小対象論法(small object argument)とは、余完備な圏の射の集合 $I$ の始域が相対 $I$ 胞体複体に対して小さいとき、任意の射を、$I$ の射を押し出しで一斉に貼ることを超限回くり返して得る相対 $I$ 胞体複体と、$I$ に対して右持ち上げ性質をもつ射との合成に分解する構成である。これにより、$I$ に対して左持ち上げ性質をもつ射は相対 $I$ 胞体複体のレトラクトとして特徴づけられる。余ファイブラント生成モデル圏の分解の公理を与え、Kan の認識定理の土台になる。
小対象論法(small object argument)は、余完備な圏の射を、与えられた射の集合 $I$ を「貼り付けて」作る射と、$I$ に対する右持ち上げ性質をもつ射との合成に分解する構成である。分解したい射 $f\colon X\to Y$ について、$I$ の射に対する持ち上げの問題をすべて集め、それらを一斉に押し出しで解いて $X$ を大きくする。新しく生じた問題をまた一斉に解き、これを超限回くり返す。$I$ の射の始域が「小さい」という仮定は、十分長くくり返した極限では新しい問題がすべてどこかの段で解かれていることを保証する。
この構成は D. G. Quillen によるモデル圏の構成にさかのぼる。この形の分解が存在すれば、$I$ に対する左持ち上げ性質をもつ射の全体が、$I$ から貼って作る射のレトラクトとして記述できる。モデル圏の公理のうち分解の公理を確かめる標準的な道具であり、余ファイブラント生成モデル圏の理論の土台になる。Kan–Quillenモデル構造 の補題「小対象の議論」と 位相空間のQuillenモデル構造 の補題「胞体を一斉に貼る分解」は、可算回のくり返しで足りる特別な場合である。
この記事では、超限合成・相対 $I$ 胞体複体・小さい対象を定義し、小対象論法、$I$ に対する左持ち上げ性質をもつ射の特徴づけ、余ファイブラント生成モデル圏の認識定理(Kan)を証明する。
以下、$\mathcal C$ は小さい余極限をすべてもつ局所小な圏とする。射のクラス $\mathcal R$ に対する左・右持ち上げ性質と記号 ${}^{\square}\mathcal R$、$\mathcal R^{\square}$ は モデル圏 の定義「左持ち上げ性質と右持ち上げ性質」のとおりとする。射の集合 $I$ について、$I^{\square}$ の射を $I$ 単射的、${}^{\square}(I^{\square})$ の射を $I$ コファイブレーションという。$I\subset{}^{\square}(I^{\square})$ であり、${}^{\square}(I^{\square})$ は ${}^{\square}\mathcal R$ の形のクラスである。
順序数 $\lambda$ を、$\beta\le\gamma$ のときだけ射 $\beta\to\gamma$ がただ一つある圏とみなす。関手 $X\colon\lambda\to\mathcal C$ で、$\lambda$ より小さいすべての極限順序数 $\gamma$ について自然な射 $\operatorname{colim}_{\beta<\gamma}X_\beta\to X_\gamma$ が同型であるものを $\lambda$ 列という。$X_0$ から余極限への射 $X_0\to\operatorname{colim}_{\beta<\lambda}X_\beta$ を $X$ の超限合成という。$\beta+1<\lambda$ を満たすすべての $\beta$ で $X_\beta\to X_{\beta+1}$ が射のクラス $\mathcal D$ に入るとき、これを $\mathcal D$ の射の超限合成という。
$\lambda=2$ の $\lambda$ 列は 1 つの射 $X_0\to X_1$ であり、その超限合成はその射自身である。$\lambda=\omega$ の $\lambda$ 列は射の列 $X_0\to X_1\to X_2\to\cdots$ である。
$I$ を $\mathcal C$ の射の集合とする。射 $X\to X'$ が、ある集合 $S$ と $I$ の射の族 $(g_s\colon A_s\to B_s)_{s\in S}$ による押し出しの図式
$$
\begin{array}{ccc}
\coprod_{s\in S}A_s&\longrightarrow&X\\
\downarrow{\scriptstyle\coprod g_s}&&\downarrow\\
\coprod_{s\in S}B_s&\longrightarrow&X'
\end{array}
$$
の右の辺であるとき、$I$ の射を一斉に貼る射という。一斉に貼る射の超限合成を相対 $I$ 胞体複体といい、その全体を $I\text{-cell}$ と書く。
1 つの射の押し出しの超限合成を相対 $I$ 胞体複体とする定義(Hov99 Definition 2.1.9、Hir03 Definition 10.5.8)もある。二つの定義は同じクラスを与える。一斉に貼る射は 1 つずつの押し出しの超限合成に書き直せ、超限合成の超限合成はまた超限合成に書き直せるからである(Hov99 Lemma 2.1.12、Lemma 2.1.13)。
任意の射のクラス $\mathcal R$ について、${}^{\square}\mathcal R$ は余積・押し出し・超限合成・射の圏でのレトラクトで閉じている。とくに $I\text{-cell}\subset{}^{\square}(I^{\square})$ である。
押し出し・超限合成・レトラクトで閉じていることは モデル圏 の補題「持ち上げ性質で定まるクラスの閉包性」の 1 である(同補題は極限ももつ圏で述べられているが、1 の証明は余極限の普遍性しか使わない。$\lambda$ 列 $X$ はその定義の超限合成の条件を満たす。後続順序数 $\beta+1$ では $D_{<\beta+1}=X_\beta$ で、自然な射は $X_\beta\to X_{\beta+1}$、極限順序数では自然な射は同型である)。余積:$g_s\in{}^{\square}\mathcal R$($s\in S$)と、$q\colon E\to F$($q\in\mathcal R$)への可換な正方形 $u\colon\coprod A_s\to E$、$v\colon\coprod B_s\to F$ が与えられたとする。各 $s$ で、余積の構造射との合成がなす正方形の持ち上げ $h_s\colon B_s\to E$ を選ぶと、余積の普遍性で $h\colon\coprod B_s\to E$ が定まり、$h\circ\coprod g_s=u$、$qh=v$ は各成分で確かめられる。よって一斉に貼る射は ${}^{\square}(I^{\square})$ に入り、その超限合成も入る。$\square$
$\mathcal D$ を $\mathcal C$ の射のクラス、$\kappa$ を基数とする。対象 $A$ が $\mathcal D$ に対して $\kappa$ 小さいとは、$\kappa$ 以上のすべての正則基数 $\lambda$ と、すべての射 $X_\beta\to X_{\beta+1}$ が $\mathcal D$ に入る $\lambda$ 列 $X$ について、自然な写像
$$
\operatorname{colim}_{\beta<\lambda}\operatorname{Hom}(A,X_\beta)\longrightarrow\operatorname{Hom}\bigl(A,\operatorname{colim}_{\beta<\lambda}X_\beta\bigr)
$$
が全単射であることをいう(Hir03 Definition 10.4.1)。ある $\kappa$ について $\kappa$ 小さいとき、$\mathcal D$ に対して小さいという。
左辺は集合の余極限で、$\beta<\lambda$ と $a\colon A\to X_\beta$ の組を、さらに先の段で一致するものどうし同一視したものである。写像が全射であることは、$A\to\operatorname{colim}X_\beta$ が、ある段 $X_\beta$ への射と構造射 $X_\beta\to\operatorname{colim}X_\beta$ の合成に書けることを意味する。小対象論法で使うのはこの全射性だけである。$\kappa$ 小さければ、$\kappa\le\kappa'$ を満たす基数 $\kappa'$ についても $\kappa'$ 小さい。
集合の圏で、集合 $A$ は、$|A|$ より大きい無限基数 $\kappa$ について、すべての写像に対して $\kappa$ 小さい。
$\lambda\ge\kappa$ を正則基数、$X$ を集合の $\lambda$ 列、$X_\infty:=\operatorname{colim}_{\beta<\lambda}X_\beta$、$\iota_\beta\colon X_\beta\to X_\infty$ を構造写像とする。$\lambda$ は極限順序数なので、集合の余極限の作り方から、$X_\infty$ の各元はある $\iota_\beta$ の像に入り、$x\in X_\beta$、$x'\in X_{\beta'}$ について $\iota_\beta(x)=\iota_{\beta'}(x')$ なら、ある $\gamma\ge\beta,\beta'$ で $X_\gamma$ の中で像が一致する。全射:$f\colon A\to X_\infty$ について、各 $a\in A$ に $f(a)$ が像に入る段 $\beta_a$ を選ぶ。$|A|<\lambda$ と $\lambda$ の正則性から $\beta:=\sup_a\beta_a<\lambda$ であり(正則基数 の命題「有界部分集合による判定」)、$f$ は $X_\beta$ を経由する。単射:$a\colon A\to X_\beta$、$a'\colon A\to X_{\beta'}$ の $X_\infty$ での像が一致するなら、各元ごとに一致する段を選び、同じく上限をとると、ある段 $X_\gamma$ ですでに一致する。$\square$
ほかの例として、有限個の非退化単体をもつ単体的集合は、単射に対して $\aleph_0$ 小さい(Hir03 Example 10.4.2)。位相空間の圏では、どの空間も、部分空間への同相な埋め込みに対して小さく(Hov99 Lemma 2.4.1)、コンパクトな空間は、閉集合への埋め込みで補集合の各点が閉集合であるもの(閉 $T_1$ 包含)に対して $\aleph_0$ 小さい(Hov99 Proposition 2.4.2。位相空間のQuillenモデル構造 の補題「コンパクト集合と相対胞体」は、相対胞体の可算列についてこの性質を示している)。どちらも、小ささを射のクラスを限って考えることで成り立つ主張である。
要点:$\kappa$ 以上の正則基数 $\lambda$ をとり、各段で、その段から $Y$ への射に対する持ち上げの問題をすべて押し出しで解く。$\lambda$ 列の余極限への $A$ からの射はある段を経由するので、余極限では問題がすべて解ける。
長さの選択。$\lambda$ を $\kappa$ 以上の正則基数とする。そのようなものはある。$\kappa_0:=\max(\kappa,\aleph_0)$ の後続基数 $\kappa_0^+$ は正則だからである(正則基数 の命題「無限後続基数は正則」)。
列の構成。$\beta<\lambda$ についての超限再帰(超限再帰)で、対象 $Z_\beta$、射 $p_\beta\colon Z_\beta\to Y$、$\gamma\le\beta$ についての射 $\iota_{\gamma\beta}\colon Z_\gamma\to Z_\beta$ を、$\iota_{\beta\beta}=\mathrm{id}$、$\iota_{\gamma\beta}\iota_{\delta\gamma}=\iota_{\delta\beta}$、$p_\beta\iota_{\gamma\beta}=p_\gamma$ を満たすように作る。$Z_0:=X$、$p_0:=f$ とする。$Z_\beta$ と $p_\beta$ が定まったとき、$I$ の射 $g\colon A\to B$ と射 $u\colon A\to Z_\beta$、$v\colon B\to Y$ で $p_\beta u=vg$ を満たす組 $s=(g,u,v)$ の全体を $S_\beta$ とする。$I$ が集合で $\mathcal C$ が局所小なので $S_\beta$ は集合である。$s=(g_s,u_s,v_s)$ について、射 $(u_s)\colon\coprod_{s\in S_\beta}A_s\to Z_\beta$ に沿った $\coprod g_s$ の押し出しを $Z_{\beta+1}$、$Z_\beta\to Z_{\beta+1}$ を $\iota_{\beta,\beta+1}$、$B_s\to Z_{\beta+1}$ を $k_s$ とする。$p_\beta$ と $(v_s)\colon\coprod B_s\to Y$ は $\coprod A_s$ の上で一致するので($p_\beta u_s=v_sg_s$)、押し出しの普遍性により $p_{\beta+1}\iota_{\beta,\beta+1}=p_\beta$、$p_{\beta+1}k_s=v_s$ を満たす $p_{\beta+1}\colon Z_{\beta+1}\to Y$ がただ一つ定まる。極限順序数 $\gamma<\lambda$ では $Z_\gamma:=\operatorname{colim}_{\beta<\gamma}Z_\beta$ とし、$p_\gamma$ を $(p_\beta)_{\beta<\gamma}$ から余極限の普遍性で定める。こうして $\lambda$ 列 $Z$ が得られ、各 $Z_\beta\to Z_{\beta+1}$ は一斉に貼る射である。
分解。$Z:=\operatorname{colim}_{\beta<\lambda}Z_\beta$、$\iota_\beta\colon Z_\beta\to Z$ を構造射、$i:=\iota_0\colon X\to Z$ とし、$p\colon Z\to Y$ を $p\iota_\beta=p_\beta$ で定める。$i$ は一斉に貼る射の超限合成なので $i\in I\text{-cell}$ であり、$pi=p_0=f$ である。
$p\in I^{\square}$。$g\colon A\to B$ を $I$ の射とし、$u\colon A\to Z$、$v\colon B\to Y$ が $pu=vg$ を満たすとする。各 $Z_\beta\to Z_{\beta+1}$ は(長さ $2$ の列の超限合成として)$I\text{-cell}$ に入るので、$A$ の $\kappa$ 小ささ(の全射性)から、ある $\beta<\lambda$ と $u_\beta\colon A\to Z_\beta$ で $u=\iota_\beta u_\beta$ となるものがある。$p_\beta u_\beta=p\iota_\beta u_\beta=pu=vg$ なので $s:=(g,u_\beta,v)\in S_\beta$ である。$h:=\iota_{\beta+1}k_s\colon B\to Z$ とおくと、押し出しの図式の可換性から $k_sg=\iota_{\beta,\beta+1}u_\beta$ なので $hg=\iota_{\beta+1}\iota_{\beta,\beta+1}u_\beta=\iota_\beta u_\beta=u$、また $ph=p_{\beta+1}k_s=v$ である。よって $h$ が持ち上げである。$\square$
構成は射 $f$ のほかに、押し出しと余極限の選び方にしかよらない。選び方を固定すると、射の可換な正方形 $f\to f'$ から各段の集合の写像 $S_\beta\to S'_\beta$ が定まり、分解は関手的になる(Hov99 Theorem 2.1.14 の主張)。
分解から、$I$ コファイブレーションの形が分かる。そのために次のレトラクト論法を使う。
$f=pi$($i\colon X\to Z$、$p\colon Z\to Y$)とする。
1.正方形(上辺 $i\colon X\to Z$、下辺 $\mathrm{id}_Y$、左辺 $f$、右辺 $p$)は $pi=f$ で可換なので、$sf=i$、$ps=\mathrm{id}_Y$ を満たす $s\colon Y\to Z$ がある。射の圏の射 $f\to i\to f$ を、始域では $\mathrm{id}_X$、終域では $s\colon Y\to Z$ と $p\colon Z\to Y$ で与えると、可換性は $sf=i$、$pi=f$ で、合成は $ps=\mathrm{id}_Y$ により恒等射である。2 は矢印を逆にした同じ議論である(正方形 $\mathrm{id}_X$、$p$ に対し $ri=\mathrm{id}_X$、$fr=p$ となる $r\colon Z\to X$ をとる)。$\square$
thm-soa-main の仮定の下で、射 $f\colon X\to Y$ が $I$ コファイブレーションであることと、$X$ を固定した射の圏で相対 $I$ 胞体複体のレトラクトであることは同値である(Hir03 Corollary 10.5.22・10.5.23、Hov99 Corollary 2.1.15)。
$f\in{}^{\square}(I^{\square})$ なら、thm-soa-main の分解 $f=pi$ で $p\in I^{\square}$ なので $f$ は $p$ に対して左持ち上げ性質をもち、lem-soa-retract の 1 により $f$ は $i\in I\text{-cell}$ のレトラクトである。逆は lem-soa-closure による($I\text{-cell}\subset{}^{\square}(I^{\square})$ で、${}^{\square}(I^{\square})$ はレトラクトで閉じている)。$\square$
thm-soa-main の証明は、$\kappa$ 以上の任意の正則基数 $\lambda$ を列の長さに使える。始域が $\aleph_0$ 小さいときは $\lambda=\omega$ でよく、可算回のくり返しで分解が得られる。Kan–Quillenモデル構造 の補題「小対象の議論」と 位相空間のQuillenモデル構造 の補題「胞体を一斉に貼る分解」はこの場合である。そこでは、余極限への射がある段を経由することを、単体の有限性やコンパクト性から直接示している。
環 $R$ 上の加群の圏で $I=\{0\to R\}$ とする。
モデル圏 $\mathcal M$(モデル圏 の定義「モデル構造とモデル圏」)の射の集合 $I$、$J$ が次を満たすとき、$\mathcal M$ は $I$、$J$ で余ファイブラント生成されるといい、$I$ を生成コファイブレーション、$J$ を生成自明コファイブレーションという(Hov99 Definition 2.1.17、Hir03 Definition 11.1.2)。
このとき モデル圏 の命題「持ち上げ性質による四つのクラスの特徴づけ」から、コファイブレーションの全体は ${}^{\square}(I^{\square})$、自明コファイブレーションの全体は ${}^{\square}(J^{\square})$ であり、cor-soa-cof によりそれぞれ相対 $I$ 胞体複体、相対 $J$ 胞体複体のレトラクトの全体である。たとえば Kan–Quillenモデル構造 は、境界の包含 $\partial\Delta^n\hookrightarrow\Delta^n$ とホーンの包含 $\Lambda^n_k\hookrightarrow\Delta^n$ で余ファイブラント生成される(自明ファイブレーションが $I^\square$ であることは同記事の定理「Kan–Quillen モデル構造」の 1、コファイブレーションの特徴づけは同記事の系「単射とアノダイン拡大の特徴づけ」、始域の小ささは上の単体的集合の例による)。
次の定理は、二つの集合 $I$、$J$ と弱同値のクラスから、モデル構造の存在を確かめる方法を与える。
$\mathcal C$ を小さい極限と余極限をもつ局所小な圏、$\mathcal W$ を射のクラス、$I$、$J$ を射の集合とし、次を仮定する。
要点:二つの分解は $I$ と $J$ への小対象論法で作る。5 の一方から、自明ファイブレーションが $I^{\square}$ であること、または自明コファイブレーションが ${}^{\square}(J^{\square})$ であることを導き、残りをレトラクト論法で示す。
レトラクトと分解。$\mathcal W$ のレトラクト閉性と 2 out of 3 は仮定 1 である。$\mathcal C_I$ と $\mathcal F_J$ は持ち上げ性質で定まるのでレトラクトで閉じている(モデル圏 の補題「持ち上げ性質で定まるクラスの閉包性」)。射 $f$ に $I$ で thm-soa-main を当てた分解 $f=pi$ では、$i\in I\text{-cell}\subset\mathcal C_I$(lem-soa-closure)、$p\in I^{\square}\subset\mathcal W\cap\mathcal F_J$(仮定 4)である。$J$ で当てた分解 $f=qj$ では、$j\in J\text{-cell}\subset\mathcal W\cap\mathcal C_I$(仮定 3)、$q\in J^{\square}=\mathcal F_J$ である。
持ち上げ(5 の前半のとき)。$\mathcal W\cap\mathcal C_I\subset{}^{\square}(J^{\square})={}^{\square}\mathcal F_J$ なので、自明コファイブレーションはファイブレーションに対して左持ち上げ性質をもつ。$p\in\mathcal W\cap\mathcal F_J$ をとり、$I$ による分解 $p=qi$($i\in I\text{-cell}$、$q\in I^{\square}$)をとる。$q\in\mathcal W$(仮定 4)と 2 out of 3 から $i\in\mathcal W\cap\mathcal C_I$ なので、$i$ は $p$ に対して左持ち上げ性質をもつ。lem-soa-retract の 2 により $p$ は $q$ のレトラクトであり、$I^{\square}$ はレトラクトで閉じているので $p\in I^{\square}$ である。よって $\mathcal C_I={}^{\square}(I^{\square})$ の射は $p$ に対して左持ち上げ性質をもつ。
持ち上げ(5 の後半のとき)。$\mathcal W\cap\mathcal F_J\subset I^{\square}$ なので、コファイブレーションは自明ファイブレーションに対して左持ち上げ性質をもつ。$j\in\mathcal W\cap\mathcal C_I$ をとり、$J$ による分解 $j=qk$($k\in J\text{-cell}$、$q\in\mathcal F_J$)をとる。$k\in\mathcal W$(仮定 3)と 2 out of 3 から $q\in\mathcal W\cap\mathcal F_J\subset I^{\square}$ なので、$j\in\mathcal C_I$ は $q$ に対して左持ち上げ性質をもつ。lem-soa-retract の 1 により $j$ は $k$ のレトラクトで、$k\in{}^{\square}(J^{\square})$(lem-soa-closure)なので $j\in{}^{\square}(J^{\square})={}^{\square}\mathcal F_J$ である。
どちらの場合も持ち上げの公理が成り立ち、モデル構造が得られる。自明ファイブレーションは $\mathcal C_I^{\square}=I^{\square}$($I\subset\mathcal C_I$ と ${}^{\square}(I^{\square})$ の定義による)、ファイブレーションは $J^{\square}$ なので、$I$、$J$ で余ファイブラント生成される。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 胞体複体のレトラクトもとる | $R=\mathbb Z/6\mathbb Z$ 上の加群で $I=\{0\to R\}$、射 $0\to3\mathbb Z/6\mathbb Z$ | $I$ コファイブレーションが相対 $I$ 胞体複体であること(cor-soa-cof でレトラクトが要る) |
| 左持ち上げ性質で定まるクラス ${}^{\square}\mathcal R$ を考える | 集合の圏で $I=\{\{0\}\hookrightarrow\{0,1\}\}$、$I^{\square}$ の射 $\emptyset\to B$ | 押し出しで閉じていること(lem-soa-closure。$I^{\square}$ は押し出しで閉じない) |
| $I$ が集合である | 集合の圏で $I$ を空集合からの写像 $\emptyset\to B$ 全体のクラスとする | 証明の第 1 段の余積が存在すること |
1 行目:$P:=3\mathbb Z/6\mathbb Z$ は $R=2\mathbb Z/6\mathbb Z\oplus3\mathbb Z/6\mathbb Z$ の直和因子なので射影加群であり(射影加群 の例「冪等元による直和因子」)、全射に対して持ち上げ性質をもつ。よって $0\to P$ は ${}^{\square}(I^{\square})$ に入る(ex-soa-modules の 1)。$0$ からの相対 $I$ 胞体複体は $0\to F$($F$ は自由加群)と同型である(同例の 2)。自由加群 $R^{(S)}$ は $S=\emptyset$ なら $0$、$S\ne\emptyset$ なら $6$ 個以上の元をもつので、$2$ 個の元からなる $P$ とは同型でない。$0\to P$ は $0\to R$ のレトラクトである。
2 行目:$p\colon E\to F$ が $I^{\square}$ に入るのは、$E=\emptyset$ のとき(正方形がない)か、$p$ が全射のときである($e\in E$ と $b\in F$ について、$0\mapsto e$、$1\mapsto b$ の正方形の持ち上げは $p(e')=b$ となる $e'$ を与える)。$B\ne\emptyset$ について $\emptyset\to B$ は $I^{\square}$ に入るが、$A\ne\emptyset$ に沿ったその押し出し $A\to A\sqcup B$ は始域が空でなく全射でないので、$I^{\square}$ に入らない。
3 行目:$Y=\{y\}$、$X=\emptyset$ のとき、組 $(g\colon\emptyset\to B,\ u,\ v\colon B\to Y)$ の全体は、すべての集合 $B$ にわたるので集合でない。この族の余積 $C$ が集合の圏にあったとすると、普遍性から $\operatorname{Hom}(C,\{0,1\})$ は、すべての集合 $B$ にわたる写像 $B\to\{0,1\}$ の族の全体と一対一に対応する。前者は集合で、後者は集合でない(濃度がいくらでも大きい $\operatorname{Hom}(B,\{0,1\})$ へ全射をもつ)ので、余積は存在しない。この $I$ について分解そのものは $X\to X\sqcup Y\to Y$ で得られるが、thm-soa-main の構成は意味をもたない。
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