場合の数の数え方の体系(twelvefold way)とは、$n$ 個の玉を $k$ 個の箱に入れる方法を、玉・箱を区別するか否かと、制約なし・各箱に高々 1 個・1 個以上で 12 通りに分けて数える整理である。入れ方を写像 $f\colon\{1,\dots,n\}\to\{1,\dots,k\}$ とみると、高々 1 個は単射、1 個以上は全射にあたる。重複順列 $k^n$、順列 $k(k-1)\cdots(k-n+1)$、重複組合せ $\binom{n+k-1}{n}$、組合せ $\binom{k}{n}$ はその 4 つである。区別する玉と箱での全射の数は包除原理により $\sum_{j=0}^{k}(-1)^j\binom{k}{j}(k-j)^n=k!\,S(n,k)$($S(n,k)$ は第 2 種 Stirling 数)であり、玉も箱も区別しないときは分割数が現れる。
高校で習う場合の数の公式を、数値つきで並べる。
$3$ 人それぞれに、$4$ 種類の飲み物から 1 つずつ配る(同じ飲み物を何人がもらってもよい)。$4^3=64$ 通り。
$4$ 脚の椅子に $3$ 人が座る(1 脚に 1 人まで)。${}_4\mathrm{P}_3=4\cdot3\cdot2=24$ 通り。
$4$ 脚の椅子から座る $3$ 脚を選ぶ。${}_4\mathrm{C}_3=4$ 通り。
$4$ 種類の味から、同じ味を何個選んでもよいとしてアイスを $3$ 個選ぶ。${}_4\mathrm{H}_3={}_6\mathrm{C}_3=20$ 通り。
問題文を読んで、この 4 つのどれを使うかを決めるのが高校の場合の数である。しかし、4 つの公式がなぜこの 4 つなのか、ほかにどんな数え方がありうるのかは、教科書ではあまり説明されない(→ thm-sc-twelvefold)。
4 つの問題は、どれも「$n$ 個の玉を $k$ 個の箱に入れる」という形に書き直せる。飲み物の問題(ex-sc-drinks)では、人が玉、飲み物が箱である(人 $i$ がもらう飲み物を「玉 $i$ を入れる箱」とみなす)。椅子の問題(ex-sc-chairs)では、人が玉、椅子が箱で、1 つの箱に玉は高々 1 個である。組合せ(ex-sc-choose-chairs)は、椅子の問題で玉(座る人)を区別せず、どの椅子が埋まるかだけを問う場合である。アイスの問題(ex-sc-ice)では、選ぶ 3 個のアイスが玉、味が箱であり、玉どうしは区別しない(どのアイスが何番目に選ばれたかは問わない)。
すると、問題を分ける観点は 2 つにまとまる。
| 高校 | 大学 | ボックス |
|---|---|---|
| 重複順列 | 写像全体 $K^N$ | prop-sc-maps-injections |
| 順列 | 単射 | prop-sc-maps-injections |
| 組合せ | $K$ の $n$ 元部分集合 | thm-sc-stars-bars |
| 重複組合せ | 個数の列 | thm-sc-stars-bars |
| 組分け | 集合の分割、Stirling 数 | def-sc-stirling-partition |
| $n!$・$k!$ で割る | 同値類の大きさがそろう | prop-sc-surj-stirling |
以下、$n\ge1$、$k\ge1$ とし、玉の集合を $N:=\{1,2,\dots,n\}$、箱の集合を $K:=\{1,2,\dots,k\}$ とする。玉 $i$ を箱 $f(i)$ に入れることで、入れ方と写像 $f\colon N\to K$ が一対一に対応する。$N$ から $K$ への写像全体を $K^N$ と書く。
$f,g\in K^N$ について、次のように定める。
$n=k=2$ とし、写像 $f$ を $(f(1),f(2))$ と書くと、$K^N$ は $(1,1),(1,2),(2,1),(2,2)$ の $4$ 個である。
同値類の個数を直接数えるのは難しい。そこで、各同値類を具体的なデータで言い表す。
$f,g\in K^N$ について次が成り立つ。
2 の $\pi(f)$ は、$N$ を空でない互いに交わらない部分集合(ブロック)に分けたもの、すなわち $N$ の集合の分割である。逆に、ブロックの個数が $k$ 以下の分割は、ブロックを相異なる箱に入れることで必ずある $f$ の $\pi(f)$ として現れる。3 の列は、$n$ を正の整数の和に表したもので、$n$ の分割という。例えば $n=4$ の分割は $4,\ 3+1,\ 2+2,\ 2+1+1,\ 1+1+1+1$ の $5$ 個である。
lem-sc-invariants により、12 通りの数え上げは次の 4 種類のデータの数え上げに言い換わる。
| 玉 | 箱 | 入れ方を表すデータ |
|---|---|---|
| 区別する | 区別する | 写像 $f\colon N\to K$ そのもの |
| 区別しない | 区別する | 個数の列 $(a_1,\dots,a_k)$、$a_x\ge0$、$\sum a_x=n$ |
| 区別する | 区別しない | $N$ の集合の分割(ブロックは $k$ 個以下) |
| 区別しない | 区別しない | $n$ の分割(項は $k$ 個以下) |
単射・全射の条件は、それぞれ「各 $a_x\le1$(ブロックの大きさがすべて $1$)」「各 $a_x\ge1$(ブロックがちょうど $k$ 個)」と読み替えられる。
表に現れる記号を定める。$k^{\underline n}:=k(k-1)\cdots(k-n+1)$($n$ 個の積。$n>k$ なら因数 $0$ を含むので $0$)を下降階乗冪という。二項係数 $\binom ab$ は $a$ 元集合の $b$ 元部分集合の個数で、$0\le b\le a$ なら $\frac{a!}{b!\,(a-b)!}$、$b>a$ なら $0$ である。条件 $P$ について $[P]$ は、$P$ が成り立てば $1$、成り立たなければ $0$ を表す。
$n\ge0$、$j\ge0$ とする。
$\{1,2,3\}$ を 2 ブロックに分ける方法は $\{1\}\{2,3\}$、$\{2\}\{1,3\}$、$\{3\}\{1,2\}$ なので $S(3,2)=3$ である。$6$ を 3 項に分ける方法は $4+1+1$、$3+2+1$、$2+2+2$ なので $p_3(6)=3$ である。
$n\ge1$、$k\ge1$ とする。$n$ 個の玉を $k$ 個の箱に入れる方法の数は次の表のとおりである。
| 玉 | 箱 | 制約なし | 各箱に高々 1 個(単射) | 各箱に 1 個以上(全射) |
|---|---|---|---|---|
| 区別する | 区別する | $k^n$ | $k^{\underline n}$ | $k!\,S(n,k)$ |
| 区別しない | 区別する | $\binom{n+k-1}n$ | $\binom kn$ | $\binom{n-1}{k-1}$ |
| 区別する | 区別しない | $\sum_{j=1}^kS(n,j)$ | $[n\le k]$ | $S(n,k)$ |
| 区別しない | 区別しない | $\sum_{j=1}^kp_j(n)$ | $[n\le k]$ | $p_k(n)$ |
さらに、区別する玉を区別する箱に入れる全射の個数は
$$
k!\,S(n,k)=\sum_{j=0}^k(-1)^j\binom kj(k-j)^n
$$
である。
証明は次節で、行ごとに与える。表の各項が何に当たるかを先に見ておく。第 1 行の 3 つは重複順列・順列・(高校では名前のない)全射の個数である。第 2 行は重複組合せ・組合せと、「各箱に 1 個以上の重複組合せ」である。第 3 行と第 4 行は箱を区別しない場合で、高校では「組分け」として一部だけを扱う。単射の列の $[n\le k]$ は、箱を区別しないと「すべての玉を別々の箱に入れる」入れ方が 1 通りしかないことを表している。
$|K^N|=k^n$ であり、単射 $N\to K$ の個数は $k^{\underline n}$ である。
玉 $1,2,\dots,n$ の行き先を順に決める。制約がなければ各玉に $k$ 通りの選び方があり、積の法則により $k^n$ 通りである。単射では、玉 $i$ の行き先は、すでに使った $i-1$ 個の箱を除いた $k-(i-1)$ 通りから選ぶので、$k(k-1)\cdots(k-n+1)=k^{\underline n}$ 通りである($n>k$ なら玉 $k+1$ の選び方が $0$ 通りで、全体も $0$)。$\square$
玉を区別しない場合は、lem-sc-invariants の 1 により、個数の列 $(a_1,\dots,a_k)$ を数えればよい。
$n\ge0$、$k\ge1$ とする。
高校の記号では ${}_k\mathrm{H}_n={}_{n+k-1}\mathrm{C}_n$ が 1 の主張である(ex-sc-ice は $n=3$、$k=4$ の場合で $\binom63=20$)。2 は「先に各箱に 1 個ずつ入れてから、残りを自由に入れる」と言い換えられる。玉を区別しないときはこの言い換えで正しく数えられるが、玉を区別するときには重複して数えてしまう(ex-sc-give-one-first)。
最後に、区別する玉を区別する箱に入れる全射を数える。そのために包除原理を用意する。
有限集合 $X$ とその部分集合 $A_1,\dots,A_k$ について、$I\subset K=\{1,\dots,k\}$ に対し $A_I:=\bigcap_{x\in I}A_x$($A_\emptyset:=X$)とおくと、どの $A_x$ にも属さない $X$ の元の個数は
$$
\sum_{I\subset K}(-1)^{|I|}|A_I|=\sum_{j=0}^k(-1)^j\sum_{|I|=j}|A_I|
$$
である。
左辺は、各元 $u\in X$ について、$u\in A_I$ となる $I$ にわたる $(-1)^{|I|}$ の和を足し合わせたものである。$u$ がちょうど $m$ 個の $A_x$ に属するとし、その添字の集合を $M$ とすると、$u\in A_I$ となるのは $I\subset M$ のときなので、$u$ の寄与は
$$
\sum_{I\subset M}(-1)^{|I|}=\sum_{j=0}^m\binom mj(-1)^j=(1-1)^m
$$
である(二項定理)。これは $m=0$ なら $1$、$m\ge1$ なら $0$ である。よって左辺は、どの $A_x$ にも属さない元の個数に等しい。$\square$
全射 $N\to K$ の個数は $\displaystyle\sum_{j=0}^k(-1)^j\binom kj(k-j)^n$ である。
$X:=K^N$、$A_x:=\{f\in X\mid x\notin f(N)\}$(箱 $x$ が空になる入れ方)とする。全射とは、どの $A_x$ にも属さない $f$ のことである。$|I|=j$ のとき、$A_I$ は $I$ の箱をすべて空にする写像、すなわち $N$ から $K\setminus I$($k-j$ 元)への写像の全体なので、prop-sc-maps-injections と同じ理由で $|A_I|=(k-j)^n$ である。$j$ 元部分集合 $I$ は $\binom kj$ 個あるので、lem-sc-inclusion-exclusion から主張を得る。$\square$
包除原理を指示関数の期待値から導く方法は 期待値の線形性と数え上げ で扱う。
$n=5$、$k=3$ では $3^5-3\cdot2^5+3\cdot1^5-0=243-96+3=150$ である。
lem-sc-invariants の 2 により、区別する玉を区別しない箱に入れる方法は、$N$ の集合の分割でブロックが $k$ 個以下のものと一対一に対応し、全射であることはブロックがちょうど $k$ 個であることにあたる。よって、全射の入れ方の数は $S(n,k)$、制約のない入れ方の数は $\sum_{j=1}^kS(n,j)$ である。単射ではすべてのブロックが 1 元集合になり、そのような分割は $n\le k$ のときだけ 1 つある。これで thm-sc-twelvefold の第 3 行が示された。第 1 行の全射の個数を $S(n,k)$ で書くには、次の命題を使う。
全射 $N\to K$ の個数は $k!\,S(n,k)$ である。したがって
$$
S(n,k)=\frac1{k!}\sum_{j=0}^k(-1)^j\binom kj(k-j)^n
$$
である。
全射 $f$ に、ブロックがちょうど $k$ 個の分割 $\pi(f)$ を対応させる。ブロックが $k$ 個の分割 $\{B_1,\dots,B_k\}$ を 1 つ固定すると、$\pi(f)$ がこの分割になる全射 $f$ は、各ブロックに相異なる箱を 1 つずつ割り当てる方法、すなわち $\{B_1,\dots,B_k\}$ から $K$ への全単射と一対一に対応し、その個数は $k!$ である。よって全射の個数は $k!\,S(n,k)$ である。後半は prop-sc-surjections と合わせて得られる。$\square$
ex-sc-surj-5-3 から $S(5,3)=150/3!=25$ である。「$k!$ で割る」ことが正しいのは、どの全射も $k!$ 個ずつ同じ分割を与えるからである。空の箱がありうる場合にはこれが崩れる(ex-sc-divide-by-factorial)。
Stirling 数は、公式よりも次の漸化式で計算するほうが速い。
$n\ge1$、$j\ge1$ について $S(n,j)=S(n-1,j-1)+j\,S(n-1,j)$ である。
$\{1,\dots,n\}$ の $j$ ブロックの分割を、元 $n$ が 1 元のブロック $\{n\}$ をなすかどうかで分ける。なすものは、$\{n\}$ を除くと $\{1,\dots,n-1\}$ の $j-1$ ブロックの分割になり、これは一対一の対応なので $S(n-1,j-1)$ 個ある。なさないものは、$n$ を取り除くと $\{1,\dots,n-1\}$ の $j$ ブロックの分割になる($n$ のいたブロックは空にならない)。逆に $\{1,\dots,n-1\}$ の $j$ ブロックの分割から、$n$ をどのブロックに加えるかで $j$ 通りの分割が得られ、それらは互いに異なる。よってこの種類は $j\,S(n-1,j)$ 個ある。$\square$
漸化式から、例えば $S(4,2)=S(3,1)+2\,S(3,2)=1+2\cdot3=7$ である。こうして求めた $S(n,j)$ の表($1\le j\le n\le7$)は次のとおりである。
| $n\backslash j$ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | ||||||
| 2 | 1 | 1 | |||||
| 3 | 1 | 3 | 1 | ||||
| 4 | 1 | 7 | 6 | 1 | |||
| 5 | 1 | 15 | 25 | 10 | 1 | ||
| 6 | 1 | 31 | 90 | 65 | 15 | 1 | |
| 7 | 1 | 63 | 301 | 350 | 140 | 21 | 1 |
行の和 $B_n:=\sum_{j}S(n,j)$ は $1,2,5,15,52,203,877$($n=1,\dots,7$)であり、$n$ 元集合の分割の総数を表す(Bell 数)。$n\le k$ なら、区別する $n$ 個の玉を区別しない $k$ 個の箱に入れる方法の数は $B_n$ である。
写像全体をファイバーの分割で分類すると、第 1 行と第 3 行を結ぶ等式が得られる。
$n\ge1$、$k\ge1$ について
$$
k^n=\sum_{j=1}^nS(n,j)\,k^{\underline j}
$$
である。
写像 $f\colon N\to K$ を分割 $\pi(f)$ で分類する。ブロックが $j$ 個の分割 $\{B_1,\dots,B_j\}$ を固定すると、$\pi(f)$ がこの分割になる $f$ は、各ブロックに相異なる箱を割り当てる方法、すなわちブロックの集合から $K$ への単射と一対一に対応し、prop-sc-maps-injections によりその個数は $k^{\underline j}$ である($j>k$ なら $0$)。$j$ について足すと $|K^N|=k^n$ になる。$\square$
下降階乗冪でべき和の公式を導く話は 数列の和と差分 で扱う。
$n=3$ では $k^3=k+3k(k-1)+k(k-1)(k-2)$ であり、右辺を展開すると両辺は $k$ の多項式として等しい。例えば $k=2$ では $8=2+6+0$ である。
lem-sc-invariants の 3 により、区別しない $n$ 個の玉を区別しない $k$ 個の箱に入れる方法は、$n$ の分割で項が $k$ 個以下のものと一対一に対応する。全射は項がちょうど $k$ 個の分割、単射はすべての項が $1$ の分割($n\le k$ のときだけ 1 つ)にあたる。これで thm-sc-twelvefold の第 4 行が示された。
$p_j(n)$ には、prop-sc-surj-stirling のように二項係数と冪だけで書ける簡単な式がない。計算には次の漸化式を使うのが基本である。
$n\ge1$、$j\ge1$ について $p_j(n)=p_{j-1}(n-1)+p_j(n-j)$ である。ただし $m<0$ なら $p_j(m):=0$ とする。
$n=\lambda_1+\cdots+\lambda_j$($\lambda_1\ge\cdots\ge\lambda_j\ge1$)を、$\lambda_j=1$ かどうかで分ける。$\lambda_j=1$ のものは、最後の $1$ を除くと $n-1$ の $j-1$ 項の分割になり、この対応は一対一なので $p_{j-1}(n-1)$ 個ある。$\lambda_j\ge2$ のものは、各項から $1$ を引くと $n-j$ の $j$ 項の分割 $(\lambda_1-1)+\cdots+(\lambda_j-1)$ になり、逆に各項に $1$ を足せば戻るので $p_j(n-j)$ 個ある($n< j$ なら $0$ 個)。$\square$
分割数を母関数の係数として数える方法は 分割の母関数 で扱う。
漸化式から $p_3(6)=p_2(5)+p_3(3)=2+1=3$ となり、ex-sc-small-stirling と一致する。$p(n)$ は $n=1,2,\dots,10$ で $1,2,3,5,7,11,15,22,30,42$ であり、$p(100)=190569292$ である。
分割数には母関数 $\sum_{n\ge0}p(n)x^n=\prod_{m\ge1}\frac1{1-x^m}$(Bog17 §4.2 の Problem 203、p. 82 で問題として導かせる)や漸近式など多くの結果があるが、本記事では扱わず、証明もしない。
高校の記号で書くと、thm-sc-twelvefold の上 2 行は次のとおりである($k$ 個の箱に $n$ 個の玉)。
| 制約なし | 単射 | |
|---|---|---|
| 玉も箱も区別する | 重複順列 ${}_k\Pi_n=k^n$ | 順列 ${}_k\mathrm{P}_n=k^{\underline n}$ |
| 玉を区別しない | 重複組合せ ${}_k\mathrm{H}_n={}_{n+k-1}\mathrm{C}_n$ | 組合せ ${}_k\mathrm{C}_n$ |
「組合せは順列を $n!$ で割ったもの」という関係 ${}_k\mathrm{C}_n={}_k\mathrm{P}_n/n!$ は、単射の列で玉の区別を外すことにあたる。高校の「組分け」は第 3 行の全射の列の一部である。
6 人を 3 つの組に分ける方法(組に名前はなく、どの組も 1 人以上)は $S(6,3)=90$ 通りで、組の人数で分けると
区別を外すときに「$n!$ で割る」「$k!$ で割る」が正しい条件は、次のようにまとめられる。単射 $f$ では $f\circ\sigma=f$ なら $\sigma$ は恒等写像である($f(\sigma(i))=f(i)$ と単射性から $\sigma(i)=i$)。したがって、玉の付け替え $n!$ 通りは $f$ から相異なる $n!$ 個の単射を作り、玉を区別しないときの同値類はどれもちょうど $n!$ 個の単射からなる。同様に全射 $f$ では $\tau\circ f=f$ なら $\tau$ は $f(N)=K$ の各点を動かさないので恒等写像であり、箱を区別しないときの同値類はどれもちょうど $k!$ 個の全射からなる(prop-sc-surj-stirling)。この条件が外れると、割り算は正しくない。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 玉を区別しない | 先に 1 個ずつ配る数え方 | ex-sc-give-one-first |
| 全射 | $k!$ で割れば箱の区別を外せる | ex-sc-divide-by-factorial |
| 単射 | $n!$ で割れば玉の区別を外せる | ex-sc-divide-multiset |
5 個の玉を 3 個の箱に、どの箱も空にならないように入れる。玉も箱も区別するなら $3!\,S(5,3)=150$ 通り、玉を区別せず箱を区別するなら $\binom42=6$ 通り(個数の列 $(3,1,1),(1,3,1),(1,1,3),(2,2,1),(2,1,2),(1,2,2)$)、玉を区別し箱を区別しないなら $S(5,3)=25$ 通り、どちらも区別しないなら $p_3(5)=2$ 通り($3+1+1$ と $2+2+1$)である。
区別する 5 個の玉を区別する 3 個の箱に、どの箱も空にならないように入れる。「まず各箱に 1 個ずつ入れる($5\cdot4\cdot3=60$ 通り)、残りの 2 個を自由に入れる($3^2=9$ 通り)」と数えると $540$ 通りになるが、正しくは $150$ 通りである。この数え方は、各入れ方を 1 回ずつ数えるという条件を満たさない。箱 1 に玉 $\{1,2,3\}$、箱 2 に玉 $4$、箱 3 に玉 $5$ という入れ方は、「最初に箱 1 に入れた玉」が $1,2,3$ のどれでもよいので 3 回数えられる。個数が $(3,1,1)$ 型の入れ方(60 通り)は 3 回ずつ、$(2,2,1)$ 型(90 通り)は $2\cdot2=4$ 回ずつ数えられ、$60\cdot3+90\cdot4=540$ となる。玉を区別しないときは「最初の 1 個」を選ぶ自由がないので、同じ方法で正しく数えられる(thm-sc-stars-bars の 2。5 個なら $\binom{2+3-1}2=6=\binom42$)。
区別する 2 個の玉を、区別しない 3 個の箱に入れる。正しい数は $S(2,1)+S(2,2)=2$ 通り(同じ箱か、別々の箱か)である。「区別する箱なら $3^2=9$ 通りなので、$3!$ で割る」と $\frac96=1.5$ となり、整数にもならない。$9$ 個の写像のうち「2 個とも同じ箱」の 3 個と「別々の箱」の 6 個がそれぞれ 1 つの同値類をなし、同値類の大きさが $k!=6$ にそろっていない。写像が全射でないと、空の箱どうしを入れ替える $\tau\ne\mathrm{id}$ で $\tau\circ f=f$ となりうるからである。「$k!$ で割る」という含意は、全射という仮定を外すと成り立たない。
3 種類の味から、同じ味を選んでもよいとしてアイスを 2 個選ぶ。玉(アイス)を区別しない入れ方で、正しくは $\binom{2+3-1}2=6$ 通りである。「区別すれば $3^2=9$ 通り、アイスの順序 $2!$ で割る」と $4.5$ となり誤りである。9 通りのうち、味の異なる選び方は順序違いで 2 回ずつ現れるが、同じ味を 2 個選ぶ 3 通りはアイスを入れ替えても変わらないので 1 回ずつしか現れず、$2!$ で割ると半分に数えられてしまう。「$n!$ で割る」は、単射という仮定を外すと成り立たない。これは高校で「重複組合せは組合せの公式から直接は出ない」理由でもあり、thm-sc-stars-bars のように別の対応を作る必要がある。
集合 $\{1,2,\dots,2n\}$($n$ は正の整数)の順列 $(x_1,x_2,\dots,x_{2n})$ が性質 $P$ をもつとは、$\{1,2,\dots,2n-1\}$ の少なくとも 1 つの $i$ について $|x_i-x_{i+1}|=n$ となることをいう。各 $n$ について、性質 $P$ をもつ順列のほうが、もたない順列より多いことを示せ。
出典:第 30 回国際数学オリンピック(1989 年)第 6 問の和訳(原文の $x_m$ は $x_{2n}$ とした)Oly89。
$k=1,\dots,n$ について、$k$ と $k+n$ が隣り合う順列の集合を $A_k$ とする。性質 $P$ をもつ順列の集合は $A_1\cup\cdots\cup A_n$ である。$k$ と $k+n$ を 1 つのかたまりとみなすと、かたまりの内部の順序が 2 通り、かたまりと残り $2n-2$ 個の並べ方が $(2n-1)!$ 通りなので $|A_k|=2\,(2n-1)!$ である。同様に $j\ne k$ なら $|A_j\cap A_k|=4\,(2n-2)!$ である。
ここで $\sum_k|A_k|=2n\cdot(2n-1)!=(2n)!$ となり、順列の総数と等しい。しかしこれは「すべての順列が性質 $P$ をもつ」ことを意味しない。2 つ以上の $A_k$ に属する順列を重複して数えているからである。重複を除くために、次の不等式を使う:どの有限集合 $A_1,\dots,A_n$ についても
$$
|A_1\cup\cdots\cup A_n|\ge\sum_k|A_k|-\sum_{j< k}|A_j\cap A_k|.
$$
実際、ちょうど $m\ge1$ 個の $A_k$ に属する元は右辺で $m-\binom m2=1-\binom{m-1}2\le1$ 回数えられ、どの $A_k$ にも属さない元は $0$ 回数えられるので、右辺は左辺以下である。これを使うと
$$
|A_1\cup\cdots\cup A_n|\ge(2n)!-\binom n2\cdot4\,(2n-2)!=(2n)!-\frac{n-1}{2n-1}(2n)!=\frac n{2n-1}(2n)!>\frac{(2n)!}2
$$
となり、性質 $P$ をもつ順列は全体の半分より多い。$\square$
1 つ目の等式 $\sum_k|A_k|=(2n)!$ は、「無作為な順列で隣り合う組 $\{k,k+n\}$ の個数の期待値が $1$」と言い換えられる。期待値が $1$ でも、その値が $0$ になる確率が小さいとは限らない。上の不等式は包除原理を 2 項で打ち切ったもので、Bonferroni の不等式の 1 つ(2 項で打ち切った下からの評価)である。全部の項を使えば lem-sc-inclusion-exclusion から正確な個数
$$
|A_1\cup\cdots\cup A_n|=\sum_{j=1}^n(-1)^{j-1}\binom nj2^j(2n-j)!
$$
が得られ($j$ 組のかたまりを作る数え方)、$n=2,3,4$ で $16,480,26496$(全体の $0.667,0.667,0.657$ 倍)となる。$n\to\infty$ でこの割合は $1-\frac1e=0.632\ldots$ に近づく(本記事では証明しない)。「重複して数えたものを包除原理で直す」という ex-sc-give-one-first と同じ構図が、ここでは不等式の形で使われている。
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