曲率形式(curvature form)とは、主 $G$ 束の接続形式 $\omega$ の外微分を水平方向に制限した Lie 環 $\mathfrak g$ 値の 2 形式 $\Omega$ のことである。構造方程式 $\Omega=d\omega+\frac12[\omega\wedge\omega]$ を満たし、水平で随伴表現により変換するので、随伴束に値をもつ底空間上の 2 形式(局所的には $F=dA+\frac12[A\wedge A]$)として定まる。Bianchi の恒等式 $D\Omega=0$ が成り立ち、同伴ベクトル束では接続の曲率を与える。曲率は水平分布の積分可能性の障害で、平坦であることは局所定数な変換関数をもつことと同値であり、単連結な底空間の上の平坦な接続は自明な接続と同型である。Hopf 束の曲率の積分から Hopf 束が自明でないことが従う。
前提知識: 主束の接続, 主束, 微分形式, Frobeniusの定理
曲率形式(curvature form)とは、主 $G$ 束 $p\colon P\to M$ の接続形式 $\omega$ の外微分を水平方向に制限した、Lie 環 $\mathfrak g$ に値をとる 2 形式 $\Omega$ のことである。$\Omega$ は 構造方程式
$$
\Omega=d\omega+\tfrac12[\omega\wedge\omega]
$$
を満たし、水平で $G$ の作用に対して随伴表現で変換する。そのため $\Omega$ は、随伴表現の同伴ベクトル束 $\mathrm{Ad}(P)$ に値をもつ底空間 $M$ 上の 2 形式(曲率 2 形式 $F$)として定まり、局所切断で書けば $F=dA+\tfrac12[A\wedge A]$ である。
曲率は水平分布の積分可能性の障害である。$\Omega=0$ の接続(平坦な接続)では水平分布が葉層をなし、局所的に水平な切断がとれて変換関数は局所定数になる。底空間が単連結なら、平坦な接続をもつ主束は自明で、接続も自明な接続と同型である。同伴ベクトル束では、曲率形式はベクトル束の接続の曲率 $\nabla\circ\nabla$(接続)を与え、不変多項式を代入すると特性類の微分形式による表示(Chern–Weil理論)が得られる。
この記事では、構造方程式、曲率 2 形式が矛盾なく定まること、Bianchi の恒等式、同伴ベクトル束の曲率との関係、平坦性の特徴づけ、単連結な底空間の上の平坦接続の自明性を証明する。例として Hopf 束の曲率を計算し、その積分から Hopf 束が自明でないことを示す。
記号は 主束の接続 に従う。$G$ は Lie 群、$\mathfrak g$ はその Lie 環、$\mathrm{Ad}$ は随伴表現、$\theta$ は Maurer–Cartan 形式、$A^\#$ は $A\in\mathfrak g$ の基本ベクトル場、$\omega$ は接続形式、$H=\ker\omega$ は水平分布で、$\xi\in T_uP$ の水平成分を $\xi^h$ と書く。$\mathfrak g$ 値の形式 $\alpha\in\Omega^k$、$\beta\in\Omega^l$ の括弧 $[\alpha\wedge\beta]$ は、成分の外積と $\mathfrak g$ の括弧を組み合わせたもので、成分の計算から
$$
[\alpha\wedge\beta]=-(-1)^{kl}[\beta\wedge\alpha],\qquad d[\alpha\wedge\beta]=[d\alpha\wedge\beta]+(-1)^k[\alpha\wedge d\beta]
$$
を満たす。行列 Lie 群では $[\alpha\wedge\beta]=\alpha\wedge\beta-(-1)^{kl}\beta\wedge\alpha$ である。
ベクトル空間 $V$ に値をとる $\eta\in\Omega^k(P;V)$ に対し、
$$
(D\eta)(\xi_0,\dots,\xi_k):=d\eta(\xi_0^h,\dots,\xi_k^h)
$$
で $D\eta\in\Omega^{k+1}(P;V)$ を定め、$\eta$ の共変外微分という。接続形式の共変外微分 $\Omega:=D\omega\in\Omega^2(P;\mathfrak g)$ を接続の曲率形式という。$\Omega=0$ のとき接続は平坦であるという。
$\Omega$ は定義から水平である(垂直ベクトルを 1 つでも入れると $0$)。
曲率形式は
$$
\Omega=d\omega+\tfrac12[\omega\wedge\omega]
$$
を満たす。すなわち $\Omega(\xi,\eta)=d\omega(\xi,\eta)+[\omega(\xi),\omega(\eta)]$ である。とくに水平なベクトル場 $X,Y$ について $\Omega(X,Y)=-\omega([X,Y])$ である。
両辺は交代的な 2 形式なので、各点で接空間を張るベクトル場の組で値が一致すればよい。$T_uP$ の元は $A^\#_u+\xi^h$ と書け、水平ベクトル $\xi^h$ は、$\xi^h$ を値にもつ任意のベクトル場の水平成分をとれば水平なベクトル場に延びる。したがって、基本ベクトル場 $A^\#,B^\#$ と水平なベクトル場 $X,Y$ について、次の 3 つの場合を確かめればよい。外微分は $d\omega(\xi,\eta)=\xi(\omega(\eta))-\eta(\omega(\xi))-\omega([\xi,\eta])$ で計算する。
まず補題:$X$ が水平なら $[A^\#,X]$ も水平である。実際、$A^\#$ の流れは $\phi_t=R_{\exp(tA)}$ であり、Lie 括弧は Lie 微分 $[A^\#,X]_u=\frac{d}{dt}\big|_{t=0}(\phi_{-t})_*X_{\phi_t(u)}$ に等しい(Lie括弧 の命題「Lie 括弧は Lie 微分である」)。接続の条件 $(R_g)_*H=H$ により、右辺の曲線は固定されたベクトル空間 $H_u$ の中を動くので、その微分も $H_u$ に入る。
(1) $A^\#,B^\#$ の場合.$\omega(A^\#)=A$、$\omega(B^\#)=B$ は定数関数であり、主束の接続 の補題「基本ベクトル場と Maurer–Cartan 形式」の 3 により $[A^\#,B^\#]=[A,B]^\#$ なので
$$
d\omega(A^\#,B^\#)+[A,B]=-\omega([A,B]^\#)+[A,B]=0
$$
である。一方、垂直ベクトルの水平成分は $0$ なので $\Omega(A^\#,B^\#)=0$ である。
(2) $A^\#,X$ の場合.$\omega(X)=0$、$\omega(A^\#)=A$ は定数、補題により $\omega([A^\#,X])=0$ なので $d\omega(A^\#,X)=0$ であり、$[\omega(A^\#),\omega(X)]=[A,0]=0$ である。一方 $\Omega(A^\#,X)=d\omega(0,X)=0$ である。
(3) $X,Y$ の場合.$\omega(X)=\omega(Y)=0$ なので右辺は $d\omega(X,Y)$ であり、$X^h=X$、$Y^h=Y$ なので $\Omega(X,Y)=d\omega(X,Y)$ に等しい。さらに $d\omega(X,Y)=-\omega([X,Y])$ である。$\square$
構造方程式は Mic08 19.2 の定理(pp. 232–233、同書では Maurer–Cartan の公式と呼ぶ)にある。$\omega$ の代わりに Maurer–Cartan 形式 $\theta$ をとると、自明束 $M\times G$ の自明な接続 $\mathrm{pr}_2^*\theta$ の曲率は $\mathrm{pr}_2^*(d\theta+\tfrac12[\theta\wedge\theta])=0$(Maurer–Cartan の方程式)である。
要点:$R_g$ は水平分布を保つので水平成分をとる操作と可換であり、$\omega$ の同変性がそのまま $\Omega$ に移る。あとはテンソル的形式と同伴束に値をもつ形式の対応を使う。
1.$(R_g)_*$ は $V$ を $V$ に(主束の接続 の補題「基本ベクトル場と Maurer–Cartan 形式」の 2)、$H$ を $H$ に移すので、$(R_g)_*(\xi^h)=((R_g)_*\xi)^h$ である。よって $(R_g^*\Omega)(\xi,\eta)=d\omega((R_g)_*\xi^h,(R_g)_*\eta^h)=(R_g^*d\omega)(\xi^h,\eta^h)=d(R_g^*\omega)(\xi^h,\eta^h)=\mathrm{Ad}(g^{-1})d\omega(\xi^h,\eta^h)=\mathrm{Ad}(g^{-1})\Omega(\xi,\eta)$ である。水平かつ同変なので $\Omega$ は型 $\mathrm{Ad}$ のテンソル的 2 形式であり、主束の接続 の命題「テンソル的形式と同伴束に値をもつ形式」により $F$ がただ 1 つ定まる。
2.$s_\alpha^*$ は $d$ と括弧 $[\ \wedge\ ]$ と可換なので、構造方程式を引き戻せば $F_\alpha=dA_\alpha+\tfrac12[A_\alpha\wedge A_\alpha]$ である。変換則は同じ命題の後半($s_\beta^*\eta=\rho(g_{\alpha\beta})^{-1}s_\alpha^*\eta$)を $\rho=\mathrm{Ad}$ に使えばよい。行列 Lie 群の形は $\tfrac12[A\wedge A]=A\wedge A$ と $\mathrm{Ad}(g^{-1})X=g^{-1}Xg$ による。$\square$
局所接続形式 $A_\alpha$ の変換則には非斉次項 $g_{\alpha\beta}^*\theta$ があったが(主束の接続 の定理「局所接続形式の変換則と貼り合わせ」)、曲率の変換則は共役だけである。したがって $G$ が可換なら $F_\alpha$ たちは貼り合って $M$ 上の $\mathfrak g$ 値 2 形式になる。$G$ が可換でなければ、$F$ は一般には $\mathfrak g$ 値の形式としては定まらず(局所切断の取り方に依存する)、$\mathrm{Ad}(P)$ に値をもつ形式である。
$D\Omega=0$ である。同値な形として
$$
d\Omega=[\Omega\wedge\omega]
$$
が成り立ち、局所的には $dF_\alpha+[A_\alpha\wedge F_\alpha]=0$、行列 Lie 群では $dF_\alpha=F_\alpha\wedge A_\alpha-A_\alpha\wedge F_\alpha$ である。
構造方程式を微分する。$d\circ d=0$ と括弧の Leibniz 則により
$$
d\Omega=\tfrac12\bigl([d\omega\wedge\omega]-[\omega\wedge d\omega]\bigr)=[d\omega\wedge\omega]
$$
である($d\omega$ は 2 形式、$\omega$ は 1 形式なので $[\omega\wedge d\omega]=-(-1)^{2}[d\omega\wedge\omega]=-[d\omega\wedge\omega]$)。$[d\omega\wedge\omega]$ を水平ベクトル $\xi_0^h,\xi_1^h,\xi_2^h$ で評価すると、各項は $\omega(\xi_i^h)=0$ を因子に含むので $0$ である。よって $D\Omega=0$ である。
次に構造方程式 $d\omega=\Omega-\tfrac12[\omega\wedge\omega]$ を代入すると
$$
d\Omega=[\Omega\wedge\omega]-\tfrac12\bigl[\,[\omega\wedge\omega]\wedge\omega\bigr]
$$
である。基底 $X_a$ で $\omega=\sum\omega^aX_a$ と書くと $\bigl[\,[\omega\wedge\omega]\wedge\omega\bigr]=\sum_{a,b,c}\omega^a\wedge\omega^b\wedge\omega^c\,[\,[X_a,X_b],X_c]$ で、$\omega^a\wedge\omega^b\wedge\omega^c$ は巡回置換で変わらないので、和は $\tfrac13\sum\omega^a\wedge\omega^b\wedge\omega^c\bigl([\,[X_a,X_b],X_c]+[\,[X_b,X_c],X_a]+[\,[X_c,X_a],X_b]\bigr)$ に等しく、Jacobi の恒等式により $0$ である。よって $d\Omega=[\Omega\wedge\omega]$ である。
局所形は $s_\alpha^*$ で引き戻して $dF_\alpha=[F_\alpha\wedge A_\alpha]$ を得、$[A_\alpha\wedge F_\alpha]=-(-1)^{1\cdot2}[F_\alpha\wedge A_\alpha]=-[F_\alpha\wedge A_\alpha]$ を使えばよい。行列 Lie 群では $[F\wedge A]=F\wedge A-A\wedge F$ である。$\square$
$D\Omega=0$ は Mic08 19.5 の定理の (6)(p. 236)である。Riemann 多様体の Levi-Civita 接続に対しては、これが曲率テンソルの第 2 Bianchi 恒等式(リーマン曲率テンソル)にあたる。
要点:$\nabla$ の接続行列は $\rho_*(A_\alpha)$ で、$\rho_*$ は Lie 環の準同型なので $\rho_*(\tfrac12[A\wedge A])=\rho_*(A)\wedge\rho_*(A)$ となる。
主束の接続 の定理「同伴ベクトル束に誘導される接続」により、$V$ の基底と $s_\alpha$ から作る局所枠に関する $\nabla$ の接続行列は $B:=\rho_*(A_\alpha)$ である。接続 の命題「接続行列と曲率行列」の 2 により、曲率行列は $dB+B\wedge B$ である。$\rho_*$ は線形なので $dB=\rho_*(dA_\alpha)$、Lie 環の準同型なので $\rho_*([X,Y])=\rho_*(X)\rho_*(Y)-\rho_*(Y)\rho_*(X)$ であり、$A_\alpha=\sum A^aX_a$ と書くと $\rho_*(\tfrac12[A_\alpha\wedge A_\alpha])=\tfrac12\sum A^a\wedge A^b\bigl(\rho_*(X_a)\rho_*(X_b)-\rho_*(X_b)\rho_*(X_a)\bigr)=B\wedge B$ である。よって曲率行列は $\rho_*(F_\alpha)$ である。枠束では $\rho=\mathrm{id}$ である。$\square$
MS74 Appendix C(p. 294)では接続行列を $\nabla s_i=\sum_j\omega_{ij}\otimes s_j$ と転置の向きで定めるので、曲率行列は $\Omega=d\omega-\omega\wedge\omega$ の形になる。どちらの規約でも曲率は共役 $F\mapsto g^{-1}Fg$ で変換するので、共役で不変な多項式 $P$ に代入した $P(F)$ は $M$ 上の微分形式として定まる。同書は Bianchi の恒等式を使って $P(F)$ が閉形式であることを示し(Fundamental Lemma、pp. 296–298)、その de Rham 類が接続によらないことを導いている(同書 p. 298 の Corollary)。これが Chern–Weil理論 の出発点である(この記事では証明しない)。
主 $G$ 束 $P$ の接続形式 $\omega$ について、次は同値である。
1 ⇔ 2.水平なベクトル場 $X,Y$ について、構造方程式により $\omega([X,Y])=-\Omega(X,Y)$ である。したがって $H$ が包合的であることと、$\Omega$ が $H\times H$ の上で $0$ であることは同値であり、$\Omega$ は水平なので後者は $\Omega=0$ と同値である。
2 ⇒ 3.Frobenius の定理(Frobeniusの定理、Lee13 Theorem 19.12)により、$u\in P$ を通る $H$ の積分多様体 $N$ が、平板座標の切り口として局所的に埋め込まれた部分多様体としてとれる。$T_uP=V_u\oplus H_u$ で $V_u=\ker dp_u$ なので、$dp_u\colon T_uN=H_u\to T_{p(u)}M$ は同型である。逆関数定理により、$p|_N$ は $u$ の近傍から $p(u)$ の開近傍 $U$ への微分同相を与え、その逆 $s\colon U\to N\subset P$ は $C^\infty$ な局所切断である。$ds(T_xM)\subset TN=H$ なので $s^*\omega=0$ である。
3 ⇒ 4.3 の切断 $s_\alpha$ で $M$ を覆う。$s_\beta=s_\alpha g_{\alpha\beta}$ のとき、局所接続形式の変換則(主束の接続 の定理「局所接続形式の変換則と貼り合わせ」の 2)から
$$
0=s_\beta^*\omega=\mathrm{Ad}(g_{\alpha\beta}^{-1})\cdot0+g_{\alpha\beta}^*\theta
$$
であり、$\theta_g\colon T_gG\to\mathfrak g$ は同型なので $dg_{\alpha\beta}=0$、すなわち $g_{\alpha\beta}$ は局所定数である。
4 ⇒ 1.$A_\alpha=s_\alpha^*\omega=0$ なので、prop-cf-curvature-2form の 2 により $F_\alpha=s_\alpha^*\Omega=0$ である。$\Omega$ はテンソル的なので $p^{-1}(U_\alpha)$ 上で成分 $F_\alpha$ から決まり(主束の接続 の命題「テンソル的形式と同伴束に値をもつ形式」)、$\Omega=0$ である。
最後の主張:平坦なら 4 の族がとれる。逆に変換関数 $g_{\alpha\beta}$ が局所定数なら、$g_{\alpha\beta}^*\theta=0$ なので $A_\alpha:=0$ の族は変換則を満たし、主束の接続 の同じ定理の 3 により $s_\alpha^*\omega=0$ となる接続形式 $\omega$ がある。これは 4 ⇒ 1 により平坦である。$\square$
曲率が水平分布の積分可能性の障害であることは Mic08 17.4(p. 203)に、平坦な接続が局所的に水平な枠をもち変換関数が局所定数になることは、ベクトル束の場合について MS74 Appendix C(p. 294)に述べられている。ベクトル束の場合の同じ主張は 接続 の定理「可積分接続の局所水平枠」でもある。
$M$ を連結かつ単連結(単連結空間)とし、$\omega$ を主 $G$ 束 $P$ の平坦な接続とする。このとき大域的な切断 $s\colon M\to P$ で $s^*\omega=0$ となるものが存在する。したがって同型 $M\times G\to P$、$(x,g)\mapsto s(x)g$ があり、これで $\omega$ は自明な接続 $\mathrm{pr}_2^*\theta$ に移る。
thm-cf-flat の 4 の族 $\{(U_\alpha,s_\alpha)\}$ をとる。$G^\delta$ を離散位相を入れた $G$ とし、$\bigsqcup_\alpha U_\alpha\times G^\delta$ に $(\beta,x,h)\sim(\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)h)$ で同値関係を入れた商空間を $P^\delta$、射影を $\pi[\alpha,x,h]:=x$ とする(コサイクル条件から同値関係である)。$g_{\alpha\beta}$ は局所定数なので $h\mapsto g_{\alpha\beta}(x)h$ は $(U_\alpha\cap U_\beta)\times G^\delta$ の同相写像を与え、主束 の補題「貼り合わせ」の証明の位相に関する部分と同じ議論により、$\Phi_\alpha\colon U_\alpha\times G^\delta\to\pi^{-1}(U_\alpha)$、$(x,h)\mapsto[\alpha,x,h]$ は開集合の上への同相写像である。$U_\alpha$ を連結にとっておけば、$\pi^{-1}(U_\alpha)$ は $U_\alpha$ と同相な開集合 $\Phi_\alpha(U_\alpha\times\{h\})$($h\in G$)の非交和なので、$\pi$ は被覆写像である(被覆空間)。
$M$ は多様体なので弧状連結かつ局所弧状連結で、単連結である。持ち上げの判定法(Hat02 Proposition 1.33)により、恒等写像 $M\to M$ は $\pi$ に沿って連続写像 $\sigma\colon M\to P^\delta$ に持ち上がる。$U_\alpha$ 上で $\sigma(x)=[\alpha,x,k_\alpha(x)]$ と書くと、$k_\alpha\colon U_\alpha\to G^\delta$ は連続、すなわち局所定数であり、$[\beta,x,k_\beta(x)]=[\alpha,x,g_{\alpha\beta}(x)k_\beta(x)]$ から
$$
k_\alpha=g_{\alpha\beta}\,k_\beta\qquad(U_\alpha\cap U_\beta\text{ 上})
$$
である。そこで $U_\alpha$ 上で $s(x):=s_\alpha(x)k_\alpha(x)$ とおくと、$U_\alpha\cap U_\beta$ 上で $s_\beta k_\beta=s_\alpha g_{\alpha\beta}k_\beta=s_\alpha k_\alpha$ なので $s$ は大域的な $C^\infty$ 切断である。変換則により $s^*\omega=\mathrm{Ad}(k_\alpha^{-1})s_\alpha^*\omega+k_\alpha^*\theta=0$ である($k_\alpha$ は局所定数なので $k_\alpha^*\theta=0$)。主束 の命題「主束の基本性質」の 1 により $(x,g)\mapsto s(x)g$ は同型であり、主束の接続 の定理「局所接続形式の変換則と貼り合わせ」の 1 により、この同型で $\omega$ を引き戻したものは $\mathrm{Ad}(g^{-1})\cdot0+\mathrm{pr}_2^*\theta=\mathrm{pr}_2^*\theta$ である。$\square$
単連結な底空間の上の平坦なベクトル束が大域的な水平枠をもち自明になることは、MS74 Appendix C(p. 294)にも述べられている。単連結でない $M$ の上では、平坦な接続は基点のまわりの閉曲線に沿う平行移動(ホロノミー)で表現 $\pi_1(M,x)\to G$ を定め、平坦な接続をもつ主束は $P^\delta$ のような「構造群が離散な束」と同じものになる(この記事では証明しない。Mic08 19.7 の Theorem (8)、p. 240、証明は p. 243)。ベクトル束の場合の局所系・基本群の表現との対応は 接続 と 局所系 にある。
平坦性は特性類にも制約を与える。Chern–Weil の理論により、平坦な接続をもつ実ベクトル束の有理係数の Pontryagin 類(Pontryagin類 の定義「Pontryagin 類」)と、平坦な接続をもつ複素ベクトル束の有理係数の Chern 類(Chern類)はすべて $0$ である(MS74 Appendix C, Corollary 2、p. 308。この記事では証明しない)。曲率が $0$ なら不変多項式に代入した形式がすべて $0$ になることがその理由である。
主束の接続 の例「Hopf 束の標準接続」の $\omega=\bar z_1dz_1+\bar z_2dz_2$ を考える。$\mathrm U(1)$ は可換なので $[\omega\wedge\omega]=0$ で、構造方程式は $\Omega=d\omega$ となり、曲率 2 形式 $F$ は $S^2=\mathbb{CP}^1$ 上の $i\mathbb R$ 値 2 形式である(prop-cf-curvature-2form の後の注意)。$U_2$ の座標 $w=x+iy$ では、局所接続形式 $A_2=(\bar w\,dw-w\,d\bar w)/(2(1+|w|^2))$ を微分して
$$
F=dA_2=\frac{d\bar w\wedge dw}{(1+|w|^2)^2}=\frac{2i\,dx\wedge dy}{(1+x^2+y^2)^2}
$$
を得る($d(\bar w\,dw-w\,d\bar w)=2\,d\bar w\wedge dw$ と $d(1+|w|^2)=\bar w\,dw+w\,d\bar w$ から計算し、$d\bar w\wedge dw=2i\,dx\wedge dy$ を使う)。$S^2\setminus U_2$ は 1 点なので、極座標で
$$
\int_{S^2}F=\int_{\mathbb R^2}\frac{2i\,dx\,dy}{(1+x^2+y^2)^2}=2i\cdot2\pi\int_0^\infty\frac{r\,dr}{(1+r^2)^2}=2\pi i
$$
である(向きは $w$ の複素構造から定まる向き)。
Hopf 束は自明でない。大域切断 $s$ があれば、$F=s^*\Omega=d(s^*\omega)$ は $S^2$ 上の完全形式であり、Stokes の定理(Stokesの定理)により $\int_{S^2}F=0$ となって上の計算に反する。したがって $S^3\to S^2$ は大域切断をもたず、主束 の命題「主束の基本性質」の 1 により自明でない。とくに $S^3$ は $S^2\times S^1$ と $\mathrm U(1)$ 同変には同型でない。
$P=\mathbb R^2\times\mathrm{SU}(2)$ と、$0$ でない定数行列 $X,Y\in\mathfrak{su}(2)$ で $[X,Y]\neq0$ となるもの(例えば Pauli 行列に $i$ を掛けたもの)をとり、$A:=X\,dx+Y\,dy$ を局所接続形式とする接続を考える(主束の接続 の例「自明束のゲージ場」)。$dA=0$ であるが、$[A\wedge A]=[X,Y]\,dx\wedge dy+[Y,X]\,dy\wedge dx=2[X,Y]\,dx\wedge dy$ なので
$$
F=dA+\tfrac12[A\wedge A]=[X,Y]\,dx\wedge dy\neq0
$$
である。したがってこの接続は平坦でなく、thm-cf-flat により局所的にも水平な切断はない。可換な群では $F=dA$ なので、$dA=0$ と平坦性が一致する。
1 次元の多様体の上では 2 形式は $0$ なので、どの接続も平坦である。$M=S^1$(角度座標 $\phi$)の自明束 $S^1\times\mathrm U(1)$ に局所接続形式 $A=ia\,d\phi$($a\in\mathbb R$)の接続を入れる。曲線 $\gamma(t)=e^{it}$($0\le t\le2\pi$)の水平持ち上げは $g'=-iag$ を解いて $g(t)=e^{-iat}$ なので、1 周の平行移動は $e^{-2\pi ia}$ を掛けることである(主束の接続 の定理「水平持ち上げと平行移動」)。接続を保つ主束の同型は水平持ち上げを水平持ち上げに移すので、$a\notin\mathbb Z$ ならこの接続は自明な接続(1 周の平行移動が恒等写像)と同型でない。束そのものは自明であるにもかかわらず、平坦な接続としては自明でない。$S^1$ は単連結でないので thm-cf-simply-connected に反しない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 底空間の単連結性 | 二重被覆 $S^1\to S^1$、$z\mapsto z^2$(主 $\mathbb Z/2$ 束)/ex-cf-circle の接続($a\notin\mathbb Z$) | 平坦でも束が自明でない/束が自明でも接続が自明な接続と同型でない |
| 構造群の可換性 | ex-cf-nonabelian の $A=X\,dx+Y\,dy$ | $dA=0$ から平坦性が従わない。また $F$ は一般には $\mathfrak g$ 値の形式としては定まらない |
| 主束の接続であること($G$ 同変性) | $\mathbb R\times\mathbb R\to\mathbb R$ の水平分布 $\mathbb R(\partial_s+(1+y^2)\partial_y)$ | 水平分布は包合的で底空間 $\mathbb R$ は単連結だが、大域的な水平切断がない |
1 行目の前半:構造群 $\mathbb Z/2$ は離散群で $\mathfrak g=0$ なので、接続形式は $\omega=0$ ただ 1 つ(水平分布は $TP$ 全体)で、曲率は $0$ である。全空間 $S^1$ は連結なので、大域切断があればその像は開かつ閉な真部分集合になって矛盾し、束は自明でない(主束 の例「被覆空間と Möbius 束」)。後半は ex-cf-circle で示した。どちらも thm-cf-simply-connected の単連結性の仮定が外せないことを示す。
2 行目:定数行列 $h\in\mathrm{SU}(2)$ によるゲージ変換 $s'=sh$ で $F$ の成分は $h^{-1}Fh$ に変わり(prop-cf-curvature-2form の 2)、$h$ が $[X,Y]$ と可換でなければ異なる。したがって $F$ は $\mathfrak g$ 値の 2 形式としては切断の選び方に依存し、$\mathrm{Ad}(P)$ に値をもつ形式としてしか定まらない。
3 行目:主束の接続 の反例の表の 2 行目と同じ分布である。底空間が 1 次元なので水平分布は包合的で(Mic08 17.4 の意味の曲率は $0$)、葉(水平な曲線)は $y=\tan(s-t_0)$ の形であるが、どの葉も $s$ の長さ $\pi$ の区間の上にしかなく、$\mathbb R$ 全体の上の水平切断はない(Mic08 17.6、p. 204)。この分布はファイバーの平行移動 $y\mapsto y+c$ で不変でないので、主 $\mathbb R$ 束の接続ではない。thm-cf-simply-connected の証明では、変換関数が局所定数になって被覆空間が作れることに $G$ 同変性を使っている。
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