである。
重み付きの定理は、値の分からない積分を評価するときに役に立つ。積分を「$f(c)$ × 計算できる積分」に書き換え、$c$ の範囲から $f(c)$ を上下から押さえる。
$n$ を正の整数とし、$I_n=\displaystyle\int_0^1\frac{x^n}{1+x}\,dx$ を考える。thm-mvi-weighted を $f(x)=\dfrac1{1+x}$、$g(x)=x^n\ge0$ として使うと
$$
I_n=\frac1{1+c}\int_0^1x^n\,dx=\frac1{1+c}\cdot\frac1{n+1}
$$
となる $c$ が $0\le c\le1$ にある。$1\le1+c\le2$ なので $\dfrac12\le\dfrac1{1+c}\le1$ で、
$$
\frac1{2(n+1)}\le I_n\le\frac1{n+1}
$$
である。$n=1$ では $I_1=\displaystyle\int_0^1\Bigl(1-\frac1{1+x}\Bigr)dx=1-\log2=0.3068\ldots$ で、確かに $0.25\le I_1\le0.5$ である。$n=10$ では数値積分で $I_{10}=0.04751\ldots$ で、$\dfrac1{22}=0.04545\ldots$ と $\dfrac1{11}=0.09090\ldots$ の間にある。$n\to\infty$ で両側が $0$ に近づくので、はさみうちの原理により $I_n\to0$ である(はさみうちと評価の技法)。積分の評価の他の方法は 積分の評価 で扱う。
積分の平均値の定理のいちばん大事な使い方は、「幅 $h$ の細い帯での平均は、$h\to0$ で $f(x)$ に近づく」ことである。
$f$ を区間 $I$ で連続な関数、$x$ を $I$ の点とする。$h>0$ で $[x,x+h]$ が $I$ に含まれるとき、thm-mvi-main を $[x,x+h]$ で使うと
$$
\frac1h\int_x^{x+h}f(t)\,dt=f(c_h)
$$
となる $c_h$ が $x\le c_h\le x+h$ にある。$h\to+0$ のとき、はさみうちの原理で $c_h\to x$ で、$f$ は $x$ で連続なので $f(c_h)\to f(x)$ である。したがって
$$
\lim_{h\to+0}\frac1h\int_x^{x+h}f(t)\,dt=f(x)
$$
である($h<0$ の側も、区間 $[x+h,x]$ で同じ議論をすればよい)。左辺は $F(x)=\displaystyle\int_a^xf(t)\,dt$ の差分商 $\dfrac{F(x+h)-F(x)}h$ なので、これは $F'(x)=f(x)$ を示している。この「積分の上端についての微分」の定理と、その使い方は 定積分で表された関数 で扱う。
数値で確かめる。$f(t)=e^{t^2}$、$x=0$ とすると、$f(0)=1$ で、数値積分により
$$
\frac1{0.1}\int_0^{0.1}e^{t^2}\,dt=1.00334\ldots,\qquad\frac1{0.01}\int_0^{0.01}e^{t^2}\,dt=1.0000333\ldots
$$
となり、$h$ を小さくすると $1$ に近づく。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ が連続 | $[0,2]$ で、$0\le x<1$ なら $f(x)=0$、$1\le x\le2$ なら $f(x)=1$ | 平均の値をとる点 $c$ がある |
| 重み $g$ が負にならない | $[-1,1]$ で $f(x)=x$、$g(x)=x$ | 重み付きの等式を満たす $c$ がある |
| 重み $g$ が負にならない | $[-1,1]$ で $f(x)=x$、$g(x)=x-\frac14$ | 重み付きの等式を満たす $c$ がある |
$[0,2]$ で、$0\le x<1$ なら $f(x)=0$、$1\le x\le2$ なら $f(x)=1$ とする。$f$ は $x=1$ で連続でない(左からの極限 $0$ が $f(1)=1$ と違う)。区間を $x=1$ で分けると、$[0,1]$ では $x=1$ の 1 点を除いて $f=0$、$[1,2]$ では $f=1$ である。1 点で値を変えても積分は変わらないので(この記事では証明しない。Leb26 Proposition 5.2.10)、
$$
\int_0^2f(x)\,dx=\int_0^10\,dx+\int_1^21\,dx=0+1=1
$$
で、平均は $\dfrac12$ である。しかし $f$ の値は $0$ と $1$ だけなので、$f(c)=\dfrac12$ となる $c$ はない(図 3)。破れている仮定は $f$ の連続性で、prf-mvi-main の段 4 で使う中間値の定理が使えない(関数の連続性と中間値の定理(高校数学) の反例と同じ現象である)。
$[0,2]$ で値が $0$ から $1$ へ跳ぶ関数のグラフ(青)と、平均 $\frac12$ の破線(赤)。値が $0$ と $1$ だけなので、平均の高さの線と交わらないことを見る図。
$[-1,1]$ で $f(x)=x$、$g(x)=x$ とする。$g$ は $x<0$ で負になる。
$$
\int_{-1}^1f(x)g(x)\,dx=\int_{-1}^1x^2\,dx=\frac23,\qquad\int_{-1}^1g(x)\,dx=\int_{-1}^1x\,dx=0
$$
なので、どの $c$ でも右辺は $f(c)\cdot0=0$ で、左辺の $\frac23$ と等しくならない。prf-mvi-weighted の段 1 で「$g(x)\ge0$ を掛けても不等号の向きは変わらない」が使えず、段 2 の「$G=0$ なら左辺も $0$」が崩れている。
$[-1,1]$ で $f(x)=x$、$g(x)=x-\dfrac14$ とする。
$$
\int_{-1}^1x\Bigl(x-\frac14\Bigr)dx=\frac23-0=\frac23,\qquad\int_{-1}^1\Bigl(x-\frac14\Bigr)dx=0-\frac12=-\frac12
$$
なので、等式は $\dfrac23=f(c)\cdot\Bigl(-\dfrac12\Bigr)$、すなわち $f(c)=-\dfrac43$ を要求する。しかし $[-1,1]$ で $f(x)=x$ の値は $-1$ 以上なので、そのような $c$ はない。重みが負になる部分があると、「重み付きの平均」は $f$ の最小値と最大値の間に入るとは限らない。
2 つ目と 3 つ目の反例は、データの加重平均で負の重みを許すと、平均がデータの範囲の外に出ることがあるのと同じである。たとえば、値 $1$ と $2$ に重み $2$ と $-1$ を付けると、$\dfrac{2\cdot1+(-1)\cdot2}{2-1}=0$ で、$1$ と $2$ の間にない。
$f(x)=\sqrt x$ の $[0,4]$ での平均を求め、thm-mvi-main の $c$ を求めよ。$c$ は $0< c<4$ を満たすか。
$\displaystyle\int_0^4\sqrt x\,dx=\Bigl[\frac23x^{\frac32}\Bigr]_0^4=\frac23\cdot8=\frac{16}3$ なので、平均は $\dfrac14\cdot\dfrac{16}3=\dfrac43$ である。$\sqrt c=\dfrac43$ から $c=\dfrac{16}9=1.777\ldots$ で、$0< c<4$ を満たす(prop-mvi-open のとおり)。
$f$ が $[a,b]$($a< b$)で連続で、すべての $x$ で $f(x)\ge0$、かつ $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx=0$ なら、すべての $x$ で $f(x)=0$ であることを示せ。また、連続でない場合には成り立たない例を挙げよ。
ある点 $x_0$ で $f(x_0)>0$ だったとすると、$m=0$ として lem-mvi-strict の後半を使えば $\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx>0\cdot(b-a)=0$ となり、仮定に反する。よってすべての $x$ で $f(x)=0$ である。連続でない例:$[0,1]$ で $f(0)=1$、$0< x\le1$ で $f(x)=0$ とすると、$f\ge0$ で積分は $0$ だが、$f(0)\ne0$ である(有限個の点で値を変えても積分は変わらない。この記事では証明しない。Leb26 Proposition 5.2.10)。
重み付きの平均は、確率の期待値と同じ形をしている。確率密度関数 $p(x)\ge0$($\displaystyle\int_a^bp(x)\,dx=1$)をもつ確率変数 $X$ について、$f(X)$ の期待値は $E[f(X)]=\displaystyle\int_a^bf(x)p(x)\,dx$ である(確率密度関数と連続型確率変数)。thm-mvi-weighted を $g=p$ として使うと、$E[f(X)]=f(c)$ となる $c$ が $[a,b]$ にある。$f$ が連続なら、$f(X)$ の期待値は、$f$ がどこかでとる値だということである。一様分布($p(x)=\frac1{b-a}$)のときが thm-mvi-main である。
証明で積分について使ったのは、単調性($f\le g$ なら $\int f\le\int g$)、定数倍、区間の加法性だけである。大学の Riemann 積分では、これらは積分の定義から証明される(Leb26 Proposition 5.2.6、Proposition 5.2.4、Proposition 5.2.2)。thm-mvi-main 自身は Leb26 Exercise 5.2.4 として、exc-mvi-zero は Exercise 5.2.5 として挙げられている。大学向けの記事 Riemann積分 にも、同じ定理と証明の概略がある。
重み付きの定理では、「$f$ の値」を平均に置き換えた。逆に「重み $g$ の区間」を動かす形の定理もある。$f$ が $[a,b]$ で単調減少かつ $f\ge0$、$g$ が連続なら、$\displaystyle\int_a^bf(x)g(x)\,dx=f(a)\int_a^cg(x)\,dx$ となる $c$ が $[a,b]$ にある(積分の第 2 平均値の定理、Bonnet の形)。重み $g$ の符号は問わない代わりに、$f$ の単調性を仮定する。この記事では証明しない。
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