2次方程式の判別式の正体は、$ax^2+bx+c=0$($a\ne0$)の判別式 $D=b^2-4ac$ が、2 つの解 $\alpha,\beta$ の差の 2 乗に $a^2$ を掛けた $a^2(\alpha-\beta)^2$ に等しいことである。この等式は係数が複素数でも成り立ち、$D=0$ と重解をもつことが同値になる。係数が実数なら、異なる実数の差の 2 乗は正、共役な虚数の差の 2 乗は負なので、$D>0$、$D=0$、$D<0$ がそれぞれ異なる 2 つの実数解、実数の重解、共役な 2 つの虚数解に対応する。放物線 $y=ax^2+bx+c$ の頂点の $y$ 座標は $-\frac{D}{4a}$ で、$D>0$ のとき $x$ 軸との 2 交点の距離は $\frac{\sqrt{D}}{|a|}$ である。放物線と直線が接する条件も判別式で表せる。
前提知識: 2次方程式, 2次関数, 複素数, 解と係数の関係
2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$($a\ne0$)の解は、解の公式
$$
x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
$$
で求まる。根号の中の $b^2-4ac$ を 判別式 と呼び、$D$ と書く。高校では「$D>0$ なら異なる 2 つの実数解、$D=0$ なら重解、$D<0$ なら虚数解」と習う。この記事では、$D$ が何を表す数なのかを調べる。答えを先に言うと、$D$ は 2 つの解の差の 2 乗 に $a^2$ を掛けたものである。
ex-qdsc-formula の解を $\alpha,\beta$ として、差の 2 乗 $(\alpha-\beta)^2$ を計算する。
| 方程式 | $\alpha$ | $\beta$ | $\alpha-\beta$ | $(\alpha-\beta)^2$ | $D$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $x^2-5x+6=0$ | $3$ | $2$ | $1$ | $1$ | $1$ |
| $x^2-4x+4=0$ | $2$ | $2$ | $0$ | $0$ | $0$ |
| $x^2+2x+5=0$ | $-1+2i$ | $-1-2i$ | $4i$ | $(4i)^2=-16$ | $-16$ |
3 つとも $(\alpha-\beta)^2=D$ である。$x^2$ の係数が $1$ でないときはどうか。$2x^2-3x-2=0$ では $D=(-3)^2-4\cdot2\cdot(-2)=9+16=25$ であり、解は $x=\dfrac{3\pm5}{4}$、つまり $\alpha=2$、$\beta=-\dfrac12$ である。$(\alpha-\beta)^2=\left(\dfrac52\right)^2=\dfrac{25}4$ で、$D=25$ とは $4=a^2$ 倍ずれている。$a^2(\alpha-\beta)^2=4\cdot\dfrac{25}4=25=D$ となる。
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 解の公式の根号の中 $b^2-4ac$ | 解の差の 2 乗 $a^2(\alpha-\beta)^2$ | 多項式の判別式(判別式) |
| $D=0$ なら重解 | 差が $0$ | 判別式が $0$ ⇔ 重根 |
| $D<0$ なら虚数解 | 共役な虚数の差は純虚数 | 判別式の符号と実根の個数 |
| 頂点の $y$ 座標 $-\dfrac{D}{4a}$ | 頂点の深さは解の差で決まる | 判別式の幾何的な意味 |
| 放物線と直線が接する ⇔ $D=0$ | 接点は重解 | 重根による接触の判定 |
以下では係数 $a,b,c$ を 複素数 とし、$a\ne0$ とする。高校で扱うのは実数係数の場合であり、主定理 2 からは実数係数に限る。
$a,b,c$ を複素数、$a\ne0$ とする。2 次式 $ax^2+bx+c$ について
$$
D:=b^2-4ac
$$
を、この 2 次式(または 2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$)の 判別式 という。$b=2b'$ と書けるとき、$\dfrac D4=b'^2-ac$ もよく使う。
2 次式が複素数 $\alpha,\beta$ を使って
$$
ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)
$$
と表されるとき、$\alpha,\beta$ を方程式 $ax^2+bx+c=0$ の 解(重複を込めて 2 つ)という。$\alpha=\beta$ のとき、この解を 重解 という。
どの 2 次式も上の形に分解できることを、解の公式の形で確かめておく。
$a,b,c$ を複素数、$a\ne0$、$D=b^2-4ac$ とし、$\delta$ を $\delta^2=D$ を満たす複素数とする。
$$
\alpha:=\frac{-b+\delta}{2a},\qquad \beta:=\frac{-b-\delta}{2a}
$$
とおくと、$ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$ である。
方針:$\alpha+\beta$ と $\alpha\beta$ を計算し、右辺を展開した式と左辺を比べる。
段 1(和)。分母がそろっているので
$$
\alpha+\beta=\frac{(-b+\delta)+(-b-\delta)}{2a}=\frac{-2b}{2a}=-\frac ba
$$
である。
段 2(積)。分子は和と差の積なので
$$
\alpha\beta=\frac{(-b+\delta)(-b-\delta)}{4a^2}=\frac{b^2-\delta^2}{4a^2}=\frac{b^2-(b^2-4ac)}{4a^2}=\frac{4ac}{4a^2}=\frac ca
$$
である。3 つ目の等号で $\delta^2=D=b^2-4ac$ を使った。
段 3(展開して比べる)。右辺を展開すると
$$
a(x-\alpha)(x-\beta)=a\bigl(x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta\bigr)=ax^2-a(\alpha+\beta)x+a\alpha\beta
$$
である。段 1・段 2 を代入すると $-a(\alpha+\beta)=-a\cdot\left(-\dfrac ba\right)=b$、$a\alpha\beta=a\cdot\dfrac ca=c$ なので、右辺は $ax^2+bx+c$ に等しい。$\square$
$a,b,c$ が実数のとき、$\delta$ は次のようにとれる。$D\ge0$ なら $\delta=\sqrt D$($0$ 以上の平方根)、$D<0$ なら $\delta=i\sqrt{-D}$ である。実際 $(i\sqrt{-D})^2=i^2\cdot(-D)=D$ である。ex-qdsc-formula (3) の $\sqrt{-16}=4i$ はこのとり方である。係数が一般の複素数のときも、$\delta^2=D$ となる複素数 $\delta$ は必ずある(複素数と方程式:代数学の基本定理 の命題「複素数の $k$ 乗根」の $k=2$ の場合)。
2 次方程式の解は、分解に現れる $\alpha,\beta$ 以外にない。$a(x-\alpha)(x-\beta)=0$ で $a\ne0$ なら、積が $0$ になる複素数の性質により $x-\alpha=0$ または $x-\beta=0$ だからである。さらに、重複の数まで決まる。分解の仕方が 2 通りあっても、どちらでも解と係数の関係から $\alpha+\beta=-\dfrac ba$ となる(下の prf-qdsc-main の段 1)ので、一方の解が決まれば他方は $-\dfrac ba$ からそれを引いた数に決まる。したがって「解」は分解の仕方によらず、$\{\alpha,\beta\}$(重複を込めて)で決まる。
ex-qdsc-diff で見たことを定理にする。
$a,b,c$ を複素数、$a\ne0$ とし、$ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$ とする。このとき
$$
b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2
$$
である。
方針:$(\alpha-\beta)^2$ を $\alpha+\beta$ と $\alpha\beta$ で書き、解と係数の関係 で係数に置き換える。
段 1(解と係数の関係)。prf-qdsc-factor の段 3 と同じく右辺を展開すると $ax^2-a(\alpha+\beta)x+a\alpha\beta$ である。これが $ax^2+bx+c$ と等しいので、$x$ の係数と定数項を比べて
$$
-a(\alpha+\beta)=b,\qquad a\alpha\beta=c
$$
である。$a\ne0$ なので $\alpha+\beta=-\dfrac ba$、$\alpha\beta=\dfrac ca$ である。
段 2(差の 2 乗を和と積で書く)。展開すると
$$
(\alpha-\beta)^2=\alpha^2-2\alpha\beta+\beta^2=(\alpha^2+2\alpha\beta+\beta^2)-4\alpha\beta=(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta
$$
である。
段 3(代入する)。段 1 の値を段 2 に代入すると
$$
(\alpha-\beta)^2=\left(-\frac ba\right)^2-4\cdot\frac ca=\frac{b^2}{a^2}-\frac{4ac}{a^2}=\frac{b^2-4ac}{a^2}
$$
である。両辺に $a^2$ を掛けて $a^2(\alpha-\beta)^2=b^2-4ac$ を得る。$\square$
段 2 のように、解の差の 2 乗を解の和と積で書き直す考え方は、根と係数の関係と対称式 でも使う(解を入れ替えても変わらない式は、和と積で書ける)。3 次以上の方程式の解と係数の関係は n次方程式の解と係数の関係 で扱う。
lem-qdsc-factor の $\alpha,\beta$ を使うと、同じ等式がもっと直接に見える。
$$
\alpha-\beta=\frac{-b+\delta}{2a}-\frac{-b-\delta}{2a}=\frac{2\delta}{2a}=\frac\delta a,\qquad (\alpha-\beta)^2=\frac{\delta^2}{a^2}=\frac{D}{a^2}
$$
つまり、実数係数で $D>0$ のとき、解の公式の「$\pm\sqrt{D}$」の部分は、2 つの解が軸 $x=-\dfrac b{2a}$ から左右に $\dfrac{\sqrt D}{2|a|}$ ずつ離れていることを表している。その差を 2 乗して $a^2$ を掛けたものが $D$ である。prf-qdsc-main は解の公式を使わないので、解がどんな形で求まっても使える。
$a\ne0$ なので $a^2\ne0$ である。このことから、判別式が $0$ になるのは差が $0$ のときだけである。
$a,b,c$ を複素数、$a\ne0$ とする。2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$ が重解をもつことと、$b^2-4ac=0$ であることは同値である。
方針:thm-qdsc-main の右辺が $0$ になる条件を調べる。
lem-qdsc-factor により $ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$ と書ける。thm-qdsc-main により $b^2-4ac=a^2(\alpha-\beta)^2$ である。$a\ne0$ なので $a^2\ne0$ であり、積 $a^2(\alpha-\beta)^2$ が $0$ になるのは $(\alpha-\beta)^2=0$、つまり $\alpha-\beta=0$ のときに限る。よって $b^2-4ac=0$ と $\alpha=\beta$(重解)は同値である。$\square$
$x^2+2mx+m+2=0$ が重解をもつ $m$ を求める。$b=2m$ なので $\dfrac D4=m^2-(m+2)=m^2-m-2=(m-2)(m+1)$ である。cor-qdsc-double により、重解をもつのは $m=2$ または $m=-1$ のときである。
重解になるかどうかで扱いが変わる場面は、ほかにもある。漸化式の特性方程式(三項間漸化式の特性方程式)では、特性方程式が重解をもつときだけ一般項の形が変わり、$(A+Bn)\alpha^n$ のように $n$ が掛かる。2 階の微分方程式の特性方程式(微分方程式としての指数関数・三角関数)では、判別式の符号で解の形が指数関数型・1 次関数型・三角関数型の 3 通りに分かれ、重解のときは $(A+Bx)e^{\alpha x}$ のように $x$ が掛かる。
cor-qdsc-double は係数が複素数でも成り立つ。証明で使ったのは $a\ne0$ と「積が $0$ なら因数のどれかが $0$」だけだからである。
$x^2-2ix-1=0$ では $a=1$、$b=-2i$、$c=-1$ である。
$$
D=(-2i)^2-4\cdot1\cdot(-1)=4i^2+4=-4+4=0
$$
なので、cor-qdsc-double により重解をもつ。実際、
$$
(x-i)^2=x^2-2ix+i^2=x^2-2ix-1
$$
なので、重解は $i$ である。
ここからは $a,b,c$ を実数とする。このとき $D=b^2-4ac$ も実数なので、符号(正・$0$・負)を考えられる。
$a,b,c$ を実数、$a\ne0$、$D=b^2-4ac$ とする。2 次方程式 $ax^2+bx+c=0$ について次が成り立つ。
方針:まず「$D$ の符号 ⇒ 解の種類」を 3 つの場合それぞれで示す。3 つの場合は $D$ についても解の種類についても互いに重ならないので、逆向きも従う。
段 1($D>0$ の場合)。rem-qdsc-delta のとおり $\delta=\sqrt D$ とすると、$\delta$ は正の実数である。lem-qdsc-factor の $\alpha=\dfrac{-b+\sqrt D}{2a}$、$\beta=\dfrac{-b-\sqrt D}{2a}$ はどちらも実数であり、$\alpha-\beta=\dfrac{\sqrt D}{a}\ne0$ なので異なる。
段 2($D=0$ の場合)。$\delta=0$ として $\alpha=\beta=-\dfrac b{2a}$ であり、これは実数である。
段 3($D<0$ の場合)。$\delta=i\sqrt{-D}$ とする。$s:=-\dfrac b{2a}$、$t:=\dfrac{\sqrt{-D}}{2a}$ とおくと、$s,t$ は実数で $t\ne0$ であり、$\alpha=s+ti$、$\beta=s-ti$ である。虚部 $t$ が $0$ でないので $\alpha,\beta$ は実数でなく、$\beta=\bar\alpha$ である。
段 4(逆向き)。解は $\{\alpha,\beta\}$ で決まる(rem-qdsc-roots)ので、解の種類「異なる 2 つの実数」「実数の重解」「実数でない 2 つ」は、どの 2 つも同時には起こらない。また $D$ は $D>0$、$D=0$、$D<0$ のちょうど 1 つを満たす。
thm-qdsc-main を使うと、符号が解の種類を表す理由がもう一度見える。
$D=a^2(\alpha-\beta)^2$ で、$a$ は $0$ でない実数なので $a^2>0$ である。したがって $D$ の符号は $(\alpha-\beta)^2$ の符号と同じである。
2 次関数 $y=ax^2+bx+c$ のグラフ(放物線)と $x$ 軸の位置関係も、判別式で読める。鍵は、平方完成したときに定数項として $D$ が現れることである。
$a,b,c$ を実数、$a\ne0$、$D=b^2-4ac$ とする。すべての実数 $x$ について
$$
ax^2+bx+c=a\left(x+\frac b{2a}\right)^2-\frac D{4a}
$$
である。したがって放物線 $y=ax^2+bx+c$ の頂点は $\left(-\dfrac b{2a},\ -\dfrac D{4a}\right)$ である。さらに $D\ge0$ で実数解を $\alpha,\beta$ とすると、$-\dfrac D{4a}=-\dfrac{a(\alpha-\beta)^2}4$ である。
方針:右辺を展開して左辺に一致することを確かめる。
段 1(展開)。$\left(x+\dfrac b{2a}\right)^2=x^2+\dfrac bax+\dfrac{b^2}{4a^2}$ なので
$$
a\left(x+\frac b{2a}\right)^2=ax^2+bx+\frac{b^2}{4a}
$$
である。
段 2(定数項)。$\dfrac{b^2}{4a}-\dfrac D{4a}=\dfrac{b^2-(b^2-4ac)}{4a}=\dfrac{4ac}{4a}=c$ である。段 1 と合わせて、右辺は $ax^2+bx+c$ に等しい。
段 3(頂点)。$a\left(x+\dfrac b{2a}\right)^2$ は $x=-\dfrac b{2a}$ で $0$ になり、それ以外の $x$ では $a$ と同じ符号をもつ。また、$h$ を実数として $x=-\dfrac b{2a}+h$ と $x=-\dfrac b{2a}-h$ を代入すると、どちらも $a h^2-\dfrac D{4a}$ で値が等しい。よってグラフは直線 $x=-\dfrac b{2a}$ に関して対称で、この点で $y=-\dfrac D{4a}$ をとる。これが頂点である。
段 4(解の差で書く)。thm-qdsc-main により $D=a^2(\alpha-\beta)^2$ なので、$\dfrac D{4a}=\dfrac{a^2(\alpha-\beta)^2}{4a}=\dfrac{a(\alpha-\beta)^2}4$ である。$\square$
図1:y = x² − 4x + c(c = 3, 4, 5)のグラフ。判別式が正・0・負に応じて、x 軸と 2 点で交わる・接する・交わらない
$a,b,c$ を実数、$a>0$ とし、$D=b^2-4ac$ とする。放物線 $y=ax^2+bx+c$ について次が成り立つ。
方針:頂点の $y$ 座標の符号を prop-qdsc-vertex で、共有点の個数を thm-qdsc-sign で調べる。
段 1(頂点の位置)。prop-qdsc-vertex により頂点の $y$ 座標は $-\dfrac D{4a}$ である。$a>0$ なので $4a>0$ であり、$-\dfrac D{4a}$ の符号は $-D$ の符号と同じである。よって $D>0$ なら頂点は $x$ 軸より下、$D=0$ なら $x$ 軸上、$D<0$ なら上にある。
段 2(共有点)。グラフと $x$ 軸の共有点の $x$ 座標は、$ax^2+bx+c=0$ の実数解である。thm-qdsc-sign により、実数解は $D>0$ なら 2 つ、$D=0$ なら 1 つ(重解)、$D<0$ なら $0$ 個である。
段 3(交点の距離)。$D>0$ のとき 2 つの交点は $(\alpha,0)$、$(\beta,0)$ で、rem-qdsc-main-formula により $\alpha-\beta=\dfrac{\sqrt D}a$ である。$a>0$ なので距離は $|\alpha-\beta|=\dfrac{\sqrt D}a$ である。
段 4($a<0$)。$y=ax^2+bx+c$ を $x$ 軸に関して折り返すと $y=-ax^2-bx-c$ になり、その判別式は $(-b)^2-4(-a)(-c)=b^2-4ac=D$ で変わらない。$-a>0$ なので段 1〜3 が使え、折り返して戻すと上下が入れ替わる。$\square$
$y=x^2-4x+3$ では $a=1$、$D=16-12=4$ である。prop-qdsc-vertex により $x^2-4x+3=(x-2)^2-1$ で、頂点は $(2,-1)$、深さは $\dfrac D{4a}=1$ である。交点は $x=1,3$ で、距離は $2=\dfrac{\sqrt4}1$ である。$\alpha=3$、$\beta=1$ として $\dfrac{a(\alpha-\beta)^2}4=\dfrac{4}4=1$ も深さに一致する(図 2)。
$y=x^2-4x+5=(x-2)^2+1$ では $D=16-20=-4$ で、頂点 $(2,1)$ は $x$ 軸より上にあり、共有点はない(図 1 の右)。
図2:y = x² − 4x + 3 の頂点の深さ D/(4a) = 1 と、2 つの解の距離 √D/|a| = 2
図 2 のように、判別式は「頂点がどれだけ深く $x$ 軸の下に沈んでいるか」と「2 つの交点がどれだけ離れているか」を同時に表している。深さは $\dfrac{a(\alpha-\beta)^2}{4}$、距離は $|\alpha-\beta|$ で、どちらも解の差だけで決まる。平方完成で頂点を求めて最小値・最大値を読む計算は、2次関数の最大・最小 でも使う。
係数を動かしたとき判別式の符号がどう変わるかは、係数の平面に描くと見やすい。$x^2+bx+c$ の場合、判別式は $b^2-4c$ なので、境目は放物線 $c=\dfrac{b^2}4$ である(図 3)。
図3:x² + bx + c の判別式 b² − 4c の符号。放物線 c = b²/4 の上側で負、下側で正、線上で 0
グラフがいつも $x$ 軸より上にある条件も、同じ考えで分かる。
$a,b,c$ を実数、$a\ne0$ とする。すべての実数 $x$ について $ax^2+bx+c>0$ であることと、「$a>0$ かつ $D<0$」であることは同値である。また、すべての実数 $x$ について $ax^2+bx+c\ge0$ であることと、「$a>0$ かつ $D\le0$」であることは同値である。
方針:prop-qdsc-vertex の形 $a(x-s)^2-\dfrac D{4a}$($s=-\dfrac b{2a}$)を使う。前半を示す。後半も同じ方法で示せる(下の段 3)。
段 1($a>0$ かつ $D<0$ ならすべて正)。$a>0$ なので $a(x-s)^2\ge0$ であり、$D<0$、$4a>0$ なので $-\dfrac D{4a}>0$ である。和は正である。
段 2(すべて正なら $a>0$ かつ $D<0$)。$x=s$ を代入すると値は $-\dfrac D{4a}$ で、これは正である。もし $a<0$ なら、$x$ を $s$ から大きく離すと $a(x-s)^2$ はいくらでも小さな負の数になる。実際 $x=s+N$ とすると値は $aN^2-\dfrac D{4a}$ で、$N^2>\dfrac{D}{4a^2}$ となる $N$ をとると負になる。これは仮定に反するので $a>0$ である。すると $-\dfrac D{4a}>0$ と $4a>0$ から $D<0$ である。
段 3(後半)。段 1 で $D\le0$ なら $-\dfrac D{4a}\ge0$ となり、和は $0$ 以上である。逆に、すべての $x$ で $0$ 以上なら、段 2 と同じく $a<0$ はありえず($x=s+N$ で $N^2>\dfrac{D}{4a^2}$ かつ $N\ne0$ ととれば値が負になる)、$x=s$ での値 $-\dfrac D{4a}\ge0$ から $D\le0$ である。$\square$
$x^2+mx+m+3>0$ がすべての実数 $x$ で成り立つ $m$ を求める。$x^2$ の係数は $1>0$ なので、cor-qdsc-positive により条件は $D<0$ である。
$$
D=m^2-4(m+3)=m^2-4m-12=(m-6)(m+2)<0
$$
より $-2< m<6$ である。端の $m=6$ では $x^2+6x+9=(x+3)^2$ が $x=-3$ で $0$ になり、「つねに正」は成り立たない。$m=-2$ では $x^2-2x+1=(x-1)^2$ で、同じく $x=1$ で $0$ になる。
この考え方は、不等式の証明に使える(判別式で示す不等式)。同じ考え方は、Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) を「すべての $t$ で $0$ 以上の 2 次式」から示すときにも使う。
判別式は、放物線と直線が「接する」かどうかの判定にも使われる。ここで、直線 $y=mx+k$ が放物線 $y=f(x)$ の点 $(x_0,f(x_0))$ で 接する とは、その点を通り、傾き $m$ が $f'(x_0)$(導関数 の値)に等しいことをいう。この意味の接線は、接線・法線と曲線の凹凸 で一般の関数について扱う。
$a,b,c,m,k$ を実数、$a\ne0$ とし、放物線 $y=ax^2+bx+c$ と直線 $y=mx+k$ を考える。2 つを連立して $y$ を消した 2 次方程式
$$
ax^2+(b-m)x+(c-k)=0
$$
の判別式を $D_1=(b-m)^2-4a(c-k)$ とする。このとき、直線が放物線に接することと $D_1=0$ は同値である。接点の $x$ 座標は、この方程式の重解 $x_0=-\dfrac{b-m}{2a}$ である。
方針:共有点は連立方程式の実数解で与えられる。重解になる点で傾きがそろうことを計算で示す。
段 1(共有点)。点 $(x,y)$ が両方に乗ることは、$y=mx+k$ かつ $ax^2+bx+c=mx+k$、つまり $ax^2+(b-m)x+(c-k)=0$ と同じである。
段 2($D_1=0$ なら接する)。cor-qdsc-double により、$D_1=0$ ならこの方程式は重解 $x_0=-\dfrac{b-m}{2a}$ をもつ。$f(x)=ax^2+bx+c$ とすると $f'(x)=2ax+b$ なので
$$
f'(x_0)=2a\cdot\left(-\frac{b-m}{2a}\right)+b=-(b-m)+b=m
$$
である。点 $(x_0,f(x_0))$ は段 1 により直線上にもあり、傾きが一致するので、直線はこの点で接する。
段 3(接するなら $D_1=0$)。直線が点 $(x_0,f(x_0))$ で接するとする。$f'(x_0)=m$ より $2ax_0+b=m$ で、点が直線上にあるので $f(x_0)=mx_0+k$ である。$g(x):=ax^2+(b-m)x+(c-k)=f(x)-(mx+k)$ とおくと、$g(x_0)=0$ である。$b-m=-2ax_0$ を使うと
$$
g(x)=ax^2-2ax_0x+(c-k),\qquad g(x_0)=ax_0^2-2ax_0^2+(c-k)=0
$$
なので $c-k=ax_0^2$ であり、$g(x)=a(x^2-2x_0x+x_0^2)=a(x-x_0)^2$ となる。よって $x_0$ は重解で、cor-qdsc-double により $D_1=0$ である。$\square$
直線 $y=mx-1$ と放物線 $y=x^2$ を連立すると $x^2-mx+1=0$ で、判別式は $D_1=m^2-4$ である。
図4:点 (0, −1) を通る直線 y = mx − 1 と放物線 y = x²。判別式 m² − 4 が 0 になる m = 2, −2 の 2 本が接線で、接点は (1, 1) と (−1, 1)
傾き $1$ の直線 $y=x+k$ が $y=x^2$ に接する $k$ を求める。連立すると $x^2-x-k=0$ で、$D_1=1+4k$ である。$D_1=0$ より $k=-\dfrac14$ である。接点の $x$ 座標は重解 $x_0=\dfrac12$ で、確かに $(x^2)'=2x$ は $x=\dfrac12$ で $1$ になる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $a\ne0$(2 次式であること) | 判別式が正なら解は 2 つ | ex-qdsc-linear |
| 係数が実数 | $D>0$ なら実数解、$D<0$ なら共役な虚数解 | ex-qdsc-complex-coeff |
| 直線が $y=mx+k$ の形 | 共有点が 1 つなら接する | ex-qdsc-vertical |
$0\cdot x^2+2x+1=0$ に形式的に $b^2-4ac$ を当てはめると $4-0=4>0$ だが、方程式は $2x+1=0$ で、解は $-\dfrac12$ の 1 つだけである。thm-qdsc-main の証明では $a\ne0$ で割っており、lem-qdsc-factor も $2a$ で割っている。$a=0$ では判別式は解について何も教えない。文字を含む方程式では、$x^2$ の係数が $0$ になる場合を別に調べる必要がある。
$x^2-2ix-2=0$ では $D=(-2i)^2-4\cdot1\cdot(-2)=-4+8=4>0$ である。しかし lem-qdsc-factor で $\delta=2$ とすると、解は
$$
x=\frac{2i\pm2}2=1+i,\ -1+i
$$
で、どちらも実数でない。$x=1+i$ を代入して確かめると、$(1+i)^2=1+2i+i^2=2i$、$2i(1+i)=2i+2i^2=2i-2$ なので
$$
(1+i)^2-2i(1+i)-2=2i-(2i-2)-2=0
$$
である。
逆向きの食い違いもある。$(x-1)(x-1-2i)=0$ を展開した
$$
x^2-(2+2i)x+(1+2i)=0
$$
では、$(2+2i)^2=4+8i+4i^2=8i$ なので $D=8i-4(1+2i)=-4<0$ だが、$x=1$ という実数解をもつ。
thm-qdsc-sign の証明 prf-qdsc-sign は実数係数の仮定を使っている。段 1 では $\dfrac{-b\pm\sqrt D}{2a}$ が実数であること($b$ が実数であることが要る)、段 3 では $s=-\dfrac b{2a}$ と $t$ が実数であることを使う。1 つ目の例では $b=-2i$ が実数でないので、$D>0$ でも $\dfrac{-b\pm2}{2}=i\pm1$ は実数にならず、段 1 が成り立たない。2 つ目の例では $D<0$ だが、$s=-\dfrac b{2a}=1+i$ が実数でないので、$\alpha=s+ti$、$\beta=s-ti$($t=1$)の一方 $\beta=1$ が実数になり、段 3 が成り立たない。一方、thm-qdsc-main は複素数係数でも成り立つ。1 つ目の例では $(\alpha-\beta)^2=\bigl((1+i)-(-1+i)\bigr)^2=2^2=4=D$、2 つ目の例では $(\alpha-\beta)^2=\bigl(1-(1+2i)\bigr)^2=(-2i)^2=-4=D$ である。
直線 $x=1$ と放物線 $y=x^2$ の共有点は $(1,1)$ の 1 つだけだが、この直線は放物線に接していない(放物線を横切っている)。直線 $x=1$ は $y=mx+k$ の形に書けないので、prop-qdsc-tangent は使えない。$y=mx+k$ の形の直線では、共有点がちょうど 1 つであることと $D_1=0$ は同値で、そのとき接する。
係数が整数のとき、$D$ が整数の 2 乗なら、解の公式の $\sqrt D$ は整数なので、解は有理数である。
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