平行四辺形の条件

同義語:平行四辺形になるための条件平行四辺形の性質parallelogram criteria

概要

平行四辺形の条件(parallelogram criteria)とは、四角形(辺どうしが交わらないもの)が平行四辺形、つまり 2 組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形であるための条件である。平行四辺形では 2 組の向かい合う辺・向かい合う角がそれぞれ等しく、2 本の対角線は互いの中点で交わる。逆に、四角形が「2 組の向かい合う辺がそれぞれ等しい」「2 組の向かい合う角がそれぞれ等しい」「対角線が互いの中点で交わる」「1 組の向かい合う辺が平行で長さが等しい」のどれか 1 つを満たせば平行四辺形である。証明は三角形の合同条件と平行線の錯角による。ベクトルでは $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ と書ける。平行四辺形のうち、対角線の長さが等しいものは長方形、対角線が直交するものはひし形である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の合同条件, 三角形の内角の和, 位置ベクトルと内分点, ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:平行四辺形を座標で調べる

平行四辺形は「2 組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形」である。教科書では、平行四辺形の辺・角・対角線について成り立つ性質と、ある四角形が平行四辺形であると言うための条件を習う。まず座標で、平行四辺形とそうでない四角形を比べてみる。

平行四辺形の辺・角・対角線

$A(0,0)$、$B(5,1)$、$C(7,4)$、$D(2,3)$ とする。辺のベクトルは
$$ \overrightarrow{AB}=(5,1),\qquad \overrightarrow{DC}=(7-2,\,4-3)=(5,1),\qquad \overrightarrow{AD}=(2,3),\qquad \overrightarrow{BC}=(7-5,\,4-1)=(2,3) $$
で、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$、$\overrightarrow{AD}=\overrightarrow{BC}$ である。特に $AB\parallel DC$、$AD\parallel BC$ で、四角形 $ABCD$ は平行四辺形である。
(1) 辺の長さ。$AB=CD=\sqrt{5^2+1^2}=\sqrt{26}$、$AD=BC=\sqrt{2^2+3^2}=\sqrt{13}$ で、向かい合う辺の長さは等しい。
(2) 角。内積で余弦を求める(ベクトルの内積(高校数学))。$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AD}=10+3=13$ から
$$ \cos A=\frac{13}{\sqrt{26}\,\sqrt{13}}=\frac{13}{13\sqrt2}=\frac1{\sqrt2},\qquad A=45^\circ $$
である。$\overrightarrow{BA}=(-5,-1)$、$\overrightarrow{BC}=(2,3)$ の内積は $-13$ なので $\cos B=-\dfrac1{\sqrt2}$、$B=135^\circ$ である。同じ計算で $C=45^\circ$、$D=135^\circ$ となり、向かい合う角は等しい。
(3) 対角線の中点。$AC$ の中点は $\left(\dfrac72,2\right)$、$BD$ の中点は $\left(\dfrac{5+2}2,\dfrac{1+3}2\right)=\left(\dfrac72,2\right)$ で、一致する。2 本の対角線は互いの中点で交わる。

平行四辺形でない四角形

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(5,3)$、$D(1,4)$ とする。$\overrightarrow{AB}=(6,0)$、$\overrightarrow{DC}=(4,-1)$ は平行でなく、$\overrightarrow{AD}=(1,4)$、$\overrightarrow{BC}=(-1,3)$ も平行でない。
(1) 辺の長さは $AB=6$、$BC=\sqrt{10}$、$CD=\sqrt{17}$、$DA=\sqrt{17}$ で、向かい合う辺 $AB$ と $CD$、$BC$ と $DA$ はどちらも等しくない。
(2) 角は、(1) と同じ内積の計算で $A\approx76.0^\circ$、$B\approx71.6^\circ$、$C\approx122.5^\circ$、$D=90^\circ$($\overrightarrow{DC}\cdot\overrightarrow{DA}=(4)(-1)+(-1)(-4)=0$)で、向かい合う角も等しくない。4 つの和は $360^\circ$ である。
(3) $AC$ の中点は $\left(\dfrac52,\dfrac32\right)$、$BD$ の中点は $\left(\dfrac72,2\right)$ で、一致しない。

平行四辺形 ABCD では、2 本の対角線の中点が同じ点 M(3.5, 2) になる 平行四辺形 ABCD では、2 本の対角線の中点が同じ点 M(3.5, 2) になる
平行四辺形でない四角形では、2 本の対角線の中点が別々の点になる 平行四辺形でない四角形では、2 本の対角線の中点が別々の点になる

ex-pgc-start の平行四辺形では、向かい合う辺・向かい合う角が等しく、対角線は互いの中点で交わった。ex-pgc-start-non の四角形では、そのどれも成り立たなかった。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 平行四辺形では、いつも向かい合う辺・角が等しく、対角線は互いの中点で交わるか。→ thm-pgc-property
  2. 逆に、向かい合う辺が等しい四角形などは、いつも平行四辺形か。どの条件なら平行四辺形と言えるか。→ thm-pgc-criteria、ex-pgc-cx-ssa
  3. ベクトルで言いかえると、どうなるか。→ prop-pgc-vector
    高校の言葉この記事の言葉大学の言葉
    平行四辺形の性質thm-pgc-property平行移動で辺が重なる
    平行四辺形になるための条件thm-pgc-criteria性質の逆(判定条件)
    $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$prop-pgc-vectorベクトルの和の平行四辺形則
    対角線が互いの中点で交わる中点の一致 $\dfrac{\vec a+\vec c}2=\dfrac{\vec b+\vec d}2$中点に関する点対称

言葉の準備

四角形と平行四辺形

平面の 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で、どの 3 点も一直線上にないものをとる。4 本の線分 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ が、隣り合うもの同士の端点以外で交わらないとき、この 4 本でできる図形を 四角形 $ABCD$ という。4 本の線分を 辺、4 点を 頂点 という。

  • 辺 $AB$ と $CD$、辺 $BC$ と $DA$ を、それぞれ 向かい合う辺(対辺)という。
  • 角 $A$ と $C$、角 $B$ と $D$ を、それぞれ 向かい合う角(対角)という。ここで角 $A$ は四角形の内側の角 $\angle DAB$ である。
  • 線分 $AC$、$BD$ を 対角線 という。
    2 組の向かい合う辺がそれぞれ平行な四角形、つまり $AB\parallel DC$ かつ $AD\parallel BC$ である四角形を 平行四辺形 という。

辺どうしが交わる図形(ex-pgc-cx-crossed の図 8 のようなもの)は、この記事では四角形と呼ばない。そのような図形を区別するときは 自己交差する四角形 と呼ぶ。内側の角がすべて $180^\circ$ より小さい四角形を 凸四角形 という。
証明には、次の結果と事実を使う。

この記事で使う結果と事実

結果(証明は前提の記事にある):

  • 三角形の合同条件:2 辺とその間の角、1 辺とその両端の角、3 辺のどれかが等しい 2 つの三角形は合同である(三角形の合同条件)。
  • 平行線の錯角:2 直線と横断線について、錯角が等しければ 2 直線は平行であり、逆に 2 直線が平行なら錯角は等しい(三角形の内角の和)。三角形の内角の和は $180^\circ$ である(同)。
    図の位置関係についての事実(この記事では証明しない):
  1. 四角形 $ABCD$ では、2 本の対角線の少なくとも一方、たとえば $AC$ について、残りの 2 頂点 $B$、$D$ は直線 $AC$ の反対側にある。このとき四角形は対角線 $AC$ で三角形 $ABC$ と $CDA$ に分かれ、角 $A$ は $\angle BAC+\angle CAD$、角 $C$ は $\angle BCA+\angle ACD$ に分かれる。
  2. 凸四角形では、どの辺についても、残りの 2 頂点はその辺を含む直線の同じ側にある。また、2 本の対角線は、両方の線分の端点でない点で交わる。

事実 (i) から、四角形の内角の和は、2 つの三角形の内角の和を合わせて $180^\circ+180^\circ=360^\circ$ である。ex-pgc-start-non の (2) でも、4 つの角の和は $360^\circ$ だった。
錯角を使うときは、2 点が横断線の反対側にあることを確かめる必要がある。以下の証明では、その確認に事実 (i)(ii) を使う。

主定理 1:平行四辺形の性質

平行四辺形の性質

平行四辺形 $ABCD$ について、次が成り立つ。

  1. 2 組の向かい合う辺の長さは、それぞれ等しい:$AB=CD$、$BC=DA$。
  2. 2 組の向かい合う角は、それぞれ等しい:$\angle A=\angle C$、$\angle B=\angle D$。
  3. 2 本の対角線は、互いの中点で交わる。

対角線 AC で平行四辺形を 2 つの三角形に分けると、同じ印の角が錯角として等しくなる 対角線 AC で平行四辺形を 2 つの三角形に分けると、同じ印の角が錯角として等しくなる

方針:対角線 $AC$ で 2 つの三角形 $ABC$、$CDA$ に分け、平行線の錯角から 2 つの三角形が合同であることを示す(図 3)。これで 1 と 2 が出る。3 は、1 と 2 から平行四辺形が凸四角形であることを確かめ、対角線の交点のまわりの 2 つの三角形の合同から示す。
段 1(どちらの対角線を使うか)。rem-pgc-facts の事実 (i) により、2 本の対角線の少なくとも一方について、残りの 2 頂点はその対角線の反対側にある。平行四辺形の定義は、頂点の名前を 1 つずつずらして $B$、$C$、$D$、$A$ と呼び直しても変わらず、定理の主張 1〜3 も変わらない。そこで、必要なら名前を付け替えて、$B$ と $D$ が直線 $AC$ の反対側にあるとしてよい。
段 2(錯角)。$AB\parallel DC$ で、横断線 $AC$ について $B$ と $D$ は反対側にあるので、$\angle BAC$ と $\angle DCA$ は錯角で、平行線の錯角は等しいから
$$ \angle BAC=\angle DCA $$
である。同じく $AD\parallel BC$ で、$D$ と $B$ は $AC$ の反対側にあるので、$\angle DAC$ と $\angle BCA$ は錯角で
$$ \angle DAC=\angle BCA $$
である。
段 3(合同)。三角形 $ABC$ と三角形 $CDA$ で、辺 $AC$ と辺 $CA$ は共通、その両端の角は段 2 により $\angle BAC=\angle DCA$、$\angle BCA=\angle DAC$ である。1 辺とその両端の角が等しいので、$\triangle ABC\equiv\triangle CDA$(頂点は $A\leftrightarrow C$、$B\leftrightarrow D$、$C\leftrightarrow A$ と対応)である。対応する辺と角を読むと
$$ AB=CD,\qquad BC=DA,\qquad \angle ABC=\angle CDA $$
である。これで 1 と、2 のうち $\angle B=\angle D$ が示された。
段 4(残りの角)。事実 (i) により、角 $A$ は $\angle BAC+\angle CAD$、角 $C$ は $\angle BCA+\angle ACD$ に分かれる。段 2 の 2 つの等式を足すと
$$ \angle A=\angle BAC+\angle CAD=\angle DCA+\angle BCA=\angle C $$
である。これで 2 が示された。
段 5(凸であること)。内角の和は $360^\circ$ なので、2 から $2\angle A+2\angle B=360^\circ$、つまり $\angle A+\angle B=180^\circ$ である。$\angle A$、$\angle B$ はどちらも正なので、どちらも $180^\circ$ より小さい。$\angle C=\angle A$、$\angle D=\angle B$ なので、4 つの角はすべて $180^\circ$ より小さく、平行四辺形は凸四角形である。
段 6(対角線の中点)。事実 (ii) により、2 本の対角線は、$A$ と $C$ の間にあり、$B$ と $D$ の間にもある点 $O$ で交わる。$O$ は線分 $BD$ の上で $B$ と $D$ の間にあるので、$A$ と $C$ は直線 $BD$ の反対側にあり、$AB\parallel DC$ の錯角から $\angle ABD=\angle CDB$ である。三角形 $OAB$ と三角形 $OCD$ で

  • $AB=CD$(段 3)、
  • $\angle OAB=\angle BAC=\angle DCA=\angle OCD$($O$ は線分 $AC$ の上にあるので半直線 $AO$ は半直線 $AC$ と同じ。段 2)、
  • $\angle OBA=\angle DBA=\angle BDC=\angle ODC$(上の錯角)
    なので、1 辺とその両端の角が等しく、$\triangle OAB\equiv\triangle OCD$ である。よって $OA=OC$、$OB=OD$ で、$O$ は 2 本の対角線の両方の中点である。これで 3 が示された。
性質を使って長さと角を求める
  1. 平行四辺形 $ABCD$ で $AB=7$、$BC=4$、$\angle A=60^\circ$ とする。thm-pgc-property の 1 から $CD=7$、$DA=4$ で、周の長さは $2(7+4)=22$ である。2 と段 5 の $\angle A+\angle B=180^\circ$ から $\angle B=120^\circ$、$\angle C=60^\circ$、$\angle D=120^\circ$ である。
    対角線の長さを確かめる例を開く

    (2) ex-pgc-start の平行四辺形で、対角線の交点を $O$ とすると $O\left(\dfrac72,2\right)$ で、$OA=\sqrt{\left(\dfrac72\right)^2+2^2}=\dfrac{\sqrt{65}}2$、$OC=\sqrt{\left(7-\dfrac72\right)^2+(4-2)^2}=\dfrac{\sqrt{65}}2$ である。対角線 $AC$ の長さは $\sqrt{65}$、$BD$ の長さは $\sqrt{3^2+2^2}=\sqrt{13}$ で、2 本の対角線の長さは等しくない。3 は「長さが等しい」とは言っていない。

主定理 2:平行四辺形になるための条件

thm-pgc-property の 1〜3 の逆は成り立つか。答えは「どれも成り立つ」で、さらに「1 組の向かい合う辺が平行で長さが等しい」という条件でも平行四辺形になる。

平行四辺形になるための条件

四角形 $ABCD$ が次のどれか 1 つを満たせば、$ABCD$ は平行四辺形である。
(R1) 2 組の向かい合う辺の長さが、それぞれ等しい:$AB=CD$ かつ $BC=DA$。
(R2) 2 組の向かい合う角が、それぞれ等しい:$\angle A=\angle C$ かつ $\angle B=\angle D$。
(R3) 2 本の対角線が、互いの中点で交わる。
(R4) 1 組の向かい合う辺が、平行で長さが等しい:$AB\parallel DC$ かつ $AB=DC$。

以下、条件 (i)〜(iv) を 1 つずつ証明する。どの証明も「合同 → 錯角が等しい → 平行」の順に進み、thm-pgc-property の証明の逆向きになっている。

条件 (i) の証明。rem-pgc-facts の事実 (i) により、名前を 1 つずつずらして付け替えれば、$B$ と $D$ が直線 $AC$ の反対側にあるとしてよい(条件 (i) は付け替えても変わらない)。三角形 $ABC$ と三角形 $CDA$ で、$AB=CD$、$BC=DA$、$CA=AC$ なので、3 辺が等しく $\triangle ABC\equiv\triangle CDA$ である。よって $\angle BAC=\angle DCA$、$\angle BCA=\angle DAC$ である。$\angle BAC$ と $\angle DCA$ は横断線 $AC$ についての錯角($B$、$D$ は反対側)で、等しいので $AB\parallel DC$ である。同じく $\angle DAC=\angle BCA$ から $AD\parallel BC$ である。
条件 (ii) の証明。内角の和は $360^\circ$ なので、$2\angle A+2\angle B=360^\circ$、つまり $\angle A+\angle B=180^\circ$ で、同じく $\angle A+\angle D=180^\circ$ である。thm-pgc-property の段 5 と同じ理由で、4 つの角はすべて $180^\circ$ より小さく、$ABCD$ は凸四角形である。辺 $AD$ を $A$ の先へ延ばした半直線の上に点 $D'$ をとると、$\angle D'AB=180^\circ-\angle DAB=180^\circ-\angle A=\angle B=\angle ABC$ である。事実 (ii) により $C$ と $D$ は直線 $AB$ の同じ側にあり、$D'$ は $D$ と反対側にあるので、$D'$ と $C$ は直線 $AB$ の反対側にある。したがって $\angle D'AB$ と $\angle ABC$ は横断線 $AB$ についての錯角で、等しいから $AD\parallel BC$ である。$\angle A+\angle D=180^\circ$ から、同じ議論(横断線 $AD$)で $AB\parallel DC$ である。
条件 (iii) の証明。2 本の対角線の交点 $O$ が、$AC$ の中点であり $BD$ の中点でもあるとする。三角形 $OAB$ と三角形 $OCD$ で、$OA=OC$、$OB=OD$、$\angle AOB=\angle COD$(対頂角)なので、2 辺とその間の角が等しく $\triangle OAB\equiv\triangle OCD$ である(図 4)。よって $\angle OAB=\angle OCD$、つまり $\angle CAB=\angle ACD$ である($O$ は $A$ と $C$ の間にある)。$O$ は直線 $AC$ の上にあって $B$ と $D$ の間にあり、$B$ は直線 $AC$ の上にないので、$B$ と $D$ は直線 $AC$ の反対側にある。したがって 2 つの角は錯角で、$AB\parallel DC$ である。三角形 $OAD$ と $OCB$ で同じことをすると $AD\parallel BC$ である。
条件 (iv) の証明。名前を $B$、$A$、$D$、$C$ と付け替えると、条件 (iv) は変わらず、対角線 $AC$ と $BD$ が入れかわる。そこで事実 (i) により、$B$ と $D$ が直線 $AC$ の反対側にあるとしてよい。$AB\parallel DC$ で、横断線 $AC$ についての錯角は等しいので $\angle BAC=\angle DCA$ である。三角形 $ABC$ と三角形 $CDA$ で、$AB=CD$、$AC=CA$、間の角 $\angle BAC=\angle DCA$ なので、$\triangle ABC\equiv\triangle CDA$ である。よって $\angle BCA=\angle DAC$ で、これは横断線 $AC$ についての錯角なので $AD\parallel BC$ である。

対角線が互いの中点 O で交わると、対頂角をはさむ三角形 OAB と OCD が合同になる 対角線が互いの中点 O で交わると、対頂角をはさむ三角形 OAB と OCD が合同になる
条件 (iv) は、中点連結定理 の合同による証明の中でも、その場の図形について示されて使われている。この記事の (iv) は、それをどの四角形にも使える形で述べたものである。

条件を使って平行四辺形と判定する
  1. 条件 (i)。$A(0,0)$、$B(4,1)$、$C(6,5)$、$D(2,4)$ で、$AB=\sqrt{17}$、$CD=\sqrt{4^2+1^2}=\sqrt{17}$、$BC=\sqrt{2^2+4^2}=\sqrt{20}$、$DA=\sqrt{2^2+4^2}=\sqrt{20}$ である。2 組の向かい合う辺が等しいので、平行四辺形である。実際 $\overrightarrow{AB}=(4,1)=\overrightarrow{DC}$ である。
    条件 (iii)・(iv) を使う例を開く

    (2) 条件 (iii)。平行四辺形 $ABCD$ の対角線の交点を $O$ とし、対角線 $AC$ 上に $OP=OQ>0$ となる点 $P$、$Q$ を $O$ の両側にとる。$O$ は $PQ$ の中点で、thm-pgc-property の 3 により $BD$ の中点でもある。よって四角形 $PBQD$ は、対角線 $PQ$、$BD$ が互いの中点で交わるので平行四辺形である。

    (3) 条件 (iv)。平行四辺形 $ABCD$ の辺 $AB$、$DC$ の中点を $M$、$N$ とする。$AM=\dfrac12AB=\dfrac12DC=DN$ で、$AM\parallel DN$($AB\parallel DC$ の一部)なので、四角形 $AMND$ は 1 組の向かい合う辺が平行で等しく、平行四辺形である。

ベクトルで見ると 1 行になる

位置ベクトルを使うと、平行四辺形であることは 1 本の等式で書ける(位置ベクトルと内分点)。以下、点 $A$、$B$、$C$、$D$ の位置ベクトルを $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$、$\vec d$ とする。

平行四辺形のベクトルによる言いかえ

平面の 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で、どの 3 点も一直線上にないものについて、次の 3 つは同値である。

  1. $AB\parallel DC$ かつ $AD\parallel BC$。
  2. $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$。
  3. $\dfrac{\vec a+\vec c}2=\dfrac{\vec b+\vec d}2$(線分 $AC$ の中点と線分 $BD$ の中点が一致する)。

2 と 3 が同値であること。$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ は $\vec b-\vec a=\vec c-\vec d$ であり、移項すると $\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$、両辺を $2$ で割ると 3 になる。どの変形も逆にたどれる。
2 から 1。$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ なので $AB\parallel DC$ である。また $\overrightarrow{AD}=\vec d-\vec a$ と $\overrightarrow{BC}=\vec c-\vec b$ は、$\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$ から $\vec d-\vec a=\vec c-\vec b$ で等しく、$AD\parallel BC$ である。
1 から 2。$\overrightarrow{DC}=t\,\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{BC}=s\,\overrightarrow{AD}$ と書き、$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AD}$ が平行でないことから $t=s=1$ を出す。

詳細

$AB\parallel DC$ なので、実数 $t$ を使って $\vec c-\vec d=t(\vec b-\vec a)$ と書ける。$AD\parallel BC$ なので、実数 $s$ を使って $\vec c-\vec b=s(\vec d-\vec a)$ と書ける。2 式を引くと $\vec b-\vec d=t(\vec b-\vec a)-s(\vec d-\vec a)$ である。左辺は $(\vec b-\vec a)-(\vec d-\vec a)$ と書けるので、移項して

$$(1-t)(\vec b-\vec a)=(1-s)(\vec d-\vec a)$$

を得る。$A$、$B$、$D$ は一直線上にないので、$\vec b-\vec a$ と $\vec d-\vec a$ は平行でなく、どちらも $\vec 0$ でない。平行でない 2 つのベクトルの実数倍が等しいのは、両方の係数が $0$ のときだけなので、$t=1$、$s=1$ である。よって $\overrightarrow{DC}=\overrightarrow{AB}$ である。

prop-pgc-vector から、平行四辺形の性質のいくつかは計算だけで出る。2 から $AB=DC$、$\overrightarrow{AD}=\overrightarrow{BC}$ から $AD=BC$(thm-pgc-property の 1)、3 から対角線の中点の一致(同じく 3)である。さらに、対角線の中点 $M$ は線分 $BD$ の上にあって $B$ と $D$ の間にあるので、$B$ と $D$ は直線 $AC$ の反対側にある。rem-pgc-facts の事実 (i) の、平行四辺形の場合はこうして確かめられる。

4 つ目の頂点を求める
  1. $A(1,1)$、$B(5,2)$、$C(6,6)$ とする。四角形 $ABCD$ が平行四辺形になる $D$ は、$\vec d=\vec a+\vec c-\vec b=(1+6-5,\,1+6-2)=(2,5)$ である。確かめ:$\overrightarrow{AB}=(4,1)$、$\overrightarrow{DC}=(6-2,\,6-5)=(4,1)$ で等しい。
    頂点の順を変えた場合を開く

    (2) 同じ 3 点で、四角形 $ABDC$(頂点の順が $A$、$B$、$D$、$C$)が平行四辺形になる $D$ は、$\vec a+\vec d=\vec b+\vec c$ から $\vec d=(5+6-1,\,2+6-1)=(10,7)$ である。3 点を頂点にもつ平行四辺形の 4 つ目の頂点は、どの 2 点を対角線の両端にするかで 3 通りある。(1) は $AC$、(2) は $BC$ を対角線にした場合で、$AB$ を対角線にすると $\vec d=\vec a+\vec b-\vec c=(0,-3)$ である(四角形 $ADBC$)。

一方、thm-pgc-criteria の条件 (i)・(ii) は、ベクトルの 1 本の等式には直せない。ex-pgc-cx-crossed のように、2 組の向かい合う辺の長さが等しくても、辺が交わってしまう 4 点があるからである。条件 (i)・(iv) の証明で「四角形である(自己交差しない)」ことを事実 (i) の形で使ったのは、このためである((iv) の場合は ex-pgc-cx-crossed の (2))。

長方形・ひし形・正方形

長方形・ひし形・正方形

4 つの角がすべて等しい四角形を 長方形 という。内角の和は $360^\circ$ なので、長方形の角はすべて $90^\circ$ である。4 つの辺の長さがすべて等しい四角形を ひし形 という。長方形でありひし形でもある四角形を 正方形 という。

長方形は 2 組の向かい合う角が等しいので、thm-pgc-criteria の条件 (ii) により平行四辺形である。ひし形は 2 組の向かい合う辺が等しいので、条件 (i) により平行四辺形である。どちらも平行四辺形の特別な場合なので、対角線で見分けられる。

対角線による長方形・ひし形・正方形の判定

平行四辺形 $ABCD$ について、次が成り立つ。

  1. $ABCD$ が長方形であることと、$AC=BD$(2 本の対角線の長さが等しい)は同値である。
  2. $ABCD$ がひし形であることと、$AC\perp BD$(2 本の対角線が直交する)は同値である。
  3. $ABCD$ が正方形であることと、$AC=BD$ かつ $AC\perp BD$ は同値である。
    特に、四角形の 2 本の対角線が、互いの中点で交わり、長さが等しく、直交するならば、その四角形は正方形である。

要点:$\vec u=\overrightarrow{AB}$、$\vec v=\overrightarrow{AD}$ とおくと $\overrightarrow{AC}=\vec u+\vec v$、$\overrightarrow{BD}=\vec v-\vec u$ で、内積の展開から
$$ AC^2-BD^2=4\,\vec u\cdot\vec v,\qquad \overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD}=AD^2-AB^2 $$
である。$AC=BD$ は $\angle A=90^\circ$ と、$AC\perp BD$ は $AB=AD$ と同値になる。最後の主張は、thm-pgc-criteria の条件 (iii) で平行四辺形になり、3 を使えばよい。

詳しい証明を開く

prop-pgc-vector により $\overrightarrow{AC}=\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BC}=\vec u+\vec v$、$\overrightarrow{BD}=\vec v-\vec u$ である。内積を展開すると(ベクトルの内積(高校数学))

$$\lvert\vec u+\vec v\rvert^2-\lvert\vec v-\vec u\rvert^2=\bigl(\lvert\vec u\rvert^2+2\,\vec u\cdot\vec v+\lvert\vec v\rvert^2\bigr)-\bigl(\lvert\vec v\rvert^2-2\,\vec u\cdot\vec v+\lvert\vec u\rvert^2\bigr)=4\,\vec u\cdot\vec v,$$

$$(\vec u+\vec v)\cdot(\vec v-\vec u)=\lvert\vec v\rvert^2-\lvert\vec u\rvert^2$$

である。

1。$AC=BD$ は、1 つ目の式から $\vec u\cdot\vec v=0$、つまり $\angle A=90^\circ$ と同値である。平行四辺形では $\angle C=\angle A$、$\angle B=\angle D=180^\circ-\angle A$(thm-pgc-property の段 5)なので、$\angle A=90^\circ$ は 4 つの角がすべて $90^\circ$ であること、つまり長方形であることと同値である。

2。$AC\perp BD$ は、2 つ目の式から $\lvert\vec u\rvert=\lvert\vec v\rvert$、つまり $AB=AD$ と同値である。平行四辺形では $CD=AB$、$BC=AD$ なので、$AB=AD$ は 4 辺がすべて等しいこと、つまりひし形であることと同値である。

3 は 1 と 2 を合わせたものである。

長方形 ABCD では 2 本の対角線の長さが等しい 長方形 ABCD では 2 本の対角線の長さが等しい
ひし形 ABCD では 2 本の対角線が中点で直交する ひし形 ABCD では 2 本の対角線が中点で直交する
対角線で見分ける
  1. $A(0,0)$、$B(4,2)$、$C(3,4)$、$D(-1,2)$。$\overrightarrow{AB}=(4,2)=\overrightarrow{DC}$ なので平行四辺形である。$AC^2=3^2+4^2=25$、$BD^2=5^2+0^2=25$ で対角線の長さが等しいので、長方形である。確かめ:$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AD}=(4)(-1)+(2)(2)=0$。
  2. $A(0,0)$、$B(5,0)$、$C(9,3)$、$D(4,3)$。$\overrightarrow{AB}=(5,0)=\overrightarrow{DC}$ なので平行四辺形である。$\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD}=(9)(-1)+(3)(3)=0$ で対角線が直交するので、ひし形である。確かめ:$AB=5$、$AD=\sqrt{4^2+3^2}=5$。$AC^2=90$、$BD^2=10$ で、長方形ではない。
    どちらでもない例を開く

    (3) ex-pgc-start の平行四辺形では $\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD}=(7)(-3)+(4)(2)=-13\ne0$、$AC^2=65\ne13=BD^2$ で、長方形でもひし形でもない。

例と反例:条件を弱めると成り立たない

thm-pgc-criteria の 4 つの条件は、それぞれ少し弱めるだけで平行四辺形とは言えなくなる。

外す条件反例成り立たなくなること
条件 (iv) の「平行な辺が等しい」を「もう 1 組の辺が等しい」に替える等脚台形 $A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(4,2)$、$D(2,2)$平行四辺形である($AD\parallel BC$ でない)
条件 (iii) の「互いの中点で交わる」を「対角線の長さが等しい」に替える同じ等脚台形平行四辺形である
条件 (i) で、四角形であること(辺が交わらないこと)を外す$A(0,0)$、$B(1,2)$、$C(4,0)$、$D(3,2)$2 組の向かい合う辺が平行
条件 (iv) で、四角形であることを外す$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,2)$、$D(5,2)$$AD\parallel BC$
条件 (i)・(ii) を 1 組ずつに減らす(1 組の辺と 1 組の角)凸四角形 $A(0,0)$、$B(9,-3)$、$C(10,4)$、$D(1,1)$平行四辺形である
等脚台形では 1 組の辺が平行で、もう 1 組の辺と 2 本の対角線の長さが等しいが、平行四辺形ではない 等脚台形では 1 組の辺が平行で、もう 1 組の辺と 2 本の対角線の長さが等しいが、平行四辺形ではない
辺 BC と DA が交わる 4 点では、向かい合う辺の長さが 2 組とも等しくても平行にならない 辺 BC と DA が交わる 4 点では、向かい合う辺の長さが 2 組とも等しくても平行にならない
反例:等脚台形

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(4,2)$、$D(2,2)$ とする(図 7)。$AB$ と $DC$ はどちらも $x$ 軸に平行で $AB\parallel DC$ である。$AD=\sqrt{2^2+2^2}=\sqrt8$、$BC=\sqrt{(-2)^2+2^2}=\sqrt8$ で、もう 1 組の辺 $AD$ と $BC$ の長さは等しい。対角線も $AC=\sqrt{4^2+2^2}=\sqrt{20}$、$BD=\sqrt{(-4)^2+2^2}=\sqrt{20}$ で等しい。
しかし $\overrightarrow{AD}=(2,2)$ と $\overrightarrow{BC}=(-2,2)$ は平行でなく、$ABCD$ は平行四辺形ではない。$AB=6\ne2=DC$ なので条件 (iv) は満たされず、$AC$ の中点 $(2,1)$ と $BD$ の中点 $(4,1)$ は違うので条件 (iii) も満たされない。

崩れる理由を開く

条件 (iv) では「平行な 2 辺が等しい」ことが要る。平行でない側の 2 辺が等しいだけなら、この例のように、$A$ と $B$、$D$ と $C$ がそれぞれ直線 $x=3$ について対称な台形ができる。cor-pgc-special の 1 は、平行四辺形であることを先に知っている場合の判定で、対角線が等しいだけでは平行四辺形にさえならない。

反例:辺が交わる 4 点
  1. $A(0,0)$、$B(1,2)$、$C(4,0)$、$D(3,2)$ とする(図 8)。$AB=\sqrt5=CD$、$BC=\sqrt{3^2+2^2}=\sqrt{13}=DA$ で、2 組の向かい合う辺の長さがそれぞれ等しい。しかし $\overrightarrow{AB}=(1,2)$ と $\overrightarrow{DC}=(1,-2)$ は平行でない。辺 $BC$ と辺 $DA$ は点 $\left(2,\dfrac43\right)$ で交わり(それぞれの線分を $1:2$ に内分する点)、$ABCD$ は四角形ではない。$B$ と $D$ は直線 $AC$($x$ 軸)の同じ側にあり、thm-pgc-criteria の条件 (i) の証明の錯角の議論が使えない。
    条件 (iv) の場合を開く

    (2) $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(1,2)$、$D(5,2)$ とする。$AB$ と $DC$ はどちらも $x$ 軸に平行で、長さはどちらも $4$ である。しかし $\overrightarrow{AB}=(4,0)$、$\overrightarrow{DC}=(-4,0)$ で向きが逆であり、$\overrightarrow{AD}=(5,2)$ と $\overrightarrow{BC}=(-3,2)$ は平行でない。辺 $BC$ と辺 $DA$ は点 $\left(\dfrac52,1\right)$ で交わる。prop-pgc-vector の 2 で、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ と向きまで込めて書いたのは、この 4 点を除くためである。

AB と CD が等しく、角 A と角 C が等しい凸四角形 ABCD。同じ条件を満たす平行四辺形 ABC'D(破線)とは C の位置だけが違う AB と CD が等しく、角 A と角 C が等しい凸四角形 ABCD。同じ条件を満たす平行四辺形 ABC'D(破線)とは C の位置だけが違う

反例:1 組の辺と 1 組の角が等しい凸四角形

$A(0,0)$、$B(9,-3)$、$C(10,4)$、$D(1,1)$ とする(図 9)。
(1) 辺。$AB^2=9^2+3^2=90$、$CD^2=9^2+3^2=90$ で、$AB=CD$ である。
(2) 角。$\overrightarrow{AB}\cdot\overrightarrow{AD}=(9)(1)+(-3)(1)=6$、$\overrightarrow{CB}=(-1,-7)$、$\overrightarrow{CD}=(-9,-3)$ の内積は $9+21=30$ で
$$ \cos A=\frac6{\sqrt{90}\,\sqrt2}=\frac6{6\sqrt5}=\frac1{\sqrt5},\qquad \cos C=\frac{30}{\sqrt{50}\,\sqrt{90}}=\frac{30}{30\sqrt5}=\frac1{\sqrt5} $$
なので、$\angle A=\angle C$(約 $63.4^\circ$)である。残りの角は $\angle B\approx79.7^\circ$、$\angle D\approx153.4^\circ$ で、4 つとも $180^\circ$ より小さい凸四角形である。
(3) しかし $\overrightarrow{AB}=(9,-3)$、$\overrightarrow{DC}=(9,3)$ は平行でなく、$ABCD$ は平行四辺形ではない。
なぜこうなるか。三角形 $ABD$ と三角形 $CDB$ は、辺 $BD$ が共通で、$AB=CD$、辺 $BD$ の向かいの角 $\angle A=\angle C$ が等しい。これは「2 辺と、その間にない角」が等しいということで、三角形の合同条件ではない。三角形の決定で「2 辺と間にない角」から三角形が 2 つできる場合と同じ現象である(三角形の決定と解の個数)。

円で 2 つの位置を見る

$\vec b+\vec d-\vec a$ で作った点 $C'(10,-2)$ をとると $ABC'D$ は平行四辺形で、$C'D=AB$、$\angle BC'D=\angle A$ である。4 点 $B$、$C$、$C'$、$D$ は円 $x^2+y^2-12x-2y+12=0$(中心 $(6,1)$、半径 $5$)の上にあり、$C$ と $C'$ はどちらも弦 $BD$ から見て同じ側にある。同じ弧の上の点から弦 $BD$ を見込む角は等しい(円周角の定理(高校数学))ので $\angle BCD=\angle BC'D=\angle A$ となり、さらに $C$ と $C'$ はどちらも $D$ から距離 $\sqrt{90}$ の点である。弦 $BD$ を $\angle A$ で見込む点の円と、$D$ を中心とする半径 $AB$ の円が 2 点で交わるので、$C$ の位置が 2 通りある。

条件と証明の道具の一覧

条件証明で使う合同条件平行を出す角ベクトルでの形
定義:2 組の対辺が平行——$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$(prop-pgc-vector)
条件 (i):2 組の対辺が等しい3 辺対角線 $AC$ での錯角1 本の等式にならない
条件 (ii):2 組の対角が等しい使わない(内角の和)延長線をとった錯角1 本の等式にならない
条件 (iii):対角線が互いの中点で交わる2 辺と間の角(対頂角)対角線 $AC$ での錯角$\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$
条件 (iv):1 組の対辺が平行で等しい2 辺と間の角対角線 $AC$ での錯角四角形なら $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$

条件 (i)・(ii) は、辺や角の「大きさ」しか見ていないので、ex-pgc-cx-crossed のような向きの違いを区別できない。そのため証明に、図の位置関係(rem-pgc-facts)が入る。条件 (iii) は向きまで込めた条件で、そのままベクトルの等式 $\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$ に直せる。条件 (iv) は、四角形である(辺が交わらない)ことと合わせて初めて $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ になる(ex-pgc-cx-crossed の (2) では $\overrightarrow{AB}=-\overrightarrow{DC}$)。

大学数学で見る:平行移動と点対称

prop-pgc-vector の $\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ は、「辺 $DC$ は、辺 $AB$ を平行移動したものである」と読める。大学の線形代数では、ベクトルは向きと大きさだけをもつもので、始点を平行移動しても同じベクトルとみなす。この見方では、平行四辺形 $ABCD$ は $\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{AD}=\overrightarrow{AC}$ という ベクトルの和の平行四辺形則 の図そのものである(ベクトル空間)。2 本の対角線の長さの 2 乗の和が 4 辺の長さの 2 乗の和に等しいこと(平行四辺形の法則)は、中線定理(高校数学) で扱う。

点対称とアフィン変換の話を開く

$\vec a+\vec c=\vec b+\vec d$ は、対角線の中点 $M$(位置ベクトル $\vec m$)に関する 点対称 $\vec x\mapsto2\vec m-\vec x$ が、$A$ と $C$、$B$ と $D$ を入れかえることを言っている。平行四辺形は、ある点に関して点対称な四角形である。

平面の変換 $\vec x\mapsto R\vec x+\vec t$($R$ は行列式が $0$ でない $2\times2$ 行列)を アフィン変換 という。この変換で $\overrightarrow{AB}$ は $R\overrightarrow{AB}$ に移るので、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ は移した後も保たれ、平行四辺形は平行四辺形に移る。一方、長さや角は保たれないので、長方形・ひし形・正方形は一般に保たれない。たとえば $R=\begin{pmatrix}2&0\\0&1\end{pmatrix}$ は正方形を、正方形でない長方形に移す。平行四辺形の性質のうち「対角線が互いの中点で交わる」はアフィン変換で保たれる性質で、「対角線の長さが等しい」は保たれない性質である。行列による変換の面積の変わり方は 1次変換と行列式:面積の拡大率 で扱う。

演習

1 組の対辺が平行で 1 組の対角が等しい四角形

四角形 $ABCD$ で $AB\parallel DC$ かつ $\angle A=\angle C$ ならば、$ABCD$ は平行四辺形であることを示せ。ただし、1 組の対辺が平行な四角形は凸四角形であること(図の位置関係)は使ってよい。

解答を開く

$ABCD$ は凸四角形なので、rem-pgc-facts の事実 (ii) により $B$ と $C$ は直線 $AD$ の同じ側にある。辺 $AB$ を $A$ の先へ延ばした点 $B'$ をとると、$B'$ と $C$ は直線 $AD$ の反対側にあり、$\angle B'AD$ と $\angle ADC$ は横断線 $AD$ についての錯角である。$AB\parallel DC$ なので錯角は等しく、$\angle ADC=\angle B'AD=180^\circ-\angle A$、つまり $\angle A+\angle D=180^\circ$ である。同じく横断線 $BC$ について $\angle B+\angle C=180^\circ$ である。$\angle A=\angle C$ なので $\angle B=180^\circ-\angle C=180^\circ-\angle A=\angle D$ である。2 組の向かい合う角が等しいので、thm-pgc-criteria の条件 (ii) により平行四辺形である。

座標で判定する

$A(-2,1)$、$B(3,-1)$、$C(5,4)$、$D(0,6)$ について、四角形 $ABCD$ が平行四辺形・長方形・ひし形・正方形のどれにあたるかを調べよ。

解答を開く

$AC$ の中点は $\left(\dfrac32,\dfrac52\right)$、$BD$ の中点も $\left(\dfrac32,\dfrac52\right)$ で一致するので、条件 (iii) により平行四辺形である。$\overrightarrow{AC}=(7,3)$、$\overrightarrow{BD}=(-3,7)$ で、$\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD}=-21+21=0$ なので対角線は直交し、$AC^2=58=BD^2$ なので長さも等しい。cor-pgc-special の 3 により正方形である。確かめ:$\overrightarrow{AB}=(5,-2)$、$\overrightarrow{AD}=(2,5)$ で、長さはどちらも $\sqrt{29}$、内積は $10-10=0$。

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参考文献

Euclid『原論』第 I 巻の命題 33 は条件 (iv) と同じ内容、命題 34 は thm-pgc-property の 1・2(と、対角線が面積を 2 等分すること)で、どちらも対角線で 2 つの三角形に分けて合同を使って証明している(Hea56 pp. 322–326)。

関連項目

参考文献

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