川又–Viehwegの消滅定理

同義語:Kawamata–Viehweg vanishing theoremKawamata–Viehwegの消滅定理

概要

川又–Viehwegの消滅定理(Kawamata–Viehweg vanishing theorem)とは、複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ と、台が単純正規交叉因子で係数が $0$ 以上 $1$ 未満の $\mathbb{Q}$ 因子 $B$ について、Cartier 因子 $L$ に対し $L-(K_X+B)$ がネフかつ巨大なら $i>0$ で $H^i(X,\mathcal{O}_X(L))=0$ となるという定理である。小平の消滅定理の豊富性の仮定を、双有理射の引き戻しで保たれるネフかつ巨大という条件に弱めたもので、錐定理と収縮定理を消滅定理から導く方法の中心にある。曲面の点の爆発による豊富な因子の引き戻しの場合は、順像の計算で小平の消滅定理に帰着できる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 小平の消滅定理, 双有理幾何学, 正規交叉因子, 代数曲面

川又–Viehwegの消滅定理(Kawamata–Viehweg vanishing theorem)は、小平邦彦(Kunihiko Kodaira)による 小平の消滅定理 の「豊富」という仮定を「ネフかつ巨大」まで弱め、さらに係数が $0$ と $1$ の間にある有理数の因子(小数部分)を許した消滅定理である。複素数体上の滑らかな射影多様体 $X$ の上で、台が単純正規交叉因子の小数部分 $B$ について、Cartier 因子 $L$ から標準因子と $B$ を引いた残り $L-(K_X+B)$ がネフかつ巨大なら、$i>0$ で $H^i(X,\mathcal{O}_X(L))=0$ となる。1982 年に川又雄二郎(Yujiro Kawamata)と E. Viehweg がそれぞれ論文で示した。
豊富でないネフかつ巨大な因子の典型は、双有理射による豊富な因子の引き戻しである。双有理幾何学では、多様体を爆発したり特異点を解消したりして調べるので、豊富性は引き戻すと失われる。ネフかつ巨大という条件は双有理射による引き戻しで保たれる(ネフ性は曲線への制限の次数で、巨大性は大域切断の引き戻しで確かめられる)ので、川又–Viehweg の消滅定理は双有理幾何学の中で自由に使える。錐定理 と収縮定理を消滅定理から導く方法(川又雄二郎、Kollár、Reid、Shokurov による)の中心にあるのが、この定理である。
一般の場合の証明はこの記事では扱わない。代わりに、曲線の場合と、曲面の 1 点の爆発による引き戻しの場合を、小平の消滅定理から完全に証明する。また、仮定のどれを外しても結論が成り立たなくなることを、射影平面の 1 点の爆発の上の具体的な計算で示す。

ネフ性と巨大性

この節では $k$ を代数閉体、$X$ を $k$ 上の $n$ 次元の滑らかな射影多様体とする。$X$ の整な 1 次元閉部分スキームを 曲線 という。

ネフ因子と巨大因子

$X$ 上の Cartier 因子 $D$ について次のように定める。

  1. $D$ が ネフ(nef)であるとは、すべての曲線 $C$ について $D\cdot C:=\deg(\mathcal{O}_X(D)|_C)\ge0$ となることをいう。
  2. $D$ が 巨大(big)であるとは、ある定数 $c>0$ と無限に多くの正の整数 $m$ について $h^0(X,\mathcal{O}_X(mD))\ge cm^n$ となることをいう。
    有理数係数の因子($\mathbb{Q}$ 因子)$D$ は、ある正の整数 $r$ について $rD$ が Cartier 因子で上の意味でネフ(巨大)なとき、ネフ(巨大)という。

これは 双有理幾何学 の節「ネフ性」「消滅定理」の定義と同じである。豊富な因子はネフかつ巨大である。ネフ性は交点数だけで決まるが、巨大性は大域切断の個数の増え方で定まる。曲線では、どちらも次数で判定できる。

曲線の上のネフ性と巨大性

$X$ が滑らかな射影曲線のとき、因子 $D$ がネフであることは $\deg D\ge0$ と同値であり、巨大であることは $\deg D>0$ と同値である。とくに曲線の上では、ネフかつ巨大であることと豊富であることは同値である。

次数と Riemann–Roch の定理

曲線は $X$ 自身だけなので、ネフ性は $\deg D\ge0$ と同値である。$\deg D>0$ なら、Riemann–Roch の定理から $h^0(mD)\ge m\deg D+1-g$ で、十分大きな $m$ で $\frac{\deg D}2m$ 以上になるので巨大である。$\deg D=0$ なら $h^0(mD)\le1$(次数 $0$ の可逆層の $0$ でない切断は零点をもたず、自明化を与える)、$\deg D<0$ なら $h^0(mD)=0$ で、どちらも巨大でない。曲線の上の因子が豊富であることは次数が正であることと同値である(豊富な可逆層 の命題「曲線上の豊富性と次数」)。$\square$

曲面では、ネフ因子が巨大かどうかは自己交点数で判定できる。

曲面の上のネフかつ巨大な因子

$X$ を滑らかな射影曲面、$D$ をネフな因子とする。$D^2>0$ なら $D$ は巨大である。

Hodge 指数定理で $D\cdot H>0$ を示す

$H$ を豊富な因子とし、$mH$ が非常に豊富となる $m\ge1$ をとる。$mH$ と線形同値な有効因子 $\sum a_iC_i$($a_i\ge0$)をとると、$D$ はネフなので $D\cdot mH=\sum a_iD\cdot C_i\ge0$、すなわち $D\cdot H\ge0$ である。$D\cdot H=0$ だとすると、Hodge 指数定理(Har77 V 定理 1.9, p. 364)により $D$ は数値的に $0$ であるか $D^2<0$ であり、どちらの場合も $D^2>0$ に反する。よって $D\cdot H>0$ で、代数曲面 の命題「自己交点数が正の因子の倍数」により、十分大きな $m$ で $h^0(mD)\ge cm^2$ となる $c>0$ がある。$\square$

逆に、曲面の上のネフかつ巨大な因子は $D^2>0$ をみたす(BHPV04 IV 章 (12.1) の後の注意, p. 180。この記事では証明しない)。

爆発による豊富な因子の引き戻し

$Y$ を滑らかな射影曲面、$P\in Y$ を点、$f\colon X\to Y$ を $P$ の爆発、$E$ を例外曲線とし、$A$ を $Y$ の豊富な因子とする。このとき $f^*A$ はネフかつ巨大だが、豊富でない。
実際、$mA$ が非常に豊富となる $m$ をとると、$\mathcal{O}_Y(mA)$ は大域切断で生成されるので、引き戻し $\mathcal{O}_X(f^*mA)$ も大域切断で生成される。大域切断で生成される可逆層の各曲線への制限は、零点が有限個の切断をもつので次数が $0$ 以上である。よって $f^*A$ はネフである。$(f^*A)^2=A^2>0$ なので(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」の 1)、prop-kv-surface-nef-big により巨大である。一方 $f^*A\cdot E=0$ なので、錐定理 の定理「Kleiman の判定法」により(あるいは豊富な因子は曲線と正の交点数をもつので)豊富でない。

主定理

この節では $X$ を複素数体上の滑らかな射影多様体とする。$\mathbb{Q}$ 因子 $B=\sum_jb_jB_j$($B_j$ は相異なる素因子)について、$\lfloor B\rfloor:=\sum_j\lfloor b_j\rfloor B_j$ を 切り捨て という。$B$ が有効で $\lfloor B\rfloor=0$ であることは、すべての係数が $0\le b_j<1$ であることを意味する。

川又–Viehweg の消滅定理

$X$ を複素数体上の滑らかな射影多様体、$B$ を有効な $\mathbb{Q}$ 因子で、台 $\bigcup_jB_j$ が単純正規交叉因子であり $\lfloor B\rfloor=0$ をみたすものとする。Cartier 因子 $L$ について $L-(K_X+B)$ がネフかつ巨大なら、すべての $i>0$ で
$$ H^i(X,\mathcal{O}_X(L))=0 $$
である。

出典

この形は Fuj10 §3 の 3.1(p. 8。同論文は全体を通して複素数体上で考える, p. 6)による。曲面の場合は BHPV04 IV 章 (12.2) Theorem(p. 181)に、原論文として Kawamata(Math. Ann. 261, 1982)と Viehweg(J. Reine Angew. Math. 335, 1982)を挙げて述べられている。この記事では一般の場合を証明しない。

$B=0$ とすると次の形になる。

整数係数の形

$X$ を複素数体上の滑らかな射影多様体、$N$ をネフかつ巨大な Cartier 因子とすると、$i>0$ で $H^i(X,\mathcal{O}_X(K_X+N))=0$ である。とくに $N$ が豊富なら、これは小平の消滅定理である。

$L=K_X+N$ とおく

thm-kv-main を $B=0$、$L=K_X+N$ に使えばよい($L-(K_X+B)=N$)。豊富な因子はネフかつ巨大である。$\square$

Serre 双対性により、この結論は $H^{n-i}(X,\mathcal{O}_X(-N))=0$($i>0$)、すなわち $i< n$ での $H^i(X,\mathcal{O}_X(-N))=0$ と言い換えられる。曲面で $i=1$ の場合が、ネフで $N^2>0$ の因子についての Mumford の消滅定理 $H^1(X,\mathcal{O}_X(-N))=0$ である(BHPV04 IV 章 (12.1), p. 179)。
錐定理・収縮定理を消滅定理から導く従来の方法では、この形(小数部分 $B$ を許す形)の消滅定理が決定的な役割を果たす(Fuj10 §3, p. 8)。そこでは特異点を解消した多様体の上で議論するので、豊富な因子は引き戻すとネフかつ巨大な因子に変わり、さらに例外因子の小数倍の差が現れる。小平の消滅定理はそのままでは使えず、ネフかつ巨大と小数部分の両方を許す形が要る。

証明できる場合

曲線

曲線の場合

$X$ を代数閉体 $k$ 上の滑らかな射影曲線、$B$ を有効な $\mathbb{Q}$ 因子で $\lfloor B\rfloor=0$ をみたすもの、$L$ を因子とする。$L-(K_X+B)$ がネフかつ巨大なら $H^1(X,\mathcal{O}_X(L))=0$ である。標数の仮定は要らない。

Serre 双対性

prop-kv-curve-nef-big により $\deg L-\deg K_X-\deg B>0$ である。$B$ は有効なので $\deg B\ge0$、よって $\deg(K_X-L)<-\deg B\le0$ である。Serre 双対性により $h^1(\mathcal{O}_X(L))=h^0(\mathcal{O}_X(K_X-L))$ で、負の次数の因子は $0$ でない大域切断をもたないので、これは $0$ である。$\square$

曲線の場合は単純だが、高次元で $\lfloor B\rfloor=0$ が要る理由(係数 $1$ の成分があると崩れる)は曲線では見えない。それを曲面で見るのが下の反例である。

曲面の 1 点の爆発

豊富でないネフかつ巨大な因子の最も簡単な例(ex-kv-pullback)について、川又–Viehweg の消滅定理を小平の消滅定理から完全に証明する。証明は 3 段に分かれる。標準因子の比較で $K_X+f^*A$ を $Y$ からの引き戻しと $E$ の和に書き、$\mathcal{O}_X(E)$ の順像を計算し、Leray のスペクトル系列で $Y$ の上のコホモロジーに移して小平の消滅定理を使う。まず順像を計算する。

例外曲線の順像

$Y$ を代数閉体上の滑らかな射影曲面、$f\colon X\to Y$ を点 $P$ の爆発、$E$ を例外曲線とする。このとき $f_*\mathcal{O}_X(E)=\mathcal{O}_Y$ であり、$q>0$ で $R^qf_*\mathcal{O}_X(E)=0$ である。

形式関数の定理

順像.$\mathcal{O}_Y\to f_*\mathcal{O}_X\to f_*\mathcal{O}_X(E)$ は単射である。逆に、開集合 $U\subset Y$ と $s\in\Gamma(f^{-1}(U),\mathcal{O}_X(E))$ をとる。$s$ は $\operatorname{div}(s)+E\ge0$ をみたす有理関数で、$f$ が同型になる $f^{-1}(U)\setminus E\cong U\setminus\{P\}$ の上で正則である。$Y$ は正規で $\{P\}$ は余次元 $2$ なので、$s$ は $U$ 全体で正則である(代数的 Hartogs の補題。双有理幾何学 の補題「局所自由層の切断の延長」)。よって $f_*\mathcal{O}_X(E)=\mathcal{O}_Y$ である。
高次順像.$f$ のファイバーの次元は $1$ 以下なので $q\ge2$ で $R^qf_*=0$ である(Har77 III 系 11.2, p. 279)。$R^1f_*\mathcal{O}_X(E)$ は $Y\setminus\{P\}$ の上で $0$ なので、$P$ に台をもつ連接層であり、その完備化が $0$ であることを示せばよい。$\mathcal{I}=\mathcal{O}_X(-E)$ を $E$ のイデアル層、$E_r$ を $\mathcal{I}^r$ が定める閉部分スキームとする。点の爆発では $\mathfrak{m}_P\mathcal{O}_X=\mathcal{I}$ なので、$E_r$ は $\mathfrak{m}_P^r\mathcal{O}_X$ が定める閉部分スキーム($P$ の上の $r$ 次の太ったファイバー)に等しい。すると、形式関数の定理(Har77 III 定理 11.1, p. 277)により
$$ \bigl(R^1f_*\mathcal{O}_X(E)\bigr)^\wedge_P\cong\varprojlim_rH^1\bigl(E_r,\mathcal{O}_X(E)|_{E_r}\bigr) $$
である。$E\cong\mathbb{P}^1$ で $\mathcal{I}^r/\mathcal{I}^{r+1}\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(r)$、$\mathcal{O}_X(E)|_E\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1)$ である(Har77 V 命題 3.4 の証明, pp. 387–388。$\deg\mathcal{O}_X(E)|_E=E^2=-1$)。$\mathcal{O}_X(E)$ は可逆なので、完全列 $0\to\mathcal{I}^r/\mathcal{I}^{r+1}\to\mathcal{O}_X/\mathcal{I}^{r+1}\to\mathcal{O}_X/\mathcal{I}^r\to0$ に $\mathcal{O}_X(E)$ をテンソルしても完全で、
$$ 0\to\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(r-1)\to\mathcal{O}_X(E)|_{E_{r+1}}\to\mathcal{O}_X(E)|_{E_r}\to0 $$
を得る。$r\ge1$ では $H^1(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(r-1))=0$ であり、$E_1=E$ では $H^1(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1))=0$ である。コホモロジー長完全列から $r$ についての帰納法で、すべての $r\ge1$ で $H^1(E_r,\mathcal{O}_X(E)|_{E_r})=0$ である。よって完備化は $0$ で、$R^1f_*\mathcal{O}_X(E)=0$ である。$\square$

爆発による引き戻しの消滅

$Y$ を複素数体上の滑らかな射影曲面、$f\colon X\to Y$ を点 $P$ の爆発、$E$ を例外曲線、$A$ を $Y$ の豊富な因子とする。このとき、$f^*A$ は豊富でないネフかつ巨大な因子であり、すべての $i>0$ で
$$ H^i(X,\mathcal{O}_X(K_X+f^*A))=0 $$
である。

順像で $Y$ へ移す

$f^*A$ が豊富でないネフかつ巨大な因子であることは ex-kv-pullback で示した。曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」の 3 により $K_X\sim f^*K_Y+E$ なので、$M:=\mathcal{O}_Y(K_Y+A)$ とおくと
$$ \mathcal{O}_X(K_X+f^*A)\cong\mathcal{O}_X(E)\otimes f^*M $$
である。$M$ は可逆なので、射影公式 $R^qf_*(\mathcal{O}_X(E)\otimes f^*M)\cong R^qf_*\mathcal{O}_X(E)\otimes M$ が成り立つ($Y$ の開集合で $M\cong\mathcal{O}_Y$ と自明化すれば両辺は一致し、自然な写像が局所的に同型だから大域的にも同型である)。lem-kv-direct-image により、$q>0$ で右辺は $0$、$q=0$ で $M$ である。高次順像が消えるので、Lerayスペクトル系列 は退化して
$$ H^i(X,\mathcal{O}_X(K_X+f^*A))\cong H^i(Y,M)=H^i(Y,\mathcal{O}_Y(K_Y+A)) $$
となる。$A$ は豊富なので、小平の消滅定理(双有理幾何学 の定理「小平の消滅定理」、小平の消滅定理)により $i>0$ で右辺は $0$ である。$\square$

$f^*A$ は豊富でないので、$X$ の上で小平の消滅定理を直接使うことはできない。上の証明は、$X$ の問題を、豊富性が成り立っている $Y$ の問題へ順像で移している。同じ議論は、$K_X+f^*A$ に例外曲線 $E$ がちょうど係数 $1$ で現れることを使っている。係数を $2$ にした $f^*(K_Y+A)+2E$ では、下の反例のように結論が崩れうる。

反例:条件を外すと

以下、$X$ は $\mathbb{P}^2$ の点 $P$ の爆発 $f\colon X\to\mathbb{P}^2$、$E$ は例外曲線、$h:=f^*(\text{直線})$ とし、$M:=-2h+2E$ とおく。$K_X=-3h+E$ である。

外す条件反例成り立たなくなること
cor-kv-integral の $N$ のネフ性$N=h+E$ ($L=K_X+N=M$)$H^1(X,\mathcal{O}_X(L))=0$
thm-kv-main の $\lfloor B\rfloor=0$$B=E$(係数 $1$)、$L=M$$H^1(X,\mathcal{O}_X(L))=0$
cor-kv-integral の $N$ の巨大性種数 $g$ の曲線、$N=0$$H^1(\mathcal{O}(K_X+N))=0$
thm-kv-main の標数 $0$正標数の Raynaud の例豊富な $L-K_X$ でも $H^1(\mathcal{O}(L))=0$
反例の確かめ

$H^1(X,\mathcal{O}_X(M))\ne0$.$E\cdot h=0$、$E^2=-1$ なので $\mathcal{O}_X(M)|_E$ は $\mathbb{P}^1$ の次数 $M\cdot E=-2$ の可逆層である。完全列 $0\to\mathcal{O}_X(M-E)\to\mathcal{O}_X(M)\to\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-2)\to0$ から
$$ H^1(X,\mathcal{O}_X(M))\to H^1(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(-2))\cong k\to H^2(X,\mathcal{O}_X(M-E)) $$
が完全である。Serre 双対性により $h^2(\mathcal{O}_X(M-E))=h^0(\mathcal{O}_X(K_X-M+E))=h^0(\mathcal{O}_X(-h))$ である。$-h$ が有効因子 $D$ と線形同値だとする。$P$ を通らず、$D$ の成分の像のどれとも異なる直線 $\ell$ をとると、$f^*\ell$ は $D$ と共通成分をもたない曲線なので $D\cdot f^*\ell\ge0$ だが、$D\cdot h=-h^2=-1$ なので矛盾する。よって右端は $0$ で、$H^1(X,\mathcal{O}_X(M))$ は $k$ に全射し、$0$ でない。
1 行目.$N=M-K_X=h+E$ である。$N\cdot E=0-1=-1<0$ なのでネフでない。$h^0(mN)\ge h^0(mh)\ge h^0(\mathbb{P}^2,\mathcal{O}(m))=\binom{m+2}2$($mE$ は有効で、引き戻しは単射)なので巨大である。結論だけが崩れる。
2 行目.$E$ は滑らかなので $B=E$ の台は単純正規交叉因子で、$B$ は有効、$\lfloor B\rfloor=E\ne0$ である。$L-(K_X+B)=M+3h-E-E=h$ で、$h$ は大域切断で生成されるのでネフ、$h^2=1>0$ なので prop-kv-surface-nef-big により巨大である。$\lfloor B\rfloor=0$ だけが破れていて、結論が崩れる。
3 行目.曲線 $X$ の上で $N=0$ はネフだが、prop-kv-curve-nef-big により巨大でない。$H^1(\mathcal{O}(K_X))\cong H^0(\mathcal{O}_X)^\vee\cong k\ne0$ である。
4 行目.小平の消滅定理は正標数では成り立たず、Raynaud による反例がある(Vak25 21.5.9, p. 625。この記事では証明しない)。豊富な因子はネフかつ巨大なので、それは川又–Viehweg の消滅定理の($B=0$ の場合の)反例でもある。

関連項目

参考文献

[1]
Osamu Fujino, Fundamental theorems for the log minimal model program, arXiv:0909.4445v3, 2010, §1 p. 6(複素数体上で考えること)、§3 の 3.1(p. 8、川又–Viehweg の消滅定理)
[3]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, III 定理 11.1(p. 277)、III 系 11.2(p. 279)、V 定理 1.9(p. 364)、V 命題 3.4 の証明(pp. 387–388)

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