加群の台(support of a module)とは、環 $A$ 上の加群 $M$ に対し、局所化 $M_{\mathfrak p}$ が非零となる素イデアル $\mathfrak p$ の集合 $\operatorname{Supp}_A(M)$ である。任意の加群で台は各元の零化イデアルが定める閉集合 $V(\operatorname{Ann}(x))$ の和集合であり、台が空であることは $M=0$ と同値で、短完全列や直和では和集合になる。有限生成加群では $\operatorname{Supp}(M)=V(\operatorname{Ann}(M))$ は閉集合で、有限生成加群のテンソル積の台は台の共通部分となるが、有限生成でない加群ではどちらも成り立たない例がある。
加群の台は、その加群を素イデアルの近くで見たとき、非零の情報が残る場所を集めた集合である。例えば $A/(f)$ は $f$ が単元になる場所では零になり、$f$ が素イデアルに入る場所では非零になる。全加群を殺す元だけを調べても、無限加群の台を決められるとは限らない。有限生成性は、個々の生成元を殺す分母を一つにまとめるための条件として働く。
本記事の「台」は加群の台(support of a module)であり、関数の非零集合の閉包や分布の台とは別の定義である。「支持」ともいう。環は可換単位環、加群は単位的加群とする。Noether 性は定義に必要なく、各定理で使う箇所を区別する。有限加群は有限生成加群の意味であり、集合として有限という意味ではない。MatCRT §6。
積閉集合 $S\subset A$ に対して、分数加群 $S^{-1}M$ の元を $x/s$ と書く。$(x,s)$ と $(y,t)$ が同じ元を表す条件は、ある $u\in S$ について $u(tx-sy)=0$ となることである。従って
$$x/s=0\quad\Longleftrightarrow\quad \text{ある }u\in S\text{ が }ux=0\text{ を満たす}.$$
分母 $s$ はこの零判定を変えない。素イデアル $\mathfrak p$ に対して $S=A\setminus\mathfrak p$ を取り、$M_{\mathfrak p}$ と書く。
$A$ 加群 $M$ の台は
$$\operatorname{Supp}_A(M)=\{\mathfrak p\in\operatorname{Spec}(A):M_{\mathfrak p}\ne0\}$$
である。ここで $\operatorname{Spec}(A)$ は $A$ の素イデアルの集合であり、閉集合はイデアル $I$ に対する $V(I)=\{\mathfrak p:I\subset\mathfrak p\}$ である。
素イデアルは真のイデアルである。零環には素イデアルがなく、単位的加群も零だけなので、台は空である。任意の環で $\operatorname{Supp}(0)=\emptyset$ である。非零環では $A_{\mathfrak p}$ の $1$ は零でない。零なら素イデアルの外の元 $s$ が $s=0$ を満たすことになり矛盾する。従って $\operatorname{Supp}_A(A)=\operatorname{Spec}(A)$ である。
$\operatorname{Ann}_A(x)=\{a:ax=0\}$ と $\operatorname{Ann}_A(M)=\bigcap_{x\in M}\operatorname{Ann}_A(x)$ を区別する。前者は一つの元を殺すイデアル、後者は全加群を殺すイデアルである。
任意の加群について
$$\operatorname{Supp}_A(M)=\bigcup_{x\in M}V(\operatorname{Ann}_A(x)).$$
特に $\operatorname{Supp}(A/I)=V(I)$ である。
$M_{\mathfrak p}\ne0$ なら非零の分数 $x/s$ がある。このとき $x/1\ne0$ であり、分数の零判定から $x$ を殺す元は $A\setminus\mathfrak p$ に存在しない。これは $\operatorname{Ann}(x)\subset\mathfrak p$ と同値である。逆も同じ零判定から従う。巡回加群 $Ax$ は $A/\operatorname{Ann}(x)$ に同型である。商 $A/I$ については、$1$ の零化イデアルが $I$ であり、全元の零化イデアルは $I$ を含むので和集合は $V(I)$ となる。
この公式から、台は特殊化で閉じていることが分かる。すなわち $\mathfrak p\in\operatorname{Supp}(M)$、$\mathfrak p\subset\mathfrak q$ なら $\mathfrak q\in\operatorname{Supp}(M)$ である。$\operatorname{Ann}(x)\subset\mathfrak p$ の証人を選ぶと同じ証人が $\mathfrak q$ に対しても働く。ただし閉集合の無限和集合は閉とは限らず、特殊化で閉じていることと Zariski 閉であることは同じではない。
$M$ が有限生成なら、環の Noether 性を仮定せず
$$\operatorname{Supp}_A(M)=V(\operatorname{Ann}_A(M))$$
が成立する。任意加群について常に左辺は右辺に含まれる。
$M_{\mathfrak p}\ne0$ で、$a\in\operatorname{Ann}(M)\setminus\mathfrak p$ があれば、局所化後単元 $a/1$ が $M_{\mathfrak p}$ 全体を殺す。これは加群が零であることを意味して矛盾する。従って左辺は右辺に含まれる。
逆包含には有限生成元 $x_1,\ldots,x_r$ を使う。$M_{\mathfrak p}=0$ なら、それぞれの $x_i/1=0$ に対して $s_i\notin\mathfrak p$、$s_ix_i=0$ を選べる。$s=\prod_i s_i$ は全生成元を殺し、$\operatorname{Ann}(M)$ に属する。一方 $s\notin\mathfrak p$ なので $\operatorname{Ann}(M)$ は $\mathfrak p$ に含まれない。$r=0$ なら $M=0$、零化イデアルは $A$、双方空である。
有限性は十分条件であり必要条件とは主張しない。例えば非零体 $k$ 上の任意非零ベクトル空間は、有限次元でなくても台が一点 $\operatorname{Spec}(k)$ であり、零化イデアルは零なので同じ公式が成立する。
任意加群 $M$ について、台が空であることと $M=0$ は同値である。また台の Zariski 閉包は
$$\overline{\operatorname{Supp}(M)}=V\left(\bigcap_{x\in M}\sqrt{\operatorname{Ann}(x)}\right).$$
$x\ne0$ なら $\operatorname{Ann}(x)$ は真のイデアルである。これを含む極大イデアル $\mathfrak m$ を取ると、前公式により $\mathfrak m$ は台に入る。極大イデアルの存在は、真イデアルの昇鎖の合併がなお真であることから Zorn の補題で従う。逆方向は定義から明らかである。
閉包公式には、イデアル $J$ を含む全素イデアルの交叉が $\sqrt J$ であることを使う。この事実も確認する。$a\notin\sqrt J$ なら $1,a,a^2,\ldots$ は $J$ と交わらない。この積閉集合と交わらず $J$ を含むイデアルの極大元 $P$ を Zorn で取る。$bc\in P$ で $b,c\notin P$ なら、$P+(b)$ と $P+(c)$ はそれぞれ $a$ の冪を含む。両表示を掛けるとある $a$ の冪が $P$ に入って矛盾する。従って $P$ は素で $a\notin P$。逆に $a^n\in J$ なら $J$ を含む全素は $a$ を含む。これで交叉公式が得られる。
集合 $T\subset\operatorname{Spec}(A)$ の閉包は $V(\bigcap_{\mathfrak p\in T}\mathfrak p)$ である。実際これは $T$ を含む閉集合で、$T\subset V(I)$ なら $I\subset\bigcap_T\mathfrak p$ よりこの閉集合は $V(I)$ に含まれる。巡回台の和集合に適用し、上の交叉公式を使えば主張となる。空の交叉は $A$ とする。
一般には $\bigcap_x\sqrt{\operatorname{Ann}(x)}$ と $\sqrt{\operatorname{Ann}(M)}$ を交換してはいけない。前者では各元を殺す指数が元ごとに変わり得るためである。閉包だけを知る場合も、全加群の零化イデアルに置き換える有限性の条件を確認する必要がある。
積閉集合 $S$ による局所化は、任意の短完全列 $0\to U\to M\to N\to0$ を短完全列に移す。
単射について、$u/s$ の $M$ 内での像が零なら、ある $t\in S$ により $tu$ の像が零になる。元の単射から $tu=0$ であり、$u/s=0$ である。全射について、$n/s$ の分子 $n$ を $M$ へ持ち上げればよい。中間で $x/s$ が核に入るなら、ある $t\in S$ が分子 $x$ の像を殺す。$tx$ は元の核、従って $U$ の像に属する。その持上げを $u$ とすると、$x/s$ は $u/(ts)$ の像である。これで像と核が等しくなる。
短完全列について
$$\operatorname{Supp}(M)=\operatorname{Supp}(U)\cup\operatorname{Supp}(N).$$
任意の添字集合 $\Lambda$ に対し
$$\operatorname{Supp}\left(\bigoplus_{\lambda\in\Lambda}M_\lambda\right)=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\operatorname{Supp}(M_\lambda).$$
各素で局所化した短完全列の中項が零であることと、両端が零であることは同値である。逆に両端零なら完全性により中項も零となる。従って台の公式が従う。
直和と局所化の同型は、有限台の成分表示 $ (x_\lambda)_\lambda/s\mapsto(x_\lambda/s)_\lambda$ で与えられる。逆方向では有限個の分母をその積という共通分母へまとめる。零判定も有限個の消去元の積で確認できる。よってこの写像は同型であり、直和が零であることと全因子が零であることから台の公式を得る。
部分加群や商の台は元の台に含まれるが、商の台と部分加群の台が同じであるとは限らない。体 $k$ に対し $A=k[t]$ と列 $0\to(t)\to A\to A/(t)\to0$ を見ると、$(t)\cong A$ の台は全スペクトル、商の台は $\{(t)\}$ である。
無限直積では、直和の公式をそのまま使えない。$A=\mathbf Z$、$M_n=\mathbf Z/2^n\mathbf Z$ とする。各因子の台は $\{(2)\}$ だが、直積の元 $x=(1\bmod 2^n)_n$ の零化イデアルは零である。整数が全ての $2^n$ で割り切れるなら零だからである。従って巡回台の公式により $\operatorname{Supp}(\prod_nM_n)=\operatorname{Spec}(\mathbf Z)$ となる。局所化は一般に無限直積とは交換しない。
まず自然写像
$$(M\otimes_A N)_{\mathfrak p}\longrightarrow M_{\mathfrak p}\otimes_{A_{\mathfrak p}}N_{\mathfrak p},\qquad (x\otimes y)/s\longmapsto(x/s)\otimes(y/1)$$
は同型である。逆写像は $(x/u)\otimes(y/v)\mapsto(x\otimes y)/(uv)$ であり、分数の同値関係とテンソルの双線形・釣合関係を両辺で確かめればよい。例えば片方の分子の差が $t$ で殺される場合、テンソル分子の差も同じ $t$ で殺されるので、分数関係は保存される。
任意環 $A$ 上の有限生成加群 $M,N$ について
$$\operatorname{Supp}_A(M\otimes_A N)=\operatorname{Supp}_A(M)\cap\operatorname{Supp}_A(N).$$
任意加群では左辺から右辺への包含だけが常に成立する。
片方の局所化が零なら、そのテンソルも零なので包含は一般に成り立つ。逆包含のため $(R,\mathfrak m)=(A_{\mathfrak p},\mathfrak p A_{\mathfrak p})$ で考える。有限生成非零 $R$ 加群 $P$ は $P/\mathfrak mP\ne0$ である。ここで必要な Nakayama の補題を証明する。$P=\mathfrak mP$ とし生成元 $z_1,\ldots,z_r$ を取ると $z_i=\sum_j a_{ij}z_j$、$a_{ij}\in\mathfrak m$ と書ける。行列 $I-(a_{ij})$ の随伴行列を掛けると、その行列式が全 $z_i$ を殺す。行列式は $1$ を法 $\mathfrak m$ とするので単元であり、全生成元は零となる。局所環で極大イデアルの外が単元なのは、非単元の生成する真イデアルが極大イデアルに含まれるためである。
よって $M_{\mathfrak p},N_{\mathfrak p}$ が双方非零なら、その剰余は体 $\kappa=R/\mathfrak m$ 上の非零有限次元空間である。そのテンソルは非零である。実際、非零ベクトルを基底へ延長すれば基底テンソルが基底となる。また
$$ (P\otimes_R Q)/\mathfrak m(P\otimes_R Q)\cong(P/\mathfrak mP)\otimes_\kappa(Q/\mathfrak mQ)$$
である。この同型は $\bar x\otimes\bar y\mapsto\overline{x\otimes y}$ と逆写像で直接与えられ、両方の商の関係が一致することから従う。従って元のテンソルも非零であり、交叉公式を得る。
$A=\mathbf Z$、$M=N=\mathbf Q/\mathbf Z$ とする。$M$ の台は全ての閉点 $\{(\ell):\ell\text{ は素数}\}$ である。$(0)$ では各元が整数で殺されるので局所化は零になる。一方 $(\ell)$ では $1/\ell+\mathbf Z$ は非零で残る。$s$ がこの元を殺すには $\ell\mid s$ が必要で、$s\notin(\ell)$ という分母条件に反するからである。
しかし $M\otimes_\mathbf Z M=0$ である。任意の単純テンソル $x\otimes y$ に対し $nx=0$ となる正整数 $n$ を取り、$M$ の可除性から $nz=y$ となる $z$ を取れば、$x\otimes y=x\otimes nz=nx\otimes z=0$ である。可除性は有理数代表を $n$ で割れば直接分かる。単純テンソルが加群を生成するので全体が零である。双方の台の交叉は非空なのにテンソルの台は空となる。
$\mathfrak q=\operatorname{Ann}(x)$ が素であるとき、$\mathfrak q$ を随伴素イデアルという。記号は $\operatorname{Ass}_A(M)$ である。随伴素は一つの元の零化イデアルであり、台は局所化した全加群の非零性である。両者を同義にしてはいけない。
$A$ が Noether なら非零加群 $M$ に随伴素がある。また局所化 $M_{\mathfrak p}$ の随伴素は、$M$ の随伴素 $\mathfrak q\subset\mathfrak p$ の局所化として得られる。加群の有限生成性はこの二つの主張には不要である。
非零元の零化イデアルの中に包含極大元 $\mathfrak q=\operatorname{Ann}(x)$ を取る。Noether 性によるイデアル昇鎖条件から存在する。$ab\in\mathfrak q$、$b\notin\mathfrak q$ なら $bx\ne0$ であり、$\operatorname{Ann}(bx)\supset\mathfrak q$ は極大性から等号となる。$a(bx)=0$ なので $a\in\mathfrak q$。従って $\mathfrak q$ は素である。
局所化後の随伴素 $P=\operatorname{Ann}_{A_{\mathfrak p}}(x/s)$ の縮約を $\mathfrak q=P\cap A$ とする。$s$ は単元なので $x/1$ も同じ零化イデアルを持つ。$\mathfrak q=(a_1,\ldots,a_r)$ は Noether 性から有限生成である。各 $a_ix/1=0$ について $u_i\notin\mathfrak p$ で $u_i a_i x=0$ を選び、$u=\prod_i u_i$ とする。$r=0$ なら $u=1$ とする。$\mathfrak q$ は $ux$ を殺す。逆に $bux=0$ なら局所化後 $u$ が単元なので $b(x/1)=0$、すなわち $b\in\mathfrak q$ である。$ux\ne0$ なので $\operatorname{Ann}_A(ux)=\mathfrak q$ は元の随伴素となる。
局所化環も Noether である。任意のイデアルは縮約の拡大であり、縮約の有限生成元がそのイデアルを生成するためである。従って存在定理を局所化後にも適用できる。
Noether 環上の任意加群について
$$\operatorname{Supp}_A(M)=\bigcup_{\mathfrak q\in\operatorname{Ass}_A(M)}V(\mathfrak q).$$
従って台の極小元と随伴素集合の極小元は一致する。
随伴素の証人 $x$ は $\operatorname{Ann}(x)=\mathfrak q$ を満たすので、その特殊化全体 $V(\mathfrak q)$ は巡回台の公式から台に入る。逆に $M_{\mathfrak p}\ne0$ なら前補題によりそこに随伴素がある。証人回収によって、それは $\mathfrak q\in\operatorname{Ass}_A(M)$、$\mathfrak q\subset\mathfrak p$ に由来する。従って $\mathfrak p\in V(\mathfrak q)$ である。
台の極小元 $\mathfrak p$ はこの表示から、ある随伴素 $\mathfrak q\subset\mathfrak p$ を含む。$\mathfrak q$ 自身も台に入るので極小性から等号となり、随伴素の中でも極小である。逆に随伴素の極小元 $\mathfrak q$ の真下に台の点 $\mathfrak p$ があれば、表示によりある随伴素 $\mathfrak r\subset\mathfrak p\subsetneq\mathfrak q$ が存在して矛盾する。よって両方の極小元は一致する。ただしこの論証は、随伴素が無限個ある場合に極小元が常に存在することまでは示していない。
有限生成の場合は、極小点も有限個で、台の全点はその特殊化となる。この追加結論には次の有限列を使う。
Noether 環上の有限加群 $M$ は、因子が $A/\mathfrak p_i$ となる有限列を持ち、台は $\bigcup_iV(\mathfrak p_i)$ である。特に台の極小点は有限個で、全支持点はそのいずれかを含む。
有限加群が Noether 加群になることを先に示す。$A^r$ の部分加群について、最後の座標の像はイデアルなので有限生成であり、その生成元を持ち上げる。核は $A^{r-1}$ の部分加群なので帰納法で有限生成である。像の持上げと核の生成元が全体を生成する。$r=1$ はイデアル有限生成そのものである。従って有限加群は $A^r$ の商として、その全部分加群も有限生成である。上昇鎖の合併の有限生成元は共通の有限段階に入るから、上昇鎖は停止する。
非零の商加群に前補題を適用すると、その中に $A/\mathfrak p$ と同型な非零巡回部分加群を取れる。その逆像を元の加群で取り、これを繰り返す。無限に続けば真上昇鎖となるので、有限段階で $M$ 全体に至る。短完全列の台の公式と $\operatorname{Supp}(A/\mathfrak p)=V(\mathfrak p)$ により台の表示が得られる。
有限集合 $\{\mathfrak p_i\}$ の包含極小元は台の極小点である。もしその真下に台の点があれば、その下にさらにいずれかの $\mathfrak p_j$ が入るので極小性に反する。逆に任意の台の点はある $\mathfrak p_i$ を含み、その有限集合の下向き最小元を含む。従って主張が得られる。零加群には空の列を用いる。
ここで素因子列の全素が随伴素になるとは限らない。体 $k$ に対し $A=k[t]$ の列 $0\subset(t)\subset A$ は因子 $A$ と $A/(t)$ を持つが、$\operatorname{Ass}(A)=\{(0)\}$ である。台の成分を捉えるのは列の極小素であり、列に現れる全ての素をそのまま随伴素と呼んではいけない。
体 $k$ に対し $A=k[x,y]$、$M=A/(x^2,xy)$ とする。$\operatorname{Ann}(M)=(x^2,xy)$ なので、素性から $x^2\in\mathfrak p$ は $x\in\mathfrak p$ と同値で、$\operatorname{Supp}(M)=V(x)$ である。一方 $\bar x$ は非零で $x\bar x=y\bar x=0$、$f(x,y)\bar x=f(0,0)\bar x$ だから $\operatorname{Ann}(\bar x)=(x,y)$ である。$\bar y$ の零化イデアルは $(x)$ である。実際 $a\bar y=0$ を $x=0$ で評価すると $a(0,y)y=0$ なので $a(0,y)=0$、すなわち $x\mid a$。逆に $x\bar y=0$ である。従って $(x)$ は極小随伴素、$(x,y)$ はそれを真に含む随伴素である。後者が埋込素と呼ばれる理由は、別の既約成分を生まず、同じ台の内部に追加の消滅条件を記録するからである。
$A=\mathbf Z$、$M=\bigoplus_{\ell\text{ 素数}}\mathbf Z/\ell\mathbf Z$ とする。直和の公式により
$$\operatorname{Supp}(M)=\{(\ell):\ell\text{ は素数}\}.$$
この集合は $(0)$ を含まないので全スペクトルではない。しかしその閉包は全スペクトルである。全素数で割り切れる整数は零だけだから、これらの素イデアルの交叉は零となる。素数が無限個あることは、有限個の積に1を足した整数の素因子を取ることで証明できる。よってこの台は閉ではない。
全加群の零化イデアルも零である。各因子を殺す整数はその素数の倍数でなければならず、それを全素数について要求すると零になる。従って $V(\operatorname{Ann}(M))=\operatorname{Spec}(\mathbf Z)$ は実際の台より真に大きい。環は Noether でも、加群の有限生成性を落とすと閉性の定理は失敗する。
逆に台が閉であるから有限生成とはいえない。非零体 $k$ 上の無限次元ベクトル空間を見れば、台は一つの点で閉だが、有限個のベクトルの張る空間は有限次元なので全加群にはならない。閉性は有限生成性の帰結であり、逆判定ではない。
体 $k$ に対し $A=k[t]$、$M=\bigoplus_{n\ge1}A/(t^n)$ とする。各因子の台は $V(t^n)=V(t)$ なので、直和公式より $\operatorname{Supp}(M)=V(t)$ は閉である。しかし
$$\operatorname{Ann}(M)=\bigcap_{n\ge1}(t^n)=0.$$
零でない多項式の次数は有限であり、全ての $t^n$ では割り切れないからである。従って $V(\operatorname{Ann}(M))=\operatorname{Spec}(A)$ は台と異なる。
さらに $\sqrt{(t^n)}=(t)$ である。素イデアルによる確認でも、$t$ の冪を含む素は $t$ を含み、$t$ を含む素は全冪を含むことから分かる。よって
$$\bigcap_{n\ge1}\sqrt{(t^n)}=(t)\ne0=\sqrt{\bigcap_{n\ge1}(t^n)}.$$
根基は有限交叉とは交換するが、ここでの無限交叉とは交換しない。閉包公式で各元の零化イデアルの根基を交叉する手順を、全加群の零化イデアルの根基へ置き換えてはいけない理由がこの例に現れる。
$A$ 線形写像 $f:M\to N$ が同型であることは、全素イデアル、または全極大イデアルについて $f_{\mathfrak p}$ が同型であることと同値である。有限生成性は不要である。
局所化の完全性により $\ker(f)_{\mathfrak p}=\ker(f_{\mathfrak p})$、$\operatorname{coker}(f)_{\mathfrak p}=\operatorname{coker}(f_{\mathfrak p})$ である。全素で同型なら核と余核の台は空なので、それぞれ零となる。極大イデアルだけでも、非零元の零化イデアルを含む極大イデアルを選ぶという零検出の証明により十分である。逆は同型の局所化が同型であることから明らかである。
台は単に図形を付け加える道具ではなく、加群や写像の零性を素点ごとに検出する。有限加群ではこの検出集合が一つの閉集合となり、素因子列はその有限な成分を代数的に表す。随伴素が元の零化条件を精密に捉えるのに対し、台は非零性の場所を捉える。この役割の違いを区別することが、局所化やテンソル積の議論で仮定を取り違えないために重要である。
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