Pell方程式(Pell's equation)とは、平方数でない正の整数 $d$ について、整数 $x,y$ の方程式 $x^2-dy^2=1$ のことである。$x+y\sqrt d$ のノルム $x^2-dy^2$ は積を保つので、解どうしを掛けると新しい解が得られる。正の解があるとき、最小の正の解 $(x_1,y_1)$ をとると、正の解はすべて $x_n+y_n\sqrt d=(x_1+y_1\sqrt d)^n$($n\ge1$)で与えられ、$x_{n+2}=2x_1x_{n+1}-x_n$ を満たす。最小の解は $\sqrt d$ の近似分数に現れ、$d=2$ では $(3,2)$、$d=61$ では $(1766319049,226153980)$ である(正の解がいつもあることは証明しない)。$d$ が平方数なら正の解はなく、$x^2-3y^2=-1$ は解をもたない。
前提知識: 連分数(高校数学), 分母の有理化と数の体, 不定方程式の解法
2 次の不定方程式 $x^2-2y^2=1$ を満たす正の整数 $x,y$ を探してみる。$y$ を $1$ から順に試し、$1+2y^2$ が平方数になるかを調べればよい。
$y=1,2,\ldots,12$ で $1+2y^2$ を計算すると
$$
3,\ \underline{9},\ 19,\ 33,\ 51,\ 73,\ 99,\ 129,\ 163,\ 201,\ 243,\ \underline{289}
$$
で、平方数は $9=3^2$($y=2$)と $289=17^2$($y=12$)だけである。よって $y\le12$ の範囲の正の解は $(x,y)=(3,2)$ と $(17,12)$ である。
2 つの解の間には、$\sqrt2$ を使うと見える関係がある。
$(3+2\sqrt2)^2=9+12\sqrt2+8=17+12\sqrt2$ で、係数に 2 つ目の解 $(17,12)$ が現れる。さらに
$$
(3+2\sqrt2)^3=(17+12\sqrt2)(3+2\sqrt2)=51+34\sqrt2+36\sqrt2+48=99+70\sqrt2
$$
で、$99^2-2\cdot70^2=9801-9800=1$ だから $(99,70)$ も解である。$y$ を順に試すと $y=70$ まで調べないと見つからない解が、掛け算 1 回で得られた。
$\dfrac32$、$\dfrac{17}{12}$、$\dfrac{99}{70}$ は、連分数(高校数学) で求めた $\sqrt2=[1;2,2,2,\ldots]$ の近似分数である。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 分母の有理化で共役を掛ける | ノルム $N(x+y\sqrt d)=x^2-dy^2$ | 2 次体のノルム |
| 解どうしを掛けて新しい解を作る | ノルムの乗法性 | ノルム $1$ の数は掛け算で閉じる |
| 冪 $(x_1+y_1\sqrt d)^n$ | 最小の解の冪ですべての解が尽きる | 単数群は $\pm\varepsilon^n$ の形 |
| $\sqrt d$ の近似分数 | 最小の解は近似分数に現れる | 連分数による解の存在証明 |
平方数でない正の整数 $d$ について、整数 $x,y$ の方程式
$$
x^2-dy^2=1
$$
を Pell 方程式 という。$x>0$、$y>0$ の解を 正の解 という。$(x,y)=(1,0)$ はいつも解で、自明な解 という。
$d$ が平方数でないという条件は、ex-pel-cx-square で見るように欠かせない。この条件のもとで $\sqrt d$ は無理数である(実数とは何か:無理数の証明)。
以下、整数 $x,y$ を使って $x+y\sqrt d$ と書ける数の全体を $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ と書く。$\sqrt d$ が無理数なので、この書き方はただ 1 通りである:$x+y\sqrt d=x'+y'\sqrt d$($x,y,x',y'$ は整数)なら、$y\ne y'$ とすると $\sqrt d=\dfrac{x-x'}{y'-y}$ が有理数になって矛盾するので $y=y'$、したがって $x=x'$ である。
$u=x+y\sqrt d$($x,y$ は整数)に対し、$\bar u=x-y\sqrt d$ を $u$ の 共役、
$$
N(u)=u\bar u=x^2-dy^2
$$
を $u$ の ノルム という。$(x,y)$ が Pell 方程式の解であることは、$N(x+y\sqrt d)=1$ と同じことである。
$d=2$ の場合の共役とノルムは 分母の有理化と数の体 で扱った。一般の $d$ でも同じ計算で、ノルムは積を保つ。
$u,v\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ なら、積 $uv$ も $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ に属し、$\overline{uv}=\bar u\,\bar v$、$N(uv)=N(u)N(v)$ である。特に、$N(u)=N(v)=1$ なら $N(uv)=1$ である。
$u=a+b\sqrt d$、$v=c+e\sqrt d$($a,b,c,e$ は整数)とする。展開すると
$$
uv=(ac+dbe)+(ae+bc)\sqrt d
$$
で、係数は整数なので $uv\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ である。同じく
$$
\bar u\,\bar v=(a-b\sqrt d)(c-e\sqrt d)=(ac+dbe)-(ae+bc)\sqrt d=\overline{uv}
$$
である。よって $N(uv)=uv\cdot\overline{uv}=(u\bar u)(v\bar v)=N(u)N(v)$ である。$\square$
解を大小で比べるために、次の補題を使う。
$u=x+y\sqrt d$($x,y$ は整数)が $N(u)=1$ を満たすとする。
(1) $\bar u=\dfrac1u$ である。
(2) $u>1$ であることと、$x\ge1$ かつ $y\ge1$ であることは同値である。
(3) $u$ と $u'=x'+y'\sqrt d$ がどちらも $N=1$、$x,y,x',y'\ge1$ を満たすとき、$u< u'$ と $x< x'$ と $y< y'$ は同値である。
$d=3$ の解 $(2,1)$ の符号を変えた 4 つの数は、$2+\sqrt3=3.732\ldots$、$2-\sqrt3=0.267\ldots$、$-2+\sqrt3=-0.267\ldots$、$-2-\sqrt3=-3.732\ldots$ で、どれもノルムは $1$ である。$1$ より大きいのは $x,y$ がともに正の $2+\sqrt3$ だけで、$2-\sqrt3$ はその逆数である($(2+\sqrt3)(2-\sqrt3)=4-3=1$)。
lem-pel-sign の (3) により、正の解は $x$ の小さい順、$y$ の小さい順、$x+y\sqrt d$ の小さい順がすべて同じになる。
Pell 方程式に正の解があるとき、$x$ が最も小さい正の解 $(x_1,y_1)$ を 最小の解(基本解)という。$\varepsilon=x_1+y_1\sqrt d$ とおく。
正の解があれば、正の整数の集まり $\{x\mid(x,y)\text{ は正の解}\}$ には最小のものがある(整列性。数学的帰納法と整列性)ので、最小の解は定まる。lem-pel-sign の (3) により、$\varepsilon$ はノルム $1$ で $1$ より大きい $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ の数のうち最小のものである。
平方数でないどの正の整数 $d$ にも正の解があることが知られている(Wei26。$\sqrt d$ の連分数が循環することを使う。この記事では証明しない)。この記事では、正の解が 1 つ見つかったとして、そこから先を証明する。
平方数でない正の整数 $d$ について、Pell 方程式 $x^2-dy^2=1$ に正の解があるとし、最小の解を $(x_1,y_1)$、$\varepsilon=x_1+y_1\sqrt d$ とする。$n=1,2,3,\ldots$ について整数 $x_n,y_n$ を
$$
x_n+y_n\sqrt d=\varepsilon^n=(x_1+y_1\sqrt d)^n
$$
で定める。このとき次が成り立つ。
(1) $(x_n,y_n)$ はどれも正の解で、$x_1< x_2< x_3<\cdots$ である。特に正の解は無数にある。
(2) 正の解はすべて、ある $n\ge1$ についての $(x_n,y_n)$ である。
方針:(2) では、正の解 $u=x+y\sqrt d$ を $\varepsilon$ の冪ではさみ、$\varepsilon^n$ で割ると $1$ 以上 $\varepsilon$ 未満のノルム $1$ の数になることを使う。$\varepsilon$ が最小なので、それは $1$ しかない。
段 1((1) の証明)。lem-pel-norm をくり返し使うと、$\varepsilon^n\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ で $N(\varepsilon^n)=N(\varepsilon)^n=1$ である。$\varepsilon>1$ なので $\varepsilon^n>1$ であり、lem-pel-sign の (2) により $x_n\ge1$、$y_n\ge1$、つまり $(x_n,y_n)$ は正の解である。$\varepsilon^{n+1}=\varepsilon\cdot\varepsilon^n>\varepsilon^n$ なので、lem-pel-sign の (3) により $x_n< x_{n+1}$ である。
段 2(冪ではさむ)。$(x,y)$ を正の解とし、$u=x+y\sqrt d$ とおく。$\varepsilon$ の最小性から $u\ge\varepsilon$ である。また $\varepsilon\ge1+\sqrt d>2$ なので $\varepsilon^n>2^n$ で、$\varepsilon^n$ はいくらでも大きくなる。よって $\varepsilon^n\le u$ を満たす $n\ge1$ のうち最大のものがあり、それを $n$ とすると
$$
\varepsilon^n\le u<\varepsilon^{n+1}
$$
である。
段 3($\varepsilon^n$ で割る)。$v=u\,\bar\varepsilon^{\,n}$ とおく。$\bar\varepsilon=\dfrac1\varepsilon$(lem-pel-sign の (1))なので $v=\dfrac u{\varepsilon^n}$ で、段 2 の不等式を $\varepsilon^n>0$ で割ると
$$
1\le v<\varepsilon
$$
である。一方 $\bar\varepsilon=x_1-y_1\sqrt d\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ なので、lem-pel-norm により $v\in\mathbb{Z}[\sqrt d]$ で、$N(v)=N(u)N(\bar\varepsilon)^n=1\cdot1^n=1$ である($N(\bar\varepsilon)=\bar\varepsilon\varepsilon=1$)。
段 4($v=1$)。$v>1$ と仮定すると、lem-pel-sign の (2) により $v$ は正の解を与え、$v<\varepsilon$ なので lem-pel-sign の (3) によりその解の $x$ は $x_1$ より小さい。これは $(x_1,y_1)$ の最小性に反する。よって $v=1$、つまり $u=\varepsilon^n=x_n+y_n\sqrt d$ である。書き方がただ 1 通りであることから $(x,y)=(x_n,y_n)$ である。$\square$
双曲線 x² − 3y² = 1 と整数解。(2, 1)、(7, 4)、(26, 15) は 2+√3 の 1 乗、2 乗、3 乗の係数で、漸近線に沿って急速に遠ざかる
図 1 は $d=3$ の場合である。段 2〜段 4 の議論を、$x+y\sqrt3$ の対数をとって数直線の上で見たのが図 2 である。対数をとると $\varepsilon^n$ は間隔 $\log\varepsilon$ で等間隔に並び、どの解 $u$ も $\varepsilon^n$ で割る(対数で $n\log\varepsilon$ だけ左に動かす)と $1$ と $\varepsilon$ の間に入る。そこには $1$ 以外の解がないので、$u$ は $\varepsilon^n$ そのものである。
x + y√3 の対数をとった数直線。解は 1、ε、ε²、… の位置に等間隔に並ぶ。仮に ε³ と ε⁴ の間に解 u があったとすると、ε³ で割った v は 1 と ε の間の解になり、ε の最小性に反する
主定理から、負の数を含めた整数解もすべて分かる。
thm-pel-main の仮定のもとで、$x^2-dy^2=1$ の整数解は、$(\pm1,0)$ と $(\pm x_n,\pm y_n)$($n\ge1$、符号は 4 通りの組み合わせ)ですべてである。
$(x,y)$ を整数解とする。$y=0$ なら $x^2=1$ で $x=\pm1$ である。$x=0$ なら $-dy^2=1$ となり不可能である。$x\ne0$、$y\ne0$ なら $(\lvert x\rvert,\lvert y\rvert)$ は正の解なので、thm-pel-main の (2) により $(\lvert x\rvert,\lvert y\rvert)=(x_n,y_n)$ となる $n$ がある。逆にこれらが解であることは、$x^2$、$y^2$ が符号によらないことから分かる。$\square$
冪の係数は漸化式でも求められる。
$x_0=1$、$y_0=0$ とおくと、$n\ge0$ について
$$
x_{n+1}=x_1x_n+dy_1y_n,\qquad y_{n+1}=x_1y_n+y_1x_n
$$
であり、さらに
$$
x_{n+2}=2x_1x_{n+1}-x_n,\qquad y_{n+2}=2x_1y_{n+1}-y_n
$$
が成り立つ。
1 つ目の式は、$\varepsilon^{n+1}=\varepsilon^n\cdot\varepsilon=(x_n+y_n\sqrt d)(x_1+y_1\sqrt d)$ を展開し、lem-pel-norm の証明と同じく係数を比べたものである($n=0$ では $\varepsilon^0=1=x_0+y_0\sqrt d$)。
2 つ目の式。$\varepsilon+\bar\varepsilon=2x_1$、$\varepsilon\bar\varepsilon=1$ なので、$\varepsilon$ は 2 次方程式 $t^2-2x_1t+1=0$ の解であり、$\varepsilon^2=2x_1\varepsilon-1$ である。両辺に $\varepsilon^n$ を掛けると $\varepsilon^{n+2}=2x_1\varepsilon^{n+1}-\varepsilon^n$ で、$\sqrt d$ を含まない部分と $\sqrt d$ の係数をそれぞれ比べると 2 つの漸化式を得る(書き方がただ 1 通りであることを使う)。$\square$
$d=2$、$x_1=3$ では $x_{n+2}=6x_{n+1}-x_n$ で、$x_0=1$、$x_1=3$ から $x_n=1,3,17,99,577,3363,\ldots$ である。$y_{n+2}=6y_{n+1}-y_n$ で、$y_0=0$、$y_1=2$ から $y_n=0,2,12,70,408,2378,\ldots$ である。たとえば $6\cdot99-17=577$、$6\cdot70-12=408$ である。
2 つ目の漸化式の特性方程式 $t^2-2x_1t+1=0$ の解が $\varepsilon$ と $\bar\varepsilon$ であることは、三項間漸化式の特性方程式 の一般論と合っている。
ex-pel-start のように $y$ を順に試す方法は、最小の解が大きいと役に立たない。$x^2-dy^2=1$ を $y^2$ で割ると $\left(\dfrac xy\right)^2=d+\dfrac1{y^2}$ なので、正の解の $\dfrac xy$ は $\sqrt d$ にとても近い分数である。実際
$$
\frac xy-\sqrt d=\frac{x^2-dy^2}{y(x+y\sqrt d)}=\frac1{y(x+y\sqrt d)}
$$
で、$x>y\sqrt d$ から右辺は $\dfrac1{2\sqrt d\,y^2}$ より小さい。そこで 連分数(高校数学) の近似分数 $\dfrac{p_k}{q_k}$ を順に調べる。
連分数の成分の上の横線は、その部分が周期的にくり返すことを表す。$\ell$ は周期の長さ、「$k$」は $p_k^2-dq_k^2=1$ となる最初の近似分数の番号である(数値計算)。
| $d$ | $\sqrt d$ の連分数 | $\ell$ | 最小の解 $(x_1,y_1)$ | $k$ |
|---|---|---|---|---|
| $2$ | $[1;\overline{2}]$ | $1$ | $(3,2)$ | $1$ |
| $3$ | $[1;\overline{1,2}]$ | $2$ | $(2,1)$ | $1$ |
| $5$ | $[2;\overline{4}]$ | $1$ | $(9,4)$ | $1$ |
| $6$ | $[2;\overline{2,4}]$ | $2$ | $(5,2)$ | $1$ |
| $7$ | $[2;\overline{1,1,1,4}]$ | $4$ | $(8,3)$ | $3$ |
| $13$ | $[3;\overline{1,1,1,1,6}]$ | $5$ | $(649,180)$ | $9$ |
| $61$ | $[7;\overline{1,4,3,1,2,2,1,3,4,1,14}]$ | $11$ | $(1766319049,\ 226153980)$ | $21$ |
たとえば $d=7$ では、近似分数 $2,3,\dfrac52,\dfrac83$ を順に調べると $2^2-7=-3$、$3^2-7=2$、$5^2-7\cdot4=-3$、$8^2-7\cdot9=1$ で、$\dfrac83$ で初めて $1$ になる。$d=61$ の最小の解は、$y$ を $1$ から順に試すと 2 億回以上かかる大きさだが、近似分数なら 22 個目で見つかる。検算すると $1766319049^2-61\cdot226153980^2=1$ である。
表の $d$ ではどれも、$\ell$ が偶数なら $k=\ell-1$、奇数なら $k=2\ell-1$ になっている。一般に最小の解はいつもこの番号の近似分数として現れることが知られている(Wei26 の式 (28)。この記事では証明しない)。$\ell$ が奇数の $d=2,5,13,61$ では、手前の $k=\ell-1$ の近似分数 $\dfrac11$、$\dfrac21$、$\dfrac{18}5$、$\dfrac{29718}{3805}$ が $p^2-dq^2=-1$ を満たしている。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $d$ が平方数でない | $x^2-4y^2=1$ | 正の解がある |
| 右辺が $1$ | $x^2-3y^2=-1$ | 解がある |
| $d$ が正 | $x^2+2y^2=1$ | 解が無数にある |
| 冪の底が最小の解 | $(17+12\sqrt2)^n$ | 冪ですべての正の解が得られる |
双曲線 x² − 4y² = 1 と格子点。曲線の上の格子点は (±1, 0) だけ
楕円 x² + 2y² = 1 と格子点。曲線の上の格子点は (±1, 0) だけ
$d=4$ のとき、$x^2-4y^2=(x-2y)(x+2y)=1$ である。整数の積が $1$ になるのは、2 つがともに $1$ か、ともに $-1$ のときだけである。$x-2y=x+2y$ から $y=0$ で、解は $(\pm1,0)$ しかない(図 3)。一般に $d=m^2$($m\ge1$)なら $(x-my)(x+my)=1$ で同じことが起こる。直観的には、双曲線の漸近線の傾き $\pm\dfrac1m$ が有理数なので、格子点が漸近線に沿って近づいていくことができない。
$x^2-3y^2=-1$ に整数解があるとすると、$3$ で割った余りを見て $x^2\equiv-1\equiv2\pmod 3$ となる。しかし平方数を $3$ で割った余りは $0$ か $1$ なので、これは不可能である(余りで調べる方法は 不定方程式の解法)。一方 $d=2$ では $1^2-2\cdot1^2=-1$ で、$-1$ の方程式にも解がある。$-1$ の方程式では、ノルム $-1$ の数どうしの積はノルム $1$ になるので、解どうしを掛けても同じ方程式の解にはならない。
$d=-2$ のとき、$x^2+2y^2=1$ で $y\ne0$ なら左辺は $2$ 以上なので、解は $(\pm1,0)$ だけである(図 4)。$d<0$ では $x^2-dy^2=1$ は楕円($d=-1$ なら円)で、有界な図形の上の格子点は有限個しかない。lem-pel-sign の (2) の証明で使った「$u>1$ なら $0<\bar u<1$」も、$\sqrt d$ が実数でないので意味をもたない。
$d=2$ で、最小でない解 $(17,12)$ の冪をとると、$(17+12\sqrt2)^2=577+408\sqrt2$ で、$(3+2\sqrt2)^n$ の $n=2,4,6,\ldots$ の偶数番目しか得られない。$(3,2)$ や $(99,70)$ はもれる。thm-pel-main の証明の段 4 では、$1< v<\varepsilon$ となる解がないことに $\varepsilon$ の最小性を使った。$\varepsilon=17+12\sqrt2$ としてしまうと、$u=99+70\sqrt2$ に対し $v=\dfrac u\varepsilon=3+2\sqrt2$ が $1$ と $\varepsilon$ の間に入ってしまう。
$x^2-5y^2=1$ の最小の解を求め、thm-pel-main を使って次に小さい正の解を 2 つ求めよ。
ex-pel-small の (2) より、$y=1,2,3$ では解がなく、$y=4$ で $(9,4)$ が最小の解である。$(9+4\sqrt5)^2=81+72\sqrt5+80=161+72\sqrt5$、$(9+4\sqrt5)^3=(161+72\sqrt5)(9+4\sqrt5)=1449+644\sqrt5+648\sqrt5+1440=2889+1292\sqrt5$ なので、$(161,72)$ と $(2889,1292)$ である。$161^2-5\cdot72^2=25921-25920=1$ である。
$x^2-7y^2=-1$ は整数解をもたないことを示せ。
整数解があるとすると、$7$ で割った余りを見て $x^2\equiv-1\equiv6\pmod7$ である。$x\equiv0,1,2,3,4,5,6$ のとき $x^2\equiv0,1,4,2,2,4,1\pmod7$ なので、平方数の余りは $0,1,2,4$ のどれかで、$6$ にはならない。よって整数解はない。
$\mathbb{Z}[\sqrt d]$ の数 $u$ で、逆数 $\dfrac1u$ も $\mathbb{Z}[\sqrt d]$ に入るものを 単数 という。$u$ が単数であることと $N(u)=\pm1$ であることは同値である($d=2$ の場合の証明は 分母の有理化と数の体 にある)。thm-pel-main と cor-pel-all は、ノルム $1$ の単数が $\pm\varepsilon^n$($n$ は整数)の形ですべてであることを言っている。大学の代数的整数論では、これを一般の数の体に広げた Dirichlet の単数定理を学ぶ。
正の解がいつも存在することは、$\sqrt d$ の連分数がある所から先で周期的になること(連分数(高校数学) の「大学数学で見る」で紹介した Lagrange の定理)を使って証明される。Wei26 は、この周期性から解がいつも得られることと、最小の解が近似分数のどれになるかの規則を述べている。
$d=2$ のように $x^2-dy^2=-1$ に解がある場合は、ノルム $-1$ の単数があり、そのうち $1$ より大きい最小のもの $\eta$($d=2$ では $\eta=1+\sqrt2$)について $\eta^2=\varepsilon$ となる($d=2$ では $(1+\sqrt2)^2=3+2\sqrt2$)。分母の有理化と数の体 の図が $(1+\sqrt2)^n$ を 2 本の双曲線 $p^2-2q^2=\pm1$ の上に交互に描いているのは、このことである。
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