条件付きの最大・最小(constrained extrema)とは、$x$、$y$ が等式 $g(x,y)=0$ を満たしながら動くときの $f(x,y)$ の最大値・最小値を求める問題である。$k$ が値としてとられることは、連立方程式 $f=k$、$g=0$ が実数解をもつことと同値で、文字の消去・実数解の条件(判別式)・不等式・図形(等高線が曲線に接する)の 4 つの方法は、どれもこの範囲を求めている。消去では残る文字の範囲を、判別式では残る文字に制限がないことを、不等式では等号の点が条件を満たすことを確かめる必要があり、曲線が有界でなければ接するときの値が最大・最小とは限らず、有界でも候補にすぎない。条件が円のとき、多項式 $f$ の最大・最小の点では $(f_x,f_y)$ が円の法線 $(2x,2y)$ の実数倍になる(Lagrange の未定乗数法の特別な場合)。
前提知識: 2次関数の最大・最小, 判別式(高校数学), 相加平均と相乗平均
2 つの文字 $x$、$y$ が等式の条件を満たしながら動くとき、式の値の最大・最小を求める問題がある。代表的な 2 つの例を、まず教科書でよく使う方法で解いておく。この記事では、この 2 つを最後まで使いまわす。
実数 $x$、$y$ が $x+y=1$ を満たすとき、$x^2+y^2$ の最小値を求める。
条件から $y=1-x$ である。$x$ はどんな実数でもよく、そのとき $y=1-x$ も実数になる。代入すると
$$
x^2+y^2=x^2+(1-x)^2=2x^2-2x+1=2\left(x-\frac12\right)^2+\frac12
$$
である(平方完成。2次関数の最大・最小)。$x=\dfrac12$ のとき最小値 $\dfrac12$ をとり、そのとき $y=\dfrac12$ である。$x$ をいくらでも大きくできるので、最大値はない。
実数 $x$、$y$ が $x^2+y^2=1$ を満たすとき、$x+2y$ の最大値と最小値を求める。
点 $(x,y)$ は単位円の上にあるので、$x=\cos\theta$、$y=\sin\theta$($0\le\theta<2\pi$)と書ける。
$$
x+2y=\cos\theta+2\sin\theta=\sqrt5\sin(\theta+\varphi)
$$
である。ここで $\varphi$ は $\cos\varphi=\dfrac2{\sqrt5}$、$\sin\varphi=\dfrac1{\sqrt5}$ を満たす角で、右辺は加法定理 $\sqrt5\sin(\theta+\varphi)=\sqrt5(\sin\theta\cos\varphi+\cos\theta\sin\varphi)=2\sin\theta+\cos\theta$ で確かめられる(三角関数の合成。加法定理から積和・和積・合成・正接の公式を導く)。$\sin(\theta+\varphi)$ は $-1$ 以上 $1$ 以下のすべての値をとるので、最大値は $\sqrt5$、最小値は $-\sqrt5$ である。最大になるのは $\theta+\varphi=\dfrac\pi2$ のときで、$x=\cos\theta=\cos\left(\dfrac\pi2-\varphi\right)=\sin\varphi=\dfrac1{\sqrt5}$、$y=\sin\theta=\cos\varphi=\dfrac2{\sqrt5}$ である。
左は、直線 x + y = 1 と円 x² + y² = k。k = 1/2 の円が直線に (1/2, 1/2) で接する。右は、単位円と直線 x + 2y = k。k = ±√5 の直線が円に接する
2 つの例は別々の方法で解いたが、どちらの問題も、ほかに少なくとも 3 通りの解き方がある。どの方法でも同じ答えが出るのはなぜか、方法ごとにどこで間違えやすいかを整理するのが、この記事の目的である。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 条件式を 1 文字について解いて代入 | 文字の消去と残る文字の範囲(prop-cex-elimination) | 曲線の媒介変数表示 |
| 値を $k$ とおいて実数解の条件 | 連立方程式が実数解をもつ $k$(thm-cex-principle、prop-cex-discriminant) | 像の決定 |
| 相加相乗・Cauchy–Schwarz で抑える | 下界と、等号の点(lem-cex-bound) | 双対による評価 |
| 等高線が条件の曲線に接する | 法線ベクトルが平行(thm-cex-circle-lagrange) | Lagrangeの未定乗数法 |
| $x^2+y^2=1$ のもとでの 2 次式の最大・最小 | 係数を並べた行列の固有値(ex-cex-quadratic-form) | 対称行列の固有値 |
$x$、$y$ の式 $g(x,y)$ と $f(x,y)$ があるとする。条件 $g(x,y)=0$ を満たす点全体の集合を
$$
S:=\{(x,y): g(x,y)=0\}
$$
とする。$S$ の点での $f$ の値の最大値を「条件 $g(x,y)=0$ のもとでの $f$ の 最大値」という。すなわち、$S$ の点 $P_0$ があって、$S$ のすべての点 $P$ について $f(P)\le f(P_0)$ が成り立つとき、$f(P_0)$ が最大値である。最小値も同様に定める。
$S$ は多くの場合 1 本の曲線で、条件のもとでの最大・最小は「曲線の上を動く点での値の最大・最小」である。ex-cex-hs-a では $S$ は直線 $x+y=1$、ex-cex-hs-b では $S$ は単位円である。領域を使った最大・最小 では、点が領域(不等式の表す集合)を動いた。ここでは点は曲線(等式の表す集合)の上だけを動く。
次の定理が、この記事のすべての方法に共通する原理である。
実数 $k$ が、条件 $g(x,y)=0$ のもとで $f$ がとる値であることと、連立方程式
$$
f(x,y)=k,\qquad g(x,y)=0
$$
が実数解 $(x,y)$ をもつことは同値である。
方針:「値 $k$ をとる点がある」を式に書きかえる。
$k$ が値であるとは、$S$ の点 $P=(x,y)$ で $f(P)=k$ となるものがあることである。$P$ が $S$ の点であることは $g(x,y)=0$ と同じなので、これは実数 $x$、$y$ で $f(x,y)=k$ と $g(x,y)=0$ を同時に満たすものがあること、つまり連立方程式が実数解をもつことと同じである。$\square$
これは 領域を使った最大・最小 の定理「値の範囲は、等高線が領域と共有点をもつ $k$ の範囲」を、領域を曲線 $S$ に替えて式で書いたものである。最大値は、実数解をもつ $k$ のうち最大のもの(あれば)である。
ex-cex-hs-b で、$k=\sqrt5$ のとき連立方程式 $x+2y=\sqrt5$、$x^2+y^2=1$ は実数解 $\left(\dfrac1{\sqrt5},\dfrac2{\sqrt5}\right)$ をもつ($\dfrac1{\sqrt5}+\dfrac4{\sqrt5}=\sqrt5$、$\dfrac15+\dfrac45=1$)。$k=3$ のときは、$x=3-2y$ を代入すると $(3-2y)^2+y^2=1$、つまり $5y^2-12y+8=0$ で、判別式は $144-160=-16<0$ なので実数解がない。よって $3$ は値ではない。
以下の 4 つの方法は、どれも「連立方程式が実数解をもつ $k$ の範囲」を、違う道具で求めている。
条件式を 1 つの文字について解いて代入すると、1 変数の関数の最大・最小になる。このとき、消去した後に残る文字が動く範囲を正しく求めることが肝心である。
区間などの実数の集合 $I$ と、$I$ の上で定義された関数 $\phi$ があって、条件を満たす点の集合が
$$
S=\{(x,\phi(x)): x\in I\}
$$
と書けるとする。$h(x):=f(x,\phi(x))$ とおくと、条件 $g=0$ のもとでの $f$ の最大値(最小値)と、$I$ の上での $h$ の最大値(最小値)は、一方があればもう一方もあって等しい。
方針:$S$ の点と $I$ の数が 1 対 1 に対応し、対応する点と数で $f$ と $h$ の値が等しいことを使う。
段 1(対応)。$I$ の数 $x$ に $S$ の点 $(x,\phi(x))$ を対応させる。$S$ のどの点もこの形なので、$S$ の点はすべて現れる。異なる $x$ には $x$ 座標の違う点が対応するので、2 つの数が同じ点に対応することはない。
段 2(値)。対応する $x$ と点 $P=(x,\phi(x))$ では、定義により $f(P)=h(x)$ である。したがって、$S$ の上での $f$ の値全体と、$I$ の上での $h$ の値全体は同じ集合である。
段 3(まとめ)。値全体の集合が同じなので、その最大値(最小値)も、一方があればもう一方もあって等しい。$\square$
大事なのは、$I$ が「$S$ の点の $x$ 座標として実際に現れる数全体」であることである。ex-cex-hs-a では $\phi(x)=1-x$ で、$I$ は実数全体だった。次の例では $I$ が限られる。
$x^2+y^2=1$ のもとで $y^2+4x$ の最大値と最小値を求める(図 2)。
段 1(消去と範囲)。条件から $y^2=1-x^2$ である。実数 $y$ が存在するには $1-x^2\ge0$、つまり $-1\le x\le1$ が必要で、逆にこの範囲の $x$ には $y=\pm\sqrt{1-x^2}$ が存在する。代入すると
$$
y^2+4x=1-x^2+4x=-(x-2)^2+5
$$
で、$x$ の範囲は $-1\le x\le1$ である(ここでは $y$ の符号で 2 点が同じ $x$ に対応するが、$y^2+4x$ の値は $y$ の符号によらないので、prop-cex-elimination と同じ考え方が使える)。
段 2(1 変数の最大・最小)。$h(x)=-(x-2)^2+5$ のグラフは軸 $x=2$ の上に凸の放物線で、軸は区間 $-1\le x\le1$ の右外にある。区間では $x$ が大きいほど軸に近く、$h$ は増加する。最大値は $h(1)=4$(点 $(1,0)$)、最小値は $h(-1)=-4$(点 $(-1,0)$)である。
y² = 1 − x² を代入した h(x) = −x² + 4x + 1。条件を満たす点があるのは −1 ≤ x ≤ 1 の部分だけで、最大値はその端 (1, 4) でとる。頂点 (2, 5) には条件を満たす点が対応しない
ex-cex-hs-b の $x=\cos\theta$、$y=\sin\theta$ も、文字を消去する方法の一種である。単位円の点はどれも $(\cos\theta,\sin\theta)$($0\le\theta<2\pi$)とただ 1 通りに書けるので(三角関数 の定義)、$\theta$ を「残る文字」と思えば、prop-cex-elimination と同じ理由で、$\cos\theta+2\sin\theta$ の $0\le\theta<2\pi$ での最大・最小が答えになる。曲線を 1 つの文字で表すことを媒介変数表示という(2次曲線の媒介変数表示)。
thm-cex-principle をそのまま使う方法である。値を $k$ とおいて連立方程式から 1 文字を消去し、残った方程式が実数解をもつ条件を判別式で書く。
実数 $k$ ごとに、連立方程式 $f(x,y)=k$、$g(x,y)=0$ の実数解 $(x,y)$ と、$y$ の 2 次方程式
$$
A\,y^2+B\,y+C=0\qquad(A\ne0。A,B,C\text{ は }k\text{ で決まる実数})
$$
の実数解 $y$ が、1 対 1 に対応しているとする(たとえば、$x$ が $y$ と $k$ の式 $x=\psi(y)$ で決まり、代入すると上の方程式になる場合)。このとき、$k$ が条件のもとでの $f$ の値であることは、$B^2-4AC\ge0$ と同値である。
方針:thm-cex-principle で「値である」を「連立方程式の実数解がある」に替え、1 対 1 の対応で「2 次方程式の実数解がある」に替える。
段 1。thm-cex-principle により、$k$ が値であることは、連立方程式が実数解をもつことと同値である。
段 2。仮定の 1 対 1 の対応により、連立方程式が実数解をもつことは、2 次方程式 $Ay^2+By+C=0$ が実数解をもつことと同値である。
段 3。$A\ne0$ なので、2 次方程式が実数解をもつことは判別式が $0$ 以上であること、$B^2-4AC\ge0$ と同値である(判別式(高校数学))。$\square$
判別式の方法の長所は、値の範囲全体が一度に分かることである。ただし prop-cex-discriminant には「残る文字 $y$ が実数全体を動いてよい」という仮定が入っている。$x\ge0$ のような制限があると、判別式だけでは足りない(ex-cex-disc-range)。また $y^2$ の係数 $A$ が $k$ によっては $0$ になる場合は、その $k$ を別に調べる。
最小値を不等式で求めるには、次の 2 つを示す。
実数 $m$ について、次の 2 つが成り立つとする。
方針:def-cex-problem の最小値の定義と見比べる。
2 の点 $P_0$ は $S$ の点で、1 により $S$ のすべての点 $P$ について $f(P)\ge m=f(P_0)$ である。これは $f(P_0)=m$ が最小値であることの定義そのものである。$\square$
1 だけでは最小値にならない。$m$ より大きい値しかとらない可能性があるからである。1 を示すのに使う不等式が、相加平均と相乗平均の関係や Cauchy–Schwarz の不等式で、2 はその不等式の 等号が成り立つ点が条件を満たすか の確認である。
ex-cex-hs-a:$x+y=1$ のもとで $x^2+y^2$。
段 1(評価)。展開すると $2(x^2+y^2)-(x+y)^2=x^2-2xy+y^2=(x-y)^2\ge0$ なので、$x^2+y^2\ge\dfrac{(x+y)^2}2=\dfrac12$ である。
段 2(等号の点)。等号は $x-y=0$ のときで、$x+y=1$ と合わせて $x=y=\dfrac12$ である。この点は条件を満たし、値は $\dfrac12$ である。lem-cex-bound により最小値は $\dfrac12$ である。
ex-cex-hs-b:$x^2+y^2=1$ のもとで $x+2y$。
段 1(評価)。展開すると
$$
(1^2+2^2)(x^2+y^2)-(x+2y)^2=5x^2+5y^2-x^2-4xy-4y^2=4x^2-4xy+y^2=(2x-y)^2\ge0
$$
なので、$(x+2y)^2\le5(x^2+y^2)=5$、つまり $-\sqrt5\le x+2y\le\sqrt5$ である。これは 2 次元の Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の特別な場合である。
段 2(等号の点)。等号は $2x-y=0$ のときで、$x^2+y^2=1$ と合わせて $(x,y)=\pm\left(\dfrac1{\sqrt5},\dfrac2{\sqrt5}\right)$ である。$+$ の点で $x+2y=\sqrt5$、$-$ の点で $-\sqrt5$ なので、最大値 $\sqrt5$、最小値 $-\sqrt5$ である。
$x>0$、$y>0$、$xy=4$ のもとで $x+4y$ の最小値を求める。
段 1(評価)。正の数 $a$、$b$ について $a+b\ge2\sqrt{ab}$(相加平均と相乗平均。差が $(\sqrt a-\sqrt b)^2\ge0$ であることから出る)。$a=x$、$b=4y$ とすると
$$
x+4y\ge2\sqrt{4xy}=2\sqrt{16}=8
$$
である。
段 2(等号の点)。等号は $x=4y$ のときで、$xy=4$ に代入すると $4y^2=4$、$y>0$ から $y=1$、$x=4$ である。この点は条件を満たし、値は $8$ なので、最小値は $8$ である。
thm-cex-principle の連立方程式の実数解は、2 つの図形 $f(x,y)=k$ と $g(x,y)=0$ の共有点である。$k$ を動かして、共有点が残る範囲を図で探す。
図形の方法は、答えの見当をつけるのに強い。一方、条件の曲線が円や直線でないときは、「共有点をもつ条件」を式にするのに、結局ほかの方法(判別式など)が要る。また、「接するとき最大・最小」がいつでも正しいわけではない(ex-cex-hyperbola)。領域の場合の同じ注意は 領域を使った最大・最小 で扱った。
| 方法 | 何をするか | 向いている場合 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 文字の消去 | 条件を 1 文字について解き、代入して 1 変数にする | 条件が 1 次式、または媒介変数で表せる曲線 | 残る文字の範囲(ex-cex-range) |
| 実数解の条件 | $f=k$ とおいて消去し、実数解をもつ条件を判別式で書く | 代入すると 2 次方程式になる | 残る文字に制限がないか(ex-cex-disc-range)、最高次の係数が $0$ にならないか |
| 不等式 | 相加相乗・Cauchy–Schwarz で抑え、等号の点を示す | 和と積、2 乗の和と 1 次式の組 | 等号の点が条件を満たすか(ex-cex-agm-equality) |
| 図形 | 等高線 $f=k$ を動かし、条件の曲線と共有点をもつ範囲を見る | 等高線と条件が直線・円 | 接するときの $k$ が本当に最大・最小か(ex-cex-hyperbola、ex-cex-two-circles) |
4 つの方法はばらばらの技法に見えるが、どれも thm-cex-principle の「連立方程式が実数解をもつ $k$ の範囲」を求めている。消去は実数解を 1 変数の関数の値として、判別式は 2 次方程式の実数解の条件として、図形は共有点として、それぞれ読んでいる。不等式の方法だけは少し違い、範囲の端だけを直接はさみ込む。そのかわり、範囲の途中の値がとられることは示さない(最大値・最小値を求めるには必要ない)。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 消去した後の文字の範囲を、条件から求めて使う | 1 変数の関数の最大値が、条件のもとでの最大値である | ex-cex-range |
| 残る文字が実数全体を動いてよい | 判別式 $\ge0$ の条件だけで値の範囲が決まる | ex-cex-disc-range |
| 不等式の等号が成り立つ点が条件を満たす | 相加相乗平均で得た下界(上界)が最小値(最大値)である | ex-cex-agm-equality |
| 条件の曲線が有界である | 最大値・最小値が存在し、それらは等高線が曲線に接するときの $k$ の中にある | ex-cex-hyperbola |
ex-cex-elimination で、$y^2=1-x^2$ を代入した $h(x)=-(x-2)^2+5$ の最大値を、$x$ の範囲を考えずに求めると、頂点の $x=2$ で $5$ となる。しかし $x=2$ のとき $y^2=1-4=-3$ で、実数 $y$ がない。条件 $x^2+y^2=1$ を満たす点で $y^2+4x=5$ となるものはなく、正しい最大値は $4$ である(図 2)。
満たさない仮定:残る文字の範囲を条件から求めて使うこと。崩れる主張:1 変数の関数 $h$ の(実数全体での)最大値が答えになること。prop-cex-elimination の $I$ を実数全体と取り違えると、$S$ の点に対応しない $x$ まで数えてしまう。
$x\ge0$、$y\ge0$、$x+y=1$ のもとで、$x^2+y^2$ の値の範囲を求める。
(1) 判別式だけを使うと、ex-cex-discriminant (2) と同じく $2x^2-2x+1-k=0$ で $k\ge\dfrac12$ となり、最大値はないように見える。
(2) しかし $x$ は $0\le x\le1$ に制限されている($y=1-x\ge0$ から)。値の範囲は、2 次方程式が $0\le x\le1$ に解をもつ $k$ の範囲である。$h(x)=2x^2-2x+1=2\left(x-\dfrac12\right)^2+\dfrac12$ は、$0\le x\le1$ で軸 $x=\dfrac12$ から最も遠い端 $x=0,1$ で最大値 $1$、軸で最小値 $\dfrac12$ をとる。値の範囲は $\dfrac12\le k\le1$ で、最大値は $1$(点 $(1,0)$ と $(0,1)$)である。
満たさない仮定:残る文字 $x$ が実数全体を動いてよいこと。崩れる主張:判別式 $\ge0$ だけで値の範囲が決まること。制限があるときは、決まった範囲に解をもつ条件(解の配置)を使うか、prop-cex-elimination に戻る。
$x\ge2$、$y\ge0$、$x+y=3$ のもとで、$xy$ の最大値を求める。
(1) 相加平均と相乗平均の関係から $xy\le\left(\dfrac{x+y}2\right)^2=\dfrac94$ である。しかし等号は $x=y=\dfrac32$ のときで、$x\ge2$ を満たさない。$\dfrac94$ は上界ではあるが、条件のもとでとられる値ではない。
(2) 正しくは、$y=3-x$ を代入して $xy=x(3-x)=-\left(x-\dfrac32\right)^2+\dfrac94$ とし、$x$ の範囲 $2\le x\le3$($y\ge0$ から $x\le3$)で考える。この範囲は軸 $x=\dfrac32$ の右にあるので $xy$ は減少し、最大値は $x=2$ での $2\cdot1=2$ である。
満たさない仮定:不等式の等号が成り立つ点が条件を満たすこと。崩れる主張:相加相乗平均で得た上界 $\dfrac94$ が最大値であること。lem-cex-bound の 2 が成り立たない例である。相加平均と相乗平均 にも、等号の点が範囲外になる例がある。
$xy=1$ のもとで $x+y$ を考える(図 3)。
段 1(接する $k$)。$x+y=k$ とおいて $y=k-x$ を代入すると $x^2-kx+1=0$ で、判別式は $k^2-4$ である。$k=\pm2$ のとき重解をもち、直線 $x+y=2$ は双曲線に点 $(1,1)$ で、$x+y=-2$ は点 $(-1,-1)$ で接する。
段 2(値の範囲)。$x=0$ は $xy=1$ を満たさないので、$y=k-x$ を代入した方程式の実数解 $x$ と連立方程式の解は 1 対 1 に対応する。prop-cex-discriminant により、値の範囲は $k^2-4\ge0$、つまり $k\le-2$ または $k\ge2$ である。$k$ はいくらでも大きく、いくらでも小さくできるので、最大値も最小値もない。
満たさない仮定:条件の曲線が有界であること(双曲線は遠くまで伸びる)。崩れる主張:最大値・最小値が存在し、それらは接するときの $k$ の中にあること。ここでは最大値も最小値もなく、接するときの $k=\pm2$ はどちらも最大・最小ではない。$k=2$ は、$x>0$ の側の枝だけに限ったときの最小値で、$k=-2$ は $x<0$ の側の枝だけに限ったときの最大値である。
逆に、曲線が有界でも、接するときの $k$ がすべて最大値か最小値になるわけではない。接するときの $k$ は候補にすぎない(ex-cex-two-circles。ex-cex-lagrange (2) の「必要条件」の注意と同じことである)。
双曲線 xy = 1 と直線 x + y = k。k = ±2 で接するが、k = 3 などの直線も 2 点で交わり、x + y の値に最大も最小もない
条件 $(x^2+y^2-1)\bigl((x-5)^2+y^2-1\bigr)=0$ のもとで $f=x$ を考える。条件を満たす点の集合 $S$ は、原点を中心とする半径 $1$ の円と、点 $(5,0)$ を中心とする半径 $1$ の円を合わせたもので、有界である。
段 1(接する $k$)。等高線 $x=k$ は $y$ 軸に平行な直線である。$k=-1$、$1$ のとき 1 つ目の円に点 $(-1,0)$、$(1,0)$ で接し、$k=4$、$6$ のとき 2 つ目の円に点 $(4,0)$、$(6,0)$ で接する。
段 2(値の範囲)。1 つ目の円の点では $x^2\le x^2+y^2=1$ から $-1\le x\le1$、2 つ目の円の点では同じように $4\le x\le6$ である。逆に、$-1\le k\le1$ なら点 $\bigl(k,\sqrt{1-k^2}\bigr)$ が 1 つ目の円の上にあり、$4\le k\le6$ なら点 $\bigl(k,\sqrt{1-(k-5)^2}\bigr)$ が 2 つ目の円の上にある。よって値の範囲は $-1\le k\le1$ または $4\le k\le6$ で、最小値は $-1$、最大値は $6$ である。
段 3(接しても最大・最小でない $k$)。$k=1$ と $k=4$ では直線 $x=k$ が $S$ に接しているが、$1$ も $4$ も最大値でも最小値でもない。
この例は有界という仮定を満たしている。崩れる主張:接するときの $k$ は、どれも最大値か最小値であること。有界で成り立つのは、最大値と最小値が存在し、それらが接するときの $k$ の中にあることまでである($f$、$g$ が多項式で、曲線がなめらかなとき。存在は大学で学ぶ最大値の定理により、接することは rem-cex-lagrange-general による。この記事では証明しない。この例では $-1$、$1$、$4$、$6$ の中に最小値 $-1$ と最大値 $6$ がある)。候補の中から、値を比べて選ぶ必要がある。
図 1 の右で、最大の点 $\left(\dfrac1{\sqrt5},\dfrac2{\sqrt5}\right)$ では、直線 $x+2y=\sqrt5$ が円に接している。接するということは、2 つの曲線の接線が一致し、したがって法線の向きがそろうということである。直線 $x+2y=k$ の法線ベクトルは $(1,2)$、円の点 $(x_0,y_0)$ での法線ベクトルは中心からの向き $(x_0,y_0)$ で、最大の点では 2 つが平行になる(図 4。ex-cex-lagrange (1) で確かめる)。これを一般の式について確かめる。
多項式 $f(x,y)$ について、$y$ を定数とみて $x$ で微分したものを $f_x$、$x$ を定数とみて $y$ で微分したものを $f_y$ と書く(偏微分)。
$f=x^3y+xy^2$ とする。$y$ を定数とみて $x$ で微分すると $f_x=3x^2y+y^2$、$x$ を定数とみて $y$ で微分すると $f_y=x^3+2xy$ である。
$f(x,y)$ を多項式、$r>0$ とする。条件 $x^2+y^2=r^2$ のもとで、$f$ が点 $P_0=(x_0,y_0)$ で最大値(または最小値)をとるならば、
$$
x_0\,f_y(P_0)-y_0\,f_x(P_0)=0
$$
である。したがって、ある実数 $\lambda$ で
$$
\bigl(f_x(P_0),\ f_y(P_0)\bigr)=\lambda\,(2x_0,\ 2y_0)
$$
となる。右辺の $(2x,2y)$ は $g(x,y)=x^2+y^2-r^2$ を同じように微分して並べたもので、円の法線ベクトルである。
方針:円の点を $(r\cos\theta,r\sin\theta)$ と表すと、$f$ の値は $\theta$ の関数 $F(\theta)$ になる。$F$ は $\theta_0$ で最大になるので $F'(\theta_0)=0$ である。$F'$ を計算すると、主張の式が出る。
段 1(1 変数の関数にする)。$F(\theta):=f(r\cos\theta,r\sin\theta)$ とし、$P_0=(r\cos\theta_0,r\sin\theta_0)$ となる $\theta_0$ をとる。円の点はすべて $(r\cos\theta,r\sin\theta)$ の形なので、$F$ はすべての実数 $\theta$ で $F(\theta)\le F(\theta_0)$ を満たす(最大値の場合)。
段 2($F'(\theta_0)=0$)。$h>0$ なら $\dfrac{F(\theta_0+h)-F(\theta_0)}h\le0$、$h<0$ なら $\dfrac{F(\theta_0+h)-F(\theta_0)}h\ge0$ である(分子が $0$ 以下で、分母の符号が違う)。$h\to0$ とすると、右からの極限は $0$ 以下、左からの極限は $0$ 以上で、どちらも $F'(\theta_0)$ に等しいので $F'(\theta_0)=0$ である(関数の増減と極値)。最小値の場合も不等号が逆になるだけで、同じ結論になる。
段 3(単項式の微分)。$f$ の 1 つの項 $x^iy^j$ に対して $u(\theta)=(r\cos\theta)^i(r\sin\theta)^j$ とおく。積の微分と連鎖律(高校数学)により
$$
u'(\theta)=i(r\cos\theta)^{i-1}(-r\sin\theta)(r\sin\theta)^j+j(r\cos\theta)^i(r\sin\theta)^{j-1}(r\cos\theta)
$$
である($i=0$ や $j=0$ の項は $0$ とする)。$x=r\cos\theta$、$y=r\sin\theta$ と書くと、これは $ix^{i-1}y^j\cdot(-y)+jx^iy^{j-1}\cdot x$、つまり「$x^iy^j$ を $x$ で微分したもの」$\times(-y)$ と「$y$ で微分したもの」$\times x$ の和である。
段 4(全体の微分)。$f$ は単項式の定数倍の和で、微分は和と定数倍を保つので、段 3 から
$$
F'(\theta)=-y\,f_x(x,y)+x\,f_y(x,y)\qquad(x=r\cos\theta,\ y=r\sin\theta)
$$
である。$\theta=\theta_0$ として段 2 を使うと $x_0f_y(P_0)-y_0f_x(P_0)=0$ を得る。
段 5(平行)。$(x_0,y_0)\ne(0,0)$ である($x_0^2+y_0^2=r^2>0$)。段 4 の式は、2 つのベクトル $(x_0,y_0)$ と $\bigl(f_x(P_0),f_y(P_0)\bigr)$ について「成分をたすきに掛けた差が $0$」ということである。後者が $0$ ベクトルなら $\lambda=0$ でよい。そうでなければ、直線の方程式と点と直線の距離 の補題(2 つのベクトルが平行になる条件)により 2 つは平行で、$\bigl(f_x,f_y\bigr)=\mu(x_0,y_0)$ と書ける。$\lambda=\dfrac\mu2$ とすればよい。$\square$
単位円の上で、x + 2y の値が増える向き (1, 2)(赤)と円の法線(緑)。最大の点 (1/√5, 2/√5) では 2 つが平行で、点線の直線 x + 2y = √5 が円に接する。点 (1, 0) では平行でなく、円に沿って動くと値がまだ増える
この定理は、候補となる点を「$f_x=2\lambda x$、$f_y=2\lambda y$、$x^2+y^2=r^2$」という連立方程式の解に絞り込む。候補は最大・最小の点を含むが、候補がすべて最大・最小の点とは限らない(必要条件にすぎない)。
thm-cex-circle-lagrange は、条件の曲線が円の場合に限って証明した。一般の条件 $g(x,y)=0$ の場合にも、同じことが成り立つ。$f$ と $g$ の偏導関数が連続で、$g=0$ がなめらかな曲線であり、点 $(x_0,y_0)$ で $f$ が曲線の上での極値をとり、$\bigl(g_x(x_0,y_0),g_y(x_0,y_0)\bigr)\ne(0,0)$ ならば、ある実数 $\lambda$ で
$$
\bigl(f_x(x_0,y_0),\ f_y(x_0,y_0)\bigr)=\lambda\,\bigl(g_x(x_0,y_0),\ g_y(x_0,y_0)\bigr)
$$
となる(StH16 の §4.8、Theorem 4.20。この記事では証明しない)。この $\lambda$ を Lagrange の未定乗数 といい、この条件で候補を探す方法を Lagrangeの未定乗数法 という。$g_x$、$g_y$ が同時に $0$ にならないという仮定は外せない。たとえば $g=x^3-y^2$ のとき、$g=0$ の点では $x^3=y^2\ge0$ から $x\ge0$ なので、$f=x$ は原点で最小値 $0$ をとる。しかし原点では $(g_x,g_y)=(3x^2,-2y)=(0,0)$ で、$(f_x,f_y)=(1,0)$ はその実数倍にならない。
条件が 1 次式 $px+qy=d$ で、$f$ が凸関数(たとえば $x^2+y^2$)の場合には、この条件は最小値であるための十分条件にもなる(BV04 の §4.2.3 の「Problems with equality constraints only」、pp. 141–142)。ex-cex-hs-a では $(2x,2y)=\lambda(1,1)$ から $x=y=\dfrac12$ が得られ、これが最小の点であることがこの事実からも分かる。
$x^2+y^2=1$ のもとで $f=3x^2+2xy+3y^2$ の最大値と最小値を求める。
(1) 未定乗数:$f_x=6x+2y$、$f_y=2x+6y$ なので、thm-cex-circle-lagrange の条件は $6x+2y=2\lambda x$、$2x+6y=2\lambda y$、つまり
$$
\begin{pmatrix}3&1\\ 1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\lambda\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
$$
である。$\lambda$ は係数を並べた行列の固有値で、$(x,y)$ は長さ $1$ の固有ベクトルである。$(3-\lambda)^2-1=0$ から $\lambda=4$ または $\lambda=2$ で、$\lambda=4$ のとき $(x,y)=\pm\dfrac1{\sqrt2}(1,1)$、$\lambda=2$ のとき $\pm\dfrac1{\sqrt2}(1,-1)$ である。値は、$\dfrac1{\sqrt2}(1,1)$ で $\dfrac32+1+\dfrac32=4$、$\dfrac1{\sqrt2}(1,-1)$ で $\dfrac32-1+\dfrac32=2$ である。候補の値を比べて、最大値 $4$、最小値 $2$ である。
(2) 確かめ:$x=\cos\theta$、$y=\sin\theta$ とすると $f=3(\cos^2\theta+\sin^2\theta)+2\sin\theta\cos\theta=3+\sin2\theta$ で、$2\le f\le4$ である。
最大値・最小値が、係数を並べた対称行列の固有値そのものになっている。条件のもとでの 2 次式の最大・最小と固有値の関係は、2 次曲線の軸を求める 2次曲線と2次形式 で使われる。
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