Laplace方程式とPoisson方程式(Laplace equation and Poisson equation)とは、偏微分方程式 $\Delta u=0$ と、関数 $f$ についての $\Delta u=f$ のことで、電位や定常な熱の分布を表す楕円型方程式の代表である。全空間では、$f$ がコンパクトな台をもつ $C^2$ 級なら Newton ポテンシャルが解を与え、$n\ge3$ で無限遠で $0$ に近づく解はこれだけである。有界な領域では、Laplace 方程式の Dirichlet 問題が解けるとき、右辺がコンパクトな台をもつ $C^2$ 級の関数の制限なら Poisson 方程式の Dirichlet 問題もただ一つの解をもち、解はデータに連続に依存する。Neumann 問題には両立条件があり、$f$ が連続なだけでは $C^2$ 級の解がないこともある。
前提知識: 偏微分, 調和関数, Gaussの発散定理
Laplace 方程式(Laplace equation)とは、$\mathbb{R}^n$ の開集合上の未知関数 $u$ についての偏微分方程式
$$
\Delta u:=\frac{\partial^2u}{\partial x_1^2}+\dots+\frac{\partial^2u}{\partial x_n^2}=0
$$
のことであり、与えられた関数 $f$ について $\Delta u=f$ を考えたものを Poisson 方程式(Poisson equation)という。静電気学では、電荷密度 $\rho$ の分布が作る電位 $\phi$ が(単位を選べば)$-\Delta\phi=\rho$ を満たし、電荷のない所では Laplace 方程式になる。重力のポテンシャル、定常な熱の分布、渦のない非圧縮流の速度ポテンシャルも同じ方程式に従う。Laplace 方程式の解は調和関数であり、その性質(平均値の性質・最大値原理・滑らかさ)は調和関数の記事にまとめてある。
この記事では、方程式を解くという立場から両者を扱う。全空間では、右辺 $f$ がコンパクトな台をもつ $C^2$ 級の関数なら、基本解との畳み込み(Newton ポテンシャル)が Poisson 方程式の解を与え、$n\ge3$ では無限遠で $0$ に近づく解はそれしかない。有界な領域では、Laplace 方程式の Dirichlet 問題が解けて右辺が滑らかなとき、境界の値を指定する Dirichlet 問題が適切(解がただ一つ存在し、データに連続に依存する)であることを、Laplace 方程式の場合への帰着と最大値原理で示す。法線微分を指定する Neumann 問題には、解けるための条件がある。最後に、右辺 $f$ が連続なだけでは $C^2$ 級の解がないことがある例を、調和関数の孤立特異点の除去を使って証明する。
以下、$n\ge2$ とし、$\Omega\subset\mathbb{R}^n$ は空でない開集合とする。$B(a,r)$ は開球、$\overline B(a,r)$ は閉球、$V(B)$ は単位球の体積で、半径 $r$ の球面の面積は $nV(B)r^{n-1}$ である。
$f\colon\Omega\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。$\Omega$ 上の $C^2$ 級の関数 $u$ で、$\Omega$ の各点で
$$
\Delta u=f
$$
を満たすものを、Poisson 方程式 $\Delta u=f$ の(古典)解という。$f=0$ のときを Laplace 方程式 といい、その解を 調和関数 という。
$\Delta$ は線形なので、Poisson 方程式の 2 つの解の差は Laplace 方程式の解である。したがって、解を 1 つ(特解)見つければ、すべての解は「特解 $+$ 調和関数」の形をしている。調和関数は豊富にあるので、解を一つに決めるには、境界での条件や無限遠での振る舞いを付け加える必要がある。
符号の取り方は文献によって異なり、物理や Green関数 の記事では $-\Delta u=f$ と書くことが多い($-\Delta$ は正の作用素になる)。$f$ を $-f$ に替えれば同じことなので、以下では $\Delta u=f$ を使う。
| 方程式 | 解の例 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| $\Delta u=0$ | $x_1^2-x_2^2$、$x_1x_2$、$e^{x_1}\cos x_2$ | 2 階偏導関数の和が $0$ |
| $\Delta u=0$($x\ne0$) | $\lvert x\rvert^{2-n}$($n\ge3$)、$\log\lvert x\rvert$($n=2$) | 調和関数 の例「基本解の形の関数」 |
| $\Delta u=1$ | $\dfrac{\lvert x\rvert^2}{2n}$、$\dfrac{x_1^2}{2}$ | $\Delta\lvert x\rvert^2=2n$ |
| $\Delta u=f(x_1)$($f$ は 1 変数) | $\displaystyle\int_0^{x_1}\!\!\int_0^s f(r)\,dr\,ds$ | 1 変数の 2 回積分 |
表の 3 行目の 2 つの解の差 $\frac{\lvert x\rvert^2}{2n}-\frac{x_1^2}2$ は、たしかに調和である($n=2$ では $\frac{x_2^2-x_1^2}{4}$)。
全空間 $\mathbb{R}^n$ で Poisson 方程式の特解を作るには、点 $0$ に置いた単位の源が作るポテンシャルを重ね合わせればよい。
$x\in\mathbb{R}^n\setminus\{0\}$ に対し
$$
\Gamma(x):=\begin{cases}-\dfrac{1}{2\pi}\log\lvert x\rvert & (n=2),\\[2mm] \dfrac{1}{n(n-2)V(B)}\,\lvert x\rvert^{2-n} & (n\ge3)\end{cases}
$$
とおき、これを Laplace 作用素の 基本解 という。$f$ を $\mathbb{R}^n$ 上のコンパクトな台をもつ連続関数とするとき、
$$
(\Gamma*f)(x):=\int_{\mathbb{R}^n}\Gamma(x-y)f(y)\,dy
$$
を $f$ の Newton ポテンシャル という。
$\Gamma$ は $\mathbb{R}^n\setminus\{0\}$ 上で調和で、原点の近くで非有界だが局所可積分なので、$\Gamma*f$ は各点で定まる。定数は、超関数 の意味で $-\Delta\Gamma=\delta_0$(原点の Dirac 測度)となるように選んである(Green関数 の定理「基本解の方程式」。より一般の定数係数の作用素については 基本解)。その帰結として、次が成り立つ。
Poisson 方程式の解は調和関数を足す自由度をもつが、無限遠での条件を課すと一つに決まる。
$n\ge3$ とし、$f$ を $\mathbb{R}^n$ 上のコンパクトな台をもつ $C^2$ 級の関数とする。このとき、$\mathbb{R}^n$ 上の $C^2$ 級の関数 $u$ で
$$
\Delta u=f,\qquad \lim_{\lvert x\rvert\to\infty}u(x)=0
$$
を満たすものはただ一つで、$u=-\Gamma*f$ である。さらに、$\operatorname{supp}f\subset\overline B(0,\rho)$ なら $\lvert x\rvert\ge2\rho$ で
$$
\lvert u(x)\rvert\le\frac{2^{n-2}}{n(n-2)V(B)}\Bigl(\int_{\mathbb{R}^n}\lvert f\rvert\,dy\Bigr)\lvert x\rvert^{2-n}
$$
が成り立つ。
存在:$u:=-\Gamma*f$ は前の節により $C^2$ 級で $\Delta u=f$ を満たす。$\lvert x\rvert\ge2\rho$、$\lvert y\rvert\le\rho$ なら $\lvert x-y\rvert\ge\lvert x\rvert-\lvert y\rvert\ge\lvert x\rvert/2$ なので、$\Gamma$ が $\lvert x\rvert$ について減少することから
$$
\lvert u(x)\rvert\le\int_{\lvert y\rvert\le\rho}\Gamma(x-y)\lvert f(y)\rvert\,dy\le\frac{(\lvert x\rvert/2)^{2-n}}{n(n-2)V(B)}\int\lvert f\rvert\,dy
$$
である。これは主張の評価で、とくに $\lvert x\rvert\to\infty$ で $u(x)\to0$ である。
一意性:$u_1,u_2$ がともに条件を満たすとし、$h:=u_1-u_2$ とおく。$h$ は $C^2$ 級で $\Delta h=0$ なので $\mathbb{R}^n$ 上の調和関数であり、$\lvert x\rvert\to\infty$ で $h(x)\to0$ である。$\varepsilon>0$ を任意にとると、ある $R$ について $\lvert x\rvert\ge R$ で $\lvert h\rvert\le\varepsilon$ であり、閉球 $\overline B(0,R)$ の上では $h$ は連続なので有界である。よって $h$ は $\mathbb{R}^n$ 上で有界で、調和関数 の定理「Liouvilleの定理(調和関数)」により定数である。その定数は無限遠での極限 $0$ に等しいので、$u_1=u_2$ である。$\square$
$n=2$ では事情が異なる。基本解 $-\frac1{2\pi}\log\lvert x\rvert$ は無限遠で $0$ に近づかないので、Newton ポテンシャルも一般には有界でない。
$n=2$ とし、$f$ を $\mathbb{R}^2$ 上のコンパクトな台をもつ $C^2$ 級の関数、$m:=\int_{\mathbb{R}^2}f\,dy$ とする。
要点:1 は $\log\lvert x-y\rvert-\log\lvert x\rvert$ が $f$ の台の上で一様に $0$ に近づくことによる。2 は、有界な解と $-\Gamma*f$ の差が 1 次以下の調和多項式になり、1 の対数の項が残ると有界にならないことによる。
1:$\operatorname{supp}f\subset\overline B(0,\rho)$ とし、$\lvert x\rvert\ge2\rho$ とする。
$$-(\Gamma*f)(x)=\frac1{2\pi}\int\log\lvert x-y\rvert\,f(y)\,dy=\frac{m}{2\pi}\log\lvert x\rvert+\frac1{2\pi}\int\log\frac{\lvert x-y\rvert}{\lvert x\rvert}\,f(y)\,dy$$
であり、$\lvert y\rvert\le\rho$ なら $\bigl\lvert\lvert x-y\rvert/\lvert x\rvert-1\bigr\rvert\le\rho/\lvert x\rvert\le\frac12$ である。$\lvert s\rvert\le\frac12$ で $\lvert\log(1+s)\rvert\le2\lvert s\rvert$ なので、最後の積分の絶対値は $\frac{\rho}{\pi\lvert x\rvert}\int\lvert f\rvert$ 以下で、$0$ に近づく。
2:$m=0$ なら、1 により $-\Gamma*f$ は無限遠で $0$ に近づき、連続なので有界な解である。逆に $u$ を有界な解とし、$h:=u+\Gamma*f$ とおく。$h$ は $\mathbb{R}^2$ 上で調和で、1 から $\lvert x\rvert$ が大きいところで $\lvert h(x)\rvert\le\sup\lvert u\rvert+\frac{\lvert m\rvert}{2\pi}\log\lvert x\rvert+1$ なので、ある $A$ について $\lvert h(x)\rvert\le A(1+\lvert x\rvert)$ である。調和関数 の系「多項式程度の増大度をもつ調和関数」により $h(x)=c+b\cdot x$($c\in\mathbb{R}$、$b\in\mathbb{R}^2$)と書ける。すると 1 により
$$u(x)=c+b\cdot x+\frac{m}{2\pi}\log\lvert x\rvert+o(1)\qquad(\lvert x\rvert\to\infty)$$
である。$b\ne0$ なら $x=sb$($s\to\infty$)で右辺は $s\lvert b\rvert^2$ の程度に大きくなり、$u$ の有界性に反する。よって $b=0$ で、さらに $\lvert x\rvert\to\infty$ で $\frac{m}{2\pi}\log\lvert x\rvert$ が有界であることから $m=0$ である。このとき $u=-\Gamma*f+c$ である。$\square$
たとえば $f\ge0$ が $0$ でなければ $m>0$ なので、平面全体の Poisson 方程式 $\Delta u=f$ には有界な解がない。平面に正の電荷を置くと、その電位の絶対値は無限遠で対数的に大きくなる。
有界な開集合 $\Omega$ では、境界 $\partial\Omega$ での条件を付けて解を決める。代表的なのは次の 2 つである。
$\Omega$ を有界な開集合とし、$f$ を $\Omega$ 上の連続関数とする。
$f=0$ の Dirichlet 問題が Dirichlet問題 の記事の主題である。Laplace 方程式の Dirichlet 問題がどの有界な領域でも解けるわけではない。すべての連続な境界値に対して解があることと、境界のすべての点に障壁があることは同値である(Dirichlet問題 の定理「障壁によるDirichlet問題の可解性の判定」)。たとえば有界な凸領域や、境界の各点で外側から球が接する領域では解ける。Poisson 方程式の Dirichlet 問題は、この Laplace 方程式の場合に帰着する。
$\Omega$ を有界な開集合とし、$\Omega\subset B(x_0,R)$ とする。
1:$F:=\sup_\Omega\lvert f\rvert$ とし、$v(x):=u(x)+\frac{F}{2n}\lvert x-x_0\rvert^2$ とおく。$\Delta\lvert x-x_0\rvert^2=2n$ なので $\Delta v=f+F\ge0$ である。楕円型偏微分方程式 の定理「弱最大値原理」を $L=-\Delta$($c\equiv0$)に当てると、$Lv\le0$ から $\max_{\overline\Omega}v=\max_{\partial\Omega}v$ である。$\overline\Omega\subset\overline B(x_0,R)$ なので
$$
\max_{\overline\Omega}u\le\max_{\overline\Omega}v=\max_{\partial\Omega}v\le\max_{\partial\Omega}u+\frac{FR^2}{2n}
$$
を得る。$-u$ は $\Delta(-u)=-f$ を満たすので、同じ議論から $\max(-u)\le\max_{\partial\Omega}(-u)+FR^2/(2n)$ である。2 つを合わせて評価を得る。一意性:2 つの解の差 $w$ は $\Delta w=0$、$\partial\Omega$ で $w=0$ を満たすので、評価($f=0$)から $w=0$ である。
2:$f$ を $\mathbb{R}^n$ 上のコンパクトな台をもつ $C^2$ 級の関数 $\tilde f$ の制限とし、$w:=-\Gamma*\tilde f$ とおく。前の節により $w$ は $\mathbb{R}^n$ 上 $C^2$ 級で $\Delta w=\tilde f$ である。$g-w$ は $\partial\Omega$ 上で連続なので、仮定により $h\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$ で $\Omega$ で調和、$\partial\Omega$ で $h=g-w$ となるものがある。$u:=w+h$ とおくと、$u\in C^2(\Omega)\cap C(\overline\Omega)$、$\Omega$ で $\Delta u=f+0=f$、$\partial\Omega$ で $u=w+(g-w)=g$ である。一意性は 1 による。$\square$
1 の評価は、データ $(f,g)$ を少し動かしたときの解の変化を押さえる。2 つの解の差に当てると
$$
\max_{\overline\Omega}\lvert u_1-u_2\rvert\le\max_{\partial\Omega}\lvert g_1-g_2\rvert+\frac{R^2}{2n}\sup_\Omega\lvert f_1-f_2\rvert
$$
なので、解は一様ノルムについてデータに連続に依存する。これで Dirichlet 問題は、存在・一意性・連続依存性の 3 つを満たす 適切な 問題であることがわかった(偏微分方程式 の節「適切性と Hadamard の例」)。滑らかな境界をもつ有界な領域では、解は Green関数 を使って積分で表せる(Green関数 の定理「Green 関数による表現公式」)。
Neumann 問題には、Dirichlet 問題にない制約がある。
def-lp-bvp の 2 の設定で Neumann 問題が解 $u$ をもてば
$$
\int_\Omega f\,dx=\int_{\partial\Omega}g\,dS
$$
である。また 2 つの解の差は、$\Omega$ の各連結成分の上で定数である。
Gaussの発散定理 をベクトル場 $\nabla u$ に当てると、$\operatorname{div}\nabla u=\Delta u$ なので $\int_\Omega\Delta u\,dx=\int_{\partial\Omega}\nabla u\cdot\nu\,dS=\int_{\partial\Omega}\partial_\nu u\,dS$ である。左辺は $\int_\Omega f$、右辺は $\int_{\partial\Omega}g$ である。後半は、差 $w$ が $\Delta w=0$、$\partial_\nu w=0$ を満たすことから、Green の第 1 恒等式で $\int_\Omega\lvert\nabla w\rvert^2dx=\int_{\partial\Omega}w\,\partial_\nu w\,dS=0$ となり $\nabla w=0$ が従う($\Omega$ が連結な場合は 境界値問題 の定理「Dirichlet・Neumann・Robin 問題の一意性と両立条件」)。$\square$
$\Omega=B(0,1)$、$f=1$ とする。$\int_\Omega f=V(B)$、境界の面積は $nV(B)$ なので、$g$ が定数なら両立条件は $g=1/n$ である。実際 $u=\lvert x\rvert^2/(2n)$ は $\Delta u=1$、$\partial_\nu u=x\cdot\nabla u=\lvert x\rvert^2/n=1/n$($\lvert x\rvert=1$)を満たす。一方 $g=0$ では両立条件が破れるので、$\Delta u=1$、$\partial_\nu u=0$ を満たす解はない。物理的には、内部で熱が一様に発生しているのに境界から熱が逃げなければ、定常状態は存在しない。
ここでの議論はすべて古典解についてのものである。$\int\nabla u\cdot\nabla v+\dots$ の形に方程式を弱めた弱解を Sobolev空間 で考えると、存在は Lax-Milgramの定理 から得られ(偏微分方程式 の節「弱解と関数解析」、楕円型偏微分方程式 の定理「弱解の存在と一意性」)、弱い意味の調和関数が実際に調和であることは Weylの補題 が保証する。コンパクトで境界のない向き付けられた連結な Riemann 多様体の上では、滑らかな関数 $f$ について $\Delta u=f$ が滑らかな $u$ で解けることと $\int f=0$ が同値である(Hodgeの定理 の系「Poisson 方程式の可解性」)。これは Neumann 問題の両立条件の、境界のない場合にあたる。
常微分方程式 $u''=f$ なら、$f$ が連続であれば 2 回積分して $C^2$ 級の解が得られる。多変数の Poisson 方程式ではこれが成り立たない。証明には、調和関数の孤立特異点についての次の事実を使う。
$\rho>0$ とし、$w$ を $B(0,\rho)\setminus\{0\}$ 上の実数値調和関数で、有界なものとする。このとき $w$ は $B(0,\rho)$ 上の調和関数に延びる。
要点:球面の上で $w$ に等しい調和関数 $h$ を Poisson 積分で作り、$w-h$ を基本解の形の関数 $\varepsilon\Phi$ と比べて、弱最大値原理で $w-h=0$ を示す。
$0< r< \rho$ をとる。単位球の場合の Dirichlet問題 の定理「Poisson積分による球のDirichlet問題の解」を平行移動と拡大で $\overline B(0,r)$ に移すと(調和性は拡大で保たれる)、$\overline B(0,r)$ 上で連続、$B(0,r)$ 上で調和で、球面 $\lvert x\rvert=r$ の上で $w$ に等しい関数 $h$ がある。$d:=w-h$ は $0< \lvert x\rvert< r$ で調和で有界、球面に近づくと $0$ に近づく。
$$\Phi(x):=\begin{cases}\lvert x\rvert^{2-n}-r^{2-n}&(n\ge3)\\ \log(r/\lvert x\rvert)&(n=2)\end{cases}$$
とおくと、$\Phi$ は $0< \lvert x\rvert< r$ で調和かつ正で、球面で $0$、$x\to0$ で $+\infty$ に発散する。$\varepsilon>0$ について $d-\varepsilon\Phi$ は有界な開集合 $\{0< \lvert x\rvert< r\}$ の上で調和で、球面の点での上極限は $0$、原点での上極限は $-\infty$ である($d$ は有界)。調和関数 の定理「弱最大値原理」により $d\le\varepsilon\Phi$ であり、$\varepsilon\to0$ として $d\le0$ を得る。$-d$ にも同じ議論を当てて $d=0$、すなわち $0< \lvert x\rvert< r$ で $w=h$ である。$w(0):=h(0)$ と定めれば、$w$ は $B(0,r)$ で $h$ に等しく調和で、$B(0,\rho)\setminus\{0\}$ ではもとから調和なので、$B(0,\rho)$ 上で調和である。$\square$
これは ABR20 Theorem 2.3(pp. 32–33)と同じ論法である。$\Phi$ が $\{0< \lvert x\rvert< r\}$ で調和であることは 調和関数 の例「基本解の形の関数」による。
$n=2$、$B_0:=B(0,\frac12)$ とし、$x\ne0$ について $L(x):=-\log\lvert x\rvert$($B_0$ の上で $L>\log2>0$)とおく。
$$
u(x):=(x_1^2-x_2^2)\,L(x)^{1/2},\qquad f(x):=\frac{x_1^2-x_2^2}{\lvert x\rvert^2}\Bigl(-\frac{2}{L(x)^{1/2}}-\frac{1}{4L(x)^{3/2}}\Bigr)
$$
とし、$u(0):=0$、$f(0):=0$ と定める。このとき次が成り立つ。
要点:1・2 は極座標での計算である。3 では、解 $v$ があれば $u-v$ が原点を除いた円板で有界な調和関数になり、lem-lp-removable により原点の近くで滑らかに延びるので、$\partial_1^2u=\partial_1^2v+\partial_1^2(u-v)$ が原点の近くで有界になって 2 に反する。
1:$\lvert x_1^2-x_2^2\rvert\le\lvert x\rvert^2$ なので $\lvert u\rvert\le\lvert x\rvert^2L^{1/2}\to0$、$\lvert f\rvert\le2L^{-1/2}+\frac14L^{-3/2}\to0$($x\to0$)であり、$u$ と $f$ は原点でも連続である。極座標 $x=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ では $x_1^2-x_2^2=r^2\cos2\theta$、$L=-\log r$ なので、$u=\varphi(r)\cos2\theta$、$\varphi(r)=r^2g(r)$、$g(r)=(-\log r)^{1/2}$ である。$\Delta=\partial_r^2+\frac1r\partial_r+\frac1{r^2}\partial_\theta^2$ から
$$\Delta u=\Bigl(\varphi''+\frac{\varphi'}r-\frac{4\varphi}{r^2}\Bigr)\cos2\theta=\bigl(5rg'+r^2g''\bigr)\cos2\theta$$
となる($\varphi'=2rg+r^2g'$、$\varphi''=2g+4rg'+r^2g''$ を代入する)。$g'=-\frac1{2r}L^{-1/2}$、$g''=\frac1{2r^2}L^{-1/2}-\frac1{4r^2}L^{-3/2}$ なので、$5rg'+r^2g''=-2L^{-1/2}-\frac14L^{-3/2}$ であり、$\Delta u=f$ を得る。
2:$x_2=0$、$x_1=t>0$ の点では $\lvert x\rvert=x_1$ なので、$u=(x_1^2-x_2^2)g(\lvert x\rvert)$ を $x_1$ で 2 回微分して $x_2=0$ を代入すると $\partial_1^2u=2g+4tg'(t)+t^2g''(t)$ である。上の $g',g''$ を代入すると主張の式になる。
3:そのような $v$ があったとし、$0< \delta'< \delta$ をとる。$w:=u-v$ は $0< \lvert x\rvert< \delta'$ で $C^2$ 級で $\Delta w=f-f=0$ なので調和であり、$\overline B(0,\delta')$ の上で連続な関数 $u-v$ の制限なので有界である。lem-lp-removable により、$w$ は $B(0,\delta')$ 上の調和関数 $\tilde w$ に延び、$\tilde w$ は $C^\infty$ 級である(調和関数 の系「調和関数は無限回微分可能」)。$0< \lvert x\rvert< \delta'$ で $u=v+\tilde w$ なので、$\partial_1^2u=\partial_1^2v+\partial_1^2\tilde w$ は原点の近くで有界である。これは 2 に反する。$\square$
同じ形の関数を使い、一般の $n$ で単位球の Dirichlet 問題 $\Delta u=f$、$u=0$(境界)が $C^2(B)\cap C(\overline B)$ の解をもたない連続な $f$ があることが示されている(DV25 Theorem 4.1.1、p. 505)。上の例では、$\partial_1^2u$ と $\partial_2^2u$ がそれぞれ発散するのに、和をとると発散が打ち消し合って連続な $f$ になる。2 階偏導関数を個別に制御するには、$f$ の連続性よりわずかに強い条件があればよく、たとえば Hölder 連続性で足りる(前の節の DV25 Proposition 4.2.3)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 無限遠で $0$ に近づくこと(thm-lp-uniqueness-rn) | $u=-\Gamma*f+x_1$ | 解の一意性 |
| 次元 $n\ge3$(thm-lp-uniqueness-rn) | $n=2$、$f\ge0$ で $f\ne0$ | 無限遠で $0$ に近づく解の存在(prop-lp-plane により有界な解もない) |
| 領域の有界性(thm-lp-dirichlet の 1) | 上半平面 $\{x_2>0\}$、$u=x_2$ と $u=0$ | 境界値 $0$ の Laplace 方程式の解の一意性 |
| Dirichlet 問題が解けること(thm-lp-dirichlet の 2) | $B(0,1)\setminus\{0\}$、$f=0$、境界値が単位円で $0$・原点で $1$ | 解の存在 |
| 境界条件を値で与えること(Dirichlet 条件) | 単位球の $\Delta u=1$、$\partial_\nu u=0$ | 解の存在(ex-lp-neumann-ball) |
| $f$ の滑らかさ($C^2$ 級を連続に弱める) | ex-lp-continuous-rhs の $f$ | $C^2$ 級の解の存在 |
1 行目:$x_1$ は調和なので $\Delta(-\Gamma*f+x_1)=f$ だが、$x_1$ 方向に非有界である。2 行目:$m=\int f>0$ なので prop-lp-plane の 2 から有界な解はなく、とくに $0$ に近づく解はない。3 行目:上半平面は有界でない開集合で、$x_2$ と $0$ はともに調和で境界 $x_2=0$ で $0$ に等しい。4 行目:$B(0,1)\setminus\{0\}$ は有界だが原点に障壁がなく、この境界値の解がないことは Dirichlet問題 の例「反例:穴のあいた球」で示されている。5 行目は prop-lp-neumann の両立条件 $\int_\Omega 1=V(B)\ne0=\int_{\partial\Omega}0$ が破れる。6 行目:$\Omega=B(0,\frac14)$ とすると、ex-lp-continuous-rhs の $f$ は $\mathbb{R}^2$ 上のコンパクトな台をもつ連続関数の $\Omega$ への制限であり($B(0,\frac13)$ の外で $0$ になるよう連続に切り落とす)、$\Omega$ では Dirichlet 問題が解ける(凸領域)。それでも ex-lp-continuous-rhs の 3 から、どんな境界値に対しても $C^2(\Omega)$ の解はない。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する