放物線(parabola)とは、点 $F$(焦点)と $F$ を通らない直線 $\ell$(準線)から等距離にある点全体である。焦点 $(p,0)$、準線 $x=-p$($p\ne0$)の放物線は $y^2=4px$、焦点 $(0,p)$、準線 $y=-p$ の放物線は $x^2=4py$ で表される。2 次関数 $y=ax^2+bx+c$($a\ne0$)のグラフは、焦点 $\left(-\frac b{2a},\frac{4ac-b^2+1}{4a}\right)$、準線 $y=\frac{4ac-b^2-1}{4a}$ の放物線であり、逆に準線が $x$ 軸に平行な放物線は 2 次関数のグラフである。どの 2 つの放物線も相似で、開き方の違いは縮尺の違いにすぎない。
前提知識: 2点間の距離, 2次関数の最大・最小, 直線の方程式と点と直線の距離
数学 I では、2 次関数 $y=ax^2+bx+c$ のグラフを 放物線 と呼んだ。数学 C では、放物線を「定点と定直線から等距離にある点の集まり」と定義し直し、方程式 $y^2=4px$ を習う。同じ名前の 2 つの曲線が本当に同じものかを、まず数で確かめる。
グラフ $y=\frac14x^2$ の上の点と、点 $F(0,1)$、直線 $\ell:y=-1$ を考える。点 $P$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $H$ とする。
放物線 y=x²/4 の上の点 P(4,4)、P(−6,9) から焦点 F(0,1) までの距離と準線 y=−1 までの距離がそれぞれ 5 と 10 で等しいことを見る図
グラフ $y=x^2$ では、点 $F\left(0,\frac14\right)$ と直線 $y=-\frac14$ で同じことが起こる。$P(1,1)$ では $PF=\sqrt{1+\frac9{16}}=\frac54$、$PH=1+\frac14=\frac54$ である。$P(2,4)$ では $PF=\sqrt{4+\frac{225}{16}}=\sqrt{\frac{289}{16}}=\frac{17}4$、$PH=4+\frac14=\frac{17}4$ である。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 距離を 2 乗して整理する | 1 回の 2 乗で同値になる | thm-par-standard |
| 平方完成して頂点を求める | 焦点は頂点から $\frac1{4a}$ だけ上($a>0$ のとき) | thm-par-graph |
| $y=ax^2$ の $a$ を変える | すべての放物線は互いに相似 | thm-par-similar |
平面上の点 $F$ と、$F$ を通らない直線 $\ell$ について、$F$ までの距離と $\ell$ までの距離が等しい点 $P$ 全体を、$F$ を 焦点、$\ell$ を 準線 とする 放物線 という。$F$ を通り $\ell$ に垂直な直線を 軸、軸と放物線の交点を 頂点 という。
点 $P$ と直線 $\ell$ の距離は、$P$ から $\ell$ に下ろした垂線の足 $H$ との距離 $PH$ である。頂点は、$F$ から $\ell$ に下ろした垂線の足を $K$ とすると、線分 $FK$ の中点である(軸の上で $PF=PH$ を満たす点は中点だけ)。$F$ が $\ell$ の上にあるときを除く理由は ex-par-degenerate で見る。この定義と標準形 $y^2=4px$、$x^2=4py$ は Abr21 §10.3 にもある。
$p\ne0$ とする。
方針:$PF$ と $PH$ を座標で書き、2 乗して整理する。楕円・双曲線と違い、根号は 1 つしかない。
段 1(距離を書く)。1 の場合、点 $P(x,y)$ について $PF=\sqrt{(x-p)^2+y^2}$ である。$\ell:x=-p$ は $y$ 軸に平行なので、垂線の足は $H(-p,y)$ で、$PH=|x+p|$ である。
段 2(2 乗する)。$PF\ge0$、$PH\ge0$ なので、$PF=PH$ と $PF^2=PH^2$ は同値である($PF^2-PH^2=(PF-PH)(PF+PH)$ で、$PF+PH=0$ なら両方 $0$)。$PF^2=PH^2$ は
$$
(x-p)^2+y^2=(x+p)^2
$$
で、$(x+p)^2-(x-p)^2=4px$ なので $y^2=4px$ と同値である。
段 3(2 の場合)。$x$ と $y$ の役を入れかえれば、同じ計算で $x^2=4py$ を得る($PF=\sqrt{x^2+(y-p)^2}$、$PH=|y+p|$)。
段 4(頂点)。軸は 1 では $x$ 軸、2 では $y$ 軸で、放物線との交点はどちらも原点である。$\square$
$p$ は負でもよい。$p<0$ のとき、$y^2=4px$ は左に開き、$x^2=4py$ は下に開く。焦点と頂点の距離 $|p|$ は、焦点と準線の距離 $2|p|$ の半分である。
方針:1 は、平方完成で頂点を求め、頂点を原点に移すと thm-par-standard の 2 の形になることを使う。2 は、定義の式を直接整理する。
段 1(平方完成)。$h=-\frac b{2a}$、$q=\frac{4ac-b^2}{4a}$ とおくと、$ax^2+bx+c=a(x-h)^2+q$ である(2次関数の最大・最小)。よってグラフは $y-q=a(x-h)^2$ である。
段 2(頂点を原点に移す)。$X=x-h$、$Y=y-q$ とおくと、グラフは $X^2=\frac1aY$、つまり $X^2=4pY$($p=\frac1{4a}\ne0$)である。thm-par-standard の 2 から、これは $XY$ 座標で焦点 $(0,p)$、準線 $Y=-p$ の放物線である。
段 3(元に戻す)。平行移動 $(X,Y)=(x-h,y-q)$ は 2 点の座標の差を変えないので、距離を変えず、直線 $Y=-p$ を直線 $y=q-p$ に移し、垂線の足を垂線の足に移す。よって $xy$ 座標で、グラフは焦点 $(h,q+p)$、準線 $y=q-p$ の放物線である。$q\pm p=\frac{4ac-b^2}{4a}\pm\frac1{4a}$ なので、1 の式を得る。
段 4(2:定義の式を整理する)。点 $P(x,y)$ について $PF^2=(x-h)^2+(y-k)^2$、$PH=|y-d|$ である。段 2 と同じ理由で、$PF=PH$ は $(x-h)^2+(y-k)^2=(y-d)^2$ と同値で、$(y-d)^2-(y-k)^2=(k-d)(2y-k-d)$ なので
$$
(x-h)^2=2(k-d)y-(k-d)(k+d)
$$
である。$k-d\ne0$ で割って $y$ について解くと、2 の式を得る。$\square$
$a>0$ のとき、焦点は頂点 $(h,q)$ から $\frac1{4a}$ だけ上にあり、準線は同じだけ下にある。$a$ が大きい(グラフの開きが狭い)ほど、焦点は頂点に近い。
同じ事実を行列による平方完成の言葉で述べたものが 2次関数 の命題「2 次関数のグラフの焦点と準線」である。
$y=x^2$ と $y=3x^2$ では、後者のほうが細く見える。しかし $y=3x^2$ の点 $(x,y)$ を $3$ 倍に拡大した点 $(X,Y)=(3x,3y)$ は $Y=3y=9x^2=X^2$ を満たし、$y=x^2$ の上にある。つまり $y=3x^2$ は、$y=x^2$ を $\frac13$ 倍に縮めた図形である。開き方の違いは、大きさ(縮尺)の違いにすぎない。
ここで、平面の図形 $A$ と $B$ が 相似 であるとは、正の数 $r$ と、平面の点を平面の点に移してどの 2 点の距離も $r$ 倍にする写し方(比 $r$ の相似変換)で、$A$ の点を $B$ の点に 1 対 1 に対応させるものがあることとする(相似変換と相似の中心)。
どの 2 つの放物線も相似である。焦点と準線の距離が $d$ の放物線と $d'$ の放物線は、比 $\frac{d'}d$ で相似である。
方針:各放物線について、頂点を原点、軸を $y$ 軸に置く座標をとり、thm-par-standard の形にする。そのうえで原点を中心に拡大する。
段 1(座標の選び方)。焦点 $F$ から準線 $\ell$ に下ろした垂線の足を $K$ とし、線分 $FK$ の中点を原点、直線 $KF$ を $y$ 軸($K$ から $F$ へ向かう向きを正)、それに垂直な直線を $x$ 軸とする座標をとる。$d=FK$ とおくと、$F=\left(0,\frac d2\right)$、$\ell:y=-\frac d2$ で、thm-par-standard の 2 から放物線は $x^2=2dy$ である。座標の取りかえは距離を変えないので、この座標で考えてよい。
段 2(拡大)。もう一方の放物線も同じように $x^2=2d'y$ とする。$r=\frac{d'}d$ とし、点 $(x,y)$ を $(rx,ry)$ に移す。2 点の座標の差が $r$ 倍になるので、どの 2 点の距離も $r$ 倍になる。$x^2=2dy$ を満たす点を移した $(X,Y)=(rx,ry)$ は
$$
X^2=r^2x^2=r^2\cdot2dy=2(rd)(ry)=2d'Y
$$
を満たし、もう一方の放物線の上にある。
段 3(1 対 1)。逆に $X^2=2d'Y$ を満たす点 $(X,Y)$ に対し、$\left(\frac Xr,\frac Yr\right)$ は同じ計算を逆にたどって $x^2=2dy$ を満たし、段 2 の写し方で $(X,Y)$ に移る。よって写し方は 2 つの放物線の点を 1 対 1 に対応させ、距離を $r$ 倍にする。$\square$
$y=ax^2$($a>0$)は $x^2=\frac1ay$ なので、$2d=\frac1a$、つまり焦点と準線の距離は $d=\frac1{2a}$ である。$y=x^2$($d=\frac12$)と $y=3x^2$($d=\frac16$)の比は $\frac13$ で、冒頭の計算と合う。焦点も $\left(0,\frac14\right)$ と $\left(0,\frac1{12}\right)$ で、比は $\frac13$ である。
これに対して、楕円は円と相似とは限らない。
相似の写し方は、半径 $\rho$ の円を半径 $r\rho$ の円に移す(中心の行き先からの距離がすべて $r\rho$ になる)。そこで、楕円 $E:\frac{x^2}4+y^2=1$ が円でないことを示せば、$E$ は円と相似でない。$E$ がある点 $C(u,v)$ を中心とする円だとすると、$E$ の点 $(2,0)$ と $(-2,0)$ は $C$ から等距離なので $(2-u)^2=(2+u)^2$、つまり $u=0$ である。同じく $(0,1)$ と $(0,-1)$ から $v=0$ である。すると $C$ は原点で、$(2,0)$ までの距離 $2$ と $(0,1)$ までの距離 $1$ が等しいことになり、矛盾する。楕円の形は、焦点と中心の距離と長軸の半分の比(離心率)で決まる(2次曲線の焦点と準線)。放物線ではこの比がいつも $1$ なので、形は 1 種類しかない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $F$ は $\ell$ の上にない | $F(0,0)$、$\ell:x=0$ | 点の集まりが放物線(曲線)になる(ex-par-degenerate) |
| 準線が $x$ 軸に平行(thm-par-graph の 2) | $y^2=4x$ | $y$ が $x$ の 2 次関数として書ける(ex-par-sideways) |
| グラフが 2 次関数のグラフ(thm-par-graph の 1) | $y=x^4$ のグラフ | 焦点と準線をもつ(ex-par-quartic) |
$F(0,0)$、$\ell:x=0$ とする。$PF=PH$ は $\sqrt{x^2+y^2}=|x|$ で、2 乗すると $y^2=0$、つまり $y=0$ である。条件を満たす点全体は $x$ 軸($F$ を通り $\ell$ に垂直な直線)で、曲線にならない。
$y^2=4x$ は焦点 $(1,0)$、準線 $x=-1$ の放物線である。点 $(1,2)$ と $(1,-2)$ はどちらも曲線の上にあり、同じ $x$ に 2 つの $y$ が対応するので、$y$ は $x$ の関数ではない。$x=\frac14y^2$ と、$x$ を $y$ の 2 次関数として書くことはできる。
$y=x^4$ のグラフは $y=x^2$ と同じく下に凸で左右対称な U 字形だが、放物線ではない。
焦点 $F(u,v)$ と準線 $\ell:\alpha x+\beta y+\gamma=0$($\alpha^2+\beta^2=1$ に正規化する)をもつとして矛盾を導く。点と直線の距離の公式から $PH=|\alpha x+\beta y+\gamma|$ なので、グラフ上のすべての点で
$$
G(x,y):=(x-u)^2+(y-v)^2-(\alpha x+\beta y+\gamma)^2=0
$$
である。$G$ を展開すると $(1-\alpha^2)x^2-2\alpha\beta xy+(1-\beta^2)y^2+(\text{1 次以下の項})$ である。$y=x^4$ を代入した $G(x,x^4)$ は $x$ の多項式で、$x^8$ の係数は $1-\beta^2$、$x^2$ の係数は $1-\alpha^2$ である($xy$ は $x^5$、1 次の項は $x$ と $x^4$ と定数にしかならない)。$G(x,x^4)=0$ はすべての実数 $x$ で成り立つので、この多項式の係数はすべて $0$ である($0$ でない多項式の解は有限個しかない)。すると $1-\beta^2=0$ と $1-\alpha^2=0$ がともに成り立ち、$\alpha^2+\beta^2=2$ となって $\alpha^2+\beta^2=1$ に反する。
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