単位円周(unit circle)とは、複素平面の原点から距離1にある点の集合である。角による表示、複素数の積による群構造、単位円板の境界とコンパクト性、1の冪根、円周に沿う積分を、円板の内部との違いを明確にしながら説明する。
単位円周(unit circle)とは、複素平面の原点から距離がちょうど $1$ の点の集合である。複素数の絶対値を用いると
$$
S^1=\{z\in\mathbb C\mid |z|=1\}
$$
と書ける。$z=x+iy$ と置けば $|z|^2=x^2+y^2$ なので、これは実平面の方程式 $x^2+y^2=1$ が表す円周と同じ集合である。$S^1$ という記号の上付きの $1$ は、円周が一次元の図形であることを示す。円板全体を意味する記号ではない。
単位円周は、角を複素数へ変える場所であり、複素数の掛け算を回転として見る場所でもある。同時に、開単位円板 $\mathbb D=\{z:|z|<1\}$ の境界であり、複素解析の周回積分に現れる曲線である。これらの役割は同じ集合に由来するが、用いる構造は異なる。角の計算を詳しく扱う三角関数や複素数の掛け算と回転、開いた内部を扱う開円板と区別し、ここでは円周自身の性質に焦点を当てる(How25 §§1.3–1.6, 8.2、DLMF §1.9(i))。
複素平面の単位円周、開単位円板、閉単位円板をそれぞれ
$$
S^1=\{z:|z|=1\},\qquad
\mathbb D=\{z:|z|<1\},\qquad
\overline{\mathbb D}=\{z:|z|\le1\}
$$
とする。したがって $S^1$ は $\overline{\mathbb D}$ には含まれるが、$\mathbb D$ には含まれない。
単位円周上には $1,-1,i,-i$ がある。一方、$0$ は円周の中心で、$\mathbb D$ の点である。$2$ と $2i$ は円周の外側にある。たとえば $(3+4i)/5$ の絶対値は $1$ だから単位円周上にあり、$(3+4i)/6$ の絶対値は $5/6$ だから内側にある。実数軸と円周の共通部分は $\{-1,1\}$、虚数軸との共通部分は $\{-i,i\}$ である。
複素平面を実平面と同一視すれば、$S^1$ の点は $(x,y)$ で $x^2+y^2=1$ を満たすものとなる。この式は円板の方程式 $x^2+y^2\le1$ と不等号の種類が異なる。「単位円」が円周を意味するか閉円板を意味するかは文脈によって揺れるため、境界を扱うときは単位円周、内部も含むときは閉単位円板と呼び分ける。
$z=(1+i)/\sqrt2$ は $|z|=1$ なので $S^1$ に属する。$z=(1+i)/2$ は $|z|=1/\sqrt2<1$ なので $\mathbb D$ に属し、$S^1$ には属さない。$z=1+i$ は $|z|=\sqrt2>1$ なのでどちらにも属さない。この三点は同じ半直線上にあり、円周が内側と外側の境目であることを示す。
原点以外の複素数 $z$ は、半径にあたる $r=|z|>0$ と円周上の点 $u=z/|z|$ を使って $z=ru$ と一意に書ける。この分解は、複素数を「大きさ」と「向き」に分ける。ただし原点では $z/|z|$ は定義されず、向きも一意には決まらない。円周上の点だけを取り出す操作は、原点を除いた平面から $S^1$ への写像 $z\mapsto z/|z|$ である。
中心 $a\in\mathbb C$、半径 $r>0$ の一般の円周は $a+rS^1=\{a+ru:u\in S^1\}$ である。したがって、円周の集合としての形は単位円周を平行移動・拡大縮小して得られる。一方で、複素数の通常の掛け算に関する単位元 $1$ と逆元を持つという後述の性質は、特に原点中心・半径 $1$ という選び方に依存する。単なる図形として合同であることと、同じ演算で閉じていることは別の主張である。
実数 $t$ に対してオイラーの式 $e^{it}=\cos t+i\sin t$ を用いると、$\cos^2t+\sin^2t=1$ より $e^{it}\in S^1$ である。逆に、単位円周上のどの点もある角 $t$ によって表せる。この角は $2\pi$ の整数倍だけ変えても同じ点を表す(How25 §§1.3–1.4、DLMF §1.9(i))。
写像 $E:\mathbb R\to S^1$、$E(t)=e^{it}$ は全射であり、任意の実数 $s,t$ に対して
$$
E(s+t)=E(s)E(t),\qquad
E(s)=E(t)\ \Longleftrightarrow\ s-t\in2\pi\mathbb Z
$$
が成り立つ。とくに $E$ の周期は $2\pi$ であり、$[0,2\pi)$ の各角が円周上の点を一度ずつ表す。
加法と積の式は三角関数の加法定理から従う。任意の $u=x+iy\in S^1$ について $(x,y)$ は単位円周上の点なので、実数 $t$ を選んで $x=\cos t$、$y=\sin t$ とでき、$u=E(t)$ である。これは全射性を示す。
$E(s)=E(t)$ なら加法と積の式から $E(s-t)=1$ である。$\cos(s-t)=1$ かつ $\sin(s-t)=0$ になる実数は $2\pi$ の整数倍に限られる。逆に $s-t=2\pi k$ なら三角関数の周期性から $E(s)=E(t)$ である。したがって $[0,2\pi)$ 内では同じ点を二度表さず、しかも全点を表す。$\square$
角 $0$、$\pi/2$、$\pi$、$3\pi/2$ はそれぞれ $1,i,-1,-i$ に対応する。たとえば $e^{i\pi/3}=1/2+(\sqrt3/2)i$ である。時計回りの角は負に取り、$e^{-it}=\cos t-i\sin t=\overline{e^{it}}$ となる。原点から見た偏角を一つ選ぶと点を表せるが、偏角は実数として一意ではない。したがって $S^1$ 全体で「唯一の連続な偏角」を指定しようとする話と、一点ごとに偏角を選ぶ話は区別する。
円周上の二点 $e^{is},e^{it}$ の複素平面での距離は、角度差だけで定まる。
任意の実数 $s,t$ について
$$
|e^{is}-e^{it}|=2\left|\sin\frac{s-t}{2}\right|.
$$
特に、角度差が $2\pi$ の整数倍でない限り弦の長さは正であり、その最大値は $2$ である。
$|e^{is}|=|e^{it}|=1$ と $e^{-it}=\overline{e^{it}}$ を用いて
$$
|e^{is}-e^{it}|^2
=(e^{is}-e^{it})(e^{-is}-e^{-it})
=2-e^{i(s-t)}-e^{-i(s-t)}
=2-2\cos(s-t)
=4\sin^2\frac{s-t}{2}.
$$
両辺の非負の平方根を取れば式が得られる。右辺は高々 $2$ であり、反対側の点、たとえば $1$ と $-1$ で $2$ に達する。$\square$
弧を反時計回りにたどる長さと、両端を結ぶ弦の長さも違う。$0\le t\le\pi$ で $1$ から $e^{it}$ までの短い弧の長さは $t$ だが、弦の長さは $2\sin(t/2)$ である。$t=\pi$ のとき半円周の長さは $\pi$、直径の長さは $2$ になる。「円周上の距離」が平面から受け継いだ距離なのか、円周に沿った最短弧の長さなのかを明示しなければならない。
$S^1$ の二点を複素数として掛けると、絶対値の積が $1$ なのでまた $S^1$ に戻る。このことは「円周を回転させる」操作を、円周上の点の掛け算として表せることを意味する。$e^{is}e^{it}=e^{i(s+t)}$ で、角を足す操作が点の積に対応する。
$S^1$ は複素数の掛け算で可換群になる。単位元は $1$、$u\in S^1$ の逆元は $\overline u$ である。複素平面から受け継ぐ位相では積と逆元は連続であり、$S^1$ は位相群でもある。角の加法を $2\pi\mathbb Z$ の差まで同一視した群 $\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ と、掛け算による $S^1$ は同型である。
$u,v\in S^1$ なら $|uv|=|u||v|=1$ なので $uv\in S^1$ である。$|1|=1$ であり、$u\overline u=|u|^2=1$ だから $\overline u$ が逆元である。結合律と交換律は複素数の掛け算から受け継ぐ。積は複素数の連続写像であり、逆元 $u\mapsto\overline u$ も実座標で $(x,y)\mapsto(x,-y)$ だから連続である。
前節の写像 $E$ は加法を積へ移す全射準同型で、同じ像を持つ角はちょうど $2\pi\mathbb Z$ だけ異なる。そこで $[t]\mapsto e^{it}$ は $\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ から $S^1$ への一対一・上への群準同型となる。$\square$
この群を円周群とも呼び、文献では $\mathbb T$ と書くこともある。ただし $\mathbb T$ を円周以外のトーラスに使う文脈もあるため、定義を添えるのが安全である。$\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ という書き方は、実数の角を $2\pi$ 回転ごとに同一視することを正確に示す。$\mathbb R/\mathbb Z$ と書く流儀では角を一周を単位とする実数で測り、$[x]\mapsto e^{2\pi ix}$ が対応する。
円周上の点 $u$ を掛ける写像 $R_u(z)=uz$ は円周をそれ自身へ写し、複素平面全体では原点を中心とする回転である。$|uz-uw|=|u||z-w|=|z-w|$ だから距離を保ち、逆写像は $R_{\overline u}$ である。これに対し、複素共役 $z\mapsto\overline z$ は円周をそれ自身へ写すが、実平面では実軸に関する鏡映であり、回転とは異なる。
「単位複素数を掛ける」と「円周上の二点を足す」も異なる。たとえば $1+i$ は $|1+i|=\sqrt2$ なので $S^1$ にない。したがって $S^1$ は加法の群ではない。また一般の円周 $a+rS^1$ も、複素数の掛け算で閉じるとは限らない。積の群構造を論じるときの基準は、原点中心で半径 $1$ の $S^1$ である。
正の整数 $n$ に対する方程式 $z^n=1$ の解は、全て $S^1$ にある。実際、$|z|^n=1$ から $|z|=1$ が従う。角表示を用いると、その全体を余すところなく列挙できる。
$n\ge1$ とし、$\zeta_n=e^{2\pi i/n}$ と置く。方程式 $z^n=1$ の複素数解は
$$
\mu_n=\{\zeta_n^k\mid k=0,1,\ldots,n-1\}
$$
であり、互いに異なる $n$ 点からなる。$\mu_n$ は $S^1$ の有限部分群で、$\zeta_n$ が生成する。
$z^n=1$ なら $|z|=1$ なので $z=e^{it}$ と書ける。$z^n=1$ は $e^{int}=1$ と同値で、角表示の命題より $nt\in2\pi\mathbb Z$、つまり $t=2\pi k/n$ である。$k$ を $n$ で割った余りに置き換えれば表示の $n$ 点が得られる。$0\le k,\ell< n$ で $\zeta_n^k=\zeta_n^\ell$ なら $2\pi(k-\ell)/n\in2\pi\mathbb Z$ だから $k=\ell$ であり、点は互いに異なる。指数の加法は積に対応するため、これらは部分群をなし、$\zeta_n$ の冪が全てを与える。$\square$
たとえば $\mu_2=\{1,-1\}$、$\mu_4=\{1,i,-1,-i\}$ である。$n=3$ の場合、$1$ のほかに $-1/2\pm(\sqrt3/2)i$ がある。これらを複素平面に描くと、円周を等しい角度 $2\pi/n$ で分けた正 $n$ 角形の頂点になる。「方程式の解が $n$ 個」という代数的事実と、「等間隔の円周上の点」という幾何的事実が、角表示で結び付く。
円周上の点が全て何らかの $1$ の冪根であるわけではない。$u=e^{2\pi i\alpha}$ が有限位数になるのは、$\alpha$ が有理数のときに限る。実際、$u^n=1$ となる $n\ge1$ があれば $n\alpha\in\mathbb Z$ で $\alpha$ は有理数であり、逆に $\alpha=p/q$ なら $u^q=1$ である。無理数の角は円周上にありながら、どの有限部分群 $\mu_n$ にも入らない。
$S^1$ は複素平面内で閉かつ有界なのでコンパクトである。閉であることは連続関数 $z\mapsto|z|$ による閉集合 $\{1\}$ の逆像であることから分かる。実平面の有界閉集合がコンパクトであるという性質を用いると、円周を無限に延びない閉じた曲線として扱える。このコンパクト性は、円周上の連続関数が最大値・最小値を取る理由にもなる。
複素平面の通常の位相で
$$
\partial\mathbb D=S^1,\qquad
\overline{\mathbb D}=\mathbb D\cup S^1.
$$
また $S^1$ の内部は空であり、円周自身は開集合ではない。
$|u|=1$ なら $(1-1/n)u$ は $n\ge2$ で $\mathbb D$ に属し、$u$ に収束する。従って $u$ は $\mathbb D$ の閉包に入る。逆に $|z|>1$ なら $\varepsilon=(|z|-1)/2>0$ を取り、$|w-z|<\varepsilon$ なら $|w|\ge|z|-|w-z|>1$ なので、その近傍は $\mathbb D$ と交わらない。よって閉包は $|z|\le1$ の点全体である。$\mathbb D$ は開集合だから、その境界は閉包から内部 $\mathbb D$ を除いた $|z|=1$ の点全体、すなわち $S^1$ である。
さらに $u\in S^1$ のどの近傍にも、$(1-\delta)u$ のような内側の点と $(1+\delta)u$ のような外側の点がある。したがって円周のどの点にも、円周に含まれる小さな平面の開円板はなく、$S^1$ の複素平面内での内部は空である。$\square$
円周は複素平面では内部を持たないが、円周自身を一つの空間と見たときは、短い弧がその開集合となる。これが部分空間位相である。「円周は閉集合」と「円周の中に開いた弧がある」は矛盾しない。前者は周囲の平面に対して、後者は円周を周囲とする相対的な開集合について述べている。
$S^1$ は連結であり、さらに任意の二点を円周上の弧で結べる。$u=e^{is}$ と $v=e^{it}$ に対して $\gamma(q)=e^{i((1-q)s+qt)}$、$0\le q\le1$ は $u$ から $v$ への連続な道である。ただし、二点を結ぶ平面内の直線分が円周に含まれるとは限らない。$1$ と $-1$ の中点 $0$ が $S^1$ にないので、円周は凸集合ではない。道で結べることと凸であることは異なる。
原点を除いた平面から円周への正規化 $r(z)=z/|z|$ は連続で、円周上では恒等写像である。$H(z,q)=((1-q)+q/|z|)z$ と置けば、$z\ne0$ に対して係数は正で、変形の途中で原点を通らない。$q=0$ では元の点、$q=1$ では円周上の点となり、円周上の点は動かない。よって円周は穴あき平面の変形レトラクトである。これは円周が単なる円板の境界以上の、穴あき平面の位相を表す対象であることを示す(ホモトピー同値)。
円周は積分路として自然である。$t$ を $0$ から $2\pi$ まで増やす $\gamma(t)=e^{it}$ は、始点と終点がともに $1$ で、円周を反時計回りに一周する。導関数は $\gamma'(t)=ie^{it}$ である。中心 $a$、半径 $r$ の円周なら $\gamma(t)=a+re^{it}$ とすればよい(How25 §§1.6, 8.2)。
$f$ が単位円周上で連続なら、正の向きに一周する円周積分は
$$
\int_{S^1}^{+} f(z)\,dz
=\int_0^{2\pi}f(e^{it})\,ie^{it}\,dt
$$
である。特に
$$
\int_{S^1}^{+}z^m\,dz=
\begin{cases}
2\pi i,&m=-1,\\
0,&m\in\mathbb Z,\ m\ne-1
\end{cases}
$$
が成り立つ。
曲線積分の媒介変数表示の定義に $\gamma(t)=e^{it}$ と $\gamma'(t)=ie^{it}$ を代入すれば最初の式を得る。$f(z)=z^m$ とすると積分は $i\int_0^{2\pi}e^{i(m+1)t}\,dt$ になる。$m=-1$ なら被積分関数は常に $i$ で、値は $2\pi i$ である。$m+1$ が零でない整数なら、原始関数 $e^{i(m+1)t}/(m+1)$ の両端の値が等しく、差は $0$ である。$z^m$ は負の $m$ に対しても円周上では定義される。$\square$
この積分で $m=-1$ が例外となるのは、$1/z$ の特異点 $0$ が円周の内側にあるためである。円周自体では $z\ne0$ であり、被積分関数は連続である。「経路上で定義されること」と「囲まれた円板の全体で正則であること」は別の条件である。円周を時計回りにたどれば積分は符号が逆になる。向きの記載を省くと、同じ円周でも異なる値を与えてしまう。
円周上の連続関数を $e^{it}$ で引き戻すと、実数上の $2\pi$ 周期関数になる。逆に $2\pi$ 周期の連続関数 $g(t)$ は、$g(t)=g(t+2\pi)$ により、$g(t)=f(e^{it})$ を満たす円周上の連続関数を定める。これはフーリエ級数の $e^{int}$ を円周上の関数 $z^n$ と見る入口である。一方、円板内部で正則な関数と円周上で連続な関数は同じクラスではない。円周上で値が定まるだけでは、内部への正則な延長は保証されない。
円周と閉円板を混同すると、コンパクト性だけを見て「円周が内部を持つ」と誤解する。どちらもコンパクトだが、閉円板には $|z|<1$ という内部があり、円周には平面内での内部がない。開円板も、円周にどれほど近い点でも含むが、境界上の点は一つも含まない。数式では $|z|=1$、$|z|\le1$、$|z|<1$ を区別する。
角 $t$ を円周の点と同一視するときも注意がいる。$t$ と $t+2\pi$ は実数としては異なるが、同じ点を表す。反対に、$t$ と $-t$ は通常は異なる点であり、実軸対称の位置にある。$e^{it}=\overline{e^{it}}$ となるのは $\sin t=0$、すなわち点が $1$ または $-1$ の場合だけである。
群の観点では、円周の点の積は閉じるが和は閉じない。位相の観点では、円周に沿う弧は円周内の道だが、平面内の直線分は一般には円周から出る。解析の観点では、円周上で連続という条件と、円板内で正則という条件が違う。この三つの区別を明確にすると、単位円周が複素数・幾何・解析を結ぶ役割を混ぜずに理解できる。
本文の命題の仮定を外した例と、取り違えやすい含意の反例をまとめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 半径が $1$(prop-unit-circle-group) | 半径 $2$ の円周 $2S^1$ | 掛け算で閉じる |
| 演算が掛け算 | $1,i\in S^1$ の和 $1+i$ | 演算で閉じる |
| 角 $\alpha$ が有理数(一周を単位として) | $e^{2\pi i\sqrt2}$ | 有限位数(ある $\mu_n$ に属する) |
| 凸集合であること(道で結べるだけにする) | $1$ と $-1$ を結ぶ線分 | 二点を結ぶ線分が円周に含まれる |
| 内部で正則な関数の境界値であること | $S^1$ 上の $f(z)=\overline z$ | 円周上の連続関数は閉円板上の正則関数に延長できる |
$2S^1=\{z:\lvert z\rvert=2\}$ は $S^1$ と合同な円周だが、$2\in2S^1$ について $2\cdot2=4$ は $\lvert4\rvert=4\ne2$ なので $2S^1$ に属さない。単位元の候補 $1$ も $2S^1$ にない。prop-unit-circle-group の証明の「$\lvert uv\rvert=\lvert u\rvert\lvert v\rvert=1$」は半径が $1$ であることを使っている。
$f(z)=\overline z$ は $S^1$ 上で連続である($S^1$ 上では $\overline z=1/z$)。prop-unit-circle-integral により
$$
\int_{S^1}^{+}\overline z\,dz=\int_{S^1}^{+}z^{-1}\,dz=2\pi i
$$
である。もし閉円板 $\overline{\mathbb D}$ 上で連続かつ $\mathbb D$ で正則な $F$ が $S^1$ 上で $F=f$ を満たすとすると、$0<\rho<1$ の円周では Cauchy の積分定理から $\int_0^{2\pi}F(\rho e^{it})\,i\rho e^{it}\,dt=0$ である。$F$ は $\overline{\mathbb D}$ で一様連続なので $\rho\to1$ で被積分関数は一様に $f(e^{it})ie^{it}$ に近づき、極限を取ると $\int_{S^1}^{+}f\,dz=0$ となって矛盾する。破るのは「内部で正則な関数の境界値」という条件であり、円周上の連続性だけでは足りないことを示す。
残りの行は本文で確かめた。$1+i$ は $\lvert1+i\rvert=\sqrt2$、$e^{2\pi i\alpha}$ が有限位数であることと $\alpha\in\mathbb Q$ が同値であることは「円周の上の冪根」の節、$1$ と $-1$ の中点 $0$ が $S^1$ にないことは「位相と円板の境界」の節で示した。
角表示、オイラーの式、複素数の積による回転、円の媒介変数表示にはHow25 §§1.3–1.6 とDLMF §1.9(i) を参照した。円周上の積分路と $dz=ie^{it}dt$ の表示にはHow25 §8.2 を参照した。群構造、冪根、弦長、境界、積分の各証明は、そこで扱う基本式を本記事の記号で展開して示した。
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