Herbrand–Ribetの定理(Herbrand–Ribet theorem)とは、奇素数 $p$ と奇数 $i$($3\le i\le p-2$)について、円分体 $\mathbb Q(\zeta_p)$ の類群の $p$ 部分のうち $\sigma_a$ が $a^i$ 倍のように働く成分 $A_i$ が $0$ でないことと、$p\mid B_{p-i}$ が同値だという定理である。$\Rightarrow$(Herbrand)は Stickelberger の定理と合同式 $B_{1,\omega^{-i}}\equiv B_{p-i}/(p-i)$ から、$\Leftarrow$(Ribet)は保型形式の Galois 表現を使って証明される。例えば $p=37$ では $A_5$ だけが $0$ でない。
前提知識: Stickelbergerの定理, 一般化Bernoulli数, Kummerの合同式, p進整数
Herbrand–Ribetの定理(Herbrand–Ribet theorem)とは、奇素数 $p$ について、円分体 $K=\mathbb Q(\zeta_p)$ のイデアル類群の $p$ 部分を Galois 群の指標で分けた成分と、Bernoulli数 の割り切れ方を 1 つずつ対応させる定理である。$p$ 部分 $A$ は $\operatorname{Gal}(K/\mathbb Q)\cong(\mathbb Z/p\mathbb Z)^\times$ の作用で $A=\bigoplus_iA_i$ と分かれ、$A_i$ では $\sigma_a$ が「$a^i$ 倍」として働く。定理は、奇数 $i$($3\le i\le p-2$)について
$$
A_i\ne0\iff p\mid B_{p-i}
$$
が成り立つと述べる。$\Rightarrow$ が Herbrand の定理、$\Leftarrow$ が Ribet の定理である。
正則素数 についての Kummer の判定法は「$p$ が類数を割る $\iff$ $p$ が $B_2,B_4,\dots,B_{p-3}$ のどれかの分子を割る」という全体についての主張だった。Herbrand–Ribet の定理はこれを成分ごとに精密にし、どの Bernoulli 数がどの成分に対応するかまで決める。例えば $37$ は $B_2,\dots,B_{34}$ のうち $B_{32}$ の分子だけを割り、$\mathbb Q(\zeta_{37})$ の類群の $37$ 部分は、$\sigma_a$ が $a^5$ 倍として働く位数 $37$ の群になる。
この記事では、成分への分解、成分ごとの Stickelberger 元の固有値、合同式 $B_{1,\omega^{-i}}\equiv B_{p-i}/(p-i)\pmod p$、Herbrand の向き、$p=37$ の成分の決定を完全に証明する。Ribet の向きは保型形式から Galois 表現を作る深い議論を要するので、所在を示して引用する。
以下 $p$ を奇素数、$K:=\mathbb Q(\zeta_p)$、$G:=\operatorname{Gal}(K/\mathbb Q)=\{\sigma_a\}$($\sigma_a(\zeta_p)=\zeta_p^a$)とし、$A$ を $K$ のイデアル類群の $p$ シロー部分群とする(イデアル類群)。$A$ は加法的に書く。$p^NA=0$ となる $N$ をとり、$x\in\mathbb Z_p$ を $x\equiv n\pmod{p^N}$ となる整数 $n$ の倍として働かせると、$A$ は p進整数 環 $\mathbb Z_p$ 上の加群になり、$G$ の作用と合わせて群環 $\mathbb Z_p[G]$ 上の加群になる。
p進数体 の系「$\mathbb Q_p^\times$ の構造」により $\mathbb Z_p^\times$ は $1$ の $p-1$ 乗根の群 $\mu_{p-1}$ を含み、$X^{p-1}-1$ は法 $p$ で相異なる根をもつので、還元は同型 $\mu_{p-1}\cong\mathbb F_p^\times$ を与える。
$a\in\mathbb Z$、$p\nmid a$ について $\omega(a)\in\mu_{p-1}$ を $\omega(a)\equiv a\pmod p$ で定め、$\omega(\sigma_a):=\omega(a)$ とおく。$\omega:G\to\mathbb Z_p^\times$ を Teichmüller 指標 という。整数 $i$ について
$$
A_i:=\{c\in A:\ \sigma_ac=\omega(a)^i\,c\ \ (\text{すべての } a)\}
$$
を $A$ の $\omega^i$ 成分 という。$A_i$ は $i$ の法 $p-1$ での類だけで決まる。
$\omega$ は群の同型 $G\cong\mu_{p-1}$ なので、$\omega^0,\omega^1,\dots,\omega^{p-2}$ は $G$ から $\mathbb Z_p^\times$ への準同型をすべて尽くす。環準同型 $\varphi_i:\mathbb Q_p[G]\to\mathbb Q_p$ を $\varphi_i(\sigma_a):=\omega(a)^i$ で定めると、$x\in\mathbb Z_p[G]$ は $A_i$ の上でスカラー $\varphi_i(x)$ 倍として働く。
$A=A_0\oplus A_1\oplus\dots\oplus A_{p-2}$ である。
要点:$p-1$ は $\mathbb Z_p$ の単元なので、指標の直交関係から作る冪等元で $A$ を分けられる。
$\varepsilon_i:=\frac1{p-1}\sum_a\omega(a)^{-i}\sigma_a\in\mathbb Z_p[G]$ とおく(和は $a=1,\dots,p-1$)。$\omega$ は巡回群 $G$ から $\mu_{p-1}$ への同型なので、$\sum_a\omega(a)^j$ は $j\equiv0\pmod{p-1}$ なら $p-1$、そうでなければ $0$ である(巡回群の指標と直交関係)。$\sigma_b\varepsilon_i=\frac1{p-1}\sum_a\omega(a)^{-i}\sigma_{ab}=\omega(b)^i\varepsilon_i$($a$ を $ab^{-1}$ に取り替える)なので $\varepsilon_iA\subset A_i$ である。$\sum_i\varepsilon_i=\frac1{p-1}\sum_a\bigl(\sum_i\omega(a)^{-i}\bigr)\sigma_a=\sigma_1=1$ なので $c=\sum_i\varepsilon_ic$ となり、$A=\sum_iA_i$ である。$c\in A_j$ なら $\varepsilon_ic=\frac1{p-1}\sum_a\omega(a)^{j-i}c$ は $i=j$ で $c$、$i\ne j$ で $0$ である。よって $\sum_ic_i=0$($c_i\in A_i$)なら $\varepsilon_j$ を作用させて $c_j=0$ となり、和は直和である。$\square$
複素共役 $\sigma_{-1}$ は $A_i$ に $\omega(-1)^i=(-1)^i$ 倍で働く。奇数の $i$ の成分の和を $A^-$、偶数の $i$ の成分の和を $A^+$ と書く。$A^+$ は最大実部分体 $K^+$ の類群の $p$ 部分に対応し(Vandiver予想 の命題「実部分体の類群と偶数の成分」)、$A^-$ の位数は相対類数 $h_p^-$ の $p$ 部分である。
$\theta:=\frac1p\sum_{a=1}^{p-1}a\,\sigma_a^{-1}$ を $K$ の Stickelberger 元とする(Stickelbergerの定理 の定義「Stickelberger元とStickelbergerイデアル」)。$i\not\equiv0\pmod{p-1}$ のとき
$$
B_{1,\omega^{-i}}:=\frac1p\sum_{a=1}^{p-1}a\,\omega(a)^{-i}\in\mathbb Q_p
$$
とおく。$\omega^{-i}$ は法 $p$ の自明でない指標(導手 $p$)なので、これは 一般化Bernoulli数 の系「小さな番号の値」の 2 の $B_{1,\chi}$ を、$1$ の $p-1$ 乗根の同一視 $\mathbb Q(\mu_{p-1})\subset\mathbb Q_p$ で $\mathbb Q_p$ の元とみたものである。
$c$ を $p$ と互いに素な正の整数とする。
1 は $\varphi_i(\sigma_a^{-1})=\omega(a)^{-i}$ と $\sum_{a=1}^{p-1}a=\frac{p(p-1)}2$ から従う。2 の 1 つ目の等号は $\varphi_i$ が環準同型であることから、2 つ目は Stickelbergerの定理 の補題「Stickelbergerイデアルの生成元」の 1 の $(c-\sigma_c)\theta=\sum_a\lfloor ca/p\rfloor\sigma_a^{-1}$ に $\varphi_i$ を施して得られる。同じ補題により $(c-\sigma_c)\theta\in\mathbb Z[G]$ は Stickelberger イデアルに入るので、Stickelbergerの定理 の定理「Stickelbergerの定理」により類群を消し、特に $A$ を消す。$A_i$ の上では $\varphi_i((c-\sigma_c)\theta)$ 倍として働くので、このスカラーが $A_i$ を消す。$\square$
$A_0=0$、$A_1=0$ である。
lem-hrb-eigenvalue の 3 を使う。$i=0$、$c=2$ とすると、スカラーは $(2-1)\frac{p-1}2=\frac{p-1}2$ で、$\mathbb Z_p$ の単元である。単元倍が $A_0$ を消すので $A_0=0$ である。$i=1$、$c=1+p$ とすると $\sigma_{1+p}=\sigma_1$、$\omega(1+p)=1$ なので、スカラーは $p\,B_{1,\omega^{-1}}=\sum_{a=1}^{p-1}a\,\omega(a)^{-1}$ で、$a\,\omega(a)^{-1}\equiv1\pmod p$ から $\equiv p-1\equiv-1\pmod p$ である。これも単元なので $A_1=0$ である。$\square$
$A_0=0$ はノルムの議論からも明らかで、$A_1=0$ の計算は $B_{1,\omega^{-1}}$ が $p$ 整数でない(分母に $p$ をもつ)ことに対応する(Was82 Proposition 6.16、p. 102。Lan90 Chapter 1 §3 の Corollary 2、p. 16)。
$p\ge5$、$i$ を奇数で $3\le i\le p-2$ とし、$k:=p-i$ とおく。$B_{1,\omega^{-i}}\in\mathbb Z_p$ で、
$$
B_{1,\omega^{-i}}\equiv\frac{B_{k}}{k}\pmod p
$$
が成り立つ。右辺は $\mathbb Z_{(p)}$ の元である。
$c$ を法 $p$ の原始根とする(原始根)。$i\not\equiv1\pmod{p-1}$ なので $\omega(c)^i\equiv c^i\not\equiv c\pmod p$、すなわち $u:=c-\omega(c)^i$ は $\mathbb Z_p$ の単元である。lem-hrb-eigenvalue の 2 により
$$
u\,B_{1,\omega^{-i}}=S:=\sum_{a=1}^{p-1}\Bigl\lfloor\frac{ca}p\Bigr\rfloor\omega(a)^{-i}\in\mathbb Z_p
$$
なので、$B_{1,\omega^{-i}}=u^{-1}S\in\mathbb Z_p$ である。
$\omega(a)^{-i}\equiv a^{-i}\equiv a^{p-1-i}=a^{k-1}\pmod p$ なので
$$
S\equiv\sum_{a=1}^{p-1}a^{k-1}\Bigl\lfloor\frac{ca}p\Bigr\rfloor=T_k(c)\pmod p
$$
である。$k$ は偶数で $2\le k\le p-3$ なので $(p-1)\nmid k$ で、Kummerの合同式 の定理「$B_k/k$ の法 $p$ での表示」により $\frac{B_k}k\in\mathbb Z_{(p)}$、$(c^k-1)\frac{B_k}k\equiv c^{k-1}T_k(c)\pmod p$ である。$c^{p-1}\equiv1$ から $c^k\equiv c^{1-i}$、$c^{k-1}\equiv c^{-i}$ なので、両辺に $c^i$ を掛けて
$$
(c-c^i)\frac{B_k}k\equiv T_k(c)\equiv S=u\,B_{1,\omega^{-i}}\equiv(c-c^i)\,B_{1,\omega^{-i}}\pmod p
$$
を得る。$c-c^i\not\equiv0\pmod p$ で割って結論を得る。$\square$
Was82 Corollary 5.15(p. 61)はこの合同式を $p$ 進 $L$ 関数から導き、Lan90(Chapter 1 §3 の Corollary 3 の証明、p. 16)は次の章の定理に送っている。ここでは Kummerの合同式 の記事で証明された Voronoi 型の合同式だけから導いた。
$p$ を奇素数、$i$ を奇数で $3\le i\le p-2$ とする。
$p=3$ では $i$ の範囲は空なので、$p\ge5$ とする。$A_i\ne0$ とし、prf-hrb-congruence と同じく $c$ を原始根、$u=c-\omega(c)^i$ とする。lem-hrb-eigenvalue の 3 により、スカラー $x:=u\,B_{1,\omega^{-i}}\in\mathbb Z_p$ は $A_i$ を消す。$x$ が $\mathbb Z_p$ の単元なら $x^{-1}x=1$ も $A_i$ を消し、$A_i=0$ となって仮定に反する。よって $x\in p\mathbb Z_p$ で、$u$ は単元なので $B_{1,\omega^{-i}}\equiv0\pmod p$ である。prop-hrb-congruence により $\frac{B_{p-i}}{p-i}\equiv0\pmod p$ で、$p\nmid p-i$ なので $p$ は $B_{p-i}$ の分子を割る。$\square$
これは Was82 Theorem 6.17(p. 102)、Lan90 Chapter 1 §3 の Corollary 3(p. 16)である。証明から、より精密に「$B_{1,\omega^{-i}}$ は $A_i$ を消す」ことがわかる(Was82 Proposition 6.16)。
2(Ribet の向き)はこの記事では証明しない。Rib76 の Main Theorem (1.1)(p. 151)がこの主張で、そこでは $C:=A/pA$ の $\chi^{1-k}$ 成分($\chi$ は $\mu_p$ への作用を表す法 $p$ の指標、$k=p-i$)が $0$ でないことを示している。$A_i/pA_i$ は $C$ の $\omega^i$ 成分で、有限 $p$ 群 $A_i$ について $A_i\ne0$ と $A_i/pA_i\ne0$ は同値なので、これは 2 と同じ主張である。証明は、$p\mid B_k$ のとき、$\Gamma_1(p)$ の重さ $2$ の尖点形式で、$p$ と異なる素数 $l$ について係数が $a_l\equiv1+l^{k-1}$($p$ の上のある素イデアルを法として)をみたす固有形式を作り、モジュラー多様体 $J_1(p)$ の $p$ 進表現から、$\begin{pmatrix}1&*\\0&\chi^{k-1}\end{pmatrix}$ の形の既約でない 2 次元表現で対角化できないものを取り出す。その像から、Galois 群が $\mathbb Z/p\mathbb Z$ の直積で $\sigma_a$ が $\omega^{i}$ に従って働く $\mathbb Q(\mu_p)$ の不分岐アーベル拡大が得られ、類体論により $A_i\ne0$ が従う(Rib76 Theorem (1.2)・(1.3)、p. 152、証明の方針 p. 153)。Was82 は Theorem 6.18(p. 102)として述べ、証明を Rib76 に送っている。
$p$ を奇素数とし、$i(p)$ を $p$ が分子を割る $B_2,B_4,\dots,B_{p-3}$ の個数(非正則指数)とする。
1:$A^-=\bigoplus_{i\text{ 奇数}}A_i$ で、prop-hrb-trivial により $A_1=0$ なので、ある奇数 $i$($3\le i\le p-2$)で $A_i\ne0$ である。thm-hrb-main の 1 により $p\mid B_{p-i}$ で、$p-i$ は $2$ 以上 $p-3$ 以下の偶数である。2:$p\mid B_k$($k$ 偶数、$2\le k\le p-3$)ごとに $i=p-k$ は $3\le i\le p-2$ の奇数で、thm-hrb-main の 2 により $A_i\ne0$、すなわち $A_i/pA_i\ne0$ である。成分は相異なる $i$ について直和をなすので、$\dim_{\mathbb F_p}A^-/pA^-\ge i(p)$ である。$\square$
1 と 2 を合わせると、$A^-\ne0$ と「$p$ が非正則」は同値である。$A^+\ne0$ なら $A^-\ne0$ であること(Was82 Theorem 5.34、p. 78。この記事では証明しない)と合わせると 正則素数 の Kummer の判定法が得られる。2 の不等式が等式になるかは一般には知られておらず、$p\nmid h_p^+$(Vandiver予想)なら等式になる(Was82 p. 102、Corollary 10.15、p. 197)。
$p=37$ で、奇数 $i$($3\le i\le35$)ごとに $B_{1,\omega^{-i}}$ と $B_{37-i}/(37-i)$ の法 $37$ での剰余を計算すると、次のようになる(有限計算。2 つの値は prop-hrb-congruence のとおり一致する)。
| $i$ | $3$ | $5$ | $7$ | $9$ | $11$ | $13$ | $15$ | $17$ | $19$ | $21$ | $23$ | $25$ | $27$ | $29$ | $31$ | $33$ | $35$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $k=37-i$ | $34$ | $32$ | $30$ | $28$ | $26$ | $24$ | $22$ | $20$ | $18$ | $16$ | $14$ | $12$ | $10$ | $8$ | $6$ | $4$ | $2$ |
| 剰余 | $24$ | $0$ | $5$ | $5$ | $9$ | $30$ | $36$ | $10$ | $12$ | $6$ | $34$ | $23$ | $30$ | $2$ | $21$ | $4$ | $34$ |
$p=37$ のとき $A=A_5\cong\mathbb Z/37\mathbb Z$ で、$\sigma_a$ は $A$ に $a^5$ 倍として働く。すなわち、$\mathbb Q(\zeta_{37})$ の類数 $37$ の部分の類 $c$ について $\sigma_a(c)=c^{a^5}$ である。
上の表により、奇数 $i\ne5$ では $B_{1,\omega^{-i}}\not\equiv0\pmod{37}$ なので、prf-hrb-herbrand と同じ議論($B_{1,\omega^{-i}}$ が単元なら $A_i=0$)で $A_i=0$ である。$A_1=0$ は prop-hrb-trivial による。偶数の $i$ の成分の和 $A^+$ は $\mathbb Q(\zeta_{37})^+$ の類群の $37$ 部分と同型で(Vandiver予想 の命題「実部分体の類群と偶数の成分」)、$\mathbb Q(\zeta_{37})^+$ の類数は $1$ なので(Was82 表 §3、p. 352)$A^+=0$ である。よって $A=A_5$ である。$\mathbb Q(\zeta_{37})$ の類数は $37$ なので(同 表 §3、pp. 352–353:$h_{37}^-=37$、$h_{37}^+=1$)、$A$ は位数 $37$ の群で $\mathbb Z/37\mathbb Z$ に同型である。$A_5$ の上で $\sigma_a$ は $\omega(a)^5$ 倍として働き、$37A=0$ と $\omega(a)^5\equiv a^5\pmod{37}$ から $a^5$ 倍と同じである。$\square$
この証明は Ribet の向きを使わず、類数の値から $A_5\ne0$ を得ている。$B_{1,\omega^{-5}}$ はちょうど $37^1$ で割り切れ(有限計算)、Was82 Proposition 6.16 により $A_5$ を消すので、位数 $37$ と合っている。
$157$ は $B_{62}$ と $B_{110}$ の分子を割り、ほかの $B_k$($k=2,\dots,154$ の偶数)の分子は割らない(有限計算。正則素数 の表)。$i=157-62=95$ と $i=157-110=47$ が対応する成分である。Herbrand の向きにより奇数の成分は $A_{47},A_{95}$ 以外 $0$ で、Ribet の向きによりこの 2 つは $0$ でない。$B_{1,\omega^{-47}}$ と $B_{1,\omega^{-95}}$ はどちらもちょうど $157^1$ で割り切れる(有限計算)ので、Was82 Proposition 6.16 により $157A_{47}=157A_{95}=0$ である。$\mathbb Q(\zeta_{157})$ の相対類数は
$$
h_{157}^-=5\cdot13^2\cdot157^2\cdot1093\cdot1873\cdot418861\cdot3148601
$$
で(Was82 表 §3、p. 355)、$157$ をちょうど $2$ 回含む。$A^-$ の位数は $h^-_{157}$ の $157$ 部分なので、$A^-=A_{47}\oplus A_{95}\cong(\mathbb Z/157\mathbb Z)^2$ である。
| 外す条件・替える条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $i$ が奇数(Stickelberger 元の固有値) | $p=5$、$i=2$ | Stickelberger 元が $A_i$ に $0$ でないスカラーで働く |
| $i\ne1$ | $p=5$、$i=1$ | $B_{1,\omega^{-i}}\in\mathbb Z_p$ で $B_{p-i}/(p-i)$ と合同 |
| $c$ が原始根 | $p=37$、$i=3$、$c=36$ | $(c-\omega(c)^i)B_{1,\omega^{-i}}\in p\mathbb Z_p$ なら $p\mid B_{p-i}$ |
| $i$ が奇数(Ribet の向き) | $p=37$、$i=4$ | $p\mid B_{p-i}$ なら $A_i\ne0$ |
各行を確かめる。
1 行目:$\omega(2)\equiv2$、$\omega(4)=-1$ なので $\omega(a)^{-2}$ は $a=1,2,3,4$ で $1,-1,-1,1$ で、$\sum_aa\,\omega(a)^{-2}=1-2-3+4=0$ である。よって $\varphi_2(\theta)=0$ で、すべての $c$ について $\varphi_2((c-\sigma_c)\theta)=0$ となり、Stickelberger の定理は $A_2$ について何も言わない。一般に $i$ が偶数($i\not\equiv0$)なら $\omega^{-i}$ は偶指標で、$B_{1,\omega^{-i}}=0$ である(一般化Bernoulli数 の命題「偶奇が合わないときの消滅」)。偶数の成分は Vandiver予想 の主題である。
2 行目:$5B_{1,\omega^{-1}}=\sum_aa\,\omega(a)^{-1}\equiv4\pmod5$ なので $B_{1,\omega^{-1}}\notin\mathbb Z_5$ である。$B_4/4=-\frac1{120}$ も分母が $5$ で割り切れ、合同式は意味をもたない(von Staudt–Clausen の定理。Bernoulli数)。
3 行目:$\omega(36)=\omega(-1)=-1$ なので $c-\omega(c)^3=36+1=37$ で、スカラーはつねに $37\mathbb Z_{37}$ に入る。しかし表により $B_{34}/34\equiv24\not\equiv0\pmod{37}$ である。証明では $c-\omega(c)^i$ が単元であることを使って割り算をした。
4 行目:$37-4=33$ は奇数なので $B_{33}=0$ で、$37\mid B_{33}$ は形式的に成り立つが、prop-hrb-37 により $A_4=0$ である。$\square$
注意を 2 つ挙げる。
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