コンパクト台de Rhamコホモロジー(compactly supported de Rham cohomology)とは、多様体 $M$ 上の台がコンパクトな微分形式の複体 $\Omega^\bullet_c(M)$ のコホモロジー $H^\bullet_c(M)$ である。固有写像で引き戻され、開集合から零延長で押し出されるが、ホモトピー不変ではなく、Mayer–Vietoris 完全列は普通の版と逆向きに進む。$M\times\mathbb R$ と $M$ では次数が $1$ ずれて同型になり、$H^\bullet_c(\mathbb R^n)$ は次数 $n$ の $\mathbb R$ だけで積分が同型を与える。向き付けられた多様体の Poincaré 双対で普通の版の相手になり、開いた Möbius の帯ではすべての次数で $0$ になる。
前提知識: de Rhamコホモロジー, 固有写像, 1の分割, ファイバーに沿った積分
コンパクト台 de Rham コホモロジー(compactly supported de Rham cohomology)とは、多様体 $M$ 上の台がコンパクトな微分形式だけで作った de Rham 複体 $\Omega^\bullet_c(M)$ のコホモロジー $H^\bullet_c(M)$ である。$\mathbb R^n$ の普通の de Rham コホモロジーは 1 点と同じだが、コンパクト台の版は次数 $n$ にだけ $\mathbb R$ が現れ、その類は「全積分が $1$ の山形の $n$ 形式」で代表される。
コンパクト台の形式は、固有写像でしか引き戻せない代わりに、開集合から全体へ $0$ で延ばして押し出せる。このため $H^\bullet_c$ はホモトピー不変ではなく、Mayer–Vietoris 完全列は普通の版と矢印の向きが逆になる。向き付けられた多様体では、積分の対 $H^q(M)\times H^{n-q}_c(M)\to\mathbb R$ が Poincaré 双対を与え、コンパクトでない多様体の双対定理の片方の相手になる。
この記事では、定義と関手性を述べたあと、$M\times\mathbb R$ と $M$ のコンパクト台コホモロジーが次数を $1$ ずらして同型であること(コンパクト台の Poincaré の補題)をホモトピー作用素を書いて証明し、$H^\bullet_c(\mathbb R^n)$ を求める。コンパクト台の Mayer–Vietoris 完全列を示し、2 点を除いた平面と開いた Möbius の帯を計算する。後者は普通のコホモロジーが $0$ でないのにコンパクト台の版がすべて $0$ になり、向きの仮定が Poincaré 双対に欠かせないことを示す。
多様体は Hausdorff で第 2 可算な、境界のない $C^\infty$ 級多様体とする。$\Omega^q(M)$ は $M$ 上の $C^\infty$ 級 $q$ 形式の空間で、$q<0$ なら $0$ とする。形式 $\omega$ の台 $\operatorname{supp}\omega$ は $\{x\in M\mid\omega_x\ne0\}$ の閉包である。
台がコンパクトな $q$ 形式の全体を $\Omega^q_c(M)$ と書く。$\operatorname{supp}d\omega\subset\operatorname{supp}\omega$ なので、$(\Omega^\bullet_c(M),d)$ は de Rham 複体 $\Omega^\bullet(M)$ の部分複体である。そのコホモロジー
$$
H^q_c(M):=\frac{\{\omega\in\Omega^q_c(M)\mid d\omega=0\}}{\{d\eta\mid\eta\in\Omega^{q-1}_c(M)\}}
$$
を $M$ の $q$ 次のコンパクト台 de Rham コホモロジーという。
分母は $\Omega^{q-1}_c(M)$ の形式の外微分に限る。コンパクト台の閉形式が普通の意味で完全でも、原始形式をコンパクト台にとれるとは限らない。$M$ がコンパクトなら $\Omega^\bullet_c(M)=\Omega^\bullet(M)$ であり、$H^\bullet_c(M)=H^\bullet(M)$(普通の de Rham コホモロジー)である。
0 次では完全形式がないので、$H^0_c(M)$ はコンパクト台の閉 $0$ 形式、すなわち局所定数でコンパクト台の関数の全体である。$M$ が連結なら局所定数関数は定数であり、$0$ でない定数関数の台は $M$ 全体なので、$M$ がさらにコンパクトでなければ $H^0_c(M)=0$ である。
1 は $\operatorname{supp}f^*\omega\subset f^{-1}(\operatorname{supp}\omega)$ と $f^*d=df^*$ から従う。2 では、$K:=\operatorname{supp}\omega$ が $U$ のコンパクト集合なので $M$ の閉集合でもあり、$M$ は 2 つの開集合 $U$ と $M\setminus K$ で覆われ、$j_*\omega$ は前者で $\omega$、後者で $0$ に等しいので $C^\infty$ 級である。$d$ との可換性は局所的な等式である。$\square$
$H^\bullet_c$ は固有写像について反変、開集合の包含について共変な関手になる(BT82 §2, p. 26)。
普通の de Rham コホモロジーと違い、$H^\bullet_c$ はホモトピー不変でない。$\mathbb R$ と 1 点は同じホモトピー型をもつが、$H^1_c(\mathbb R)\cong\mathbb R$ である(下の cor-csdr-euclid)。実際、コンパクト台の $1$ 形式 $g(t)\,dt$ が $df$($f$ はコンパクト台)と書けることは $\int_{\mathbb R}g\,dt=0$ と同値で、全積分が $0$ でない山形の形式は完全でない(BT82 Example 1.6, p. 18)。定数写像 $\mathbb R\to\{\text{点}\}$ は固有でないので、その引き戻しはコンパクト台の版では定義されない。
$M$ を多様体、$\pi\colon M\times\mathbb R\to M$ を射影、$t$ を $\mathbb R$ の座標とする。$M\times\mathbb R$ 上の $q$ 形式 $\omega$ は、$dt$ を含まない $q$ 形式 $\alpha$ と $q-1$ 形式 $\beta$(どちらも係数が $t$ にもよる)によって
$$
\omega=\alpha+\beta\wedge dt
$$
と一意に書ける。$\omega$ がコンパクト台なら、ファイバー $\mathbb R$ に沿った積分(ファイバーに沿った積分、ファイバーの向きは $t$ の増える向き)は
$$
\pi_*\omega=\int_{-\infty}^{\infty}\beta(\cdot,s)\,ds\in\Omega^{q-1}_c(M)
$$
であり(ファイバーに沿った積分 の命題「定義の整合性と局所表示」)、台は $\pi(\operatorname{supp}\omega)$ に含まれる。同じ記事の定理「ファイバーに沿った積分の性質」の 1 により $\pi_*d=d\pi_*$ である。
逆向きの写像を作るため、コンパクト台の $C^\infty$ 級関数 $\rho\colon\mathbb R\to\mathbb R$ で $\int_{\mathbb R}\rho=1$ となるものを 1 つ固定し、
$$
e_*\colon\Omega^q_c(M)\to\Omega^{q+1}_c(M\times\mathbb R),\qquad e_*\varphi:=\pi^*\varphi\wedge\rho(t)\,dt
$$
とおく。$d(\rho(t)dt)=0$ なので $de_*=e_*d$ であり、射影公式(同じ定理の 2)により $\pi_*e_*\varphi=\varphi\int\rho=\varphi$ である。
任意の多様体 $M$ とすべての $q$ について、
$$
\pi_*\colon H^{q+1}_c(M\times\mathbb R)\longrightarrow H^q_c(M)
$$
は同型であり、逆写像は $e_*$ である。
$\pi_*e_*=1$ は形式の段階で成り立つので、閉形式 $\omega\in\Omega^{q}_c(M\times\mathbb R)$ について $\omega-e_*\pi_*\omega$ がコンパクト台の形式の外微分であることを示せばよい。
作用素 $K$.$A(t):=\int_{-\infty}^t\rho(s)\,ds$ とおく。$\omega=\alpha+\beta\wedge dt\in\Omega^q_c(M\times\mathbb R)$ について $J:=\pi_*\omega$、$I(t):=\int_{-\infty}^t\beta(\cdot,s)\,ds$ とし、
$$
K\omega:=I(t)-A(t)\,\pi^*J
$$
と定める($dt$ を含まない $q-1$ 形式)。$\operatorname{supp}\omega\subset C\times[-R,R]$($C\subset M$ はコンパクト)で、$\operatorname{supp}\rho\subset[-R,R]$ となる $R$ をとる。$t<-R$ では $I(t)=0$、$A(t)=0$ であり、$t>R$ では $I(t)=J$、$A(t)=1$ なので、どちらでも $K\omega=0$ である。$C$ の外でも $K\omega=0$ なので、$K\omega$ はコンパクト台をもつ。被積分関数はコンパクト台の $C^\infty$ 級関数なので、$K\omega$ は $C^\infty$ 級で、$M$ の方向の外微分 $d_M$ は $s$ についての積分と交換する。
外微分の分解.$dt$ を含まない $p$ 形式 $\gamma=\sum_Ig_I(x,t)\,dx_I$($x$ は $M$ の局所座標)について、$dt\wedge dx_I=(-1)^{p}dx_I\wedge dt$ なので
$$
d\gamma=d_M\gamma+(-1)^p\,\partial_t\gamma\wedge dt\qquad\Bigl(d_M\gamma:=\sum_Id_xg_I\wedge dx_I,\ \ \partial_t\gamma:=\sum_I\partial_tg_I\,dx_I\Bigr)
$$
である。$d(\beta\wedge dt)=d\beta\wedge dt=d_M\beta\wedge dt$ だから
$$
d\omega=d_M\alpha+\bigl((-1)^q\partial_t\alpha+d_M\beta\bigr)\wedge dt .
$$
計算.$\alpha$ は $t$ についてコンパクト台なので $\int_{-\infty}^{\infty}\partial_s\alpha\,ds=0$、$\int_{-\infty}^t\partial_s\alpha\,ds=\alpha$ である。よって
$$
K(d\omega)=(-1)^q\alpha+\int_{-\infty}^td_M\beta\,ds-A(t)\,\pi^*d_MJ .
$$
一方、$\partial_tI=\beta$、$\partial_tA=\rho$ と上の分解($p=q-1$)から
$$
d(K\omega)=\int_{-\infty}^td_M\beta\,ds-A(t)\,\pi^*d_MJ+(-1)^{q-1}\bigl(\beta-\rho\,\pi^*J\bigr)\wedge dt .
$$
差をとると
$$
d(K\omega)-K(d\omega)=(-1)^{q-1}\bigl(\alpha+\beta\wedge dt-\rho\,\pi^*J\wedge dt\bigr)=(-1)^{q-1}\bigl(\omega-e_*\pi_*\omega\bigr)
$$
となる。$q=0$ では $\beta=0$、$K\omega=0$ で、同じ式が成り立つ。
結論.$\omega$ が閉なら $\omega-e_*\pi_*\omega=(-1)^{q-1}d(K\omega)$ であり、$K\omega$ はコンパクト台なので、$e_*\pi_*=1$ が $H^\bullet_c(M\times\mathbb R)$ の上で成り立つ。$\pi_*e_*=1$ と合わせて、$\pi_*$ と $e_*$ は互いに逆の同型である。$\square$
次数 $q$ の部分で $H:=(-1)^{q-1}K$ とおけば、上の式は $dH+Hd=1-e_*\pi_*$ という普通のホモトピーの形になる。この証明は BT82 Proposition 4.6・4.7(pp. 38–39)と同じ作用素によるが、ここでは $dt$ を右に置く分解で計算を書いた。普通の de Rham コホモロジーでは $H^q(M\times\mathbb R)\cong H^q(M)$ と次数がずれない(de Rhamコホモロジー の系「ホモトピー不変性と Poincaré の補題」)のに対し、コンパクト台では次数が $1$ ずれる。Thom同型 の補題「垂直コンパクト台の Poincaré の補題」は、台の条件を垂直方向だけにした同じ型の主張である。
$n\ge0$ について、$H^q_c(\mathbb R^n)\cong\mathbb R$($q=n$)、$H^q_c(\mathbb R^n)=0$($q\ne n$)である。同型 $H^n_c(\mathbb R^n)\to\mathbb R$ は積分 $[\omega]\mapsto\int_{\mathbb R^n}\omega$(標準の向き)で与えられ、全積分が $1$ のコンパクト台の $n$ 形式が生成元である。
$\mathbb R^0$ は 1 点でコンパクトなので $H^\bullet_c(\mathbb R^0)$ は次数 $0$ の $\mathbb R$ である。$\mathbb R^n=\mathbb R^{n-1}\times\mathbb R$ に thm-csdr-poincare を $n$ 回使うと $H^q_c(\mathbb R^n)\cong H^{q-n}_c(\mathbb R^0)$ を得る。最後の座標から順に積分する合成は、Fubini の定理(ファイバーに沿った積分 の定理「ファイバーに沿った積分の性質」の 3。座標 $(x_1,\dots,x_{n-1},t)$ の向きは標準の向き)により $\int_{\mathbb R^n}$ に等しい。$\square$
これは BT82 Corollary 4.7.1(p. 39)で、特異コホモロジーの版は コンパクト台コホモロジー の定理「Euclid 空間のコンパクト台コホモロジー」である。生成元の台はいくらでも小さくとれる。
$M=U\cup V$ を開集合 $U,V$ の和とし、$j$ で各開集合の包含による零延長を表す。列
$$
0\longrightarrow\Omega^q_c(U\cap V)\xrightarrow{\ \omega\mapsto(-j_*\omega,\ j_*\omega)\ }\Omega^q_c(U)\oplus\Omega^q_c(V)\xrightarrow{\ (a,b)\mapsto j_*a+j_*b\ }\Omega^q_c(M)\longrightarrow0
$$
は完全であり、写像はどれも $d$ と可換である。したがって長完全列
$$
\cdots\to H^q_c(U\cap V)\to H^q_c(U)\oplus H^q_c(V)\to H^q_c(M)\xrightarrow{\ d_*\ }H^{q+1}_c(U\cap V)\to\cdots
$$
がある。
最初の写像の単射性と、2 つの写像の合成が $0$ であることは明らかである。
中央.$j_*a+j_*b=0$ とする。$U\setminus V$ の上では $b=0$ なので $a=0$ であり、$a$ が $0$ でない点の集合は $U\cap V$ に含まれ、$b$ が $0$ でない点の集合と一致する。その $M$ での閉包 $F$ は、$U$ のコンパクト集合 $\operatorname{supp}a$ にも $V$ のコンパクト集合 $\operatorname{supp}b$ にも含まれるので、コンパクトで $U\cap V$ に含まれる。よって $\omega:=b|_{U\cap V}=-a|_{U\cap V}$ はコンパクト台をもち、$(a,b)=(-j_*\omega,j_*\omega)$ である。
右端.$\{\rho_U,\rho_V\}$ を $\{U,V\}$ に従属する 1 の分割(1の分割)とする。$\omega\in\Omega^q_c(M)$ について $\rho_U\omega$ の台は、閉集合 $\operatorname{supp}\rho_U$ とコンパクト集合 $\operatorname{supp}\omega$ の交わりなのでコンパクトで、$U$ に含まれる。よって $\rho_U\omega\in\Omega^q_c(U)$、同様に $\rho_V\omega\in\Omega^q_c(V)$ であり、その和は $\omega$ である。
長完全列は、複体の短完全列の長完全列(長完全列 の定理「複体の短完全列の長完全列」)による。$\square$
これは BT82 Proposition 2.7・(2.8)(p. 26)である。普通の de Rham コホモロジーの Mayer–Vietoris 完全列は制限で $H^q(M)\to H^q(U)\oplus H^q(V)\to H^q(U\cap V)$ と進む(Čech–de Rham複体 の定理「一般化 Mayer–Vietoris 原理」の 2 つの開集合の場合)のに対し、コンパクト台では零延長で逆向きに進む。
$H^0_c(\mathbb R)=0$、$H^1_c(\mathbb R)\cong\mathbb R$(cor-csdr-euclid)である。円周 $S^1$ はコンパクトなので $H^\bullet_c(S^1)=H^\bullet(S^1)$ で、次数 $0$ と $1$ に $\mathbb R$ が現れる。円周を 2 つの開弧 $U,V$ で覆うと、$U\cap V$ は 2 つの開弧で、prop-csdr-mv の列 $0\to H^0_c(S^1)\to H^1_c(U\cap V)\cong\mathbb R^2\to H^1_c(U)\oplus H^1_c(V)\cong\mathbb R^2\to H^1_c(S^1)\to0$ からも同じ答えが出る(中央の写像の階数は $1$。BT82 Example 2.9, p. 27)。
$P\ne Q$ を平面の 2 点とし、$X:=\mathbb R^2\setminus\{P,Q\}$ とする。$H^0_c(X)=0$、$H^1_c(X)\cong\mathbb R^2$、$H^2_c(X)\cong\mathbb R$ であり、ほかの次数は $0$ である。$H^2_c(X)\to\mathbb R$ は積分で与えられ、$H^1_c(X)$ は $d\chi_P$、$d\chi_Q$ の類を基底にもつ。ここで $\chi_P$ は $P$ の近くで $1$、$P$ を中心とする小さな閉円板 $D_P$($Q\notin D_P$)の外で $0$ の $C^\infty$ 級関数であり、$\chi_Q$ も同様である。
要点:コンパクト台の形式を $\mathbb R^2$ へ $0$ で延ばし、cor-csdr-euclid で $\mathbb R^2$ の上の原始形式をとり、$P$、$Q$ の近くで修正する。$1$ 次では、原始関数の $P$、$Q$ での値が修正できない量として残る。
$X$ は弧状連結でコンパクトでないので $H^0_c(X)=0$ である。$\iota\colon X\hookrightarrow\mathbb R^2$ を包含とし、$D_P$、$D_Q$ を交わらない閉円板とする。
2 次.$\beta\in\Omega^2_c(X)$ について $\int_X\beta=\int_{\mathbb R^2}\iota_*\beta$ とおく。完全形式 $d\eta$($\eta\in\Omega^1_c(X)$)の積分は Stokes の定理により $0$ なので、積分は $H^2_c(X)\to\mathbb R$ を定め、$X$ の中の小さな山形の形式で全射である。$\int\beta=0$ なら、cor-csdr-euclid により $\iota_*\beta=d\eta$ となる $\eta\in\Omega^1_c(\mathbb R^2)$ がある。$\beta$ は $P$、$Q$ の近傍で $0$ なので、$D_P$、$D_Q$ を十分小さくとれば $\eta$ はその内部で閉であり、円板の上の Poincaré の補題(de Rhamコホモロジー の系「ホモトピー不変性と Poincaré の補題」の 2)により、内部で $\eta=df_P$、$\eta=df_Q$ となる関数がある。$P$ の近くで $1$、$D_P$ の内部にコンパクト台をもつ関数 $\theta_P$ をとり($\theta_Q$ も同様)、$\eta':=\eta-d(\theta_Pf_P)-d(\theta_Qf_Q)$ とおくと、$\eta'$ は $P$、$Q$ の近くで $0$ なので $X$ 上のコンパクト台の形式で、$d\eta'=\beta$ である。よって積分は同型である。
1 次.$\alpha\in\Omega^1_c(X)$ を閉形式とする。$\iota_*\alpha$ は $\mathbb R^2$ 上のコンパクト台の閉形式で、$H^1_c(\mathbb R^2)=0$ なので $\iota_*\alpha=df$ となる $f\in\Omega^0_c(\mathbb R^2)$ がある。$f$ は一意である(2 つの差は連結な $\mathbb R^2$ の上で定数で、コンパクト台なので $0$)。$\alpha$ は $P$、$Q$ の近傍で $0$ なので、$f$ はそこで定数である。$\Lambda(\alpha):=(f(P),f(Q))\in\mathbb R^2$ とおく。$\alpha=dg$($g\in\Omega^0_c(X)$)なら $f=\iota_*g$ で $\Lambda(\alpha)=0$ なので、$\Lambda$ は $H^1_c(X)\to\mathbb R^2$ を定める。単射:$\Lambda(\alpha)=0$ なら $f$ は $P$、$Q$ の近傍で $0$ であり、$f|_X$ は $X$ のコンパクト集合に台をもつので $\alpha=d(f|_X)$ は $H^1_c(X)$ で $0$ である。全射:$\Lambda(d\chi_P)=(1,0)$、$\Lambda(d\chi_Q)=(0,1)$ である($d\chi_P$ は $P$ の近傍で $0$ なのでコンパクト台の閉形式)。
3 次以上の形式は $0$ である。$\square$
$d\chi_P$ は $\mathbb R^2$ 全体では完全形式 $d\chi_P$ だが、$\chi_P$ は $P$ の近くで $1$ なので $X$ 上のコンパクト台の関数ではなく、$X$ では完全でない。普通のコホモロジーでは $H^1(X)\cong\mathbb R^2$、$H^2(X)=0$ であり、下の Poincaré 双対 $H^q(X)\cong H^{2-q}_c(X)^*$ と次元が合っている。
開いた Möbius の帯を、$\mathbb R\times\mathbb R$ を $\tau(t,s):=(t+1,-s)$ が生成する群 $\mathbb Z$ の作用で割った多様体
$$
B:=(\mathbb R\times\mathbb R)/\bigl((t,s)\sim(t+1,-s)\bigr)
$$
として扱う($\mathbb Z$ は自由かつ固有不連続に作用するので $B$ は 2 次元多様体で、商写像 $p$ は局所微分同相である)。$B$ は向き付け可能でない(Möbiusの帯 の注意「Möbius の帯は向き付け可能でない」)。
$H^0(B)\cong H^1(B)\cong\mathbb R$、$H^q(B)=0$($q\ge2$)であるが、コンパクト台 de Rham コホモロジーはすべての次数で $H^q_c(B)=0$ である。
要点:普通のコホモロジーは芯の円周と同じである。コンパクト台では、2 枚の開集合への Mayer–Vietoris 完全列で、交わりの 2 成分の一方で座標の向きが反転するため、接続の写像が $\det=2$ の行列になる。
普通のコホモロジー.$r([t,s]):=t+\mathbb Z\in\mathbb R/\mathbb Z$、$c(t+\mathbb Z):=[t,0]$ は $C^\infty$ 級で $r\circ c=\mathrm{id}$ であり、$F([t,s],u):=[t,(1-u)s]$ は $\mathrm{id}_B$ と $c\circ r$ を結ぶ $C^\infty$ 級ホモトピーである($\tau$ と両立する)。ホモトピー不変性(de Rhamコホモロジー の系「ホモトピー不変性と Poincaré の補題」の 1)により $H^\bullet(B)\cong H^\bullet(S^1)$ である。
コンパクト台.$B$ は連結でコンパクトでないので $H^0_c(B)=0$ である。$U:=p\bigl((-0.1,0.6)\times\mathbb R\bigr)$、$V:=p\bigl((0.4,1.1)\times\mathbb R\bigr)$ とおくと、長さ $1$ 未満の帯の上で $p$ は単射なので、$p$ は $U$、$V$ の座標 $(t,s)$、$(t',s')$ を与え、どちらも $\mathbb R^2$ に微分同相である。$U\cap V$ は $A:=p\bigl((0.4,0.6)\times\mathbb R\bigr)$ と $B_0:=p\bigl((-0.1,0.1)\times\mathbb R\bigr)$ の交わらない和で、$A$ の上では $(t',s')=(t,s)$、$B_0$ の上では $(t',s')=(t+1,-s)$ であり、後者の座標変換の Jacobi 行列式は $-1$ である。
cor-csdr-euclid により、$U$、$V$、$A$、$B_0$ の $H^1_c$ は $0$、$H^2_c$ は $\mathbb R$ で、それぞれ座標 $(t,s)$($V$ では $(t',s')$)についての積分が同型を与える。$a$、$b$ を $A$、$B_0$ の中に台をもち座標 $(t,s)$ についての積分が $1$ の 2 形式とする。prop-csdr-mv の写像 $\omega\mapsto(-j_*\omega,j_*\omega)$ を積分で表すと、$U$ の座標では $a$、$b$ の積分はどちらも $1$、$V$ の座標では $a$ の積分は $1$、$b$ の積分は向きの反転により $-1$ である。よって $H^2_c(U\cap V)\cong\mathbb R^2\to H^2_c(U)\oplus H^2_c(V)\cong\mathbb R^2$ は行列 $\begin{pmatrix}-1&-1\\1&-1\end{pmatrix}$($\det=2$)で表され、同型である。長完全列の部分 $0=H^1_c(U)\oplus H^1_c(V)\to H^1_c(B)\to H^2_c(U\cap V)\to H^2_c(U)\oplus H^2_c(V)\to H^2_c(B)\to H^3_c(U\cap V)=0$ から $H^1_c(B)=H^2_c(B)=0$ を得る。$\square$
これは BT82 Exercise 4.8(p. 40)が求める計算である。同じ計算を開いた円柱 $S^1\times\mathbb R=(\mathbb R\times\mathbb R)/\bigl((t,s)\sim(t+1,s)\bigr)$ で行うと、$B_0$ の上の座標変換は $(t,s)\mapsto(t+1,s)$ で向きを保つので、$b$ の $V$ での積分も $+1$ になり、行列は $\det=0$ の $\begin{pmatrix}-1&-1\\1&1\end{pmatrix}$ になって $H^1_c\cong H^2_c\cong\mathbb R$ となる。違いは貼り合わせが向きを反転するかどうかだけである。
$M$ を向き付けられた $n$ 次元多様体とする。$\omega\in\Omega^q(M)$、$\eta\in\Omega^{n-q}_c(M)$ について $\int_M\omega\wedge\eta$ は Stokes の定理によりコホモロジー類だけで決まり、対
$$
H^q(M)\times H^{n-q}_c(M)\to\mathbb R
$$
を定める。$M$ が有限個の開集合からなる良い開被覆をもつとき、これは完全対である(Poincaré双対 の定理「de Rham コホモロジーの双対」、BT82 §5, pp. 44–46)。有限性を外すと、$H^{n-q}_c(M)\cong H^q(M)^*$ は一般には成り立たない。有限型の多様体の可算個の非交和では $H^q$ が直積、$H^{n-q}_c$ が直和になるためである(BT82 Remark 5.7, pp. 46–47)。連結で向き付けられた $M$ では積分が同型 $H^n_c(M)\cong\mathbb R$ を与える(Lee12 Theorem 17.30, p. 454。この記事では証明しない)ので、連結な $M$ の小さな山形の $n$ 形式はどこに置いても同じ類を表す。
prop-csdr-mobius の $B$ では $H^0(B)\cong\mathbb R$ だが $H^2_c(B)=0$ で、向きの仮定を外すと双対が崩れる。prop-csdr-two-points では $H^1_c(X)\cong\mathbb R^2\cong H^1(X)^*$ で、双対と合っている。
有限の良い被覆をもつ多様体 $M$、$N$ については Künneth の公式 $H^\bullet_c(M\times N)\cong H^\bullet_c(M)\otimes H^\bullet_c(N)$ も成り立つ(BT82 Exercise 5.12, p. 50 が演習として挙げている。この記事では証明しない)。$N=\mathbb R$ の場合が thm-csdr-poincare である。
特異コホモロジーのコンパクト台版(コンパクト台コホモロジー)とは、向き付けられて有限の良い被覆をもつ $M$ なら、実ベクトル空間として同型である。実際、上の完全対と de Rham の定理(de Rhamコホモロジー の定理「de Rham の定理:特異コホモロジーとの同型」)、体係数の普遍係数定理により $H^q_c(M)\cong H^{n-q}(M;\mathbb R)^*\cong H_{n-q}(M;\mathbb R)$ であり(有限次元性は良い被覆による)、右辺は特異版の Poincaré 双対(Poincaré双対 の定理「コンパクトでない多様体の双対」)により $H^q_c(M;\mathbb R)$ と同型である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 写像の固有性 | 定数写像 $\mathbb R\to\{\text{点}\}$ | 引き戻しがコンパクト台を保つこと(点の定数関数 $1$ の引き戻しは $\mathbb R$ 上の定数 $1$) |
| 同相(ホモトピー同値に弱める) | $\mathbb R$ と 1 点 | $H^\bullet_c$ が一致すること($H^1_c(\mathbb R)\cong\mathbb R$) |
| 多様体の向き付け可能性 | 開いた Möbius の帯 $B$ | Poincaré 双対 $H^0(B)\cong H^2_c(B)^*$ と、連結な多様体で $H^n_c\cong\mathbb R$ |
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