射影一般線形群

同義語:projective general linear group射影一般線型群

概要

射影一般線形群(projective general linear group)とは、体 $k$ 上の一般線形群 $\mathrm{GL}_n(k)$ をスカラー行列の全体(中心)で割った剰余群 $\mathrm{PGL}_n(k)$ のことで、射影空間 $\mathbb{P}^{n-1}(k)$ の射影変換の群と同一視される。$n\ge2$ なら中心は自明で、射影特殊線形群 $\mathrm{PSL}_n(k)$ は正規部分群として入り、商は行列式から得られる $k^\times/(k^\times)^n$ である。有限体 $\mathbb{F}_q$ の上では位数が $|\mathrm{SL}_n(\mathbb{F}_q)|$ に等しく、$\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_q)$ の射影直線への作用から $S_3$、$S_4$、$A_5$ との同型が得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 一般線形群, 特殊線形群, 射影空間, 剰余群

体 $k$ 上の 一般線形群 $\mathrm{GL}_n(k)$ を、$0$ でないスカラー行列の全体で割った剰余群を 射影一般線形群 $\mathrm{PGL}_n(k)$ という。$A$ と $\lambda A$($\lambda\ne0$)は原点を通る直線を同じ直線に移すので、射影空間 $\mathbb{P}^{n-1}(k)$ の上では同じ変換を与える。$\mathrm{PGL}_n(k)$ はちょうどその変換の群、すなわち射影変換の群である。$n=2$、$k=\mathbb{C}$ のときは Riemann 球面の Möbius変換 の群になる。
この記事では、$\mathrm{PGL}_n(k)$ の中心が自明であること(thm-pgl-center)、射影特殊線形群 $\mathrm{PSL}_n(k)$ が正規部分群として入り、商が $k^\times/(k^\times)^n$ になること(thm-pgl-psl)、有限体の上の位数と、射影直線への作用から得られる小さい群との同型(thm-pgl-finite)を示す。

定義

以下、$k$ を体、$n\ge1$ とする。一般線形群 の記事の命題「スカラー行列からなる中心」により、$\mathrm{GL}_n(k)$ の中心は $0$ でないスカラー行列の全体 $k^\times I=\{\lambda I\mid\lambda\in k^\times\}$ である。

射影一般線形群

剰余群
$$ \mathrm{PGL}_n(k):=\mathrm{GL}_n(k)/k^\times I $$
を $k$ 上の $n$ 次 射影一般線形群(projective general linear group)という。$A\in\mathrm{GL}_n(k)$ の類を $[A]$ と書く。$[A]=[B]$ は $B=\lambda A$ となる $\lambda\in k^\times$ があることと同値である。有限次元の $k$ ベクトル空間 $V$ についても、$\mathrm{PGL}(V):=\mathrm{GL}(V)/k^\times\mathrm{id}_V$ と定める。$\mathrm{PGL}(n,k)$ とも書く。

$k^\times I$ は中心なので正規部分群であり、剰余群が定まる。$n=1$ では $\mathrm{GL}_1(k)=k^\times$ なので $\mathrm{PGL}_1(k)$ は自明な群である。代数幾何の文献では、$\mathbb{P}^n$ に作用する群という意味で $\mathrm{GL}(n+1,k)/k^\times$ を $\mathrm{PGL}(n,k)$ と書くものがある(Har77 Example II.7.1.1)ので、添字の意味に注意する。
$\mathrm{PSL}_n(k)=\mathrm{SL}_n(k)/Z(\mathrm{SL}_n(k))$ は 特殊線形群 の記事の定義「射影特殊線形群」で定めた群である。

射影空間への作用

$V$ を $n$ 次元の $k$ ベクトル空間とし、$\mathbb{P}(V)$ を $V$ の $1$ 次元部分空間の全体とする(射影空間)。$0$ でない $v$ が張る点を $[v]$ と書く。

射影空間への忠実な作用

$[A]\cdot[v]:=[Av]$ は $\mathrm{PGL}(V)$ の $\mathbb{P}(V)$ への作用を定め、この作用は忠実である。すなわち、すべての点を動かさない $[A]$ は単位元だけである。したがって $\mathrm{PGL}(V)$ は $\mathbb{P}(V)$ の射影変換の群(射影幾何学 の記事の定義「射影変換」の $\mathrm{PGL}(V)$)と同一視できる。

$A$ は線形同型なので $[Av]$ は点であり、$(\lambda A)(cv)=\lambda c\,Av$ なので $[Av]$ は $A$ と $v$ の代表の選び方によらない。$[AB]\cdot[v]=[A]\cdot([B]\cdot[v])$ と $[I]\cdot[v]=[v]$ は明らかである。
忠実性:すべての $0$ でない $v$ について $Av=\lambda_vv$($\lambda_v\in k^\times$)とする。$v,w$ が線形独立なら
$$ \lambda_{v+w}(v+w)=A(v+w)=\lambda_vv+\lambda_ww $$
で、係数を比べて $\lambda_v=\lambda_{v+w}=\lambda_w$ である。$w=cv$ なら $Aw=cAv=\lambda_vw$ で $\lambda_w=\lambda_v$ である。よって $\lambda_v$ は $v$ によらない値 $\lambda$ で、$A=\lambda\,\mathrm{id}_V$、$[A]$ は単位元である。$\square$

射影幾何学 の記事の定理「射影枠の基本定理」は、さらに強く、一般の位置にある $n+1$ 点の順序付きの組(射影枠)を別の射影枠に移す元が $\mathrm{PGL}(V)$ にちょうど 1 つあることを示している。$n=2$ では、$\mathbb{P}^1(k)$ の射影枠は相異なる 3 点の組なので、次が従う。

射影直線への 3 重可移な作用

$\mathbb{P}^1(k)$ の相異なる 3 点の組 $(z_1,z_2,z_3)$、$(w_1,w_2,w_3)$ に対し、$[A]\cdot z_i=w_i$($i=1,2,3$)となる $[A]\in\mathrm{PGL}_2(k)$ がちょうど 1 つある。

$\mathbb{P}^1(k)=k\cup\{\infty\}$ と書くと、$A=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}$ の作用は $z\mapsto\dfrac{az+b}{cz+d}$($cz+d=0$ のときは $\infty$、$\infty\mapsto a/c$)である。$k=\mathbb{C}$ では Möbius変換 の記事の定理「Möbius 変換の群と行列の群」により、$\mathrm{PGL}_2(\mathbb{C})$ は Möbius 変換の群と同型で、cor-pgl-three-points は同記事の定理「3 点の行き先で決まる」にあたる。$k=\mathbb{R}$ の場合は 射影変換と複比 の定理「3 点を 3 点に移す射影変換はただ 1 つ」である。

直感

$\mathrm{GL}_n(k)$ はベクトル空間 $k^n$ の対称性の群であり、$\mathrm{PGL}_n(k)$ は「原点を通る直線の配置」だけを見たときの対称性の群である。直線しか見ないので、全体を一様に $\lambda$ 倍する変換は見えなくなり、それがちょうどスカラー行列で割ることにあたる(prop-pgl-action)。
$\mathrm{PSL}_n(k)$ との違いは、行列式の情報がどこまで残るかにある。$\det(\lambda A)=\lambda^n\det A$ なので、$\mathrm{PGL}_n(k)$ の元に対して $\det A$ は $n$ 乗の違いを除いてしか決まらない。$k$ のすべての元が $n$ 乗なら行列式は完全に消えて $\mathrm{PSL}_n(k)=\mathrm{PGL}_n(k)$ となり、そうでなければ $k^\times/(k^\times)^n$ の分だけ $\mathrm{PGL}_n(k)$ のほうが大きい(thm-pgl-psl)。

$k$$k^\times/(k^\times)^2$$\mathrm{PSL}_2(k)$ と $\mathrm{PGL}_2(k)$
$\mathbb{C}$自明一致する
$\mathbb{R}$$\{\pm1\}$指数 $2$。行列式が負の行列の類が $\mathrm{PSL}_2(\mathbb{R})$ に入らない
$\mathbb{F}_q$($q$ は奇数)位数 $2$指数 $2$
$\mathbb{F}_{2^e}$自明一致する

主定理 1:中心は自明である

射影一般線形群の中心

$n\ge2$ とする。$\mathrm{PGL}_n(k)$ の中心は単位元だけからなる。

基本行列との交換子を固有値で比べる

$[A]$ が中心に属するとする。$i\ne j$ について $T:=T_{ij}(1)=I+E_{ij}$(基本変形 の記事の定義「基本行列」)とおく。$[A][T]=[T][A]$ なので、ある $\lambda\in k^\times$ について
$$ ATA^{-1}=\lambda T $$
である。$T-I=E_{ij}$ は $E_{ij}^2=O$ を満たすので、$ATA^{-1}-I=AE_{ij}A^{-1}$ の平方も $O$ である。したがって $ATA^{-1}$ の固有値は $1$ だけである(固有ベクトル $u\ne0$、固有値 $\mu$ について $(\mu-1)^2u=(ATA^{-1}-I)^2u=0$)。一方 $n\ge2$ なので $j$ と異なる番号 $l$ があり、$Te_l=e_l$ だから $(\lambda T)e_l=\lambda e_l$ で、$\lambda$ は $\lambda T=ATA^{-1}$ の固有値である。よって $\lambda=1$、すなわち $AT=TA$ である。
こうして $A$ はすべての $T_{ij}(1)$($i\ne j$)と可換である。特殊線形群 の記事の命題「特殊線形群の中心」の前半により $A$ はスカラー行列であり、$[A]$ は単位元である。$\square$

一般の群 $G$ では、中心で割った $G/Z(G)$ の中心が自明とは限らない。たとえば位数 $8$ の二面体群では、中心は位数 $2$ で、中心による剰余群は位数 $4$ の可換群なので、その中心は全体である。$\mathrm{GL}_n(k)$($n\ge2$)ではそうならないことを、この定理は示している。

主定理 2:射影特殊線形群との関係

PSL と PGL の完全列

$n\ge2$ とする。包含 $\mathrm{SL}_n(k)\to\mathrm{GL}_n(k)$ は単射な準同型 $\mathrm{PSL}_n(k)\to\mathrm{PGL}_n(k)$ を引き起こし、その像は正規部分群である。行列式は全射な準同型
$$ \delta\colon\mathrm{PGL}_n(k)\to k^\times/(k^\times)^n,\qquad [A]\mapsto\det A\cdot(k^\times)^n $$
を定め、その核は $\mathrm{PSL}_n(k)$ の像に等しい。すなわち
$$ 1\to\mathrm{PSL}_n(k)\to\mathrm{PGL}_n(k)\xrightarrow{\ \delta\ }k^\times/(k^\times)^n\to1 $$
は完全である。ここで $(k^\times)^n:=\{a^n\mid a\in k^\times\}$ である。

行列式を n 乗の違いで読む

合成 $\mathrm{SL}_n(k)\to\mathrm{GL}_n(k)\to\mathrm{PGL}_n(k)$ の核は $\mathrm{SL}_n(k)\cap k^\times I=\{aI\mid a^n=1\}$ で、特殊線形群 の記事の命題「特殊線形群の中心」によりこれは $Z(\mathrm{SL}_n(k))$ に等しい。剰余群 の記事の定理「剰余群の普遍性」により、合成は単射な準同型 $\mathrm{PSL}_n(k)\to\mathrm{PGL}_n(k)$ を引き起こす。
$\det(\lambda A)=\lambda^n\det A$ なので、$\det A$ の $(k^\times)^n$ を法とする類は代表 $A$ の選び方によらず、$\delta$ は準同型として定まる。$c\in k^\times$ に対し $\delta([\operatorname{diag}(c,1,\dots,1)])$ は $c$ の類なので、$\delta$ は全射である。
核:$\mathrm{SL}_n(k)$ の元の類は $\delta$ で単位元に移る。逆に $\delta([A])$ が単位元なら $\det A=\mu^n$($\mu\in k^\times$)と書け、$B:=\mu^{-1}A$ は $\det B=\mu^{-n}\det A=1$ を満たし $[B]=[A]$ なので、$[A]$ は $\mathrm{SL}_n(k)$ の元の類である。よって核は $\mathrm{PSL}_n(k)$ の像であり、とくに正規部分群である。$\square$

有限体の上の指数

$k=\mathbb{F}_q$ なら $[\mathrm{PGL}_n(\mathbb{F}_q):\mathrm{PSL}_n(\mathbb{F}_q)]=\gcd(n,q-1)$ である。

要点:位数 $q-1$ の巡回群で $n$ 乗写像の像の指数を数える。

詳しい証明を開く

有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」により $\mathbb{F}_q^\times$ は位数 $q-1$ の巡回群である。生成元を $g$ とすると $(k^\times)^n$ は $g^n$ が生成する部分群で、その位数は $(q-1)/\gcd(n,q-1)$ である。よって $k^\times/(k^\times)^n$ の位数は $\gcd(n,q-1)$ で、thm-pgl-psl から主張を得る。$\square$

したがって $\gcd(n,q-1)>1$ なら $\mathrm{PSL}_n(\mathbb{F}_q)$ は $\mathrm{PGL}_n(\mathbb{F}_q)$ の真の正規部分群であり、$\mathrm{PGL}_n(\mathbb{F}_q)$ は単純群でない。$\mathrm{PSL}_n(k)$($n\ge2$)のほうは、$(n,|k|)=(2,2),(2,3)$ を除いて単純群である($n=2$ は Lan02 Chapter XIII, Theorem 8.4、p. 539、$n\ge3$ は同 Theorem 9.3、p. 542。この記事では証明しない。単純群 の例「行列の群から得られる単純群」も参照)。

主定理 3:有限体の上の位数と小さい群

有限体の上の射影一般線形群

$q$ を素数の冪とする。

  1. $\displaystyle|\mathrm{PGL}_n(\mathbb{F}_q)|=\frac{|\mathrm{GL}_n(\mathbb{F}_q)|}{q-1}=|\mathrm{SL}_n(\mathbb{F}_q)|=q^{n(n-1)/2}\prod_{i=2}^n(q^i-1)$ である。とくに $|\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_q)|=(q+1)q(q-1)$ である。
  2. $\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_q)$ の $q+1$ 点の集合 $\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_q)$ への作用は、単射な準同型 $\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_q)\to S_{q+1}$(対称群)を与える。
  3. $\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_2)\cong S_3$、$\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_3)\cong S_4$、$\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_4)=\mathrm{PSL}_2(\mathbb{F}_4)\cong A_5$(交代群)である。
中心の位数で割り、点の置換として数える

1:$\mathrm{PGL}_n(\mathbb{F}_q)$ は $\mathrm{GL}_n(\mathbb{F}_q)$ を位数 $q-1$ の部分群 $\mathbb{F}_q^\times I$ で割った群なので、位数は $|\mathrm{GL}_n(\mathbb{F}_q)|/(q-1)$ であり、一般線形群 の記事の命題「有限体上の一般線形群の位数」によりこれは $|\mathrm{SL}_n(\mathbb{F}_q)|$ に等しい。同じ命題の式から
$$ \frac{1}{q-1}\prod_{i=0}^{n-1}(q^n-q^i)=\frac{1}{q-1}\,q^{0+1+\cdots+(n-1)}\prod_{l=1}^{n}(q^l-1)=q^{n(n-1)/2}\prod_{l=2}^n(q^l-1) $$
である。$n=2$ では $q(q^2-1)=(q+1)q(q-1)$ である。
2:$\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_q)$ の点の個数は $(q^2-1)/(q-1)=q+1$ である(射影空間 の記事の命題「有限体上の射影空間の点の個数」)。作用は点の置換を与え、prop-pgl-action によりこの置換が恒等置換になるのは単位元だけなので、準同型は単射である。
3:2 により $\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_q)$ は $S_{q+1}$ の位数 $(q+1)q(q-1)$ の部分群と同型である。$q=2$ では位数 $6=|S_3|$、$q=3$ では位数 $24=|S_4|$ なので、どちらも全体と同型である。
$q=4$ では $\mathbb{F}_4^\times$ の位数は $3$ で $\gcd(2,3)=1$ なので、cor-pgl-psl-index により $\mathrm{PSL}_2(\mathbb{F}_4)=\mathrm{PGL}_2(\mathbb{F}_4)$ であり、位数は $60$ である。その像 $H\subset S_5$ は位数 $60$、すなわち指数 $2$ の部分群なので、交代群 の記事の命題「対称群の指数 2 の部分群」により $H=A_5$ である。$\square$

$\mathbb{F}_3$ の上の作用を具体的に見る

$\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_3)=\{0,1,2,\infty\}$ である。$A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ は $z\mapsto z+1$ で、置換 $(0\,1\,2)$ を与え、$\infty$ を動かさない。$B=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ は $z\mapsto1/z$ で、置換 $(0\,\infty)$ を与え、$1$ と $2$($2\cdot2=4=1$ より $1/2=2$)を動かさない。$\det B=-1$ で、$-1=2$ は $\mathbb{F}_3$ の平方でない(平方は $1^2=2^2=1$ だけ)ので、$[B]\notin\mathrm{PSL}_2(\mathbb{F}_3)$ である。thm-pgl-psl により $\mathrm{PSL}_2(\mathbb{F}_3)$ の像は指数 $2$ の部分群で、交代群 の記事の命題「対称群の指数 2 の部分群」によりそれは $A_4$ である。互換を与える $[B]$ がそこに入らないことと合っている。

自己同型群としての射影一般線形群

行列環の自己同型群

$n\ge1$ とする。$u\in\mathrm{GL}_n(k)$ に共役 $b\mapsto ubu^{-1}$ を対応させる写像は、群の同型
$$ \mathrm{PGL}_n(k)\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Aut}_{k\text{-alg}}(M_n(k)) $$
を引き起こす。

Skolem–Noether の定理と中心

要点:全射は Skolem–Noether の定理、核は行列環の中心で決まる。

詳しい証明を開く

$c_u(b):=ubu^{-1}$ は $k$ 代数の自己同型で、$c_{uv}=c_u\circ c_v$ なので $u\mapsto c_u$ は準同型である。全射:$\varphi$ を $k$ 代数の自己同型とする。$M_n(k)$ は $k$ 上の中心単純環なので(中心的単純環 の記事の命題「行列代数は中心単純」)、同記事の定理「単純部分代数の埋め込みの共役性」(Skolem–Noether の定理)を $A=B=M_n(k)$、$f=\mathrm{id}$、$g=\varphi$ に当てると、単元 $u$ で $\varphi(b)=ubu^{-1}$ となるものがある。核:$n=1$ では $M_1(k)=k$ で、$\mathrm{PGL}_1(k)$ も自己同型群も自明なので、$n\ge2$ とする。$c_u=\mathrm{id}$ はすべての $b$ について $ub=bu$ であることで、$b$ に基本行列 $T_{ij}(1)$ を入れると 特殊線形群 の記事の命題「特殊線形群の中心」の前半により $u$ はスカラー行列である。逆にスカラー行列は核に入る。よって核は $k^\times I$ であり、剰余群 の記事の定理「剰余群の普遍性」から同型を得る。$\square$

射影一般線形群は、ほかにもいくつかの対象の自己同型群として現れる。次の 2 つはこの記事では証明しない。

  • 体 $k$ の上の射影空間 $\mathbb{P}^{n-1}_k$ の、代数多様体(スキーム)としての $k$ 自己同型の群は $\mathrm{PGL}_n(k)$ である(Har77 Example II.7.1.1、p. 151。そこでの記号は $\mathrm{PGL}(n-1,k)$)。
  • 1 変数の有理関数体 $k(t)$ の $k$ 上の自己同型は $t\mapsto(at+b)/(ct+d)$($ad-bc\ne0$)の形のものに限り、$\operatorname{Aut}(k(t)/k)\cong\mathrm{PGL}_2(k)$ である(DF04 §14.9、p. 647)。
    cor-pgl-matrix-algebra は、行列環の「ねじれた形」である中心単純環や Azumaya代数 を $\mathrm{PGL}_n$ を構造群とする対象として扱う出発点になる(Azumaya代数 の記事の定理「PGLトーサーとの対応」)。

仮定を外したときの反例

各行は定理の条件を 1 つだけ外す。

外す条件反例成り立たなくなること
スカラー行列で割ること(prop-pgl-action)$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$ の $\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_3)$ への作用作用が忠実であること
行き先を決める点が 3 個(cor-pgl-three-points)$\mathbb{P}^1(\mathbb{Q})$ の 4 点の組 $(0,1,\infty,2)$ と $(0,1,\infty,3)$一方を他方に移す元の存在
$n=2$($\mathbb{P}^{n-1}$ が射影直線)(cor-pgl-three-points)$n=3$、$\mathbb{P}^2(k)$ の相異なる 3 点の組 $([e_1],[e_2],[e_3])$ と $([e_1],[e_2],[e_1+e_2])$相異なる 3 点の組どうしを移す元の存在
$k$ のすべての元が $n$ 乗(thm-pgl-psl で $\mathrm{PSL}_n=\mathrm{PGL}_n$ となる条件)$k=\mathbb{R}$、$n=2$、$[\operatorname{diag}(1,-1)]$$\mathrm{PSL}_2(\mathbb{R})=\mathrm{PGL}_2(\mathbb{R})$
反例の確かめ
各行の確かめを開く

1 行目:$-I\ne I$ だが、$(-I)v=-v$ なので $[(-I)v]=[v]$ で、$-I$ はすべての点を動かさない。$\mathrm{GL}_2(\mathbb{F}_3)$ の位数は $48$ で $S_4$ の位数 $24$ より大きいので、そもそも単射になりえない。

2 行目:$0,1,\infty$ を動かさない元は cor-pgl-three-points により単位元だけで、それは $2$ を $3$ に移さない。

3 行目:射影変換は線形同型から来るので線形独立性を保つ。前の組の代表 $e_1,e_2,e_3$ は線形独立で、後の組の代表 $e_1,e_2,e_1+e_2$ は線形従属なので、前の組を後の組に移す元はない。どちらの組も相異なる 3 点からなる。

4 行目:$\delta([\operatorname{diag}(1,-1)])$ は $-1$ の $(\mathbb{R}^\times)^2$ を法とする類で、$-1$ は実数の平方でないので単位元でない。thm-pgl-psl により $[\operatorname{diag}(1,-1)]$ は $\mathrm{PSL}_2(\mathbb{R})$ の像に入らない。

補足

文献

$\mathrm{PGL}_n(F)$ を $\mathrm{GL}_n(F)$ のスカラー行列による剰余群として定める定義は Lan02 Chapter XIII §8(p. 536)にある。$\mathrm{PSL}_n$ の単純性は同章の Theorem 8.4(p. 539)・Theorem 9.3(p. 542)による。$\mathbb{P}^n_k$ の自己同型群は Har77 Example II.7.1.1(p. 151)、$\operatorname{Aut}(k(t)/k)$ は DF04 §14.9(p. 647)による。この記事のそのほかの命題・定理は、引用した記事の定理を除いて記事の中で証明した。

関連項目

参考文献

[1]
Serge Lang, Algebra, Revised 3rd ed.(Graduate Texts in Mathematics 211), Springer, 2002, Chapter XIII §8(p. 536:PGL_n(F) の定義)、Theorem 8.4(p. 539:SL_2(F)/±1 の単純性)、Theorem 9.3(p. 542:n ≥ 3 での PSL_n(F) の単純性)
[2]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, Chapter II, Example 7.1.1(p. 151:射影空間の自己同型群)

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