接続(connection)とは、ベクトル束の切断を微分する規則であり、Leibniz 則 $\nabla(fs)=df\otimes s+f\nabla s$ を満たす写像 $\nabla\colon\mathcal{E}\to\Omega^1\otimes\mathcal{E}$ のことである。多様体上の $C^\infty$ ベクトル束でもスキーム上の $\mathcal{O}_X$ 加群でも同じ形で定義される。合成 $\nabla\circ\nabla$ は $\mathcal{O}$ 線型な曲率を定め、曲率が $0$ の接続を可積分(平坦)という。多様体上の可積分接続は局所的に水平切断の枠をもち、水平切断は局所系をなして基本群のモノドロミー表現を定める(Riemann–Hilbert 対応)。Levi-Civita 接続や Gauss–Manin 接続が代表例である。
前提知識: ベクトル束, 微分形式, Kähler微分, 可微分多様体, 層
接続は、ベクトル束の切断を「微分する」ための装置である。関数 $f$ の微分 $df$ は微分形式として定まるが、ベクトル束の切断 $s$ については異なる点のファイバーを比べる標準的な方法がないので、$ds$ に相当するものは束の構造だけからは定まらない。接続はこの比べ方を一つ指定するデータであり、Leibniz 則を満たす写像 $\nabla$ として公理化される。多様体の場合とスキーム上の加群の層の場合を並べて述べる。
$M$ を可微分多様体、$E\to M$ を階数 $r$ の(実または複素)$C^\infty$ ベクトル束、$\Gamma(E)$ をその $C^\infty$ 切断(切断)の空間、$\Omega^1(M;E):=\Gamma(T^*M\otimes E)$ を $E$ に値をもつ 1 次微分形式の空間とする。$E$ の接続(connection)とは、$\mathbb{R}$ 線型(複素束なら $\mathbb{C}$ 線型)な写像
$$
\nabla\colon\Gamma(E)\longrightarrow\Omega^1(M;E)
$$
であって、任意の $C^\infty$ 関数 $f$ と切断 $s$ に対して Leibniz 則
$$
\nabla(fs)=df\otimes s+f\,\nabla s
$$
を満たすものをいう。ベクトル場 $X$ に対し、$\nabla s$ と $X$ との縮約を $\nabla_Xs\in\Gamma(E)$ と書き、$s$ の $X$ 方向の共変微分という。$\nabla$ は開集合への制限と両立するので、$U\mapsto\Gamma(U,E)$ を切断の層 $\mathcal{E}$ とみなして層の写像 $\nabla\colon\mathcal{E}\to\Omega^1_M\otimes\mathcal{E}$ と考えてもよい。
$M$ が複素多様体で $E$ が正則ベクトル束のときは、$\Omega^1$ を正則 1 形式の層、$\mathcal{E}$ を正則切断の層として同じ条件を課したものを正則接続という。
$f\colon X\to S$ をスキームの射(より一般に環付き空間の射)、$\Omega^1_{X/S}$ を相対Kähler微分の層、$d\colon\mathcal{O}_X\to\Omega^1_{X/S}$ を普遍導分とする。$\mathcal{O}_X$ 加群 $\mathcal{E}$ の($S$ 上の)接続とは、$f^{-1}\mathcal{O}_S$ 線型な層の写像
$$
\nabla\colon\mathcal{E}\longrightarrow\Omega^1_{X/S}\otimes_{\mathcal{O}_X}\mathcal{E}
$$
であって、局所切断 $a\in\mathcal{O}_X$、$s\in\mathcal{E}$ に対して Leibniz 則 $\nabla(as)=da\otimes s+a\nabla s$ を満たすものをいう。組 $(\mathcal{E},\nabla)$ を接続付き加群という。$\mathcal{E}$ が有限階数の局所自由層のとき、これは代数的ベクトル束の接続である。
二つの定義は同じ形をしている。以下では、$\mathcal{O}$ を関数の層($C^\infty$ 関数、正則関数、または $\mathcal{O}_X$)、$\mathcal{A}\subset\mathcal{O}$ を定数の層($\mathbb{R}$、$\mathbb{C}$、または $f^{-1}\mathcal{O}_S$)、$\Omega^1$ を対応する 1 形式の層、$\Omega^p:=\bigwedge^p\Omega^1$(外冪)を $p$ 形式の層とし、外微分 $d\colon\Omega^p\to\Omega^{p+1}$ が $\mathcal{A}$ 線型で、$d\circ d=0$ と $d(\omega\wedge\eta)=d\omega\wedge\eta+(-1)^p\omega\wedge d\eta$($\omega\in\Omega^p$)を満たすことだけを使う(Kähler 微分については Har77 II §8)。$\mathcal{E}$ は $\mathcal{O}$ 加群、$\nabla\colon\mathcal{E}\to\Omega^1\otimes\mathcal{E}$ は Leibniz 則を満たす $\mathcal{A}$ 線型写像とする。
接続 $\nabla$ を、$p\ge0$ に対して
$$
\nabla\colon\Omega^p\otimes\mathcal{E}\longrightarrow\Omega^{p+1}\otimes\mathcal{E},\qquad \nabla(\omega\otimes s):=d\omega\otimes s+(-1)^p\,\omega\wedge\nabla s
$$
で延長する($\omega\wedge(\theta\otimes t):=(\omega\wedge\theta)\otimes t$ と約束する。この写像が $\mathcal{O}$ 上のテンソル積の上で矛盾なく定まることは prop-conn-curvature-linear で確かめる)。合成
$$
R:=\nabla\circ\nabla\colon\mathcal{E}\longrightarrow\Omega^2\otimes\mathcal{E}
$$
を $\nabla$ の曲率(曲率)という。$R=0$ のとき $\nabla$ は可積分(integrable)または平坦(flat)であるといい、$(\mathcal{E},\nabla)$ を可積分接続付き加群、平坦束などという。$\nabla s=0$ を満たす切断 $s$ を水平切断(horizontal section)または平行切断といい、水平切断のなす部分層を $\mathcal{E}^\nabla:=\ker\nabla$ と書く。$\nabla$ は $\mathcal{A}$ 線型なので $\mathcal{E}^\nabla$ は $\mathcal{A}$ 加群の層である。
可積分接続に対する複体 $(\Omega^\bullet\otimes\mathcal{E},\nabla)$ を $(\mathcal{E},\nabla)$ の de Rham 複体といい、その超コホモロジーを係数 $(\mathcal{E},\nabla)$ の de Rhamコホモロジーという。$\mathcal{E}=\mathcal{O}$、$\nabla=d$ のときが通常の de Rham 複体である。
多様体の場合、より一般に $\Omega^1$ が有限階数の局所自由層である場合には、接続をベクトル場(導分)の作用として言い換えられる。
$\Omega^1$ を有限階数の局所自由層とし、$\mathcal{T}:=\mathcal{H}om_{\mathcal{O}}(\Omega^1,\mathcal{O})$ とおく(多様体では $\mathcal{T}$ はベクトル場の層、スキームでは $S$ 上の導分の層 $\mathcal{D}er_S(\mathcal{O}_X)$ である)。$X\in\mathcal{T}$ に対し $\nabla_X:=(X\otimes\mathrm{id})\circ\nabla\colon\mathcal{E}\to\mathcal{E}$ とおく。
多様体の接続を $\nabla_X$ の形で公理化したものを Koszul 接続という。ベクトル束の接続は、主束の接続と区別して線型接続とも呼ばれ、$E=TM$ が接束の場合はとくにアフィン接続という。2 により、可積分性は「すべての $X,Y$ について $[\nabla_X,\nabla_Y]=\nabla_{[X,Y]}$」、すなわち $X\mapsto\nabla_X$ が Lie 括弧を保つことと同値である。
接続は「隣のファイバーへ移る規則」である。$\nabla_Xs=0$ とは $X$ の方向に進むとき $s$ の値が「動かない」ことをいい、これが平行移動の意味である。曲率は、二つの方向に順に進んでから戻ったときにファイバーの元がどれだけずれるかを測る量であり、prop-conn-derivation の 2 はそれを $\nabla_X$ たちの交換子として表す。曲率が $0$ なら、局所的にはすべての方向に同時に「動かない」枠がとれて束は定数係数の束と区別がつかず(thm-conn-flat-frame)、残るのは大域的な巻き戻り、すなわちモノドロミーだけである。
$\mathcal{E}=\mathcal{O}^{\oplus r}$ とし、$s=(s_1,\dots,s_r)$ に対して $\nabla s:=ds=(ds_1,\dots,ds_r)$ とおくと、Leibniz 則は $d$ の Leibniz 則そのものであり、$R=d\circ d=0$ である。これを自明接続という。その水平切断は定数ベクトル($\mathcal{A}^{\oplus r}$ の切断)である。
$\omega=(\omega_{ij})$ を成分が 1 形式の $r\times r$ 行列とし、$\nabla s:=ds+\omega s$ とおくと、$\nabla(as)=da\,s+a\,ds+a\,\omega s=da\otimes s+a\nabla s$ なのでこれも接続である。逆に $\mathcal{O}^{\oplus r}$ の任意の接続 $\nabla'$ に対して $\nabla'-d$ は $\mathcal{O}$ 線型(二つの Leibniz 則の差で $da\otimes s$ が打ち消される)なので $\nabla'=d+\omega$ と書ける。一般に $\mathcal{E}$ の二つの接続の差は $\mathcal{O}$ 線型写像 $\mathcal{E}\to\Omega^1\otimes\mathcal{E}$ であり、接続が一つでも存在すれば接続全体は $\operatorname{Hom}_{\mathcal{O}}(\mathcal{E},\Omega^1\otimes\mathcal{E})$ 上のアフィン空間である。$C^\infty$ 多様体上のベクトル束は、局所的な接続を1の分割で貼り合わせてつねに接続をもつ(Lee18 Chapter 4)。一方、正則・代数的ベクトル束は接続をもつとは限らない。たとえば射影直線上の $\mathcal{O}(1)$ は正則接続をもたない(障害は Atiyah 類であり、ここでは第 1 Chern 類(Chern類)が消えないことによる。Huy05 §4.2。本記事は証明しない)。
リーマン多様体 $(M,g)$ の接束 $TM$ には、計量的($X(g(Y,Z))=g(\nabla_XY,Z)+g(Y,\nabla_XZ)$)かつ捩れなし($\nabla_XY-\nabla_YX=[X,Y]$)な線型接続がただ一つ存在する。これが Levi-Civita接続 であり、その曲率 $R(X,Y)Z$(prop-conn-derivation の 2 の形)が リーマン曲率テンソル である。捩れという概念は $E=TM$ のとき($\nabla_XY$ の両方の引数がベクトル場のとき)にだけ意味をもつ。存在と一意性の証明、Christoffel 記号による局所表示は Levi-Civita接続 の記事に譲る。
代数幾何では、滑らかな射 $f\colon X\to S$(固有射とする)に対して、相対 de Rham コホモロジー層 $\mathcal{H}^q_{\mathrm{dR}}(X/S)$ が標準的な可積分接続をもつ。これが Gauss–Manin接続 であり、パラメータ $S$ に沿ってコホモロジー類を微分する操作である。楕円曲線の Legendre 族では Picard–Fuchs 方程式として現れる。構成・可積分性・正則特異点はその記事に譲る。
$X=\mathbb{C}^\times=\mathbb{C}\setminus\{0\}$(複素多様体としての乗法群 $\mathbb{G}_m$)、$\mathcal{E}=\mathcal{O}$ を自明な正則直線束とし、$a\in\mathbb{C}$ に対して正則接続
$$
\nabla_a:=d+a\,\frac{dt}{t}\colon\mathcal{O}\longrightarrow\Omega^1,\qquad \nabla_a(s)=ds+a\,s\,\frac{dt}{t}
$$
とおく。
$\nabla_a$ の代わりに $d-a\,dt/t$ をとるか、$\gamma$ を逆向きに回るか、モノドロミー表現を平行移動 $P_\gamma$ の逆 $[\gamma]\mapsto P_\gamma^{-1}$ で定めれば、2 の因子は $e^{2\pi ia}$ になる。規約に依らない内容は、モノドロミーが自明であることと $a\in\mathbb{Z}$ が同値であること、および $a$ の $\mathbb{Z}$ を法とする類が同型類を決めることである。$\nabla_a$ は $t=0,\infty$ に 1 位の極をもつ最も簡単な対数接続であり、rem-conn-riemann-hilbert-sources の正則特異点の典型例である。
$k$ を標数 $p>0$ の体、$X$ を $k$ 上滑らかなスキーム、$(\mathcal{E},\nabla)$ を可積分接続付き加群とする。導分 $D\in\mathcal{D}er_k(\mathcal{O}_X)$ の $p$ 乗 $D^p$ は再び導分であり(Leibniz 則を $p$ 回反復した展開の中間項の二項係数が $p$ で割れる)、
$$
\psi(D):=(\nabla_D)^p-\nabla_{D^p}\colon\mathcal{E}\to\mathcal{E}
$$
を $\nabla$ の $p$ 曲率という。$\psi(D)$ は $\mathcal{O}_X$ 線型である(Kat70 §5)。
$X=\mathbb{A}^1_k=\operatorname{Spec}k[t]$、$\mathcal{E}=\mathcal{O}$、$\nabla:=d+dt$、すなわち $\partial:=d/dt$ に対して $\nabla_\partial=\partial+1$ とする。1 次元なので $\nabla$ は可積分である。$k[t]$ 上で $\partial^p=0$ である($\partial^pt^n=n(n-1)\cdots(n-p+1)t^{n-p}$ で、連続する $p$ 個の整数の積は $p$ で割れる)。$\partial$ と恒等写像は可換なので $(\partial+1)^p=\partial^p+1=1$ であり、
$$
\psi(\partial)=(\partial+1)^p-\nabla_{\partial^p}=1-\nabla_0=1\neq0
$$
である。水平切断 $f\in k[t]$ は $f'=-f$ を満たすが、$f\neq0$ なら $\deg f'<\deg f$ なので $f=0$ である。形式的な近傍 $k[\![t]\!]$ でも同じで、$f=\sum c_nt^n$ の漸化式 $(n+1)c_{n+1}=-c_n$ を $n+1=p$ で読むと $c_{p-1}=0$、順に戻って $c_0=0$ となり、以下の各ブロックも同様に消える。したがって、この接続は可積分性を満たすが「どんな近傍にも $0$ でない水平切断をもつ」という性質を満たさず、thm-conn-flat-frame の含意「可積分ならば局所的に水平枠をもつ」は標数 $p$ では破れる。結論を回復する条件がちょうど $\psi=0$ である。すなわち、$X$ が $k$ 上滑らかで $\mathcal{E}$ が有限階数の局所自由層なら、$\mathcal{E}$ が Zariski 局所的に水平切断の基底をもつことと $\psi=0$ は同値である(Cartier の定理、Kat70 Theorem 5.1。本記事は証明しない)。Gauss–Manin 接続の $p$ 曲率は冪零であり(Kat70)、これが結晶コホモロジーの構想の出発点になった。
$\mathcal{E}$ を階数 $r$ の局所自由層、$U$ を $\mathcal{E}|_U$ が枠 $e_1,\dots,e_r$ をもつ開集合とし、成分が $U$ 上の 1 形式である $r\times r$ 行列 $A=(A_{ij})$ を
$$
\nabla e_j=\sum_{i=1}^rA_{ij}\otimes e_i
$$
で定める。$A$ を枠 $(e_i)$ に関する $\nabla$ の接続行列(接続形式)という。
接続行列の変換則には非斉次項 $g^{-1}dg$ が現れるので $A$ は枠に依存する量であってテンソルではないが、曲率行列は共役で変換する。これは $R$ が $\mathcal{E}$ の自己準同型に値をもつ大域的な 2 形式であることの局所的な表れである。$\mathcal{E}=\mathcal{O}^{\oplus r}$ に標準枠をとれば $\nabla=d+A$ であり、ex-conn-trivial の $\omega$ は接続行列そのものである。
$(\mathcal{E},\nabla)$、$(\mathcal{F},\nabla')$ を接続付き加群とする。
2 を示す。$\nabla^\otimes$ が $\mathcal{O}$ 上のテンソル積の上で定まることを見るために、$(as)\otimes t$ と $s\otimes(at)$ の像を比べる。前者の像は $\nabla(as)\otimes t+as\otimes\nabla't=da\otimes s\otimes t+a\,\nabla s\otimes t+a\,s\otimes\nabla't$、後者の像は $\nabla s\otimes at+s\otimes\nabla'(at)=a\,\nabla s\otimes t+da\otimes s\otimes t+a\,s\otimes\nabla't$ であり、一致する。Leibniz 則 $\nabla^\otimes(a\,s\otimes t)=da\otimes(s\otimes t)+a\,\nabla^\otimes(s\otimes t)$ はこの計算に含まれている。
3 を示す。まず $\langle\nabla^\vee\varphi,s\rangle$ が $s$ について $\mathcal{O}$ 線型であることを見る。
$$
\langle\nabla^\vee\varphi,as\rangle=d(a\varphi(s))-\langle\varphi,da\otimes s+a\nabla s\rangle=da\,\varphi(s)+a\,d\varphi(s)-da\,\varphi(s)-a\langle\varphi,\nabla s\rangle=a\langle\nabla^\vee\varphi,s\rangle
$$
であり、加法性は明らかである。よって $\nabla^\vee\varphi\in\mathcal{H}om_{\mathcal{O}}(\mathcal{E},\Omega^1)$ が定まり、$\mathcal{E}$ が有限階数の局所自由層なので $\mathcal{H}om_{\mathcal{O}}(\mathcal{E},\Omega^1)\cong\Omega^1\otimes\mathcal{E}^\vee$ である。$\varphi$ についての Leibniz 則は
$$
\langle\nabla^\vee(a\varphi),s\rangle=d(a\varphi(s))-a\langle\varphi,\nabla s\rangle=da\,\varphi(s)+a\langle\nabla^\vee\varphi,s\rangle=\langle da\otimes\varphi+a\nabla^\vee\varphi,s\rangle
$$
から従う。曲率は局所枠で計算する。$U$ 上の枠 $e_1,\dots,e_r$ とその双対枠 $e^1,\dots,e^r$($e^i(e_j)=\delta_{ij}$)をとり、$\nabla$ の接続行列を $A$ とする。$\langle\nabla^\vee e^i,e_j\rangle=d\delta_{ij}-\langle e^i,\sum_kA_{kj}\otimes e_k\rangle=-A_{ij}$ なので $\nabla^\vee e^i=-\sum_jA_{ij}\otimes e^j$ であり、$\nabla^\vee$ の接続行列は $A^\vee=-A^{\mathsf{t}}$(転置)である。prop-conn-local-matrix により $\nabla^\vee$ の曲率行列は $F^\vee=dA^\vee+A^\vee\wedge A^\vee=-dA^{\mathsf{t}}+A^{\mathsf{t}}\wedge A^{\mathsf{t}}$ であり、$(A^{\mathsf{t}}\wedge A^{\mathsf{t}})_{ij}=\sum_kA_{ki}\wedge A_{jk}=-\sum_kA_{jk}\wedge A_{ki}=-(A\wedge A)_{ji}$ なので $F^\vee=-(dA+A\wedge A)^{\mathsf{t}}=-F^{\mathsf{t}}$ である。よって $\langle R^\vee e^i,e_k\rangle=F^\vee_{ki}=-F_{ik}=-\langle e^i,R(e_k)\rangle$ であり、$\mathcal{O}$ 双線型性により一般の $\varphi,s$ について $\langle R^\vee\varphi,s\rangle=-\langle\varphi,R(s)\rangle$ である。
1 は 2 と同じ型の計算である。$\varphi^*\nabla$ の式が $b\otimes as$ と $b\varphi^\sharp(a)\otimes s$($\varphi^\sharp\colon\varphi^{-1}\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_Y$)で同じ値をとることは、$d(b\varphi^\sharp(a))=\varphi^\sharp(a)\,db+b\,\varphi^*(da)$ と Leibniz 則から確かめられる。$\mathcal{H}om$ の接続の式は、2 と 3 を $\mathcal{E}^\vee\otimes\mathcal{F}$ に適用して $\langle\ ,\ \rangle$ で書き直したものである。$\square$
$M$ を $C^\infty$ 多様体($\mathbb{K}=\mathbb{R}$)または複素多様体($\mathbb{K}=\mathbb{C}$)、$E$ を階数 $r$ の $C^\infty$(それぞれ正則)ベクトル束、$\nabla$ をその接続とする。次は同値である。
2 ⇒ 1 は、水平枠に関する接続行列が $A=0$ なので prop-conn-local-matrix により $F=0$ となることによる。1 ⇒ 2 は局所的な主張なので、$M$ を原点を中心とする $\mathbb{K}^n$ の開立方体(多重円板)$D$、$E$ を自明束とし、$\nabla=d+A$、$A=\sum_kA_k\,dx_k$ としてよい。水平性は連立方程式 $\partial_ks=-A_ks$($k=1,\dots,n$)であり、可積分性は prop-conn-local-matrix の 2 により $\partial_iA_j-\partial_jA_i+A_iA_j-A_jA_i=0$ である。初期値 $s(0)=v$ をもつ解を、まず $x_1$ 軸上で $\partial_1s=-A_1s$ を解き、次にそれを初期値として $x_2$ 方向に解き、と順に $D_m:=D\cap\{x_{m+1}=\dots=x_n=0\}$ 上へ延ばして作る。各段は線型常微分方程式の初期値問題であり、解の存在・一意性と初期値・パラメータへの $C^\infty$(正則)な依存性(Lee13 Appendix D、正則の場合は Del70 I §2)を使う。$D_m$ 上で $k< m$ の方程式も満たされることは、$u:=\partial_ks+A_ks$ が
$$
\partial_mu+A_mu=\bigl(\partial_mA_k-\partial_kA_m+A_mA_k-A_kA_m\bigr)s=0
$$
を満たし(最後の等号が可積分性)、$\{x_m=0\}$ 上で $u=0$ なので、一意性により $u=0$ となることから従う。こうして $\mathrm{ev}_0\colon\mathcal{E}^\nabla(D)\to\mathbb{K}^r$ は全単射になる。中心を $D$ の任意の点に取り替えられるので水平切断の零点集合は開かつ閉であり、連結な $D$ 上の水平切断は一点で消えれば $0$ である。よって $\mathbb{K}^r$ の基底に対応する水平切断 $s_1,\dots,s_r$ は各点で線型独立、すなわち $E|_D$ の枠である。$\mathcal{E}^\nabla|_D\cong\mathbb{K}^r$ は $\mathrm{ev}$ が $D$ に含まれる立方体の上で制限と両立する同型を与えることから、$\mathcal{O}\otimes\mathcal{E}^\nabla\cong\mathcal{E}$ は $(s_i)$ が枠であることから従う。逆向きの主張は、$L$ が局所的に定数層なので $(\mathcal{O}\otimes L,d\otimes\mathrm{id})$ が局所的に自明接続であること、および $\ker(d\colon\mathcal{O}\to\Omega^1)$ が局所定数関数の層であることによる。詳しい証明は Del70 I §2(正則の場合)、Lee18 Chapter 4・7($C^\infty$ の場合)にある。
$C^\infty$ の場合、この定理は全空間 $E$ 上の水平分布に対する Frobeniusの定理 の特別な場合でもある。標数 $p$ では結論が成り立たないことを ex-conn-counterexample-p-curvature で見た。
$X$ を連結な複素多様体とする。
1 は thm-conn-flat-frame の帰結である。二つの関手が対象の上で互いに逆であることはその定理そのものであり、射については、接続と可換な写像は水平切断を水平切断に送り、水平切断が $\mathcal{O}$ 上 $\mathcal{E}$ を生成するので水平切断への制限で決まること、逆に局所系の射の $\mathcal{O}$ 線型な延長が接続と可換であることによる(Del70 I 2.17)。2 は被覆空間の理論であり(Del70 I §1)、$X$ は連結かつ局所単連結なので局所系は普遍被覆上の定数層から表現で降下したものとして得られる。3 は Del70 II Théorème 5.9 であり、本記事は証明しない。
正則特異点の条件は次の意味である。曲線 $X$ を滑らかな固有曲線 $\bar{X}$ に埋め込み、境界点の局所座標を $t$ とするとき、接続がその点で正則特異点をもつとは、適当な局所枠に関して接続行列が高々 1 位の極 $A=A_0\,dt/t+(\text{正則})$ をもつことをいい、これは解が扇形領域で高々多項式的 $|s|\le C|t|^{-N}$ にしか増大しないことと同値である(Fuchs の判定法、Del70 II §1・§4)。高次元では曲線への制限で定義するか、正規交叉因子に沿う対数極をもつ延長で定義する。prop-conn-gm-monodromy の $\nabla_a$ は $t=0,\infty$ で正則特異点をもつ。正則性の条件を外すと 3 は成り立たない。たとえば $\mathbb{G}_m$ 上の $d+dt$ は水平切断 $e^{-t}$ をもち、その局所系はモノドロミーが自明で $(\mathcal{O},d)$ の局所系と同型だが、$(\mathcal{O},d+dt)$ と $(\mathcal{O},d)$ は代数的には同型でない(同型 $g\in\mathbb{C}[t,t^{-1}]^\times=\{ct^n\}$ は $dg/g=dt$ を満たさねばならないが $dg/g=n\,dt/t$ である)。解 $e^{-t}$ が $t=\infty$ で指数的に増大するので、この特異点は正則でない。$C^\infty$ 多様体上でも 1 と 2 は同じ証明で成り立つ。1〜3 をD加群の言葉に一般化したものが Kashiwara と Mebkhout による Riemann–Hilbert 対応(Riemann–Hilbert対応)である。
多様体 $M$ の $C^\infty$ 曲線 $\gamma\colon[0,1]\to M$ に沿って、接続 $\nabla$ は線型同型 $P_\gamma\colon E_{\gamma(0)}\to E_{\gamma(1)}$(平行移動)を定める。局所枠で $\gamma$ に沿う切断 $s(\tau)$ を書くと、$\nabla_{\gamma'}s=0$ は線型常微分方程式 $s'+A(\gamma'(\tau))s=0$ であり、初期値 $s(0)$ に解 $s(1)$ を対応させるのが $P_\gamma$ である。点 $x$ を基点とする閉路の平行移動全体は $\mathrm{GL}(E_x)$ の部分群(ホロノミー群)をなす。$\nabla$ が可積分なら $P_\gamma$ は $\gamma$ の端点を固定するホモトピー類だけで決まる。実際、thm-conn-flat-frame の水平枠で見れば一つの枠の定義域内の道に沿う平行移動は道に依らず、ホモトピーの像は有限個の枠の定義域で覆われる。したがって可積分接続はモノドロミー表現 $\pi_1(M,x)\to\mathrm{GL}(E_x)$ を定め、これが thm-conn-riemann-hilbert の 2 の表現である。prop-conn-gm-monodromy の 2 は、この表現が生成元を $e^{-2\pi ia}$ に送ることを述べている。
ベクトル束の接続は主束の接続(Ehresmann 接続、接続 1 形式)と枠束を通じて対応する。曲率の不変多項式から作られる閉形式の de Rham 類は接続の取り方に依らず、これが Chern–Weil 理論による特性類(Chern類)の構成である(MS74 Appendix C)。標数 $0$ の体上の滑らかな代数多様体では、可積分接続をもつ $\mathcal{O}_X$ 加群は、$\mathcal{O}_X$ 加群の構造を微分作用素の層 $\mathcal{D}_X$ の作用に延ばしたもの、すなわち $\mathcal{D}_X$ 加群と同じものである(証明は D加群 の記事に譲る)。標数 $p$ では ex-conn-counterexample-p-curvature のとおり $\nabla$ だけでは高階の微分作用素の作用が決まらず、分割冪の微分作用素 $\partial^{[n]}$ を含むすべての微分作用素の作用(stratification)を別に与える必要がある。これを分割冪構造で統制するのが結晶コホモロジーの理論である。
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