原始関数(antiderivative)とは、区間 $I$ 上の関数 $f$ に対して、$I$ の各点で微分可能で $F'=f$ を満たす関数 $F$ のことである。$I$ が区間なら原始関数どうしの差は定数に限られ、原始関数の全体を $\int f(x)\,dx=F(x)+C$ と書くが、定義域が区間でなければ連結成分ごとに別の定数を加えられる。連続関数は必ず原始関数をもち、微分積分学の基本定理により定積分は $F(b)-F(a)$ で計算できる。一方、導関数の片側極限は、存在すればその点での導関数の値に等しいので、符号関数のように跳びのある関数は原始関数をもたない。$x\ne0$ で $\sin\frac{1}{x}$ となる関数は、$0$ での値が $0$ のときに限り原始関数をもち、その 2 乗は原始関数をもたない。
前提知識: 導関数, 区間, 平均値の定理, 微分積分学の基本定理
微分すると $\cos x$ になる関数は $\sin x$ であり、$\sin x+5$ も同じである。このように、与えられた関数 $f$ に対して、微分すると $f$ になる関数 $F$ を $f$ の原始関数(antiderivative, primitive function)という。原始関数は微分の「逆」をとる操作であり、微分積分学の基本定理 により、原始関数が 1 つ分かれば定積分は $F(b)-F(a)$ として計算できる。
原始関数については、次の 3 つの問いが基本になる。
以下、区間はつねに 2 点以上を含むものとする。
$I\subset\mathbb{R}$ を区間、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を関数とする。関数 $F\colon I\to\mathbb{R}$ が $I$ の各点で微分可能で、すべての $x\in I$ について $F'(x)=f(x)$ を満たすとき、$F$ を $f$ の $I$ 上の原始関数という。$I$ が端点を含むとき、端点での微分係数は片側の極限で定める(導関数 の記事の定義「微分可能性と微分係数」)。
より一般に、開集合 $U\subset\mathbb{R}$ 上の関数 $f$ について、$U$ の各点で微分可能で $F'=f$ となる $F\colon U\to\mathbb{R}$ を $f$ の $U$ 上の原始関数という。
$f$ の $I$ 上の原始関数の全体を
$$
\int f(x)\,dx=F(x)+C
$$
と書くことが多い。これは「$F$ が 1 つの原始関数で、原始関数の全体は $\{F+C\mid C\in\mathbb{R}\}$ である」ことの略記であり、$\int f(x)\,dx$ を $f$ の不定積分、$C$ を積分定数という。この略記が正しいのは $I$ が区間のときに限る(prop-antider-open-set)。
原始関数は「関数」についての概念で、定積分 $\int_a^bf(x)\,dx$ は「数」である。両者は別物であり、微分積分学の基本定理 によって初めて結びつく(Leb p. 181 も、積分と原始関数の混同に注意している)。
$I$ を区間、$F$ を $f$ の $I$ 上の原始関数とする。$G\colon I\to\mathbb{R}$ が $f$ の $I$ 上の原始関数であることと、ある定数 $C$ について $G=F+C$ であることは同値である。
$G=F+C$ なら $G'=F'=f$ である。逆に $G$ も原始関数なら $(G-F)'=0$ なので、平均値の定理 の記事の系「導関数が0なら定数」により $G-F$ は $I$ 上で定数である(微分積分学の基本定理 の記事の系「連続関数の原始関数」の後半と同じ議論)。$\square$
定義域が区間でないと、この結論は崩れる。開集合の上では、次のように「つながった部分ごと」に定数を選べる。
$U\subset\mathbb{R}$ を空でない開集合とする。
1:$x\in U$ について、$x$ を含み $U$ に含まれる開区間全体の和集合を $J_x$ とする。$U$ は開集合なので、そのような開区間は少なくとも 1 つある。$x$ を共通に含む区間の和集合は区間であり(その 2 点 $y< z$ をとると、$y$ を含む区間と $z$ を含む区間はともに $x$ を含むので、合わせて $[y,z]$ を含む)、開区間の和集合なので開集合であるから、$J_x$ は $U$ に含まれる開区間で、$x$ を含むものの中で最大である。$J_x\cap J_y\ne\emptyset$ なら $J_x\cup J_y$ は共通の点を含む 2 つの開区間の和として $U$ に含まれる開区間であり、$x$ を含むので $J_x$ の最大性から $J_x\cup J_y\subset J_x$、同様に $\subset J_y$ となって $J_x=J_y$ である。よって $\{J_x\mid x\in U\}$ は $U$ を互いに交わらない開区間に分け、各 $J_x$ は $U$ に含まれる開区間の中で極大である。逆に、$U$ に含まれる極大な開区間 $J$ は、その点 $x$ について $J\subset J_x$ なので $J=J_x$ であり、分け方はただ 1 通りである。
2:$G=F+c_\lambda$($J_\lambda$ 上)なら $G'=F'=f$ である。逆に $G$ も原始関数なら、$G-F$ は各開区間 $J_\lambda$ 上で微分可能で導関数が $0$ なので、prop-antider-interval と同じく 平均値の定理 の記事の系「導関数が0なら定数」により $J_\lambda$ 上で定数である。
$f$ が $[a,b]$ を含む区間の上で連続で、$F$ がその区間での原始関数なら、$\int_a^bf(x)\,dx=F(b)-F(a)$ である(微分積分学の基本定理 の記事の定理「原始関数による積分の計算」)。原始関数が $[a,b]$ 全体で定義されていることが必要である。
$f(x)=\frac1{x^2}$ の $\mathbb{R}\setminus\{0\}$ 上の原始関数の 1 つは $F(x)=-\frac1x$ である。形式的に $F(1)-F(-1)=-1-1=-2$ と計算すると、正の関数の「積分」が負になるという誤りが生じる。$F$ は $0$ で定義されず、$[-1,1]$ 上の原始関数ではない。実際、$f$ は $0$ の近くで有界でないので $[-1,1]$ 上で Riemann 積分可能でなく、$\int_\varepsilon^1\frac{dx}{x^2}=\frac1\varepsilon-1\to\infty$ なので広義積分としても発散する。
原始関数の計算には、微分の公式を逆に読んだものと、部分積分・置換積分が使われる。
| $f(x)$ | 原始関数 $F(x)$ | 区間 |
|---|---|---|
| $x^\alpha$($\alpha\ne-1$) | $\frac{x^{\alpha+1}}{\alpha+1}$ | $(0,\infty)$($\alpha$ が $0$ 以上の整数なら $\mathbb{R}$) |
| $\frac1x$ | $\log\lvert x\rvert$ | $(0,\infty)$ または $(-\infty,0)$ |
| $e^x$ | $e^x$ | $\mathbb{R}$ |
| $\cos x$、$\sin x$ | $\sin x$、$-\cos x$ | $\mathbb{R}$ |
| $\frac1{1+x^2}$ | $\arctan x$ | $\mathbb{R}$ |
連続関数は必ず原始関数をもつ(次節)が、原始関数が初等関数で書けるとは限らない。たとえば $e^{-x^2}$ の原始関数は初等関数では書けず(この記事では証明しない)、$\operatorname{erf}(x)=\frac2{\sqrt\pi}\int_0^xe^{-s^2}ds$ のように積分で定義される(Leb p. 203、初等関数で表せない原始関数)。
$f$ が区間 $I$ 上で連続なら、$d\in I$ を 1 つ選んで $F(x):=\int_d^xf(t)\,dt$ とおけば、$F$ は $f$ の $I$ 上の原始関数である(微分積分学の基本定理 の記事の系「連続関数の原始関数」)。したがって連続性は原始関数が存在するための十分条件である。必要条件ではないことは、あとの thm-antider-oscillating で見る。
導関数は連続とは限らない(導関数 の記事の例「反例:導関数が連続でない微分可能な関数」)。しかし、導関数の不連続点は「跳び」ではありえない。次の定理がこれを述べ、同時に、原始関数をつなぎ合わせるときの道具にもなる。
$I$ を区間、$c\in I$ とし、$c$ は $I$ の右端でないとする。$F\colon I\to\mathbb{R}$ は $c$ で右に連続で、$(c,c+\eta)\subset I$ となる $\eta>0$ について $(c,c+\eta)$ の各点で微分可能であるとする。右側極限 $L:=\lim_{x\to c+0}F'(x)$ が実数として存在するならば、$F$ の $c$ での右側微分係数が存在して $L$ に等しい:
$$
\lim_{x\to c+0}\frac{F(x)-F(c)}{x-c}=L.
$$
左側についても同じことが成り立つ。
$\varepsilon>0$ をとる。$L$ の定義から、$0<\delta\le\eta$ を、$c< t< c+\delta$ ならば $|F'(t)-L|<\varepsilon$ となるようにとる。$c< x< c+\delta$ とすると、$F$ は $[c,x]$ 上で連続($c$ では右に連続、$(c,x]$ では微分可能なので連続)、$(c,x)$ 上で微分可能なので、平均値の定理 により
$$
\frac{F(x)-F(c)}{x-c}=F'(\xi)
$$
となる $\xi\in(c,x)$ がある。$c<\xi< c+\delta$ なので $\left|\frac{F(x)-F(c)}{x-c}-L\right|=|F'(\xi)-L|<\varepsilon$ である。$\varepsilon$ は任意なので主張が成り立つ。左側は $x\mapsto F(-x)$ に当てればよい。
この定理は Leb Proposition 4.2.10(p. 167)と同じ内容で、同書は証明を Exercise 4.2.13(p. 170)としている。
$F$ が区間 $I$ 上で微分可能で $f:=F'$ とする。$c\in I$ で $f$ の右側極限 $\lim_{x\to c+0}f(x)$ が存在すれば、それは $f(c)$ に等しい。左側も同じである。したがって、$f$ が $c$ で不連続なら、$f$ の左右の片側極限の少なくとも一方は存在しない。
$F$ は $c$ で微分可能なので右に連続であり、thm-antider-one-sided により右側微分係数は $\lim_{x\to c+0}f(x)$ に等しい。一方、$F$ は $c$ で微分可能なので右側微分係数は $F'(c)=f(c)$ である。左側も同様である。両側の極限が存在して $f(c)$ に等しければ $f$ は $c$ で連続なので、最後の主張が従う。
$f(x)=|x|$ の $\mathbb{R}$ 上の原始関数を求める。$x>0$ では $\frac{x^2}2$、$x<0$ では $-\frac{x^2}2$ が原始関数なので、$F(x):=\frac{x|x|}2$ とおく。$F$ は $\mathbb{R}$ 上で連続で、$x\ne0$ では $F'(x)=|x|$ である。$\lim_{x\to0}F'(x)=0$ なので、thm-antider-one-sided を左右に使うと $F$ は $0$ で微分可能で $F'(0)=0=f(0)$ である。よって $F$ は $\mathbb{R}$ 上の原始関数で、原始関数の全体は $\frac{x|x|}2+C$ である。左右で別の定数を加えると $0$ で連続でなくなり、微分可能でもなくなる。
より強く、区間上の導関数は中間値の性質をもつ(Darboux の定理):$F$ が $[a,b]$ 上で微分可能で $y$ が $F'(a)$ と $F'(b)$ の真に間にある数($F'(a)< y< F'(b)$ または $F'(a)>y>F'(b)$)なら、$F'(c)=y$ となる $c\in(a,b)$ がある。この記事では証明しない(Leb Theorem 4.2.11、p. 167)。cor-antider-no-jump は、跳びのある関数を除外するだけならこの定理を使わずに済むことを示している。次節で見るように、中間値の性質をもつことは原始関数が存在するための十分条件ではない。
連続でない関数が原始関数をもつ典型的な例は、$0$ の近くで激しく振動する関数である。実数 $c$ について
$$
s_c(x):=\begin{cases}\sin\dfrac1x&(x\ne0)\\ c&(x=0)\end{cases}
$$
とおく。$s_c$ は $0$ で左右どちらの片側極限ももたない($x_k=\frac1{2k\pi+\pi/2}$ で値 $1$、$y_k=\frac1{2k\pi-\pi/2}$ で値 $-1$ をとり、どちらの列も $0$ に近づく。負の側も同様)ので、cor-antider-no-jump は $s_c$ が原始関数をもつかどうかを決めない。
$s_c$ が $\mathbb{R}$ 上の原始関数をもつのは、$c=0$ のとき、かつそのときに限る。
$c=0$ のとき。 $\varphi(x):=x^2\cos\frac1x$($x\ne0$)、$\varphi(0):=0$ とおく。$x\ne0$ では積の微分法と連鎖律により
$$
\varphi'(x)=2x\cos\frac1x+x^2\cdot\Bigl(-\sin\frac1x\Bigr)\cdot\Bigl(-\frac1{x^2}\Bigr)=2x\cos\frac1x+\sin\frac1x
$$
である。$x=0$ では $\left|\frac{\varphi(x)-\varphi(0)}{x}\right|=\left|x\cos\frac1x\right|\le|x|$ なので $\varphi'(0)=0$ である。次に $h(x):=2x\cos\frac1x$($x\ne0$)、$h(0):=0$ とおくと、$|h(x)|\le2|x|$ なので $h$ は $0$ で連続であり、$0$ 以外でも連続である。微分積分学の基本定理 の記事の系「連続関数の原始関数」により、$H(x):=\int_0^xh(t)\,dt$ は $\mathbb{R}$ 上で $H'=h$ を満たす。$G:=\varphi-H$ とおくと、$x\ne0$ で $G'(x)=\varphi'(x)-h(x)=\sin\frac1x$、$x=0$ で $G'(0)=0-0=0$ である。よって $G'=s_0$ であり、$G$ は $s_0$ の原始関数である。
$c\ne0$ のとき。 $s_c$ が原始関数 $K$ をもつと仮定する。$K-G$ は $\mathbb{R}$ 上で微分可能で、$(K-G)'=s_c-s_0=c\,\delta_0$($\delta_0$ は ex-antider-no-antiderivative の 2 の関数)である。$c\,\delta_0$ は $0$ で右側極限 $0$ をもつので、cor-antider-no-jump により $c\,\delta_0(0)=0$、すなわち $c=0$ となり、仮定に反する。
$c\in[-1,1]$ なら、$s_c$ は中間値の性質をもつ。実際、$a< b$ で $y$ が $s_c(a)$ と $s_c(b)$ の間にあるとき、$0\notin[a,b]$ なら $s_c$ は $[a,b]$ 上で連続なので中間値の定理による。$0\in[a,b]$ なら、$(a,b)$ は $(0,\varepsilon)$ または $(-\varepsilon,0)$ の形の区間を含み、そこで $\sin\frac1x$ は $[-1,1]$ のすべての値をとる。$s_c$ の値はすべて $[-1,1]$ に入るので $y\in[-1,1]$ であり、$y$ は $(a,b)$ でとられる。したがって $s_{1/2}$ は、中間値の性質をもつが原始関数をもたない関数である。
$s_0$ は原始関数をもつが、その 2 乗 $s_0^2$ は $\mathbb{R}$ 上の原始関数をもたない。
$x\ne0$ では $s_0(x)^2=\sin^2\frac1x=\frac12-\frac12\cos\frac2x$ であり、$s_0(0)^2=0$ である。まず $u(x):=\cos\frac2x$($x\ne0$)、$u(0):=0$ が原始関数をもつことを示す。$\psi(x):=x^2\sin\frac2x$($x\ne0$)、$\psi(0):=0$ は、prf-antider-oscillating と同じ計算で $\mathbb{R}$ 上微分可能で、$\psi'(x)=2x\sin\frac2x-2\cos\frac2x$($x\ne0$)、$\psi'(0)=0$ である。$k(x):=2x\sin\frac2x$($x\ne0$)、$k(0):=0$ は連続なので原始関数 $K$ をもち、$\frac12(K-\psi)$ の導関数は、$x\ne0$ で $\cos\frac2x$、$x=0$ で $0$ である。よって $u$ は原始関数 $U:=\frac12(K-\psi)$ をもつ。
すると $w(x):=\frac12-\frac12u(x)$ は原始関数 $\frac x2-\frac12U(x)$ をもち、$w(0)=\frac12$、$x\ne0$ で $w(x)=s_0(x)^2$ である。つまり $s_0^2=w-\frac12\delta_0$ である。$s_0^2$ が原始関数をもつなら、$\frac12\delta_0=w-s_0^2$ も原始関数をもつことになるが、これは ex-antider-no-antiderivative の 2 に反する。
原始関数をもつ関数の全体は、和と定数倍について閉じている(原始関数の和と定数倍をとればよい)が、積については閉じていない。連続関数の全体が積について閉じていることとの違いである。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 定義域が区間 | $\frac1x$($\mathbb{R}\setminus\{0\}$ 上) | 原始関数どうしの差が定数であること |
| 原始関数が $[a,b]$ 全体で定義される | $\frac1{x^2}$ と $-\frac1x$($[-1,1]$) | $\int_a^bf=F(b)-F(a)$ |
| 跳びがない | $\operatorname{sgn}$ | 原始関数をもつこと(Riemann 積分可能ではある) |
| 片側極限が値と一致 | $\delta_0$ | 原始関数をもつこと |
| 中間値の性質で十分か | $s_{1/2}$ | 原始関数をもつこと(中間値の性質はもつ) |
| 積について閉じているか | $s_0$ と $s_0^2$ | $s_0^2$ が原始関数をもつこと |
| 連続性は必要か | $s_0$ | 連続でないのに原始関数をもつ |
それぞれの確認は、ex-antider-components、ex-antider-gap、ex-antider-no-antiderivative、thm-antider-oscillating とその直後の段落、cor-antider-product で行った。逆に、原始関数をもつが Riemann 積分可能でない関数もある(微分積分学の基本定理 の記事の例「反例:導関数が積分可能でない場合」)。原始関数をもつこと、Riemann 積分可能であること、連続であることの関係をまとめると次のとおりである(積分可能性は有界閉区間 $[-1,1]$ 上で考える)。
| 関数 | 連続 | Riemann 積分可能 | 原始関数をもつ |
|---|---|---|---|
| $x^2$ | ○ | ○ | ○ |
| $\operatorname{sgn}$ | × | ○ | × |
| $s_0$ | × | ○ | ○ |
| $x^2\sin\frac1{x^2}$ の導関数 | × | × | ○ |
$s_0$ が積分可能なのは、有界で不連続点が $0$ だけだからである(Leb Theorem 5.2.9、p. 196)。
複素平面の領域 $G$ 上の関数 $f$ について、$G$ 上で正則で $F'=f$ となる $F$ を $f$ の原始関数という(Beck Definition 4.2.1、p. 65)。実数の場合と違い、定義域が連結でも原始関数があるとは限らない。$f(z)=\frac1z$ は $\mathbb{C}\setminus\{0\}$ 上で正則だが、単位円周に沿った積分が $2\pi i\ne0$ なので、$\mathbb{C}\setminus\{0\}$ 上の原始関数をもたない。原始関数があれば閉じた道に沿った積分は $0$ になるからである(Beck Corollary 4.2.7・Example 4.2.8、p. 65)。$\mathbb{C}\setminus\{x\in\mathbb{R}\mid x\le0\}$ の上では、対数関数の主枝が原始関数になる(同 Example 4.2.4)。原始関数の存在と積分の道によらないことの関係は Cauchyの積分定理 の主題である。
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