格子点をちょうど n 個通る円

同義語:Schinzelの定理シンツェルの定理Schinzel's theoremcircle through exactly n lattice points

概要

格子点をちょうど n 個通る円(circle through exactly n lattice points)とは、周の上にある格子点がちょうど $n$ 個である平面の円のことである。Schinzel の定理により、どの正の整数 $n$ についてもそのような円がある。$n=2k$ なら円 $\left(x-\frac12\right)^2+y^2=\frac{5^{k-1}}{4}$、$n=2k+1$ なら円 $\left(x-\frac13\right)^2+y^2=\frac{5^{2k}}{9}$ が例になる。証明は、$u^2+v^2=5^m$ の整数解がちょうど $4(m+1)$ 組あることを $5$ で割った余りで示し、その解を偶奇や $3$ で割った余りによる対称性で半分ずつに分けて数える。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Gaussの円問題, 合同式の計算規則, 三平方の定理(高校数学)

高校での出発点:円周の上の格子点を数える

$x$ 座標と $y$ 座標がともに整数である点を 格子点 という。Gaussの円問題 では円の内部の格子点を数えた。この記事では、円周の上にちょうど何個の格子点があるかを考える。

原点を中心とする円の上の格子点
  1. 円 $x^2+y^2=25$。$x=0,\pm1,\dots,\pm5$ について $y^2=25-x^2$ が平方数になるかを調べる。$x=0$ で $y=\pm5$、$x=\pm3$ で $y^2=16$ から $y=\pm4$、$x=\pm4$ で $y^2=9$ から $y=\pm3$、$x=\pm5$ で $y=0$ である。$x=\pm1,\pm2$ では $y^2=24,21$ で平方数でない。格子点は
    $$ (0,\pm5),\ (\pm5,0),\ (\pm3,\pm4),\ (\pm4,\pm3) $$
    の $12$ 個である。
  2. 円 $x^2+y^2=5$。$x=\pm1$ で $y=\pm2$、$x=\pm2$ で $y=\pm1$ で、格子点は $8$ 個である。
  3. 円 $x^2+y^2=3$。$x=0,\pm1$ で $y^2=3,2$ はどちらも平方数でないので、格子点は $0$ 個である。

ex-sch-start の個数 $12$、$8$、$0$ はどれも $4$ の倍数である。原点を中心とする円では、格子点 $(x,y)$ を原点のまわりに $90^\circ$ 回すと $(-y,x)$ になり、これも格子点で同じ円の上にあるので、格子点は 4 個ずつ組になる(節「例と反例」で詳しく見る)。では、中心をずらすと、格子点がちょうど $3$ 個の円は作れるだろうか。

格子点をちょうど 3 個通る円

中心 $\left(\dfrac13,0\right)$、半径 $\dfrac53$ の円
$$ \left(x-\frac13\right)^2+y^2=\frac{25}9 $$
を考える。両辺を $9$ 倍すると $(3x-1)^2+(3y)^2=25$ である。$(-1,1)$ を代入すると $(-4)^2+3^2=25$、$(-1,-1)$ でも同じく $25$、$(2,0)$ では $5^2+0^2=25$ で、この 3 点は円の上にある。
ほかに格子点がないことは、次のように確かめる。格子点 $(x,y)$ が円の上にあれば、$u=3x-1$、$v=3y$ は $u^2+v^2=25$ を満たす整数で、ex-sch-start (1) の 12 組のどれかである。そのうち $v$ が $3$ の倍数なのは $(\pm5,0)$、$(\pm4,\pm3)$ の 6 組で、さらに $u=3x-1$ から $u$ を $3$ で割った余りは $2$ でなければならない。$5,-4$ は $3$ で割って $2$ 余り($-4=3\cdot(-2)+2$)、$-5,4$ は $1$ 余る。残るのは $(5,0)$、$(-4,\pm3)$ の 3 組で、それぞれ $(x,y)=(2,0)$、$(-1,\pm1)$ に当たる。よって格子点はちょうど $3$ 個である。

n=1 から 6 まで、周の上にちょうど n 個の格子点(青)をもつ円。十字は円の中心で、n が奇数なら (1/3, 0)、偶数なら (1/2, 0) n=1 から 6 まで、周の上にちょうど n 個の格子点(青)をもつ円。十字は円の中心で、n が奇数なら (1/3, 0)、偶数なら (1/2, 0)
図 1 は、$n=1$ から $6$ までの各 $n$ について、周の上にちょうど $n$ 個の格子点をもつ円である。この記事の主定理は、どの正の整数 $n$ についてもこのような円があることである(thm-sch-main)。答える問いは次の 3 つである。

  1. どの $n$ にも、格子点をちょうど $n$ 個通る円はあるか。→ thm-sch-main
  2. そのために、$u^2+v^2=5^m$ の整数解はいくつあるか。→ prop-sch-count
  3. 中心を原点や $\left(\frac12,0\right)$ にすると、なぜうまくいかないか。→ 節「例と反例」
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $x^2+y^2=25$ の整数解を探す$u^2+v^2=5^m$ の解の集合 $S_m$2 つの平方数の和の表し方の個数 $r_2(n)$
    $(a,b)\mapsto(2a-b,\ a+2b)$解を半径 $\sqrt5$ 倍の円へ移す対応Gauss 整数 $2+i$ を掛ける
    $5$ で割った余りで場合分け解がどちらの対応の像か$5=(2+i)(2-i)$ の分解
    奇数・偶数、$3$ で割った余りで数える中心をずらした円の上の格子点合同条件で解を選ぶ

$5$ のべきを 2 つの平方数の和で表す

主定理の円は、半径の 2 乗が $5$ のべきを $4$ や $9$ で割った数になっている。そこでまず、$5$ のべきを 2 つの平方数の和で表す方法を数える。

解の集合 $S_m$

$0$ 以上の整数 $m$ について、$u^2+v^2=5^m$ を満たす整数の組 $(u,v)$ の集合を $S_m$ とし、その個数を $\lvert S_m\rvert$ と書く。$(u,v)$ と $(v,u)$、$(u,v)$ と $(-u,v)$ などは、異なる組として数える。$S_m$ は、原点を中心とする半径 $\sqrt{5^m}$ の円の上の格子点の集合と同じである。

$S_0$、$S_1$、$S_2$
  1. $S_0$:$u^2+v^2=1$ の解は $(\pm1,0)$、$(0,\pm1)$ の $4$ 組。
  2. $S_1$:$u^2+v^2=5$ の解は $(\pm1,\pm2)$、$(\pm2,\pm1)$ の $8$ 組(ex-sch-start (2))。
  3. $S_2$:$u^2+v^2=25$ の解は $(0,\pm5)$、$(\pm5,0)$、$(\pm3,\pm4)$、$(\pm4,\pm3)$ の $12$ 組(ex-sch-start (1))。
    個数は $4$、$8$、$12$ と $4$ ずつ増えている。

個数が $4$ ずつ増える理由を、$S_{m-1}$ の解から $S_m$ の解を作る 2 つの対応で説明する。

2 つの対応 $\varphi_+$、$\varphi_-$

整数の組 $(a,b)$ に対して
$$ \varphi_+(a,b)=(2a-b,\ a+2b),\qquad\varphi_-(a,b)=(2a+b,\ -a+2b) $$
と定める。

2 つの対応の性質
  1. $(2a-b)^2+(a+2b)^2=5(a^2+b^2)$、$(2a+b)^2+(-a+2b)^2=5(a^2+b^2)$ である。とくに $m\ge1$ のとき、$\varphi_+$ と $\varphi_-$ は $S_{m-1}$ の解を $S_m$ の解に移す。
  2. 整数の組 $(u,v)$ が、ある整数の組 $(a,b)$ の $\varphi_+$ による像であるための必要十分条件は、$2u+v$ が $5$ の倍数であることである。そのとき $(a,b)$ はただ 1 つで、$a=\dfrac{2u+v}5$、$b=\dfrac{-u+2v}5$ である。
  3. 整数の組 $(u,v)$ が、ある整数の組 $(a,b)$ の $\varphi_-$ による像であるための必要十分条件は、$2u-v$ が $5$ の倍数であることである。そのとき $(a,b)$ はただ 1 つで、$a=\dfrac{2u-v}5$、$b=\dfrac{u+2v}5$ である。
展開と連立方程式
  1. 展開すると
    $$ (2a-b)^2+(a+2b)^2=(4a^2-4ab+b^2)+(a^2+4ab+4b^2)=5a^2+5b^2 $$
    である。$(2a+b)^2+(-a+2b)^2=(4a^2+4ab+b^2)+(a^2-4ab+4b^2)=5a^2+5b^2$ も同じである。$a^2+b^2=5^{m-1}$ なら像の平方和は $5^m$ になる。
  2. $u=2a-b$、$v=a+2b$ を $a,b$ について解く。$2u+v=4a-2b+a+2b=5a$、$-u+2v=-2a+b+2a+4b=5b$ なので
    $$ a=\frac{2u+v}5,\qquad b=\frac{-u+2v}5 $$
    である。逆にこの $a,b$ に $\varphi_+$ を当てはめると $(u,v)$ にもどる($2a-b=\frac{4u+2v+u-2v}5=u$、$a+2b=\frac{2u+v-2u+4v}5=v$)。したがって $(u,v)$ が整数の組の像であることは、$a$ と $b$ がともに整数であることと同じである。ここで
    $$ -u+2v=2(2u+v)-5u $$
    なので、$2u+v$ が $5$ の倍数なら $-u+2v$ も $5$ の倍数である。よって条件は「$2u+v$ が $5$ の倍数」だけでよい。$(a,b)$ が式で決まるので、ただ 1 つである。
  3. $u=2a+b$、$v=-a+2b$ から、$2u-v=5a$、$u+2v=5b$ である。$u+2v=-2(2u-v)+5u$ なので、$2u-v$ が $5$ の倍数なら $u+2v$ も $5$ の倍数である。あとは (2) と同じである。$\square$
対応で $S_1$ から $S_2$ を作る

$S_1$ の $(2,1)$ に当てはめると、$\varphi_+(2,1)=(4-1,\ 2+2)=(3,4)$、$\varphi_-(2,1)=(4+1,\ -2+2)=(5,0)$ である。どちらも $3^2+4^2=5^2+0^2=25$ で $S_2$ に入る。
逆向きに、$S_2$ の $(3,4)$ は $2u+v=10$ が $5$ の倍数なので $\varphi_+$ の像で、もとの組は $\left(\frac{10}5,\frac{-3+8}5\right)=(2,1)$ である。$2u-v=2$ は $5$ の倍数でないので、$(3,4)$ は $\varphi_-$ の像ではない。$S_2$ の $(5,0)$ は $2u+v=10$、$2u-v=10$ がどちらも $5$ の倍数なので、$\varphi_+$ の像でも $\varphi_-$ の像でもある($\varphi_+(2,-1)=(5,0)$、$\varphi_-(2,1)=(5,0)$)。

次の補題で、$S_m$ のどの解もどちらかの像になることを示す。

平方和が $5$ の倍数になる組

整数 $u,v$ について $u^2+v^2$ が $5$ の倍数ならば、$2u+v$ と $2u-v$ の少なくとも一方は $5$ の倍数である。両方が $5$ の倍数になるのは、$u$ と $v$ がともに $5$ の倍数のとき、かつそのときに限る。

5 で割った余りの表

段 1(平方の余り)。$5$ で割った余りが $0,1,2,3,4$ の数の平方は、$5$ で割ってそれぞれ $0,1,4,4,1$ 余る($2^2=4$、$3^2=9$、$4^2=16$)。
段 2(平方和が $5$ の倍数になる余りの組)。$u,v$ を $5$ で割った余りを $\bar u,\bar v$ とする(合同式の計算規則)。平方の余りの和が $5$ の倍数になる組を段 1 から探すと、$0+0$ と $1+4$、$4+1$ だけである。$0+0$ は $\bar u=\bar v=0$ のときで、残りは次の表のとおりである。

$\bar u$$1$$1$$2$$2$$3$$3$$4$$4$
$\bar v$$2$$3$$1$$4$$1$$4$$2$$3$
$2u+v$ の余り$4$$0$$0$$3$$2$$0$$0$$1$
$2u-v$ の余り$0$$4$$3$$0$$0$$2$$1$$0$

どの列でも、$2u+v$ と $2u-v$ のちょうど一方の余りが $0$ である。$\bar u=\bar v=0$ なら両方の余りが $0$ である。これで前半と、「$u,v$ がともに $5$ の倍数なら両方が $5$ の倍数」が示された。
段 3(両方が $5$ の倍数なら $u,v$ も)。$2u+v$ と $2u-v$ がともに $5$ の倍数なら、和 $4u$ も $5$ の倍数である。$4u=5u-u$ なので $u$ も $5$ の倍数で、$v=(2u+v)-2u$ も $5$ の倍数である。$\square$

$u^2+v^2=5^m$ の解の個数

$0$ 以上のすべての整数 $m$ について $\lvert S_m\rvert=4(m+1)$ である。

2 つの像に分けて重なりを引く

方針:$m\ge1$ のとき、$S_m$ を $\varphi_+$ の像と $\varphi_-$ の像に分ける。それぞれ $\lvert S_{m-1}\rvert$ 個あり、重なりが $\lvert S_{m-2}\rvert$ 個であることを示して、個数の漸化式を作る。
段 1($S_m$ は 2 つの像の和)。$m\ge1$ とし、$A=\{\varphi_+(a,b)\mid(a,b)\in S_{m-1}\}$、$B=\{\varphi_-(a,b)\mid(a,b)\in S_{m-1}\}$ とする。lem-sch-maps (1) により、$A$ と $B$ は $S_m$ に含まれる。逆に $(u,v)\in S_m$ をとると、$u^2+v^2=5^m$ は $5$ の倍数なので、lem-sch-mod5 により $2u+v$ か $2u-v$ が $5$ の倍数である。$2u+v$ が $5$ の倍数なら、lem-sch-maps (2) により $(u,v)=\varphi_+(a,b)$ となる整数の組 $(a,b)$ がある。(1) から $5(a^2+b^2)=u^2+v^2=5^m$、つまり $a^2+b^2=5^{m-1}$ なので $(a,b)\in S_{m-1}$ で、$(u,v)\in A$ である。$2u-v$ が $5$ の倍数なら、同じく $(u,v)\in B$ である。よって $S_m$ の要素は $A$ か $B$ に入り、
$$ \lvert S_m\rvert=\lvert A\rvert+\lvert B\rvert-\lvert A\cap B\rvert $$
である(2 つの集合の和の個数の公式)。
段 2($A$ と $B$ の個数)。lem-sch-maps (2) により、$\varphi_+$ の像からもとの組はただ 1 つに決まる。つまり $S_{m-1}$ の異なる組は $\varphi_+$ で異なる組に移るので、$\lvert A\rvert=\lvert S_{m-1}\rvert$ である。同じく $\lvert B\rvert=\lvert S_{m-1}\rvert$ である。
段 3(重なり)。段 1 の議論(lem-sch-maps (1)〜(3))により、$(u,v)\in S_m$ が $A$ に入るのは $2u+v$ が $5$ の倍数のとき、$B$ に入るのは $2u-v$ が $5$ の倍数のときである。よって $(u,v)$ が $A\cap B$ に入るのは、$2u+v$ と $2u-v$ がともに $5$ の倍数のときで、lem-sch-mod5 により、それは $u,v$ がともに $5$ の倍数のときである。

  • $m=1$ のとき。$u,v$ がともに $5$ の倍数なら $u^2+v^2$ は $25$ の倍数で、$5$ にはならない。よって $\lvert A\cap B\rvert=0$ である。
  • $m\ge2$ のとき。$u=5u'$、$v=5v'$ と書くと、$u^2+v^2=5^m$ は $u'^2+v'^2=5^{m-2}$ と同じである。したがって $(u,v)\mapsto(u',v')$ は、$A\cap B$ と $S_{m-2}$ の間の 1 対 1 の対応で、$\lvert A\cap B\rvert=\lvert S_{m-2}\rvert$ である。
    段 4(漸化式を解く)。段 1〜3 から
    $$ \lvert S_1\rvert=2\lvert S_0\rvert-0=8,\qquad\lvert S_m\rvert=2\lvert S_{m-1}\rvert-\lvert S_{m-2}\rvert\quad(m\ge2) $$
    である。後の式は $\lvert S_m\rvert-\lvert S_{m-1}\rvert=\lvert S_{m-1}\rvert-\lvert S_{m-2}\rvert$ と書けるので、隣どうしの差はいつも $\lvert S_1\rvert-\lvert S_0\rvert=8-4=4$ に等しい。よって $\lvert S_m\rvert$ は初項 $4$、公差 $4$ の等差数列で、$\lvert S_m\rvert=4+4m=4(m+1)$ である。$\square$

u²+v²=25 の 12 個の解は、u²+v²=5 の 8 個の解から φ₊ で作られるもの(青)と φ₋ で作られるもの(橙)に分かれ、緑の 4 個は両方で作られる u²+v²=25 の 12 個の解は、u²+v²=5 の 8 個の解から φ₊ で作られるもの(青)と φ₋ で作られるもの(橙)に分かれ、緑の 4 個は両方で作られる
図 2 では、$S_2$ の $12$ 個のうち、青の $4$ 個が $\varphi_+$ の像だけ、橙の $4$ 個が $\varphi_-$ の像だけ、緑の $4$ 個 $(\pm5,0)$、$(0,\pm5)$ が両方の像である。$\lvert A\rvert=\lvert B\rvert=8$、$\lvert A\cap B\rvert=4=\lvert S_0\rvert$ で、$8+8-4=12$ となる。

個数の表

$\lvert S_m\rvert$ と、prf-sch-count の $A$、$B$、$A\cap B$ の個数を、コンピュータで解を全部書き出して数えると次のとおりである。

$m$$5^m$$\lvert S_m\rvert$$\lvert A\rvert=\lvert B\rvert$$\lvert A\cap B\rvert$$u$ が奇数の解
$0$$1$$4$——$2$
$1$$5$$8$$4$$0$$4$
$2$$25$$12$$8$$4$$6$
$3$$125$$16$$12$$8$$8$
$4$$625$$20$$16$$12$$10$

たとえば $m=3$ では、$125=2^2+11^2=5^2+10^2$ から、$(\pm2,\pm11)$、$(\pm11,\pm2)$、$(\pm5,\pm10)$、$(\pm10,\pm5)$ の $16$ 組である。右端の列は、次の節で使う「$u$ が奇数の解」の個数で、どの行でも $\lvert S_m\rvert$ のちょうど半分である。

複素数で見ると

複素数 $u+vi$ の絶対値の 2 乗は $u^2+v^2$ である。$\varphi_+$ は $(2+i)(a+bi)=(2a-b)+(a+2b)i$、$\varphi_-$ は $(2-i)(a+bi)=(2a+b)+(-a+2b)i$ で、どちらも絶対値 $\sqrt5$ の複素数を掛ける操作である(複素数の掛け算は回転と拡大)。絶対値の 2 乗は掛け算で掛け合わされるので、lem-sch-maps (1) は $\lvert2\pm i\rvert^2\lvert a+bi\rvert^2=5(a^2+b^2)$ のことである。$5=(2+i)(2-i)$ と分解できることが、$5$ のべきの解を $2\pm i$ の掛け算で作れる理由である。

主定理:Schinzel の定理

Schinzel の定理

どの正の整数 $n$ についても、周の上にちょうど $n$ 個の格子点をもつ円がある。具体的には、
(1) $n=2k$($k$ は正の整数)のとき、円 $\left(x-\dfrac12\right)^2+y^2=\dfrac{5^{k-1}}4$ の上の格子点はちょうど $n$ 個である。
(2) $n=2k+1$($k$ は $0$ 以上の整数)のとき、円 $\left(x-\dfrac13\right)^2+y^2=\dfrac{5^{2k}}9$ の上の格子点はちょうど $n$ 個である。

この 2 つの円は Wei26 に Schinzel の円として載っているものである。証明の方針は、円の方程式を分母を払って $u^2+v^2=5^m$ の形にし、prop-sch-count の $4(m+1)$ 個の解のうち、格子点に当たるものを対称性で数えることである。

分母を払い、対称性で半分ずつに分ける

段 1($n=2k$ の円を書きかえる)。円 (1) の方程式を $4$ 倍すると
$$ (2x-1)^2+(2y)^2=5^{k-1} $$
である。格子点 $(x,y)$ がこの円の上にあれば、$(u,v)=(2x-1,\ 2y)$ は $S_{k-1}$ の解で、$u$ は奇数、$v$ は偶数である。逆に $S_{k-1}$ の解 $(u,v)$ で $u$ が奇数、$v$ が偶数のものからは、$x=\dfrac{u+1}2$、$y=\dfrac v2$ で整数の組 $(x,y)$ が決まり、円の上の格子点になる。この 2 つの対応は互いに逆なので、円 (1) の上の格子点の個数は、$S_{k-1}$ の解のうち $u$ が奇数で $v$ が偶数のものの個数に等しい。
段 2(その個数は $S_{k-1}$ の半分)。$m=k-1$ とする。$S_m$ の解 $(u,v)$ では $u^2+v^2=5^m$ が奇数なので、$u,v$ の一方だけが奇数である(両方奇数でも両方偶数でも、平方の和は偶数になる)。よって $S_m$ は「$u$ が奇数で $v$ が偶数」の解と「$u$ が偶数で $v$ が奇数」の解に分かれる。$(u,v)\mapsto(v,u)$ は $S_m$ の解を $S_m$ の解に移し、2 回行うともとにもどり、前者と後者を入れかえる。したがって前者と後者は同じ個数で、それぞれ $\dfrac{\lvert S_m\rvert}2$ 個である。prop-sch-count により
$$ \frac{\lvert S_{k-1}\rvert}2=\frac{4k}2=2k=n $$
である。(1) が示された。
段 3($n=2k+1$ の円を書きかえる)。円 (2) の方程式を $9$ 倍すると
$$ (3x-1)^2+(3y)^2=5^{2k} $$
である。段 1 と同じく、円 (2) の上の格子点は $(u,v)=(3x-1,\ 3y)$ によって、$S_{2k}$ の解のうち「$u$ を $3$ で割った余りが $2$ で、$v$ が $3$ の倍数」のものと 1 対 1 に対応する(逆向きは $x=\dfrac{u+1}3$、$y=\dfrac v3$)。
段 4($3$ で割った余りで数える)。$m=2k$ とする。整数の平方を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ である($0^2=0$、$1^2=1$、$2^2=4=3+1$)。また $5^{2k}=25^k$ で、$25=3\cdot8+1$ なので、$5^{2k}$ を $3$ で割った余りは $1$ である(合同式の計算規則)。$u^2+v^2$ の余りが $1$ になるのは、平方の余りが $0+1$ か $1+0$ のときだけなので、$u,v$ のちょうど一方が $3$ の倍数である。段 2 と同じく $(u,v)\mapsto(v,u)$ で入れかえると、$v$ が $3$ の倍数の解は $\dfrac{\lvert S_{2k}\rvert}2=2(2k+1)$ 個ある。
段 5(余り $1$ と余り $2$ を半分ずつに分ける)。段 4 の $2(2k+1)$ 個の解では、$u$ は $3$ の倍数でないので、$3$ で割った余りは $1$ か $2$ である。$(u,v)\mapsto(-u,v)$ はこれらの解を互いに移し、2 回行うともとにもどる。$u$ の余りが $1$ なら $-u$ の余りは $2$ で、逆も同じである($u=3q+1$ なら $-u=3(-q-1)+2$)。したがって余りが $2$ の解は半分の $2k+1=n$ 個である。(2) が示された。$\square$

小さい $n$ の円の格子点
  1. $n=4$($k=2$)。円 $\left(x-\dfrac12\right)^2+y^2=\dfrac54$。$S_1$ の解のうち $u$ が奇数のものは $(\pm1,\pm2)$ の $4$ 組で、$x=\dfrac{u+1}2$、$y=\dfrac v2$ から格子点は $(1,\pm1)$、$(0,\pm1)$ の $4$ 個である。
  2. $n=6$($k=3$)。円 $\left(x-\dfrac12\right)^2+y^2=\dfrac{25}4$。$S_2$ の解のうち $u$ が奇数のものは $(\pm5,0)$、$(\pm3,\pm4)$ の $6$ 組で、格子点は $(3,0)$、$(-2,0)$、$(2,\pm2)$、$(-1,\pm2)$ の $6$ 個である。たとえば $(2,2)$ は $\left(\dfrac32\right)^2+2^2=\dfrac94+\dfrac{16}4=\dfrac{25}4$ を満たす。
  3. $n=3$($k=1$)は ex-sch-three の円で、格子点は $(2,0)$、$(-1,\pm1)$ の $3$ 個である。
    $n=1$ と $n=5$ の円を開く

    (4) $n=1$($k=0$)。円 $\left(x-\dfrac13\right)^2+y^2=\dfrac19$。$S_0$ の解のうち $v$ が $3$ の倍数で $u$ の余りが $2$ のものは $(-1,0)$ だけで、格子点は $(0,0)$ の $1$ 個である。

    (5) $n=5$($k=2$)。円 $\left(x-\dfrac13\right)^2+y^2=\dfrac{625}9$。$S_4$ の $20$ 個の解のうち、$v$ が $3$ の倍数で $u$ の余りが $2$ のものは $(-25,0)$、$(-7,\pm24)$、$(20,\pm15)$ の $5$ 組で、格子点は $(-8,0)$、$(-2,\pm8)$、$(7,\pm5)$ の $5$ 個である。$S_4$ の解は、$625=0^2+25^2=7^2+24^2=15^2+20^2$ から、$(0,\pm25)$、$(\pm25,0)$、$(\pm7,\pm24)$、$(\pm24,\pm7)$、$(\pm15,\pm20)$、$(\pm20,\pm15)$ の $2+2+4+4+4+4=20$ 組である。$v$ が $3$ の倍数なのは $(\pm25,0)$、$(\pm7,\pm24)$、$(\pm20,\pm15)$ の $10$ 組で、そのうち $u$ を $3$ で割った余りが $2$ なのは $u=-25,-7,20$ の $5$ 組である($-25=3\cdot(-9)+2$、$-7=3\cdot(-3)+2$、$20=3\cdot6+2$)。

例と反例

thm-sch-main の円の選び方を変えると何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
中心が格子点でない中心が原点の円格子点の個数が $4$ の倍数以外になりうる
奇数の $n$ では中心の $x$ 座標が $\frac13$中心が $\left(\frac12,0\right)$ の円格子点の個数が奇数になりうる
(2) で $5$ の指数が偶数$\left(x-\frac13\right)^2+y^2=\frac59$格子点が $2k+1$ 個ある
半径の 2 乗に使う素数が $5$$5$ を $3$ に取りかえた $\left(x-\frac12\right)^2+y^2=\frac94$格子点が $n=6$ 個ある
反例:中心が格子点なら個数は $4$ の倍数

中心が原点で半径が正の円の上の格子点 $(x,y)$ をとる。原点のまわりに $90^\circ$ ずつ回すと
$$ (x,y)\to(-y,x)\to(-x,-y)\to(y,-x)\to(x,y) $$
ともとにもどる。4 点はどれも格子点で、原点からの距離が同じなので同じ円の上にある。4 点のうち 2 点が一致するなら、$(x,y)=(-y,x)$ または $(x,y)=(-x,-y)$ などから $x=y=0$ となり、半径が正であることに反する。よって 4 点は異なり、格子点は 4 個ずつの組に分かれる(2 つの組が 1 点を共有すれば、回し続けて組全体が一致する)。したがって個数は $4$ の倍数で、$1,2,3,5,6,7,\dots$ 個にはならない。ex-sch-start の $12$、$8$、$0$ がその例である。
中心がほかの格子点 $(p,q)$ でも、平行移動 $(x,y)\mapsto(x-p,y-q)$ は格子点を格子点に移すので、同じく $4$ の倍数である。

中心が原点の円 x²+y²=25 の上の格子点は、90° 回転(緑の矢印)で 4 個ずつ組になる 中心が原点の円 x²+y²=25 の上の格子点は、90° 回転(緑の矢印)で 4 個ずつ組になる
中心が (1/2, 0) の円の上の格子点は、直線 x=1/2(緑の破線)に関する折り返しで 2 個ずつ組になる 中心が (1/2, 0) の円の上の格子点は、直線 x=1/2(緑の破線)に関する折り返しで 2 個ずつ組になる
反例:中心が $\left(\frac12,0\right)$ なら個数は偶数

中心が $\left(\dfrac12,0\right)$ の円は、直線 $x=\dfrac12$ に関して対称である。この折り返しは点 $(x,y)$ を $(1-x,y)$ に移し、格子点を格子点に移す。格子点 $(x,y)$ が $(1-x,y)$ と一致するのは $x=\dfrac12$ のときだけで、これは整数でないので、どの格子点も自分とは異なる格子点と組になる。したがって円の上の格子点の個数は偶数である(図 4 は thm-sch-main の $n=6$ の円で、6 個が 3 組に分かれている)。thm-sch-main (2) の円は中心が $\left(\dfrac13,0\right)$ で、残る対称性は $x$ 軸に関する折り返し $(x,y)\mapsto(x,-y)$ だけである。この折り返しで自分自身と組になるのは $x$ 軸の上の格子点で、円と $x$ 軸の交点 $\dfrac13\pm R$($R$ は半径)は、和が $\dfrac23$ で整数でないので、多くても一方しか整数にならない。$x$ 軸の上の格子点がちょうど 1 個のとき、個数が奇数になる。

反例:$5$ の奇数乗では格子点がない

thm-sch-main (2) の $5^{2k}$ を $5^1$ に取りかえた円 $\left(x-\dfrac13\right)^2+y^2=\dfrac59$ には、格子点が $1$ 個もない。$9$ 倍すると $(3x-1)^2+(3y)^2=5$ で、$S_1$ の解 $(\pm1,\pm2)$、$(\pm2,\pm1)$ には $v$ が $3$ の倍数のものがないからである。一般に、$5$ の奇数乗を $3$ で割った余りは $2$ で($5=3+2$、$25$ の余りは $1$)、平方の余りの和が $2$ になるのは $1+1$ のときだけなので、$u,v$ はどちらも $3$ の倍数にならない。prf-sch-main の段 4 で「$5^{2k}$ の余りが $1$」を使ったのはこのためである。

反例:$5$ を $3$ に取りかえると個数が足りない

thm-sch-main (1) の $k=3$ の円で、$5^2$ を $3^2$ に取りかえた円 $\left(x-\dfrac12\right)^2+y^2=\dfrac94$ を考える。$4$ 倍すると $(2x-1)^2+(2y)^2=9$ で、$u^2+v^2=9$ の整数解は $(\pm3,0)$、$(0,\pm3)$ の $4$ 組しかない($v=\pm1,\pm2$ では $u^2=8,5$ が平方数でない)。$u$ が奇数のものは $(\pm3,0)$ の $2$ 組で、格子点は $(2,0)$、$(-1,0)$ の $2$ 個であり、$n=6$ 個にならない。
$u^2+v^2=3^m$ の解は増えない。$m\ge1$ なら $u^2+v^2$ は $3$ の倍数で、平方を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ なので、余りの和が $0$ になるのは $u,v$ がともに $3$ の倍数のときだけである。$u=3u'$、$v=3v'$ とおくと $u'^2+v'^2=3^{m-2}$ となり、これをくり返すと、解は $m$ が偶数なら $(\pm3^{m/2},0)$、$(0,\pm3^{m/2})$ の $4$ 組、$m$ が奇数なら $0$ 組である($3=u^2+v^2$ の整数解はない)。$5=1^2+2^2$ と書けることが、lem-sch-maps の対応 $\varphi_\pm$ を作れる理由であった。

大学数学で見る:Gauss 整数と表し方の個数

rem-sch-complex で見たように、$u^2+v^2=5^m$ の解は複素数 $u+vi$ として見るのが自然である。$a,b$ が整数である複素数 $a+bi$ を Gauss 整数 という(Gauss整数)。

Gauss 整数の素因数分解から見た $S_m$

prf-sch-count は、$S_m$ のどの解も $\varphi_+$ か $\varphi_-$ の像である、つまり $2+i$ か $2-i$ で「割り切れる」ことを、$5$ で割った余りの表で示した。これを $m$ 回くり返すと、$S_m$ の解 $u+vi$ はどれも
$$ u+vi=\varepsilon\,(2+i)^j(2-i)^{m-j}\qquad(\varepsilon=\pm1,\pm i,\ \ j=0,1,\dots,m) $$
の形に書ける($m$ についての数学的帰納法。$S_0$ の解は $\pm1,\pm i$ である)。$\varepsilon$ の選び方が $4$ 通り、$j$ の選び方が $m+1$ 通りなので、この形の数は多くても $4(m+1)$ 個で、prop-sch-count と合わせると、これらは全部異なる。

一般の $n$ の表し方の個数(紹介のみ)を開く

Gauss 整数の世界では素因数分解が($\pm1,\pm i$ を掛ける違いを除いて)ただ 1 通りにできる(Gauss整数)。$5=(2+i)(2-i)$ のように、$4$ で割って $1$ 余る素数は 2 つの Gauss 整数の積に分かれ、$3$ のように $4$ で割って $3$ 余る素数は分かれない。これを使うと、一般の正の整数 $n$ について、$x^2+y^2=n$ の整数解の個数 $r_2(n)$ が、$n$ の正の約数のうち $4$ で割って $1$ 余るものの個数 $d_1(n)$ と $3$ 余るものの個数 $d_3(n)$ によって $r_2(n)=4\bigl(d_1(n)-d_3(n)\bigr)$ と表される(Fermatの二平方定理 の注意「表し方の個数」、Wei26。この記事では証明しない)。$n=5^m$ では約数 $1,5,\dots,5^m$ がすべて $4$ で割って $1$ 余るので、$r_2(5^m)=4(m+1)$ となり、prop-sch-count と一致する。$n=9$ では約数 $1,3,9$ のうち $1,9$ が余り $1$、$3$ が余り $3$ なので $r_2(9)=4(2-1)=4$ で、ex-sch-cx-three と一致する。

Wei26 は、Schinzel の円は格子点をちょうど $n$ 個通る円のうち半径が最小のものとは限らないことを注意している。たとえば $n=4$ なら、中心 $\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$、半径 $\dfrac{\sqrt2}2$ の円は 4 点 $(0,0)$、$(1,0)$、$(0,1)$、$(1,1)$ を通り、半径は thm-sch-main の $\dfrac{\sqrt5}2$ より小さい。同じ頁は、球面の上の格子点についての Kulikowski の定理を関連する結果として挙げている。

さらに先へ

  • 円の内部の格子点の個数は Gaussの円問題 で扱った。周の上の個数 $r_2(n)$ は $n$ ごとに大きく揺れるが、$n$ について足し合わせると内部の個数になり、その平均は $\pi$ に近い。
  • 格子点を選ぶ問題として、どの 3 点も一直線上にないように格子点を選ぶ no-three-in-line 問題 がある。$p$ を素数として、放物線 $y=x^2$ を $p$ で割った余りで考える構成を使う。
  • 2 つの平方数の和で表せる整数の判定は Fermatの二平方定理、$x^2+y^2=z^2$ の整数解の分類は ピタゴラス数と円の有理点 で扱う。後者は、円 $x^2+y^2=1$ の上の有理点を数える話である。

関連項目

参考文献

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