Sobolev空間の延長作用素

同義語:Sobolev空間の拡張作用素拡張作用素extension operator for Sobolev spacesSobolev extension operator

概要

Sobolev空間の延長作用素(extension operator for Sobolev spaces)とは、開集合 $\Omega\subset\mathbb R^N$ 上の $W^{1,p}(\Omega)$ の関数を、$L^p$ ノルムと $W^{1,p}$ ノルムを定数倍に保ったまま $\mathbb R^N$ 全体の $W^{1,p}$ 関数へ延ばす線形写像である。半空間では超平面に関する偶反射で作れ、境界が有界な $C^1$ 級の開集合では、局所座標で境界を平らにして反射し 1 の分割で貼り合わせて、$1\le p\le\infty$ に共通の定数で作れる。正方形のように $C^1$ 級でなくても延長できる領域がある一方、切れ込みのある立方体では延長できない関数がある。全空間の結果を領域へ移す基本の道具である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Sobolev空間の基本事項, 弱微分, 1の分割, 軟化子, 変数変換公式(多変数積分)

開集合 $\Omega\subset\mathbb R^N$ の上の Sobolev 空間 $W^{1,p}(\Omega)$ の関数を、ノルムを制御したまま $\mathbb R^N$ 全体の $W^{1,p}$ 関数へ延ばす線形写像を延長作用素(extension operator)という。全空間では平行移動・畳み込み・Fourier 変換が自由に使えるので、$\mathbb R^N$ で示した不等式や近似定理を、延長作用素を通して領域へ移すことができる。
延長はいつでもできるわけではない。境界が $C^1$ 級で有界な開集合(または半空間)では延長作用素が存在する。一方、切れ込みのある正方形のように、境界の両側から同じ境界に接する領域では延長できない関数がある。境界が $C^1$ 級でなくても延長できる例(正方形)もあるので、$C^1$ 級は十分条件であって必要条件ではない。
この記事で示すこと:

  1. 超平面に関する偶反射が $W^{1,p}$ を保つこと(lem-ext-reflection)。半空間の延長作用素はこれで得られる。
  2. $C^1$ 級の座標変換が $W^{1,p}$ を保つこと(prop-ext-change-of-variables)。境界が有界な $C^1$ 級の開集合での延長作用素の存在(thm-ext-c1)と、その帰結としての稠密性(cor-ext-density)。境界が有界でない場合の稠密性(cor-ext-density-unbounded)。
  3. 正方形での反射による延長(ex-ext-square)と、切れ込みのある正方形で延長できない関数(thm-ext-slit)。

記号と定義

$1\le p\le\infty$ とする。開集合 $\Omega\subset\mathbb R^N$ について、$W^{1,p}(\Omega)$ は $u\in L^p(\Omega)$ でその弱微分 $\partial_iu$($1\le i\le N$)もすべて $L^p(\Omega)$ に属するものの空間で、ノルムを $\|u\|_{W^{1,p}(\Omega)}:=\|u\|_{L^p(\Omega)}+\sum_{i=1}^N\|\partial_iu\|_{L^p(\Omega)}$ とする(Sobolev空間の基本事項 の定義「Sobolev空間」。同値なノルムのどれを使っても以下の主張は変わらない)。$\mathbb R^N$ の点を $x=(x',x_N)$($x'\in\mathbb R^{N-1}$)と書き、
$$ \mathbb R^N_+:=\{x_N>0\},\quad Q:=\{|x'|<1,\ |x_N|<1\},\quad Q_+:=Q\cap\mathbb R^N_+,\quad Q_0:=\{|x'|<1,\ x_N=0\} $$
とおく。

Sobolev空間の延長作用素

開集合 $\Omega\subset\mathbb R^N$ と $1\le p\le\infty$ について、線形写像 $P\colon W^{1,p}(\Omega)\to W^{1,p}(\mathbb R^N)$ で、ある定数 $C$ について、すべての $u\in W^{1,p}(\Omega)$ に対し
$$ Pu|_\Omega=u,\qquad \|Pu\|_{L^p(\mathbb R^N)}\le C\|u\|_{L^p(\Omega)},\qquad \|Pu\|_{W^{1,p}(\mathbb R^N)}\le C\|u\|_{W^{1,p}(\Omega)} $$
を満たすものを、$W^{1,p}(\Omega)$ の延長作用素という。

延長作用素があれば、とくに $W^{1,p}(\Omega)$ のどの元も $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ の元の制限になる。逆に、ある 1 つの元がどんな $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ の元の制限にもならなければ、延長作用素は存在しない。2 つ目の評価($L^p$ ノルムだけの評価)は、補間や埋め込みの定数を追うときに使う。

$C^1$ 級の開集合

開集合 $\Omega\subset\mathbb R^N$ の境界を $\Gamma:=\partial\Omega$ とする。各 $x\in\Gamma$ に、$x$ の開近傍 $U$ と全単射 $H\colon Q\to U$ で、$H\in C^1(\overline Q)$、$H^{-1}\in C^1(\overline U)$、$H(Q_+)=U\cap\Omega$、$H(Q_0)=U\cap\Gamma$ を満たすもの(局所座標)があるとき、$\Omega$ は $C^1$ 級であるという。

$N=1$ では $Q=(-1,1)$、$Q_0=\{0\}$ であり、有界な開区間や半直線は $C^1$ 級である。

反射による延長

次の補題が延長作用素の構成の核である。$D'\subset\mathbb R^{N-1}$ を開集合、$0< c\le\infty$ とし、
$$ D_+:=D'\times(0,c),\qquad D:=D'\times(-c,c) $$
とおく($N=1$ では $D_+=(0,c)$、$D=(-c,c)$)。$D_+$ 上の関数 $f$ について、偶反射 $f^\ast$ と奇反射 $f^\square$ を $D$ 上で
$$ f^\ast(x',x_N):=f(x',|x_N|),\qquad f^\square(x',x_N):=\operatorname{sgn}(x_N)\,f(x',|x_N|) $$
で定める($x_N=0$ での値は測度 $0$ なので任意)。

偶反射は $W^{1,p}$ を保つ

$1\le p\le\infty$、$u\in W^{1,p}(D_+)$ とする。このとき $u^\ast\in W^{1,p}(D)$ であり、
$$ \partial_iu^\ast=(\partial_iu)^\ast\quad(1\le i\le N-1),\qquad \partial_Nu^\ast=(\partial_Nu)^\square $$
が成り立つ。とくに $\|u^\ast\|_{L^p(D)}\le2\|u\|_{L^p(D_+)}$、$\|u^\ast\|_{W^{1,p}(D)}\le2\|u\|_{W^{1,p}(D_+)}$ である。

境界の近くを切り落としたテスト関数で近づける

$\eta\in C^\infty(\mathbb R)$ を、$t\le\frac12$ で $\eta(t)=0$、$t\ge1$ で $\eta(t)=1$ となるものとし、$\eta_k(t):=\eta(kt)$ とおく。$\varphi\in C_c^1(D)$ を任意にとる。
接線方向($i\le N-1$).$\psi(x',x_N):=\varphi(x',x_N)+\varphi(x',-x_N)$ を $D_+$ 上で考える。変数 $x_N\mapsto-x_N$ を替えれば $\int_Du^\ast\partial_i\varphi=\int_{D_+}u\,\partial_i\psi$ である。$\psi$ は $x_N=0$ の近くで $0$ とは限らないので、そのままでは弱微分の定義に使えない。そこで $\eta_k(x_N)\psi$ を考えると、これは $C^1_c(D_+)$ に属し、$\partial_i(\eta_k\psi)=\eta_k\partial_i\psi$ なので
$$ \int_{D_+}u\,\eta_k\,\partial_i\psi=-\int_{D_+}\partial_iu\,\eta_k\,\psi $$
である。$0\le\eta_k\le1$、$\eta_k\to1$($x_N>0$ で各点)なので、優収束定理 で $k\to\infty$ とすると $\int_{D_+}u\,\partial_i\psi=-\int_{D_+}\partial_iu\,\psi=-\int_D(\partial_iu)^\ast\varphi$ を得る。
法線方向($i=N$).$\chi(x',x_N):=\varphi(x',x_N)-\varphi(x',-x_N)$ とおくと $\int_Du^\ast\partial_N\varphi=\int_{D_+}u\,\partial_N\chi$ である。$\chi(x',0)=0$ なので、平均値の定理から $|\chi(x',x_N)|\le M|x_N|$($M:=2\sup|\partial_N\varphi|$)である。$\eta_k\chi\in C_c^1(D_+)$ に弱微分の定義を当てると
$$ \int_{D_+}u\,\eta_k\,\partial_N\chi+\int_{D_+}u\,k\eta'(kx_N)\,\chi=-\int_{D_+}\partial_Nu\,\eta_k\,\chi $$
である。第 2 項は、$\eta'(kx_N)$ が $\frac1{2k}< x_N< \frac1k$ でしか $0$ でないので、$L:=\sup|\eta'|$ として
$$ \Bigl|\int_{D_+}u\,k\eta'(kx_N)\chi\Bigr|\le kLM\int_{K\cap\{0< x_N< 1/k\}}|u|\,x_N\,dx\le LM\int_{K\cap\{0< x_N< 1/k\}}|u|\,dx\to0 $$
となる。ここで $K$ は $\varphi$ の台を $x_N\mapsto|x_N|$ で折り返した有界集合で、$u\in L^1(K\cap D_+)$ である($|K|<\infty$ と Hölder の不等式による)。残りの 2 項で $k\to\infty$ とすると $\int_{D_+}u\,\partial_N\chi=-\int_{D_+}\partial_Nu\,\chi=-\int_D(\partial_Nu)^\square\varphi$ を得る。
以上で弱微分の式が示された。$|f^\ast|=|f^\square|=|f|^\ast$ なので、$p<\infty$ では $\|f^\ast\|_{L^p(D)}=2^{1/p}\|f\|_{L^p(D_+)}\le2\|f\|_{L^p(D_+)}$、$p=\infty$ では等しい。これを $u$ と各 $\partial_iu$ に当てればノルムの評価が従う。$\square$

偶反射を奇反射に替えると、$u$ の境界での値が $0$ でない限り $x_N=0$ を挟んで跳びができ、$W^{1,p}$ に入らない(反例の表)。偶反射は値を連続につなぎ、法線方向の微分だけが符号を変える。

半空間の延長作用素

$1\le p\le\infty$ とする。$Pu:=u^\ast$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N_+)$ の延長作用素で、定数 $C=2$ でとれる。

lem-ext-reflection を $D'=\mathbb R^{N-1}$、$c=\infty$ で使えばよい。線形性と $Pu|_{\mathbb R^N_+}=u$ は定義から明らかである。$\square$

境界が $C^1$ 級の開集合

一般の領域では、境界を局所座標で平らにし、平らにした所で反射し、1の分割 で貼り合わせる。そのために、関数を掛ける操作と $0$ で延ばす操作が $W^{1,p}$ を保つことを使う。

掛け算と 0 による延長

$1\le p\le\infty$、$U\subset\mathbb R^N$ を開集合、$v\in W^{1,p}(U)$ とする。

  1. $\alpha\in C^1(U)$ で $\alpha$ と $\nabla\alpha$ が有界なら、$\alpha v\in W^{1,p}(U)$、$\partial_i(\alpha v)=\alpha\,\partial_iv+(\partial_i\alpha)v$ である。
  2. $\mathbb R^N$ の閉集合 $F\subset U$ があって $U\setminus F$ で $v=0$(ほとんど至る所)なら、$v$ を $U$ の外で $0$ と延ばした関数 $\bar v$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ に属し、$\partial_i\bar v=\overline{\partial_iv}$ である。
証明を開く

1.$\varphi\in C_c^1(U)$ なら $\alpha\varphi\in C_c^1(U)$ なので $\int_Uv\,\partial_i(\alpha\varphi)=-\int_U\partial_iv\,\alpha\varphi$ であり、$\partial_i(\alpha\varphi)=\alpha\partial_i\varphi+\varphi\partial_i\alpha$ を代入すると $\int_U\alpha v\,\partial_i\varphi=-\int_U(\alpha\partial_iv+v\partial_i\alpha)\varphi$ となる。$\alpha$ と $\nabla\alpha$ は有界なので、右辺の関数は $L^p(U)$ に属する。

2.$F$ と $\mathbb R^N\setminus U$ は交わらない閉集合なので、$F$ の近傍で $1$、$\mathbb R^N\setminus U$ の近傍で $0$ になる $\zeta\in C^\infty(\mathbb R^N)$ がある($W_t:=\{x:\operatorname{dist}(x,F)< t\operatorname{dist}(x,\mathbb R^N\setminus U)\}$ とおくと、$F\subset W_{1/2}$、$\overline{W_{1/2}}\subset W_1$、$\overline{W_1}\subset U$ である。1の分割 の定理「滑らかな Urysohn の補題」を閉集合 $\mathbb R^N\setminus W_1$ と $\overline{W_{1/2}}$ に当てればよい)。$\varphi\in C_c^1(\mathbb R^N)$ をとると $\zeta\varphi\in C_c^1(U)$ である。$F$ の上では $\partial_i(\zeta\varphi)=\partial_i\varphi$、$U\setminus F$ の上では $v=0$ かつ $\partial_iv=0$($v$ が $0$ になる開集合 $U\setminus F$ の上では弱微分も $0$)なので、$\int_{\mathbb R^N}\bar v\,\partial_i\varphi=\int_Uv\,\partial_i(\zeta\varphi)=-\int_U\partial_iv\,\zeta\varphi=-\int_{\mathbb R^N}\overline{\partial_iv}\,\varphi$ である(Bre11 Remark 4 (ii)、pp. 264–265 も参照)。$\square$

局所座標で境界を平らにするには、座標を取り替えても $W^{1,p}$ に留まることが要る。

$C^1$ 級の座標変換

$1\le p\le\infty$、$V',V\subset\mathbb R^N$ を開集合とし、$H\colon V'\to V$ を $C^1$ 級微分同相写像(変数変換公式(多変数積分) の定義「C1級微分同相写像とJacobi行列式」)で、$H$ の Jacobi 行列の成分が $V'$ の上で、$H^{-1}$ の Jacobi 行列の成分が $V$ の上で有界なものとする。$u\in W^{1,p}(V)$ なら $u\circ H\in W^{1,p}(V')$ であり、
$$ \partial_j(u\circ H)=\sum_{i=1}^N(\partial_iu\circ H)\,\partial_jH_i\qquad(1\le j\le N) $$
が成り立つ。さらに $H$ だけで決まり $p$ によらない定数 $C$ について、$\|u\circ H\|_{L^p(V')}\le C\|u\|_{L^p(V)}$、$\|u\circ H\|_{W^{1,p}(V')}\le C\|u\|_{W^{1,p}(V)}$ である。

測度の変換で合成を押さえ、局所的な平滑化で連鎖律を移す

要点:$H^{-1}$ の Jacobi 行列式が有界なので、合成は零集合を保ち $L^p$ ノルムを定数倍しか増やさない。連鎖律は、テスト関数の台の近くで $u$ を軟化した滑らかな関数について成り立つ式の極限として得る。

証明を開く

合成と $L^p$ ノルム.$H^{-1}$ の Jacobi 行列の成分の上界を $B$、$H$ の Jacobi 行列の成分の上界を $A$ とする。行列式を成分の積の和に展開すると $J_{H^{-1}}=\lvert\det DH^{-1}\rvert\le N!\,B^N=:D$ が $V$ の上で成り立つ。可測な $E\subset V$ について、変数変換公式(多変数積分) の定理「変数変換公式」の 1 を $H^{-1}\colon V\to V'$ に当てると $\lambda(H^{-1}(E))=\int_EJ_{H^{-1}}\,d\lambda\le D\lambda(E)$ である。とくに $H^{-1}$ は零集合を零集合に写すので、$V$ 上でほとんど至る所等しい 2 つの可測関数 $f,g$ について $f\circ H=g\circ H$ が $V'$ 上でほとんど至る所成り立ち、$u\circ H$ は関数の類として定まる($f\circ H$ の可測性は同じ定理の 2 を $f$ の正の部分と負の部分に当てて得る)。可測な $f\colon V\to\mathbb R$ と可測な $E\subset V$ について、同じ定理の 2 を $H^{-1}$ と $\lvert f\circ H\rvert\mathbf 1_{H^{-1}(E)}$ に当てると$$\int_{H^{-1}(E)}\lvert f\circ H\rvert^q\,d\lambda=\int_E\lvert f\rvert^q\,J_{H^{-1}}\,d\lambda\le D\int_E\lvert f\rvert^q\,d\lambda\qquad(1\le q<\infty)$$である(これを (1) とする。変数変換公式(多変数積分) の例「合成による Lp ノルムの評価」と同じ計算)。$p<\infty$ では (1) で $E=V$、$q=p$ とおいて $\|f\circ H\|_{L^p(V')}\le D^{1/p}\|f\|_{L^p(V)}\le\max(1,D)\|f\|_{L^p(V)}$ である。$p=\infty$ では、$M:=\|f\|_{L^\infty(V)}$ として $\{\lvert f\circ H\rvert>M\}=H^{-1}(\{\lvert f\rvert>M\})$ が零集合なので、$\|f\circ H\|_{L^\infty(V')}\le\|f\|_{L^\infty(V)}$ である。

弱微分.$g_j:=\sum_i(\partial_iu\circ H)\,\partial_jH_i$ とおく。前段の評価から $g_j\in L^p(V')$ で、$\|g_j\|_{L^p(V')}\le A\max(1,D)\sum_i\|\partial_iu\|_{L^p(V)}$ である。$\varphi\in C_c^1(V')$ を固定し、$K':=\operatorname{supp}\varphi$ とおく。$H(K')$ は $V$ のコンパクト部分集合なので、閉包がコンパクトで $V$ に含まれ、$H(K')$ を含む有界な開集合 $\omega$ がある。$\omega$ は有界なので Hölderの不等式 により $u|_\omega\in W^{1,1}(\omega)$ である。$u|_\omega$ の軟化を $u_\varepsilon$ と書くと、十分小さい $\varepsilon$ で $u_\varepsilon$ は $H(K')$ のある開近傍 $W$ の上で $C^\infty$ 級であり、軟化子 の定理「Sobolev 関数の軟化による近似」の 2($p=1$、コンパクト集合 $H(K')$)によって $\varepsilon\to0$ のとき$$\|u_\varepsilon-u\|_{L^1(H(K'))}\to0,\qquad\|\partial_iu_\varepsilon-\partial_iu\|_{L^1(H(K'))}\to0\quad(1\le i\le N)$$である。$u_\varepsilon\circ H$ は開集合 $H^{-1}(W)\supset K'$ の上で $C^1$ 級で、古典的な連鎖律 $\partial_j(u_\varepsilon\circ H)=\sum_i(\partial_iu_\varepsilon\circ H)\partial_jH_i$ が成り立つ。$(u_\varepsilon\circ H)\varphi$ を $K'$ の外で $0$ とおくと $C_c^1(\mathbb R^N)$ の関数になり、その $\partial_j$ の積分は Fubiniの定理 と 微積分学の基本定理 により $0$ なので$$\int_{V'}(u_\varepsilon\circ H)\,\partial_j\varphi\,d\lambda=-\int_{V'}\sum_i(\partial_iu_\varepsilon\circ H)\,\partial_jH_i\,\varphi\,d\lambda$$である。(1) を $E=H(K')$、$q=1$ で使うと$$\Bigl|\int_{V'}((u_\varepsilon-u)\circ H)\,\partial_j\varphi\Bigr|\le\|\partial_j\varphi\|_\infty D\|u_\varepsilon-u\|_{L^1(H(K'))},\quad\Bigl|\int_{V'}((\partial_iu_\varepsilon-\partial_iu)\circ H)\,\partial_jH_i\,\varphi\Bigr|\le A\|\varphi\|_\infty D\|\partial_iu_\varepsilon-\partial_iu\|_{L^1(H(K'))}$$となり、どちらも $0$ に近づく。$\varepsilon\to0$ とすると $\int_{V'}(u\circ H)\partial_j\varphi=-\int_{V'}g_j\varphi$ を得る。よって $u\circ H\in W^{1,p}(V')$、$\partial_j(u\circ H)=g_j$ である。

定数.以上から $\|u\circ H\|_{L^p(V')}\le\max(1,D)\|u\|_{L^p(V)}$、$\|u\circ H\|_{W^{1,p}(V')}\le\max(1,D)\bigl(\|u\|_{L^p(V)}+NA\sum_i\|\partial_iu\|_{L^p(V)}\bigr)$ なので、$C:=\max(1,D)\max(1,NA)$ とおけばよい。$A$、$D$ は $H$ だけで決まる。$\square$

$p=\infty$ の場合も、テスト関数の台の近くの有界な開集合の上で $W^{1,1}$ の議論に帰着している(Bre11 Proposition 9.6、pp. 270–271 は $p<\infty$ を全空間の近似列で示し、$p=\infty$ をこの形の局所化に帰着させる)。

$C^1$ 級の開集合の延長作用素

$\Omega\subset\mathbb R^N$ を $C^1$ 級の開集合で境界 $\Gamma$ が有界なもの、または $\Omega=\mathbb R^N_+$ とする。このとき $1\le p\le\infty$ のすべてについて $W^{1,p}(\Omega)$ の延長作用素 $P$ があり、def-ext-operator の定数 $C$ は $\Omega$ だけで決まる($p$ によらない)ようにとれる。

局所座標で平らにして反射し、1 の分割で貼り合わせる

半空間は cor-ext-halfspace である。$\Gamma=\emptyset$ なら $\Omega=\mathbb R^N$ か $\emptyset$ で、恒等写像でよい。以下 $\Gamma\ne\emptyset$ とする。
被覆.$\Gamma$ は有界な閉集合なのでコンパクトである。局所座標 $H\colon Q\to U$ は $H\in C^1(\overline Q)$、$H^{-1}\in C^1(\overline U)$ なので、$H$ と $H^{-1}$ の微分は有界で、$DH^{-1}(H(y))\,DH(y)=I$ から Jacobi 行列式の逆数も有界である。有限個の局所座標 $H_i\colon Q\to U_i$($1\le i\le k$)で $\Gamma\subset U_1\cup\dots\cup U_k$ となるものをとる。1の分割 により、$C^\infty$ 級の関数 $\theta_0,\theta_1,\dots,\theta_k$ で、$0\le\theta_i\le1$、$\sum_{i=0}^k\theta_i=1$($\mathbb R^N$ 上)、$\theta_i$($i\ge1$)の台は $U_i$ に含まれるコンパクト集合、$\theta_0$ の台は $\Gamma$ と交わらないものがとれる(各 $x\in\Gamma$ について、$x$ を含むある $U_i$ に閉包が含まれる $x$ 中心の開球をとり、その有限個で $\Gamma$ を覆う。$U_i$ に割り当てた球の和を $V_i$ とし、開被覆 $V_1,\dots,V_k,\ \mathbb R^N\setminus\Gamma$ に従属する滑らかな 1 の分割を 1の分割 の定理「滑らかな 1 の分割の存在」でとれば、$\operatorname{supp}\theta_i\subset V_i\subset\overline{V_i}\subset U_i$ で $\overline{V_i}$ はコンパクトである。主張は Bre11 Lemma 9.3、p. 276 にもある)。$\nabla\theta_0=-\sum_{i\ge1}\nabla\theta_i$ は有界である。
$u\in W^{1,p}(\Omega)$ を $u=\sum_{i=0}^k\theta_iu$ と分け、各項を別々に延ばす。
内側の項.$\theta_0u\in W^{1,p}(\Omega)$ である(lem-ext-cutoff の 1)。$\theta_0$ の台 $F_0$ は $\Gamma$ と交わらない閉集合なので $F_0\cap\overline\Omega=F_0\cap\Omega$ は $\mathbb R^N$ の閉集合で $\Omega$ に含まれ、その外で $\theta_0u=0$ である。lem-ext-cutoff の 2 により、$0$ で延ばした $\overline{\theta_0u}$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ に属し、ノルムは $C\|u\|_{W^{1,p}(\Omega)}$ 以下である。
境界の近くの項.$1\le i\le k$ について $v_i:=u\circ H_i$ を $Q_+$ 上で考えると、$H_i(Q_+)=U_i\cap\Omega$ なので、prop-ext-change-of-variables を $H_i$ の $Q_+$ への制限 $Q_+\to U_i\cap\Omega$ に当てて $v_i\in W^{1,p}(Q_+)$ を得る。lem-ext-reflection($D'=\{|x'|<1\}$、$c=1$)で偶反射 $v_i^\ast\in W^{1,p}(Q)$ を作り、$w_i:=v_i^\ast\circ H_i^{-1}$ とおくと、prop-ext-change-of-variables を $H_i^{-1}\colon U_i\to Q$ に当てて $w_i\in W^{1,p}(U_i)$、$U_i\cap\Omega$ の上で $w_i=u$、$\|w_i\|_{W^{1,p}(U_i)}\le C\|u\|_{W^{1,p}(U_i\cap\Omega)}$ である。$\theta_iw_i\in W^{1,p}(U_i)$ は $\theta_i$ のコンパクトな台の外で $0$ なので、lem-ext-cutoff の 2 によって $0$ で延ばした $\hat u_i$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ に属し、$\Omega$ の上で $\hat u_i=\theta_iu$ である。
貼り合わせ.$Pu:=\overline{\theta_0u}+\sum_{i=1}^k\hat u_i$ とおく。各操作は線形で、$\Omega$ の上では $\sum_i\theta_iu=u$ に戻る。$W^{1,p}$ ノルムの評価は各項の評価を足せばよい。$L^p$ ノルムの評価も、各操作($\theta_i$ を掛ける、座標変換、反射、$0$ で延ばす)が $L^p$ ノルムを定数倍以下にしかしないことから同様に従う。定数に現れるのは、$\theta_i$ とその微分の上限、$H_i$・$H_i^{-1}$ の微分と Jacobi 行列式の上限($p$ 乗根をとっても $\max(1,\cdot)$ 以下)、反射の $2$、項の個数 $k$ だけで、どれも $p$ によらない。$\square$

Bre11 Theorem 9.7(pp. 272–277)も同じ方針である。$N=1$ では有界な開区間と半直線が含まれ、どの開区間 $I$ にも延長作用素がある(Bre11 Theorem 8.6、p. 209。$\mathbb R$ 自身では恒等写像)。

全空間の滑らかな関数による近似

$\Omega$ を thm-ext-c1 の仮定を満たす開集合、$1\le p<\infty$ とする。このとき $\{\varphi|_\Omega:\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^N)\}$ は $W^{1,p}(\Omega)$ で稠密である。

$u\in W^{1,p}(\Omega)$ について $Pu\in W^{1,p}(\mathbb R^N)$ である。$C_c^\infty(\mathbb R^N)$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ で稠密なので(Bre11 Theorem 9.2、p. 265。軟化子 による平滑化と切り落としで示される)、$\varphi_n\to Pu$ となる $\varphi_n\in C_c^\infty(\mathbb R^N)$ がある。制限は $W^{1,p}$ ノルムを増やさないので $\varphi_n|_\Omega\to Pu|_\Omega=u$ である。$\square$

この系と thm-ext-c1 は、Sobolevの埋め込み定理 や Rellich–Kondrachovの定理 を全空間から領域へ移すときに使われる。$p=\infty$ では稠密性は成り立たない(反例の表)。
境界が有界でなくても、稠密性そのものは成り立つ。遠くを切り落とせば、境界のコンパクトな部分だけで延長を作れるからである。

境界が有界でない $C^1$ 級の開集合での稠密性

$\Omega\subset\mathbb R^N$ を $C^1$ 級の開集合(境界 $\Gamma$ は有界でなくてよい)、$1\le p<\infty$ とする。このとき $\{\varphi|_\Omega:\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^N)\}$ は $W^{1,p}(\Omega)$ で稠密である。

遠方を切り落とし、境界のコンパクトな部分で延長する

要点:$\zeta(x/R)$ を掛けて遠方を切り落とすと、関数は大きな球の外で $0$ になる。その球の近くの境界はコンパクトなので、thm-ext-c1 の証明と同じ局所座標・反射・1 の分割で全空間へ延ばせる。あとは全空間で滑らかな関数に近づける。

証明を開く

$u\in W^{1,p}(\Omega)$ と $\varepsilon>0$ を固定する。

遠方の切り落とし.$\zeta\in C_c^\infty(\mathbb R^N)$ を、$0\le\zeta\le1$、$\lvert x\rvert\le1$ で $\zeta=1$、$\lvert x\rvert\ge2$ で $\zeta=0$ となるものとし、$\zeta_R(x):=\zeta(x/R)$ とおく。lem-ext-cutoff の 1 により $z_R:=\zeta_Ru\in W^{1,p}(\Omega)$、$\partial_iz_R=\zeta_R\partial_iu+R^{-1}(\partial_i\zeta)(x/R)\,u$ であり、$$\|z_R-u\|_{W^{1,p}(\Omega)}\le\|(1-\zeta_R)u\|_{L^p(\Omega)}+\sum_{i=1}^N\|(1-\zeta_R)\partial_iu\|_{L^p(\Omega)}+\frac{N\|\nabla\zeta\|_\infty}{R}\|u\|_{L^p(\Omega)}$$である。$p<\infty$ なので、優収束定理($\lvert(1-\zeta_R)f\rvert^p\le\lvert f\rvert^p$、各点で $\to0$)により右辺は $R\to\infty$ で $0$ に近づく。$\|z_R-u\|_{W^{1,p}(\Omega)}<\varepsilon/2$ となる $R$ を 1 つ固定する。$z_R$ は $\lvert x\rvert\ge2R$ で $0$ である。

境界のコンパクトな部分での延長.$K:=\Gamma\cap\{\lvert x\rvert\le3R\}$ はコンパクトである。prf-ext-c1 の「被覆」の段落の $\Gamma$ を $K$ に替えると、有限個の局所座標 $H_i\colon Q\to U_i$($1\le i\le k$、$K=\emptyset$ なら $k=0$)と、$C^\infty$ 級の $\theta_0,\dots,\theta_k$ で、$\sum_{i=0}^k\theta_i=1$、$\operatorname{supp}\theta_i$($i\ge1$)は $U_i$ に含まれるコンパクト集合、$\operatorname{supp}\theta_0\cap K=\emptyset$、$\nabla\theta_0$ は有界、となるものがとれる。さらに $\kappa\in C_c^\infty(\mathbb R^N)$ を、$\lvert x\rvert\le2R$ で $\kappa=1$、台が $\{\lvert x\rvert<3R\}$ に含まれるものとする。

$F_0:=\operatorname{supp}(\kappa\theta_0)$ はコンパクトで $\{\lvert x\rvert<3R\}$ に含まれ、$K$ と交わらないので、$\Gamma$ と交わらない。よって $F_0\cap\overline\Omega=F_0\cap\Omega$ は $\mathbb R^N$ の閉集合で $\Omega$ に含まれ、その外で $\kappa\theta_0z_R=0$ である。lem-ext-cutoff の 1 と 2 により、$\kappa\theta_0z_R$ を $0$ で延ばした関数 $\bar z_0$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ に属する。$1\le i\le k$ については、prf-ext-c1 の「境界の近くの項」の段落を $u$ の代わりに $z_R$ に当てると、$W^{1,p}(\mathbb R^N)$ の関数 $\hat z_i$ で、$\Omega$ の上で $\hat z_i=\theta_iz_R$ となるものが得られる。

$v:=\bar z_0+\sum_{i=1}^k\hat z_i\in W^{1,p}(\mathbb R^N)$ とおく。$z_R$ は $\kappa\ne1$ となる所で $0$ なので $\kappa\theta_0z_R=\theta_0z_R$ であり、$\Omega$ の上で $v=\sum_{i=0}^k\theta_iz_R=z_R$ である。

全空間での近似.$C_c^\infty(\mathbb R^N)$ は $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ で稠密なので(prf-cor-ext-density と同じく Bre11 Theorem 9.2)、$\|w-v\|_{W^{1,p}(\mathbb R^N)}<\varepsilon/2$ となる $w\in C_c^\infty(\mathbb R^N)$ がある。制限は $W^{1,p}$ ノルムを増やさないので、$\|w|_\Omega-u\|_{W^{1,p}(\Omega)}\le\|w-v\|_{W^{1,p}(\mathbb R^N)}+\|z_R-u\|_{W^{1,p}(\Omega)}<\varepsilon$ である。$\square$

この証明で作った延長 $v$ は、$R$ ごとに別の局所座標を使い、その定数は $R$ に依存してよい。境界が有界でないとき、この証明は $p$ や $u$ によらない定数をもつ延長作用素(def-ext-operator)を与えない(Bre11 Corollary 9.8、p. 277 も遠方を切り落としてから延長する)。

$C^1$ 級でなくても延長できる例

正方形

$\Omega=(0,1)^2\subset\mathbb R^2$ は角をもつので def-ext-c1-domain の意味で $C^1$ 級ではないが、$1\le p\le\infty$ のすべてで $W^{1,p}(\Omega)$ の延長作用素がある。

4 回の反射

$u\in W^{1,p}(\Omega)$ を、まず直線 $x_2=0$ で偶反射して $(0,1)\times(-1,1)$ へ、次に $x_1=0$ で反射して $(-1,1)^2$ へ、$x_2=1$ で反射して $(-1,1)\times(-1,3)$ へ、$x_1=1$ で反射して $\tilde\Omega:=(-1,3)^2$ へ延ばす。各段は座標を平行移動・入れ替えれば lem-ext-reflection($D'$ を開区間、$c$ を区間の長さ以下にとる)の形なので、$\tilde u\in W^{1,p}(\tilde\Omega)$、$\|\tilde u\|_{W^{1,p}(\tilde\Omega)}\le16\|u\|_{W^{1,p}(\Omega)}$($L^p$ ノルムも同じ)である。$\psi\in C_c^\infty(\tilde\Omega)$ を $\overline\Omega$ の近傍で $1$ となるようにとり、$Pu$ を $\psi\tilde u$ を $\tilde\Omega$ の外で $0$ と延ばしたものとすれば、lem-ext-cutoff により $P$ は延長作用素である。
$C^1$ 級でないこと:角 $(0,0)$ での局所座標 $H$ があれば、$H(Q_0)$ は $(0,0)$ を通る $C^1$ 級の正則な曲線を含み、$(0,0)$ での接線は 1 本だけである。ところが境界の 2 辺から $(0,0)$ に近づく弦の向きは、それぞれ $x_1$ 軸と $x_2$ 軸の向きに限られ、どちらも $H(Q_0)$ の接線の向きでなければならないので矛盾する。$\square$

(Bre11 Remark 9、pp. 275–276。)

延長できない領域

境界が領域の両側から同じ点に接していると、両側の値を $\mathbb R^N$ で連続につなげない。

切れ込みのある立方体

$N\ge2$ とし、立方体 $(-1,1)^N$ から切れ込み $S:=\{x_1=0,\ x_2\ge0\}$ を除いた連結な開集合を $\Omega$ とする。$h\in C^\infty(\mathbb R)$ を、$t\le\frac14$ で $h(t)=0$、$t\ge\frac12$ で $h(t)=1$ となるものとし、
$$ u(x):=h(x_2)\operatorname{sgn}(x_1)\qquad(x\in\Omega) $$
とおく。このとき $1\le p\le\infty$ のすべてで $u\in W^{1,p}(\Omega)$ だが、$\Omega$ の上で $u$ に一致する $v\in W^{1,p}(\mathbb R^N)$ は存在しない。とくに $W^{1,p}(\Omega)$ の延長作用素は存在しない。

直線に沿った差を勾配で押さえる

$u\in W^{1,p}(\Omega)$.$\Omega$ のうち $x_1=0$ を満たす点は $x_2<0$ にあり、その近くでは $x_2<\frac14$ なので $u=0$ である。それ以外の点の近くでは $\operatorname{sgn}(x_1)$ は定数である。よって $u\in C^\infty(\Omega)$ で、$u$ と勾配 $\nabla u=h'(x_2)\operatorname{sgn}(x_1)e_2$ は有界、$\Omega$ は有界なので、$u\in W^{1,p}(\Omega)$ である。
延長できないこと.$v\in W^{1,p}(\mathbb R^N)$ が $\Omega$ の上で $u$ に一致するとする。$B:=(-1,1)\times(\frac12,1)\times(0,1)^{N-2}$ とおくと、$v\in W^{1,1}(B)$ である($B$ は有界なので Hölder の不等式による)。$B$ の点を $(t,y)$($t\in(-1,1)$、$y\in B':=(\frac12,1)\times(0,1)^{N-2}$)と書く。
$\phi\in C^\infty(\mathbb R^N)$ について、$0< s< 1$ と $y\in B'$ で 微積分学の基本定理 から $|\phi(s,y)-\phi(-s,y)|\le\int_{-1}^1|\partial_1\phi(t,y)|\,dt$ である。$s$ と $y$ について積分すると
$$ \int_{B'}\int_0^1|\phi(s,y)-\phi(-s,y)|\,ds\,dy\le\int_B|\partial_1\phi|\,dx $$
を得る(これを $(\ast)$ と呼ぶ)。両辺は $W^{1,1}(B)$ のノルムについて連続である(左辺は $\phi$ の差の $L^1(B)$ ノルムの $2$ 倍で押さえられる)。$v$ の 軟化子 による平滑化 $\rho_\varepsilon*v$ は $\overline B$ の近傍の上で $C^\infty$ 級で、$\varepsilon\to0$ のとき $W^{1,1}(B)$ で $v$ に収束する(弱微分と畳み込みが交換し、軟化子 の定理「軟化による近似」の 3 を $v$ と $\partial_1v$ に当てる)。よって $(\ast)$ は $v$ についても成り立つ。
$B\cap\Omega=B\setminus\{x_1=0\}$ で、$x_1>0$ では $v=u=1$、$x_1<0$ では $v=u=-1$ である。よって $(\ast)$ の左辺は $\int_{B'}\int_0^1|1-(-1)|\,ds\,dy=2|B'|>0$ である。一方、$\{x_1=0\}$ は測度 $0$ で、開集合 $B\cap\Omega$ の上では $\partial_1v=\partial_1u=0$ なので、右辺は $0$ である。これは矛盾である。$\square$

この $\Omega$ は連結で有界で、境界は切れ込みの所を除けば滑らかである。$u$ は切れ込みの両側で $1$ と $-1$ をとるが、$\Omega$ の中では切れ込みの下を回ってなめらかにつながっている。$W^{1,p}(\mathbb R^N)$ の関数は、ほとんどすべての $x_1$ 方向の直線の上で跳びをもたないので($(\ast)$ はその量的な形である)、延長できない。

仮定を外したときの反例

外す条件反例成り立たなくなること
境界の正則性($C^1$ 級)thm-ext-slit の切れ込みのある立方体延長作用素が存在しない
偶反射(奇反射に替える)原点の近傍で $1$ になる $\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^N)$ の $\mathbb R^N_+$ への制限 $u$$u^\square$ は $x_N=0$ の両側で $1$ と $-1$ になり、prf-ext-slit と同じ議論で $W^{1,p}(\mathbb R^N)$ に属さない
稠密性(cor-ext-density)で $p<\infty$$p=\infty$、$\Omega=(-1,1)$、$u(x)=\lvert x\rvert$$C_c^\infty(\mathbb R)$ の制限で $W^{1,\infty}(\Omega)$ のノルムで近づけない

3 行目:$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R)$ について $\|\varphi'-\operatorname{sgn}\|_{L^\infty(-1,1)}<\frac12$ なら、$\varphi'$ は $(-1,0)$ のほとんど至る所で $-\frac12$ より小さく、$(0,1)$ のほとんど至る所で $\frac12$ より大きい。$\varphi'$ は連続なので $\varphi'(0)\le-\frac12$ かつ $\varphi'(0)\ge\frac12$ となり矛盾する。よって $\|\varphi-u\|_{W^{1,\infty}(\Omega)}\ge\frac12$ である。
2 行目は、正方形の例(ex-ext-square)で反射を偶反射にしなければならない理由でもある。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Remark 4 (ii)(pp. 264–265)、Theorem 9.2(p. 265)、Proposition 9.6(pp. 270–271)、Theorem 9.7 とその証明・Lemma 9.2・Remark 9・Lemma 9.3(pp. 272–277)、Corollary 9.8(p. 277)、Theorem 8.6(p. 209)

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