速度と加速度(velocity and acceleration)とは、時刻 $t$ で位置 $(x(t),y(t))$ にある点について、位置を微分したベクトル $\vec v=(x',y')$ と、それをもう一度微分したベクトル $\vec a=(x'',y'')$ である。速度は、$x'$、$y'$ が連続で $\vec v\ne\vec 0$ の時刻では軌道の接線の向きを向き、大きさ(速さ)が一定であることは、つねに $\vec v\cdot\vec a=0$ であることと同じである。これから、半径 $r$ の円を一定の速さ $V$ で回る点の加速度は中心を向き、大きさ $\frac{V^2}{r}$ であることが導かれる。加速度の接線方向の成分は速さの変化率を表す。加速度がいつも原点を向く運動では面積速度が一定になり、Kepler の第 2 法則の数学的な中身になる。
前提知識: 微分係数と導関数の定義(高校数学), 連鎖律(高校数学), 逆関数の微分, ベクトルの内積(高校数学)
数学 III では、時刻 $t$ とともに動く点について、位置を $t$ で微分したものを速度、速度を $t$ で微分したものを加速度と習う。直線上の運動では、速度と加速度は符号のついた数である。
真上に投げたボールの、$t$ 秒後の高さが $h(t)=20t-5t^2$(メートル)だとする。速度と加速度は
$$
v(t)=h'(t)=20-10t,\qquad a(t)=v'(t)=-10
$$
である。
| $t$ | $0$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 高さ $h$ | $0$ | $15$ | $20$ | $15$ | $0$ |
| 速度 $v$ | $20$ | $10$ | $0$ | $-10$ | $-20$ |
速度の符号は向きを表す。$0\le t<2$ では $v>0$ で上向きに動き、$t=2$ で $v=0$ となって最高点 $20$ メートルに達し、$2< t\le4$ では $v<0$ で下向きに動く。速度の絶対値 $|v|$ を速さという。$t=1$ と $t=3$ では、速さはどちらも $10$ で、向きが反対である。加速度はいつも $-10$ で、速度は 1 秒に $10$ ずつ減っていく(下向きの重力による)。
平面上を動く点では、位置を 2 つの座標 $(x(t),\,y(t))$ で表し、それぞれを微分して、速度と加速度をベクトルとして考える。
点が $P(t)=(2\cos3t,\ 2\sin3t)$ と動くとする。原点を中心とする半径 $2$ の円の上を、反時計回りに回る運動である。各座標を $t$ で微分すると(連鎖律(高校数学))
$$
\vec v(t)=(-6\sin3t,\ 6\cos3t),\qquad \vec a(t)=(-18\cos3t,\ -18\sin3t)
$$
である。
等速円運動 $P(t)=(2\cos3t,\,2\sin3t)$ の 8 つの時刻での速度(青)と加速度(赤)。速度は円の接線の向き、加速度は中心の向きを向くことを見る図。矢印の長さは縮めて描いている。
例 2 から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $\vec v=\left(\frac{dx}{dt},\frac{dy}{dt}\right)$ | 平均速度の極限、接線の向き | def-vac-motion、prop-vac-tangent |
| 等速円運動の加速度は中心向き | 速さ一定 ⇔ $\vec v\perp\vec a$ から出る | thm-vac-constant-speed、thm-vac-circular |
| 大きさ $\frac{v^2}{r}$(向心加速度) | 内積の微分で求まる | thm-vac-circular |
| 速さの変化 | 加速度の接線方向の成分 | prop-vac-tangential |
| 面積速度一定(Kepler の第 2 法則) | 加速度が原点を向けば $xy'-yx'$ は一定 | prop-vac-areal |
時刻 $t$ での点の位置を $P(t)=(x(t),\,y(t))$ とし、原点 $O$ からの位置ベクトルを $\vec p(t)=\overrightarrow{OP(t)}=(x(t),\,y(t))$ とする。
速度は、平均の速度の極限である。時刻 $t$ から $t+h$ までの位置の変化 $\vec p(t+h)-\vec p(t)$ を $h$ で割ったベクトル
$$
\frac{\vec p(t+h)-\vec p(t)}{h}=\left(\frac{x(t+h)-x(t)}{h},\ \frac{y(t+h)-y(t)}{h}\right)
$$
を平均速度という。各成分は平均変化率なので、$h\to0$ のとき成分ごとに $x'(t)$、$y'(t)$ に近づく。
ex-vac-circle-start の運動で $t=0$ とする。$h=0.01$ の平均速度は
$$
\left(\frac{2\cos0.03-2}{0.01},\ \frac{2\sin0.03}{0.01}\right)=(-0.0899\ldots,\ 5.9991\ldots)
$$
で、速度 $\vec v(0)=(0,\,6)$ に近い。第 1 成分が少し負なのは、点が円に沿って左へ曲がり始めているからである。
$x(t)$、$y(t)$ は $t_0$ を含む開区間で微分可能で、$x'(t)$ が連続とする。$x'(t_0)\ne0$ ならば、$t_0$ の近くで点 $P(t)$ の描く曲線は関数 $y=Y(x)$ のグラフになり、$x_0=x(t_0)$ での接線の傾きは
$$
Y'(x_0)=\frac{y'(t_0)}{x'(t_0)}
$$
である。したがって、速度 $\vec v(t_0)=x'(t_0)\,\bigl(1,\ Y'(x_0)\bigr)$ は接線の向きのベクトル $\bigl(1,\,Y'(x_0)\bigr)$ の $0$ でない数倍である。
方針:$x=x(t)$ の逆関数 $t=\tau(x)$ を使って、$y$ を $x$ の関数 $Y(x)=y(\tau(x))$ として書き、連鎖律で微分する。逆関数の存在と微分は 逆関数の微分 の「1 変数の逆関数定理」による。
段 1(逆関数)。$x'$ は連続で $x'(t_0)\ne0$ なので、逆関数の微分 の 1 変数の逆関数定理により、$t_0$ を含む開区間 $I_0$ があって、$x(t)$ は $I_0$ で増加するか減少し、その逆関数 $\tau$ は $J_0=x(I_0)$ で微分可能で、$\tau'(x)=\dfrac1{x'(\tau(x))}$ である。
段 2(グラフになる)。$Y(x)=y(\tau(x))$($x\in J_0$)とおく。$t\in I_0$ のとき、$x=x(t)$ とすると $\tau(x)=t$ なので $Y(x)=y(t)$ である。よって、$t\in I_0$ での点 $P(t)=(x(t),\,y(t))$ は、すべて $y=Y(x)$ のグラフの上にある。逆に、グラフ上の点 $(x,\,Y(x))$ は $t=\tau(x)$ での点 $P(t)$ である。
段 3(連鎖律)。連鎖律(高校数学) により、$Y'(x_0)=y'(\tau(x_0))\,\tau'(x_0)=y'(t_0)\cdot\dfrac1{x'(t_0)}$ である。
段 4(速度との関係)。段 3 から $y'(t_0)=x'(t_0)\,Y'(x_0)$ なので、$\vec v(t_0)=\bigl(x'(t_0),\ x'(t_0)Y'(x_0)\bigr)=x'(t_0)\bigl(1,\ Y'(x_0)\bigr)$ である。$\square$
$y'(t)$ も連続で、$x'(t_0)=0$、$y'(t_0)\ne0$ なら、$x$ と $y$ の役割を入れ替えて、曲線は $x=X(y)$ のグラフになり、速度は接線の向きである(接線が垂直な場合を含む)。媒介変数表示と曲線の長さ で使った傾きの式 $\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{dy/dt}{dx/dt}$ は、この命題の式である。ただし、速度が $\vec0$ になる時刻では、速度から接線の向きは分からない(ex-vac-cusp)。
点が $P(t)=(10t,\ 20t-5t^2)$ と動くとする(ex-vac-ball のボールを、横に毎秒 $10$ メートルで動かしながら投げた運動)。$x=10t$ から $t=\dfrac x{10}$ で、軌道は
$$
y=20\cdot\frac x{10}-5\left(\frac x{10}\right)^2=2x-\frac{x^2}{20}
$$
という放物線である。
$t=1$ では、点は $(10,\,15)$、速度は $\vec v(1)=(10,\ 20-10)=(10,\,10)$ である。命題の式では、接線の傾きは $\dfrac{10}{10}=1$ である。放物線の式を微分すると $y'=2-\dfrac x{10}$ で、$x=10$ では $1$ となり、一致する。
$\vec u(t)=(u_1(t),\,u_2(t))$、$\vec w(t)=(w_1(t),\,w_2(t))$ の成分が微分可能なら、$\vec u'=(u_1',\,u_2')$ などと書いて
$$
\bigl(\vec u\cdot\vec w\bigr)'=\vec u'\cdot\vec w+\vec u\cdot\vec w'
$$
である。とくに $\bigl(|\vec u|^2\bigr)'=2\,\vec u\cdot\vec u'$ である。
方針:内積を成分で書き(ベクトルの内積(高校数学))、数の積の微分に直す。
段 1。$\vec u\cdot\vec w=u_1w_1+u_2w_2$ である。
段 2。積の微分 $(fg)'=f'g+fg'$ と和の微分から
$$
(u_1w_1+u_2w_2)'=u_1'w_1+u_1w_1'+u_2'w_2+u_2w_2'
$$
である。
段 3。右辺を並べかえると $(u_1'w_1+u_2'w_2)+(u_1w_1'+u_2w_2')=\vec u'\cdot\vec w+\vec u\cdot\vec w'$ である。
段 4。$\vec w=\vec u$ とすると、$|\vec u|^2=\vec u\cdot\vec u$ なので $\bigl(|\vec u|^2\bigr)'=\vec u'\cdot\vec u+\vec u\cdot\vec u'=2\,\vec u\cdot\vec u'$ である。$\square$
区間 $I$ で運動 $\vec p(t)$ を考え、$x(t)$、$y(t)$ は 2 回微分可能とする。$C=(c_1,\,c_2)$ を定点、$\vec c=(c_1,\,c_2)$ とする。
方針:長さそのものではなく、長さの 2 乗を微分する。長さが一定であることと、長さの 2 乗が一定であることは同じである(長さは $0$ 以上なので)。
段 1(1 の準備)。$\vec u(t)=\vec p(t)-\vec c$ とおく。$\vec c$ は定数なので $\vec u'=\vec p\,'=\vec v$ である。lem-vac-dot により $\bigl(|\vec u|^2\bigr)'=2\,\vec u\cdot\vec v=2(\vec p-\vec c)\cdot\vec v$ である。
段 2(1 の「ならば」)。$|\vec u|$ が一定なら $|\vec u|^2$ も一定で、その導関数は $0$ なので、段 1 から $(\vec p-\vec c)\cdot\vec v=0$ である。
段 3(1 の逆)。すべての $t$ で $(\vec p-\vec c)\cdot\vec v=0$ なら、段 1 から $|\vec u|^2$ の導関数はつねに $0$ である。区間で導関数がつねに $0$ の関数は定数なので(平均値の定理から従う。Leb26 Proposition 4.2.6、p. 165)、$|\vec u|^2$ は一定、よって $|\vec u|$ も一定である。
段 4(2)。$\vec u=\vec v$ として同じ議論をする。$\vec v'=\vec a$ なので $\bigl(|\vec v|^2\bigr)'=2\,\vec v\cdot\vec a$ で、段 2・段 3 と同じく、$|\vec v|$ が一定であることと $\vec v\cdot\vec a=0$ がつねに成り立つことは同じである。$\square$
1 は「円の上の運動では、速度は半径に垂直」、2 は「速さが一定の運動では、加速度は速度に垂直」と読める。2 つは同じ事実(大きさが一定のベクトルを微分すると、もとのベクトルに垂直になる)を、位置と速度に当てはめたものである。
thm-vac-constant-speed の 1 と 2 を組み合わせると、円の上を一定の速さで動く点の加速度が、$\cos$、$\sin$ の式を使わずに求まる。
点 $P(t)$ が、点 $C$ を中心とする半径 $r>0$ の円の上を、一定の速さ $V>0$ で動くとする($x(t)$、$y(t)$ は 2 回微分可能)。$\vec c=\overrightarrow{OC}$ とすると、加速度は
$$
\vec a(t)=-\frac{V^2}{r^2}\bigl(\vec p(t)-\vec c\bigr)
$$
である。とくに、加速度はいつも中心 $C$ を向き、その大きさは $\dfrac{V^2}{r}$ である。
方針:半径のベクトル $\vec p-\vec c$ と加速度 $\vec a$ は、どちらも速度 $\vec v$ に垂直である(thm-vac-constant-speed)。平面の中で同じベクトルに垂直な 2 つのベクトルは平行なので、$\vec a$ は $\vec p-\vec c$ の数倍である。その倍率を、垂直の式をもう一度微分して求める。以下、時刻 $t$ を 1 つ固定し、$\vec u=\vec p(t)-\vec c$、$\vec v=\vec v(t)=(v_1,\,v_2)$、$\vec a=\vec a(t)$ と書く。
段 1(2 つの垂直)。thm-vac-constant-speed の 1 から $\vec u\cdot\vec v=0$、2 から $\vec v\cdot\vec a=0$ である。
段 2(速度に垂直なベクトルは 1 本の向きに限る)。$\vec n=(-v_2,\,v_1)$ とおく。$\vec w=(w_1,\,w_2)$ が $\vec w\cdot\vec v=w_1v_1+w_2v_2=0$ を満たすなら、$\vec w$ は $\vec n$ の数倍であることを示す。$|\vec v|=V>0$ なので $v_1$、$v_2$ の少なくとも一方は $0$ でない。
速さが一定でないとき、加速度は速度に垂直でない。加速度を、速度の向きの成分と、それに垂直な成分に分けて考える。
$x(t)$、$y(t)$ は 2 回微分可能で、時刻 $t$ で $\vec v(t)\ne\vec0$ とする。速度の向きの長さ $1$ のベクトルを $\vec T=\dfrac{\vec v}{|\vec v|}$ とすると
$$
\vec a\cdot\vec T=\frac{d}{dt}|\vec v|
$$
である。$\vec a\cdot\vec T$ を加速度の接線成分という。加速度は
$$
\vec a=(\vec a\cdot\vec T)\,\vec T+\vec a_N,\qquad \vec a_N=\vec a-(\vec a\cdot\vec T)\,\vec T
$$
と分けられ、$\vec a_N$ は速度に垂直である(法線成分)。
方針:$|\vec v|=\sqrt{|\vec v|^2}$ と書き、連鎖律と lem-vac-dot で微分する。
段 1。$|\vec v|^2=x'^2+y'^2$ は微分可能で、lem-vac-dot により導関数は $2\,\vec v\cdot\vec a$ である。
段 2。$\vec v(t)\ne\vec0$ なので $|\vec v|^2>0$ で、$\sqrt u$ は $u>0$ で微分可能、導関数は $\dfrac1{2\sqrt u}$ である。連鎖律により
$$
\frac d{dt}|\vec v|=\frac1{2|\vec v|}\cdot2\,\vec v\cdot\vec a=\frac{\vec v\cdot\vec a}{|\vec v|}=\vec a\cdot\vec T
$$
である。
段 3(法線成分)。$\vec T\cdot\vec T=1$ なので、$\vec a_N\cdot\vec T=\vec a\cdot\vec T-(\vec a\cdot\vec T)(\vec T\cdot\vec T)=0$ である。よって $\vec a_N$ は $\vec T$、つまり速度に垂直である。$\square$
接線成分は「速さがどれだけ速く変わるか」を、法線成分は「向きがどれだけ速く変わるか」(曲がり方)を表す。等速円運動では接線成分が $0$ で、加速度はすべて法線成分である(thm-vac-circular)。
点が単位円の上を $P(t)=(\cos t^2,\ \sin t^2)$($t>0$)と動くとする。
$$
\vec v=(-2t\sin t^2,\ 2t\cos t^2),\qquad |\vec v|=2t
$$
で、速さはだんだん大きくなる。$\vec a=(-4t^2\cos t^2-2\sin t^2,\ -4t^2\sin t^2+2\cos t^2)$ である。
$t=1$ では、$|\vec a|^2=(4\cos1+2\sin1)^2+(4\sin1-2\cos1)^2=16+4=20$ である。接線成分は、prop-vac-tangential により $\dfrac d{dt}(2t)=2$ で、法線成分の大きさは $\sqrt{20-2^2}=4$ である。法線成分の大きさ $4$ は、その瞬間の速さ $2$ で半径 $1$ の円を回るときの向心加速度 $\dfrac{2^2}1=4$ に等しい。
加速度は中心を向いていない(接線成分 $2$ が残る)。thm-vac-circular の仮定「速さが一定」を外すと、「加速度は中心向き」は崩れる。
ex-vac-tangent-check の運動 $\vec p(t)=(10t,\ 20t-5t^2)$($0\le t\le4$)を調べる。速度は $\vec v=(10,\ 20-10t)$、加速度は $\vec a=(0,\,-10)$ で、加速度はいつも真下を向き、一定である。
| $t$ | $0$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 位置 | $(0,0)$ | $(10,15)$ | $(20,20)$ | $(30,15)$ | $(40,0)$ |
| 速度 | $(10,20)$ | $(10,10)$ | $(10,0)$ | $(10,-10)$ | $(10,-20)$ |
| 速さ | $10\sqrt5$ | $10\sqrt2$ | $10$ | $10\sqrt2$ | $10\sqrt5$ |
| 接線成分 $\vec a\cdot\vec T$ | $-4\sqrt5$ | $-5\sqrt2$ | $0$ | $5\sqrt2$ | $4\sqrt5$ |
速さは $|\vec v|=10\sqrt{(t-2)^2+1}$ で、その導関数 $\dfrac{10(t-2)}{\sqrt{(t-2)^2+1}}$ は、$t=0$ で $-\dfrac{20}{\sqrt5}=-4\sqrt5=-8.944\ldots$ である。これは表の接線成分と一致する(prop-vac-tangential)。上りでは接線成分が負で減速し、頂点 $t=2$ で $0$(加速度が速度に垂直)、下りでは正で加速する。速さは頂点で最小の $10$ になる(図2)。
横方向の速度 $10$ は変わらない。加速度の横の成分が $0$ だからである。
放物運動 $\vec p(t)=(10t,\,20t-5t^2)$ の $t=0,1,2,3,4$ での速度(青)と加速度(赤)。加速度はいつも真下を向いて同じで、頂点 $t=2$ でだけ速度と垂直になることを見る図。矢印の長さは $\frac14$ に縮めて描いている。
半径 $1$ の車輪が $x$ 軸の上を滑らずに転がり、中心が毎秒 $1$ の速さで右へ進むとする。はじめ原点にあった車輪の上の点は、$\vec p(t)=(t-\sin t,\ 1-\cos t)$ と動く(この式の導き方と、描かれる曲線サイクロイドの長さは 媒介変数表示と曲線の長さ で扱う)。
サイクロイド $\vec p(t)=(t-\sin t,\,1-\cos t)$ の上の点の速度(青)と加速度(赤)。加速度はいつも長さ $1$ で、転がる車輪(緑の破線)の中心を向く。$t=0$ では速度は $\vec0$ だが、加速度は真上を向くことを見る図。
| 外した仮定・取り違え | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 「速さが一定」と「速度が一定」の取り違え | 速さが一定なら加速度は $\vec0$ | ex-vac-circle-start |
| $\vec v\cdot\vec a=0$ が 1 つの時刻だけ | 速さが一定 | ex-vac-check-theorem の 2 |
| 速さが一定(円の上の運動で) | 加速度は中心向き | ex-vac-speeding-circle |
| $\vec v\ne\vec0$ | 速度が接線の向きを与える | ex-vac-cusp |
速度が一定($\vec a=\vec0$)なのは、一定の向きに一定の速さで進む運動(等速直線運動)だけである。実際、$x''=y''=0$ がつねに成り立てば、Leb26 Proposition 4.2.6 を $x'$、$y'$ に使って速度は一定であり、もう一度使うと $x$、$y$ は $t$ の 1 次式になる。等速円運動は、速さは一定だが速度は一定でない。
物理学では、質量 $m$ の物体に力 $\vec F$ がはたらくと、加速度は $m\vec a=\vec F$ を満たす(Newton の運動方程式)。位置を 2 回微分したものが力で決まるので、運動は微分方程式の解として求まる。
太陽のまわりを回る惑星には、太陽の向きの力(万有引力)がはたらく。太陽を原点にとると、加速度はいつも位置ベクトルに平行である。このとき成り立つのが、次の命題である。
$x(t)$、$y(t)$ は区間で 2 回微分可能で、すべての時刻で加速度 $\vec a(t)$ が位置ベクトル $\vec p(t)$ に平行($\vec a(t)=k(t)\,\vec p(t)$ となる数 $k(t)$ がある)とする。このとき
$$
x(t)\,y'(t)-y(t)\,x'(t)
$$
は一定である。
方針:式を積の微分で微分し、加速度が位置に平行であることを使う。
段 1。積の微分により
$$
(xy'-yx')'=x'y'+xy''-y'x'-yx''=xy''-yx''
$$
である($x'y'$ と $y'x'$ が打ち消し合う)。
段 2。仮定から $x''=k\,x$、$y''=k\,y$ なので、$xy''-yx''=x\cdot ky-y\cdot kx=0$ である。
段 3。導関数がつねに $0$ なので、区間で一定である(Leb26 Proposition 4.2.6)。$\square$
量 $\dfrac12\bigl(xy'-yx'\bigr)$ は、原点と動く点を結ぶ線分が 1 秒あたりに掃く面積(面積速度)を表す。原点 $O$ と $A(a_1,a_2)$、$B(b_1,b_2)$ を頂点とする三角形の面積は $\dfrac12|a_1b_2-a_2b_1|$ である(靴ひも公式)。短い時間 $h$ に掃く部分をほぼ三角形 $OP(t)P(t+h)$ とみると、その面積は
$$
\frac12\bigl|x(t)\,y(t+h)-y(t)\,x(t+h)\bigr|
$$
で、$h$ で割って $h\to0$ とすると $\dfrac12\bigl|x(t)y'(t)-y(t)x'(t)\bigr|$ になる(分子は $x(t)\bigl(y(t+h)-y(t)\bigr)-y(t)\bigl(x(t+h)-x(t)\bigr)$ と書きかえられる)。これは面積速度の意味の説明で、掃く面積を積分で定めて示す証明は本記事では扱わない。命題は「惑星は等しい時間に等しい面積を掃く」という Kepler の第 2 法則の数学的な中身である(Keplerの法則)。
$\vec p(t)=(2\cos t,\ \sin t)$ は楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ の上を 1 周 $2\pi$ 秒で回る。$\vec v=(-2\sin t,\ \cos t)$、$\vec a=(-2\cos t,\ -\sin t)=-\vec p$ で、加速度はいつも原点を向く。
大学の微分幾何学では、曲線の速度を接ベクトル、prop-vac-tangential の $\vec a_N$ の向きを法ベクトルと呼び、曲線の曲がり具合(曲率)$\kappa$ を使って $|\vec a_N|=\kappa\,|\vec v|^2$ と表す(本記事では証明しない。証明は 曲率(高校数学) にある)。半径 $r$ の円では $\kappa=\dfrac1r$ で、thm-vac-circular の $\dfrac{V^2}r$ になる。ex-vac-projectile の頂点では、放物線 $y=2x-\dfrac{x^2}{20}$ の曲率は $\dfrac1{10}$(接線・法線と曲線の凹凸 の公式 $\kappa=\frac{|y''|}{(1+y'^2)^{3/2}}$ による)、速さは $10$ で、$\kappa|\vec v|^2=10$ は加速度の大きさ $10$ と一致する(頂点では加速度はすべて法線成分)。
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