Pickの定理(高校数学)

同義語:ピックの定理(高校数学)

概要

Pickの定理(Pick's theorem)とは、頂点がすべて格子点で自分自身と交わらない多角形の面積 $S$ が、内部の格子点の個数 $I$ と周の上の格子点の個数 $B$ で $S=I+\frac B2-1$ と表されるという定理である。多角形を頂点以外に格子点を含まない三角形(基本三角形)に分けると、三角形の個数は分け方によらず $2I+B-2$ で、基本三角形の面積はどれも $\frac12$ なので、公式はこの 2 つの事実の積として得られる。前者は内角の総和を 2 通りに数えて、後者は平行四辺形で平面を覆う議論で示せる。穴のある図形では成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 靴ひも公式, 多角形の内角の和と外角の和, 多角形のJordan曲線定理, 位置ベクトルと内分点

高校での出発点:格子点を数えて面積を出す

座標の $x$ も $y$ も整数である点を 格子点 という。方眼紙の線の交点である。頂点がすべて格子点の多角形の面積は、靴ひも公式 で計算でき、いつも $\frac12$ の整数倍になる(靴ひも公式 の例「格子点の個数から面積を出す」でも触れている)。面積を、格子点の個数だけで出す方法がある。

長方形で数える

長方形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(4,3)$、$(0,3)$ の面積は $4\times3=12$ である。内部の格子点は $x=1,2,3$、$y=1,2$ の $3\times2=6$ 個、周の上の格子点は $4+3+4+3=14$ 個である。内部の個数を $I$、周の上の個数を $B$ とすると
$$ I+\frac B2-1=6+7-1=12 $$
となり、面積と一致する。

三角形で数える

三角形 $(0,0)$、$(3,1)$、$(1,2)$ の面積は、靴ひも公式で $\frac12\lvert3\cdot2-1\cdot1\rvert=\frac52$ である。辺 $(0,0)$–$(3,1)$ の上の点は $y=\frac x3$ を満たすので、$x$ が $0$ と $3$ のとき以外は格子点がない。ほかの 2 辺も同様で、周の上の格子点は 3 頂点だけ、$B=3$ である。内部には $(1,1)$ と $(2,1)$ の $I=2$ 個がある。$I+\frac B2-1=2+\frac32-1=\frac52$ で、やはり面積と一致する。

この式 $S=I+\dfrac B2-1$ が Pick の公式である。この記事では、公式を次の 2 つの事実に分けて証明する。

  1. 多角形を「中にも辺にも格子点を含まない三角形」に分けると、三角形の個数は分け方によらず $2I+B-2$ である。→ thm-pkh-count
  2. そのような三角形の面積は、どれもちょうど $\frac12$ である。→ thm-pkh-half
    2 つを掛けると、面積は $(2I+B-2)\times\frac12=I+\frac B2-1$ となる(cor-pkh-pick)。
    高校の計算この記事で使う道具大学数学で見ると
    多角形の内角の和 $(n-2)\pi$角を格子点ごとに集めて数える曲面の三角形分割と Euler 標数
    靴ひも公式 $\frac12\lvert ad-bc\rvert$格子三角形の面積は $\frac12$ の整数倍格子の基本領域の面積
    ベクトルの分解 $\vec p=s\vec u+t\vec v$平行四辺形で平面を覆う格子の基底

言葉の準備

格子多角形・基本三角形・基本三角形分割
  1. 自分自身と交わらない折れ線で囲まれた多角形(単純多角形)で、頂点がすべて格子点であるものを 格子多角形 という。周は平面を内部と外部に分ける(多角形のJordan曲線定理)。格子多角形 $P$ の内部にある格子点の個数を $I$、周の上にある格子点の個数を $B$ とする。
  2. 頂点が格子点の三角形で、3 つの頂点のほかには、内部にも辺の上にも格子点を含まないものを 基本三角形 という。
  3. 格子多角形 $P$ を、有限個の基本三角形に分けること(三角形どうしは内部が重ならず、合わせると $P$ になる)を、$P$ の 基本三角形分割 という。
基本三角形の例

三角形 $(0,0)$、$(1,0)$、$(0,1)$ は基本三角形で、面積は $\frac12$ である。三角形 $(0,0)$、$(2,1)$、$(1,1)$ も基本三角形である。実際、辺 $(0,0)$–$(2,1)$ の上の点は $y=\frac x2$ で、$0< x< 2$ の整数 $x=1$ では $y=\frac12$ となり格子点でない。ほかの 2 辺は長さ $1$ と $\sqrt2$ の、途中に格子点のない線分である。内部の点は $0< y< 1$ を満たすので、$y$ が整数の格子点はない。面積は $\frac12\lvert2\cdot1-1\cdot1\rvert=\frac12$ で、やはり $\frac12$ である。
一方、三角形 $(0,0)$、$(2,0)$、$(0,1)$ は辺の上に格子点 $(1,0)$ を含むので、基本三角形でない。面積は $1$ である。

格子多角形には、いつも基本三角形分割がある。

基本三角形分割はある

どの格子多角形にも、基本三角形分割がある。

方針:まず対角線で三角形に分け、格子点を含む三角形を割り続ける。割るたびに三角形が増え、増え方には上限があるので、いつか止まる。
段 1(対角線で分ける)。$n$ 角形には内部を通る対角線があり(多角形の内角の和と外角の和 の補題「対角線の存在」)、それで 2 つの多角形に分けることを繰り返すと、$n-2$ 個の三角形に分かれる(同じ記事の系「三角形分割の三角形と対角線の数」)。三角形の頂点はもとの頂点なので、どれも格子点である。
段 2(割る手順)。今の分け方の中に、頂点以外の格子点 $Q$ を含む三角形 $XYZ$ があれば、次のように割る。$Q$ が内部にあれば $QXY$、$QYZ$、$QZX$ の 3 つに、$Q$ が辺 $XY$ の上にあれば $QYZ$、$QXZ$ の 2 つに割る。どの新しい三角形も頂点が格子点で、面積は正である。
段 3(止まる)。頂点が格子点の三角形の面積は、靴ひも公式により $\frac12\lvert\text{整数}\rvert$ で、正なので $\frac12$ 以上である。三角形の面積の和はいつも $P$ の面積 $S$ なので、三角形の個数は $2S$ 以下である。段 2 のたびに個数は 1 以上増えるので、段 2 は有限回で行えなくなる。そのとき、どの三角形も頂点以外の格子点を含まない、つまり基本三角形分割になっている。$\square$

主定理 1:三角形の個数

基本三角形分割の三角形の個数

格子多角形 $P$ のどの基本三角形分割でも、三角形の個数 $T$ は
$$ T=2I+B-2 $$
である。

方針:すべての三角形の内角の総和を、三角形ごとと、格子点ごとの 2 通りに数える。
段 1(三角形ごと)。三角形の内角の和は $\pi$ なので、総和は $T\pi$ である。
段 2(角はどこに集まるか)。三角形の頂点は $P$ の中の格子点である。逆に、$P$ の中の格子点 $X$ はどれかの三角形に含まれ、基本三角形は頂点以外の格子点を内部にも辺の上にも含まないので、$X$ はその三角形の頂点である。さらに $X$ は、どの三角形の辺の途中にも内部にもない。$X$ を中心とする小さな円を、$X$ を含まない三角形とは交わらないようにとると、その円の中で $P$ に入る部分は、$X$ を頂点とする三角形の角の部分(扇形)で、重ならずにすき間なく覆われる。
段 3(格子点ごと)。段 2 から、$X$ に集まる角の和は、$X$ のまわりで $P$ が占める角に等しい。

  • $X$ が $P$ の内部の点なら、まわり全部で $2\pi$。そのような点は $I$ 個ある。
  • $X$ が周の上で $P$ の頂点でないなら、周はそこでまっすぐなので $\pi$。そのような点は $B-n$ 個ある($n$ は $P$ の頂点の数)。
  • $X$ が $P$ の頂点なら、$P$ のその頂点での内角。内角の和は $(n-2)\pi$ である(多角形の内角の和と外角の和 の定理「多角形の内角の和」)。
    よって総和は $2\pi I+\pi(B-n)+(n-2)\pi=\pi(2I+B-2)$ である。
    段 4(比べる)。段 1 と段 3 から $T\pi=\pi(2I+B-2)$、つまり $T=2I+B-2$ である。$\square$

$$ T\pi=\underbrace{2\pi\cdot I}_{\text{内部の点}}+\underbrace{\pi\,(B-n)}_{\text{周の上の頂点でない点}}+\underbrace{(n-2)\pi}_{\text{頂点(内角の和)}} $$

へこんだ五角形で数える

五角形 $(0,0)$、$(6,0)$、$(6,2)$、$(3,1)$、$(0,4)$ は、頂点 $(3,1)$ でへこんでいる。周の上の格子点は、辺 $(0,0)$–$(6,0)$ に $7$ 個、辺 $(6,0)$–$(6,2)$ に $3$ 個、辺 $(6,2)$–$(3,1)$ に $2$ 個(両端だけ。$(6,2)$ から $(3,1)$ へは $x$ が $3$ 減る間に $y$ が $1$ 減るので、途中の $x=5,4$ では $y$ が整数でない)、辺 $(3,1)$–$(0,4)$ に $4$ 個、辺 $(0,4)$–$(0,0)$ に $5$ 個で、頂点を 2 回数えた $5$ 個を引いて $B=7+3+2+4+5-5=16$ である。内部の格子点は $(1,1)$、$(2,1)$、$(1,2)$、$(4,1)$、$(5,1)$ の $I=5$ 個である。主定理 1 から、どう分けても基本三角形は $2\cdot5+16-2=24$ 個になる(図 1)。

へこんだ五角形の基本三角形分割。赤は内部の格子点、緑は周の上の頂点でない格子点、黒の三角は頂点。三角形は 24 個ある へこんだ五角形の基本三角形分割。赤は内部の格子点、緑は周の上の頂点でない格子点、黒の三角は頂点。三角形は 24 個ある

主定理 2:基本三角形の面積

基本三角形の面積は $\frac12$

基本三角形の面積は $\frac12$ である。

この定理の証明では、Pick の公式を使わない。原点 $O$ を頂点の 1 つに平行移動しておく(格子点を格子点に移す平行移動なので、基本三角形は基本三角形に移る)。残りの 2 頂点を $\vec u=(a,b)$、$\vec v=(c,d)$ とすると、面積は靴ひも公式で $\frac12\lvert ad-bc\rvert$ なので、示すことは $\lvert ad-bc\rvert=1$ である。

方針:$\vec u,\vec v$ の張る平行四辺形の中に格子点がないことから、すべての格子点が $m\vec u+n\vec v$($m,n$ は整数)と書けることを示し、$(1,0)$ と $(0,1)$ をそう書いて $ad-bc$ を調べる。$\Delta=ad-bc$ とおく。面積が正なので $\Delta\ne0$ である。
段 1(平行四辺形の中の格子点)。$R=\vec u+\vec v$ とし、平行四辺形 $OURV$($U$、$V$ は $\vec u$、$\vec v$ の点)を、対角線 $UV$ で三角形 $OUV$ と三角形 $RVU$ に分ける。三角形 $OUV$ は基本三角形なので、その中の格子点は $O,U,V$ だけである。点 $X$ を $R-X$ に移す対応(点 $\frac R2$ についての点対称)は、格子点を格子点に移し、三角形 $OUV$ を三角形 $RVU$ に移す($O\mapsto R$、$U\mapsto V$、$V\mapsto U$)。よって三角形 $RVU$ の中の格子点は $R,V,U$ だけである。合わせて、平行四辺形(周も含む)の中の格子点は 4 頂点 $O,U,R,V$ だけである。
段 2(すべての格子点は整数の組で書ける)。$\Delta\ne0$ なので $\vec u,\vec v$ は平行でなく、どの点 $\vec x$ も $\vec x=s\vec u+t\vec v$($s,t$ は実数)とただ 1 通りに書ける(位置ベクトルと内分点)。$\vec x$ が格子点のとき、$m=\lfloor s\rfloor$、$n=\lfloor t\rfloor$ とおくと、
$$ \vec y=\vec x-m\vec u-n\vec v=(s-m)\vec u+(t-n)\vec v,\qquad 0\le s-m< 1,\ 0\le t-n< 1 $$
で、$\vec y$ は格子点から格子点を引いたものなので格子点である。$\vec y$ は平行四辺形の中にあり、段 1 からそれは $O,U,R,V$ のどれかである。$0\le s-m< 1$、$0\le t-n< 1$ なので、$U$($s-m=1$)、$R$、$V$($t-n=1$)ではなく、$\vec y=\vec0$ である。よって $\vec x=m\vec u+n\vec v$ と、整数 $m,n$ で書ける。
段 3($(1,0)$ と $(0,1)$ を書く)。段 2 から $(1,0)=m\vec u+n\vec v$ となる整数 $m,n$ がある。成分で書くと $ma+nc=1$、$mb+nd=0$ である。1 つ目に $d$、2 つ目に $c$ を掛けて引くと $m\Delta=d$、1 つ目に $b$、2 つ目に $a$ を掛けて引くと $-n\Delta=b$ である。同じく $(0,1)=m'\vec u+n'\vec v$ から $m'\Delta=-c$、$n'\Delta=a$ を得る。よって $a,b,c,d$ はどれも $\Delta$ の整数倍である。
段 4(結論)。$a=\Delta a_1$、$b=\Delta b_1$、$c=\Delta c_1$、$d=\Delta d_1$($a_1,b_1,c_1,d_1$ は整数)とすると
$$ \Delta=ad-bc=\Delta^2(a_1d_1-b_1c_1) $$
で、$\Delta\ne0$ で割ると $1=\Delta(a_1d_1-b_1c_1)$ となる。整数 $\Delta$ が $1$ の約数なので $\lvert\Delta\rvert=1$ で、面積は $\frac12$ である。$\square$

図 2 は、基本三角形 $O$、$\vec u=(2,1)$、$\vec v=(1,1)$ の平行四辺形を $m\vec u+n\vec v$ だけ平行移動したものが、平面を重ならずに覆う様子である。どの平行四辺形も、格子点を頂点にしか含まない。
基本三角形(濃い色)と、それを 2 つ合わせた平行四辺形を平行移動した模様。平行四辺形は平面をすき間なく覆い、格子点は頂点にしかない 基本三角形(濃い色)と、それを 2 つ合わせた平行四辺形を平行移動した模様。平行四辺形は平面をすき間なく覆い、格子点は頂点にしかない

格子点を $m\vec u+n\vec v$ で書く

$\vec u=(2,1)$、$\vec v=(1,1)$ では $\Delta=2\cdot1-1\cdot1=1$ である。$(1,0)=m\vec u+n\vec v$ を解くと、$2m+n=1$、$m+n=0$ から $m=1$、$n=-1$ で、$(1,0)=\vec u-\vec v$ である。$(0,1)$ は $2m+n=0$、$m+n=1$ から $m=-1$、$n=2$ で、$(0,1)=-\vec u+2\vec v$ である。どちらも整数の組で書ける。
基本三角形でない $\vec u=(2,0)$、$\vec v=(0,1)$(ex-pkh-primitive の後半)では、$(1,0)=\frac12\vec u$ で、整数の組では書けない。平行四辺形の辺の上に格子点 $(1,0)$ があるからである。このとき $\Delta=2$ である。

Pick の公式

Pick の公式

格子多角形 $P$ の面積 $S$ は
$$ S=I+\frac B2-1 $$
である。

lem-pkh-exists により $P$ には基本三角形分割がある。thm-pkh-count によりその三角形は $2I+B-2$ 個で、thm-pkh-half によりどれも面積 $\frac12$ である。三角形は内部が重ならず合わせて $P$ になるので、$S=(2I+B-2)\times\frac12=I+\frac B2-1$ である。$\square$

四角形で確かめる

四角形 $(0,0)$、$(5,1)$、$(3,4)$、$(1,3)$ の面積は、靴ひも公式で
$$ \frac12\bigl\lvert(0\cdot1-5\cdot0)+(5\cdot4-3\cdot1)+(3\cdot3-1\cdot4)+(1\cdot0-0\cdot3)\bigr\rvert=\frac12(0+17+5+0)=11 $$
である。4 本の辺の方向 $(5,1)$、$(-2,3)$、$(-2,-1)$、$(-1,-3)$ はどれも成分の最大公約数が $1$ なので、辺の途中に格子点はなく $B=4$ である。内部の格子点を数えると $I=10$ で、$I+\frac B2-1=10+2-1=11$ となり一致する。

多角形$I$$B$三角形の数 $2I+B-2$面積
長方形 $4\times3$$6$$14$$24$$12$
三角形 $(0,0),(3,1),(1,2)$$2$$3$$5$$\frac52$
へこんだ五角形$5$$16$$24$$12$
四角形 $(0,0),(5,1),(3,4),(1,3)$$10$$4$$22$$11$

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
穴がない(周が 1 つの折れ線)正方形から正方形をくりぬいた図形三角形の数が $2I+B-2$ より 2 多くなり、面積の式も崩れる
頂点が格子点三角形 $(0,0)$、$(1,0)$、$\left(0,\frac12\right)$一緒に基本三角形分割もなくなり、面積が $I+\frac B2-1$ と合わない
基本三角形(主定理 2)三角形 $(0,0)$、$(2,0)$、$(0,1)$面積が $\frac12$ でなく $1$
平面の中の三角形(主定理 2)空間の Reeve の四面体他に格子点のない四面体でも体積が一定でない
反例:穴のある図形

正方形 $0\le x\le5$、$0\le y\le5$ から、正方形 $1< x< 3$、$1< y< 3$ の内部をくりぬいた図形を考える。周は外側の正方形と内側の正方形の 2 つの折れ線で、格子点は外側に $20$ 個、内側に $8$ 個、$B=28$ である。内部の格子点は $4\times4=16$ 個から、くりぬいた正方形の周と内部の $9$ 個を除いて $I=7$ である。面積は $25-4=21$ で、$I+\frac B2-1=7+14-1=20$ と合わない。
角の数え方で見ると、穴の周の頂点($4$ 個)では図形の角は $\frac32\pi$ で、和は $6\pi$、穴の周の頂点でない点($4$ 個)では $\pi$ である。外側と合わせると総和は $\underbrace{2\pi\cdot7}_{\text{内部}}+\underbrace{2\pi+\pi\cdot16}_{\text{外側の周}}+\underbrace{6\pi+4\pi}_{\text{穴の周}}=42\pi$ で、三角形は $42$ 個、つまり $2I+B-2+2=42$ になる。穴が 1 つ増えるごとに 2 個多くなる。この場合の式は Pickの定理 の命題「穴のある領域に対する公式」で扱っている。

反例:頂点が格子点でない三角形

三角形 $(0,0)$、$(1,0)$、$\left(0,\frac12\right)$ の面積は $\frac14$ である。周の上の格子点は $(0,0)$ と $(1,0)$ の $B=2$、内部の格子点はなく $I=0$ で、$I+\frac B2-1=0$ となり面積と合わない。頂点 $\left(0,\frac12\right)$ が格子点でないので、基本三角形分割(頂点が格子点の三角形への分割)も作れない。面積が $\frac12$ の整数倍でないことからも分かる。

反例:空間の四面体

空間の格子点 $(0,0,0)$、$(1,0,0)$、$(0,1,0)$、$(1,1,k)$($k$ は正の整数)を頂点とする四面体は、頂点のほかに格子点を含まないが、体積は $\frac k6$ で、$k$ によって変わる。主定理 2 の「基本三角形の面積は $\frac12$」の空間版は成り立たない。頂点のほかに格子点を含まないことの確かめも含めて、この四面体は Pickの定理 の反例「3次元のReeveの四面体」で扱っている。

大学数学で見る

基本三角形分割で見た Pick の定理

Bruckner–Thomson–Bruckner は、基本三角形分割がいつもあること、三角形の数が $2I+B-2$ で一定であること、基本三角形の面積が $\frac12$ であることを合わせると Pick の定理になる、という見方を述べている(BTB11 §2.6.3〜§2.6.4)。この記事は、この 3 つを順に証明した。主定理 2 の「原点から見える 2 つの格子点(原点との間に格子点がない点)が作る平行四辺形は、面積が $1$ なら内部に格子点を含まず、面積が $1$ より大きければ内部に格子点を含む」という形の事実は、Hardy と Wright の教科書では、分数の列(Farey 数列)の性質を示すための定理として現れる(HW60 Theorem 34)。格子の中の凸な図形に格子点があるための面積の条件は、Minkowskiの格子点定理 へ続く。

さらに先へ

  • 大学向けの Pickの定理 では、長方形・三角形・対角線による分割の帰納法という別の道筋で公式を証明している。
  • 主定理 2 は、次の Farey数列(高校数学) で、分母が小さい分数の並びの性質を示すのに使う。
  • 円の中の格子点の個数は面積と完全には一致せず、誤差が出る。これは Gaussの円問題 で扱う。
  • 格子点を頂点とする正三角形がないことも、面積が $\frac12$ の整数倍であることから示せる(格子点の正多角形)。

関連項目

参考文献

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