Alhazenの問題

同義語:Alhazenのビリヤード問題アルハゼンの問題Alhazen's billiard problem

概要

Alhazenの問題(Alhazen's billiard problem)とは、円 $C$ の上にない 2 点 $A,B$ に対し、円周で反射して $A$ から $B$ へ進む光の反射点 $P$(法線 $OP$ が $\angle APB$ を二等分する点)を求める問題である。単位円で $A=a$、$B=b$、$P=z$ とすると、反射点の条件は $(a-z)(b-z)\bar z^2>0$ で、$a=b=0$ でなければ反射点は $\overline{ab}z^4-\overline{(a+b)}z^3+(a+b)z-ab=0$ の根で高々 4 つである。$A\ne B$ で $P$ が線分 $AB$ の上になければ、反射点であることは $PA+PB$ の導関数が $0$ になること、$A,B$ を焦点とし $P$ を通る楕円が $C$ に $P$ で接することと同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素数平面と図形, 複素数の掛け算は回転と拡大, 剰余の定理と因数定理, 関数の増減と極値, 2次曲線の接線と光学的性質

高校での出発点:丸いビリヤード台

鏡が 1 本の直線なら、点 $A$ から出て鏡で 1 回反射して点 $B$ に届く光の道は、$B$ を鏡で折り返した点を使って 1 本に決まる(対称点と折れ線の最短)。鏡が円なら、どうなるだろうか。円の形の台の上で、球 $A$ を縁に 1 回当てて球 $B$ に当てる、と言いかえてもよい。
原点 $O$ を中心とする半径 $1$ の円を $C$ とする。円周の点 $P$ での法線($P$ で円の接線に垂直な直線)は直線 $OP$ である。光が $P$ で反射するときは、入ってくる線分 $PA$ と出ていく線分 $PB$ が法線 $OP$ と等しい角をなし、しかも $OP$ の反対側にある(2 本とも $OP$ の上に同じ向きに重なってもよい。接線を鏡とする反射の法則。2次曲線の接線と光学的性質)。

対称な 2 点の反射点を探す

$A\left(\dfrac12,0\right)$、$B\left(-\dfrac12,0\right)$ とする。
(1) $P(0,1)$ では、法線 $OP$ は $y$ 軸である。$A$ と $B$ は $y$ 軸に関して対称なので、$\overrightarrow{PA}=\left(\dfrac12,-1\right)$ と $\overrightarrow{PB}=\left(-\dfrac12,-1\right)$ は $y$ 軸に関して対称で、法線と等しい角をなす。$P$ は反射点である。$P(0,-1)$ も同じである。どちらも道の長さは $PA+PB=2\cdot\dfrac{\sqrt5}2=\sqrt5\approx2.236$ である。
(2) $P(1,0)$ では、法線 $OP$ は $x$ 軸で、$A$ も $B$ も $x$ 軸の上にある。$\overrightarrow{PA}=\left(-\dfrac12,0\right)$、$\overrightarrow{PB}=\left(-\dfrac32,0\right)$ はどちらも法線の向きで、法線とのなす角は $0^\circ$ である。$A$ から $P$ へ進んだ光は、法線に沿ってはね返り、$A$ を通って $B$ に届く。$P$ は反射点で、$PA+PB=\dfrac12+\dfrac32=2$ である。$P(-1,0)$ も同じである。
こうして反射点が 4 つ見つかる。

A(1/2,0) から出て円で 1 回反射して B(-1/2,0) に届く 4 本の道。(0,±1) では 2 本の線分が法線(点線)と等しい角をなし、(±1,0) では直径に沿ってはね返る A(1/2,0) から出て円で 1 回反射して B(-1/2,0) に届く 4 本の道。(0,±1) では 2 本の線分が法線(点線)と等しい角をなし、(±1,0) では直径に沿ってはね返る
直線の鏡なら反射点は 1 つだったが、円の鏡では ex-alh-start のように 4 つもある。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 反射点はいくつあるか。どんな方程式で求まるか。→ thm-alh-quartic、cor-alh-count
  2. 反射点では、道の長さ $PA+PB$ について何が言えるか。→ thm-alh-ellipse
  3. 反射点は、$A,B$ を焦点とする楕円とどう関係するか。→ thm-alh-ellipse
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    共役を掛けて偏角をそろえる反射点の条件「$(a-z)(b-z)\bar z^2$ が正の数」複素数による鏡映
    4 次方程式反射点は高々 4 つ代数方程式の根の個数
    円と直角双曲線の交点反射点の候補の図2 つの 2 次曲線の交点
    $PA+PB$ の導関数反射点は道の長さの停留点Fermat の原理(変分原理)

言葉の準備:円の鏡での反射点

点とその点を表す複素数を同じように扱い、$A(a)$、$B(b)$、$P(z)$ と書く(複素数平面と図形)。

円の鏡での反射点

原点 $O$ を中心とする半径 $1$ の円を $C$ とし、$C$ の上にない 2 点 $A(a)$、$B(b)$ をとる。$C$ の上の点 $P(z)$($\lvert z\rvert=1$)に対し、$P$ から $A$、$B$ に向かう長さ $1$ のベクトルを
$$ \vec u_A=\frac{\overrightarrow{PA}}{PA},\qquad \vec u_B=\frac{\overrightarrow{PB}}{PB} $$
とする。$\vec u_B$ が、$\vec u_A$ を直線 $OP$ に関して折り返したベクトルであるとき、$P$ を $A$ から $B$ への 反射点 という。

「$\vec u_B$ が $\vec u_A$ を $OP$ で折り返したもの」は、「線分 $PA$、$PB$ が法線 $OP$ と等しい角をなし、$OP$ の反対側にある(または両方が $OP$ の上で同じ向きにある)」ことを、ベクトルで言いかえたものである。ex-alh-start の 4 点はどれも反射点である。
ベクトルの折り返しは、複素数で簡単に書ける。

原点を通る直線に関する折り返し

$\lvert z\rvert=1$ とする。複素数 $v$ を、原点と $z$ を通る直線に関して折り返した複素数は $z^2\bar v$ である。

回転して実軸に移す

$\lvert z\rvert=1$ なので、$\bar z$ を掛けることは原点のまわりの回転で、直線 $Oz$ を実軸に移す($z\bar z=1$。複素数の掛け算は回転と拡大)。$v$ を直線 $Oz$ で折り返すには、(i) $\bar z$ を掛けて直線を実軸に移し、(ii) 実軸で折り返し(共役をとる)、(iii) $z$ を掛けてもとにもどせばよい。$\bar z v\mapsto\overline{\bar zv}=z\bar v\mapsto z\cdot z\bar v=z^2\bar v$ である。$\square$

反射点の複素数による条件

def-alh-reflect の設定で、
$$ w(z)=(a-z)(b-z)\bar z^2 $$
とおく。$P(z)$ が反射点であることと、$w(z)$ が正の実数であることは同値である。

折り返しの式に長さの比を掛ける

$\vec u_A$、$\vec u_B$ を表す複素数は $\dfrac{a-z}{\lvert a-z\rvert}$、$\dfrac{b-z}{\lvert b-z\rvert}$ である。lem-alh-mirror により、$P$ が反射点であることは
$$ \frac{b-z}{\lvert b-z\rvert}=z^2\cdot\frac{\overline{a-z}}{\lvert a-z\rvert} $$
と同じである。
段 1(反射点なら正の実数)。上の式から $b-z=t\,z^2\,\overline{a-z}$、$t=\dfrac{\lvert b-z\rvert}{\lvert a-z\rvert}>0$ である。これを $w(z)$ に代入すると、$z^2\bar z^2=\lvert z\rvert^4=1$ なので
$$ w(z)=(a-z)\cdot t\,z^2\,\overline{a-z}\cdot\bar z^2=t\lvert a-z\rvert^2>0 $$
である。
段 2(正の実数なら反射点)。$w=w(z)>0$ とする。$w=(a-z)(b-z)\bar z^2$ の両辺に $z^2\,\overline{a-z}$ を掛けると、$z^2\bar z^2=1$ だから $w\,z^2\,\overline{a-z}=\lvert a-z\rvert^2(b-z)$ で、
$$ b-z=\frac{w}{\lvert a-z\rvert^2}\,z^2\,\overline{a-z} $$
である。両辺の絶対値をとると $\lvert b-z\rvert=\dfrac{w}{\lvert a-z\rvert}$ なので、両辺を $\lvert b-z\rvert$ で割ると最初の式になる。$\square$

最初の例で条件を確かめる

ex-alh-start の $a=\dfrac12$、$b=-\dfrac12$ で計算する。
(1) $z=i$ では $\bar z^2=(-i)^2=-1$ で、$(a-z)(b-z)=\left(\dfrac12-i\right)\left(-\dfrac12-i\right)=-\dfrac14-1=-\dfrac54$ だから、$w(i)=\dfrac54>0$ である。
(2) $z=1$ では $w(1)=\left(-\dfrac12\right)\left(-\dfrac32\right)=\dfrac34>0$ である。
(3) $z=\dfrac{1+i}{\sqrt2}$ では $\bar z^2=-i$ で、$(a-z)(b-z)=z^2-(a+b)z+ab=i-\dfrac14$ だから、$w=\left(i-\dfrac14\right)(-i)=1+\dfrac i4$ で、実数でない。この点は反射点ではない。

主定理 1:反射点は 4 次方程式の根

lem-alh-real の条件の半分「$w(z)$ が実数」だけを取り出すと、$z$ の方程式になる。

反射点の方程式

def-alh-reflect の設定で、$a$ と $b$ の少なくとも一方は $0$ でないとする。
$$ Q(z)=\overline{ab}\,z^4-\overline{(a+b)}\,z^3+(a+b)\,z-ab $$
とおく。
(1) $P(z)$ が反射点なら $Q(z)=0$ である。$Q$ は $0$ でない 4 次以下の多項式なので、反射点は高々 4 つである。
(2) $ab=p+qi$、$a+b=r+si$($p,q,r,s$ は実数)とし、$z=x+yi$ と書く。反射点 $(x,y)$ は、円 $x^2+y^2=1$ と曲線
$$ H:\ q\left(x^2-y^2\right)-2pxy-sx+ry=0 $$
の共有点である。

$w$ と共役が等しいことを式にする

段 1($w(z)$ を展開する)。$\lvert z\rvert=1$ なので $z\bar z=1$ である。
$$ w(z)=(a-z)(b-z)\bar z^2=\left(z^2-(a+b)z+ab\right)\bar z^2=1-(a+b)\bar z+ab\,\bar z^2 $$
である($z^2\bar z^2=1$、$z\bar z^2=\bar z$ を使った)。
段 2((1) の方程式)。$P$ が反射点なら、lem-alh-real により $w(z)$ は実数なので、$w(z)=\overline{w(z)}$ である。$\overline{w(z)}=1-\overline{(a+b)}\,z+\overline{ab}\,z^2$ だから
$$ -(a+b)\bar z+ab\,\bar z^2=-\overline{(a+b)}\,z+\overline{ab}\,z^2 $$
である。$\bar z=\dfrac1z$ を代入して両辺に $z^2$ を掛けると $-(a+b)z+ab=-\overline{(a+b)}\,z^3+\overline{ab}\,z^4$ となり、移項すると $Q(z)=0$ である。
段 3($Q$ は $0$ でない)。$Q$ が $0$ の多項式なら、係数を比べて $ab=0$ かつ $a+b=0$ である。$ab=0$ なら $a=0$ か $b=0$ で、$a+b=0$ と合わせて $a=b=0$ となり、仮定に反する。また、$z$、$z^3$、$z^4$ の係数がすべて $0$ なら $ab=0$、$a+b=0$ で $Q$ は $0$ の多項式になるので、$Q$ は定数ではない。よって $Q$ の次数は $1$ 以上 $4$ 以下である。次数 $n$ の多項式の根は、複素数の範囲でも高々 $n$ 個である(根 $\alpha$ ごとに因数定理で $z-\alpha$ がくくり出せる。剰余の定理と因数定理)。よって反射点は高々 4 つである。
段 4((2) の曲線)。$w(z)$ が実数であることは、段 1 の式の虚部 $\operatorname{Im}\left(ab\,\bar z^2-(a+b)\bar z\right)$ が $0$ であることと同じである。$\bar z=x-yi$、$\bar z^2=x^2-y^2-2xyi$ だから
$$ ab\,\bar z^2=(p+qi)\left(x^2-y^2-2xyi\right)\ \text{の虚部は}\ q\left(x^2-y^2\right)-2pxy $$
$$ (a+b)\bar z=(r+si)(x-yi)\ \text{の虚部は}\ sx-ry $$
である。差をとると $H$ の式になる。$\square$

$H$ の式の $x^2$ の係数は $q$、$y^2$ の係数は $-q$ で、和が $0$ である。このような 2 次曲線は、漸近線が直交する双曲線(直角双曲線)か、直交する 2 直線か、1 本の直線になる。

$H$ の形を分類する議論を開く

$(p,q)\ne(0,0)$ とし、$\lambda=\sqrt{p^2+q^2}=\lvert ab\rvert>0$ とおく。prf-alh-quartic の段 4 により、$H$ の 2 次の部分 $q(x^2-y^2)-2pxy$ は $\operatorname{Im}\left(ab\,\bar z^2\right)$ に等しい。$ab\,e^{-2i\gamma}=\lambda i$ となる角 $\gamma$ を選び、$z=(X+Yi)e^{i\gamma}$ で回転した座標 $(X,Y)$ をとると、$\bar z^2=(X-Yi)^2e^{-2i\gamma}$ だから

$$\operatorname{Im}\left(ab\,\bar z^2\right)=\operatorname{Im}\left(\lambda i\,(X-Yi)^2\right)=\lambda\left(X^2-Y^2\right)$$

となる。1 次の部分は回転しても 1 次の式なので、$X$、$Y$ についてそれぞれ平方完成すると $\lambda\left((X-h)^2-(Y-k)^2\right)=c$ の形になる。$c\ne0$ なら漸近線 $Y-k=\pm(X-h)$ が直交する双曲線、$c=0$ なら直交する 2 直線 $Y-k=\pm(X-h)$ である。$(p,q)=(0,0)$、つまり $ab=0$ のときは、$H$ は 1 次式 $-sx+ry=0$ で、原点を通る直線($a+b\ne0$ のとき)である。2次曲線と2次形式 の、2 次形式を回転で対角化する方法と同じである。

対称な 2 点では 4 つとも反射点

ex-alh-start の $a=\dfrac12$、$b=-\dfrac12$ では、$ab=-\dfrac14$、$a+b=0$ で
$$ Q(z)=-\frac14z^4+\frac14=-\frac14\left(z^4-1\right)=-\frac14(z-1)(z+1)(z-i)(z+i) $$
である。根 $z=\pm1$、$\pm i$ はどれも円の上にあり、ex-alh-real と同じ計算で $w(\pm1)=\dfrac34$、$w(\pm i)=\dfrac54$ と正なので、4 つとも反射点である。$H$ は $p=-\dfrac14$、$q=r=s=0$ から $\dfrac12xy=0$、つまり直交する 2 直線 $x=0$、$y=0$ で、円とちょうどこの 4 点で交わる。

一方が中心にある場合

$a=0$、$b=\dfrac{1+i}2$ とする。$ab=0$ なので
$$ Q(z)=-\overline{b}\,z^3+b\,z=z\left(b-\overline{b}\,z^2\right) $$
である。$z=0$ は円の上にないので、円の上の根は $z^2=\dfrac b{\bar b}=\dfrac{1+i}{1-i}=i$ の 2 つ、$z=\pm\dfrac{1+i}{\sqrt2}$ である。どちらでも $w(z)=-z(b-z)\bar z^2=1-b\bar z$ で、$b\bar z=\pm\dfrac1{\sqrt2}$ だから $w=1\mp\dfrac1{\sqrt2}>0$ で、2 つとも反射点である。反射点は直線 $OB$ の上にあり、光は法線に沿って進んではね返る。$H$ は $p=q=0$、$r=s=\dfrac12$ から $-\dfrac12x+\dfrac12y=0$、つまり直線 $y=x$ である。

位置が一般の 2 点では反射点は 2 つ

$a=0.5+0.2i$、$b=-0.3+0.4i$ とする。$ab=-0.23+0.14i$、$a+b=0.2+0.6i$ なので、$H$ の式は $0.14\left(x^2-y^2\right)+0.46xy-0.6x+0.2y=0$、$50$ 倍して
$$ 7x^2+23xy-7y^2-30x+10y=0 $$
である。$Q(z)=0$ の 4 つの根を数値で求めると、円の上にあるのは偏角 $\approx59.09^\circ$ と $\approx-107.16^\circ$ の 2 つで、残りの 2 つは絶対値が $\approx0.534$ と $\approx1.873$ で円の上にない。円の上の 2 つでは $w\approx0.614$、$w\approx1.901$ でどちらも正なので、反射点はちょうど 2 つである(図 2)。

円の内部の 2 点 A、B に対し、緑の破線の直角双曲線と円の交点 2 つが反射点で、そこでは線分 PA、PB が点線の法線と等しい角をなす 円の内部の 2 点 A、B に対し、緑の破線の直角双曲線と円の交点 2 つが反射点で、そこでは線分 PA、PB が点線の法線と等しい角をなす

主定理 2:反射点と道の長さ、楕円

ex-alh-start では、反射点での道の長さは $2$ と $\sqrt5$ で、円周のほかの点より短いか長かった。反射点は、道の長さ $PA+PB$ を円周の上で動かしたときの「傾きが $0$ の点」である。
円周の点を $P(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ と書き、
$$ f(\theta)=PA+PB=\lvert a-e^{i\theta}\rvert+\lvert b-e^{i\theta}\rvert $$
とおく($e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta$。複素数の掛け算は回転と拡大)。$A$、$B$ は円の上にないので、$f$ はすべての $\theta$ で微分できる。

反射点と道の長さ・楕円

def-alh-reflect の設定で、$A\ne B$ とし、円周の点 $P=P(\theta)$ は線分 $AB$ の上にないとする。次の 3 つは同値である。
(1) $P$ は反射点である。
(2) $f'(\theta)=0$ である。
(3) $A$、$B$ を焦点とし $P$ を通る楕円が、円 $C$ に $P$ で接する($P$ での接線が一致する)。

距離の導関数は単位ベクトルの接線方向の成分

記号:$\vec n=(\cos\theta,\sin\theta)$ は $P$ での外向きの単位法線ベクトル、$\vec\tau=(-\sin\theta,\cos\theta)$ は単位接線ベクトルである。$\vec u_A$、$\vec u_B$ は def-alh-reflect のベクトルである。
段 1(距離の微分)。$A=(a_1,a_2)$ とすると $PA^2=(\cos\theta-a_1)^2+(\sin\theta-a_2)^2$ である。両辺を $\theta$ で微分すると(連鎖律(高校数学))
$$ 2\,PA\cdot\frac{d}{d\theta}PA=2(\cos\theta-a_1)(-\sin\theta)+2(\sin\theta-a_2)\cos\theta=2\,\overrightarrow{AP}\cdot\vec\tau $$
で、$PA>0$ だから $\dfrac{d}{d\theta}PA=\dfrac{\overrightarrow{AP}}{PA}\cdot\vec\tau=-\vec u_A\cdot\vec\tau$ である。$B$ についても同じなので
$$ f'(\theta)=-\left(\vec u_A+\vec u_B\right)\cdot\vec\tau $$
である。つまり $f'(\theta)=0$ は「$\vec u_A+\vec u_B$ の接線方向の成分が $0$」、言いかえると「$\vec u_A+\vec u_B$ は $\vec n$ の実数倍」ということである。
段 2(折り返しの式)。直線 $OP$(向き $\vec n$)に関する折り返しは、$\vec n$ 方向の成分を保ち、$\vec\tau$ 方向の成分の符号を変える。したがって $\vec u_A$ を $OP$ で折り返したベクトルは $2(\vec u_A\cdot\vec n)\vec n-\vec u_A$ である。
段 3((1) ⇒ (2))。$\vec u_B=2(\vec u_A\cdot\vec n)\vec n-\vec u_A$ なら、$\vec u_A+\vec u_B=2(\vec u_A\cdot\vec n)\vec n$ は $\vec n$ の実数倍なので、段 1 から $f'(\theta)=0$ である。
段 4((2) ⇒ (1))。$f'(\theta)=0$ なら、段 1 から $\vec u_A+\vec u_B=\lambda\vec n$ となる実数 $\lambda$ がある。もし $\lambda=0$ なら $\vec u_B=-\vec u_A$ で、$A$ と $B$ は $P$ から見て反対の向きにあるので、$P$ は線分 $AB$ の上にある。これは仮定に反するので $\lambda\ne0$ である。$\vec u_B=\lambda\vec n-\vec u_A$ の長さが $1$ なので
$$ 1=\lvert\lambda\vec n-\vec u_A\rvert^2=\lambda^2-2\lambda(\vec u_A\cdot\vec n)+1 $$
で、$\lambda(\lambda-2\vec u_A\cdot\vec n)=0$、$\lambda\ne0$ から $\lambda=2(\vec u_A\cdot\vec n)$ である。よって $\vec u_B=2(\vec u_A\cdot\vec n)\vec n-\vec u_A$ で、段 2 により $P$ は反射点である。
段 5((1) ⇔ (3))。$P$ は線分 $AB$ の上にないので $PA+PB>AB$ で、$E=\{X\mid XA+XB=PA+PB\}$ は $A$、$B$ を焦点とし $P$ を通る楕円である。2次曲線の接線と光学的性質 の定理「楕円の反射の性質」により、$A$ から出て $P$ に向かう光は、$E$ の $P$ での接線 $m$ を鏡として反射し $B$ に向かう。$m$ に関する折り返しの符号を変えたものは $m$ に垂直な直線 $m'$ に関する折り返しなので、これは「$\vec u_B$ は $\vec u_A$ を直線 $m'$($E$ の $P$ での法線)で折り返したもの」ということである。$\vec u_A+\vec u_B\ne\vec 0$ なので、この折り返しの軸は $\vec u_A+\vec u_B$ の向きの直線に限られる(折り返しで動かないベクトル $\vec u_A+\vec u_B$ が軸の上にある)。したがって、(1)「軸が $OP$」は「$E$ の $P$ での法線が $OP$」と同値であり、これは「$E$ の $P$ での接線が $OP$ に垂直」、つまり「$E$ と $C$ の $P$ での接線が一致する」ことと同値である。$\square$

円の内部の 2 点なら、反射点がいつもあることも分かる。

円の内部の 2 点の反射点の個数

$A$、$B$ が円 $C$ の内部にあり、少なくとも一方は中心 $O$ と異なるとする。このとき反射点は 2 つ以上 4 つ以下あり、$f(\theta)$ が最大になる点と最小になる点はどちらも反射点である。

最大点と最小点で導関数が 0

段 1(最大と最小)。$f$ は連続なので、閉区間 $[0,2\pi]$ で最大値と最小値をとる(関数の増減と極値 の定理「最大・最小をとる点の候補」)。$f$ は周期 $2\pi$ なので、これは実数全体での最大値・最小値である。最大値をとる点 $\theta_1$ は、区間 $[\theta_1-\pi,\theta_1+\pi]$ の内部の点で、そこでも最大なので、関数の増減と極値 の定理「極値の点での微分係数(Fermat の定理)」により $f'(\theta_1)=0$ である。最小値をとる点 $\theta_2$ でも同じく $f'(\theta_2)=0$ である。
段 2(反射点になる)。$A=B$ のときは、$\vec u_A=\vec u_B$ なので、反射点は $\vec u_A$ を $OP$ で折り返しても変わらない点、つまり $\vec u_A$ が直線 $OP$ に平行で、$P$ が直線 $OA$ の上にある点である($A\ne O$)。この場合は円と直線 $OA$ の 2 つの交点がちょうど反射点で、個数は 2 である。$f=2PA$ は、この 2 点のうち $A$ に近い方で最小、遠い方で最大になる($\lvert OP-OA\rvert\le PA\le OP+OA$ で、等号はそれぞれの点で成り立つ)。以下 $A\ne B$ とする。円の内部は凸なので、線分 $AB$ は円の内部にあり、円周の点 $P$ は線分 $AB$ の上にない。thm-alh-ellipse により、$\theta_1$、$\theta_2$ の点は反射点である。
段 3(2 つは異なる)。もし最大値と最小値が等しければ $f$ は定数で、すべての $\theta$ で $f'(\theta)=0$ となり、thm-alh-ellipse により円周のすべての点が反射点になる。これは thm-alh-quartic(反射点は高々 4 つ)に反する。よって最大点と最小点は異なる点で、反射点は 2 つ以上ある。4 つ以下であることは thm-alh-quartic による。$\square$

道の長さの最大と最小
  1. ex-alh-start では、$f(\pm1)=2$、$f(\pm i)=\sqrt5$ である。反射点が 4 つで、$z=\pm1$ が最小点、$z=\pm i$ が最大点である。
  2. ex-alh-general の $a=0.5+0.2i$、$b=-0.3+0.4i$ では、$f$ の最小値は $\approx1.5918$(偏角 $\approx59.09^\circ$)、最大値は $\approx2.7581$(偏角 $\approx-107.16^\circ$)で、この 2 点が ex-alh-general の 2 つの反射点と一致する(図 3、図 4)。最小点では楕円が円の内側から、最大点では楕円が円の外側から、円に接している。
A、B を焦点とする 2 つの楕円が円に接する。青は PA+PB が最小の反射点で内側から、赤は最大の反射点で外側から接する A、B を焦点とする 2 つの楕円が円に接する。青は PA+PB が最小の反射点で内側から、赤は最大の反射点で外側から接する
円周の点の偏角 θ に対する道の長さ f(θ)=PA+PB のグラフ。最大点と最小点が 2 つの反射点である 円周の点の偏角 θ に対する道の長さ f(θ)=PA+PB のグラフ。最大点と最小点が 2 つの反射点である

直線の鏡と円の鏡を比べる。

直線の鏡円の鏡(円の内部の 2 点)
反射点の数1 つ2 つ以上 4 つ以下
求め方$B$ を鏡で折り返した点と $A$ を結ぶ4 次方程式 $Q(z)=0$ の根のうち円の上で $w>0$ のもの
道の長さ反射点で最小最大点・最小点はどちらも反射点
楕円で見ると焦点 $A,B$ の楕円が鏡に接する点焦点 $A,B$ の楕円が円に接する点
定規とコンパスでの作図できる一般にはできない(rem-alh-construct)

例と反例

thm-alh-quartic、thm-alh-ellipse、lem-alh-real の条件を外すと、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$w(z)$ が正(実数であるだけでない)円の外の $a=2+0.5i$、$b=1.5-1.2i$$Q(z)=0$ の円の上の根は反射点である
$P$ が線分 $AB$ の上にない$A(2,0)$、$B(-2,0)$、$P(1,0)$$f'(\theta)=0$ の点は反射点である
$a$、$b$ の少なくとも一方が $0$ でない$A=B=O$反射点は高々 4 つである
反例:実数だが負になる点(外角の二等分線)

円の外の 2 点 $a=2+0.5i$、$b=1.5-1.2i$ をとる。$ab=3.6-1.65i$、$a+b=3.5-0.7i$ なので、$H$ の式は $-1.65\left(x^2-y^2\right)-7.2xy+0.7x+3.5y=0$ である。$Q(z)=0$ の 4 つの根を数値で求めると、4 つとも円の上にあり、偏角と $w(z)$ の値は次のとおりである。

偏角$w(z)$反射点か
$\approx167.999^\circ$$\approx8.529$反射点
$\approx-13.134^\circ$$\approx1.391$反射点
$\approx51.159^\circ$$\approx-3.030$反射点でない
$\approx-75.272^\circ$$\approx-2.890$反射点でない

$w(z)<0$ の 2 点では、prf-alh-real と同じ計算で $\vec u_B$ は $\vec u_A$ を直線 $OP$ で折り返したものの逆向き、つまり接線で折り返したものになる。線分 $PA$、$PB$ は接線と等しい角をなし、法線 $OP$ は $\angle APB$ の外角を二等分する。thm-alh-quartic の $Q(z)=0$ と $H$ は $w(z)$ が実数であることしか使っていないので、この 2 点も拾ってしまう。反射点を選ぶには $w(z)$ の符号を確かめる。なお、円の外側を鏡として光が実際に反射するのは、線分 $PA$、$PB$ が円の外にある偏角 $\approx-13.13^\circ$ の点だけである(偏角 $\approx168.00^\circ$ の点では線分 $PA$ が円の内部を通る)。

円の外の 2 点 A、B では、円と緑の破線の直角双曲線の交点が 4 つある。赤の丸の 2 点は反射点、灰色の四角の 2 点では法線が角 APB の外角を二等分し、反射点ではない 円の外の 2 点 A、B では、円と緑の破線の直角双曲線の交点が 4 つある。赤の丸の 2 点は反射点、灰色の四角の 2 点では法線が角 APB の外角を二等分し、反射点ではない

反例:線分 $AB$ の上の点

$A(2,0)$、$B(-2,0)$ とする(どちらも円の外)。$P(1,0)$ では $f=PA+PB=1+3=4=AB$ で、三角形の 2 辺の和の性質から、どの $P$ でも $PA+PB\ge AB=4$ なので、$f$ は $P(1,0)$($\theta=0$)で最小になり、$f'(0)=0$ である。しかし $\vec u_A=(1,0)$、$\vec u_B=(-1,0)$ で、$\vec u_A$ を直線 $OP$($x$ 軸)で折り返したものは $(1,0)$ のままなので、$P$ は反射点ではない。光は $P$ で向きを変えずに通り抜けている。$w(1)=(2-1)(-2-1)=-3<0$ とも合う。thm-alh-ellipse で $P$ が線分 $AB$ の上にないと仮定したのは、prf-alh-ellipse の段 4 で $\lambda=0$ の場合を除くためである。

反例:2 点とも中心にある

$A=B=O$ とする。どの $P$ でも $\vec u_A=\vec u_B=-\vec n$ は直線 $OP$ の上にあり、$OP$ で折り返しても変わらないので、円周のすべての点が反射点である。反射点は無数にあり、「高々 4 つ」は成り立たない。$Q(z)$ の係数はすべて $0$ で、prf-alh-quartic の段 3 が使えない。$f(\theta)=2$ は定数である。

大学数学で見る:作図できないことと停留点

定規とコンパスでは作図できない

MathWorld の頁 Wei26 は、この問題を「与えられた円の中に、等しい 2 辺がそれぞれ円の内部の与えられた 2 点を通る二等辺三角形を求める問題」、言いかえて「2 点から円周の 1 点に引いた 2 本の直線が、その点での法線と等しい角をなすようにする問題」と述べ、2 点がともに円の内部か、ともに外部にあるとき、2 点を焦点とし円に接する楕円を求める問題と同値であること(thm-alh-ellipse の (3) も参照)、解に 3 乗根が要るので定規とコンパスでは作図できないことを述べている。作図できないことは、この記事では証明しない。3 乗根が要る問題が定規とコンパスで解けない理由は、立方体の倍積問題と同じ考え方で、3大作図問題の不可能性 と 作図可能数 で扱う。同じ頁は、問題の名が、光学の著作でこの問題を論じた Alhazen にちなむことも述べている。

thm-alh-ellipse は、反射の法則を満たす点が、道の長さ $f$ の最小点とは限らず、導関数が $0$ になる点(停留点)であることを示している。ex-alh-maxmin では最大点でも反射が起こった。直線の鏡では反射点が道の長さの最小点だった(対称点と折れ線の最短)が、円の鏡では最大点も反射点になる。光の道を「長さや時間の停留点」としてとらえる見方は、大学の力学・光学で使われる変分原理につながる(ここでは紹介だけにとどめる)。

演習

光が同じ点にもどる反射点

$a=b=\dfrac12$($A=B=\left(\dfrac12,0\right)$)のとき、thm-alh-quartic の $Q(z)$ を因数分解して、反射点を求めよ。

解答を開く

$ab=\dfrac14$、$a+b=1$ なので $Q(z)=\dfrac14z^4-z^3+z-\dfrac14$ である。$Q(1)=\dfrac14-1+1-\dfrac14=0$、$Q(-1)=\dfrac14+1-1-\dfrac14=0$ なので、因数定理により $z^2-1$ で割り切れて

$$Q(z)=\frac14\left(z^2-1\right)\left(z^2-4z+1\right)$$

である(展開すると $\dfrac14\left(z^4-4z^3+z^2-z^2+4z-1\right)$ で一致する)。$z^2-4z+1=0$ の根は $z=2\pm\sqrt3$ で、絶対値は $1$ でないので円の上にない。円の上の根は $z=\pm1$ で、$w(1)=\left(\dfrac12-1\right)^2=\dfrac14>0$、$w(-1)=\left(\dfrac12+1\right)^2=\dfrac94>0$ だから、反射点は $(1,0)$ と $(-1,0)$ の 2 つである。どちらも直線 $OA$ の上にあり、光は法線に沿って進んで $A$ にもどる(prf-alh-count の段 2 の場合)。

さらに先へ

  • 楕円の形の台での反射(楕円のビリヤード)は、2次曲線の接線と光学的性質 の注意「楕円のビリヤード」で紹介されている。
  • 直線の鏡で反射する道(対称点と折れ線の最短)、速さの違う 2 つの媒質を通る道(Snellの法則)、線分を最も大きく見込む位置(Regiomontanusの最大角問題)は、どれも「ある量を最大・最小にする点で、角について何が成り立つか」という同じ形の問題である。
  • 方程式の根を式で表せることと、その根を定規とコンパスで作図できることは別の問題である。どんな数が作図できるかは 作図可能数 で扱う。

関連項目

参考文献

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