Bernoulli数

同義語:ベルヌーイ数Bernoulli numberBernoulli numbersvon Staudt–Clausenの定理Clausen–von Staudtの定理von Staudt–Clausen theorem

概要

Bernoulli数(Bernoulli numbers)とは、$t/(e^t-1)=\sum_nB_nt^n/n!$ の係数として定まる有理数の列 $B_0=1$、$B_1=-\frac12$、$B_2=\frac16$、$\dots$ のことである。自然数の冪の和の公式の係数として現れ、$3$ 以上の奇数番目は $0$ である。余接関数の部分分数展開から、正の偶数でのゼータ関数の値が $\zeta(2k)=(-1)^{k+1}(2\pi)^{2k}B_{2k}/(2(2k)!)$ と求まり、符号の交代と絶対値の増大が従う。von Staudt–Clausen の定理により、偶数番目の $B_n$ に $(p-1)\mid n$ となる素数 $p$ の逆数をすべて足すと整数になり、分母は平方因子をもたない。分子の素因数は円分体の類数と結びつき、正則素数の定義に使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 冪級数, 数列の和と差分, Riemannゼータ関数, Fermatの小定理

Bernoulli数(Bernoulli numbers)とは、
$$ \frac{t}{e^t-1}=\sum_{n=0}^{\infty}B_n\frac{t^n}{n!} $$
の係数として定まる有理数の列 $B_0=1$、$B_1=-\frac12$、$B_2=\frac16$、$B_3=0$、$B_4=-\frac1{30}$、$\dots$ のことである。自然数の冪の和 $1^m+2^m+\dots+n^m$ を $n$ の多項式で表す公式の係数として現れる(数列の和と差分 の定理「Faulhaber の公式」)。
Bernoulli 数は数論と解析の境目に繰り返し現れる。$\zeta(2k)=\sum_{n\ge1}n^{-2k}$ は $\pi^{2k}$ の有理数倍で、その有理数は $B_{2k}$ で書ける(Riemannゼータ関数 の例「正の偶数での値」、HW60 §17.2 の脚注、p. 245)。負の整数での Riemannゼータ関数 の値も $\zeta(1-n)=-B_n/n$ と Bernoulli 数で書ける。分母は von Staudt–Clausen の定理で完全に決まり、分子を割る素数は円分体の類数と結びつく(Kummer の正則素数)。
この記事では、(1) 母関数による定義が漸化式による定義と一致し、奇数番目が $B_1$ を除いて $0$ であること、(2) 余接関数の部分分数展開を示し、そこから Euler の公式 $\zeta(2k)=(-1)^{k+1}\frac{(2\pi)^{2k}B_{2k}}{2\,(2k)!}$ を導くこと、(3) von Staudt–Clausen の定理 $B_{2k}+\sum_{(p-1)\mid 2k}\frac1p\in\mathbb Z$ を、全射の個数を使って証明すること、を行う。

定義と基本性質

$(e^t-1)/t=\sum_{n\ge0}\frac{t^n}{(n+1)!}$ は定数項が $1$ の形式的冪級数なので、有理数係数の 形式的冪級数 の環で逆元をもつ(形式的冪級数 の命題「定数項による単元判定」)。

Bernoulli数

有理数 $B_n$($n\ge0$)を、形式的冪級数の等式
$$ \frac{t}{e^t-1}:=\Bigl(\sum_{n\ge0}\frac{t^n}{(n+1)!}\Bigr)^{-1}=\sum_{n\ge0}B_n\frac{t^n}{n!} $$
で定め、Bernoulli 数 という。

$B_1$ を $+\frac12$ とする流儀もある($\frac{te^t}{e^t-1}=\frac t{e^t-1}+t$ の係数を使う場合)。また HW60 は $B_k$ で正の数 $(-1)^{k-1}B_{2k}$ を表す(§7.9、p. 90)。この記事の $B_n$ は Was82(p. 30)と同じである。

漸化式・奇数番目・大きさ
  1. $m\ge1$ について $\displaystyle\sum_{j=0}^{m}\binom{m+1}jB_j=0$ である。したがって $B_n$ は 数列の和と差分 の定義「Bernoulli 数」の漸化式で定まる数と一致する。
  2. $3$ 以上の奇数 $n$ について $B_n=0$ である。
  3. すべての $n$ について $\lvert B_n\rvert\le n!$ である。したがって実数 $t$ について冪級数 $\sum_nB_nt^n/n!$ は $\lvert t\rvert< 1$ で絶対収束し、$0<\lvert t\rvert<1$ でその和は $t/(e^t-1)$ に等しい。

1.定義により $\bigl(\sum_{i\ge0}\frac{t^i}{(i+1)!}\bigr)\bigl(\sum_jB_j\frac{t^j}{j!}\bigr)=1$ である。$m\ge1$ について両辺の $t^m$ の係数を比べると $\sum_{j=0}^m\frac{B_j}{j!\,(m+1-j)!}=0$ で、$(m+1)!$ を掛けると主張の式になる。$m$ 番目の式は $(m+1)B_m$ を含むので、$B_0=1$ から順に $B_m$ がただ 1 通りに決まる。これは 数列の和と差分 の定義と同じ漸化式である。
2.数列の和と差分 の命題「奇数番目の Bernoulli 数」で、この漸化式から証明されている。母関数で見ると、$\frac t{e^t-1}+\frac t2=\frac t2\cdot\frac{e^{t/2}+e^{-t/2}}{e^{t/2}-e^{-t/2}}$ が $t\mapsto-t$ で変わらない偶関数であることにあたる。
3.1 の式を $B_m$ について解くと
$$ \frac{B_m}{m!}=-\sum_{j=0}^{m-1}\frac{B_j}{j!}\cdot\frac1{(m+1-j)!} $$
である。$j< m$ で $\lvert B_j\rvert\le j!$ と仮定すると $\lvert B_m\rvert/m!\le\sum_{i=2}^{m+1}\frac1{i!}< e-2< 1$ なので、帰納法により $\lvert B_n\rvert\le n!$ である。よって $\lvert t\rvert< 1$ で $\sum_n\lvert B_nt^n/n!\rvert\le\sum_n\lvert t\rvert^n$ は収束する。$\sum_i t^i/(i+1)!$ はすべての $t$ で絶対収束し、$t\neq0$ ではその和は $(e^t-1)/t$ である。冪級数 の命題「冪級数の和・定数倍・積」により、$\lvert t\rvert< 1$ で 2 つの和の積は係数の積の冪級数、すなわち定数 $1$ に等しい。よって $0<\lvert t\rvert<1$ で $\sum_nB_nt^n/n!=t/(e^t-1)$ である。$\square$

偶数番目の値を並べる($B_1=-\frac12$、それ以外の奇数番目は $0$)。

$n$$0$$2$$4$$6$$8$$10$$12$$14$$16$$18$$20$
$B_n$$1$$\frac16$$-\frac1{30}$$\frac1{42}$$-\frac1{30}$$\frac5{66}$$-\frac{691}{2730}$$\frac76$$-\frac{3617}{510}$$\frac{43867}{798}$$-\frac{174611}{330}$

符号は $B_2,B_4,\dots$ で交互に変わり、$B_{12}$ あたりから絶対値が大きくなっていく。符号の交代と増大は、後の cor-bnl-sign-growth で $\zeta(2k)$ の公式から証明する。分母 $6,30,42,30,66,2730,\dots$ はどれも平方因子をもたず $6$ の倍数である。これは thm-bnl-von-staudt-clausen の帰結である。

冪の和

数列の和と差分 の定理「Faulhaber の公式」により $\sum_{k=0}^{n-1}k^m=\frac1{m+1}\sum_{j=0}^m\binom{m+1}jB_jn^{m+1-j}$ である。$m=2$ では $\frac13\bigl(n^3-\frac32n^2+\frac12n\bigr)=\frac{n(n-1)(2n-1)}6$、$m=3$ では $\frac14\bigl(n^4-2n^3+n^2\bigr)=\bigl(\frac{n(n-1)}2\bigr)^2$ となる。

ゼータ関数の偶数での値

余接関数の部分分数展開

余接関数の部分分数展開

整数でない実数 $x$ について、級数 $\sum_{n\ge1}\frac{2x}{x^2-n^2}$ は収束し
$$ \pi\cot\pi x=\frac1x+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{2x}{x^2-n^2} $$
が成り立つ。

右辺を $g(x)$、左辺を $f(x)$ とおき、$g_N(x):=\sum_{n=-N}^{N}\frac1{x-n}=\frac1x+\sum_{n=1}^N\frac{2x}{x^2-n^2}$ とする。
段 1(収束と連続性).$A>0$ とする。$\lvert x\rvert\le A$、$n\ge2A$ なら $n^2-x^2\ge\frac34n^2$ なので $\bigl\lvert\frac{2x}{x^2-n^2}\bigr\rvert\le\frac{8A}{3n^2}$ である。Weierstrass の M 判定法(一様収束)により、$n\ge2A$ の部分の和は $\lvert x\rvert\le A$ で一様収束して連続である。残りの有限個の項は整数でない $x$ で連続なので、$g$ は $\mathbb R\setminus\mathbb Z$ で連続である。同じ理由で $h_0(x):=\sum_{n\ge1}\frac{2x}{x^2-n^2}$ は $-1< x< 1$ で連続で、$h_0(0)=0$ である。
段 2(周期と 2 倍角の式).$x\notin\mathbb Z$ とする。$g_N(x+1)=\sum_{n=-N-1}^{N-1}\frac1{x-n}=g_N(x)+\frac1{x+N+1}-\frac1{x-N}$ なので、$N\to\infty$ として $g(x+1)=g(x)$ である。また $\frac1{x/2-n}=\frac2{x-2n}$、$\frac1{(x+1)/2-n}=\frac2{x-(2n-1)}$ なので
$$ g_N\Bigl(\frac x2\Bigr)+g_N\Bigl(\frac{x+1}2\Bigr)=2\sum_{k=-2N-1}^{2N}\frac1{x-k}=2g_{2N}(x)+\frac2{x+2N+1} $$
であり、$N\to\infty$ として $g(\frac x2)+g(\frac{x+1}2)=2g(x)$ である($x\notin\mathbb Z$ なら $\frac x2,\frac{x+1}2\notin\mathbb Z$)。$f$ も同じ 2 つの式をみたす。周期性は明らかで、$y=\frac{\pi x}2$ として $\cot y+\cot(y+\frac\pi2)=\cot y-\tan y=\frac{\cos^2y-\sin^2y}{\sin y\cos y}=2\cot2y$ だからである。
段 3(差を連続に延ばす).$h:=f-g$ とおく。$x\to0$ のとき、$\sin y=y-\frac{y^3}6+O(y^5)$、$\cos y=1-\frac{y^2}2+O(y^4)$ から
$$ f(x)-\frac1x=\frac{\pi x\cos\pi x-\sin\pi x}{x\sin\pi x}=\frac{-\frac13(\pi x)^3+O(x^5)}{\pi x^2+O(x^4)}\to0 $$
である。$h(x)=\bigl(f(x)-\frac1x\bigr)-h_0(x)$ と段 1 から、$h(x)\to0$($x\to0$)である。$h(0):=0$ とおき、周期 $1$ で延ばすと、$h$ は $\mathbb R$ 上の連続関数で、周期 $1$ をもち、段 2 から整数でない $x$ で $h(\frac x2)+h(\frac{x+1}2)=2h(x)$ をみたす。整数 $x$ でも、両辺が連続なので整数でない点からの極限でこの式が成り立つ。
段 4(最大値の原理).$h$ の $[0,1]$ での最大値を $M$ とし、$h(x_0)=M$ とする。周期性から $M$ は $\mathbb R$ での最大値でもある。$2M=2h(x_0)=h(\frac{x_0}2)+h(\frac{x_0+1}2)$ で、右辺の各項は $M$ 以下なので $h(\frac{x_0}2)=M$ である。これを繰り返すと $h(x_0/2^k)=M$ で、$k\to\infty$ として連続性から $M=h(0)=0$ である。$-h$ も同じ式をみたすので最小値も $0$ であり、$h\equiv0$、すなわち $f=g$ である。$\square$

Euler の公式

$\zeta(2k)$ の値

正の整数 $k$ について
$$ \zeta(2k)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac1{n^{2k}}=(-1)^{k+1}\frac{(2\pi)^{2k}B_{2k}}{2\,(2k)!} $$
が成り立つ。

段 1(余接から $\zeta$ へ).$0<\lvert x\rvert<1$ とする。lem-bnl-cot に $x$ を掛け、$\frac{2x^2}{x^2-n^2}=-2\frac{x^2/n^2}{1-x^2/n^2}=-2\sum_{k\ge1}\frac{x^{2k}}{n^{2k}}$(公比 $x^2/n^2<1$ の等比級数)を使うと
$$ \pi x\cot\pi x=1-2\sum_{n\ge1}\sum_{k\ge1}\frac{x^{2k}}{n^{2k}}=1-2\sum_{k\ge1}\zeta(2k)\,x^{2k} $$
である。2 重級数の項はすべて $0$ 以上なので和の順序を入れ替えてよい。
段 2(Bernoulli 数から余接へ).$E(t):=\sum_{k\ge0}B_{2k}\frac{t^{2k}}{(2k)!}$ とおく。prop-bnl-basic の 2 と 3 により、$0<\lvert t\rvert<1$ で $E(t)=\frac t{e^t-1}+\frac t2$ であり、
$$ E(t)\bigl(e^{t/2}-e^{-t/2}\bigr)=te^{-t/2}+\frac t2\bigl(e^{t/2}-e^{-t/2}\bigr)=\frac t2\bigl(e^{t/2}+e^{-t/2}\bigr) $$
となる($\frac t{e^t-1}(e^{t/2}-e^{-t/2})=te^{-t/2}$ を使った)。両辺を冪級数で書くと
$$ \Bigl(\sum_{k}\frac{B_{2k}}{(2k)!}t^{2k}\Bigr)\Bigl(\sum_j\frac{2^{-2j}}{(2j+1)!}t^{2j+1}\Bigr)=\sum_r\frac{2^{-2r}}{(2r)!}t^{2r+1} $$
で($e^{t/2}\pm e^{-t/2}$ の指数級数から)、冪級数 の命題「冪級数の和・定数倍・積」と命題「中心に近づく点列の上で0になる冪級数」により、両辺の $t^{2r+1}$ の係数は等しい:$\sum_{k+j=r}\frac{B_{2k}}{(2k)!}\cdot\frac{2^{-2j}}{(2j+1)!}=\frac{2^{-2r}}{(2r)!}$。この式に $(-1)^r=(-1)^k(-1)^j$ を掛けたものは、実数 $z$ の冪級数の等式
$$ F(z)\cdot2\sin\frac z2=z\cos\frac z2,\qquad F(z):=\sum_{k\ge0}(-1)^kB_{2k}\frac{z^{2k}}{(2k)!} $$
の係数の等式である($2\sin\frac z2=\sum_j(-1)^j\frac{2^{-2j}z^{2j+1}}{(2j+1)!}$、$z\cos\frac z2=\sum_r(-1)^r\frac{2^{-2r}z^{2r+1}}{(2r)!}$)。$F$ は $\lvert z\rvert<1$ で絶対収束するので、同じ命題によりこの等式は $\lvert z\rvert<1$ で関数として成り立ち、$0<\lvert z\rvert<1$ では $F(z)=\frac z2\cot\frac z2$ である。
段 3(係数を比べる).$z=2\pi x$($0<\lvert x\rvert<\frac1{2\pi}$)とおくと
$$ \pi x\cot\pi x=\sum_{k\ge0}(-1)^kB_{2k}\frac{(2\pi)^{2k}}{(2k)!}x^{2k} $$
である。段 1 の冪級数と、この冪級数は $0<\lvert x\rvert<\frac1{2\pi}$ で同じ値をとるので、命題「中心に近づく点列の上で0になる冪級数」により係数が等しい。$x^{2k}$($k\ge1$)の係数を比べて $-2\zeta(2k)=(-1)^kB_{2k}\frac{(2\pi)^{2k}}{(2k)!}$、すなわち主張を得る。$\square$

小さな $k$ での値

$B_2=\frac16$ から $\zeta(2)=\frac{4\pi^2}{2\cdot2}\cdot\frac16=\frac{\pi^2}6$(Basel問題)、$B_4=-\frac1{30}$ から $\zeta(4)=\frac{16\pi^4}{2\cdot24}\cdot\frac1{30}=\frac{\pi^4}{90}$ である。続けて $\zeta(6)=\frac{\pi^6}{945}$、$\zeta(8)=\frac{\pi^8}{9450}$、$\zeta(10)=\frac{\pi^{10}}{93555}$ となる。

符号と大きさ
  1. $k\ge1$ で $(-1)^{k+1}B_{2k}>0$ である。すなわち $B_2,B_4,B_6,\dots$ の符号は $+,-,+,\dots$ と交互に変わる。
  2. $k\ge1$ で $\dfrac{2\,(2k)!}{(2\pi)^{2k}}<\lvert B_{2k}\rvert\le\dfrac{\pi^2}3\cdot\dfrac{(2k)!}{(2\pi)^{2k}}$ であり、$\lvert B_{2k}\rvert\to\infty$ である。
  3. 冪級数 $\sum_nB_nt^n/n!$ の収束半径はちょうど $2\pi$ である。

thm-bnl-zeta から $\lvert B_{2k}\rvert=\frac{2\,(2k)!}{(2\pi)^{2k}}\zeta(2k)$ で、$\zeta(2k)>0$ なので 1 が従う。$1<\zeta(2k)\le\zeta(2)=\frac{\pi^2}6$ から 2 の不等式が従う。$(2k)!/(2\pi)^{2k}$ は $k\to\infty$ で $\infty$ に発散する(隣り合う比 $\frac{(2k+1)(2k+2)}{4\pi^2}$ が $1$ より大きくなり、$\infty$ に向かう)。3:$\lvert B_{2k}t^{2k}/(2k)!\rvert=2\zeta(2k)\bigl(\frac{\lvert t\rvert}{2\pi}\bigr)^{2k}$ は、$\lvert t\rvert<2\pi$ なら公比 $(\lvert t\rvert/2\pi)^2$ の等比級数で押さえられ、$\lvert t\rvert\ge2\pi$ なら $2$ 以上で $0$ に近づかない。奇数番目は $B_1$ 以外 $0$ である。$\square$

$t/(e^t-1)$ は $t=\pm2\pi i$ で分母が $0$ になるので、複素関数としてみれば収束半径 $2\pi$ はこの特異点までの距離である。正の奇数 $2k+1\ge3$ での $\zeta$ の値には、このような閉じた式は知られていない(Riemannゼータ関数 の注意「正の奇数での値」)。
負の整数での値も Bernoulli 数で書ける。$n\ge2$ について $\zeta(1-n)=-\frac{B_n}n$ であり(Was82 p. 30 と Theorem 4.2、p. 31。この記事では証明しない)、例えば $\zeta(-1)=-\frac1{12}$、$\zeta(-3)=\frac1{120}$ で、奇数 $n\ge3$ では $B_n=0$ から $\zeta$ の負の偶数での零点が現れる。$n=1$ では $\zeta(0)=-\frac12$ である。

von Staudt–Clausen の定理

全射の個数による表示

整数 $m\ge0$、$k\ge0$ について
$$ T(m,k):=\sum_{j=0}^{k}(-1)^{k-j}\binom kj j^m $$
とおく($0^0=1$ とする)。

全射の個数による表示
  1. $T(m,k)$ は、$m$ 元集合から $k$ 元集合への全射の個数に等しい。特に $T(m,k)\ge0$ で、$T(m,k)$ は $k!$ で割り切れ、$k>m$ なら $T(m,k)=0$、$m\ge1$ なら $T(m,0)=0$ である。
  2. すべての $m\ge0$ について
    $$ B_m=\sum_{k=0}^{m}(-1)^k\frac{T(m,k)}{k+1} $$
    である。

1.$k$ 元集合 $Y$ の各元 $y$ について、$y$ を値にとらない写像の集合を $A_y$ とする。$i$ 個の元を指定したとき、それらをどれも値にとらない写像は $(k-i)^m$ 個ある。Möbiusの反転公式 の定理「包除原理」により、どの $A_y$ にも属さない写像、すなわち全射の個数は $\sum_{i=0}^k(-1)^i\binom ki(k-i)^m$ で、$j=k-i$ と置き換えると $T(m,k)$ である。$Y$ の置換 $\sigma$ は全射 $s$ を全射 $\sigma\circ s$ に移し、$\sigma\neq\mathrm{id}$ なら $\sigma\circ s\neq s$($s$ は全射なので $\sigma$ が動かす元も値にとる)なので、全射の集合は $k!$ 個ずつの組に分かれる。$k>m$ なら全射はなく、$m\ge1$ なら空でない集合から空集合への写像はない。
2.実数 $t$ を $0< t<\log2$ とし、$w:=e^t-1$ とおくと $0< w< 1$ である。冪級数 の例「対数の冪級数」により $\log(1+w)=\sum_{k\ge0}(-1)^k\frac{w^{k+1}}{k+1}$ で、$\log(1+w)=t$ なので
$$ \frac t{e^t-1}=\frac{\log(1+w)}w=\sum_{k\ge0}(-1)^k\frac{w^k}{k+1} $$
である。二項定理と指数級数から $w^k=\sum_{j}\binom kj(-1)^{k-j}e^{jt}=\sum_{m\ge0}T(m,k)\frac{t^m}{m!}$ である。2 重級数 $\sum_k\sum_m(-1)^k\frac{T(m,k)}{k+1}\frac{t^m}{m!}$ は、$T(m,k)\ge0$ から絶対値の和が $\sum_k\frac{w^k}{k+1}<\infty$ なので絶対収束し、和の順序を入れ替えて $\sum_m\Bigl(\sum_{k\le m}(-1)^k\frac{T(m,k)}{k+1}\Bigr)\frac{t^m}{m!}$ に等しい($k>m$ では $T(m,k)=0$)。この冪級数は $\lvert t\rvert<\log 2$ で収束し、prop-bnl-basic の 3 の冪級数 $\sum_mB_mt^m/m!$ と $0< t<\log2$ で同じ値をとるので、冪級数 の命題「中心に近づく点列の上で0になる冪級数」により係数が等しい。$\square$

例えば $m=2$ では $T(2,1)=1$、$T(2,2)=2$ で、$B_2=-\frac12+\frac23=\frac16$ である。

冪の和の法 $p$ での値

$p$ を素数、$m\ge1$ とすると
$$ \sum_{j=1}^{p-1}j^m\equiv\begin{cases}-1&((p-1)\mid m)\\0&((p-1)\nmid m)\end{cases}\pmod p $$
である。

$(p-1)\mid m$ なら Fermatの小定理 により各項は $1$ と合同で、和は $p-1\equiv-1$ である。$(p-1)\nmid m$ とする。原始根 の定理「素数を法とする原始根の存在」により法 $p$ の原始根 $r$ があり、$r^m\not\equiv1\pmod p$ である。$j$ が $1,\dots,p-1$ を動くとき $rj$ も法 $p$ で同じ剰余類を一巡するので、和を $S$ とすると $r^mS\equiv S$、すなわち $(r^m-1)S\equiv0\pmod p$ であり、$S\equiv0$ である。$\square$

この補題は HW60 Theorem 119(p. 91)と同じである。

定理と証明

von Staudt–Clausenの定理

$n$ を正の偶数とする。$(p-1)\mid n$ をみたす素数 $p$ 全体にわたる和について
$$ B_n+\sum_{(p-1)\mid n}\frac1p\in\mathbb Z $$
が成り立つ。

全射の個数の割り切れ方を調べる

lem-bnl-surjection の 2 の和の各項 $(-1)^kT(m,k)/(k+1)$($m:=n$)を、$k+1$ の形で分けて調べる。$k=0$ の項は $T(n,0)=0$ なので $0$ である。以下 $1\le k\le n$ とする。
場合 1($k+1$ が $4$ でない合成数).$k+1=ab$($2\le a\le b$)と書く。$a< b$ なら $a,b$ は $k$ 以下の相異なる数なので $ab\mid k!$ である。$a=b$ なら $k+1=a^2\neq4$ から $a\ge3$ で、$a< 2a\le a^2-1=k$ なので $a\cdot2a\mid k!$、よって $a^2\mid k!$ である。どちらでも $(k+1)\mid k!$ で、lem-bnl-surjection の 1 により $k!\mid T(n,k)$ なので、この項は整数である。
場合 2($k+1=4$).$T(n,3)=3^n-3\cdot2^n+3$ である。$n=2$ なら $9-12+3=0$ である。$n\ge4$ なら、$n$ は偶数なので $3^n=9^{n/2}\equiv1\pmod8$、$3\cdot2^n\equiv0\pmod8$ で、$T(n,3)\equiv4\pmod8$ である。どちらでも $4\mid T(n,3)$ で、この項は整数である。
場合 3($k+1=p$ が素数).$p=2$ なら $T(n,1)=1$ で、項は $-\frac12$ である。$p$ が奇素数なら、$0\le j\le p-1$ について $j!\binom{p-1}j=\prod_{i=1}^{j}(p-i)\equiv(-1)^jj!\pmod p$ で $j!$ は $p$ と互いに素なので、$\binom{p-1}j\equiv(-1)^j\pmod p$ である。よって
$$ T(n,p-1)\equiv\sum_{j=0}^{p-1}(-1)^{p-1-j}(-1)^j j^n=\sum_{j=1}^{p-1}j^n\pmod p $$
である($p-1$ は偶数、$j=0$ の項は $0$)。lem-bnl-power-sum-mod-p により、$(p-1)\nmid n$ なら $p\mid T(n,p-1)$ で、項 $T(n,p-1)/p$ は整数である。$(p-1)\mid n$ なら $T(n,p-1)=-1+ps$($s\in\mathbb Z$)と書けて、項は $s-\frac1p$ である。
まとめ.$(p-1)\mid n$ をみたす素数は $p\le n+1$ なので、すべて場合 3 に現れる($p=2$ はつねに $(p-1)\mid n$ をみたし、項 $-\frac12$ を与える)。したがって $B_n$ は整数から $\sum_{(p-1)\mid n}\frac1p$ を引いたものであり、主張が成り立つ。$\square$

この証明は、Was82(Theorem 5.10、p. 55)の $p$ 進的な証明や、HW60(Theorem 118、pp. 91–93)の Rado による証明とは別の、全射の個数を使うものである。

Bernoulli数の分母

正の偶数 $n$ について、既約分数で表した $B_n$ の分母は $\prod_{(p-1)\mid n}p$ である。特に分母は平方因子をもたず、$6$ で割り切れる。

$D:=\prod_{(p-1)\mid n}p$ とおくと、$\sum_{(p-1)\mid n}\frac1p=\frac ND$、$N:=\sum_{p}\frac Dp$ である。各 $p\mid D$ について、$N$ の項のうち $\frac Dp$ 以外は $p$ で割り切れ、$\frac Dp$ は $p$ と異なる素数の積なので $p$ で割り切れない。よって $N/D$ は既約分数で、thm-bnl-von-staudt-clausen により $B_n=(\text{整数})-\frac ND$ の分母も $D$ である。$p=2,3$ はつねに $(p-1)\mid n$ をみたす。$\square$

定理の確認
  1. $n=12$:$(p-1)\mid12$ となる素数は $2,3,5,7,13$ で、$\frac12+\frac13+\frac15+\frac17+\frac1{13}=\frac{3421}{2730}$ である。$B_{12}+\frac{3421}{2730}=\frac{-691+3421}{2730}=1$。
  2. $n=14$:$(p-1)\mid14$ となる素数は $2,3$ だけ($8$ と $15$ は素数でない)で、$B_{14}+\frac12+\frac13=\frac76+\frac56=2$。
  3. $n=20$:素数は $2,3,5,11$ で、分母は $330$。$B_{20}+\frac12+\frac13+\frac15+\frac1{11}=-\frac{174611}{330}+\frac{371}{330}=-528$。

分子と正則素数

分母が素数 $p$ の単純な条件で決まるのに対し、分子の素因数には規則が見えにくい。$B_{10}=\frac5{66}$、$B_{12}=-\frac{691}{2730}$ のように分子は $\pm1$ とは限らない。奇素数 $p$ が $B_2,B_4,\dots,B_{p-3}$ のどの分子も割らないとき、$p$ を 正則素数 という。Kummer は、これが円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類数を $p$ が割らないことと同値であることを示した(Was82 Theorem 5.16、p. 61 と Theorem 5.34、p. 78)。正則素数 $p$ については Fermat の方程式 $x^p+y^p=z^p$ が正の整数解をもたないことも Kummer が示している(HW60 Chapter XIII の注、p. 202)。
$B_{32}=-\frac{7709321041217}{510}$ の分子は $37\cdot683\cdot305065927$ と分解する(有限計算)。$32\le37-3$ なので $37$ は正則でなく、実際 $37$ は最小の非正則素数である(Was82 p. 7)。非正則素数は無限に多い(Was82 Theorem 5.17、p. 62)。
Kummer の合同式も分子の $p$ での振る舞いを述べる:$p-1$ で割り切れない正の偶数 $m,n$ が $m\equiv n\pmod{p-1}$ をみたせば $\frac{B_m}m\equiv\frac{B_n}n\pmod p$ である(Was82 Corollary 5.14、p. 61)。例えば $p=7$、$m=2$、$n=8$ では $\frac{B_2}2=\frac1{12}$、$\frac{B_8}8=-\frac1{240}$ で、$12\equiv5$、$240\equiv2\pmod7$ からどちらも法 $7$ で $3$ に合同である。これらの定理はこの記事では証明しない。

反例と注意

外す条件・替える条件反例成り立たなくなること
$n$ が偶数$n=3$$B_n+\sum_{(p-1)\mid n}\frac1p\in\mathbb Z$
分母を分子に替える$B_{10}=\frac5{66}$、$B_{12}=-\frac{691}{2730}$分子は $\pm1$
小さい番号の傾向$B_{20}\approx-529.1$$B_n\to0$、あるいは $\lvert B_n\rvert\le1$
収束半径の内側$t=2\pi$$\sum_nB_nt^n/n!$ がすべての実数 $t$ で収束する
正則性の番号の範囲 $k\le p-3$$p=7$、$B_{14}=\frac76$「$p$ が $B_k$ の分子を割れば $p$ は非正則」
反例の確認

各行を確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:$B_3=0$ で、$(p-1)\mid3$ となる素数は $2$ だけなので $B_3+\frac12=\frac12\notin\mathbb Z$ である。証明の場合 2 は $n$ が偶数であることを使っていた($n=3$ では $T(3,3)=6$ で $4$ で割り切れない)。$n=1$ では $B_1+\frac12=0$ で成り立つ。

2 行目:表の値による。von Staudt–Clausen の定理は分子について何も述べない。

3 行目:cor-bnl-sign-growth の 2 により $\lvert B_{2k}\rvert\to\infty$ である。$B_2$ から $B_{12}$ までは絶対値が $1$ 未満だが、$B_{14}=\frac76$ で $1$ を超える。

4 行目:cor-bnl-sign-growth の 3 による。$t=2\pi$ では $\lvert B_{2k}t^{2k}/(2k)!\rvert=2\zeta(2k)>2$ で項が $0$ に近づかない。

5 行目:$7$ は $B_{14}$ の分子を割るが、$p=7$ で調べる範囲は $B_2=\frac16$、$B_4=-\frac1{30}$ だけで、どちらの分子も $7$ で割れないので $7$ は正則である。同様に $5$ は $B_{10}$ の分子を割るが、調べる範囲は $B_2$ だけで $5$ は正則である。

注意を 2 つ挙げる。

  • 一般化 Bernoulli 数.Dirichlet 指標 $\chi$ について $\sum_{a=1}^{f}\chi(a)\frac{te^{at}}{e^{ft}-1}=\sum_nB_{n,\chi}\frac{t^n}{n!}$($f$ は導手)で一般化 Bernoulli 数を定めると、$L(1-n,\chi)=-B_{n,\chi}/n$ となる(Was82 pp. 30–31、Theorem 4.2)。$\chi$ が自明なら $B_{n,\chi}=B_n$($n\neq1$)である。
  • Euler–Maclaurin の和公式.和 $\sum f(k)$ を積分で近似するときの補正項の係数も $B_{2k}$ である(Euler–Maclaurinの公式(高校数学))。

関連項目

参考文献

[1]
Lawrence C. Washington, Introduction to Cyclotomic Fields, Springer-Verlag, Graduate Texts in Mathematics 83, 1982, Chapter 1(非正則素数、p. 7)、Chapter 4(Bernoulli 数と一般化 Bernoulli 数の定義、pp. 30–31。Theorem 4.2、p. 31)、Chapter 5(Theorem 5.10、p. 55。Corollary 5.14・Theorem 5.16、p. 61。Theorem 5.17、p. 62。Theorem 5.34、p. 78)
[2]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, Oxford, Clarendon Press, 1960, §7.9–7.10(Bernoulli 数の記法、p. 90。Theorem 118・Theorem 119、p. 91。証明、pp. 91–93)、Chapter XIII の注(Kummer と正則素数、p. 202)、§17.2 の脚注($\zeta(2n)$ と Bernoulli 数、p. 245)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する